説明

洗米排水の処理方法、並びに洗米排水濃縮液、それを用いた飼料、飲食品、化粧品及び肥料並びにその製造方法

【課題】洗米排水の再利用化を図ると同時に洗米排水の廃棄処理の効率化、低コスト化を実現し得る洗米排水の処理方法を提供する。
【解決手段】精白米を洗米する洗米工程と、前記洗米工程で排出した洗米排水を濃縮して固形分を10〜30重量%にする濃縮工程と、前記濃縮工程で脱水した回収水の一部又は全部を廃棄処理する廃棄処理工程と、前記濃縮工程で得られた濃縮液を飼料、飲食品又は肥料として再利用する再利用工程と、を有することを特徴とする洗米排水の処理方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗米排水の処理方法に関する。詳しくは、洗米排水の再利用化及び洗米排水の廃棄処理の効率化等を実現可能な洗米排水の処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無洗米の工業的製造工程では、1時間当たり数トンの精白米の洗米処理が可能であり、数百リットルもの洗米排水が排出される。無洗米の洗米排水は粗蛋白質や粗糖質等の固形分の濃度が比較的高いため、そのまま浄化設備に供すると浄化槽等の目詰まり等の障害を発生させたり、環境汚染等を引き起こす原因となる。このため、従来は、洗米排水中の固形分を沈殿させ、固形物は産業廃棄物として廃棄等したうえで、残液(上澄み)のみを更に浄化設備に供して廃水処理していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特開2007−38214
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、洗米排水中の固形分の沈殿除去処理に巨大な設備が必要なうえ、コストも時間もかかるという問題があった。
【0005】
本発明は上記従来技術の有する問題点に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、洗米排水の再利用化を図ると同時に洗米排水の廃棄処理の効率化、低コスト化を実現し得る洗米排水の処理方法を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、栄養価が高く、栄養バランスも良く、消化効率にも優れた洗米排水濃縮液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0008】
(1)すなわち、本発明は、精白米を洗米する洗米工程と、前記洗米工程で排出した洗米排水を濃縮して固形分を10〜30重量%にする濃縮工程と、前記濃縮工程で脱水した回収水の一部又は全部を廃棄処理する廃棄処理工程と、前記濃縮工程で得られた濃縮液を飼料、飲食品又は肥料として再利用する再利用工程と、を有することを特徴とする洗米排水の処理方法である。
【0009】
(2)また、本発明は洗米排水を濃縮して得られる濃縮液であって、固形分10〜30重量%を含むことを特徴とする洗米排水濃縮液である。
【0010】
(3)本発明はまた、前記固形分は、粗蛋白質13〜23重量%、粗脂肪13〜20重量%、粗繊維1〜3重量%、粗灰分8〜15重量%及び実質的な残余が粗糖質である(2)に記載の洗米排水濃縮液である。
【0011】
(4)本発明はまた、(2)又は(3)に記載の洗米排水濃縮液を含む飼料である。
【0012】
(5)本発明はまた、固形飼料を混合して、流動状又は半流動状の飼料として利用される(4)に記載の飼料である。
【0013】
(6)本発明はまた、前記固形飼料は、トウモロコシ、キャッサバ、小麦、きび又はあわである(5)に記載の飼料である。
【0014】
(7)本発明はまた、豚用である(4)〜(6)の何れか1項に記載の飼料である。
【0015】
(8)本発明はまた、(2)又は(3)に記載の洗米排水濃縮液を含む飲食品である。
【0016】
(9)本発明はまた、(2)又は(3)に記載の洗米排水濃縮液を含む化粧品である。
【0017】
(10)本発明はまた、(2)又は(3)に記載の洗米排水濃縮液を含む肥料である。
【0018】
(11)さらに、本発明は、精白米を洗米する洗米工程と、前記洗米工程で排出した洗米排水を濃縮して固形分を10〜30重量%にする濃縮工程と、を含むことを特徴とする洗米排水濃縮液の製造方法である。
【0019】
(12)本発明はまた、洗米工程は、精白米を無洗米製造装置により洗米することを特徴とする(11)に記載の洗米排水濃縮液の製造方法である。
【0020】
(13)本発明はまた、濃縮工程は、前記洗米排水を加熱及び減圧脱水して濃縮することを特徴とする(11)又は(12)に記載の洗米排水濃縮液の製造方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の洗米排水の処理方法によれば、洗米排水を濃縮処理することにより、濃縮液を飼料等として再利用することができると共に、脱水した回収液を廃棄処理に供することができるので、従来の固形分の沈殿処理や廃棄に要したコストや時間等が不要になり、経済的かつ効率的に洗米排水を処理することができる。
【0022】
また、本発明により得られる洗米排水濃縮液は、固形分の含有量が高く極めて栄養価が高いうえに栄養バランスも良く、また、液体であるので消化吸収もし易いうえ取り扱いも容易である。
【0023】
