説明

洗眼器

【課題】
洗眼液の漏れを確実に防止できる洗眼器を提供する。
【解決手段】
下端を閉じ、上端に開口を有してカップ状に加硫成形したシリコーンゴム製の洗眼器であって、前記洗眼器は、上端開口を囲み眼の周囲に適合する形状をなす当接縁部(a)、つまみ部(c)、つまみ部(c)から当接縁部(a)まで連続的に又は段階的に径を拡げるように延びた中間部(b)及び底部(d)からなり、中間部(b)の厚さB、つまみ部(c)及び底部(d)の厚さCにおいて、Cが0.5mm〜5mmであり、且つB/Cが2〜10の範囲内であることを特徴とする洗眼器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗眼器に関する。
【背景技術】
【0002】
コンタクトレンズを外した時や、花粉、埃等の異物が眼に入った時等の洗眼に使用される洗眼器として、例えば、特許文献1に開示されているような洗眼器が知られている。この洗眼器は、弾性材料により一体成形されており、図7の正面図に示すように、受容部101とつまみ部110とを備えている。
【0003】
受容部101は、下部に洗眼液を貯留する貯留部102を有しており、上部に貯留部102の周囲から上方に延びる移行部103を有している。移行部103の上端には、目の周囲に適合する当接縁部104が形成されている。
【0004】
つまみ部110は、受容部101の下端部に設けられており、手指で押圧することにより、後述のように貯留部101に貯留された洗眼液を押し出すことができるように受容部101と連通している。
【0005】
この洗眼器100の使用による洗眼は、以下に示すように下向き洗眼あるいは上向き洗眼により行われる。下向き洗眼では、まず、洗眼器100の貯留部102に洗眼液を注入し、次いで、顔面を下に向けたままで洗眼器100の当接縁部104を眼の周囲に押し当て、つまみ部110を2本の指で挟むようにして繰り返し押圧する。これにより、貯留部101に貯留されている洗眼液が押し上げられ、眼球に洗眼液が接触することにより、眼球に付着した汚れや、花粉、埃等の異物を洗い流すことができる。
【0006】
次に上向き洗眼では、下向き洗眼の場合と同様に、まず、洗眼器100の貯留部102に洗眼液を注入し、次いで、顔面を下に向けて洗眼器100の当接縁部104を眼の周囲に押し当てる。この状態を維持しつつ、顔面を上に向け、洗眼液が眼球に接触した状態でまぶたを繰り返し開閉したり、つまみ部110を押圧する。これにより、眼球に付着した汚れや、花粉、埃等の異物を洗い流すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−125088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されているような洗眼器を用いて洗眼を行った場合、下向き洗眼では、つまみ部の押圧により受容部が変形し、眼の周囲と当接縁部との間に隙間が生じ、当該隙間から洗眼液が漏れ出すという問題があった。また、上向き洗眼では、眼周囲へのあてがい方や手指による把持力によって受容部が変形し、目尻部からの液漏れが生じるという問題があった。
当該隙間から洗眼液が漏れ出すという問題は、この受容部の押圧による変形が、直ちに当接縁部まで伝達されるために生じる現象であり、洗眼器を構成する弾性体の硬度に起因している。受容部と当接縁部の弾性材料を異なる硬度(受容部を柔らかい材質、当接縁部を硬い材質)に設計することが考えられる。しかしながら異種の弾性体にすることは、洗眼器の成形段階において工程が煩雑となりまたコストアップを招くという問題がある。
【0009】
一方、洗眼器の縁に洗眼液が直接接触するために、洗眼器は常に清潔に保っておくことが重要である。熱湯消毒によって対処することが行われている。使用のたびにこの消毒作業を行うことは手間であり、ともすれば消毒無しにしようされることもしばしばである。このことは、本来の洗眼の目的が、眼球に付着した汚れや、花粉、埃等の異物を洗い流すことであり当然雑菌等の混入も防止する働きも求められるべきものである。しかしながら未だそのような対応を施した洗眼器は見当たらないのが現状である。
