説明

洗車機用洗浄ブラシ及び洗車機

【課題】被洗浄面に強固に付着した汚れを除去し、洗い残しの発生のない優れた洗浄性能を長期間に亘り発揮すると共に、凍結が防止される洗車機用洗浄ブラシ、及びその洗車機用洗浄ブラシを搭載した洗車機を提供する。
【解決手段】洗車機用洗浄ブラシ1は、ブラシ部2及び軸体3を有し、前記ブラシ部2は前記軸体3の外周部に形成されてあると共に、前記被洗浄面に当接するブラシ片4及び前記軸体3に前記ブラシ片4を固定する固定手段5を有し、前記ブラシ片4は少なくとも片面に凹部8及び/又は凸部9が形成された布帛6、及び合成樹脂発泡体7を有すると共に、前記合成樹脂発泡体7の少なくとも片面に前記布帛6が接合されてあり、前記布帛6に形成された凹部8及び/又は凸部9が前記被洗浄面に当接するよう形成されてあるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車あるいは車両の外面の被洗浄面に付着した汚れ等を洗浄する為の洗車機に使用する洗車機用洗浄ブラシ、及びその洗車機用洗浄ブラシを搭載した洗車機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車あるいは車両の外面の被洗浄面に付着した汚れ等を洗浄する為の洗車機に使用する洗浄ブラシのブラシ片、及びそのブラシ片を軸体の外周部に装着した洗浄ブラシ、及びその洗浄ブラシを搭載した洗車機に関しては、使用目的に応じて、さまざまな改良がなされ、例えば、ブラシ片の素材に関しては、合成樹脂繊維、フィルム状樹脂組成物、布帛、合成樹脂発泡体、擬革等がある。
【0003】
上記に示したブラシ片の素材の内、例えば、布帛は、布帛を構成する繊維の間に存在する空隙に、洗浄水等の液体を含み、被洗浄面に付着した汚れにたいする表面張力を低下させやすいことから、優れた洗浄性能を有している。しかしながら、布帛は、洗浄水等の液体を含みやすいことから、洗車機用洗浄ブラシのブラシ片として用いた場合、ブラシ片の重量が重くなり、繰り返し洗車を続ける内に、次第にブラシ片の毛腰が失われる。その為、布帛からなるブラシ片を軸体の外周部に装着した洗車機用洗浄ブラシは、軸体の回転に伴い、ブラシ片が軸体に巻き付きながら回転することになるので、ブラシ片の作用半径が小さくなり、被洗浄面にブラシ片が当接しない部分が生じ、被洗浄面に洗い残しが発生するようになる。従って、布帛をブラシ片として用いた洗車機用洗浄ブラシは、布帛の優れた洗浄性能を、長期間に亘って持続することができないという問題があった。なお、布帛とは、一般的に織布、不織布、編物のことである。
【0004】
また、洗車機用洗浄ブラシのブラシ片の素材として一般的に用いられる合成樹脂発泡体は、無数の独立気泡を有する発泡体であり、洗浄水等の液体を含み難いことから、上記に示した布帛からなるブラシ片に比べて、長期間に亘って毛腰が保持される。しかしながら、独立気泡を有する合成樹脂発泡体からなるブラシ片は、洗浄水等の液体を含み難いことから、被洗浄面に付着している汚れにたいする表面張力を低下させることは難しく、洗浄性能が劣るという問題があった。
【0005】
独立気泡とは、気泡の壁面が完全に囲まれている気泡のことであり、隣接する気泡間は気泡の壁面によって仕切られて個々に独立して存在する為、隣接する気泡間には洗浄水等の液体は流通しない。その為、ブラシ片は、洗車中に合成樹脂発泡体の表面に形成された独立気泡に一時的に洗浄水を貯水するのみであり、合成樹脂発泡体の内部にまで洗浄水等の液体が浸透することはない。
【0006】
また、表面張力とは、固体と液体が接している境界面において、接触面積を小さくする方向に働く張力のことをいう。従って、表面張力が低下するということは、固体と液体の接触面積が大きくなることであり、固体である汚れと、ブラシ片に吸収された液体である洗浄水との接触面積が大きくなることである。その為、洗浄水を積極的に吸収するブラシ片は、汚れにたいして濡れやすくなり、汚れにたいする接触面積が大きくなるので、汚れを除去しやすくなり、洗浄性能が向上することになる。