従って、本発明の洗米排水濃縮液は、飼料、飲食品、化粧品、肥料等として有用であり、特に、本発明の洗米排水濃縮液に固形飼料を混合して流動状又は半流動状の飼料として利用した場合、家畜の発育を良好にし健康状態も極めて良好に維持することができる。
【0024】
また、本発明の前記飼料は、従来の固形飼料(乾燥飼料)に比べて飼育舎内の粉塵を押さえることができるので、作業者の呼吸器への悪影響を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0026】
本発明の洗米排水濃縮液は、洗米排水を濃縮して得られる濃縮液であって、固形分を10〜30重量%、好ましくは15〜25重量%、特に好ましくは18〜22重量%含有するものである。洗米排水濃縮液中の固形分の含有量が上記下限未満では、栄養価が低くなり、飼料、飲食品、化粧品、肥料等としての利用価値が著しく低下するので好ましくなく、一方、固形分の含有量が上記上限を超えると、濃縮液の粘性が高くなり液性、流動性が低下して食感、味覚等が悪くなったり、取り扱い性が悪くなったりするばかりでなく、製造効率が低下してコストが嵩んだり、洗米排水の処理が滞ってしまい無洗米製造における排水処理としての意義が失われてしまうので好ましくない。
【0027】
また、本発明の洗米排水濃縮液に含まれる前記固形分の構成成分は、粗蛋白質が13〜23重量%、粗脂肪が13〜20重量%、粗繊維が1〜3重量%、粗灰分が8〜15重量%及び実質的な残余が粗糖質である。これらの固形分成分が上記範囲を外れると、濃縮液の栄養バランスが崩れ、飼料、飲食品、化粧品、肥料等としての利用がし難くなるので好ましくない。
【0028】
本発明の洗米排水濃縮液は、精白米を洗米する工程で排出した洗米排水を上記固形分の含有量になるように濃縮することによって製造することができる。
【0029】
本発明で利用される洗米排水は、精白米を洗米する際に排出されるものであれば特に限定されないが、無洗米製造装置による洗米排水が上記固形分の含有量が初めから少し高いので好適に利用される。ここで、無洗米製造装置とは、精白米と水とを撹拌羽根やスクリュー等により撹拌・搬送しながら水中搗精(水洗い)することにより無洗米を製造する装置であり、既知の水洗い乾燥法・湿式法による無洗米製造装置を利用することができる。
【0030】
また、本発明における洗米排水の濃縮処理の方法は特に限定されず、加熱による方法であっても減圧による方法であってもよいが、好適には、加熱下で減圧脱水する方法により行われる。この場合、利用される減圧脱水装置は、通常は1つ又は複数の蒸留釜を有しており、蒸留釜に給液された洗米排水に対して加熱及び減圧脱水処理を施すことができるように構成されている。かかる減圧脱水処理は、通常は真空度−75〜−90Kpa、温度55〜65℃で、洗米排水200〜300L当り0.5〜2時間施される。蒸留釜により減圧脱水された洗米排水の濃縮液は濃縮液タンクに製品として貯蔵され、一方、蒸留釜により蒸発した水は冷却されて回収水タンクに回収され、一部は冷却水等として循環使用され、その他はそのまま又は適切な浄化処理が施された後廃水として処分される。このように、本発明による洗米排水の濃縮処理の方法は、無洗米製造により発生する洗米排水を濃縮液として飼料、飲食品、肥料等に再利用することができると同時に、除去した回収水を簡便かつ安全に廃棄することができるので、洗米排水の処理方法としても極めて有用なものである。
【0031】
本発明の洗米排水濃縮液は、適当量の固形飼料を混合して流動状又は半流動状の飼料として利用することができる。混合する固形飼料としては、トウモロコシ、キャッサバ、小麦、大麦、きび、あわ等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が組み合わせて使用されるが、混合する固形飼料の種類や組合せ、配合量等は、家畜の養分要求量等に応じて適宜設計される。本発明の洗米排水濃縮液は、ブタ、ウシ等の家畜の飼料として利用できるが、これらの中では特にブタの飼料として好適に利用することができる。
【0032】
また、本発明の洗米排水濃縮液は、適当な調味料、香料、保存料、着色料等を添加して栄養補給用の健康飲料としたり、他の食材に添加したりして飲食品として利用することができる。また、本発明の洗米排水濃縮液に、適当な油性成分、界面活性剤、保湿剤、増粘剤、防腐剤、顔料、粉体、pH調節剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、香料、色素、精製水等を適宜配合して化粧品として利用することができる他、そのまま又は他の肥料成分と混合して液体肥料等として利用することができる。
【実施例1】
【0033】
次に、本発明の洗米排水濃縮液及び洗米排水の処理方法を、実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0034】
精白米1800kgを、無洗米装置(型式:SJR2A、サタケ社製)を用いて1時間洗米処理した。この際使用した水の量は360Lであり、排水もほぼ同量であった。次いで、排出された洗米排水をタンクに一時貯蔵した後、タンクから減圧脱水装置(「減」型式:750型、大和化学社製)の3つの蒸留釜にそれぞれ1回当り260Lずつ給液し、真空度−80〜−85Kpa、温度60℃で減圧脱水処理して、1〜1.5時間で80Lの濃縮液と180Lの回収水を得た。
【0035】
得られた濃縮液の成分の分析結果を表1に示した。
【表1】

