説明

洗濯機の排水機構

【課題】洗濯機の設置の正確さを高め、排水不良等の不具合発生を防止する。
【解決手段】洗濯機本体の外箱1と、外箱1を底部で支える台枠11と、洗濯兼脱水槽4を回転自在に軸支内設し外箱1内に弾性支持された水槽2と、水槽2底部に接続された排水弁13と、排水弁13に接続され水槽2内部の洗濯水を排水する機内ホース14と、機内ホース14に接続し台枠11の洗濯機背面側略中央に設けた排水パイプ12と、排水パイプ12に接続する排水ホース15とを備え、台枠11には、排水パイプ12の周囲に凹部16を設け、凹部16から洗濯機の左右両側面に向けて下方へ傾斜させた排水ホース15を収納する排水ホース保持溝部17を設けたことにより、排水ホース15の配管および左右いずれかへの排水方向の切りかえ作業が確実かつ簡単になり製品設置作業時の作業不具合による排水能力の低下や排水ホースの損傷、水漏れ等の発生が防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯機の設置の確実性を高め、排水性をより確実に発揮させることができる排水機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の洗濯機の排水機構は、内部ホースを洗濯機本体の左右側面のいずれかの側に排水方向を切り替えて機外に排水する構成が一般的であったが、洗濯機を設置場所に運搬した後、その設置場所で洗濯機本体内方に配管された機内ホースの左右側面側への交換作業をするため、作業の不具合による水漏れが発生することが多く、その対応として、機内ホースの左右への配管の交換作業を必要性としない、洗濯機本体の後方背面側に固定した排水筒より排水し、機外に接続した屈曲性を有する排水ホースで左右の側面側に引き回しを行う構成を採用した洗濯機が提案されている。
【0003】
図5は、特許文献1に記載された従来の洗濯機の外観矢視図を示すものである。
【0004】
図5に示すように、洗濯機本体100の背面101の底部よりドレイン(排出筒)150を構成し、屈曲性があり軟質な排水ホース200を接続し、この従来例では洗濯機本体100の正面から見て右側面102側に前記排水ホース200を引き回し、下水管400に接続している。
【0005】
下水管400の位置は、洗濯機本体100を設置する家屋により位置が多様であり、また、図5では図示していないが、洗濯機を設置する防水パンの配水位置(下水管)も多様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−290651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の構成では、以下に記す課題があった。
【0008】
洗濯機の設置は、一般的には、洗濯機の底部を囲う様に構成した立ち上がり部を有する防水パン内部に設置され、かつ洗濯機の背面を設置場所の部屋の壁面に近接して配置することが多い。
【0009】
従って、排水ホース200は、図6の従来の洗濯機の要部斜視図で示すように、洗濯機本体100の背面101側より突出し、洗濯機本体100下部の近傍を左右側に引き回すことが多い。
【0010】
上記洗濯機設置時において、排水ホース200を背面より左右のいずれかの側面側に引き回して排水配管する場合、設置作業者は背面の排水ホース200の状況を目視確認しにくく、背面の壁や、防水パンの立ち上がり部に排水ホース200が挟まれたり、洗濯機本体100の下部に排水ホース200が押さえ込まれたりする不具合が生じることがある。
【0011】
図7は、その不具合の状態を示す従来の洗濯機の設置状態を示す機能説明図であり、排水ホース200は、屈曲性があり軟質であるため、押し圧により容易に変形する。
【0012】
洗濯機本体100が、二点鎖線で示す状態から防水パン300の内方に上方から設置されるとき、排水ホース200が洗濯機本体100の底部103と、防水パン300の外周の立ち上がり部310との間に挟みこまれて200Aで示した状態に変形している。
【0013】
この時、設置作業者は気付くことができず、変形により排水ホース200の開口面積が小さくなり排水不良が発生したり、排水ホース200の損傷や、排水ホース200の挟み込みにより水平な設置ができず、製品が傾き、脱水運転等で傾きによる異常振動を引き起こしたりする不具合があった。
【0014】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、機外に配管された排水ホースが設置時に洗濯機本体と設置面とに挟みこまれることを防止し、設置性と排水性を確保することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記従来の課題を解決するために、洗濯機本体の外箱と、前記外箱を底部で支える台枠と、洗濯兼脱水槽を回転自在に軸支内設し前記外箱内に弾性支持された水槽と、前記水槽底部に接続された排水弁と、前記排水弁に接続され前記水槽内部の洗濯水を排水する機内ホースと、前記機内ホースに接続し前記台枠の洗濯機背面側略中央に設けた排水パイプと、前記排水パイプに接続する排水ホースとを備え、前記台枠には、前記排水パイプの周囲に凹部を設け、前記凹部から洗濯機の左右両側面に向けて下方へ傾斜させた前記排水ホースを保持する排水ホース保持溝部を設けたものである。
【0016】