【0007】
上記に示した布帛の毛腰の強さが長期間に亘って持続しない、合成樹脂発泡体の洗浄性能が劣るという問題を解決する為、例えば、被洗浄面に付着した汚れ等を洗浄する為のブラシ用毛材において、前記ブラシ用毛材は所定形状の織布あるいは不織布からなる布、及び所定形状の合成樹脂発泡体が接合層を有して重ね合わされることにより一体的に形成されてあることを特徴とするブラシ用毛材(特許文献1)が考案されている。
【0008】
また、回転体の外周に取付けた洗浄体を車体表面に接触させて、該車体表面を洗浄するようにした洗車機において、前記洗浄体は、布体と合成樹脂発泡体シートとからなり、布体の少なくとも一面側の全面に合成樹脂発泡体シートが接合され、該洗浄体は、その基端側に回転体が取付けられ、その先端側に切込みが入れられており、前記回転体の回転により、洗浄体の先端側の布体を車体表面に接触させるようにしたことを特徴とする洗車機(特許文献2)がある。
【0009】
【特許文献1】特開2006−6886号公報
【特許文献2】特開2007−118686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1のブラシ用毛材は、布と合成樹脂発泡体が接合されて形成されてある為、布は合成樹脂発泡体の有する毛腰の強さを享受し、合成樹脂発泡体は布の有する洗浄性能を享受することができる。すなわち、ブラシ用毛材は、布、及び合成樹脂発泡体のそれぞれの問題点を互いに補完しあいながら、洗浄ブラシに装着されて汚れを除去する機能を果たす。しかしながら、ブラシ用毛材を構成する布は、極めて平滑面に近い為、被洗浄面に当接した際、被洗浄面に強固に付着している汚れの掻き取り性能に劣るという課題を有していた。
【0011】
特許文献2の洗車機は、洗浄体が、合成樹脂発泡体シートにより布体の毛腰を保持しながら、被洗浄面に当接すると共に、洗浄体の先端側に形成された切込みによる分割片が、被洗浄面の細かな凹凸部分にも当接し、汚れを掻き出す。しかしながら、隣り合う分割片は、回転体の回転に伴い、互いに重なり合うと同時に、布体、及び合成樹脂発泡体シートの表面は極めて平滑面に近い為、洗浄体が洗浄水等の液体と接触すると、表面張力の低下により、重なり合った分割片が互いに貼り付くという一般的に互着と呼ばれる現象が発生する。その為、互着した分割片の間には隙間が生じ、前記の隙間部分は被洗浄面に当接しないことから、洗い残しが発生し、均一に被洗浄面を洗浄することが難しいという課題を有していた。また、洗浄水等の液体を含み、互着して一体化した分割片は、冬季、特に寒冷地において凍り付きやすく、凍結して硬くなった分割片が被洗浄面に当接すると、被洗浄面にたいして傷を付着させるという課題も有していた。
【0012】
図8を用いて、特許文献2に示した従来の洗車機に搭載された洗浄ブラシを構成する洗浄体の動作、作用について詳説する。
【0013】
図8(a)は、従来例における洗浄体の平面図、図8(b)は、重なり合った状態の分割片の部分側面図、図8(c)、及び図8(d)は、従来例における洗浄体の汚れの除去を示す部分拡大平面図である。
【0014】
図8(a)、及び図8(b)において、洗浄体64は、接合部65を介して布体66と合成樹脂発泡体シート67が接合され、自由端部には切込み61により細分割された複数の分割片62が形成されてあると共に、切込み61の基端部側には切込み61の裂けを防止する目的で、円孔63が設けられている。洗浄体64は、回転体(図示せず)の外周に基端部が取り付けられて洗浄ブラシとして構成され、洗車機(図示せず)に前記洗浄ブラシが搭載され、回転体が回転して洗浄体64の自由端部が被洗浄面に当接し、被洗浄面の表面を洗浄する。
【0015】
