説明

洗濯機

【課題】仕切体などの道具を用いることなく、水量が少なくても洗濯兼脱水槽内の洗濯物に万邊なく洗濯水を当てることのできる洗濯機を提供する。
【解決手段】上部に吐出口10eが設けられ、洗濯兼脱水槽1の側板2とで水路が形成され、攪拌翼の回転による洗濯兼脱水槽1内の洗濯水を吐出口10eまで誘導するための水路本体10と、水路本体10の上部に設けられ、その水路本体10により誘導された洗濯水を吐出口10eから所定の角度で噴射し、洗濯兼脱水槽1内に発生している渦流を超えさせる水流誘導体11とを備え、水流誘導体11が設けられた水路本体10を洗濯兼脱水槽1の側板2に周方向に複数配置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルセータ(攪拌翼)方式の洗濯機、特に洗濯水の循環によって洗濯を行う洗濯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のパルセータ方式の洗濯機は、底部に設けられた攪拌翼の裏羽根で洗濯液を底部に設けられた開口部および水通路を経由して、洗濯槽上部の放出口から洗濯槽内に放出して循環させている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、他の洗濯機として、パルセータ(攪拌翼)に設けた裏羽根の外周部にポンプ室を形成し、このポンプ室によって洗濯兼脱水槽内の洗濯液を循環水路を通して洗濯兼脱水槽の上部に形成した散水口に送水するものがあった(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平8−66589号公報(第3頁、図1)
【特許文献2】特開平8−215469号公報(第4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の洗濯機では、開口部が100mm以上と大きいため、放出口から放出される洗濯水の量が多くなるものの、攪拌翼により発生している渦流のほぼ中央部か、手前側に洗濯水が落下し、洗濯物に満遍なく洗濯水が当たらず、また、洗濯に必要な水量が多くなっていた。
【0006】
特許文献2に記載の洗濯機では、循環水路を通った洗濯水は散水口によって散水されるが、パルセータの上方に配置された仕切体の上面にセットされた洗濯物を洗うためであり、洗濯に仕切体が必要になっていた。
【0007】
本発明は、前述のような課題を解決するためになされたもので、仕切体などの道具を用いることなく、洗濯兼脱水槽内の洗濯物に万邊なく洗濯水を当てることのできる洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る洗濯機は、水槽内に回転可能に配設された洗濯兼脱水槽と、洗濯兼脱水槽の底部に回動自在に設けられた攪拌翼と、上部に吐出口が設けられ、洗濯兼脱水槽の側板とで水路が形成され、攪拌翼の回転による洗濯兼脱水槽内の洗濯水を吐出口まで誘導するための水路本体と、水路本体とは別体に構成され、水路本体の上部に着脱可能に設けられ、その水路本体により誘導された洗濯水を前記吐出口から所定の角度で噴射する水流誘導体とを備え、水流誘導体が設けられた水路本体を洗濯兼脱水槽の側板に配置したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、水路本体に別体でかつ着脱可能に設けられた水流誘導体によって、洗濯機のタイプ(例えば、水層の傾斜状態や容量など)に合わせて、吐出口から洗濯水の角度を所定角度で噴射させることができ、渦流によって回転している洗濯物に満遍なく当てることが可能になり、洗濯物を効率よく洗うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は本発明の実施の形態に係る洗濯機の洗濯兼脱水槽に取り付けられた水路本体および水流誘導体の断面図、図2は水路本体および水流誘導体の斜視図、図3は水流誘導体を水路本体に取り付けて示す斜視図である。
【0011】
洗濯機の洗濯兼脱水槽1は、有底円筒状に形成され、図示せぬ水槽内に回転可能に配設されている。洗濯兼脱水槽1の底部3中央には、投入された洗濯物および注水された水を攪拌する攪拌翼(図示せず)が回動自在に取り付けられ、側板2には脱水のための複数の通水孔(図示せず)が設けられている。前記の攪拌翼は、図示していないが、裏羽根を有し、水槽の下方に配置されたモータに連結され、洗濯およびすすぎ時に回転する。攪拌翼が回転した際には、裏羽根により、洗濯兼脱水槽1内の洗濯水が後述する水路本体10と洗濯兼脱水槽1の側板2とで形成される水路内に送り込まれる。洗濯兼脱水槽1の上部に設けられたオートバランサ5は、内部に塩水が入っており、脱水時の水槽の揺れを軽減するためのものである。
