説明

洗濯機

【課題】水の溶解成分を吸着する水処理装置を備えた洗濯機を提供する。
【解決手段】洗濯機は、水に溶解しているイオンを吸着するイオン交換体と、表裏に極性の異なる前記イオン交換体を配置し水を解離して前記イオン交換体に吸着したイオンを脱離するイオン交換膜と、前記イオン交換膜に電圧を印加する少なくとも2つの電極と、前記電極に電圧を供給する電圧制御手段とを有する水処理装置と、洗濯槽と、前記洗濯槽に給水する給水手段と、前記洗濯槽の水を排水する排水手段とを有し、前記水処理装置が前記給水手段から前記洗濯槽に給水する水に溶解しているイオンを前記イオン交換体により吸着するさいは、前記電極間に水の分解電圧未満の電圧を印加することで、水中のイオンが除去された処理水は水の電気分解ガスを含むことがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水に溶解しているイオンを除去する水処理装置を備えた洗濯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の洗濯機は、図3に示すような構成であった(例えば、特許文献1参照)。以下、その構成、動作について説明する。
【0003】
電解槽21中に電極22が隔膜23を介して対向して配置され、それぞれの電極22に電源24に接続され陽極、陰極を形成している。軟水化を行うさいは、電解槽21に、水を導入し、電源24により両電極間に電圧を印加する。水中に溶解しているカルシウムやマグネシウム等の陽イオンは、隔膜23を通過して陰極室へ移動する。洗濯は、水中に溶解していたカルシウムやマグネシウム等の陽イオンが減少した陽極室内の水を用いて行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3154765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の構成では、軟水化するさいに電気透析を行っており、水に電圧を印加しているが、印加電圧を適切に制御していないため処理水は水が電気分解して発生する水素ガスおよび酸素ガスを含む。処理水に溶け込んでいたガスは、やがて成長して気泡となり、処理水を導く流路の引き回しによっては流路やまた洗濯槽にガス溜まりができる可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明の洗濯機は、水に溶解しているイオンを吸着するイオン交換体と、表裏に極性の異なる前記イオン交換体を配置し水を解離して前記イオン交換体に吸着したイオンを脱離するイオン交換膜と、前記イオン交換膜に電圧を印加する少なくとも2つの電極と、前記電極に電圧を供給する電圧制御手段とを有する水処理装置と、洗濯槽と、前記洗濯槽に給水する給水手段と、前記洗濯槽の水を排水する排水手段とを有し、前記水処理装置が前記給水手段から前記洗濯槽に給水する水に溶解しているイオンを前記イオン交換体により吸着するさいは、前記電極間に水の分解電圧未満の電圧を印加するものである。
【0007】
これによって、水中のイオンが吸着され軟水となった処理水を得るさい、水が電気分解してガスを発生することがないので、処理水は水の電気分解ガスを含んでおらず、処理水を導く流路やまた洗濯槽にガスが溜まる可能性がない。
【発明の効果】
【0008】
本発明の洗濯機は、水中のイオンを吸着し軟水となった処理水に水の電気分解ガスを含まないので、処理水の導く流路やまた洗濯槽にガスが溜まることが原理的になく、安全な製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施の形態における洗濯機の構成図
【図2】本発明の第1の実施の形態における水処理装置の構成図
【図3】従来の給湯機の構成図
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の発明は、洗濯機が、水に溶解しているイオンを吸着するイオン交換体と、表裏に極性の異なる前記イオン交換体を配置し水を解離して前記イオン交換体に吸着したイオンを脱離するイオン交換膜と、前記イオン交換膜に電圧を印加する少なくとも2つの電極と、前記電極に電圧を供給する電圧制御手段とを有する水処理装置と、洗濯槽と、前記洗濯槽に給水する給水手段と、前記洗濯槽の水を排水する排水手段とを有し、前記水処理装置が前記給水手段から前記洗濯槽に給水する水に溶解しているイオンを前記イオン交換体により吸着するさいは、前記電極間に水の分解電圧未満の電圧を印加することにより、水中のイオンが除去された処理水は水の電気分解ガスを含むことがなく、処理水を導く流路やまた洗濯槽にガスが溜まる可能性がない。
