説明

洗濯機

【課題】つの防振部材と洗濯槽と水槽とを備えた洗濯機であって、洗濯槽が回転するときの洗濯槽と水槽とが含まれる系の振動の複雑化を抑制することが可能な洗濯機を提供する。
【解決手段】洗濯機1は、回転ドラム20と、水槽40と、外箱10と、前側防振部材61と、後側防振部材62とを備えている。回転ドラム20は、水平方向から傾斜した方向に延びる回転軸線Rを中心に回転する。水槽40は、回転ドラム20を覆っている。前後方向に関して、前側防振部材61と後側防振部材62との間には所定の間隔が開けられている。前側防振部材61と後側防振部材62との所定の間隔は、系の重心が洗濯機1の無負荷状態のときと定格負荷状態にて洗濯機1が運転するときとの間で前後方向に移動する範囲を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、洗濯機のうち、特に洗濯槽の回転軸線が水平方向から傾斜した方向に延びる洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯槽の回転軸線が水平方向から傾斜した方向に延びている洗濯機が、従来から知られている。このような洗濯機は、洗濯槽を覆う水槽と、水槽を下方から支持する防振部材とを備えている。防振部材は、水槽を支持することにより、少なくとも洗濯槽と水槽とが含まれる系の振動を抑制することができる。回転軸線が延びる方向が水平方向から傾斜した洗濯機では、衣類等の洗濯物が洗濯槽に投入される前と後とで、少なくとも洗濯槽と水槽とが含まれる系の重心が洗濯槽の前後方向に移動する。これにより、重心の移動前後にて系の振動が変化し、系の振動が複雑化する。
【0003】
特許第4334499号公報(以下では特許文献1という)には、二つの防振部材を備えた洗濯機が記載されている。特許文献1に係る洗濯機では、二つの防振部材は、当該洗濯機の左右方向(幅方向)に互いに所定の間隔を開けて配置されている。このとき、二つの防振部材は、それぞれ前後方向に関して系の重心と略一致する位置に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4334499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に係る洗濯機では、側面視において、当該洗濯機の前後方向(奥行き方向)にて同じ位置に二つの防振部材が配置されている。つまり、特許文献1に係る洗濯機では、水槽は前後方向に関して一つの防振部材で支持されている。そのため、特許文献1に係る洗濯機では、洗濯槽と水槽とが含まれる系の重心が移動することが考慮されているものとは言い難い。
【0006】
さらに、洗濯槽が比較的高速度で回転している場合には、系に偏心荷重が生じることがある。重心が移動する場合と偏心荷重が生じる場合との系の振動を考慮することは、重心が全く移動しない場合または偏心荷重が生じない場合に比べて系の振動が複雑化する。
【0007】
一方、防振部材の数量が増加される場合には、防振部材の数量が二本である場合と比べ、振動に対して系を容易に安定させることができる。しかしながら、防振部材のコスト、さらに洗濯機のコストが増加するため、防振部材の数量を増加させることは好ましくない。そのため、防振部材の数量を増加させることなく、振動に対する系の安定性を向上させることが望まれている
【0008】
そこで、この発明の目的は、二つの防振部材と洗濯槽と水槽とを備えた洗濯機であって、洗濯槽が回転するときの洗濯槽と水槽とが含まれる系の振動の複雑化を抑制することが可能な洗濯機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に従った洗濯機は、洗濯槽と、水槽と、外箱と、前側防振部材と、後側防振部材とを備えている。洗濯槽は、前方に向かって開口した開口部と、開口部と対向するように配置された底部とを有する有底筒形状を持っている。また、洗濯槽は、水平方向から傾斜した方向に延びる回転軸線を中心に回転する。水槽は、洗濯槽を覆っている。外箱は、水槽と洗濯槽とを収容している。前側防振部材と後側防振部材とは、それぞれ水槽を上方に向かって支持する。さらに、前側防振部材と後側防振部材との間には、洗濯槽の開口部と底部とを結ぶ方向のうちの水平方向と平行な方向である前後方向に関して、所定の間隔が開けられている。
【0010】
この発明によれば、洗濯槽の回転軸線は、水平方向から傾斜した方向に延びている。そのため、当該洗濯機では、少なくとも洗濯物が洗濯槽に投入される前と後とで、洗濯槽と水槽とが含まれる系の重心の位置が洗濯槽の前後方向にて変化する。しかしながら、水槽を支持する前側防振部材と後側防振部材との間には、前後方向に関して所定の間隔が開けられている。これにより、水槽は、前後方向に関して前側防振部材と後側防振部材とによって安定的に支持される。そのため、系の重心が洗濯槽の前後方向に移動する場合でも、前後方向に関して所定の間隔が開けられて配置される前側防振部材と後側防振部材とにより、洗濯槽が回転するときの系の振動を低減させることができる。その結果、洗濯槽が回転するときの系の振動の複雑化を抑制することができる。
【0011】
したがって、この発明によれば、前側防振部材と後側防振部材と、洗濯槽と、水槽とを備えた洗濯機であって、洗濯槽が回転するときの洗濯槽と水槽とが含まれる系の振動の複雑化を抑制することが可能な洗濯機を提供することができる
【0012】
