洗車具
【課題】液状洗剤を供給して泡を生成する泡立て体を備えた洗浄ヘッドにおいて、より効率よく泡を生成する泡立て体を開発する。
【解決手段】供給ノズルを設けた洗剤タンク2と、前記洗剤タンク2の底面を上面として錐台状に広がる弾性カバー3と、前記弾性カバー3の下周縁に装着した毛皮洗浄体4と、そして弾性カバー3及び毛皮洗浄体4に挟まれて前記弾性カバー3内に保持される泡立て体5とから構成される洗浄ヘッド11を備えた洗車具において、泡立て体5は、洗剤タンク2の供給ノズルに始端が接続される供給パイプ51と、前記供給パイプ51の終端が接続され、複数の供給孔521を開口した閉環状パイプ52と、前記閉環状パイプ52に外嵌した内環状網体53及び外環状網体54とから構成される。
【解決手段】供給ノズルを設けた洗剤タンク2と、前記洗剤タンク2の底面を上面として錐台状に広がる弾性カバー3と、前記弾性カバー3の下周縁に装着した毛皮洗浄体4と、そして弾性カバー3及び毛皮洗浄体4に挟まれて前記弾性カバー3内に保持される泡立て体5とから構成される洗浄ヘッド11を備えた洗車具において、泡立て体5は、洗剤タンク2の供給ノズルに始端が接続される供給パイプ51と、前記供給パイプ51の終端が接続され、複数の供給孔521を開口した閉環状パイプ52と、前記閉環状パイプ52に外嵌した内環状網体53及び外環状網体54とから構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手作業での洗車に適した洗車具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、比較的小型の自動車、例えば普通自動車を個人が洗車する場合に好適な洗車具として、底面に供給ノズルを設けた洗剤タンクと、前記洗剤タンクの底面を上面として錐台状に広がる弾性カバーと、前記弾性カバーの下周縁に装着した毛皮洗浄体と、そして弾性カバー及び毛皮洗浄体に挟まれて前記弾性カバー内に保持される泡立て体とから構成される洗浄ヘッドを備えた洗車具を開示する(特許文献1[請求項1])。
【0003】
特許文献1が開示する洗車具は、洗剤タンクから弾性カバー内へ液状洗剤を供給し、毛皮洗浄体又は泡立てスポンジに水を含ませて、前記弾性カバーの変形によって圧縮及び復元を繰り返すことにより、泡立てスポンジが液状洗剤を泡立てる。このとき、弾性カバーの下周縁に毛皮洗浄体を装着しているので、この毛皮洗浄体に液状洗剤及び泡が染み込み又は絡ませて、洗浄ヘッドが泡を抱える格好にできる(特許文献1[0008])。
【0004】
洗浄タンクは、上下又は左右に揺動する自在継ぎ手を介して柄を接続している(特許文献1[0009])。弾性カバーは、空気孔を開口して、毛皮洗浄体が車体に密着することによる弾性カバー内の負圧を防止し、弾性カバー内へ空気を取り込んで、圧縮及び復元するスポンジによる泡立てを促進させる(特許文献1[0010])。また、下周縁から母線方向に設けた多数のスリットで区画される多数の弾性片により泡立てスポンジを押さえ込み、圧縮及び復元の変動量を大きくしている(特許文献1[0011])。
【0005】
毛皮洗浄体は、羊の毛皮(ムートン)を例示している(特許文献1[0012])。泡立てスポンジは、弾性カバーに倣った錐台側面を有し、かつ平面視形状が毛皮洗浄体と相似な円環状である(特許文献1[0012])。特許文献1が開示する洗車具は、液状洗剤を含み、水を吸った泡立てスポンジを大きく圧縮及び復元させることで、非常に泡立ちがよく、車体に密着しやすい毛皮洗浄体と相俟って、優れた洗浄作用を発揮する効果をもたらすとしている(特許文献1[0013])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-142857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1が開示する洗車具は、泡立てスポンジの圧縮及び復元による液状洗剤の泡立ちが顕著で、個人が用いる洗車具として優れていたが、必要十分の泡立ちを確保するためにはある程度容積を占める泡立ちスポンジが必要になるところ、前記泡立ちスポンジが水を吸って過剰に重くなることが分かった。とりわけ、洗浄タンクに柄を接続した構成の場合、柄の先端に構成される洗浄ヘッドが重くなると、とたんに洗浄ヘッドを左右又は上下に動かす際のモーメントが大きくなり、操作性が悪くなる問題をもたらす。
【0008】
また、液状洗剤と空気とを混ぜて泡立てる部材=泡立て体としての泡立てスポンジは、弾性カバー内に占める容積の割に、それほど多くの泡を生成させるものでもないことがわかった。確かに、以前の同種洗車具に比べ、特許文献1が開示する洗車具の泡立ちは優れているが、泡立てスポンジの泡を生成する部分は主に表面のみであり、全体をうまく利用していない問題があった。そこで、基本構成は特許文献1が開示する洗浄ヘッドを踏襲しながら、より効率よく泡を生成する泡立て体を開発するため、検討した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
検討の結果開発したものが、供給ノズルを設けた洗剤タンクと、前記洗剤タンクの底面を上面として錐台状に広がる弾性カバーと、前記弾性カバーの下周縁に装着した毛皮洗浄体と、そして弾性カバー及び毛皮洗浄体に挟まれて前記弾性カバー内に保持される泡立て体とから構成される洗浄ヘッドを備えた洗車具において、泡立て体は、洗剤タンクの供給ノズルに始端が接続される供給パイプと、前記供給パイプの終端が接続され、複数の供給孔を開口した閉環状パイプと、前記閉環状パイプに外嵌した環状網体とから構成される洗車具である。弾性カバーは、後述するように、毛皮洗浄体を取付けるための取付カバーが装着される場合がある。この場合、弾性カバー及び毛皮洗浄体に挟まれる泡立て体は、取付カバーの内面と毛皮洗浄体の上面とに環状網体を摺接させる。
【0010】
泡立て体は、供給パイプが接続された閉環状パイプを環状網体で包み込んだ外観を備える。供給パイプは、洗剤タンクと閉環状パイプとを結ぶことができればよいため、少なくとも可撓性を備えていることが望まれる。閉環状パイプは、弾性カバーの変形に伴う弾性カバー内の圧力変動を利用して供給孔から液状洗剤を放出する。特に弾性を備えた閉環状パイプは、環状網体を環状に保持する保形性を有するほか、自身が物理的な圧縮及び復元を繰り返して供給孔から液状洗剤を放出することもできる。閉環状パイプに設けられる供給孔は、半径方向内向きに設けるとよく、閉環状パイプの周方向等間隔で2個〜6個設けるとよい。これらに対し、環状網体は、網目の変形により泡を生成するため、弾性又は可撓性を備えていることが望まれる。
【0011】
本発明の洗車具は、特許文献1が開示する洗車具の泡立てスポンジに代えて、洗剤タンクの供給ノズルに始端が接続される供給パイプと、前記供給パイプの終端が接続され、複数の供給孔を開口した閉環状パイプと、前記閉環状パイプに外嵌した環状網体とから構成される泡立て体を用いる。液状洗剤は、洗剤タンクから供給パイプを通じて閉環状パイプに供給され、弾性カバーの変形に伴う弾性カバー内の圧力変動や弾性を備えた閉環状パイプの圧縮及び復元の働きを利用して前記閉環状パイプの供給孔から環状網体内に放出され、前記環状網体内で水と撹拌される。泡立て体は、水と撹拌された液状洗剤が網目に膜を張り、環状網体の内外に流入又は流出する空気が前記膜を膨らませて泡を生成する。
【0012】