【0011】
第2の発明は、洗濯機が、水に溶解しているイオンを吸着するイオン交換体と、表裏に極性の異なる前記イオン交換体を配置し水を解離して前記イオン交換体に吸着したイオンを脱離するイオン交換膜と、前記イオン交換膜に電圧を印加する少なくとも2つの電極と、前記電極間に電圧を供給する電圧制御手段とを有する水処理装置と、洗濯槽と、前記洗濯槽に給水する給水手段と、前記洗濯槽の水を排水する排水手段とを有し、前記水処理装置が前記イオン交換体に吸着したイオンを脱離するさいは、前記電極間に水解離電圧以上の電圧を印加することにより、水を解離してHイオンとOHイオンを生成し、水中のイオンを吸着したイオン交換体を再生することができる。
【0012】
第3の発明は、特に、第2の発明の洗濯機の水処理装置が、イオン交換体に吸着したイオンを脱離するさいは、電極間に水の分解電圧未満の電圧を印加することにより、水中のイオンを吸着したイオン交換体を再生する再生水に水の電気分解ガスを含むことがなく、再生水を導く流路にガスが溜まる可能性がない。
【0013】
第4の発明は、特に、第2または3のいずれか1つの発明の洗濯機の水処理装置が、イオン交換体に吸着したイオンを脱離するさいは、前記水処理装置を経由した水が洗濯槽を経由せず、排水手段により機外へ排出することにより、排水に含まれる高濃度のイオンが洗濯槽等を通過せず迅速に排出されることから、洗濯機内に蓄積することがない。
【0014】
第5の発明は、特に、第1〜4のいずれか1つの発明の洗濯機が、水に含まれる不溶物を除去する粗ろ過手段を有し、水処理装置に流入する水を前記粗ろ過手段で処理することから、不溶物が水処理装置に堆積することがなく、水処理装置の長寿命化することができる。
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における構成図である。
【0017】
図1において、洗濯機は筐体1の内部に、洗濯槽2が回転自在に外槽3に収納されている。給水弁4に原水ラインが接続されており、原水ラインは、水道水、工業用水、地下水等の水源等から供給される。原水ラインの水は給水弁4、粗ろ過手段5を通り、水処理装置6に導かれる。水処理装置6により処理された水は、三方弁7により分岐され、一方は洗剤投入手段8を経由して洗濯槽2へ、一方は機外へ直接排出される。洗濯槽2の水は、
排水弁9により水処理装置6の排水流路と合流し機外に排出される。制御手段10は、筐体1内に収容されており、洗濯機の一連の動作および水処理装置6の制御を行う。
【0018】
図2は、本発明の第1の実施の形態における水処理装置6の構成図である。水処理装置6について、さらに詳しく説明する。水処理装置6は、対向する1組の電極11a、11bと、水に溶解している陽イオンを吸着する陽イオン交換体12と水に溶解している陰イオンを吸着する陰イオン交換体13とが、表裏に極性が異なるよう張り合わせたイオン交換膜から構成している。イオン交換膜は、電極11間に複数枚積層しており、平板状の対向した電極11間に平面上にイオン交換膜を積層、また、半径の異なる同心円柱状の対向した電極11間に同心円状や螺旋状にイオン交換膜を積層してもよい。イオン交換体はスチレンまたはジビニルベンゼンの重合体または共重合体高分子を基本骨格とし、陽イオン交換体12はスルホン酸基またはアクリル酸やメタクリル酸等のカルボン酸基を導入しており、陰イオン交換体13は第4級アンモニウム基または第1〜3級アミノ基を導入している。イオン交換体をイオン交換膜に成膜するさい、イオン交換体をポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性樹脂に混練分散させることで、膜の成形性が向上することができる。表裏に極性が異なるようイオン交換体を張り合わせたイオン交換膜は、バイポーラ膜と呼ばれ、電圧を印加することでイオン交換体の界面で水の解離が促進されるので、低電圧で水の解離を行うことができる。
【0019】
以上のように構成した洗濯機について、以下その動作、作用を説明する。
【0020】