本発明は、このような問題を解決すべくなされたものであって、洗眼液の漏れを確実に防止するとともに抗菌性に優れた洗眼器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の課題に鑑み、本発明においては、下端を閉じ、上端に開口を有してカップ状に加硫成形したシリコーンゴム製の洗眼器であって、前記洗眼器は、上端開口を囲み眼の周囲に適合する形状をなす当接縁部(a)、つまみ部(c)、つまみ部(c)から当接縁部(a)まで連続的に又は段階的に径を拡げるように延びた中間部(b)及び底部(d)からなり、中間部(b)の厚さB、つまみ部(c)及び底部(d)の厚さCにおいて、Cが0.5mm〜5mmであり、且つB/Cが2〜10の範囲内であることを特徴とする洗眼器によって解決されることを見出し本発明を完成するに至った。
より具体的には、本発明は次のような洗眼器を提供する。
(1)下端を閉じ、上端に開口を有してカップ状に加硫成形したシリコーンゴム製の洗眼器であって、前記洗眼器は、上端開口を囲み眼の周囲に適合する形状をなす当接縁部(a)、つまみ部(c)、つまみ部(c)から当接縁部(a)まで連続的に又は段階的に径を拡げるように延びた中間部(b)及び底部(d)からなり、中間部(b)の厚さB、つまみ部(c)及び底部(d)の厚さCにおいて、Cが0.5mm〜5mmであり、且つB/Cが2〜10の範囲内であることを特徴とする洗眼器。
(2)JIS K6253に規定されるタイプAデュロメータにより測定される硬さが、40〜95、好ましくは、50〜90、さらに好ましくは、60〜85であることを特徴とする(1)に記載の洗眼器。
(3)当接縁部(a)が、平面視略楕円形状であって、長軸方向の一方端に目尻側当接部(a1)、他方端に目頭側当接部(a2)が形成されていることを特徴とする(1)〜(2)のいずれかに記載の洗眼器。
(4)抗菌剤を含有してなることを特徴とする(1)〜(3)に記載の洗眼器。
(5)底部(d)の形状が、凹面状であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の洗眼器。
【発明の効果】
【0011】
本発明によって得られた洗眼器は、中間部(b)が、つまみ部(c)の厚さの2倍以上に設計することによってつまみ部(c)を手指で押し挟んだとき、中間部(b)や接縁部(a)は変形しにくい構造となっており、縁からの液漏れが防止可能である。さらに、つまみ部(c)を押すことによって洗眼器内部が、減圧状態となり、接縁部(a)と皮膚が吸盤のごとく密着し洗眼液が縁から漏れるのを一層強固に防止可能である。
また、抗菌性に優れているので、煮沸消毒を必ずしも必要としない状態での使用が可能である。
底部(d)が平行あるいは凹面状であるため、自立性を有していることから、片手で洗眼液を注ぐことが可能である。また、本発明の洗眼器は、硬度の異なる材料の組み合わせによる成形ではなく、同一材料で設計されているため、工程の煩雑さもなく、コスト面においても有利であり市場性も高い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る洗眼器を示す正面図である。
【図2】図1に示す洗眼器の底面図である。
【図3】図1に示す洗眼器の側面図である。
【図4】図2のA−A断面図である。
【図5】図2のB−B断面図である。
【図6】図1のC−C断面図である。
【図7】参考図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず本発明に用いられるシリコーンゴムとしては、ジオルガノポリシロキサンを主成分(ベースポリマー)とするものであるが、その硬化方式は特に制限されず、例えば、従来公知の有機過酸化物により加硫する組成物、縮合型硬化性組成物、白金付加加硫型組成物、放射線硬化型組成物等が挙げられる。ここで使用されるジオルガノポリシロキサンとしては、平均組成式RaSiO(4-a)/2で示されるものが好ましい。
【0014】