【0012】
前述した水路本体10は、図2に示すように、洗濯兼脱水槽1の軸心を中心として円弧状に形成された正面板10aと、洗濯兼脱水槽1の側板2に当接するように扇状に形成された天板10bと、正面板10aおよび天板10bの両側を覆うように形成され、側板2に設けられた軸方向のスリット(図示せず)に嵌入された傾斜板10cと、正面板10aおよび傾斜板10cより前方に折れ曲がって形成され、洗濯兼脱水槽1の底部周縁に形成された段部4に嵌合して係止された支持板10dと、正面板10aの上部に洗濯兼脱水槽1の周方向に細長く形成された吐出口10eと、さらに図3に示すように、正面板10aの裏面にそれぞれ溝を有して対向して設けられ、各溝に洗濯兼脱水槽1の側板2に設けられた嵌め板(図示せず)が嵌入された一対の側壁10fと、この一対の側壁10fの間に設けられたリブ10gとで構成されている。
傾斜板10cの裏面には、一対の側壁10fに沿って複数のネジ取付部10hが配置されている。このネジ取付部10hは、水路本体10を洗濯兼脱水槽1の側板2に固定するためのものである。また、正面板10aの裏面に吐出口10e上部にネジ取付部10i(図1参照)が設けられている。このネジ取付部10iは、後述する水流誘導体11を固定するためのものである。正面板10aおよび一対の側壁10fと洗濯兼脱水槽1の側板2とで水路が形成されている。なお、正面板10aは、円弧状に限らず、直線上であってもよい。
【0013】
水流誘導体11は、流入口11a側の外形が前記水路と同じ大きさに形成されたほぼ長方体状に形成され、その内の前面部11cの先端が外方に直角に折り曲げられて吐出口10eの下面に接触し、前面部11cに対向する背面部11dは吐出口10eに近づくにつれ内部空間が次第に小さくなるようにカーブしてその先端が吐出口10eの上面に接触し、前面部11cおよび背面部11dの先端と両側面とで流出口11bが形成されている。その流出口11bは、吐出口10eから噴射される洗濯水が所定の角度になるように調節されている。つまり、背面部11dのカーブ面の角度が調整されている。この水流誘導体11は、水路本体10の裏面に設けられた一対の側壁10fの間に嵌合し、カーブ面に設けられた固定板11eを介してネジ取付部10i(図1参照)に螺合したネジ11f(図1参照)によって固定されている。
【0014】
本実施の形態においては、水流誘導体11が設けられた水路本体10が洗濯兼脱水槽1の側板2に周方向に複数配置されている。その配置は、お互いに対向しないように設置されている。これは、両方から噴射された洗濯水が途中でぶつからないようにするためである。
【0015】
ここで、洗濯兼脱水槽1は、通常、洗濯機筐体(図示せず)の四隅に設けられた4本の吊り棒(図示せず)により懸架されて、洗濯兼脱水槽1は垂直方向に吊架された状態で洗い工程および乾燥行程が行われる洗濯機や、洗濯兼脱水槽1が前方に傾斜した状態で洗い工程および乾燥行程が行なわれる洗濯機がある。また、洗い工程および乾燥工程において洗濯物の量が少ないときや洗濯終了時には、洗濯兼脱水槽1が洗濯機の前方に傾くようにすることもある。これは、4本の吊り棒の内、後方に配置された2本の吊り棒を駆動部によって上方に移動させることで洗濯兼脱水槽1を傾斜させている。
【0016】
次に、動作について説明する。
洗濯工程およびすすぎ工程において攪拌翼が回転すると、洗濯兼脱水槽1内に投入された洗濯水は中央で渦流が発生し、洗濯水と共に洗濯物が回転する。この時、攪拌翼の裏羽根によって、洗濯兼脱水槽1内の底部3側の洗濯水は、洗濯兼脱水槽1内に配置された複数の水路本体10内にそれぞれ送り込まれ、正面板10aおよび一対の側壁10fと側板2とで形成される水路を経由し、水流誘導体11の流入口11aから入って流出口11bへ誘導され、吐出口10eから所定の角度で噴射される。
このとき、前述したように、洗濯機の洗濯兼脱水槽1は、垂直方向に懸架された洗濯機や、洗濯兼脱水槽1が前方に傾斜している洗濯機、洗濯物の量が少ない時や洗濯終了時に洗濯兼脱水槽1が前方に傾くようになっている洗濯機などがあり、これらそれぞれの場合で、吐出口10eから噴射される洗濯水の角度は異なってくる。
したがって、水流誘導体11を水路本体10とは別体かつ着脱可能とし、洗濯水の噴射角度を調整する流出口11bを前述したような様々なタイプの洗濯機に合わせて、吐出口10eから噴射される洗濯水を所定の角度になるような流入口11aを製作し、その洗濯機に合わせた流出口11bを備えた水流誘導体11を取り付けることで、どのようなタイプの洗濯機でも、渦流で回転している洗濯物に洗濯水を満遍なく当てることが可能になり、洗濯物を効率よく洗うことができる。
【0017】