洗濯機は、マイクロコンピューターを搭載した制御手段10により、給水弁4、三方弁7、排水弁9、洗濯槽2の回転を自動制御して洗濯工程およびすすぎ工程を行う。
【0021】
水処理装置6は、水中に溶解しているイオンをイオン交換体で吸着するさいと、イオン交換体に吸着したイオンを脱離するさいとで、動作が異なるので、まず、水処理装置6が水中のイオンをイオン交換体で吸着するさいについて説明する。
【0022】
水処理装置6が水中に溶解しているイオンを吸着するさいは、給水弁4を開放し、原水ラインの水が水処理装置6に流入する。水処理装置6により水中に溶解しているイオンが除去された浄水は洗剤投入手段8を経由して洗濯槽2に導かれる。また、一部の浄水は直接洗濯槽2に導かれる。所定時間、洗浄工程を行った後、排水弁9を開放して洗濯槽2の洗浄水を排水する。続いて、同様にして再度給水し、すすぎ工程を行う。
【0023】
ここで、水処理装置6の動作について詳しく説明する。水処理装置6では、水中に溶解した陽イオンCa、Mg、Na、Mn、Fe等の各イオンは陽イオン交換体12で水素イオンに、水中に溶解した陰イオンCl、炭酸、硫酸、硝酸等の各イオンは陰イオン交換体13で水酸化物イオンにイオン交換することで、水中に溶解している各種イオンをイオン交換体に吸着する。イオン交換体がイオンを吸着するさい、イオン交換膜の陽イオン交換体12側の電極11aを陽極、陰イオン交換体13側の電極11bを陰極となるよう電圧を印加することで、水処理装置6内のイオンがイオン交換体に移動するので、イオン交換体のイオン吸着速度を増加させることができる。そのさい、水分子が電気分解し水素分子と酸素分子を生成する水の理論分解電圧は1.226Vであるので、水の分解電圧未満の電圧を印加することで、水素ガスおよび酸素ガスが発生することなく水に溶解しているイオンをイオン交換体で効率的に吸着することができる。水処理装置6で水に溶解しているイオンを吸着することで、衣類を洗浄するさい洗剤の効果を高めることができ、洗浄力の向上、洗浄時間の短縮、省エネが可能となる。また、洗剤投入手段8や洗濯槽2に金属石鹸が生成することがないので、洗剤投入手段8や洗濯槽2を清浄に保つことができる。また、陰イオンによる腐食の促進等を防止することができる。また、pHの偏った水を処理した場合は、酸性の場合はアニオン種を水酸化物イオンに、塩基性の場合はカチオン種を
水素イオンに交換することで中性の水に近づけることができるので、水処理装置6により処理した水は、pHによる腐食を防止することができる。また、水の分解電圧未満の電圧を印加していることで、処理水は水の分解ガスを含有しておらず、洗濯槽2や排水経路に水の分解ガスが蓄積することがない。
【0024】
なお、水処理装置6で水に溶解しているイオンを吸着するさいに、電極11間に電圧を印加しなくてもよい。イオン交換体が水に溶解しているイオンを吸着する作用に変わりはなく、処理水に水の分解ガスを含有しない効果も変わらない。
【0025】
次に、水処理装置6がイオン交換体に吸着したイオンを脱離するさいの動作、作用を説明する。
【0026】
イオン交換体がイオンを脱離するさいは、原水ラインより給水弁4に導かれた水は、水処理装置6で処理された後、三方弁7で切換えられ筐体1より排出される。水処理装置6では、イオン交換膜の陽イオン交換体12側の電極11aを陰極、陰イオン交換体13側の電極11bを陽極となるよう電圧を印加する。水分子が水素イオンと水酸化物イオンに解離する水の理論解離電圧は0.828Vであるので、水の解離電圧以上の電圧を印加することでイオン交換膜の陽イオン交換体12と陰イオン交換体13の界面で水が解離し、イオン交換体に吸着したイオンと交換し脱離することでイオン交換体が再生する。印加電圧を水の分解電圧未満にすることで、処理水は水の分解ガスを含有しないので、洗濯機から排出する間の排水経路で水の分解ガスが成長して気泡となり溜まることを防止することができる。
【0027】
なお、排水流路の配管径を細くし排水流路を流れる排水の流速を十分に増加し排水流路内に気泡が滞留しないようにすることで、水の分解ガスが溜まることを防止することができる。水の分解ガスを確実に給湯機から排出できることから、水を解離しイオン交換体を再生するのに十分な電流、電圧を与えることができ、再生効率を向上することができるので、再生時間を短縮、再生排水を低減することができる。
【0028】