この発明に従った洗濯機において、前側防振部材と後側防振部材との所定の間隔は、水槽と洗濯槽とが含まれる系の重心が当該洗濯機の無負荷状態のときと定格負荷状態のときとの間で前後方向に移動する範囲を含んでいる。
【0013】
この構成によれば、当該洗濯機の無負荷状態のときと定格負荷状態にて当該洗濯機が運転するときとの間にて系の重心が前後方向に移動する場合であっても、前側防振部材と後側防振部材との間に重心が位置するため、系の振動の複雑化を抑制することができる。
【0014】
この発明に従った洗濯機において、回転軸線の後側が前側よりも下方に位置するように、回転軸線は傾斜していることが好ましい。また、当該洗濯機の脱水時には、洗濯槽は、当該洗濯機の正面視において反時計回りに回転することが好ましい。また、当該洗濯機を正面から見る場合に、前側防振部材は左側に配置され、且つ、後側防振部材は右側に配置されていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、当該洗濯機を正面から見る場合に洗濯槽が反時計回りに回転するときには、洗濯槽を下方に押すような遠心力による荷重が系全体の左側に負荷される。また、回転軸線の後側が前側よりも下方に位置するように、回転軸線が傾斜している。そのため、当該洗濯機を正面から見る場合に、系全体の左側の前側部分は、左側の後側部分よりも下方に大きく変位し易い。しかしながら、当該洗濯機では、当該洗濯機を正面から見る場合に、前側防振部材が左側に配置され、且つ、後側防振部材が右側に配置されている。そのため、当該洗濯機の正面視で洗濯槽が反時計回りに回転する場合でも、正面視にて左側に配置された前側防振部材によって水槽を安定して支持することができる。これにより、洗濯槽が回転するときの系の振動を低減させることができる。その結果、洗濯槽が回転するときの系の振動の複雑化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、この発明によれば、前側防振部材と後側防振部材といった二つの防振部材と、洗濯槽と、水槽とを備えた洗濯機であって、洗濯槽が回転するときの洗濯槽と水槽とが含まれる系の振動の複雑化を抑制することが可能な洗濯機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明に係る洗濯機を示す斜視図である。
【図2】この発明に係る洗濯機の外箱の内部の一部を透視した状態で示す洗濯機の正面図である。
【図3】この発明に係る洗濯機の一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
本願発明者は、洗濯槽の回転軸線が水平方向から傾斜した方向に延びている洗濯機において、互いに同じ構成を有する二つの防振部材により、洗濯槽と水槽とが含まれる系の振動を効果的に抑制させることについて思案した。そこで、本願発明者は、洗濯機の前後方向に関して、互いに同じ構成を有する前側防振部材と後側防振部材とを所定の間隔を開けて配置させることを思い付いた。これに基づき、本願発明者の鋭意研究の結果、本願発明者は本願発明を得るに至った。
【0020】
図1に示すように、洗濯機1は外箱10を備えている。また、図3に示すように、洗濯機1は水槽40と回転ドラム20とを備えている。洗濯機1は全自動式のドラム式洗濯機である。ただし、洗濯機1は、回転ドラム20に収容される衣類等の洗濯物を乾燥させる機能を有していてもよい。図1に示すように、外箱10は略直方体形状を有している。また、外箱10は、底盤11と胴部12と天板13とを有している。底盤11は洗濯機1の底部を形成している。胴部12は、底盤11から上方に延びている。また、胴部12は、前面121と右側面122と左側面123(図2参照)と背面124(図3参照)とを有している。天板13は、胴部12の一部であり、洗濯機1の天部を形成している。
【0021】
なお、図1〜図3において、符号Fr、Rr、Up、Dn、Ri、Leは、洗濯機1のそれぞれ前方、後方、上方、下方、右方、左方を示している。図1に示すように、左右方向を幅方向Wと言い換えることができる。また、前後方向を奥行き方向Dと言い換えることができ、上下方向を高さ方向Hと言い換えることができる。高さ方向Hに関して、外箱10の中央よりも上方の部分は外箱10の上部であり、外箱10の中央よりも下方の部分は外箱10の下部である。
【0022】
図1に示すように、前面121の上部には、洗剤ケース16が配置されている。洗剤ケース16は引き出し自在に外箱10に収容されている。洗濯機1の使用者は、洗剤ケース16内に、洗剤、漂白剤、および柔軟剤等を投入することができる。また、外箱10の前面121の上部には、操作ボタン(図示しない)と表示パネル(図示しない)とを有する操作部17が、洗剤ケース16と幅方向Wに並ぶように配置されている。
【0023】
図3に示すように、洗濯機1は、洗濯槽としての回転ドラム20と、液体バランサ30と、回転ドラム20を覆う水槽40と、駆動部としてモータ5とを備えている。また、洗濯機1は、図示しない制御部を備えている。水槽40と回転ドラム20とは、外箱10に収容される。
【0024】
回転ドラム20は、開口部21と底部22とを有し、有底筒形状を有している。開口部21は、前方に向かって開口している。底部22は開口部21と対向するように配置されている。回転ドラム20は回転軸線Rを中心に回転する。回転ドラム20の回転軸線Rは、水平方向から傾斜した方向に延びている。底部22は回転軸線Rの略垂直方向に延びている。回転ドラム20の開口部21と底部22とを結ぶ方向のうちの水平方向と平行な方向は、洗濯機1の前後方向である。回転ドラム20のうち、回転軸線Rを中心とする円の半径方向に関して開口部21の縁27の外側には、液体バランサ30が取り付けられている。