また、水流誘導体11の流出口11bは、流入口11aよりも小さいので勢いよく噴射される。複数の吐出口10eから噴射された洗濯水は互いにぶつかることなく渦流を超え、水流によって回っている洗濯物に当たる。
【0018】
以上のように本実施の形態によれば、水路本体10により誘導された洗濯水を所定の角度で噴射させる水流誘導体11を、水路本体10と別体に構成し、その水路本体10に着脱可能に設けたので、洗濯兼脱水槽1の傾斜状態に合わせた洗濯水の噴射の角度を有する水流誘導体11を取り付けることが可能となり、どのような洗濯機であっても、洗濯物に満遍なく当てることが可能になり、洗濯物を効率よく洗うことができる。
また、水流誘導体11が設けられた水路本体10を洗濯兼脱水槽1の側板2に周方向に複数配置し、その複数の水流誘導体11の流出口11bから渦流を超える洗濯水がそれぞれ噴射されるようにしたので、渦流によって回転している洗濯物に満遍なく当てることが可能になり、洗濯物を効率よく洗うことができる。
【0019】
また、水流誘導体11は、水路本体10とは別体に構成され、水路本体10に着脱可能に取り付けられるようにしているので、水流誘導体11の製造時に、水流誘導体11の背面部11dに形成されるカーブ面の角度を変えることができ、そのため、流出口11bから噴射される洗濯水の角度を調整できる。
【0020】
なお、前記の実施の形態では、吐出口10eの高さ位置が同じ水路本体10を使用したが、吐出口10eの高さ位置が低い水路本体10も配置して洗濯水を噴射させるようにしてもよい。このように、吐出口10eの高さ位置の異なる水路本体10を使用した場合、より洗濯物に満遍なく当てることができ、洗濯物を効率よく洗うことができる。
【0021】
また、水流誘導体11の流出口11bから噴射される洗濯水の角度を一定として説明したが、噴射角度の異なる水流誘導体11をそれぞれ水路本体10に設けて洗濯物に噴射するようにしてもよい。このようにした場合も洗濯物に満遍なく当てることが可能になり、洗濯物を効率よく洗うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係る洗濯機の洗濯兼脱水槽に取り付けられた水路本体および水流誘導体の断面図である。
【図2】水路本体および水流誘導体の斜視図である。
【図3】水流誘導体を水路本体に取り付けて示す斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
1 洗濯兼脱水槽、2 側板、3 底部、4 段部、10 水路本体、10a 正面板、10b 天板、10c 傾斜板、10d 支持板、10e 吐出口、10f 側壁、
10g リブ、10h,10i ネジ取付部、11 水流誘導体、11a 流入口、
11b 流出口、11c 前面部、11d 背面部、11e 固定板、11f ネジ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽内に回転可能に配設された洗濯兼脱水槽と、
前記洗濯兼脱水槽の底部に回動自在に設けられた攪拌翼と、
上部に吐出口が設けられ、前記洗濯兼脱水槽の側板とで水路が形成され、前記攪拌翼の回転による前記洗濯兼脱水槽内の洗濯水を前記吐出口まで誘導するための水路本体と、
前記水路本体とは別体に構成され、前記水路本体の上部に着脱可能に設けられ、その水路本体により誘導された洗濯水を前記吐出口から所定の角度で噴射する水流誘導体とを備え、
前記水流誘導体が設けられた前記水路本体を前記洗濯兼脱水槽の側板に配置したことを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
前記水流誘導体は、流路に沿って吐出口まで断面積が除々に小さくなる形状とし、洗濯水を前記洗濯兼脱水槽の中央部よりも遠方へ届く角度で水平方向よりも上方へ向けて噴射することを特徴とする請求項1記載の洗濯機。
【請求項3】
前記水流誘導体が設けられた前記水路本体を前記洗濯兼脱水槽の側板に周方向に複数配置したことを特徴とする請求項1又は2記載の洗濯機。
【請求項4】
前記水路本体に設けられた吐出口の高さ位置が異なっていることを特徴とする請求項3記載の洗濯機。
【請求項5】
前記水流誘導体は、前記水路本体の吐出口から噴射する洗濯水の角度がそれぞれ異なっていることを特徴とする請求項3又は4記載の洗濯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−161535(P2008−161535A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−355990(P2006−355990)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000004422)日本建鐵株式会社 (152)
【Fターム(参考)】