粗ろ過手段5について説明する。水処理装置6は、水に溶解しているイオンをイオン交換体で確実に吸着するため、イオン交換膜が近接した状態で積層することが望ましが、イオン交換膜の間が僅少であるため、不溶物が堆積する可能性がある。粗ろ過手段5の除去性能は、イオン交換膜の間隔と同様またはより細かな不溶物を除去することができるようにする必要がある。粗ろ過手段5は、糸巻きフィルタ、プリーツフィルタ、中空糸フィルタ等の精密ろ過(MF)により形成し、原水に含まれる砂や鉄さび等の不溶性物質をろ過除去する。配置場所は、粗ろ過手段5に原水ラインの水圧がかからない給水弁4の下流側に設置することが望ましい。なお、原水ラインの水に不溶物が多く存在し、給水弁4の開放/閉塞の動作に問題が起こるような場合は、給水弁4の上流側に設置してもよい。また、粗ろ過手段は水処理手段6に流入する水を処理することから、洗浄槽2へ導かれる水も粗ろ過手段5で処理することができるので、洗浄槽2を清浄に保つことができ、また、衣類を不溶物の汚染から防ぐことができる。
【0029】
なお、水処理装置6により処理された水を分岐するさい三方弁7を用いているが、流路の切換えは三方弁に限定されることはなく、流路の開閉を行う二方の電磁弁等を複数組み合わせても、流路の切換えを行うことができれば構わない。
【0030】
このように本発明の給湯機は、水に溶解しているイオンをイオン交換体で吸着、また、電圧を印加することで水を解離させ吸着したイオンを脱離しイオン交換体を再生することができる。交互に吸着脱離運転を行うことで、使用者はメンテナンスすることなく連続的にイオンを除去した処理水を利用することができ、また、得られる処理水は水の分解ガス
を含まないことから安全である。洗濯機の洗浄性能の向上、洗浄時間の短縮、省エネと共に機器の信頼性および寿命を向上することができ、さらに高硬度地域や井戸水等の過酷な原水に対しても適応することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上のように、本発明にかかる水処理装置を備えた洗濯機は、原水の溶解イオンを吸着除去することができ、また得られた処理水は水の分解ガスを含まないことから、家庭用、産業用に制限されることなく、安全な処理水を利用する洗浄システムに適応することができる。
【符号の説明】
【0032】
2 洗濯槽
4 給水手段
6 水処理装置
9 排水手段
10 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水に溶解しているイオンを吸着するイオン交換体と、表裏に極性の異なる前記イオン交換体を配置し水を解離して前記イオン交換体に吸着したイオンを脱離するイオン交換膜と、前記イオン交換膜に電圧を印加する少なくとも2つの電極と、前記電極に電圧を供給する電圧制御手段とを有する水処理装置と、洗濯槽と、前記洗濯槽に給水する給水手段と、前記洗濯槽の水を排水する排水手段とを有し、前記水処理装置が前記給水手段から前記洗濯槽に給水する水に溶解しているイオンを前記イオン交換体により吸着する際は、前記電極間に水の分解電圧未満の電圧を印加する洗濯機。
【請求項2】
水に溶解しているイオンを吸着するイオン交換体と、表裏に極性の異なる前記イオン交換体を配置し水を解離して前記イオン交換体に吸着したイオンを脱離するイオン交換膜と、前記イオン交換膜に電圧を印加する少なくとも2つの電極と、前記電極間に電圧を供給する電圧制御手段とを有する水処理装置と、洗濯槽と、前記洗濯槽に給水する給水手段と、前記洗濯槽の水を排水する排水手段とを有し、前記水処理装置が前記イオン交換体に吸着したイオンを脱離する際は、前記電極間に水解離電圧以上の電圧を印加する洗濯機。
【請求項3】
水処理装置がイオン交換体に吸着したイオンを脱離する際は、電極間に水の分解電圧未満の電圧を印加する請求項2に記載の洗濯機。
【請求項4】
水処理装置がイオン交換体に吸着したイオンを脱離するさいは、前記水処理装置を経由した水が洗濯槽を経由せず、排水手段により機外へ排出する請求項2または3に記載の洗濯機。
【請求項5】
水に含まれる不溶物を除去する粗ろ過手段を有し、水処理装置に流入する水を前記粗ろ過手段で処理する請求項1〜4いずれか1項に記載の洗濯機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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