これにより、洗濯機の設置時に、排水ホースを凹部および排水ホース保持溝部内方に収納することにより、排水ホースの配管および左右いずれかへの排水方向の切りかえ作業が確実かつ簡単になり、製品設置作業時の作業不具合による排水能力の低下や排水ホースの損傷、水漏れ等の発生が防止できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の洗濯機の排水機構によれば、洗濯機の設置性を高め、特に設置作業の容易性を高めることにより、排水不良に伴う種々の不具合発生を押さえることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態における洗濯機の縦断面図
【図2】同洗濯機の要部部分断面図
【図3】同洗濯機の要部部分矢視図
【図4】同洗濯機の機能説明部分断面図
【図5】従来の洗濯機の外観矢視図
【図6】従来の洗濯機の要部斜視図
【図7】従来の洗濯機の設置状態を示す機能説明図
【発明を実施するための形態】
【0019】
第1の発明は、洗濯機本体の外箱と、前記外箱を底部で支える台枠と、洗濯兼脱水槽を回転自在に軸支内設し前記外箱内に弾性支持された水槽と、前記水槽底部に接続された排水弁と、前記排水弁に接続され前記水槽内部の洗濯水を排水する機内ホースと、前記機内ホースに接続し前記台枠の洗濯機背面側略中央に設けた排水パイプと、前記排水パイプに接続する排水ホースとを備え、前記台枠には、前記排水パイプの周囲に凹部を設け、前記凹部から洗濯機の左右両側面に向けて下方へ傾斜させた前記排水ホースを収納する排水ホース保持溝部を設けたことにより、洗濯機の設置時に、排水ホースを凹部および排水ホース保持溝部内方に収納でき、排水ホースの配管および左右いずれかへの排水方向の切りか
え作業が確実かつ簡単になり、製品設置作業時の作業不具合による排水能力の低下や排水ホースの損傷、水漏れ等の発生が防止できる。
【0020】
第2の発明は、特に第1の発明の排水ホースには、前記排水パイプに挿入するための略直角に曲げられたL字状挿入部を形成すると共に、前記L字状挿入部の先端から前記排水ホースの外径までの寸法は、前記凹部の深さより小さく、かつ前記排水ホース保持溝部の深さは、前記排水ホースの外径より大きくなるように設定したことにより、排水ホースが洗濯機背面側にはみ出した状態になることがなく、設置場所の壁面が近接した場合でも、排水ホースが洗濯機と壁面との間に挟まったり、また排水ホースが折れ曲がったりせず、排水能力の低下を防止することができる。
【0021】
第3の発明は、特に第1または第2の発明の排水ホース保持溝部には、洗濯機の左右両側面の近傍に前記排水ホースを保持する保持突起を設けると共に、前記排水ホースには、前記保持突起に対応する位置に保持用の環状の凹溝を設けたことにより、簡単な作業で排水ホースを所定位置に確実に保持できるようになり、作業性が著しく向上する。
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0023】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態における洗濯機の縦断面図であり、図2は同洗濯機の要部部分断面図、図3は同洗濯機の要部部分矢視図、図4は同洗濯機の機能説明部分断面図である。
【0024】
図1に示すように、洗濯機本体の外箱1内部に弾性支持機構3により水槽2を垂下防振支持しつつ収容し、水槽2内部の底部に衣類撹拌用の撹拌翼5を回転自在に配した有底略円筒状をなし周壁に多数の小孔を有する洗濯兼脱水槽4を脱水回転可能に軸支内設している。撹拌翼5および洗濯兼脱水槽4は、水槽2の外底部に固定したモータ6により回転駆動される。
【0025】
また、外箱1の最上部にはトップカバー7を装着し、トップカバー7の中央部に、洗濯兼脱水槽4内に臨む洗濯物出入口8を有し、この洗濯物出入口8の上方に開閉自在に平面状の蓋体9を軸支する。
【0026】
さらに、洗濯兼脱水槽4の上部には、内部にバランサー液を封入した環状の流体バランサー10が取り付けられており、脱水時の振動を防止している。
【0027】
外箱1は、外箱1を下方より支える合成樹脂等の防錆能力に優れた材質で構成された台枠11により載置されており、台枠11の背面側の略中央には洗濯機本体の背面側に吐出側を有する排水パイプ12が一体構成されている。
【0028】
台枠11には、台枠11の内側に向けて凸状に突出させた凹部16を形成し、凹部16に洗濯機内部(以下機内)から洗濯機外部(以下機外)へと連通した排水パイプ12を設け、排水パイプ12の機内側には機内ホース14を接続し、排水パイプ12の機外側には可撓性があり軟質な材質で構成された排水ホース15を接続する。
【0029】
水槽2の洗濯水は、排水弁13により排水、止水が制御され、排水時には排水弁13が開放され、排水弁13に接続した機内ホース14を通じ、排水パイプ12を介して外箱1の機外側に接続した排水ホース15より排出される。
【0030】
図2の部分断面図に示すように、排水ホース15には、略直角に曲げた形状のL字状挿入部19を形成し、凹部16において排水パイプ12に配管接続する。また、台枠11には、凹部16から洗濯機の左右両側面に向けて連続する排水ホース保持溝部17を設けている。排水ホース保持溝部17の洗濯機右側方へ延びる部分17(R)または洗濯機左側方へ延びる部分17(L)内に、排水ホース15を折れ曲がりを防止しつつ収納することで、左右何れかの側面側に配管することが可能となっている。
【0031】