【0025】
回転ドラム20の材質としては、ステンレス鋼板が一般的に用いられている。回転ドラム20の周壁23と底部22には、給水、排水および通気のための複数の小孔24が形成されている。周壁23は、回転ドラム20のうちの筒状の部分である。洗濯機1では、周壁23は略円筒形状を有している。また、周壁23は、回転軸線Rが延びる方向と平行な方向に延びている。なお、底部22に形成された小孔の図示は省略する。
【0026】
周壁23には、複数のバッフル26が配置されている。バッフル26は、回転軸線Rと略平行に延びている。また、バッフル26は、回転軸線Rを中心とする円の半径方向の内方に向かって周壁23から突出している。
【0027】
水槽40は、開口部41と底部42とを有し、有底筒形状を有している。回転ドラム20は、水槽40の内部に形成される空間に収容されている。開口部41は、前方に向かって開口している。底部42は開口部41と対向するように配置されている。洗濯機1では、水槽40の周壁48は略円筒形状を有している(図2参照)。水槽40の周壁48は、水槽40のうちの筒状の部分である。また、周壁48は、回転軸線Rが延びる方向と平行な方向に延びている。
【0028】
水槽40の下部には、カウンターウェイト28が取り付けられている。詳細には、カウンターウェイト28は、筒形状の水槽40の周壁48のうち、外箱10の前面121の近傍且つ底盤11に面する位置に配置されている。なお、水槽40全体のバランスをとるため、複数個のカウンターウェイト28が水槽40に取り付けられていてもよい。また、カウンターウェイト28は、水槽40の上部に取り付けられていてもよい。
【0029】
図3に示すように、回転ドラム20の底部22の外側面には、駆動軸25が固定されている。駆動軸25にはモータ5が連結されている。モータ5は、水槽40の底部42の外側面に取り付けられている。モータ5は、ロータ51とステータ52とモータケース53とを有している。ロータ51とステータ52と駆動軸25の一部とは、モータケース53に収容されている。ロータ51は永久磁石を有している。また、ロータ51は駆動軸25に固定されている。ステータ52は、駆動軸25を中心とする円の半径方向の内方にロータ51を取り囲むように、モータケース53の内部に配置されている。また、ステータ52はコイルを有している。モータ5に供給される電力が制御部によって制御されることにより、ロータ51の回転数と回転方向とが可変制御される。これにより、回転ドラム20が所定の回転数および所定の方向に回転する。
【0030】
図1に示すように、外箱10の前面121には外扉18が取り付けられている。開口部15は、回転ドラム20の開口部21よりも前方であって水槽40の開口部41よりも前方に配置されている。外扉18は、前面121に形成された開口部15を開閉する。外扉18は、外箱10の開口部15とともに水槽40の開口部41を開閉する。外扉18を開くことにより、外箱10の開口部15および水槽40の開口部41を通じて回転ドラム20に洗濯物を投入、または、回転ドラム20から洗濯物を取り出すことができる。
【0031】
外扉18は、透明状の窓81を有している。これにより、洗濯機1の使用者は、外箱10の外方から回転ドラム20の内部を視認することができる。また、外扉18は突出部82を有している。突出部82は器形状を有している。突出部82は前方から後方に向かって窪んでいる。
【0032】
水槽40の開口部41の縁43には、ゴム等の弾性体によって形成されたパッキン44が取り付けられている。パッキン44は、開口部15と開口部41との間に配置されている。使用者が外扉18を閉じたときに、パッキン44が突出部82の周縁83に密着することにより、突出部82とパッキン44とによって水槽40が密閉される。このように、外扉18が外箱10の開口部15を閉塞することにより、突出部82の周縁83が水槽40の開口部41を閉塞する。
【0033】
突出部82は、外扉18が外箱10の開口部15を閉塞することによって突出部82の周縁83が水槽40の開口部41を閉塞しているときに、前方から後方に向かって突出している。外扉18が閉じられているとき、つまり、外扉18が外箱10の開口部15と水槽40の開口部41とを閉塞しているときは、突出部82の一部が水槽40の内部に配置されている。なお、突出部82の形状は、洗濯機1の前方から後方に向かって突出し、且つ、外扉18が外箱10の開口部15と水槽40の開口部41とを閉塞しているときに突出部82の一部が水槽40の内部に配置されていることを除き、特に限定されない。
【0034】
洗濯機1は、複数の防振部材を有する防振機構6を備えている。回転ドラム20が水槽40の内部にて回転軸線Rを中心に回転することができるように、水槽40が複数の防振部材に支持されている。防振機構6は、外箱10内において水槽40の下方に配置されている。防振機構6は、複数の防振部材として、前側防振部材61と後側防振部材62とを有している。前側防振部材61と後側防振部材62とは、外箱10の底盤11から上方に向かって水槽40を支持している。前側防振部材61と後側防振部材62とは、互いに同じ構成を有している。
【0035】
