説明

洗濯機

【課題】洗浄性能の向上を図ることができるとともに、洗いむらを抑制することができる洗濯機を提供する。
【解決手段】洗濯および脱水を可能とした洗濯兼脱水槽15について、その胴壁部15bの内面に、複数の槽凸部18を設けた。この槽凸部18は、洗濯兼脱水槽15の軸方向に対して垂直な第1の断面が三角状をなし、第1の断面と直交して洗濯兼脱水槽15の軸方向に沿った第2の断面が円弧状に形成されている。このため、洗濯運転時において、槽凸部18の角状の部分で洗濯物に有効な機械力を伝えて洗浄力を補強することができる。また、この槽凸部18は軸方向に円弧状に形成されているため、洗濯運転時に洗濯物の上下の入れ換わりを円滑に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯および脱水を行なう洗濯兼脱水槽を備えた洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、上記洗濯機は、例えば周知のように貯水可能な水槽内に洗濯兼脱水槽が回転可能に設けられ、その洗濯兼脱水槽の周壁に多数の脱水孔を有し、内方下部に撹拌体を回転可能に備えている。そして、洗濯兼脱水槽の内面に槽凸部を設けることで、洗浄性能の向上を図る構成としている。この槽凸部の形状としては、洗濯兼脱水槽の内面に多数設けられた比較的径小な半球状のものがある。このものでは、洗濯運転の際、洗濯物が半球状の槽凸部に当たることにより機械力が付与されるが、洗浄性能を上げる効果は、充分と言えるものではなかった。
【0003】
そこで、洗濯兼脱水槽の胴壁部に断面山形状の槽凸部を形成し、該槽凸部の角(かど)部を利用して洗濯運転時において洗濯物に洗浄に有効な機械力を与えるようにした洗濯機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この洗濯機では、槽凸部の上半部が洗濯兼脱水槽の回転方向に向かって前傾し、槽凸部の下半部が略垂直方向に延びるように形成されている。このため、洗濯運転時には槽凸部の略垂直となす下半部が洗濯物に有効な機械力を付与し、また、脱水運転時には洗濯兼脱水槽の回転に伴い槽凸部の前傾する上半部にて槽内に空気を効率よく取り込むことができ、洗浄性能と脱水性能の向上を図ることができる。
【特許文献1】特開2005−348943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
洗濯運転にあっては、周知の如く水槽および洗濯兼脱水槽内に給水し、撹拌体の正逆回転駆動により洗濯物を洗浄する。従って、撹拌体から離間した洗濯槽内上部は下方に比し洗浄度が劣るため、洗濯物の上下の入れ換えを盛んにして洗いむらを抑制するのが好ましい。ところが、特許文献1の洗濯機は、槽凸部が断面山形状をなしその上半部が前傾した形状をなすので、洗濯運転時における洗濯物の上下反転に適したものでなかった。つまり、槽凸部の角部は、洗濯物が当たることで洗浄に有効な機械力を付与しうるが、その反面、洗濯物の上下の入れ換えに対して妨げとなる惧れがあるのである。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、槽凸部の形状を工夫することにより、洗浄性能の向上を図ることができるとともに、洗いむらを抑制することができる洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の洗濯機は、洗濯物を収容する洗濯兼脱水槽を備え、前記洗濯兼脱水槽の円筒状胴壁部の内面に複数の槽凸部を設けたものであって、前記槽凸部は、前記洗濯兼脱水槽の軸方向に対して垂直な第1の断面が角状をなし、前記第1の断面と直交して前記洗濯兼脱水槽の前記軸方向に沿った第2の断面が角部の無い曲線状に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上記手段によれば、洗濯運転時には槽凸部の角状の部分で洗濯物に有効な機械力を伝えて洗浄力を補強することができる。また、この槽凸部は軸方向に角部の無い曲線状に形成されているため、洗濯運転時に洗濯物の上下の入れ換わりを円滑に行うことができ、洗いむらを抑制することができる洗濯機を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