【0036】
表1の結果から明らかなとおり、本発明の洗米排水濃縮液は、固形分の含有量が高く、極めて栄養価が高くそのバランスも良いので、飼料、飲食品、化粧品、肥料等に有用であることがわかった。
【0037】
また、得られた回収水の汚染度の分析結果を表2に示した。
【表2】

【0038】
表2の結果から明らかなとおり、本発明の洗米排水の処理方法により得られる回収水は、元の洗米排水と比較して極めて浄化度が高く、安全に廃棄することができることがわかった。
【実施例2】
【0039】
1群が雄雌各30匹からなり平均体重が70kgであるブタの成体群を用い、トウモロコシ、キャッサバ、小麦等の固形飼料のみを給餌した群を対照群とし、対照群に給餌した固形飼料のうち20%を実施例1で得られた洗米排水濃縮液に置き換えて混合調整した流動状飼料を給餌した群を被験群として、それぞれ平均体重が100kgになるまで飼育した。
【0040】
本発明の流動状飼料で飼育した被験群は、固形飼料のみで飼育した対照群に対して、飼料の摂食量が有意に増加し、対照群は平均体重100kgに到達するまで8週間かかったのに対し、被験群は7週間しかかからなかった。また、対照群に対し、被験群では糞尿の臭いも低減され、消化器官の働きが極めて良好であることが認められた。さらに、両群から得られた食肉をステーキに加工したものを、老若男女20人のモニターが食して官能評価したところ、被験群の方が対照群よりも有意に肉が柔らかいという評価が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0041】
上述したように、本発明の洗米排水の処理方法は、洗米排水の濃縮液を飼料等として再利用すると共に、回収液を廃棄処理に供することができるので、無洗米の製造工程等における洗米排水の処理に用いた場合極めて有用である。
【0042】
また、本発明の洗米排水濃縮液は、栄養価が高く、栄養バランスも良く、消化効率にも優れているうえ、取り扱いにも優れるので、液状又は半液状の飼料、食品、肥料等として利用した場合極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
精白米を洗米する洗米工程と、
前記洗米工程で排出した洗米排水を濃縮して固形分を10〜30重量%にする濃縮工程と、
前記濃縮工程で脱水した回収水の一部又は全部を廃棄処理する廃棄処理工程と、
前記濃縮工程で得られた濃縮液を飼料、飲食品又は肥料として再利用する再利用工程と、
を有することを特徴とする洗米排水の処理方法。
【請求項2】
洗米排水を濃縮して得られる濃縮液であって、固形分10〜30重量%を含むことを特徴とする洗米排水濃縮液。
【請求項3】
前記固形分は、粗蛋白質13〜23重量%、粗脂肪13〜20重量%、粗繊維1〜3重量%、粗灰分8〜15重量%及び実質的な残余が粗糖質である請求項2に記載の洗米排水濃縮液。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の洗米排水濃縮液を含む飼料。
【請求項5】
固形飼料を混合して、流動状又は半流動状の飼料として利用される請求項4に記載の飼料。
【請求項6】
前記固形飼料は、トウモロコシ、キャッサバ、小麦、きび又はあわである請求項5に記載の飼料。
【請求項7】
豚用である請求項4〜6の何れか1項に記載の飼料。
【請求項8】
請求項2又は3に記載の洗米排水濃縮液を含む飲食品。
【請求項9】
請求項2又は3に記載の洗米排水濃縮液を含む化粧品。
【請求項10】
請求項2又は3に記載の洗米排水濃縮液を含む肥料。
【請求項11】
精白米を洗米する洗米工程と、
前記洗米工程で排出した洗米排水を濃縮して固形分を10〜30重量%にする濃縮工程と、
を含むことを特徴とする洗米排水濃縮液の製造方法。
【請求項12】
洗米工程は、精白米を無洗米製造装置により洗米することを特徴とする請求項11に記載の洗米排水濃縮液の製造方法。
【請求項13】
濃縮工程は、前記洗米排水を加熱及び減圧脱水して濃縮することを特徴とする請求項11又は12に記載の洗米排水濃縮液の製造方法。

【公開番号】特開2012−120972(P2012−120972A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273065(P2010−273065)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(300090178)みたけ食品工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】