洗浄ブラシが回転駆動する際、洗車機のノズルからは、被洗浄面に付着した汚れの表面張力を低下させ、汚れを除去しやすくする目的で、洗浄水等の液体が散布される。洗浄体64は、回転体の回転に伴い、自由端部に形成された複数の分割片62が被洗浄面に当接するが、隣り合う分割片62は、図8(b)に示すように互いの平滑面に乗り合い、互着しながら、被洗浄面に当接する。また、洗車機のノズルから散布された洗浄水等の液体は、洗浄体64とも接触し、互着した分割片62の表面張力も低下させる。一旦、液体により互着して一体化した分割片62は、回転体の回転による分割片62の被洗浄面への衝撃力のみでは、互いに離れて、ばらけたものとすることはできず、強固に互着しながら被洗浄面に当接する。
【0016】
そして、図8(c)に示すように、洗浄体64は、汚れ69の付着した被洗浄面である車体68に当接し、図示しない回転体の回転に伴って、矢印Cの方向に移動する。基端部側に円孔63を有して形成された切込み61により細分割された複数の分割片62は、互いの平滑面に乗り合うと共に、洗浄水等の液体により強固に互着して一体化している。互着して一体化した分割片62の間には、必然的に隙間部70が形成される。前記の如くに構成された洗浄体64が、汚れ69が付着した車体68の表面を矢印Cの方向に移動すると、図8(d)の如く、車体68と当接した分割片62は、車体68の表面に付着した汚れ69を取り除き、汚れ69が除去された洗浄面72が露出する。しかしながら、隙間部70は車体68と接触しないので、汚れ69が筋状の洗い残し71となって車体68の表面に残り、車体68に付着した汚れ69を均一に除去できないことから、洗浄ブラシの洗浄性能が劣ることになる。
【0017】
また、図8(b)の如く、隣り合う分割片62は、洗浄水等の液体により互いに貼り付き、互着して一体化する為、冬季、特に寒冷地において凍り付きやすく、凍結して硬くなった分割片62が車体68に当接すると、車体68にたいして洗車傷を付着させることになる。
【0018】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、被洗浄面に強固に付着した汚れを除去し、洗い残しの発生のない優れた洗浄性能を長期間に亘り発揮すると共に、凍結が防止される洗車機用洗浄ブラシ、及びその洗車機用洗浄ブラシを搭載した洗車機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記従来の課題を解決する為に、請求項1の発明の洗車機用洗浄ブラシは、自動車あるいは車両の外面の被洗浄面に付着した汚れ等を洗浄する為の洗車機に使用する洗車機用洗浄ブラシにおいて、前記洗車機用洗浄ブラシは、ブラシ部及び軸体を有し、前記ブラシ部は前記軸体の外周部に形成されてあると共に、前記被洗浄面に当接するブラシ片及び前記軸体に前記ブラシ片を固定する固定手段を有し、前記ブラシ片は少なくとも片面に凹部及び/又は凸部が形成された布帛、及び合成樹脂発泡体を有すると共に、前記合成樹脂発泡体の少なくとも片面に前記布帛が接合されてあり、前記布帛に形成された凹部及び/又は凸部が前記被洗浄面に当接するよう形成されてあるもので、ブラシ片を構成する布帛は、合成樹脂発泡体の有する毛腰の強さを享受し、長期間に亘って毛腰を保持しながら被洗浄面に当接すると共に、布帛に形成された凹部及び/又は凸部の有する角部が被洗浄面に強固に付着した汚れを掻き取る。その為、洗車機用洗浄ブラシは、長期間に亘って優れた洗浄性能が発揮される。
【0020】
請求項2の発明の洗車機用洗浄ブラシは、特に、請求項1の発明の洗車機用洗浄ブラシにおいて、ブラシ片はスリットによる細分割部を有するもので、細分割部が被洗浄面の細かな凹凸部分、曲面部分、あるいは隙間等に当接し、汚れを掻き出す。また、隣り合う細分割部、あるいは隣接して相前後する細分割部が、洗車中に仮に重なり合っても、ブラシ片を構成する布帛には凹部及び/又は凸部が形成されている為、平滑面からなるブラシ片が重なり合う場合に比べて、接触面積が小さく、密着し難い。従って、重なり合った細分割部は、ブラシ片の被洗浄面への接触時の衝撃力のみにて、再び容易に離れ、互いにばらけることが可能であり、長期間に亘り、洗浄水等の液体による細分割部の貼り付き、すなわち互着が防止される。その為、洗車機用洗浄ブラシは、ブラシ片の有する細分割部が一体化して互着しながら被洗浄面に当接することがなく、被洗浄面に均一に当接するので、洗い残しの発生が抑制され、洗浄性能が大幅に向上する。