このRは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2−エチルブチル基、オクチル基などのアルキル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基などのシクロアルキル基、ビニル基、ヘキセニル基、アリル基などのアルケニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ジフェニル基などのアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基などのアラルキル基、あるいはこれらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換した基、更にはアミノ基、エーテル基(−O−)、カルボニル基(−CO−)、カルボキシル基(−COOH)、スルフォニル基(−SO2−)などで置換された又は含有する基、例えばクロロメチル基、トリフロロプロピル基、2−シアノエチル基、3−シアノプロピル基などから選択される同一又は異種の非置換又は置換の好ましくは炭素数1〜12、特に1〜10の一価炭化水素基であり、aは1.90〜2.05である。
【0015】
この組成物が縮合硬化型の場合には、シリコーンゴム組成物のベースポリマーは分子鎖両末端が水酸基又はオルガノオキシ基で封鎖されたジオルガノポリシロキサンとされるが、良好なゴム物性を示し、機械強度の優れた硬化物を与える組成物とするには、25℃における粘度が25cs以上、好ましくは100〜1,000,000csのオルガノポリシロキサンを用いることが好ましい。また、このオルガノポリシロキサンの架橋剤としては、加水分解性の基を1分子中に2個以上有するシランあるいはシロキサン化合物が使用されるものである。
【0016】
この場合、その加水分解性の基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基、ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基などのケトオキシム基、アセトキシ基などのアシルオキシ基、イソプロペニルオキシ基、イソブテニルオキシ基などのアルケニルオキシ基、N−ブチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基などのアミノ基、N−メチルアセトアミド基などのアミド基などが挙げられる。なお、この架橋剤の配合量は、上記両末端水酸基(又はオルガノオキシ基)封鎖オルガノポリシロキサン100部(重量部、以下同様)に対し、2〜50部、特に5〜20部とすることが好ましい。
【0017】
この縮合硬化型シリコーンゴムには、通常、硬化触媒が使用され、これにはジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクトエート等のアルキル錫エステル化合物、テトライソプロポキシチタン、テトラn−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキソキシ)チタン、ジプロポキシビス(アセチルアセトナ)チタン、チタニウムイソプロポキシオクチレングリコール等のチタン酸エステル又はチタンキレート化合物、ナフテン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、亜鉛−2−エチルオクトエート、鉄−2−エチルヘキソエート、コバルト−2−エチルヘキソエート、マンガン−2−エチルヘキソエート、ナフテン酸コバルト、アルコキシアルミニウム化合物等の有機金属化合物、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノアルキル基置換アルコキシシラン、ヘキシルアミン、リン酸ドデシルアミン等のアミン化合物及びその塩、ベンジルトリエチルアンモニウムアセテート等の第4級アンモニウム塩、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、蓚酸リチウム等のアルカリ金属の低級脂肪酸塩、ジメチルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン等のジアルキルヒドロキシルアミン、テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン、テトラメチルグアニジルプロピルメチルジメトキシシラン、テトラメチルグアニジルプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン等のグアニジル基を含有するシラン又はシロキサン等が例示されるが、これらはその1種に限定されず、2種もしくはそれ以上の混合物として使用してもよい。なお、これら硬化触媒の配合量は、上記オルガノポリシロキサン100重量部に対して0重量部〜10重量部、特に0.01重量部〜5重量部が好ましい。