<第1実施例>
以下、本発明の洗濯機を乾燥機能付洗濯機に適用した第1実施例につき、図1〜図5を参照して説明する。図1は上記洗濯機の全体構成を示す縦断面図である。この洗濯機の外郭を形成する本体1は、矩形箱状の外箱2と、この上面に被着されたトップカバー3とから構成されている。外箱2は上下面とも開口しており、外箱2内に、上面を開口した有底円筒状の水槽4が弾性支持機構5を介して設けられている。
【0009】
この水槽4は無孔状で貯水可能に構成されており、水槽4の底部の排水口6には、排水弁7を介して排水ホース8が接続されている。そして水槽4の上面には、その開口を閉塞する円板状の槽カバー9が気密的に被着されている。この槽カバー9の略中央部には、洗濯物の出し入れを可能とすべく、内蓋9aが開閉可能に設けられている。また、水槽4の外側(図1中、右側)に隣接する部位には、上下方向に延びる中空の通気路10が一体成型されている。
【0010】
この通気路10は、水槽4の下部にて連通し、水槽4の上端部と略同等高さ位置まで延出された上端を開口し、且つ水槽4の周壁を兼ねる仕切壁11を有して構成されている。通気路10の上端開口部には、本体1内方側へ通気路10の排気を方向変換する通気ガイド13が接続されている。尚、この通気ガイド13の先端開口部にはフィルター14が装着されている。また、前記仕切壁11の上端部には、通気路10内に下部から侵入した泡(洗い運転等における洗剤による発泡)を水槽4内に還流させるための切欠部11aが設けられている。
【0011】
上記水槽4の内部には、洗濯兼脱水槽15が垂直軸周りの所謂縦軸回転可能に設けられている。この洗濯兼脱水槽15は、上面を開口した有底円筒状をなし、椀状の底壁部15aと円筒状胴壁部(以下、胴壁部15bと略す)とを備えている。
【0012】
胴壁部15bは、金属光沢を有する金属板として例えばステンレス鋼板からなる。詳しくは後述するように、胴壁部15bは、通水孔及び通気孔として形成された複数の脱水孔16と、プレス加工により成形された複数の槽凸部18とを有する。この胴壁部15bは、前記ステンレス鋼板を円形に巻き両側の端面を突合わせて溶接することにより全体として円筒状に形成されている。この場合、溶接に代えて、ステンレス鋼板の両側の端部をかしめにより結合してもよい。底壁部15aは合成樹脂材料からなり、その中央部には開口部17が形成されている。底壁部15aの外周壁部に、胴壁部15bの下部がラップした状態でかしめ及びねじ止めにより結合されるようになっている。
【0013】
洗濯兼脱水槽15の上面開口にはバランスリング19が装着され、洗濯兼脱水槽15の内底部には径大な撹拌体20が回転可能に設けられている。この撹拌体20には、上面に形成した放射状の撹拌凸部21を避けた位置に、上下方向に貫通する複数の透孔20aが形成されている。尚、底壁部15a内面には、撹拌体20の外周囲に位置して放射状配置のリブ15cが複数突設されている。また、本実施例の洗濯兼脱水槽15は、洗濯槽、脱水槽及び乾燥槽としても機能する。
【0014】
前記水槽4の外底部には、洗濯兼脱水槽15および撹拌体20を回転駆動する駆動機構22が設けられている。この駆動機構22は、例えばアウタロータ形モータと該モータの回転を洗濯兼脱水槽15及び撹拌体20に選択的に伝達するクラッチとから構成されている。この駆動機構22によって、洗いやすすぎ行程では撹拌体20のみが回転駆動され、脱水や乾燥行程では撹拌体20と共に洗濯兼脱水槽15が回転駆動されるようになっている。
【0015】
一方、前記トップカバー3には、その略中央部に洗濯物を出し入れする投入口3aが形成されると共に、この投入口3aを開閉すべく外蓋23が回動自在に取付けられている。この外蓋23は例えば二つ折り構成とされ、その周側部に複数の切欠部23aを有していて、閉鎖状態の外蓋23とトップカバー3の表面との間に隙間を形成し所謂本体1内外の通気性を確保している。そして、トップカバー3の突出した後部には、温風生成ユニット24や図示しない給水装置等を配設している。