泡立てスポンジに代わる泡立て体を除き、本発明の洗車具の洗浄ヘッドは、特許文献1が開示する洗車具同様に構成できる。例えば洗剤タンクは、上下又は左右に揺動する自在継ぎ手を介して柄を接続するとよい。また、弾性カバーは、弾性を備えた樹脂板又は金属板を円錐状にまるめて形成するとよい。そして、毛皮洗浄体は、羊の毛皮(ムートン)を例示できる。後述するように、毛皮洗浄体は、弾性カバーの下周縁に直接取り付けるのではなく、弾性カバーに装着する取付カバーに取り付けるとよい。このとき、取付カバーの下周縁に環状の帯布を設けておくと、弾性カバー内に泡立て体を収納する空間を形成できる。帯布の内周面に沿って環状の弾性リングを介装すると、前記帯布により形成される空間の保形性が向上する。
【0013】
泡立て体を構成する環状網体は、弾性カバーの変形に応じて変形する可撓性又は弾性を備えていれば、素材や網目の大きさを問わないし、環状網体を複数重ねた多重構造でもよい。しかし、弾性カバー及び毛皮洗浄体に挟まれる狭い空間に収納でき、水及び空気を流入させて液状洗剤と十分に混ざり合せるため、泡立て体は、環状網体が内環状網体と外環状網体との二重構造が好適である。二重構造の環状網体は、内環状網体及び外環状網体の網目を交差させて大きさの変化する網目を形成し、前記網目に張った膜自体を変形させて泡の生成を促す。二重構造の環状網体は、内環状網体及び外環状網体の網目を交差させて形成される網目の並ぶ面が一層であり、前記網目に張った膜に内外から空気が流入し、膨らませやすい。
【0014】
より好ましい泡立て体は、環状網体が相対的に網目の小さい内環状網体と相対的に網目の大きい外環状網体との二重構造である。例えば内環状網体の網目が相対的に小さく、逆に外環状網体の網目が相対的に大きい場合、両者の網目が交差して形成される網目の大きさは、内環状網体が動くと小さく変化し、外環状網体が動くと大きく変化するため、前記網目に張った膜の変化をより大きくし、泡の生成を促進させる。内環状網体及び外環状網体は、相対的に網目の大きさが異なればよいが、外環状網体の網目が小さいと内環状網体に向けて空気や水の流入が制限されやすくなるので、内環状網体の網目が相対的に小さく、逆に外環状網体の網目が相対的に大きい構成が好ましい。
【0015】
液状洗剤は、供給パイプを経て閉環状パイプへ供給されるため、特許文献1が開示する洗車具のように、洗剤タンクの底面に設けた供給ノズルに供給パイプを接続する構成にしても、閉環状パイプへ供給できる。この場合、水は洗車具と別に通常ホースにより車体に吹き付ける。また、供給パイプを接続する供給ノズルはそのまま設けながら、別途洗剤タンクの底面に水噴射ノズルを設け、前記洗剤タンクに接続した柄、洗剤タンクを貫通する給水パイプを通じて前記水噴射ノズルから弾性カバー内へ水を噴射するようにしてもよい。この場合、洗車具だけで液状洗剤及び水を供給できる。
【0016】
弾性カバーは、空気孔を開口し、弾性カバー内の負圧が保持され、毛皮洗浄体が車体に密着することを防止すると共に、一時的な負圧を解消するため、前記空気孔から弾性カバー内に対して空気を流入又は流出させて圧力変動を招き、液状洗剤を放出させ、また環状網体による泡立てを促進させるとよい。更に、弾性カバー内に対して流入又は流出する空気の量を大きくするため、弾性カバーの下周縁から母線方向に設けた多数のスリットで区画される多数の弾性片を形成し、弾性カバーの変形量を大きくするとよい。この場合、スリットが弾性カバーの内外を連通させることになるので、毛皮洗浄体に取付カバーを設け、前記取付カバーにより弾性カバーのスリットを覆わせて、塞ぐとよい。
【0017】
このほか、泡立て体は、弾性カバーの内面に設けた粗雑面を環状網体に摺接させたり、毛皮洗浄体の上面に設けた粗雑面を環状網体に摺接させたりするとよい。環状網体は、自身が変形することにより網目に形成した膜から泡を生成したり、二重構造の場合、内環状網体及び外環状網体の網目を交差させて形成される網目に形成した膜から泡を生成したりする。粗雑面は、環状網体に引っかかることにより、前記環状網体の変形を複雑にして、泡の生成を促進させる。これから、粗雑面は、環状網体に引っかかる摩擦を生ずる面であればよく、例えば環状網体がネットを丸めて構成している場合、前記環状網体を構成するネットを利用することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、比較的小型の自動車、例えば普通自動車を個人が洗車する場合に好適な洗車具を提供する。特に、本発明の洗車具は、水を吸わない環状網体から構成される泡立て体による泡立ちがよく、車体外面を傷つけずに泡を拡散させて汚れを落とす毛皮洗浄体と相俟って、優れた洗浄作用を発揮する。また、洗浄ヘッドは、洗剤タンクのほか重量物がないことから、取扱いも容易である。このほか、泡立て体は、泡を生成する本体である閉環状パイプ及び環状網体を毛皮洗浄体及び弾性カバーの間に保持させているだけなので、交換が容易である。本願発明の洗車具は、これら効果又は利点が相俟って、特に個人利用に適した洗車具になっている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の洗車具の一例を示す斜視図である。
【図2】本例の洗車具の分解斜視図である。
【図3】本例の洗車具に用いる泡立て体の分解斜視図である。
【図4】本例の洗車具の側面図である。
【図5】本例の洗車具の平面図である。
【図6】本例の洗車具の底面図である。
【図7】図4中A−A断面図である。
【図8】本例の洗車具の縦断面図である。
【図9】別例の洗車具の縦断面図である。
【図10】本例の洗車具を押さえつけた状態の縦断面図である。
【図11】本例の洗車具を押さえつけてから解放した状態の縦断面図である。
【図12】泡立て体の部分拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。本発明を適用した洗車具1は、図1に見られるように、外観は従来同種の洗車具、特に特許文献1が開示する洗車具とほとんど同じである。構成においても、図2に見られるように、揺動自在な柄12を接続した洗剤タンク2、前記洗剤タンク2の底面から錐台状に広がる弾性カバー3、前記弾性カバー3の下周縁に装着した毛皮洗浄体4とから洗浄ヘッド11を構成する。特許文献1が開示する洗車具との大きな相違点は、スポンジからなる泡立て体(特許文献1)に対し、図3に見られるように、供給パイプ51を接続した閉環状パイプ52を内環状網体53及び外環状網体54で包んで泡立て体5を構成している点にある。
【0021】
泡立て体5は、洗剤タンク2の供給ノズル211(後掲図6ほか参照)に始端が接続される供給パイプ51と、前記供給パイプ51の終端が接続され、複数の供給孔521を開口した閉環状パイプ52と、前記閉環状パイプ52に外嵌した内環状網体53及び外環状網体54とから構成される。供給パイプ51及び閉環状パイプ52は、弾性を備えた樹脂製パイプである。これにより、泡立て体5は、弾性カバー3及び毛皮洗浄体4を組み付けた後、毛皮洗浄体4の毛44に囲まれた開放下面から、閉環状パイプ52を弾性変形させながら弾性カバー3の内部へ押し込むことができる。供給パイプ51は、弾性カバー3の内部へ閉環状パイプ52、内環状網体53及び外環状網体54を押し込んだ後、始端を洗浄タンク2の供給ノズル211に接続する。
【0022】
閉環状パイプ52は、樹脂製のT字接続ブロック55を基点に周方向等間隔に3個の供給孔521を半径内向きに開口している。供給孔521は、供給される液状洗剤6が直接取付カバー41の合成樹脂製織布に付着したり、縫着線にしみ込んだりしないように、半径内向きに開口することが望ましい。弾性を備えた閉環状パイプ52は、両端をT字接続ブロック55に拘束され、平面視円環状を形成し、外嵌する内環状網体53及び外環状網体54を全体として環状にする保形性を発揮する。供給孔521の大きさは、閉環状パイプ52の内径より小さく、前記保形性を損ねなければ自由であり、複数の供給孔521相互で大きさが異なってもよい。本例の供給孔521は、閉環状パイプ52の内径の半分程度であり、すべて同じ大きさである。