図2に示すように、洗濯機1の正面視つまり洗濯機1を正面から見る場合に、前側防振部材61と後側防振部材62とは、それぞれ洗濯機1の左側と右側とに配置されている。前側防振部材61は、ダンパー63と圧縮コイルバネ64とを有している。防振機構6において、ダンパー63の下端が前側防振部材61の下端を形成している。前側防振部材61の下端は、底盤11に連結されている。また、ダンパー63は、ダンパー63から上方に突出するロッド65を有している。ダンパー63は、ロッド65に作用する衝撃力を緩衝する。圧縮コイルバネ64は、ロッド65に巻きつくようにロッド65の回りに配置されている。ロッド65の上端と圧縮コイルバネ64の上端とは、鍔状の連結具66によって互いに連結されている。なお、上述のように、後側防振部材62の構成は前側防振部材61の構成と同一であるため、後側防振部材62の構成の説明を省略する。
【0036】
水槽40の下部の外周面には、台座45と台座46とが設けられている。前側防振部材61と後側防振部材62とは、それぞれ台座45と台座46とに取り付けられる。前側防振部材61が台座45に取り付けられるときは、ゴム等の弾性部材によって形成されたブッシュ67が連結具66と台座45との間に配置されている。
【0037】
台座45の上下方向の寸法は、台座46の上下方向の寸法よりも大きい。台座45の下端と台座46の下端とは、上下方向に関して互いに同じ位置に配置されている。前側防振部材61は、上下方向に関して底盤11と台座45との間に配置されるとともに、底盤11から上方に向かって水槽40を支持している。同様に、後側防振部材62は、上下方向に関して底盤11と台座46との間に配置されるとともに、底盤11から上方に向かって水槽40を支持している。なお、前側防振部材61および後側防振部材62の構成は、特に限定されず、他の構成を有していてもよい。
【0038】
前側防振部材61の上端と後側防振部材62の上端とは、それぞれの下端よりも幅方向W(図1参照)の内方に配置されている。これにより、前側防振部材61と後側防振部材62とは、洗濯機1の正面視において前側防振部材61と後側防振部材62とによって略逆V字が描かれるように、外箱10の内部に配置されている。
【0039】
一方、図3に示すように、前側防振部材61と後側防振部材62との間には、前後方向に関して所定の間隔が開けられている。洗濯機1では、洗濯機1を側方から見る場合つまり洗濯機1の側面視において、前側防振部材61と後側防振部材62とは、略鉛直方向に延びるように水槽40を支持している。このように、前側防振部材61の中心線C1と後側防振部材62の中心線C2とは、それぞれ略鉛直方向に延びている。
【0040】
所定の間隔、つまり、前後方向に関する中心線C1と中心線C2との間の距離Lは、系の重心が洗濯機1の無負荷状態のときと定格負荷状態にて洗濯機1が運転するときとの間で移動する範囲を含んでいる。この系は、少なくとも回転ドラム20と水槽40とモータ5と液体バランサ30とカウンターウェイト28とによって構成されている。
【0041】
なお、洗濯機1の無負荷状態とは、回転ドラム20内に洗濯物が全く入っていない状態且つ水槽40内に水が全く入っていない状態である。また、定格負荷とは、例えば、回転ドラム20に入れられる洗濯物の重量のうち、許容される最大重量のことである。定格負荷状態とは、少なくとも定格負荷の重量の洗濯物が回転ドラム20内に収容されている状態のことである。なお、洗濯機1が乾燥機能を有している場合に、乾燥時の定格負荷が洗濯時および脱水時のものと異なっていてもよい。この場合の乾燥時の定格負荷は、洗濯時および脱水時のものよりも小さいことが好ましい。洗濯時とは、後述する洗濯行程とすすぎ行程とのうち、少なくとも洗濯行程にて洗濯機1が運転している時のことであり、脱水時とは、脱水行程にて洗濯機1が運転している時のことである。
【0042】
例として、洗濯機1の定格負荷が10kgであると仮定する。洗濯機1の定格負荷が10kgである場合は、洗濯時には40kg程度(洗濯物の重量が10kg、洗濯物に含まれる水の重量が約10kg、水槽40および回転ドラム20内に溜められる水の重量が約20kg)の重量が洗濯機1に負荷される。また、洗濯機1の定格負荷が10kgである場合は、脱水時(特に脱水開始時)には20kg程度(洗濯物の重量が10kg、洗濯物に含まれる水の重量が約10kg)の重量が洗濯機1に負荷される。このように、定格負荷の洗濯物が回転ドラム20に収容されている場合は、支持部材としての前側防振部材61と後側防振部材62とに洗濯時に負荷される重量は、脱水時に負荷される重量よりも大きい。
【0043】
洗濯機1では、回転軸線Rが延びる方向が水平方向から傾斜している。しかしながら、回転軸線Rは略水平方向に延びているため、回転ドラム20と水槽40とが含まれる系の重心の位置は、水槽40と回転ドラム20とに洗濯物と水とが入れられる前と後とで前後方向にて変化する。また、洗濯物と水との重量が大きくなるに従い、洗濯物や水が位置する領域が回転ドラム20のより前方の部分にまで広がるため、系の重心の位置が前方に変位する。しかしながら、洗濯機1では、洗濯機1の無負荷状態での重心G0と、定格負荷状態のうちの回転ドラム20および水槽40に水が溜められた状態(つまり洗濯時)での重心GWと、定格負荷状態のうちの脱水時での重心GHとは、前後方向に関して、中心線C1と中心線C2との間に配置される。
【0044】
なお、図3に示す重心G0、重心GW、および重心GHの位置は、前後方向に関するそれぞれの位置の順を示すものである。そのため、例えば中心線C2と、重心G0、重心GW、または重心GHとの前後方向に関するそれぞれの間隔は、図3に示すものに限定されない。また、重心G0、重心GW、または重心GHのうち、重心GWは中心線C1よりも前方に位置するものであってもよい。