【0018】
またシリコーンゴムが付加加硫型シリコーンゴム組成物である場合、ベースポリマーとして使用されるオルガノポリシロキサンとしては、分子鎖末端及び/又は分子鎖中にアルケニル基を少なくとも2個有するものが使用される。その25℃の粘度は100〜10,000,000csであることが好ましい。架橋剤としては、1分子中にSiH基を少なくとも2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いる。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、公知のものを使用することができるが、25℃の粘度が300cs以下であるものが好ましい。その使用量は、主成分のオルガノポリシロキサンのアルケニル基1モル当りSiH基が0.3〜10モル、特に0.5〜5モルとすることが好ましい。この組成物には、更に硬化触媒を触媒量添加することができる。この付加反応触媒としては公知のものでよく、第VIII族の金属又はその化合物、特には白金化合物が好適に用いられる。この白金化合物としては、塩化白金酸、白金とオレフィン等との錯体などを挙げることができる。
【0019】
上記シリコーンゴムが過酸化物加硫型シリコーンゴム組成物である場合、ベースポリマーとして使用されるオルガノポリシロキサンとしては、25℃における粘度が100,000〜10,000,000csで分子鎖末端及び/又は分子鎖中にビニル基を有するものが好ましく、その硬化触媒としては、有機過酸化物が使用される。有機過酸化物の例としては、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等のアルキル系有機過酸化物、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロルベンゾイルパーオキサイド等のアシル系有機過酸化物が好適な化合物として用いられる。その配合量はオルガノポリシロキサン100重量部に対して0.1重量部〜10重量部、特に0.2重量部〜5重量部が好ましい。
【0020】
更に、シリコーンゴムが放射線硬化型シリコーンゴムである場合、ベースポリマーとして使用されるオルガノポリシロキサンとしては、分子鎖末端及び/又は分子鎖中にビニル基、アリル基、アルケニルオキシ基、アクリル基、メタクリル基等の脂肪族不飽和基、メルカプト基、エポキシ基、ヒドロシリル基などを有するものが用いられる。また、反応開始剤としては、当業界でよく知られているアセトフェノン、プロピオフェノン、ベンゾフェノン、キサントール、フルオレイン、ベンズアルデヒド、アンスラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−メチルアセトフェノン、3−ペンチルアセトフェノン、4−メトキシアセトフェノン、3−ブロモアセトフェノン、4−アリルアセトフェノン、p−ジアセチルベンゼン、3−メトキシベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4−クロロ−4’−ベンジルベンゾフェノン、3−クロロキサントール、3,9−ジクロロキサントール、3−クロロ−8−ノニルキサントール、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、ベンジルメトキシケタール、2−クロロチオキサントール等が挙げられる。その配合量は、オルガノポリシロキサン100重量部に対して0.1重量部〜20重量部、特に0.5重量〜10重量部であることが好ましい。
【0021】
本発明に用いられる抗菌剤としては、有機系抗菌剤であっても無機系抗菌剤であってもよい。
無機系抗菌剤をより具体的に例示すれば、ゼオライト系化合物、アパタイト系化合物、燐酸ジルコニウム系化合物、燐酸カルシウム系化合物、珪酸ガラス、酸化チタン、酸化亜鉛、天然酸化マグネシウムのような、少なくとも銀イオン、銅イオン、亜鉛イオンのいずれかを含有するものがある。さらに、網目構造を成すイオン群(ネットワークフォーマー)と修飾イオン群(モディファイア)とで構成される無機高分子と、該無機高分子に担持させた例えば銀イオン、銅イオン、亜鉛イオン若しくは錫イオンのごとき金属イオン、又はこれらの金属イオンを構成成分とする金属塩のいずれかとからなるものや、チオスルファト銀錯体(Na3[Ag(S2O3)2])のごとき銀イオンを含む金属錯体とからなるものであってもよい。