【0021】
また、隣り合う細分割部は、洗浄水等の液体により貼り付き、互着して一体化することがないので、ブラシ片に凍結防止性能が具備される。
【0022】
請求項3の発明の洗車機用洗浄ブラシは、特に、請求項1の発明の洗車機用洗浄ブラシにおいて、ブラシ部は複数の短冊状のブラシ片が集束されて、固定手段にて軸体に固定されてあるもので、ブラシ片は、短冊状にて形成されている為、被洗浄面の細かな凹凸部分、曲面部分、あるいは隙間等に各々の短冊状のブラシ片が入り込むようにして当接し、汚れを掻き出す。また、隣り合うブラシ片、あるいは隣接して相前後するブラシ片が、洗車中に仮に重なり合っても、ブラシ片を構成する布帛には凹部及び/又は凸部が形成されている為、平滑面からなるブラシ片が重なり合う場合に比べて、接触面積が小さく、密着し難い。従って、重なり合ったブラシ片は、ブラシ片の被洗浄面への接触時の衝撃力のみにて、再び容易に離れ、互いにばらけることが可能であり、長期間に亘り、洗浄水等の液体によるブラシ片の貼り付き、すなわち互着が防止される。その為、洗車機用洗浄ブラシは、ブラシ片が一体化して互着しながら被洗浄面に当接することがなく、被洗浄面に均一に当接するので、洗い残しの発生が抑制され、洗浄性能が大幅に向上する。
【0023】
また、隣り合うブラシ片は、洗浄水等の液体により貼り付き、互着して一体化することがないので、ブラシ片に凍結防止性能が具備される。
【0024】
請求項4の発明の洗車機用洗浄ブラシは、特に、請求項1から3の発明の洗車機用洗浄ブラシにおいて、ブラシ部はブラシ片が少なくとも帯状体に挟み付けられて形成されたチャンネルブラシ、及び前記チャンネルブラシを軸体に固定する固定手段を有するもので、洗車機用洗浄ブラシを製作する際、連続的にチャンネルブラシを形成し、軸体の外周部に固定手段にて固定すればよいので、作業性が向上する。その為、洗車機用洗浄ブラシの生産コストの低減につながる。また、ブラシ片が帯状体に挟み付けられてある為、ブラシ片の脱落がない。
【0025】
請求項5の発明の洗車機は、駆動源と、被洗浄面に散布する洗浄剤及び洗浄水を噴出させるノズルと、洗浄後の被洗浄面を乾燥させる乾燥手段を備えると共に、請求項1から4のいずれか1項に記載の洗車機用洗浄ブラシを搭載したもので、ブラシ片が長期間に亘って毛腰を保持しながら被洗浄面に当接すると共に、ブラシ片を構成する布帛に形成された凹部及び/又は凸部が被洗浄面に強固に付着した汚れを掻き取る高い洗浄性能を有する洗車機用洗浄ブラシが搭載されてある為、洗車機は、駆動源により洗車機用洗浄ブラシの回転を低速に設定すると共に、洗浄時間を短時間に設定した場合においても、優れた洗浄性能が発揮される。
【発明の効果】
【0026】
請求項1の発明の洗車機用洗浄ブラシは、ブラシ片を構成する布帛が、合成樹脂発泡体の有する毛腰の強さを享受し、長期間に亘って毛腰を保持しながら被洗浄面に当接すると共に、布帛に形成された凹部及び/又は凸部の有する角部が被洗浄面に強固に付着した汚れを掻き取るので、長期間に亘って優れた洗浄性能を発揮することができる。
【0027】
請求項2の発明の洗車機用洗浄ブラシは、ブラシ片の有する細分割部が被洗浄面の細かな凹凸部分、曲面部分、あるいは隙間等に当接し、汚れを掻き出すと共に、細分割部の互着が防止され、細分割部が均一に被洗浄面に当接することから、洗い残しの発生が抑制され、洗浄性能が大幅に向上する。また、ブラシ片に凍結防止性能を具備することができる。
【0028】