【0045】
洗濯機1の脱水時には、洗濯機1の正面視において、回転ドラム20は反時計回りに回転する。また、洗濯機1の洗濯時には、洗濯機1の正面視において、回転ドラム20は時計回りと反時計回りとに回転する。
【0046】
洗濯機1は、上部付勢部70と、下部付勢部としてのコイルバネ73とを備えている。上部付勢部70は、水槽40の上部と外箱10の上部とに接続されている。水槽40の上部とは、高さ方向Hに関して、水槽40の中央よりも上方の部分のことである。洗濯機1では、上部付勢部70は、水槽40の周壁48と支持部12aとに接続されている。支持部12aは、胴部12に取り付けられ、天板13の内面に配置されている。上部付勢部70はコイルバネ71とコイルバネ72とを有している。コイルバネ71の一端は周壁48の前端に取り付けられ、他端は支持部12aに取り付けられている。コイルバネ71は、後方斜め上方に水槽40を付勢している。コイルバネ72の一端は水槽40の後部の周壁48に取り付けられ、他端は支持部12aのうちコイルバネ71の他端の近傍に取り付けられている。コイルバネ72は、前方斜め上方に水槽40を付勢している。このように、上部付勢部70は、水槽40を前方と後方とに付勢する。なお、洗濯機1では支持部12aは板形状を有している。しかし、支持部12aの形状は特に限定されず、支持部12aの材質は特に限定されない。
【0047】
コイルバネ73は、水槽40の前方下部と、外箱10の前面121の内側に配置された部材とに接続されている。コイルバネ73の一端は外箱10の前面121に接続された板金75に取り付けられ、他端は水槽40の下部の周壁48に設けられた台座74に取り付けられている。板金75は、前面121の後方であって水槽40の開口部41よりも下方に配置されている。このように、コイルバネ73は、板金75を介して外箱10に向かって水槽40を前方斜め上方に引っ張るように、外箱10の内部に配置されている。なお、コイルバネ71,72,および73は、コイルバネに限定されず、一般的な他の付勢手段であってもよい。
【0048】
洗濯機1では、洗い行程、すすぎ行程、脱水行程において、水槽40と回転ドラム20とに入れられる洗濯物や水の量に基づき、水槽40の姿勢が変化する。また、回転ドラム20が回転する場合には、少なくとも前側防振部材61と後側防振部材62とに、洗濯物と水との重量に基づく荷重が負荷される。
【0049】
例えば系の重心が中心線C1よりも前方に位置する場合のように系の重心が比較的前方に位置している場合には、図3に示す水槽40および回転ドラム20は、前側防振部材61と台座45との接続位置の近傍を中心に反時計回りに回転する傾向を持つ。また、例えば系の重心が中心線C2よりも後方に位置する場合のように系の重心が比較的後方に位置している場合には、図3に示す水槽40および回転ドラム20は、後側防振部材62と台座46との接続位置の近傍を中心に時計回りに回転する傾向を持つ。
【0050】
さらに、系に重量が加えられるときには、前側防振部材61および後側防振部材62のロッド65がダンパー63に沈むことにより、水槽40および回転ドラム20が下方に変位する。しかしながら、洗濯機1では、コイルバネ73が前方斜め上方に水槽40を引っ張るように付勢することにより、水槽40および回転ドラム20が下方に変位する傾向を有する場合でも、水槽40および回転ドラム20の姿勢が変化することを抑制することができる。このように、水槽40の前部の下方への変位を抑制することにより、パッキン44の変形を抑制し且つ損傷を防止することができる。
【0051】
一方、洗濯機1では、例えば洗濯機1の無負荷状態のときと定格負荷状態のうちの脱水時のときとの間で系の重心が移動する範囲は、前後方向に関して中心線C1の位置と中心線C2の位置との間に収まっている。これにより、洗濯機1では、洗濯物と水との量に関わらず、水槽40の姿勢の変化を防止することができる。また、系の重心が前後方向に移動する場合でも、前後方向に関して互いに所定の間隔が開けられて配置される前側防振部材61と後側防振部材62とにより、系の支持部材としての前側防振部材61と後側防振部材62との間に系の重心位置が常に位置するため、回転ドラム20が回転するときの系の振動の複雑化を抑制することができる。したがって、回転ドラム20が回転するときの系の振動を低減させることができる。さらに、コイルバネ73が前方斜め上方に水槽40を引っ張るように付勢することにより、防振機構6とともに水槽40と回転ドラム20とが含まれる系の振動を低減させることができる。
【0052】
また、コイルバネ73が前方斜め上方に水槽40を引っ張るように付勢することにより、水槽40の下方から水槽40を押すように付勢する場合に比べ、水槽40の前方下部と外箱10の前部との間で水槽40の前方下部を効率的に付勢することができる。さらに、水槽40の前方下部と外箱10の底盤11との間に水槽40を下方から付勢する他の部材を配置させることがないため、水槽40の前方下部と外箱10の底盤11との間の空間を有効的に利用することができる。
【0053】
以下では、図3を参照して洗濯機1の動作を説明する。
【0054】
まず、使用者は、外扉18を開き、開口部15から回転ドラム20内に洗濯物を投入した後、外扉18を閉じる。洗濯に使用される洗剤は、洗剤ケース16(図1参照)に入れられる。必要であれば、使用者は、洗剤ケース16に仕上剤を入れる。使用者は、洗い行程またはすすぎ行程の途中で仕上剤を入れてもよい。また、洗濯機1には、仕上剤用のケース(図示しない)が洗剤ケース16とは別に設けられていてもよい。