【0023】
内環状網体53及び外環状網体54は、可撓性を備えた樹脂製糸で織成又は編成された樹脂製ネットである。本例は、相対的に内環状網体53の網目を小さく、外環状網体54の網目を大きくしている。内環状網体53は、閉環状パイプ52に対して拘束されておらず、内環状網体53及び外環状網体54は、互いに拘束されていないことから、いずれも周方向に動くことができる。内環状網体53及び外環状網体54が周方向に動く量は、後述するように、供給パイプ51を接続するT字接続ブロックの突起部分が内環状網体53及び外環状網体54を貫通しているため、内環状網体53及び外環状網体54が周方向に回転する程度ではなく、それぞれの変形が許される範囲で周方向にずれる程度である。
【0024】
本例の泡立て体5は、中空のT字管路を内蔵する樹脂製のT字接続ブロック55の両端に、棒状に切り出した樹脂製パイプの両端を接続して閉環状パイプ52を構成し、前記T字接続ブロック55の突起部分に供給パイプ51の終端を接続している。内環状網体53及び外環状網体54は、長尺な長方形に切り出した樹脂製ネットの長辺を縫い合わせて筒状にし、閉環状パイプ52を構成する樹脂製パイプを挿通した後、短辺を縫い合わせて環状にしている。供給パイプ51は、内環状網体53及び外環状網体54を貫通して突出させたT字接続ブロック55の突起部分に終端を接続する。便宜上、図3は、供給パイプ51、閉環状パイプ52及びT字接続ブロック55が接続され、また樹脂製ネットを縫着して内環状網体53及び外環状網体54が完成した状態で図示している。
【0025】
洗浄ヘッド11における泡立て体5以外の構成要素を、図4〜図8(図8は、左半分が取付カバー41の外面である防水カバー411のみを切断、右半分が弾性カバー3までを切断している)により説明する。洗剤タンク2は、上面を開放し、底面に下方を向けて供給ノズル211を突出させた平面視円形である樹脂製の筒状本体21から構成される。筒状本体21の開放された上面は、着脱自在な蓋22により塞がれる。蓋22は、洗浄タンク2の内外における圧力平衡のため、小さな通気孔221を設けている。液状洗剤6は、蓋22を開いて筒状本体21の内部に供給される。供給ノズル211は、筒状本体21の内部と外部とを繋ぐ連通孔を設けた突起であり、泡立て体5の供給パイプ51の始端を外嵌して接続する。本例の供給ノズル211は、特に開閉弁を設けていない。これから、筒状本体21の内部に貯留される液状洗剤6は、泡立て体5の閉環状パイプ52に設けた供給孔521を通じて加えられる負圧に応じて、適宜供給パイプ51へ流れ込む。
【0026】
筒状本体21の底面は、下方に向けて内部と連通する供給ノズル211を囲むように、内周面に雌ネジ213を設け、円錐台側面に倣った傾斜面を下端周縁に形成した環状フランジ214を構成している。雌ネジ213は、手で掴んで廻すための羽根231を設け、上端周縁に前記環状フランジ214の下端周面と転写関係にある傾斜面を形成した環状雄ネジ23を螺着する。環状雄ネジ23は、中心部分が上下に連通しており、泡立て体5の供給パイプ51は、前記連通部分を通して供給ノズル211に接続する。弾性カバー3は、上部開口を囲む円錐台状の上縁部分を、前記環状フランジ214の下端周縁に形成した傾斜面と環状雄ネジ23の上端周縁に形成した傾斜面とに挟まれ、前記上縁部分を洗剤タンク2の底面に固定する。弾性カバー3は、環状雄ネジ23を緩めれば取り外し、交換できる。
【0027】
柄12は、金属製の棒体に樹脂製のグリップを装着した構成で、筒状本体21の側面に設けられた柄取付ボックス212へ先端を差し込み、柄取付ボックス212の左右側面を跨いで揺動軸121を前記先端に貫通させることにより、柄取付ボックス212の範囲内で上下に揺動する。本例の洗車具1は、液状洗剤6のみを供給する構成であるため、柄12を揺動自在に洗剤タンクに接続するのみである。しかし、例えば図9に見られるように、水道口(図示略)に接続される給水パイプ122を柄12に内蔵させ、筒状本体21の底面に設けた水噴射ノズル24に前記給水パイプ122を接続させて、環状雄ネジ23の連通部分を通して弾性カバー3内に水を供給できるようにしてもよい。このように水を供給できる洗車具1は、洗浄ヘッド11における洗剤タンク2の構造が変わるものの、弾性カバー3以下は同じであり、本例の洗車具1と共用できる。
【0028】
弾性カバー3は、弾性を備えた樹脂板を円錐状にまるめ、重ねた両側縁部を母線に沿って並ぶ2個の鳩目により一体化して形成している。本例は、前記鳩目が内外に連通する空気孔31を構成する。本例の弾性カバー3は、泡立て体5に上方から押し当たる下方に、半径方向のスリットにより周方向に分割され、放射状に延びる多数の弾性片32を形成している。スリットは、多数の弾性片32を形成する隙間であると同時に、弾性片32を覆う取付カバー41の外面である防水カバー411の空気孔412から取り込んだ空気7を、更に弾性カバー3の内部に取り込む経路を形成する。弾性変形した弾性片32は、泡立て体5を上方から押さえつける(後掲図10参照)。
【0029】
毛皮洗浄体4は、弾性片32を内外に挟み込んで弾性カバー3に装着する取付カバー41と、下面に毛44を植え込んだ合成樹脂製織布である環状基布43とを、合成樹脂製織布である円環状の帯布42により接続した構成である。毛44は、環状基布43に従って環状に並んでおり、内側に開口下面を形成して、泡立て体5により生成した泡を前記開口下面から外部に放出させる。帯布42は、取付カバー41の内面である上側ネット413と環状基布43の上面に設けた下側ネット431とを上下に離して、泡立て体5の収納空間を形成する。これから、泡立て体5の収納空間を確保するため、例えば樹脂製環状板を帯布42の内周面に宛てがい、例えば洗浄ヘッド11を車体8(後掲図10ほか参照)に押し付けた場合でも、帯布42が上下に潰れないようにするとよい。
【0030】
毛44は、液状洗剤6に耐性を有する素材、例えば羊の毛(ムートン)であり、弾性カバー3の内部で生成された泡が無意味に拡散することを抑制しながら、泡を車体8に擦り付けて洗浄作用を発揮させる。このため、毛44は、車体8に接しやすい環状基布43の下面に植え込まれている。本例の洗浄ヘッド11は、前記毛11がより広い範囲で車体8に接するように、環状基布42の外周縁に対して下面側から帯布42の下周縁を宛てがって縫着し、帯布42を上方に折り返して上周縁を上向きに立ち上げ、環状基布42の外周縁を半径外向きに折り曲げることにより、毛44が半径方向断面で広がるようにしている。これにより、例えば毛44が吸水して固まる虞を低減させている。
【0031】
取付カバー41は、合成樹脂製織布である防水カバー411を外面とし、合成樹脂製ネットである上側ネット413を内面とする二重構造で、前記弾性片32の根元より上方と弾性片32の下端より下方(防水カバー411と上側ネット413とが一致する下周)をそれぞれ縫着して弾性片32を包み込み、弾性カバー3に装着する。本例は、弾性変形を一定限度で許容しながら周方向にずれる虞を低減するため、弾性片32を2枚1組として母線方向の縫着線414により区画している。防水カバー411は、周方向に3個の空気孔412を設けている。空気孔412の真ん中は、弾性カバー3の空気孔31の下側と一致させ、弾性カバー3の内部への空気の取込を容易にしている。取付カバー41は、防水カバー411と上側ネット413とが一致する下周縁に帯布42の上周縁を縫着している。