請求項3の発明の洗車機用洗浄ブラシは、短冊状に形成されたブラシ片が被洗浄面の細かな凹凸部分、曲面部分、あるいは隙間等に当接し、汚れを掻き出すと共に、ブラシ片の互着が防止され、ブラシ片が均一に被洗浄面に当接することから、洗い残しの発生が抑制され、洗浄性能が大幅に向上する。また、ブラシ片に凍結防止性能を具備することができる。
【0029】
請求項4の発明の洗車機用洗浄ブラシは、洗車機用洗浄ブラシを製作する際の作業性が向上するので、洗車機用洗浄ブラシの生産コストを低減することができる。
【0030】
請求項5の発明の洗車機は、駆動源により洗車機用洗浄ブラシの回転を低速に設定すると共に、洗浄時間を短時間に設定した場合においても、優れた洗浄性能を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0032】
(実施例1)
図1(a)は、本発明の第1の実施例における洗車機用洗浄ブラシを前面側から見た斜視図、図1(b)は、図1(a)の断面図、図2(a)は、布帛の平面図、図2(b)は、合成樹脂発泡体の平面図、図2(c)は、布帛、ホットメルトフィルム、合成樹脂発泡体を重ね合わせた側面図、図2(d)は、接合片を前面側から見た斜視図、図2(e)は、ブラシ片の平面図、図3(a)は、本発明の第1の実施例における洗車機用洗浄ブラシの洗車時の使用状態を示す部分断面図、図3(b)は、重なり合った状態の細分割部の部分側面図、図3(c)、及び図3(d)は、本発明の第1の実施例におけるブラシ片の汚れの除去を示す部分拡大平面図である。
【0033】
図1(a)、及び図1(b)において、洗車機用洗浄ブラシ1は、概V字断面を有するようブラシ片4を折り合わせ、折り合わされたブラシ片4の略中央部にリベット5が装着されたブラシ部2を、アルミニウム、鉄等の金属材料からなる略円筒形状の軸体3の外周等分4箇所に設けられた溝部10に挿入し、固定手段であるリベット5にて軸体3に固定して形成されてある。ブラシ片4は、平板状の布帛6、及び合成樹脂発泡体7が重ね合わされ、接合部14を介して接合して形成されてあると共に、布帛6に形成された凹部8、及び凸部9が被洗浄面に当接するよう配置されている。また、ブラシ片4は、スリット11により分割された複数の細分割部12が自由端側に形成されてあると共に、スリット11の基端側には、スリット11の裂けを防止する目的で円孔13が設けられている。なお、軸体3の外周部に設けられた溝部10は、等分4箇所以外にも、6箇所、8箇所、12箇所等、使用目的に応じて、適時、設定できる。
【0034】
次に、洗車機用洗浄ブラシ1の製作方法について詳述する。
【0035】
最初に、図2(a)に示すように、表面に凹部8、及び凹部8が形成されることにより必然的に形成される凸部9を有する平板状の布帛6を用意する。布帛6は、不織布にて形成されている。布帛6の厚みは、0.1mm以上2.0mm以下が好ましく、厚みが0.1mm未満の場合は、被洗浄面に繰り返し当接すると摩耗しやすく耐久性に劣り、厚みが2.0mmを超える場合は、洗車中に洗浄水等の液体を含んで重くなり、洗車機の駆動源への負荷が増し、洗車機用洗浄ブラシ1の回転が不安定となる。本実施例では、布帛6の片面のみに、凹部8と凸部9が形成されてあるが、布帛6の両面に凹部8と凸部9が形成されてある形態を採用してもよい。また、凹部8、凸部9の形状は、特に限定されるものではなく、本実施例の如く、凸部9の横断面形状が略四角形に形成されている形態以外にも、ブラシ片4に形成される細分割部12の洗浄水等の液体による貼り付き、すなわち互着が防止されるのであれば、概丸形、三角形、五角形、菱形、卍形等でも構わない。さらに、凹部8の深さ、あるいは凸部9の高さについても、細分割部12の互着と、被洗浄面の洗い残しの発生が防止されるのであれば、特に限定されるものではないが、例えば、凸部9の高さは、使用される布帛6の厚みの1/10乃至1/2程度にて設定されると、細分割部12の互着が防止されると共に、細分割部12が被洗浄面にたいして密着しやすく、洗い残しの発生が防止されるので好ましい。また、布帛6は、凹部8、凸部9の厚みが略均一の形態、あるいは凸部9のみ厚みが大きく、凹部8、凸部9の形成された面の裏面が略平滑面である形態も採用できる。