【0016】
温風生成ユニット24は送風機25及びヒータ26を具備し、送風機25は、後面に吸気口27を有するケーシング28と、このケーシング28内に収容されたファン29aと、このファン29aを回転駆動するファンモータ29bとから構成されている。また、ヒータ26は、例えばPTCヒータからなりケーシング28内の前端部で前記送風機25の下流側に位置して設けられている。そして、ケーシング28の前端部と槽カバー9の後部の通気口(図示せず)との間は、蛇腹状の給気ダクト30により連通接続されている。また、トップカバー3の後端部にはフィルター装置31が配設されており、外気は、フィルター装置31を介して吸気口27から取り込まれ、温風生成ユニット24を経て水槽4および洗濯兼脱水槽15内へ供給される。尚、トップカバー3の前部上面には、図示しないスタートスイッチや各種の運転コース等を設定する操作キー等を備えた周知の操作パネル32が設けられ、該パネル32の背面側には運転制御用の制御装置33が配設されている。
【0017】
ここで、前記した槽凸部18及び脱水孔16の具体形状や設置条件につき、図2〜図5を参照して詳述する。まず図2は槽凸部18及び脱水孔16の配置構成を示し、図3は同拡大図を示している。また、図5(a)、(b)及び(c)は図3中A−A線、B−B線及びC−C線に沿う断面図を夫々示している。そして、図4は槽凸部18の拡大斜視図を示している。
【0018】
槽凸部18は、全体として図4に示すような略半割そろばん玉状をなし、洗濯兼脱水槽15の径方向(図4、図5における矢印D1方向)から見て例えば菱形などの四角状(図2、3参照)に形成されている。詳細には図3に示すように、槽凸部18の輪郭は、例えば径方向から見て全ての辺の長さLcが等しく且つ全ての角が直角である正方形状をなす。また、槽凸部18は、前述したプレス成形により径方向内側に窪んでおり、洗濯兼脱水槽15の中心軸線O(図1参照、つまり軸方向)に対して垂直な第1の断面が角状をなし、第1の断面と直交して軸方向に沿った第2の断面が角部の無い曲線状に形成されている。本実施例では、例えば、槽凸部18の横断面たる第1の断面が図5(b)に示すような三角状(山形状)をなし、縦断面たる第2の断面が図5(a)に示すような円弧状に形成されている。また、槽凸部18の稜線18aは垂直方向を指向し、従って軸方向における槽凸部18の寸法と、洗濯兼脱水槽15の周方向における槽凸部18の寸法とが略同一になるように設定されている。上記の形状をなす槽凸部18は、その金属光沢と相俟って所謂ダイヤモンドのような外観を呈するものとして観察される。
【0019】
この槽凸部18は軸方向に列をなすよう複数(例えば4個)並べて配設されると共に、この槽凸部18の列が周方向に複数配設されている。この場合、槽凸部18は比較的、密なピッチで配置されており、図3に示すように軸方向のピッチPaと周方向のピッチPcは略同じ値に設定されている(Pa≒Pc)。また、槽凸部18の列は、周方向に隣合う槽凸部18が互いに軸方向にずれている。このずれ量は、軸方向のピッチPaの略半分の値(Pa/2)に設定されており、槽凸部18の列の間にジグザグ状の間隙が形成されている。この間隙は、換言すると胴壁部15bで槽凸部18の形成されていない平坦部34において周方向に隣合う槽凸部18間の幅寸法Lfであり、槽凸部18の一辺の長さLcよりも短くなっている(Lf<Lc)。
【0020】
一方、脱水孔16は、胴壁部15bにおいて、槽凸部18の列の中間に位置して配設されている。従って、図2に示すように、脱水孔16は、一点鎖線で示すジグザグ状に延びる平坦部34の中心線に沿って列Lをなし、その脱水孔16の列Lが、槽凸部18の列の間に位置して周方向に複数配設されている。従って、脱水孔16の周方向のピッチ(図2に、その平均をPcで示す)は、槽凸部18と同様に密なものとなる。また、脱水孔16は、軸方向に比較的密なピッチPa(図3参照)で配置され、脱水孔16の列Lは、周方向に隣り合う脱水孔16が互いに軸方向にずれている。このずれ量は、前記ピッチPaの略半分の値(Pa/2)に設定されている。
