説明

洗濯機

【課題】製品本体を高くせず、信頼性を確保しつつ洗濯槽兼脱水槽の容量を増すこと。
【解決手段】中央底部にパルセータ47を回転自在に配した有底円筒状の洗濯兼脱水槽46と、洗濯兼脱水槽46を回転自在に内包する水槽45と、モータ49により駆動される脱水回転軸68と、脱水回転軸68と洗濯兼脱水槽46底部とを連結支持し、略中央にボス部42を有する略円盤状で金属製のフランジ67と、フランジ67と脱水回転軸68を螺合締結するフランジナット70とを備え、ボス部42の側面には、上部に上部溝部43aを、下部に下部溝部43bを形成するとともに、67フランジは、ボス部42の外周部72外方と、上部溝部43aおよび下部溝部43bを洗濯兼脱水槽46の底部に埋設することにより、製品本体を高くすることなく、信頼性を確保しつつ洗濯槽兼脱水槽の容量を増して、洗濯性能を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗い、すすぎ、脱水行程を自動制御して行なう洗濯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の洗濯機は、衣類の撹拌、脱水を行なうための洗濯兼脱水槽の底部に、回転軸からの回転力を伝達するためのフランジが設けられており、そのフランジは洗濯兼脱水槽の底部に複数のネジで締結固定されていた。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図4は、特許文献1に記載された従来の洗濯機の縦断面図である。
【0004】
図4において、水槽23に回転自在に内包された洗濯兼脱水槽21の中央内底部に衣類撹拌用のパルセータ22を回転自在に配し、水槽23の外底部には、モータ28や機構駆動部30が配置された基板24が固着されている。基板24の外縁は、外枠25の上部角隅より防振装置26を介し吊り下げられている。回転軸27は、モータ28の回転力をベルト29と機構駆動部30を介して伝えられる。
【0005】
洗濯兼脱水槽21の外底部にはフランジ31が複数のねじ(図示せず)により螺合締結されており、回転軸27とフランジ31とをナット35で締結支持することにより、モータ28の回転力が洗濯兼脱水槽21に伝達されるよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平3−68879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の構成では、洗濯兼脱水槽に回転軸の回転を伝達するフランジは、洗濯兼脱水槽の外側底面に複数のねじで螺合締結されているが、フランジは、一般的には、その強度確保からアルミダイカストなどの金属で成形されており所定の厚みを有しているため、水槽内において洗濯兼脱水槽とフランジとの接続には所定の高さスペースが必要となり、水槽の高さ、つまり製品全体の高さを高くしない限りは、洗濯兼脱水槽の容積が小さくなり、洗濯性能に影響を及ぼすという課題があった。
【0008】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、製品本体の高さを高くすることなく、洗濯兼脱水槽の強度的な信頼性を確保しつつ、洗濯兼脱水槽の容積をより大きく確保して洗濯性能を向上させるという洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の課題を解決するために、本発明の洗濯機は、中央底部にパルセータを回転自在に配した有底円筒状の洗濯兼脱水槽と、前記洗濯兼脱水槽を回転自在に内包する水槽と、モータにより駆動される脱水回転軸と、前記脱水回転軸と前記洗濯兼脱水槽底部とを連結支持し、略中央にボス部を有する略円盤状で金属製のフランジと、前記フランジと前記脱水回転軸を螺合締結するフランジナットとを備え、前記ボス部の側面には、上部に上部溝部を、下部に下部溝部を形成するとともに、前記フランジは、前記ボス部の外周部外方と、前記上部溝部および下部溝部を前記洗濯兼脱水槽の底部に埋設する構成としたものである。
【0010】
これによって、製品本体の高さを高くすることなく、洗濯兼脱水槽の強度的な信頼性を確保しつつ、洗濯兼脱水槽の容積をより大きく確保して洗濯性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の洗濯機は、製品本体の高さを高くすることなく、洗濯兼脱水槽の強度的な信頼性を確保しつつ、洗濯兼脱水槽の容積をより大きく確保して洗濯性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1における洗濯機の縦断面図
【図2】同洗濯機のフランジと洗濯兼脱水槽の構成を示す要部断面図