【0036】
布帛6は、次の手順にて製造される。熱溶融した合成樹脂を連続的に紡糸して繊維を形成し、繊維を延伸しながら捕集ネット上に集積してエンボスロールで熱加圧することにより繊維を熱圧着により結合して不織布を形成するもので、前記の如くの方法は、一般的にスパンボンド法と呼ばれている。エンボスロールにて熱加圧される際に、不織布の表面に凹部8、及び凸部9が形成される。前記合成樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612等のポリアミド系樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等が単独使用、あるいは併用される。
【0037】
不織布の製造方法は、特に限定されるものではなく、他にも、熱溶融した合成樹脂を紡糸口から吐出する際、高温エアーで紡出し、捕集ネット上で加熱された繊維を結合させて不織布を形成するメルトブロー法、塩化メチレン、フロン等の低沸点溶剤中に合成樹脂を溶解し、紡糸口から加熱、加圧状態で繊維を紡糸すると同時に、前記低沸点溶剤を揮発させ、繊維を捕集ネット上に集積し、熱ロールで加圧して繊維を結合して不織布を形成するフラッシュ紡糸法、繊維を刺の付いた特殊な針で突き刺して機械的に絡合させるニードルパンチング法、繊維に高圧水流をあてることで繊維を結合させる水流絡合法、繊維をケミカルバインダーで接着させるケミカルボンド法、融点の異なる複数の合成樹脂を溶融して融点の高い方の合成樹脂を紡糸して繊維を形成し、溶融された融点の低い方の合成樹脂をバインダーとして前記繊維を接着させるファイバーボンド法やサーマルボンド法等、従来から不織布の製造に用いられている方法にて不織布を製造し、得られた不織布の表面に、エンボスロール等を用いて凹部8及び/又は凸部9を形成してもよい。
【0038】
布帛6は、上記に示した不織布以外にも、繊維を平織、綾織、朱子織等により形成した平板状の織布、繊維を平編み、ゴム編み、パール編み、デンビー編み、アトラス編み、コード編み等により形成した平板状の編物を用いても構わない。なお、前記織布、編物の少なくとも片面には、エンボスロール等を用いて凹部8及び/又は凸部9が形成されてあるのは言うまでもない。
【0039】
次に、図2(b)に示すように、無数の独立気泡15を有する平板状の合成樹脂発泡体7を用意する。合成樹脂発泡体7の厚みは、0.5mm以上5.0mm以下が好ましく、厚みが0.5mm未満の場合は、ブラシ片4にたいする毛腰が弱く、ブラシ片4の洗浄性能が低くなり、厚みが5.0mmを超える場合は、ブラシ片4にたいする毛腰が強すぎ、ブラシ片4が被洗浄面に密着し難くなる。また、合成樹脂発泡体7の発泡倍率は、5倍以上30倍以下が好ましく、発泡倍率が5倍未満の場合は、硬くてブラシ片4が被洗浄面に密着するのが難しく、発泡倍率が30倍を超える場合は、柔らかくてブラシ片4にたいする毛腰が弱く、ブラシ片4の洗浄性能が劣ることになる。
【0040】
合成樹脂発泡体7は、次の手順にて製造される。最初に、直方体の型に、ペレット状、あるいは粉末状の超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレンビニルアセテート、エチレンメチルアクリレート、エチレンエチルアクリレート、エチレンブチルアクリレート等のポリオレフィン系の合成樹脂と、発泡剤、架橋剤等の添加剤を混入し、加熱することにより、合成樹脂を発泡させると共に、合成樹脂の分子間に共有架橋構造を形成する。合成樹脂の分子間に共有架橋構造が形成された発泡体は、一般的には架橋発泡体と呼ばれ、分子間に橋架け構造が形成されているので、優れた弾力性を有している。次に、得られた立方形状の発泡体を所望の厚みにスライスして、無数の独立気泡15を有する平板状の合成樹脂発泡体7が製造される。前記合成樹脂は、単独使用、あるいは併用される。