【0021】
尚、脱水孔16の周縁部は、バーリング加工によって図5(c)に示すように径方向外側に突出している。また、詳しい説明は省略するが、胴壁部15bには、リントを捕集するためのフィルタ機構(図示せず)等が設けられることから、槽凸部18及び脱水孔16を形成しない非形成部分がある。このため、槽凸部18及び脱水孔16は、非形成部分を周方向に挟んだ3つの領域において成形されるのであり、図2はその3つの領域のうちの1つを例示するものである。つまり、槽凸部18及び脱水孔16の個数や形状は図面のものに限定するものではなく、これらのピッチPa,Pc及びPa,Pcも含め適宜変更してもよい。また、上記「略半分」は「半分」を包含するものであり、槽凸部18の前記ずれ量をピッチPaの丁度半分の値に設定してもよい。これと同様に、脱水孔16のずれ量もピッチPaの丁度半分の値に設定してもよい。
【0022】
次に、上記構成の洗濯機の作用について説明する。まず、洗濯行程における洗いやすすぎ運転では周知の如く水槽4および洗濯兼脱水槽15内に所定水位まで給水された後、撹拌体20が正逆回転駆動され、図示しない洗濯物を洗浄する。しかるに、例えば洗い運転において水流とともに移動する洗濯物は、内面に突出した槽凸部18と当接して機械的な作用を受け、該槽凸部18は洗浄力向上に寄与する。
【0023】
この場合、横断面角状をなす槽凸部18は、左右いずれの方向に回動する水流に対しても、比較的大きな抵抗として作用する。また、槽凸部18の列は、周方向に隣合う槽凸部18が互いに軸方向にピッチPaの略半分ずれた位置にあるので、水流と共に移動する洗濯物に対し確実且つ効果的に当接して大きな機械的作用を得ることができる。
【0024】
勿論、下方においては径大な撹拌体20の特に上面の撹拌凸部21は、その回転により洗濯水流の生成のみならず洗濯物と直接接触して機械的作用を与え、洗浄性能の向上に寄与する。この洗い運転において、縦断面円弧状をなす槽凸部18は水流や洗濯物に対する上下方向(軸方向)の抵抗が小さいため、洗濯物の上下の入れ換わりが盛んに行われ、洗いむらが抑制される。
【0025】
次いで、上記洗濯行程後に続いて行なう乾燥行程につき説明する。この乾燥行程では、例えば初期に脱水運転を主として行ない、その後に乾燥運転を行なうようにしている。すなわち、脱水運転では撹拌体20と共に洗濯兼脱水槽15を高速回転させ(例えば、900rpm)、洗濯物の遠心脱水を行ない、水分をできるだけ除去するようにしている。このときは、温風生成ユニット24を構成するうちのヒータ26への通電はなく、送風機25のみ通電駆動される。これは、洗濯後の多量に水分を含んだ状態では洗濯物に対し加熱する効果が少ないので、無駄な熱エネルギーの浪費を抑えているのである。
【0026】
ここで、ケーシング28内に取り込まれた外気は、図1中に示す破線矢印方向への経路を辿って流れる。即ち、外気たる冷風は、給気ダクト30から水槽4および洗濯兼脱水槽15内に供給され、洗濯物と接触して乾燥作用に寄与した後、開口部17や脱水孔16等を経て水槽4側に移動する。この場合、水槽4は内蓋9aが閉鎖状態にある槽カバー9にて略密閉状態に維持されること、及び洗濯兼脱水槽15の回転に伴ない、その外周の水槽4との間が負圧となり該洗濯兼脱水槽15の上端開口から空気を吸引する作用も相俟って、冷風は脱水孔16等を経て水槽4側に速やかに移動し、水槽4下部の連通口12から通気路10内に至り、上昇して通気ガイド13のフィルター14から槽外に排出される。しかる後、閉鎖状態の外蓋23の切欠部23aから本体1外に排出され、或いは一部は外箱2の下端開口から本体1外に排出される。
【0027】