【0022】
これら無機系抗菌剤は、シリコーンゴム100重量部に対して0.1重量部〜2.0重量部である。0.1重量部未満では、発揮される抗菌・抗カビ効果が弱く、2重量部を超えると含有量に見合う抗菌・抗カビ効果を得ることができず、抗菌剤の無駄が多くなるからである。
【0023】
前記無機高分子がシリカゲルであり、かつ前記金属イオンが銀イオンであると、その耐熱性能は210℃程度である。この耐熱性能は、シリコーンゴムの成型作業温度以上であるから、ゴム中にこれを混練して成型しても、抗菌・抗カビ性能が消失したり、劣化したりすることがないことを意味する。
【0024】
有機系抗菌剤は、イミダゾール系、チアゾール系、ヨード系、ニトリル系、フェノール系、ハロアルキルチオ系、ピリジン系、トリアジン系、或いはブロム系の抗菌剤が例示できる。すなわち、例えば大腸菌、ぶどう球菌やレンサ球菌に代表されるグラム陽性菌、緑膿菌や枯草菌に代表されるグラム陰性桿菌等に対して感受性が期待されるものであれば何でもよい。より具体的には、例えばナリジキシン酸系やニトロフラゾン系、或いはサルファ剤等の合成抗菌剤や、ペニシリン系、マクロライド系、アミノグリコシド系、セファロスポリン系、クロラムフェニコール系、テトラサイクリン系、ポリペプチド系、リンコマイシン系、或いはポリエン系の抗生物質、(1R,2S,3R,5S,6R)−3,5−ジアミノ−6−(2,6−ジアミノ−2,6−ジデオキシ−α−Dーグルコピラノシルオキシ)シクロヘキサン−1,2−ジオール(アミノグリコシド系抗生物質)とテレフタルアルデヒドのシッフ塩基誘導体等が例示できる。
【0025】
また上記以外にも、特に耐熱性に優れていることから、2価以上の超強酸イオンを対イオンとする第4級アンモニウム超強酸塩を含有する抗菌剤が好ましい。
具体例としては、ジ−(ジn−デシルジメチルアンモニウム)ジフルオロメタンジスルホン酸塩、ジ−(ジn−デシルジメチルアンモニウム)テトラフルオロエタンジスルホン酸塩、ジ−(トリメチルn−ヘキサデシルアンモニウム)ジフルオロメタンジスルホン酸塩、ジ−(トリメチルn−ヘキサデシルアンモニウム)テトラフルオロエタンジスルホン酸塩、ジ−(ジメチルヤシ油アルキルベンジルアンモニウム)ジフルオロメタンジスルホン酸塩およびジ−(ジメチルヤシ油アルキルベンジルアンモニウム)テトラフルオロエタンジスルホン酸塩である。
通常は固体であり、その融点は通常30〜120℃であり、好ましくは40〜110℃である。
これらの有機系、無機系抗菌剤は、単独あるいは2種以上を用いてもよい。
【0026】
上記シリコーンゴムには、通常ゴム配合で使用されている各種の添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、加工助剤、活性剤、紫外線吸収剤、粘着付与剤、滑剤、奪水剤、ワックス、活性剤、光安定剤、カップリング剤、内部離型剤、スコーチ防止剤、発泡剤、発泡助剤、難燃剤、素練り促進剤、蓄熱剤、電子導電付与剤、イオン導電付与剤、熱伝導付与剤、放熱剤、蓄光剤、着色剤などを挙げることができる。
【0027】
次に本発明の洗眼器を加硫成形する方法としては、特に制限はない。
まず、シリコーンゴム、各種添加剤を、混練加工機(二本ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなど)を用いて均一に混練りした後、加硫成形機を用いて洗眼器を加硫成形する。加硫成形機としては、プレス成形機、射出成形機、トランスファー成形機などが好ましい。
【0028】
次に、成形された洗眼器について、図1〜図6を参照して説明する。図1は本発明の一実施形態に係る洗眼器の正面図、図2は平面図、図3は側面図、図4は図2のA−A断面図、図5は図2のB−B断面図、図6は図1のC−C断面図を示している。
【0029】
この洗眼器は、図4に示すように、つまみ部(c)が設けられており、上端部に上端開口を囲み眼の周囲に適合する形状をなす当接縁部(a)が設けられている。つまみ部(c)と当接縁部(a)との間には、つまみ部(c)から当接縁部(a)まで段階的に径を拡げて延びる中間部(b)が設けられている。