【0032】
環状基布43は、上面に合成樹脂製ネットである下側ネットを接着、固定している。これにより、泡立て体5は、取付カバー41の内面である上側ネット413と、前記環状基布43の上面に固定した下側ネット431とに挟まれる、自身の内環状網体53及び外環状網体54を摺り合わせるほか、前記外環状網体54を上側ネット413及び下側ネット431に摺り合わせて、泡立ちを促進させる。上側ネット413及び下側ネット431は、泡立て体5の外環状網体54に摺り合わせて泡立ちを促進させる粗雑面の一態様であり、網目の大きさは自由である。また、粗雑面であればよいため、例えば下側ネット431に代えて、環状基布43の上面に梨地面を形成してもよい。
【0033】
本例の洗車具1は、次のように使用し、泡立て体5により泡を生成する。準備作業として、蓋22を明けて洗浄タンク2に液状洗剤6を供給し、貯留する。液状洗剤6は、蓋22の通気孔221を通じて大気圧である洗剤タンク2の内部と、開放された毛皮洗浄体4の下面開口を通じて大気圧である弾性カバー3の内部とが圧力平衡しているため、供給パイプ51を通じて閉環状パイプ52へ一方的に供給されることがない。既述したように、本例の洗車具1は、水の供給手段がないため、別に通常ホース(図示略)により車体8に水を吹き付ける。そして、前記水を毛皮洗浄体4の毛44に吸水させて、泡立て体5に少しずつ水を供給できる状態にして、洗浄のための泡の生成を開始する。
【0034】
準備作業を終えた洗車具1において、まず柄12を持って洗浄ヘッド11を車体8に押さえつけると、図10に見られるように、弾性片32が弾性変形し、弾性カバー3を車体8に接近させて内部空間を小さくすると共に、毛皮洗浄体4を前記車体8に密着させる。これにより、弾性カバー3の内部にあった空気7は、弾性カバー3に設けた空気孔31を通じて外部へ排出される(図10中破線矢印参照)。この段階では、弾性カバー3の内部空間の減少に伴って空気7が排出されているだけなので、液状洗剤6に対する上記圧力平衡が維持され、未だ閉環状パイプ52へ液状洗剤6は供給されない。
【0035】
洗浄ヘッド11を車体8に押し付けた状態から洗浄ヘッド11を車体8に押し付ける力を緩めると、弾性片32の復元力によって、図11に見られるように、弾性カバー3は車体8に遠ざかって、内部空間を大きくする(元に戻す)。このとき、吸水した毛皮洗浄体4は、車体8に密着した状態を保っているので、弾性カバー3の復元に伴って空気孔31から空気7を内部へ取り込もうとする。しかし、空気孔31が小さいため、弾性カバー3の内部は大気圧に比べて低い圧力、すなわち負圧を一時的に発生させる。これにより、液状洗剤6に対する圧力平衡も一時的に崩れ、閉環状パイプ52へ液状洗剤6が供給され、供給孔521から放出される。
【0036】
本例の洗浄ヘッド11は、取付カバー41と環状基布43との間に帯布42を改装することにより、泡立て体5の収納空間を形成しており、上述のように、洗浄ヘッド11を車体8に押し付けても、前記収納空間が大きく潰れることはない。このため、液状洗剤6の供給は、専ら弾性カバー3の内部における一時的な負圧を利用している。しかし、泡立て体5の収納空間が大きく潰れるほど変形自在で、閉環状パイプ52が自己復元可能な弾性を備えている場合、洗浄ヘッド11を車体8に押し付けることにより、閉環状パイプ52を一時的に圧潰して液状洗剤6を供給孔521から放出させ、復元により供給パイプ51を通じて液状洗剤6の供給を受けるようにすることもできる。
【0037】
こうして閉環状パイプ52の供給孔521から放出された液状洗剤6は、洗浄ヘッド11を車体8に押し付け、解放の繰り返しにより、毛皮洗浄体4の毛44から供給される水(図示略)と混ぜ合わされ、泡を生成する。具体的には、放出された液状洗剤が水と撹拌されて内環状網体53又は外環状網体54の網目に膜を張り、弾性カバー3の変形に伴う圧力変動によって前記内環状網体53又は外環状網体54の内外に流入又は流出する空気7が前記膜を膨らませて泡を生成する。このように、本発明の洗車具1は、液状洗剤6の供給と泡の生成とが同時進行するため、間断なく大量の泡を生成することができる。
【0038】
水と撹拌された液状洗剤6が形成する膜は、内環状網体53又は外環状網体54それぞれの網目だけでなく、内環状網体53及び外環状網体54それぞれの網目を交差させて形成される仮想的な網目にも形成される。本例の泡立て体5は、相対的に内環状網体53の網目が小さく、逆に外環状網体54の網目が大きいため、両者の網目が交差して形成される網目の大きさは、内環状網体53が動くと小さく変化し、外環状網体54が動くと大きく変化する(図12中、内環状網体53及び外環状網体54の網目の重なり具合を参照)。これにより、大小さまざまな膜が形成され、泡の生成が促進させる。
【0039】
また、本例の洗車具1は、図12に見られるように、弾性カバー3の内面にあたる取付カバー41の内面に粗雑面として上側ネット413を設け、同じく毛皮洗浄体4の環状基布43の上面に粗雑面として下側ネット431を設けている。これにより、上側ネット413及び下側ネット431それぞれは、弾性カバー3の変形に際して動く外環状網体54に引っかかり、直接的に外環状網体54の変形を変化のある複雑なものにし、前記外環状網体54を介して間接的に内環状網体53の変形を変化のある複雑なものにして、泡の生成を促進している。外環状網体5に対する上側ネット413及び下側ネット431の引っかかりは、泡立て体5の大きな位置ズレを防止する働きも有する。
【0040】
粗雑面は、外環状網体54に引っかかればよいため、本例の上側ネット413及び下側ネット431に代えて、単なる梨地面として形成することも考えられる。しかし、上側ネット413及び下側ネット431は、泡立て体5の内環状網体53及び外環状網体54が密に重なり合って接触した場合でも、空気7が回り込む隙間を残すので、網目に張った膜に対して前記空気7を送り込み、泡の生成を助ける働きを有する。これから、粗雑面として本例のような上側ネット413及び下側ネット431が好ましい。
【符号の説明】
【0041】
1 洗車具
11 洗浄ヘッド
12 柄
2 洗剤タンク
21 筒状本体
22 蓋
23 環状雄ネジ
3 弾性カバー
31 空気孔
32 弾性片
4 毛皮洗浄体
41 取付カバー
411 防水カバー
412 空気孔
413 上側ネット
42 帯布
43 環状基布
431 下側ネット
5 泡立て体
51 供給パイプ
52 閉環状パイプ
521 供給孔
53 内環状網体
54 外環状網体
6 液状洗剤
7 空気
【技術分野】
【0001】
本発明は、手作業での洗車に適した洗車具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、比較的小型の自動車、例えば普通自動車を個人が洗車する場合に好適な洗車具として、底面に供給ノズルを設けた洗剤タンクと、前記洗剤タンクの底面を上面として錐台状に広がる弾性カバーと、前記弾性カバーの下周縁に装着した毛皮洗浄体と、そして弾性カバー及び毛皮洗浄体に挟まれて前記弾性カバー内に保持される泡立て体とから構成される洗浄ヘッドを備えた洗車具を開示する(特許文献1[請求項1])。
【0003】