この脱水運転において、洗濯物から遠心脱水された水は、槽凸部18の傾斜面を伝って平坦部34に集まり脱水孔16から効果的に放出される。つまり、槽凸部18は、平坦部34の幅寸法Lfが槽凸部18の一辺の長さLcよりも短くなるように密なピッチで配置されているので、遠心脱水された水が平坦部34に集中し易い。また、脱水孔16の列Lは、周方向に隣り合う脱水孔16が互いに軸方向にピッチPaの略半分ずれた位置にあり、平坦部34にまんべんなく配されているので、効率よく脱水孔16から排水(脱水)される。この場合、脱水孔16から放出される水は、水槽4の内面側にくまなく均一に当たるようになるので、水槽4内面に対する洗浄効果が向上する。
【0028】
そして、洗濯兼脱水槽15内では、洗濯物が遠心作用を受けて胴壁部15b側に移動した状態にあり、従って中央部が空洞となるドーナツ状を呈した洗濯物に対して有効な脱水作用が行なわれる。この点、胴壁部15bに比較的密なピッチで槽凸部18が設けられているため、洗濯物の胴壁部15bに対する張り付きが抑制され、洗濯物と胴壁部15b(特に平坦部34)との間に隙間を生じ得ることとなる。よって、洗濯兼脱水槽15内に給気される空気が脱水孔16を通して放出される際に、洗濯物に対する冷風との接触が良好となる。また、平坦部34に脱水孔16がまんべんなく配されているので、脱水むらを抑え総じて全体の脱水効率が向上する。
【0029】
こうして、脱水運転が所定時間行なわれ洗濯物からの水分が充分に除去されると、ヒータ26が通電発熱して外気が温風化されるとともに、洗濯兼脱水槽15は低速回転に制御され(例えば、400rpm)、所謂温風供給による本来の乾燥運転が開始される。この場合の温風の流れは、上記脱水運転の場合と実質的に同じ経路を辿り洗濯物との接触が行なわれ、加熱に伴ないより効果的に水分を奪う乾燥作用が進行する。この乾燥運転でも洗濯物は遠心力を受けて胴壁部15b側に移動した状態にあるが、上記脱水運転の冷風と同様に、前記温風は乾燥作用に充分に寄与することになり、その後に水槽4側に放出され、通気路10を経て槽外に排出された後、本体1外に排出される。尚、上記脱水運転を含む乾燥行程において、乾燥効率を向上すべく例えば、洗濯兼脱水槽15を随時一時的に休止し、その間に撹拌体20のみを回転駆動して胴壁部15b側に移動した状態の洗濯物をほぐすなどの手段を採用してもよい。この場合、乾燥運転では低速回転ではあるが、洗濯物が遠心作用を受けて周側に移動し、やはりドーナツ状に配置されて上記態様にて乾燥作用が促進される。
【0030】
そして、斯かる温風による乾燥運転が所定時間行なわれると、ヒータ26が断電して冷風(外気)による仕上げ運転が所定時間行なわれ、洗濯物を冷やした仕上げ状態にして、一連の乾燥行程を終え全行程を終了する。
【0031】
この後、洗濯兼脱水槽15の洗濯物を取り出す場合、前述のように槽凸部18によって、洗濯物の胴壁部15bに対する張り付きが抑制され、洗濯物が胴壁部15bに張り付いていても容易に剥がすことができる。また、槽凸部18は縦断面円弧状をなし上下方向(軸方向)の抵抗が小さいため、洗濯物の出し入れをスムーズに行うことができる。尚、上記実施例では洗濯行程および乾燥行程を自動的に続いて実行される運転コースにつき説明したが、乾燥行程のみ実行する運転コースを設定しても、何ら支障なく上記した乾燥運転と同様の作用をなすことはもとより、洗濯行程の中で洗いとすすぎとの間で行なわれる中間脱水を行なう場合にあっても、上記したうちの脱水運転と同様の作用を奏することは言うまでもない。
【0032】
上記した実施例によれば、次のような効果を得ることができる。
洗濯兼脱水槽15の胴壁部15bの内面に複数の槽凸部18を設け、この槽凸部18について、洗濯兼脱水槽15の軸方向に対して垂直な第1の断面を角状に形成し、この第1の断面と直交する第2の断面を角部の無い曲線状に形成した。これによれば、洗濯兼脱水槽15内の水流や洗濯物に対して槽凸部18が周方向へ比較的大きな抵抗として作用するので、槽凸部18の角状の部分で洗濯物に有効な機械力を伝えて洗浄力を補強することができる。これに対し、第2の断面は角部の無い曲線状をなし、槽凸部18の軸方向(上下方向)の抵抗は極力小さなものとなるので、洗濯物の出し入れをスムーズに行うことができるとともに、洗濯運転時には洗濯物の上下の入れ換わりを円滑に行うことができる。これにより、洗いむらが抑制され、総じて洗浄性能の高い洗濯機を提供することができる。また、上記構成によれば、脱水運転や乾燥運転時における洗濯物の胴壁部15bに対する張り付きを抑制することができ、脱水性能及び乾燥性能の向上が期待できる。つまり、脱水や乾燥運転時に洗濯物は胴壁部15b側に移動した状態にあるが、槽凸部18によって、洗濯物が胴壁部15bに張り付き難く、特に洗濯物と平坦部34との間に隙間を生じ易くなるので、洗濯物に対する空気(冷風及び温風)との接触を良好にすることができるのである。