【0055】
次に、使用者は、操作部17を操作して、洗濯の条件と乾燥の条件とを選択する。使用者による操作部17の操作に基づき、操作部17が制御部に制御信号を送信し、これにより制御部が洗濯機1の各部材を制御する。制御部によって、使用者が選んだ洗濯の条件と乾燥の条件とに従って、例えば、洗い行程、すすぎ行程、脱水行程が行われる。
【0056】
まず、洗い行程について説明する。使用者が操作部17のスタートボタンを押すことにより、制御部によって、外扉18と給水弁(図示しない)とが制御される。これにより、外扉18がロックされるとともに、給水弁が開かれることによって水道水が水槽40内に供給される。このとき、水槽40には、洗剤ケース16に収容されていた洗剤が混じった水が供給される。
【0057】
水槽40内に水が所定の水位まで供給されたことが水位センサ(図示しない)によって検知される場合には、給水弁が閉じられる。続いて、循環ポンプ(図示しない)が駆動される。水槽40を通じて回転ドラム20内に供給された水は、循環ポンプの駆動によって水槽40から所定の流路を通り、回転ドラム20内に向けられた循環水出口(図示しない)からシャワー状に回転ドラム20内に噴射されることによって回転ドラム20内に戻される。さらに、回転ドラム20内の水は、小孔24を再び通って水槽40と所定の流路との間を循環する。循環ポンプが駆動している時間のうち、所定の時間が経過する場合には、制御部は循環ポンプの駆動を停止するように制御する。
【0058】
次に、回転ドラム20がモータ5によって洗い行程用の回転チャートに従って回転する。洗濯機1では、回転ドラム20は、例えば50rpm程度で回転する。なお、回転ドラム20の回転チャートに関しては、洗い行程、すすぎ行程、脱水行程の行程別に、あるいは、洗濯物の種類や洗濯乾燥のコースに応じて、回転速度、回転周期、反転周期等が異なる複数の回転チャートが予め設定されている。回転チャートは、使用者によって選択されるように、または、自動的に選択されるようにプログラムされている。
【0059】
モータ5が正逆回転すると、回転ドラム20も同様に正逆回転する。つまり、洗濯機1の正面視において、回転ドラム20が時計回りと反時計回りとに回転する。回転ドラム20が回転することにより、回転ドラム20内の洗濯物がバッフル26に持ち上げられる。しかし、洗濯物は、一回転せずに回転の途中で回転ドラム20の内周壁面から離れ、下方に落下する。このような動作は、回転ドラム20が回転する間に繰り返される。これにより、洗濯物が回転ドラム20の内部で撹拌される。このように、洗濯物を撹拌することをタンブリングという。タンブリングは、10分間程度続けられる。このようにして、洗い行程は、いわゆるたたき洗い効果を利用して行なわれる。なお、この洗い行程のときに循環ポンプが駆動していてもよい。洗い行程が終了すると、水槽40内の水が排水部(図示しない)を通って外箱10の外に排出される。
【0060】
排水が終了した後には、中間脱水行程が行なわれる。この行程では、回転ドラム20は中間脱水行程用の回転チャートで高速度にて回転する。中間脱水行程では、回転ドラム20の回転による遠心力によって、洗濯物に含まれた水が小孔24を通じて回転ドラム20から水槽40に吐出される。水槽40に吐出された水は、水槽40の内壁面を伝って下方に流れ、排水部を通って外箱10の外に排出される。
【0061】
中間脱水行程が終了する場合は、プログラムは中間脱水行程からすすぎ行程に移行する。すすぎ行程では、給水弁が開放されて、水道水が水槽40に供給される。水槽40内に水が所定の水位まで供給されたことが水位センサによって検知される場合には、給水弁が閉じられる。給水弁が閉じられた後、制御部は、循環ポンプが所定の時間駆動するように、循環ポンプを制御する。所定の時間が経過する場合には、制御部は循環ポンプの駆動を停止させる。その後、すすぎ行程用の回転チャートに従って回転ドラム20が回転する。なお、このすすぎ行程のときに循環ポンプが駆動していてもよい。
【0062】
中間脱水行程およびすすぎ行程が複数回繰り返された後、プログラムは、すすぎ行程から最終のすすぎ行程へと移行する。最終のすすぎ行程では、給水弁が開放されて、柔軟仕上剤を含んだ水が水槽40に供給される。
【0063】
所定の回数のすすぎ行程を行われた後には、脱水行程が行われる。最終のすすぎ行程が終了する場合は、すすぎ液が水槽40から外箱10の外に排出される。排水が終了した後には、最終脱水行程用の回転チャートに従って、例えば1000rpmの高速度にて回転ドラム20が回転するように、最終脱水行程が行なわれる。最終脱水行程では、中間脱水行程と同様に、洗濯物に含まれたすすぎ液は、回転ドラム20の回転による遠心力によって小孔24を通じて水槽40に吐出される。脱水行程を開始してから所定の時間が経過した後は、制御部はモータ5への通電を断ち、停止処理を行う。
【0064】
上述のように液体バランサ30は回転ドラム20と一体に回転軸線Rを中心に回転するため、中間脱水行程と最終脱水行程とにおいて回転ドラム20が比較的高速度にて回転する場合は、液体バランサ30も回転ドラム20とともに比較的高速度にて回転する。
【0065】