特許文献1が開示する洗車具は、洗剤タンクから弾性カバー内へ液状洗剤を供給し、毛皮洗浄体又は泡立てスポンジに水を含ませて、前記弾性カバーの変形によって圧縮及び復元を繰り返すことにより、泡立てスポンジが液状洗剤を泡立てる。このとき、弾性カバーの下周縁に毛皮洗浄体を装着しているので、この毛皮洗浄体に液状洗剤及び泡が染み込み又は絡ませて、洗浄ヘッドが泡を抱える格好にできる(特許文献1[0008])。
【0004】
洗浄タンクは、上下又は左右に揺動する自在継ぎ手を介して柄を接続している(特許文献1[0009])。弾性カバーは、空気孔を開口して、毛皮洗浄体が車体に密着することによる弾性カバー内の負圧を防止し、弾性カバー内へ空気を取り込んで、圧縮及び復元するスポンジによる泡立てを促進させる(特許文献1[0010])。また、下周縁から母線方向に設けた多数のスリットで区画される多数の弾性片により泡立てスポンジを押さえ込み、圧縮及び復元の変動量を大きくしている(特許文献1[0011])。
【0005】
毛皮洗浄体は、羊の毛皮(ムートン)を例示している(特許文献1[0012])。泡立てスポンジは、弾性カバーに倣った錐台側面を有し、かつ平面視形状が毛皮洗浄体と相似な円環状である(特許文献1[0012])。特許文献1が開示する洗車具は、液状洗剤を含み、水を吸った泡立てスポンジを大きく圧縮及び復元させることで、非常に泡立ちがよく、車体に密着しやすい毛皮洗浄体と相俟って、優れた洗浄作用を発揮する効果をもたらすとしている(特許文献1[0013])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-142857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1が開示する洗車具は、泡立てスポンジの圧縮及び復元による液状洗剤の泡立ちが顕著で、個人が用いる洗車具として優れていたが、必要十分の泡立ちを確保するためにはある程度容積を占める泡立ちスポンジが必要になるところ、前記泡立ちスポンジが水を吸って過剰に重くなることが分かった。とりわけ、洗浄タンクに柄を接続した構成の場合、柄の先端に構成される洗浄ヘッドが重くなると、とたんに洗浄ヘッドを左右又は上下に動かす際のモーメントが大きくなり、操作性が悪くなる問題をもたらす。
【0008】
また、液状洗剤と空気とを混ぜて泡立てる部材=泡立て体としての泡立てスポンジは、弾性カバー内に占める容積の割に、それほど多くの泡を生成させるものでもないことがわかった。確かに、以前の同種洗車具に比べ、特許文献1が開示する洗車具の泡立ちは優れているが、泡立てスポンジの泡を生成する部分は主に表面のみであり、全体をうまく利用していない問題があった。そこで、基本構成は特許文献1が開示する洗浄ヘッドを踏襲しながら、より効率よく泡を生成する泡立て体を開発するため、検討した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
検討の結果開発したものが、供給ノズルを設けた洗剤タンクと、前記洗剤タンクの底面を上面として錐台状に広がる弾性カバーと、前記弾性カバーの下周縁に装着した毛皮洗浄体と、そして弾性カバー及び毛皮洗浄体に挟まれて前記弾性カバー内に保持される泡立て体とから構成される洗浄ヘッドを備えた洗車具において、泡立て体は、洗剤タンクの供給ノズルに始端が接続される供給パイプと、前記供給パイプの終端が接続され、複数の供給孔を開口した閉環状パイプと、前記閉環状パイプに外嵌した環状網体とから構成される洗車具である。弾性カバーは、後述するように、毛皮洗浄体を取付けるための取付カバーが装着される場合がある。この場合、弾性カバー及び毛皮洗浄体に挟まれる泡立て体は、取付カバーの内面と毛皮洗浄体の上面とに環状網体を摺接させる。
【0010】
泡立て体は、供給パイプが接続された閉環状パイプを環状網体で包み込んだ外観を備える。供給パイプは、洗剤タンクと閉環状パイプとを結ぶことができればよいため、少なくとも可撓性を備えていることが望まれる。閉環状パイプは、弾性カバーの変形に伴う弾性カバー内の圧力変動を利用して供給孔から液状洗剤を放出する。特に弾性を備えた閉環状パイプは、環状網体を環状に保持する保形性を有するほか、自身が物理的な圧縮及び復元を繰り返して供給孔から液状洗剤を放出することもできる。閉環状パイプに設けられる供給孔は、半径方向内向きに設けるとよく、閉環状パイプの周方向等間隔で2個〜6個設けるとよい。これらに対し、環状網体は、網目の変形により泡を生成するため、弾性又は可撓性を備えていることが望まれる。
【0011】
本発明の洗車具は、特許文献1が開示する洗車具の泡立てスポンジに代えて、洗剤タンクの供給ノズルに始端が接続される供給パイプと、前記供給パイプの終端が接続され、複数の供給孔を開口した閉環状パイプと、前記閉環状パイプに外嵌した環状網体とから構成される泡立て体を用いる。液状洗剤は、洗剤タンクから供給パイプを通じて閉環状パイプに供給され、弾性カバーの変形に伴う弾性カバー内の圧力変動や弾性を備えた閉環状パイプの圧縮及び復元の働きを利用して前記閉環状パイプの供給孔から環状網体内に放出され、前記環状網体内で水と撹拌される。泡立て体は、水と撹拌された液状洗剤が網目に膜を張り、環状網体の内外に流入又は流出する空気が前記膜を膨らませて泡を生成する。
【0012】
泡立てスポンジに代わる泡立て体を除き、本発明の洗車具の洗浄ヘッドは、特許文献1が開示する洗車具同様に構成できる。例えば洗剤タンクは、上下又は左右に揺動する自在継ぎ手を介して柄を接続するとよい。また、弾性カバーは、弾性を備えた樹脂板又は金属板を円錐状にまるめて形成するとよい。そして、毛皮洗浄体は、羊の毛皮(ムートン)を例示できる。後述するように、毛皮洗浄体は、弾性カバーの下周縁に直接取り付けるのではなく、弾性カバーに装着する取付カバーに取り付けるとよい。このとき、取付カバーの下周縁に環状の帯布を設けておくと、弾性カバー内に泡立て体を収納する空間を形成できる。帯布の内周面に沿って環状の弾性リングを介装すると、前記帯布により形成される空間の保形性が向上する。
【0013】
泡立て体を構成する環状網体は、弾性カバーの変形に応じて変形する可撓性又は弾性を備えていれば、素材や網目の大きさを問わないし、環状網体を複数重ねた多重構造でもよい。しかし、弾性カバー及び毛皮洗浄体に挟まれる狭い空間に収納でき、水及び空気を流入させて液状洗剤と十分に混ざり合せるため、泡立て体は、環状網体が内環状網体と外環状網体との二重構造が好適である。二重構造の環状網体は、内環状網体及び外環状網体の網目を交差させて大きさの変化する網目を形成し、前記網目に張った膜自体を変形させて泡の生成を促す。二重構造の環状網体は、内環状網体及び外環状網体の網目を交差させて形成される網目の並ぶ面が一層であり、前記網目に張った膜に内外から空気が流入し、膨らませやすい。
【0014】
より好ましい泡立て体は、環状網体が相対的に網目の小さい内環状網体と相対的に網目の大きい外環状網体との二重構造である。例えば内環状網体の網目が相対的に小さく、逆に外環状網体の網目が相対的に大きい場合、両者の網目が交差して形成される網目の大きさは、内環状網体が動くと小さく変化し、外環状網体が動くと大きく変化するため、前記網目に張った膜の変化をより大きくし、泡の生成を促進させる。内環状網体及び外環状網体は、相対的に網目の大きさが異なればよいが、外環状網体の網目が小さいと内環状網体に向けて空気や水の流入が制限されやすくなるので、内環状網体の網目が相対的に小さく、逆に外環状網体の網目が相対的に大きい構成が好ましい。
【0015】