【0033】
こうした効果は、槽凸部18について第1の断面を三角状とし第2の断面を円弧状にしても充分に発揮される。つまり、この形状は、比較的簡単な構造でありながら、軸方向の抵抗を小さくしつつ周方向の抵抗を大きくすることができる。
【0034】
槽凸部18を軸方向に列をなすよう複数並べて配設し、この槽凸部18の列を周方向に複数配設したので、胴壁部15bの内面全体に槽凸部18をまんべんなく配値することができ、胴壁部15b全体において上記の効果を高めることができる。また、槽凸部18の列を、周方向に隣合う槽凸部18が互いに軸方向にピッチPaの略半分ずれるように設けた。これによれば、水量(水位)や洗濯物の量(上下位置)に係わりなく、槽凸部18に洗濯物を確実に当接させることができる効果的な配置構成とすることができ、洗浄力をより向上させることができる。
【0035】
槽凸部18の列の間にジグザグ状の間隙が形成されるように槽凸部18を密なピッチで配置し、胴壁部15bに、槽凸部18間に位置して脱水孔16を設けた。これによれば、脱水運転(乾燥運転)時において洗濯物が胴壁部15bに張り付くのをより効果的に抑制することができる。また、遠心脱水された水が槽凸部18の傾斜面を伝って平坦部34に集中し易くなり、その集中した水を脱水孔16から効果的に放出することができ、脱水性能をより向上させることができる。更に、洗濯物と胴壁部15bの平坦部34との間により隙間を生じ易くなるので、洗濯物に対する空気の接触を良好にすることができ、脱水性能及び乾燥性能をより高めることができる。
【0036】
この場合、槽凸部18を、径方向から見て四角状に形成し、且つ隣り合う槽凸部18間の間隙が槽凸部の一辺の長さLcよりも短くなるように密なピッチで配置することで、洗浄性能および脱水等による水分の除去から乾燥に至るまでのそれぞれの性能を大幅に改善できる。
【0037】
また、胴壁部15bに、槽凸部18間に位置して軸方向に列Lをなす複数の脱水孔16を設け、この脱水孔16の列Lを周方向に複数配設したので、平坦部34に脱水孔16をまんべんなく配置することができ、効率よく脱水孔16から排水することができる。しかも、脱水孔16の列Lを、周方向に隣り合う脱水孔16が互いに軸方向にピッチPaの略半分ずれるように設けたので、脱水孔16からより効率よく排水することができる。また、これにより、脱水孔16が胴壁部15bの略全体に亙って均一に配置されるため、脱水運転および乾燥運転時に、胴壁部15bの略全周に亙ってむらのない空気の流れを形成することができ、洗濯物の脱水むらや乾燥むらを極力抑えて良好な仕上り効果が期待できる。更には、脱水運転時に脱水孔16から放出される水が、水槽4の内面側にくまなく均一に当たるようになるので、水槽4内面に対する洗浄効果を高め、手間をかけずに水槽4を清潔に保つことができる。
【0038】
洗濯兼脱水槽15の軸方向における槽凸部18の寸法と、周方向における槽凸部18の寸法とが略同一になるように設定した。これによれば、上記したように複数の槽凸部18を等間隔で配置する等して外観意匠性を高めることができる。即ち、胴壁部15bは金属光沢を有するステンレス鋼板からなり、槽凸部18をプレス加工により成形したので、その金属光沢を利用して見映えを向上させることができる。しかも、上記の形態(形状及び配置)をなす槽凸部18は、夫々の光の反射(乃至金属光沢)と相俟って整然と配列された所謂ダイヤモンドのような外観を呈するので、洗濯兼脱水槽15内を綺麗で斬新な外観にすることができる。また、胴壁部15bを一枚のステンレス鋼板から構成し、槽凸部18を別部材を用いることなくプレス加工により簡単に成形することができるとともに、前記プレス加工と同じ工程で脱水孔16のバーリング加工を施すことができるので、製造コストを極力低減させることができる。