【0041】
合成樹脂発泡体7を製造する際に用いられる発泡剤としては、従来から合成樹脂発泡体7の製造に用いられているものであれば、特に限定されず、例えば、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、アゾジカルボンアミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、トルエンスルホニルヒドラジド、4,4−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド等の熱分解型発泡剤が好適に用いられ、前記発泡剤は単独使用、あるいは併用される。
【0042】
また、合成樹脂発泡体7を製造する際に用いられる架橋剤としては、従来から合成樹脂発泡体7の製造に用いられているものであれば、特に限定されず、例えば、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス−ターシャリーブチルパーオキシヘキセン、1,3−ビス−ターシャリーパーオキシイソプロピルベンゼン等の有機過酸化物が好適に用いられ、前記架橋剤は単独使用、あるいは併用される。
【0043】
上記の如くの布帛6、及び合成樹脂発泡体7が用意されたならば、図2(c)に示すように、布帛6の表面に凹部8、及び凸部9が形成されていない面と、合成樹脂発泡体7の一方の面の間に、シート状のホットメルトフィルム16を挿入し、布帛6、ホットメルトフィルム16、及び合成樹脂発泡体7を重ね合わせる。ホットメルトフィルム16は、エチレン酢酸ビニル、ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂に、ロジン系樹脂、石油樹脂等の粘着付与剤、ワックス、酸化防止剤、無機充填剤、可塑剤等を配合し、加熱してシート状に形成されたフィルムである。
【0044】
次に、重ね合わされた布帛6、ホットメルトフィルム16、及び合成樹脂発泡体7にたいして、熱プレス機、アイロン等を用いて、熱加圧することにより、ホットメルトフィルム16の有する粘着付与剤を溶融する。そして、溶融したホットメルトフィルム16を接合部14とし、図2(d)に示すように、接合部14を介して表面に凹部8、及び凸部9を有する布帛6と、無数の独立気泡15を有する合成樹脂発泡体7が一体化した接合片17が形成される。なお、合成樹脂発泡体7の両面に、凹部8、及び凸部9を有する布帛6を、接合部14を介して一体化して接合片17を形成してもよい。
【0045】
また、ホットメルトフィルム16の替わりに、液状のホットメルトを、布帛6及び/又は合成樹脂発泡体7の接着面にスプレー等により付着させ、熱プレス機、アイロン等を用いて、熱加圧して、接合片17を形成してもよい。液状のホットメルトを用いる場合、布帛6及び/又は合成樹脂発泡体7の接着面にたいして、プラズマ放電処理等により、凹凸を形成しておくと、布帛6及び/又は合成樹脂発泡体7の接着面の単位表面積が広がり、ホットメルトと布帛6及び/又は合成樹脂発泡体7との濡れ性が高まるので、布帛6と合成樹脂発泡体7の接着強度が向上し、ブラシ片4の耐久性の向上につながる。
【0046】
接合部14の形成方法は、上記の熱接着以外にも、接着剤による常温での接着、超音波溶着等の化学的接合、縫製、ネジ止め等の物理的接合を単独使用、あるいは併用して形成しても構わない。
【0047】