【図3】本発明の実施の形態2における洗濯機のフランジと洗濯兼脱水槽の構成を示す要部断面図
【図4】従来の洗濯機の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の発明は、中央底部にパルセータを回転自在に配した有底円筒状の洗濯兼脱水槽と、前記洗濯兼脱水槽を回転自在に内包する水槽と、モータにより駆動される脱水回転軸と、前記脱水回転軸と前記洗濯兼脱水槽底部とを連結支持し、略中央にボス部を有する略円盤状で金属製のフランジと、前記フランジと前記脱水回転軸を螺合締結するフランジナットとを備え、前記ボス部の側面には、上部に上部溝部を、下部に下部溝部を形成するとともに、前記フランジは、前記ボス部の外周部外方と、前記上部溝部および下部溝部を前記洗濯兼脱水槽の底部に埋設することにより、製品本体の高さを高くすることなく、洗濯兼脱水槽の強度的な信頼性を確保しつつ、洗濯兼脱水槽の容積をより大きく確保して洗濯性能を向上させることができる。
【0014】
第2の発明は、特に、第1の発明のフランジは、前記ボス部の外方に、前記ボス部と同心状に上面溝部を形成したことにより、洗濯兼脱水槽の外周方向に対しても、環境温度の変化による合成樹脂の膨張収縮が抑制できて、接合部にクラック等が発生することは無く、強度的な信頼性を向上することができる。
【0015】
以下、発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。また、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における洗濯機の縦断面図、図2は、同洗濯機のフランジと洗濯兼脱水槽の構成を示す要部断面図である。
【0017】
図1および図2において、水槽45に回転自在に内包された有底円筒状で合成樹脂製の洗濯兼脱水槽46の中央底部には、衣類撹拌用のパルセータ47が回転自在 に配されている。
【0018】
また、水槽45の外底部には基板48が固着され、この基板48にはモータ49、排水電磁弁(図示せず)、あるいは、洗濯脱水切換クラッチやブレーキが内蔵された機構駆動部50等が配設されている。そして、外枠51の上部角隅より吊り棒52、防振装置53を介して基板48の外縁部が垂下支持 されている。
【0019】
また、モータ49の回転力は、冷却フィンを有する駆動プーリ54、ベルト55および機構駆動部50を介して、洗濯兼脱水槽46およびパルセータ47に伝達されるようにな
っている。そして、水槽45の底部には排水弁56が設けられ、水槽45内の水は、排水電磁弁(図示せず)によりこの排水弁56が開閉され、排水ホース57を通って外部へ排水される。
【0020】
外枠51の上部には上部枠体58が設けられ、その略中央には洗濯物投入口部59が形成され、その上部には蓋60が開閉自在に収設されている。
【0021】
上部枠体58の後部内方には、給水装置61が配設されており、給水弁62、上方より槽内に給水する給水ホース63より成っている。また、後部には電源スイッチ64も配設されている。上部枠体58の前部には、前面カバー65が設けられ、その内方部には運転行程を制御する制御手段(図示せず)を有する制御部66が設けられている。
【0022】
合成樹脂製の洗濯兼脱水槽46の底部には、略中央にボス部42を有し略円盤状で金属製のフランジ67がインサート成形により埋設固定されている。つまりフランジ67は、ボス部42の外周部72の外方が洗濯兼脱水槽46に埋設固定されている。なお、フランジ67の外周側には複数の水抜き穴71が形成されている。
【0023】
ボス部42の中心部には、機構駆動部50の脱水回転軸68と嵌合、連結する回転軸連結穴部41が形成されおり、組立時は嵌合してフランジワッシャ69を挿入後、脱水回転軸68の先端部に形成されたねじ部にフランジナット70を螺合して、脱水回転軸68とフランジ67が固着される。
【0024】
また、ボス部42の側面には、上部に上部溝部43aと、下部に下部溝部43bとが形成されており、インサート成形で洗濯兼脱水槽46の合成樹脂材が充填されている。
【0025】
また、脱水回転軸68は回転軸の中心が中空であり、同心的に洗濯回転軸(図示せず)が貫通しており、洗濯回転軸の先端部にパルセータ47が螺合締結されている。モータ49の回転力は、機構駆動部50のクラッチを切り換えることにより、洗い時には洗濯回転軸(図示せず)に伝達されてパルセータ47が回転し、脱水時には脱水回転軸68に伝達されて洗濯兼脱水槽46が回転する。
【0026】
以上のように構成された洗濯機において、以下その動作、作用を説明する。
【0027】