凹部16の深さとなる洗濯機背面端部21からの寸法Hは、排水ホース15のL字状挿入部19の先端部22から排水ホース15の外径までの寸法hに対し、H>hとなるように設定している。
【0032】
また、排水ホース保持溝部17の深さとなる洗濯機背面端部21からの寸法Dは、排水ホース15の外径寸法dに対し、D>dとなるように設定している。
【0033】
図3の部分矢視図に示すように、台枠11の凹部16に連続して形成された排水ホース15の排水ホース保持溝部17の17(R)および17(L)には、排水パイプ12の高さ位置から左右両側面に向かい徐々に高さ位置が低くなるよう下方へ傾斜する傾斜部23を設け、排水が円滑に流れるように形成している。
【0034】
また、排水ホース保持溝部17の左右それぞれの両側端近傍には、排水ホース15を保持する保持突起18を形成し、一方、排水ホース15には保持突起18に対応する位置に、保持突起18が排水ホース15を嵌合もしくは挟持可能に保持できる環状の凹溝20を形成している。
【0035】
図4の部分断面図に示すように、軟質な材質で構成された排水ホース15の可撓性を利用し、凹溝20を若干変形させつつ保持突起18内方にはめ込むことで、凹溝20が保持突起18の内面に嵌合もしくは挟持され、排水ホース15は保持突起18に保持される。
【0036】
以上のように構成した洗濯機について、その動作、作用を説明する。
【0037】
洗濯機背面に接続した排水ホース15は、洗濯機背面側において台枠11に形成した凹部16および、排水ホース保持溝部17内に収納されるので、排水ホース15の配管作業や、左右いずれかへの排水方向の切りかえ作業が確実かつ簡単になり、製品設置作業時の作業不具合による排水能力の低下や排水ホースの損傷、水漏れ等の発生が防止できる。
【0038】
洗濯機設置時に排水ホース15は、略直角に曲げた形状のL字状挿入部19を、凹部16内方で排水パイプ12に配管接続したので、排水ホース15は洗濯機背面から突出することがなくなり、これにより排水ホース15を大きな円弧状に引き回すことがなくなって設置性が向上し、また作業性も向上する。
【0039】
さらに排水ホース15は、左または右方向に連なる排水ホース保持溝部17内に挿入保持され、排水ホース15が洗濯機背面側にはみ出した状態にならず、設置場所の壁面が近接した場合でも、排水ホース15の折れ曲がりが発生しないので、排水能力の低下が防止できる。
【0040】
また、洗濯機背面より排水ホース15がはみ出した状態にはならないので、従来例で示したような、設置時に外箱あるいは台枠と防水パンあるいは床面との間に排水ホース15を挟み込んだり、排水ホース15を損傷させたりすることがなくなり、排水不良等を回避できる。
【0041】
更に、図4で示したように、排水ホース15の可撓性を利用して、環状の凹溝20部を保持突起18にはめ込み装着することにより、排水ホース15が保持される構成であるので、作業が簡単でかつ確実に排水ホース15を所定位置に保持し配置できる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上のように、本実施の形態おいては、洗濯機設置時の設置性の向上を図り、正確な設置を実現し、設置による不具合を解消できる洗濯機の排水機構を提供できるものであり、ドラム式洗濯機や乾燥機等、排水機構を要する機器に応用できるものである。
【符号の説明】
【0043】
1 外箱
2 水槽
4 洗濯兼脱水槽
11 台枠
12 排水パイプ
13 排水弁
14 機内ホース
15 排水ホース
16 凹部
17 排水ホース保持溝部
18 保持突起
19 L字状挿入部
20 凹溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯機本体の外箱と、前記外箱を底部で支える台枠と、洗濯兼脱水槽を回転自在に軸支内設し前記外箱内に弾性支持された水槽と、前記水槽底部に接続された排水弁と、前記排水弁に接続され前記水槽内部の洗濯水を排水する機内ホースと、前記機内ホースに接続し前記台枠の洗濯機背面側略中央に設けた排水パイプと、前記排水パイプに接続する排水ホースとを備え、前記台枠には、前記排水パイプの周囲に凹部を設け、前記凹部から洗濯機の左右両側面に向けて下方へ傾斜させた前記排水ホースを収納する排水ホース保持溝部を設けたことを特徴とする洗濯機の排水機構。
【請求項2】
前記排水ホースには、前記排水パイプに挿入するための略直角に曲げられたL字状挿入部を形成すると共に、前記L字状挿入部の先端から前記排水ホースの外径までの寸法は、前記凹部の深さより小さく、かつ前記排水ホース保持溝部の深さは、前記排水ホースの外径より大きくなるように設定した請求項1に記載の洗濯機の排水機構。
【請求項3】
前記排水ホース保持溝部には、洗濯機の左右両側面の近傍に前記排水ホースを保持する保持突起を設けると共に、前記排水ホースには、前記保持突起に対応する位置に保持用の環状の凹溝を設けた請求項1または2に記載の洗濯機の排水機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−81686(P2013−81686A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224648(P2011−224648)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】