以上のように、洗濯機1は、回転ドラム20と、水槽40と、外箱10と、前側防振部材61と、後側防振部材62とを備えている。回転ドラム20は、前方に向かって開口した開口部21と、開口部21と対向するように配置された底部22とを有する有底筒形状を持っている。また、回転ドラム20は、水平方向から傾斜した方向に延びる回転軸線Rを中心に回転する。水槽40は、回転ドラム20を覆っている。外箱10は、水槽40と回転ドラム20とを収容している。前側防振部材61と後側防振部材62とは、それぞれ水槽40を上方に向かって支持する。また、前側防振部材61と後側防振部材62とは、互いに同じ構成を有している。さらに、前後方向に関して、前側防振部材61と後側防振部材62との間には所定の間隔が開けられている。
【0066】
洗濯機1によれば、回転軸線Rは水平方向から傾斜した方向に延びている。そのため、洗濯機1では、少なくとも洗濯物が回転ドラム20に投入される前と後とで、回転ドラム20と水槽40とモータ5と液体バランサ30とによって構成される系の重心の位置が前後方向にて変化する。しかしながら、水槽40を支持する前側防振部材61と後側防振部材62との間には、前後方向に関して所定の間隔が開けられている。これにより、水槽40は、前後方向に関して前側防振部材61と後側防振部材62とによって安定的に支持される。そのため、系の重心が前後方向に移動する場合でも、前側防振部材61と後側防振部材62とにより、系の支持部材としての前側防振部材61と後側防振部材62との間に系の重心位置が常に位置するため、回転ドラム20が回転するときの系の振動の複雑化を抑制することができる。したがって、回転ドラム20が回転するときの系の振動を低減させることができる。
【0067】
したがって、本実施形態によれば、互いに同じ構成を有する前側防振部材61と後側防振部材62と、回転ドラム20と、水槽40とを備えた洗濯機1であって、回転ドラム20が回転するときの系の振動の複雑化を抑制することが可能な洗濯機1を提供することができる。また、前側防振部材61と後側防振部材62とは、互いに同じ構成を有している。そのため、本実施形態によれば、前側防振部材61と後側防振部材62を有する防振機構6のコストと、洗濯機1のコストとを抑えることが可能である。
【0068】
洗濯機1において、前側防振部材61と後側防振部材62との所定の間隔は、系の重心が洗濯機1の無負荷状態のときと定格負荷状態にて洗濯機1が運転するときとの間で前後方向に移動する範囲を含んでいる。
【0069】
この構成によれば、洗濯機1の無負荷状態のときと定格負荷状態にて洗濯機1が運転するときとの間にて系の重心が前後方向に移動する場合であっても、前側防振部材61と後側防振部材62との間に重心が位置するため、系の振動の複雑化を抑制することができる。さらに、洗濯機1の脱水時には、洗濯、すすぎ等の他の行程に比べ、回転ドラム20は高速度で回転する。そのため、この構成によれば、回転ドラム20が比較的高速度で回転するときの系の振動の複雑化を抑制することができる。
【0070】
洗濯機1では、図3に示すように、回転軸線Rの後側が前側よりも下方に位置するように、回転軸線Rは水平方向から傾斜している。洗濯機の脱水時には、回転ドラム20は、洗濯機1の正面視において反時計回りに回転する。また、洗濯機1の正面視において、前側防振部材61は左側に配置され、且つ、後側防振部材62は右側に配置されている。
【0071】
洗濯機1の正面視において回転ドラム20が反時計回りに回転する場合には、回転ドラム20を下方に押すような遠心力による荷重が系全体の左側に負荷される。また、回転軸線Rの後側が前側よりも下方に位置するように、回転軸線Rが傾斜している。そのため、洗濯機1の正面視において、系全体の左側の前部分は、左側の後方部分よりも下方に大きく変位し易い。しかしながら、洗濯機1では、洗濯機1の正面視において、前側防振部材61が左側に配置され、且つ、後側防振部材62が右側に配置されている。そのため、洗濯機1の正面視で回転ドラム20が反時計回りに回転する場合でも、正面視にて左側に配置された前側防振部材61によって水槽40を安定して支持することができる。これにより、回転ドラム20が回転するときの系の振動を低減させることができる。その結果、回転ドラム20が回転するときの系の振動の複雑化を抑制することができる。
【0072】
また、洗濯機1は、回転ドラム20と水槽40と外箱10と前側防振部材61と後側防振部材62と上部付勢部70とコイルバネ73とを備えている。上部付勢部70はコイルバネ71とコイルバネ72とを有している。回転ドラム20は、有底筒形状を持ち、前方に向かって開口した開口部21を有している。また、回転ドラム20は回転軸線Rを中心に回転する。回転軸線Rは、水平方向から傾斜した方向に延びている。水槽40は、回転ドラム20の開口部21よりも前方に配置された開口部41を有している。また、水槽40は、回転ドラム20を覆っている。外箱10は、水槽40と回転ドラム20とを収容する。前側防振部材61と後側防振部材62とは、水槽40を外箱10の底盤11から上方に向かって支持する。コイルバネ71の一端は周壁48の前端に取り付けられ、他端は支持部12aに取り付けられている。コイルバネ71は、後方斜め上方に水槽40を付勢している。コイルバネ72の一端は水槽40の後部の周壁48に取り付けられ、他端は支持部12aのうちコイルバネ71の他端の近傍に取り付けられている。コイルバネ72は、前方斜め上方に水槽40を付勢している。コイルバネ73は、水槽40の前方下部と、外箱10の前面121の内側に配置された部材とに接続され水槽40を前方斜め上方に付勢する。
【0073】