【0039】
図6及び図7は、第2実施例及び第3実施例を示すものであり、上記実施例と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、以下異なる点につき説明する。
<第2実施例>
図6は図2相当図で、この槽凸部18の形状等は上記実施例と共通であるのに対し、槽凸部18の配置を一部異ならせたものである。即ち、第2実施例の槽凸部18は、周方向に隣り合う槽凸部18間で軸方向にずれが無く、周方向と軸方向とに均一に並べられている。従って、本実施例の脱水孔16の列は、図6にL1で示されるように直線状に列をなしている。尚、周方向に隣り合う脱水孔16が互いに軸方向にずれている点などは、第1実施例と同様である。
斯かる構成によれば、胴壁部15bの内面に、槽凸部18を周方向と軸方向とに整然と並べて配置することができ、洗濯兼脱水槽15内の見映えを良くすることができる。
【0040】
<第3実施例>
次いで図7は図3相当図で、本実施例の槽凸部35は、その形状について上記実施例と異にする。即ち、上記実施例の槽凸部18は、輪郭が洗濯兼脱水槽15の径方向から見て正方形状をなし、その対角線が軸方向(或は周方向)を指向するように形成されているが、本実施例の槽凸部35は、輪郭が径方向から見て正方形状をなし且つその各辺が軸方向(或は周方向)を指向するように形成されている。もっとも、槽凸部35は、第1の断面が三角状をなし第2の断面が円弧状に形成されている点、その稜線35aが垂直方向を指向する点など、上記実施例と同様に構成されている。また、槽凸部35の列の間に形成されたジグザグ状の間隙において、平坦部36の幅寸法Lf´は、上記実施例と同様、槽凸部35の一辺の長さLc´よりも短くなっている(Lf´<Lc´)。尚、脱水孔16は、一点鎖線で示すジグザグ状に延びる平坦部36の中心線に沿って列L2をなし、その脱水孔16の列L2が周方向に複数配設されている。脱水孔16の列L2は、周方向に隣合う脱水孔16が互いに軸方向にずれている。このずれ量は、脱水孔16の軸方向のピッチPa´の略半分の値(ピッチPa´/2)に設定されている。
【0041】
従って、洗濯、脱水および乾燥運転において、本実施例でも上記実施例と略同様の作用効果を期待できる。
本発明は、上記し且つ図面に示した実施例に限定されることなく種々変更して実施できるもので、例えば略水平軸周りの所謂横軸回転可能な洗濯兼脱水槽(回転槽)を備えたドラム式洗濯乾燥機にも適用できるものである。勿論、上記実施例では乾燥機能付洗濯機として温風生成ユニットを設けたが乾燥機能を有しない洗濯機にも広く適用できることは言うまでもない。
【0042】
また、槽凸部18,35を、胴壁部15bとは別の部材(例えば合成樹脂材料)から構成することで、胴壁部15bとは別の色調、光沢等を得て見栄えを向上させることができるとともに、外観意匠上のバリエーションを得ることができる。この場合、槽凸部の胴壁部15bに対する取付け手段は、胴壁部15bに外面側から貫通して槽凸部に螺挿される螺子を用いた構成としてもよいし、槽凸部に嵌合爪を一体成形し且つ胴壁部15bに前記嵌合爪と嵌合する嵌合部を形成することで部品点数の増加を抑えるようにした構成にしてもよい。
【0043】