液状洗剤は、供給パイプを経て閉環状パイプへ供給されるため、特許文献1が開示する洗車具のように、洗剤タンクの底面に設けた供給ノズルに供給パイプを接続する構成にしても、閉環状パイプへ供給できる。この場合、水は洗車具と別に通常ホースにより車体に吹き付ける。また、供給パイプを接続する供給ノズルはそのまま設けながら、別途洗剤タンクの底面に水噴射ノズルを設け、前記洗剤タンクに接続した柄、洗剤タンクを貫通する給水パイプを通じて前記水噴射ノズルから弾性カバー内へ水を噴射するようにしてもよい。この場合、洗車具だけで液状洗剤及び水を供給できる。
【0016】
弾性カバーは、空気孔を開口し、弾性カバー内の負圧が保持され、毛皮洗浄体が車体に密着することを防止すると共に、一時的な負圧を解消するため、前記空気孔から弾性カバー内に対して空気を流入又は流出させて圧力変動を招き、液状洗剤を放出させ、また環状網体による泡立てを促進させるとよい。更に、弾性カバー内に対して流入又は流出する空気の量を大きくするため、弾性カバーの下周縁から母線方向に設けた多数のスリットで区画される多数の弾性片を形成し、弾性カバーの変形量を大きくするとよい。この場合、スリットが弾性カバーの内外を連通させることになるので、毛皮洗浄体に取付カバーを設け、前記取付カバーにより弾性カバーのスリットを覆わせて、塞ぐとよい。
【0017】
このほか、泡立て体は、弾性カバーの内面に設けた粗雑面を環状網体に摺接させたり、毛皮洗浄体の上面に設けた粗雑面を環状網体に摺接させたりするとよい。環状網体は、自身が変形することにより網目に形成した膜から泡を生成したり、二重構造の場合、内環状網体及び外環状網体の網目を交差させて形成される網目に形成した膜から泡を生成したりする。粗雑面は、環状網体に引っかかることにより、前記環状網体の変形を複雑にして、泡の生成を促進させる。これから、粗雑面は、環状網体に引っかかる摩擦を生ずる面であればよく、例えば環状網体がネットを丸めて構成している場合、前記環状網体を構成するネットを利用することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、比較的小型の自動車、例えば普通自動車を個人が洗車する場合に好適な洗車具を提供する。特に、本発明の洗車具は、水を吸わない環状網体から構成される泡立て体による泡立ちがよく、車体外面を傷つけずに泡を拡散させて汚れを落とす毛皮洗浄体と相俟って、優れた洗浄作用を発揮する。また、洗浄ヘッドは、洗剤タンクのほか重量物がないことから、取扱いも容易である。このほか、泡立て体は、泡を生成する本体である閉環状パイプ及び環状網体を毛皮洗浄体及び弾性カバーの間に保持させているだけなので、交換が容易である。本願発明の洗車具は、これら効果又は利点が相俟って、特に個人利用に適した洗車具になっている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の洗車具の一例を示す斜視図である。
【図2】本例の洗車具の分解斜視図である。
【図3】本例の洗車具に用いる泡立て体の分解斜視図である。
【図4】本例の洗車具の側面図である。
【図5】本例の洗車具の平面図である。
【図6】本例の洗車具の底面図である。
【図7】図4中A−A断面図である。
【図8】本例の洗車具の縦断面図である。
【図9】別例の洗車具の縦断面図である。
【図10】本例の洗車具を押さえつけた状態の縦断面図である。
【図11】本例の洗車具を押さえつけてから解放した状態の縦断面図である。
【図12】泡立て体の部分拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。本発明を適用した洗車具1は、図1に見られるように、外観は従来同種の洗車具、特に特許文献1が開示する洗車具とほとんど同じである。構成においても、図2に見られるように、揺動自在な柄12を接続した洗剤タンク2、前記洗剤タンク2の底面から錐台状に広がる弾性カバー3、前記弾性カバー3の下周縁に装着した毛皮洗浄体4とから洗浄ヘッド11を構成する。特許文献1が開示する洗車具との大きな相違点は、スポンジからなる泡立て体(特許文献1)に対し、図3に見られるように、供給パイプ51を接続した閉環状パイプ52を内環状網体53及び外環状網体54で包んで泡立て体5を構成している点にある。
【0021】
泡立て体5は、洗剤タンク2の供給ノズル211(後掲図6ほか参照)に始端が接続される供給パイプ51と、前記供給パイプ51の終端が接続され、複数の供給孔521を開口した閉環状パイプ52と、前記閉環状パイプ52に外嵌した内環状網体53及び外環状網体54とから構成される。供給パイプ51及び閉環状パイプ52は、弾性を備えた樹脂製パイプである。これにより、泡立て体5は、弾性カバー3及び毛皮洗浄体4を組み付けた後、毛皮洗浄体4の毛44に囲まれた開放下面から、閉環状パイプ52を弾性変形させながら弾性カバー3の内部へ押し込むことができる。供給パイプ51は、弾性カバー3の内部へ閉環状パイプ52、内環状網体53及び外環状網体54を押し込んだ後、始端を洗浄タンク2の供給ノズル211に接続する。
【0022】
閉環状パイプ52は、樹脂製のT字接続ブロック55を基点に周方向等間隔に3個の供給孔521を半径内向きに開口している。供給孔521は、供給される液状洗剤6が直接取付カバー41の合成樹脂製織布に付着したり、縫着線にしみ込んだりしないように、半径内向きに開口することが望ましい。弾性を備えた閉環状パイプ52は、両端をT字接続ブロック55に拘束され、平面視円環状を形成し、外嵌する内環状網体53及び外環状網体54を全体として環状にする保形性を発揮する。供給孔521の大きさは、閉環状パイプ52の内径より小さく、前記保形性を損ねなければ自由であり、複数の供給孔521相互で大きさが異なってもよい。本例の供給孔521は、閉環状パイプ52の内径の半分程度であり、すべて同じ大きさである。
【0023】
内環状網体53及び外環状網体54は、可撓性を備えた樹脂製糸で織成又は編成された樹脂製ネットである。本例は、相対的に内環状網体53の網目を小さく、外環状網体54の網目を大きくしている。内環状網体53は、閉環状パイプ52に対して拘束されておらず、内環状網体53及び外環状網体54は、互いに拘束されていないことから、いずれも周方向に動くことができる。内環状網体53及び外環状網体54が周方向に動く量は、後述するように、供給パイプ51を接続するT字接続ブロックの突起部分が内環状網体53及び外環状網体54を貫通しているため、内環状網体53及び外環状網体54が周方向に回転する程度ではなく、それぞれの変形が許される範囲で周方向にずれる程度である。
【0024】
本例の泡立て体5は、中空のT字管路を内蔵する樹脂製のT字接続ブロック55の両端に、棒状に切り出した樹脂製パイプの両端を接続して閉環状パイプ52を構成し、前記T字接続ブロック55の突起部分に供給パイプ51の終端を接続している。内環状網体53及び外環状網体54は、長尺な長方形に切り出した樹脂製ネットの長辺を縫い合わせて筒状にし、閉環状パイプ52を構成する樹脂製パイプを挿通した後、短辺を縫い合わせて環状にしている。供給パイプ51は、内環状網体53及び外環状網体54を貫通して突出させたT字接続ブロック55の突起部分に終端を接続する。便宜上、図3は、供給パイプ51、閉環状パイプ52及びT字接続ブロック55が接続され、また樹脂製ネットを縫着して内環状網体53及び外環状網体54が完成した状態で図示している。
【0025】