洗濯機1によれば、上部付勢部70とコイルバネ73と前側防振部材61と後側防振部材62とにより、水槽40の姿勢が変化することを抑制することができる。そのため、洗濯機1によれば、外箱10と水槽40との間に配置された部品が洗濯機1の運転中に変形することを抑制することができる。洗濯機1においては、外箱10と水槽40との間には、上部付勢部70とコイルバネ73と前側防振部材61と後側防振部材62とが配置されている。つまり、洗濯機1によれば、上部付勢部70とコイルバネ73と前側防振部材61と後側防振部材62とが洗濯機1の運転中に変形することが抑制されているため、水槽40の姿勢をより適切に保持することが可能である。
【0074】
また、コイルバネ73が前方斜め上方に水槽40の前方下部を付勢することにより、水槽40の前方下部が下方に移動するような姿勢の変化を抑制することができる。これにより、回転ドラム20と水槽40とが含まれる系では、回転軸線Rの傾斜が変化することが抑制されるため、重心が前方に移動し難い。このように、回転軸線Rの傾斜が変化することが抑制され且つ重心が移動し難いことにより、系の振動が複雑になり難い。したがって、系の振動を容易に検知することができ、振動に対して洗濯機1を容易に制御することができる。
【0075】
洗濯機1では、外箱10は、水槽40の開口部41よりも前方に配置された開口部15を有している。さらに、洗濯機1は、外箱10の開口部15とともに水槽40の開口部41を開閉する外扉18をさらに備えている。また、外扉18は突出部82を有している。突出部82は、外扉18が外箱10の開口部15と水槽40の開口部41とを閉じているときに前方から後方に向かって突出する。突出部82の一部は、外扉18が外箱10の開口部15と水槽40の開口部41とを閉じているときに水槽40の内部に配置されている。
【0076】
この構成によれば、外扉18は、外箱10の開口部15とともに水槽40の開口部41を開閉する。また、外扉18は、外扉18が外箱10の開口部15と水槽40の開口部41とを閉じているときに前方から後方に向かって突出する突出部82を有している。突出部82の一部は、外扉18が外箱10の開口部15と水槽40の開口部41とを閉じているときに水槽40の内部に配置されている。一方、洗濯機1は、外箱10と水槽40との間に配置された部品が洗濯機1の運転中に変形することを抑制することができる。また、コイルバネ73が水槽40の前方下部を前方斜め上方に付勢することにより、水槽40と外扉18との間に洗濯物が位置するときに洗濯物が外扉18に押されることによって水槽40が後方に移動して、外箱10の開口部15と水槽40の開口部41との間の前後方向の空間がさらに広がることを抑制することができる。そのため、外箱10の開口部15と水槽40の開口部41との間の前後方向の空間に洗濯物が入り込んだり、突出部82と水槽40の開口部41との間に洗濯物が挟まったりすることによって洗濯物または洗濯機1の部品が損傷することを防止することができ、確実に洗濯することが可能である。
【0077】
洗濯機1は、外箱10の開口部15と水槽40の開口部41との間に配置されたパッキン44をさらに備えている。
【0078】
洗濯機1によれば、外箱10と水槽40との間に配置された部品が洗濯機1の運転中に変形することを抑制することができる。そのため、外箱10の開口部15と水槽40の開口部41との間に配置されたパッキン44が傷むことを避けることができる。
【0079】
以上に開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正と変形を含むものである。
【符号の説明】
【0080】
1:洗濯機、10:外箱、20:回転ドラム、21:開口部、22:底部、40:水槽、61:前側防振部材、62:後側防振部材、R:回転軸線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方に向かって開口した開口部と前記開口部と対向するように配置された底部とを有する有底筒形状を持ち、水平方向から傾斜した方向に延びる回転軸線を中心に回転する洗濯槽と、
前記洗濯槽を覆う水槽と、
前記水槽と前記洗濯槽とを収容する外箱と、
それぞれ前記水槽を上方に向かって支持する前側防振部材と後側防振部材とを備え、
前記前側防振部材と前記後側防振部材との間には、前記洗濯槽の前記開口部と前記底部とを結ぶ方向のうちの水平方向と平行な方向である前後方向に関して、所定の間隔が開けられ
前記前側防振部材と前記後側防振部材との前記所定の間隔は、前記水槽と前記洗濯槽とが含まれる系の重心が当該洗濯機の無負荷状態のときと定格負荷状態にて当該洗濯機が運転するときとの間で前後方向に移動する範囲を含んでいる、洗濯機。
【請求項2】
前記洗濯槽の回転軸線は、後側が前側よりも下方に位置するように傾斜し、
当該洗濯機の脱水時には、当該洗濯機を正面から見る場合に前記洗濯槽は反時計回りに回転し、
前記前側防振部材は、当該洗濯機を正面から見る場合に左側に配置され、
前記後側防振部材は、当該洗濯機を正面から見る場合に右側に配置されている、
請求項1に記載の洗濯機。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−143613(P2012−143613A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−85080(P2012−85080)
【出願日】平成24年4月4日(2012.4.4)
【分割の表示】特願2011−1851(P2011−1851)の分割
【原出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】