【0030】
当接縁部(a)は、図2に示すように、平面視略楕円形状となるように形成されており、長軸方向の両端部には、目尻側当接部(a1)と目頭側当接部(a2)とが形成されている。また、図1に示すように、当接縁部(a)は、使用者の眼の周囲形状に合せるため、中央部が下方に湾曲する滑らかな曲線形状に形成されており、当接縁部の目尻側当接部(a1)は、目頭側当接部(a2)よりも高くなるように形成されている。
【0031】
本発明の洗眼器は、JIS K6253に規定されるタイプAデュロメータにより測定される硬さが、40〜95である。好ましくは50〜90、さらに好ましくは60〜85である。40未満では、柔らか過ぎるために、つまみ部(c)を手指で押し挟むと、中間部(b)や当接縁部(a)も容易に変形し、液漏れを生じ易くなり好ましくない。また、95を超えると、つまみ部(c)を手指で押し挟むときに、より大きな力が必要となり、ちょっとしたズレが眼の周囲と当接縁部との間に隙間を生じ、当該隙間から洗眼液が漏れ出し好ましくない。
【0032】
つまみ部(c)及び底部(d)の厚さCは、0.5mm〜5mmである。0.5mm未満では液漏れを生じやすく、好ましくない。5mmを越えると、硬さが高くなり好ましくない。
中間部(b)の厚さBmmと、つまみ部(c)及び底部(d)の厚さCmmとの比B/Cは、2〜10である。2未満では、つまみ部(c)を手指で押し挟むと、中間部(b)や当接縁部(a)も変形し、液漏れを生じ好ましくない。10を超えると、中間部(b)の見掛けの硬さが高くなり好ましくない。さらに、上記した好ましい条件下においては、カップ内は、減圧状態が保持されカップが外れにくくなり液漏れ防止に効果的である。また、つまみ部(c)は、子供や老人のように押圧力の弱い人にとっても取り扱い易い。
また、底部(d)の形状は、平面状乃至は凹面状であることが好ましい。液を注ぐとき、洗眼器に手を添えなくても安定に自立していること及び洗眼時に、つまみ部(c)を指で押圧するときに、少しの圧力で洗眼できることである。
【0033】
次に、本実施形態に係る洗眼器を使用して洗眼を行う方法について説明する。
洗眼を行う方法としては下向き洗眼と上向き洗眼とがあるが、最初に下向き洗眼について説明する。洗眼を行うには、まず、所定量の洗眼液を注いだ後、当接縁部(a)の目尻側当接部(a1)を目尻側に、目頭側当接部(a2)を目頭側となるようにして洗眼器を手指で支持しながら、顔面を下に向けたままで、当接縁部(a)を眼の周囲に押し当てる。洗眼器は、ゴムにより成形されているため、眼の周囲に当接縁部(a)を押し当てる押圧力を適宜調節することにより、使用者の眼の周囲形状に密着する最適な状態に調整することができる。
【0034】
次いで、眼を開けた状態のままで、つまみ部(c)を2本の指で挟むようにして押圧する。この押圧により、つまみ部(c)が変形し、洗眼液が眼球側に押し上げられて、洗眼液が眼球に接触し眼球に付着した汚れや、花粉、埃等の異物は洗い流される。そして、つまみ部(c)の押圧を解除することにより、つまみ部(c)はゴム弾性の復元力により元の形状に戻る。このようなつまみ部(a)の押圧及びその解除を繰り返すことによって洗眼を行う。
【0035】
次に、上向き洗眼について説明する。上述した下向き洗眼と同様に、所定量の洗眼液を注いだ後、当接縁部(a)の目尻側当接部(a1)を目尻側に、目頭側当接部(a2)を目頭側となるようにして洗眼器を手指で支持しながら、顔面を下に向けたままで、当接縁部(a)を眼の周囲に押し当てる。この状態を維持しつつ、顔面を上に向け、洗眼液が眼球に接触した状態でまぶたを繰り返し開閉する。これにより、眼球に付着した汚れや、花粉、埃等の異物を洗い流すことができる。
【0036】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の具体的な態様は上記実施形態に限定されない。
【0037】
また、本実施形態においては、図1の正面図に示すように、当接縁部(a)の目尻側当接部(a1)が目頭側当接部(a2)よりも高い位置となるように構成されているが、このような構成に特に限定されるものではない。
(実施例)
【0038】
以下、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0039】