洗浄ヘッド11における泡立て体5以外の構成要素を、図4〜図8(図8は、左半分が取付カバー41の外面である防水カバー411のみを切断、右半分が弾性カバー3までを切断している)により説明する。洗剤タンク2は、上面を開放し、底面に下方を向けて供給ノズル211を突出させた平面視円形である樹脂製の筒状本体21から構成される。筒状本体21の開放された上面は、着脱自在な蓋22により塞がれる。蓋22は、洗浄タンク2の内外における圧力平衡のため、小さな通気孔221を設けている。液状洗剤6は、蓋22を開いて筒状本体21の内部に供給される。供給ノズル211は、筒状本体21の内部と外部とを繋ぐ連通孔を設けた突起であり、泡立て体5の供給パイプ51の始端を外嵌して接続する。本例の供給ノズル211は、特に開閉弁を設けていない。これから、筒状本体21の内部に貯留される液状洗剤6は、泡立て体5の閉環状パイプ52に設けた供給孔521を通じて加えられる負圧に応じて、適宜供給パイプ51へ流れ込む。
【0026】
筒状本体21の底面は、下方に向けて内部と連通する供給ノズル211を囲むように、内周面に雌ネジ213を設け、円錐台側面に倣った傾斜面を下端周縁に形成した環状フランジ214を構成している。雌ネジ213は、手で掴んで廻すための羽根231を設け、上端周縁に前記環状フランジ214の下端周面と転写関係にある傾斜面を形成した環状雄ネジ23を螺着する。環状雄ネジ23は、中心部分が上下に連通しており、泡立て体5の供給パイプ51は、前記連通部分を通して供給ノズル211に接続する。弾性カバー3は、上部開口を囲む円錐台状の上縁部分を、前記環状フランジ214の下端周縁に形成した傾斜面と環状雄ネジ23の上端周縁に形成した傾斜面とに挟まれ、前記上縁部分を洗剤タンク2の底面に固定する。弾性カバー3は、環状雄ネジ23を緩めれば取り外し、交換できる。
【0027】
柄12は、金属製の棒体に樹脂製のグリップを装着した構成で、筒状本体21の側面に設けられた柄取付ボックス212へ先端を差し込み、柄取付ボックス212の左右側面を跨いで揺動軸121を前記先端に貫通させることにより、柄取付ボックス212の範囲内で上下に揺動する。本例の洗車具1は、液状洗剤6のみを供給する構成であるため、柄12を揺動自在に洗剤タンクに接続するのみである。しかし、例えば図9に見られるように、水道口(図示略)に接続される給水パイプ122を柄12に内蔵させ、筒状本体21の底面に設けた水噴射ノズル24に前記給水パイプ122を接続させて、環状雄ネジ23の連通部分を通して弾性カバー3内に水を供給できるようにしてもよい。このように水を供給できる洗車具1は、洗浄ヘッド11における洗剤タンク2の構造が変わるものの、弾性カバー3以下は同じであり、本例の洗車具1と共用できる。
【0028】
弾性カバー3は、弾性を備えた樹脂板を円錐状にまるめ、重ねた両側縁部を母線に沿って並ぶ2個の鳩目により一体化して形成している。本例は、前記鳩目が内外に連通する空気孔31を構成する。本例の弾性カバー3は、泡立て体5に上方から押し当たる下方に、半径方向のスリットにより周方向に分割され、放射状に延びる多数の弾性片32を形成している。スリットは、多数の弾性片32を形成する隙間であると同時に、弾性片32を覆う取付カバー41の外面である防水カバー411の空気孔412から取り込んだ空気7を、更に弾性カバー3の内部に取り込む経路を形成する。弾性変形した弾性片32は、泡立て体5を上方から押さえつける(後掲図10参照)。
【0029】
毛皮洗浄体4は、弾性片32を内外に挟み込んで弾性カバー3に装着する取付カバー41と、下面に毛44を植え込んだ合成樹脂製織布である環状基布43とを、合成樹脂製織布である円環状の帯布42により接続した構成である。毛44は、環状基布43に従って環状に並んでおり、内側に開口下面を形成して、泡立て体5により生成した泡を前記開口下面から外部に放出させる。帯布42は、取付カバー41の内面である上側ネット413と環状基布43の上面に設けた下側ネット431とを上下に離して、泡立て体5の収納空間を形成する。これから、泡立て体5の収納空間を確保するため、例えば樹脂製環状板を帯布42の内周面に宛てがい、例えば洗浄ヘッド11を車体8(後掲図10ほか参照)に押し付けた場合でも、帯布42が上下に潰れないようにするとよい。
【0030】
毛44は、液状洗剤6に耐性を有する素材、例えば羊の毛(ムートン)であり、弾性カバー3の内部で生成された泡が無意味に拡散することを抑制しながら、泡を車体8に擦り付けて洗浄作用を発揮させる。このため、毛44は、車体8に接しやすい環状基布43の下面に植え込まれている。本例の洗浄ヘッド11は、前記毛11がより広い範囲で車体8に接するように、環状基布42の外周縁に対して下面側から帯布42の下周縁を宛てがって縫着し、帯布42を上方に折り返して上周縁を上向きに立ち上げ、環状基布42の外周縁を半径外向きに折り曲げることにより、毛44が半径方向断面で広がるようにしている。これにより、例えば毛44が吸水して固まる虞を低減させている。
【0031】
取付カバー41は、合成樹脂製織布である防水カバー411を外面とし、合成樹脂製ネットである上側ネット413を内面とする二重構造で、前記弾性片32の根元より上方と弾性片32の下端より下方(防水カバー411と上側ネット413とが一致する下周)をそれぞれ縫着して弾性片32を包み込み、弾性カバー3に装着する。本例は、弾性変形を一定限度で許容しながら周方向にずれる虞を低減するため、弾性片32を2枚1組として母線方向の縫着線414により区画している。防水カバー411は、周方向に3個の空気孔412を設けている。空気孔412の真ん中は、弾性カバー3の空気孔31の下側と一致させ、弾性カバー3の内部への空気の取込を容易にしている。取付カバー41は、防水カバー411と上側ネット413とが一致する下周縁に帯布42の上周縁を縫着している。
【0032】
環状基布43は、上面に合成樹脂製ネットである下側ネットを接着、固定している。これにより、泡立て体5は、取付カバー41の内面である上側ネット413と、前記環状基布43の上面に固定した下側ネット431とに挟まれる、自身の内環状網体53及び外環状網体54を摺り合わせるほか、前記外環状網体54を上側ネット413及び下側ネット431に摺り合わせて、泡立ちを促進させる。上側ネット413及び下側ネット431は、泡立て体5の外環状網体54に摺り合わせて泡立ちを促進させる粗雑面の一態様であり、網目の大きさは自由である。また、粗雑面であればよいため、例えば下側ネット431に代えて、環状基布43の上面に梨地面を形成してもよい。
【0033】
本例の洗車具1は、次のように使用し、泡立て体5により泡を生成する。準備作業として、蓋22を明けて洗浄タンク2に液状洗剤6を供給し、貯留する。液状洗剤6は、蓋22の通気孔221を通じて大気圧である洗剤タンク2の内部と、開放された毛皮洗浄体4の下面開口を通じて大気圧である弾性カバー3の内部とが圧力平衡しているため、供給パイプ51を通じて閉環状パイプ52へ一方的に供給されることがない。既述したように、本例の洗車具1は、水の供給手段がないため、別に通常ホース(図示略)により車体8に水を吹き付ける。そして、前記水を毛皮洗浄体4の毛44に吸水させて、泡立て体5に少しずつ水を供給できる状態にして、洗浄のための泡の生成を開始する。
【0034】
準備作業を終えた洗車具1において、まず柄12を持って洗浄ヘッド11を車体8に押さえつけると、図10に見られるように、弾性片32が弾性変形し、弾性カバー3を車体8に接近させて内部空間を小さくすると共に、毛皮洗浄体4を前記車体8に密着させる。これにより、弾性カバー3の内部にあった空気7は、弾性カバー3に設けた空気孔31を通じて外部へ排出される(図10中破線矢印参照)。この段階では、弾性カバー3の内部空間の減少に伴って空気7が排出されているだけなので、液状洗剤6に対する上記圧力平衡が維持され、未だ閉環状パイプ52へ液状洗剤6は供給されない。