槽凸部18,35の第2の断面を、図示したものより「なだらかな」曲線状にする等、槽凸部18,35の曲率を含めた形状も適宜変更してもよい。例えば、図8は本発明の変形例を示すものであり、この槽凸部37は、第1実施例の槽凸部18とは以下の点で相違する。即ち、槽凸部37の第2の断面(図8(a)参照)は、第1実施例の槽凸部18(図5(a)参照)に比し曲率が小さな円弧状に形成されている。更に、図8に示すように、槽凸部37は、その輪郭をなす外縁部の部分に比較的小さな段部37bが設けられた段付状をなし、この段部37bにRが施されている。段部37bの段差は、槽凸部37の突出寸法Hに比し小さな寸法(例えば1mm位)に設定され、且つ槽凸部37全体を若干、径方向内側へ突出(隆起)させるように設けられている。従って、この段部37bによって、槽凸部37の輪郭を際立たせることができ、外観意匠性をより高めることができる。また、段部37bの段差を比較的小さな値に設定しており、槽凸部18の第2の断面は、依然として全体が略円弧状をなす。このため、軸方向の抵抗を極力小さくすることができ、洗濯物の出し入れをスムーズに行うことができる等、第1実施例と略同様の効果を得ることができる。
【0044】
その他、実施に際し本発明の要旨を逸脱しない範囲で具体的に種々変更して実施できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明を乾燥機能付洗濯機に適用した第1実施例を示す全体構成の断面図
【図2】要部の具体的配置構成を示す図
【図3】同拡大図
【図4】槽凸部の拡大斜視図
【図5】(a)、(b)及び(c)は、図3中A−A線、B−B線及びC−C線に沿う断面図
【図6】第2実施例を示す図2相当図
【図7】第3実施例を示す図3相当図
【図8】(a)及び(b)は、本発明の変形例を示す図5(a)及び(b)相当図
【符号の説明】
【0046】
図面中、15は洗濯兼脱水槽、15bは胴壁部(円筒状胴壁部)、16は脱水孔、18,35,37は槽凸部を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯物を収容する洗濯兼脱水槽を備え、前記洗濯兼脱水槽の円筒状胴壁部の内面に複数の槽凸部を設けたものであって、
前記槽凸部は、前記洗濯兼脱水槽の軸方向に対して垂直な第1の断面が角状をなし、前記第1の断面と直交して前記洗濯兼脱水槽の前記軸方向に沿った第2の断面が角部の無い曲線状に形成されていることを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
槽凸部は、第1の断面が三角状をなし、第2の断面が円弧状をなすことを特徴とする請求項1記載の洗濯機。
【請求項3】
洗濯兼脱水槽の軸方向における槽凸部の寸法と、前記洗濯兼脱水槽の周方向における槽凸部の寸法とが略同一になるように設定されていることを特徴とする請求項1または2記載の洗濯機。
【請求項4】
槽凸部は軸方向に列をなすよう複数並べて配設されると共に、
この槽凸部の列は周方向に複数配設され、且つ周方向に隣り合う前記槽凸部が互いに軸方向にずれていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の洗濯機。
【請求項5】
槽凸部の列の間にジグザグ状の間隙が形成されるように前記槽凸部を密なピッチで配置し、
前記洗濯兼脱水槽の胴壁部に、前記槽凸部間に位置して脱水孔を設けたことを特徴とする請求項4記載の洗濯機。
【請求項6】
槽凸部を、洗濯兼脱水槽の径方向から見て四角状に形成し、且つ隣り合う前記槽凸部間の間隙が当該槽凸部の一辺の長さよりも短くなるように密なピッチで配置し、
前記洗濯兼脱水槽の胴壁部に、前記槽凸部間に位置して脱水孔を設けたことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の洗濯機。
【請求項7】
洗濯兼脱水槽の胴壁部に、槽凸部間に位置して軸方向に列をなす複数の脱水孔を設け、
この脱水孔の列は周方向に複数配設され、且つ周方向に隣り合う前記脱水孔が互いに軸方向にずれていることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の洗濯機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−213772(P2009−213772A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62679(P2008−62679)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】