ここでは、本発明に係わる実施例1〜5と比較例1〜3を準備した。
【実施例1】
【0040】
表1のNo.1配合を用いて洗眼器を成形した。具体的には、ゴム(モメンティブ社製: TSE221−8U)100重量部に対して、抗菌剤として銀系無機抗菌剤(東亜合成社製:ノバロンVZ−100、平均粒径5μm、白色粉末)2重量部を添加し、さらに加硫剤として有機過酸化物架橋剤(モメンティブ社製:TC−8)0.5重量部を添加し、常温下、二本ロールにて混練混合し、シリコーン配合物を調製した。次にこのシリコーンゴム配合物をプレス成形機を用いて150mm×150mm×20mmのシート状に成形した。このシートをJIS K6253に準拠してタイプAデュロメータにより硬さを測定し、その結果を表1に示した。
次に、洗眼器の成形に当たって、中間部(b)の厚さを4.5mm、つまみ部(c)の厚さを1.5mmとする図1に示した形状の洗眼器用の金型を用意し、170℃のプレス成形機に取り付けた。次にシリコーンゴム配合物を所定量充填して170℃、10分の条件で加硫し、洗眼器を得た。
【実施例2】
【0041】
表1のNo.1配合を用いて洗眼器を成形した。具体的には、ゴム(モメンティブ社製: TSE221−6U)100重量部に対して、抗菌剤として有機系抗菌剤(塩酸クロルヘキシジン)1重量部を添加し、さらに加硫剤として有機過酸化物架橋剤(モメンティブ社製:TC−8)0.5重量部を添加し、常温下、二本ロールにて混練混合し、シリコーン配合物を調製した。次にこのシリコーンゴム配合物をプレス成形機を用いて150mm×150mm×20mmのシート状に成形した。このシートをJIS K6253に準拠してタイプAデュロメータにより硬さを測定し、その結果を表1に示した。
次に、洗眼器の成形に当たって、中間部(b)の厚さを6mm、つまみ部(c)の厚さを2mmとする図1に示した形状の洗眼器用の金型を用意し、170℃のプレス成形機に取り付けた。次にシリコーンゴム配合物を所定量充填して170℃、10分の条件で加硫し、洗眼器を得た。
【実施例3】
【0042】
表1のNo.3配合を用いて洗眼器を成形した。具体的には、ゴム(モメンティブ社製: TSE270−6U)100重量部に対して、抗菌剤として銀系無機抗菌剤(東亜合成社製:ノバロンVZ−100、平均粒径5μm、白色粉末)2重量部を添加し、さらに加硫剤として有機過酸化物架橋剤(モメンティブ社製:TC−8)0.5重量部を添加し、常温下、二本ロールにて混練混合し、シリコーン配合物を調製した。次にこのシリコーンゴム配合物をプレス成形機を用いて150mm×150mm×20mmのシート状に成形した。このシートをJIS K6253に準拠してタイプAデュロメータにより硬さを測定し、その結果を表1に示した。
次に、洗眼器の成形に当たって、中間部(b)の厚さを8mm、つまみ部(c)の厚さを1.5mmとする図1に示した形状の洗眼器用の金型を用意し、170℃のプレス成形機に取り付けた。次にシリコーンゴム配合物を所定量充填して170℃、10分の条件で加硫し、洗眼器を得た。
【実施例4】
【0043】
表1のNo.4配合を用いて洗眼器を成形した。具体的には、ゴム(信越化学社製: KE1950−70(A・B))100重量部に対して、抗菌剤として有機系抗菌剤(三洋化成工業社製:ネオジーミDFS)1重量部を添加し、射出成形機を用いて150mm×150mm×20mmのシート状に成形した。このシートをJIS K6253に準拠してタイプAデュロメータにより硬さを測定し、その結果を表1に示した。
次に、洗眼器の成形に当たって、中間部(b)の厚さを5mm、つまみ部(c)の厚さを2mmとする図1に示した形状の洗眼器用の金型を用意し、170℃の射出成形機に取り付けた。次に170℃、10分の条件で加硫し、洗眼器を得た。
【実施例5】
【0044】
表1のNo.5配合を用いて洗眼器を成形した。具体的には、ゴム(モメンティブ社製: TSE221−8U)100重量部に対して、抗菌剤として有機系抗菌剤(三洋化成工業社製:ネオジーミDFS)1重量部を添加し、さらにシリカ(東ソーシリカ社製:ニップシールLP)10重量部を添加し、さらに加硫剤として有機過酸化物架橋剤(モメンティブ社製:TC−8)0.5重量部を添加し、常温下、二本ロールにて混練混合し、シリコーン配合物を調製した。次にこのシリコーンゴム配合物をプレス成形機を用いて150mm×150mm×20mmのシート状に成形した。このシートをJIS K6253に準拠してタイプAデュロメータにより硬さを測定し、その結果を表1に示した。