【0035】
洗浄ヘッド11を車体8に押し付けた状態から洗浄ヘッド11を車体8に押し付ける力を緩めると、弾性片32の復元力によって、図11に見られるように、弾性カバー3は車体8に遠ざかって、内部空間を大きくする(元に戻す)。このとき、吸水した毛皮洗浄体4は、車体8に密着した状態を保っているので、弾性カバー3の復元に伴って空気孔31から空気7を内部へ取り込もうとする。しかし、空気孔31が小さいため、弾性カバー3の内部は大気圧に比べて低い圧力、すなわち負圧を一時的に発生させる。これにより、液状洗剤6に対する圧力平衡も一時的に崩れ、閉環状パイプ52へ液状洗剤6が供給され、供給孔521から放出される。
【0036】
本例の洗浄ヘッド11は、取付カバー41と環状基布43との間に帯布42を改装することにより、泡立て体5の収納空間を形成しており、上述のように、洗浄ヘッド11を車体8に押し付けても、前記収納空間が大きく潰れることはない。このため、液状洗剤6の供給は、専ら弾性カバー3の内部における一時的な負圧を利用している。しかし、泡立て体5の収納空間が大きく潰れるほど変形自在で、閉環状パイプ52が自己復元可能な弾性を備えている場合、洗浄ヘッド11を車体8に押し付けることにより、閉環状パイプ52を一時的に圧潰して液状洗剤6を供給孔521から放出させ、復元により供給パイプ51を通じて液状洗剤6の供給を受けるようにすることもできる。
【0037】
こうして閉環状パイプ52の供給孔521から放出された液状洗剤6は、洗浄ヘッド11を車体8に押し付け、解放の繰り返しにより、毛皮洗浄体4の毛44から供給される水(図示略)と混ぜ合わされ、泡を生成する。具体的には、放出された液状洗剤が水と撹拌されて内環状網体53又は外環状網体54の網目に膜を張り、弾性カバー3の変形に伴う圧力変動によって前記内環状網体53又は外環状網体54の内外に流入又は流出する空気7が前記膜を膨らませて泡を生成する。このように、本発明の洗車具1は、液状洗剤6の供給と泡の生成とが同時進行するため、間断なく大量の泡を生成することができる。
【0038】
水と撹拌された液状洗剤6が形成する膜は、内環状網体53又は外環状網体54それぞれの網目だけでなく、内環状網体53及び外環状網体54それぞれの網目を交差させて形成される仮想的な網目にも形成される。本例の泡立て体5は、相対的に内環状網体53の網目が小さく、逆に外環状網体54の網目が大きいため、両者の網目が交差して形成される網目の大きさは、内環状網体53が動くと小さく変化し、外環状網体54が動くと大きく変化する(図12中、内環状網体53及び外環状網体54の網目の重なり具合を参照)。これにより、大小さまざまな膜が形成され、泡の生成が促進させる。
【0039】
また、本例の洗車具1は、図12に見られるように、弾性カバー3の内面にあたる取付カバー41の内面に粗雑面として上側ネット413を設け、同じく毛皮洗浄体4の環状基布43の上面に粗雑面として下側ネット431を設けている。これにより、上側ネット413及び下側ネット431それぞれは、弾性カバー3の変形に際して動く外環状網体54に引っかかり、直接的に外環状網体54の変形を変化のある複雑なものにし、前記外環状網体54を介して間接的に内環状網体53の変形を変化のある複雑なものにして、泡の生成を促進している。外環状網体5に対する上側ネット413及び下側ネット431の引っかかりは、泡立て体5の大きな位置ズレを防止する働きも有する。
【0040】
粗雑面は、外環状網体54に引っかかればよいため、本例の上側ネット413及び下側ネット431に代えて、単なる梨地面として形成することも考えられる。しかし、上側ネット413及び下側ネット431は、泡立て体5の内環状網体53及び外環状網体54が密に重なり合って接触した場合でも、空気7が回り込む隙間を残すので、網目に張った膜に対して前記空気7を送り込み、泡の生成を助ける働きを有する。これから、粗雑面として本例のような上側ネット413及び下側ネット431が好ましい。
【符号の説明】
【0041】
1 洗車具
11 洗浄ヘッド
12 柄
2 洗剤タンク
21 筒状本体
22 蓋
23 環状雄ネジ
3 弾性カバー
31 空気孔
32 弾性片
4 毛皮洗浄体
41 取付カバー
411 防水カバー
412 空気孔
413 上側ネット
42 帯布
43 環状基布
431 下側ネット
5 泡立て体
51 供給パイプ
52 閉環状パイプ
521 供給孔
53 内環状網体
54 外環状網体
6 液状洗剤
7 空気
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給ノズルを設けた洗剤タンクと、前記洗剤タンクの底面を上面として錐台状に広がる弾性カバーと、前記弾性カバーの下周縁に装着した毛皮洗浄体と、そして弾性カバー及び毛皮洗浄体に挟まれて前記弾性カバー内に保持される泡立て体とから構成される洗浄ヘッドを備えた洗車具において、
泡立て体は、洗剤タンクの供給ノズルに始端が接続される供給パイプと、前記供給パイプの終端が接続され、複数の供給孔を開口した閉環状パイプと、前記閉環状パイプに外嵌した環状網体とから構成される
ことを特徴とする洗車具。
【請求項2】
泡立て体は、環状網体が内環状網体と外環状網体との二重構造である請求項1記載の洗車具。
【請求項3】
泡立て体は、環状網体が相対的に網目の大きさが異なる内環状網体と外環状網体との二重構造である請求項1記載の洗車具。
【請求項4】
泡立て体は、弾性カバーの内面に設けた粗雑面を環状網体に摺接させる請求項1〜3いずれか記載の洗車具。
【請求項5】
泡立て体は、毛皮洗浄体の上面に設けた粗雑面を環状網体に摺接させる請求項1〜4いずれか記載の洗車具。
【請求項1】
供給ノズルを設けた洗剤タンクと、前記洗剤タンクの底面を上面として錐台状に広がる弾性カバーと、前記弾性カバーの下周縁に装着した毛皮洗浄体と、そして弾性カバー及び毛皮洗浄体に挟まれて前記弾性カバー内に保持される泡立て体とから構成される洗浄ヘッドを備えた洗車具において、
泡立て体は、洗剤タンクの供給ノズルに始端が接続される供給パイプと、前記供給パイプの終端が接続され、複数の供給孔を開口した閉環状パイプと、前記閉環状パイプに外嵌した環状網体とから構成される
ことを特徴とする洗車具。
【請求項2】
泡立て体は、環状網体が内環状網体と外環状網体との二重構造である請求項1記載の洗車具。
【請求項3】
泡立て体は、環状網体が相対的に網目の大きさが異なる内環状網体と外環状網体との二重構造である請求項1記載の洗車具。
【請求項4】
泡立て体は、弾性カバーの内面に設けた粗雑面を環状網体に摺接させる請求項1〜3いずれか記載の洗車具。
【請求項5】
泡立て体は、毛皮洗浄体の上面に設けた粗雑面を環状網体に摺接させる請求項1〜4いずれか記載の洗車具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−46044(P2012−46044A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189164(P2010−189164)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(500009499)株式会社本荘興産 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(500009499)株式会社本荘興産 (2)
【Fターム(参考)】
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