合成樹脂製の洗濯兼脱水槽46と脱水回転軸68を連結支持するフランジ67を、インサート成形により、洗濯兼脱水槽46の底部に埋設固定したことにより、洗濯兼脱水槽46下部の有効スペースが増え、その有効スペースを使うことで、製品本体を高くしなくても、つまり水槽45を高くしなくても、洗濯兼脱水槽46の内容積を増やすことができ、洗濯性能を向上させることができる。
【0028】
また、洗濯機が設置された場所の環境温度の変化によって、あるいは、温水を使用することによって、洗濯兼脱水槽46の合成樹脂が膨張収縮しても、フランジ67略中央のボス部42側面の円周方向に設けた上部溝部43aと下部溝部43bとに合成樹脂材が充填されていることにより、合成樹脂である洗濯兼脱水槽46と金属であるフランジ67の膨張率に差があっても、溝部によって膨張率の大きい合成樹脂の動きが抑制されて、接合部にクラック等が発生することは無く、強度的な信頼性を確保することができる。
【0029】
以上のように、本実施の形態1においては、脱水回転軸68と洗濯兼脱水槽46とを連結支持するフランジ67を、インサート成形により洗濯兼脱水槽46底部に埋設させるとともに、フランジ67略中央のボス部42側面に形成した上部溝部43aと下部溝部43bに洗濯兼脱水槽46の合成樹脂材を充填させることにより、製品本体の高さを高くする
ことなく、洗濯兼脱水槽46の強度的な信頼性を確保しつつ、洗濯兼脱水槽46の容積をより大きく確保して洗濯性能を向上させることができる。
【0030】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2のフランジと洗濯兼脱水槽の構成を示す要部断面図である。図3において、実施の形態1と同一符号は、実施の形態1と同じであり、また、フランジと洗濯兼脱水槽の構成以外は、実施の形態1と同じである。
【0031】
図3において、合成樹脂製の洗濯兼脱水槽46の底部には、略中央にボス部42を有し略円盤状で金属製のフランジ67がインサート成形により埋設固定されている。つまりフランジ67は、ボス部42以外の外周部分が洗濯兼脱水槽46に埋設固定されている。
【0032】
また、ボス部42の側面には、上部に上部溝部43aと、下部に下部溝部43bとが形成され、ボス部42外方には、上面溝部44が回転軸連結穴部41と同心状に形成されており、インサート成形で洗濯兼脱水槽46の合成樹脂材が充填されている。
【0033】
以上のように、本実施の形態2においては、フランジ67略中央のボス部42の外方に、ボス部42と同心状に上面溝部44を形成し、その上面溝部44にインサート成形により洗濯兼脱水槽46の合成樹脂材を充填させることにより、洗濯兼脱水槽46の外周方向に対しても、環境温度の変化による合成樹脂の膨張収縮が抑制できて、接合部にクラック等が発生することは無く、強度的な信頼性を向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上のように、本発明にかかる洗濯機は、洗濯槽兼脱水槽の強度的な信頼性を確保しつつ、洗濯兼脱水槽の容量を増し、洗浄性能の向上も可能となるので、洗浄性能を重視される他の洗濯機等の用途に適用できる。
【符号の説明】
【0035】
42 ボス部
43a 上部溝部
43b 下部溝部
44 上面溝部
45 水槽
46 洗濯兼脱水槽
47 パルセータ
48 基板
49 モータ
51 外枠
53 防振装置
67 フランジ
68 脱水回転軸
70 フランジナット
72 外周部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央底部にパルセータを回転自在に配した有底円筒状の洗濯兼脱水槽と、前記洗濯兼脱水槽を回転自在に内包する水槽と、モータにより駆動される脱水回転軸と、前記脱水回転軸と前記洗濯兼脱水槽底部とを連結支持し、略中央にボス部を有する略円盤状で金属製のフランジと、前記フランジと前記脱水回転軸を螺合締結するフランジナットとを備え、前記ボス部の側面には、上部に上部溝部を、下部に下部溝部を形成するとともに、前記フランジは、前記ボス部の外周部外方と、前記上部溝部および下部溝部を前記洗濯兼脱水槽の底部に埋設する洗濯機。
【請求項2】
前記フランジは、前記ボス部の外方に、前記ボス部と同心状に上面溝部を形成した請求項1に記載の洗濯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−56077(P2013−56077A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196826(P2011−196826)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】