次に、洗眼器の成形に当たって、中間部(b)の厚さを3mm、つまみ部(c)の厚さを1mmとする図1に示した形状の洗眼器用の金型を用意し、170℃のプレス成形機に取り付けた。次にシリコーンゴム配合物を所定量充填して170℃、10分の条件で加硫し、洗浄器を得た。
(比較例1)
【0045】
表1のNo.6配合を用いて洗眼器を成形した。具体的には、ゴム(モメンティブ社製: TSE221−4U)100重量部に対して、加硫剤として有機過酸化物架橋剤(モメンティブ社製:TC−8)0.5重量部を添加し、常温下、二本ロールにて混練混合し、シリコーン配合物を調製した。次にこのシリコーンゴム配合物をプレス成形機を用いて150mm×150mm×20mmのシート状に成形した。このシートをJIS K6253に準拠してタイプAデュロメータにより硬さを測定し、その結果を表1に示した。
次に、洗眼器の成形に当たって、中間部(b)の厚さを4.5mm、つまみ部(c)の厚さを3mmとする図1に示した形状の洗眼器用の金型を用意し、170℃のプレス成形機に取り付けた。次にシリコーンゴム配合物を所定量充填して170℃、10分の条件で加硫し、洗眼器を得た。

(比較例2)
【0046】
表1のNo.7配合を用いて洗眼器を成形した。具体的には、実施例5のシリカを20重量部とし、抗菌剤を添加しない他は、同様にしてシリコーン配合物を調製した。次にこのシリコーンゴム配合物をプレス成形機を用いて150mm×150mm×20mmのシート状に成形した。このシートをJIS K6253に準拠してタイプAデュロメータにより硬さを測定し、その結果を表1に示した。
次に、洗眼器の成形に当たって、中間部(b)の厚さを2mm、つまみ部(c)の厚さを2mmとする図1に示した形状の洗眼器用の金型を用意し、170℃のプレス成形機に取り付けた。次にシリコーンゴム配合物を所定量充填して170℃、10分の条件で加硫し、洗眼器を得た。
実施例1〜5はいずれも液漏れ無し。一方、比較例1、比較例2はいずれも液漏れを生じた。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端を閉じ、上端に開口を有してカップ状に加硫成形したシリコーンゴム製の洗眼器であって、前記洗眼器は、上端開口を囲み眼の周囲に適合する形状をなす当接縁部(a)、底部(d)、つまみ部(c)、つまみ部(c)から当接縁部(a)まで連続的に又は段階的に径を拡げるように延びた中間部(b)からなり、中間部(b)の厚さB、つまみ部(c)及び底部(d)の厚さCにおいて、Cが0.5mm〜5mmであり、且つB/Cが2〜10の範囲内であることを特徴とする洗眼器。
【請求項2】
JIS K6253に規定されるタイプAデュロメータにより測定される硬さが、40〜95、好ましくは、50〜90、さらに好ましくは、60〜85であることを特徴とする請求項1に記載の洗眼器。
【請求項3】
当接縁部(a)が、平面視略楕円形状であって、長軸方向の一方端に目尻側当接部(a1)、他方端に目頭側当接部(a2)が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項2のいずれかに記載の洗眼器。
【請求項4】
抗菌剤を含有してなることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の洗眼器。
【請求項5】
底部(d)の形状が、凹面状であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の洗眼器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−246844(P2010−246844A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102122(P2009−102122)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【出願人】(302067844)株式会社ツーワン (12)
【Fターム(参考)】