得られた接合片17は、トムソン型、レーザーカッター等を用いて、所望の長さ、及び幅に切断されると共に、図2(e)に示すように、円孔13を有するスリット11により分割された複数の細分割部12、リベット5が挿入される取付孔23が形成され、平板状のブラシ片4が製作される。細分割部12の幅は1.0mm以上10.0mm以下が好ましく、幅が1.0mm未満の場合は、細分割部12は切れやすく耐久性に劣り、10.0mmを超える場合は、被洗浄面の細かな凹凸部分、曲面部分、隙間等を洗浄することが難しくなる。また、スリッ11の長さは、ブラシ片4の長手方向の長さにもよるが、20〜200mm程度に設定される。スリット11の長さが20mm未満の場合、被洗浄面の細かな凹凸部分、曲面部分、隙間等に細分割部12が当接しにくく、洗浄性能が劣ることになり、200mmを超える場合、細分割部12が被洗浄面である車体に装着されたアンテナやワイパー等の装備品に絡み付きやすくなり、装備品の破損につながる。
【0048】
次に、ブラシ片4の表面に形成された凹部8、及び凸部9が外方となるよう概V字断面を有するようにブラシ片4を折り合わせると共に、取付孔23にリベット5を装着してブラシ部2を構成する。そして、ブラシ部2を軸体3の外周等分4箇所に設けられた溝部10に挿入し、リベッター等を用いてリベット5を軸体3に固定して、図1(a)、及び図1(b)の如くの洗車機用洗浄ブラシ1が製作される。
【0049】
次に、図3を用いて、洗車機用洗浄ブラシ1の動作、作用について説明する。
【0050】
図3(a)において、洗車機用洗浄ブラシ1は、洗車機に取り付けられ、図示しない駆動源により回転し、被洗浄面である車体18の表面にブラシ片4を押し付けながら、矢印Aの方向に軸体3が回転して移動する。ブラシ片4は、図3(a)に示すように、接合部14を介して布帛6と合成樹脂発泡体7が接合され、一体化して形成されているので、布帛6は合成樹脂発泡体7の有する毛腰の強さを享受し、毛腰を保持しながら車体18に当接する。また、洗車機用洗浄ブラシ1は、布帛6に形成された凹部8、及び凸部9が車体18に当接するよう形成されているので、凹部8、及び凸部9の有する角部20が車体18に強固に付着した汚れ19を掻き取る。車体18に付着した汚れ19は、土砂や埃等の砂塵、煤煙、排気ガスの残渣、舗道から転移するアスファルトやピッチ、ワックスやシリコーン等を主成分とする疎水性の水垢汚れ、鉄道線路から転移する鉄粉等の成分が混在したものである。前記に示した汚れ19の内、水垢汚れは膜層状に形成され、車体18に強固に付着しているので、除去し難い汚れ19の成分であるが、本発明の洗車機用洗浄ブラシ1は、ブラシ片4を構成する布帛6が、合成樹脂発泡体7により毛腰を付与されながら車体18に当接すると共に、凹部8、及び凸部9の有する角部20が、水垢汚れを含めた汚れ19を掻き取る為、優れた洗浄性能を有する。勿論、洗車中には、洗車機のノズルから洗浄水等の液体が洗車機用洗浄ブラシ1及び/又は車体18に噴霧されるのは言うまでもない。
【0051】
また、図3(b)の如く、仮に、洗車中に隣り合う細分割部12が重なり合った場合、細分割部12は接合部14を介して、凹部8、及び凸部9を有する布帛6と、合成樹脂発泡体7が一体化して形成されているので、一方の細分割部12の合成樹脂発泡体7からなる平滑面には、他方の細分割部12を構成する布帛6の有する凸部9が重なり合う。そして、一方の細分割部12の合成樹脂発泡体7からなる平滑面と、他方の細分割部12を構成する布帛6の有する凹部8の間には空間部21が生じ、空間部21には空気が流入する。その為、隣り合う細分割部12は、平滑面からなる細分割部同志が重なり合う場合に比べて、接触面積が小さく、また、空間部21に空気が流入することにより発生する空気抵抗により、重なり合っても、ブラシ片4の車体18への接触時の衝撃力のみにて、迅速、且つ容易に離れることができるので、長期間に亘り、隣り合う細分割部12は、互いにばらけて、洗浄水等の液体により貼り付いて一体化すること、すなわち互着を防ぐことが可能である。
【0052】
その為、図3(c)に示すように、ブラシ片4は、洗車機のノズルから洗浄水等の液体がブラシ片4に噴霧されても、隣り合う細分割部12が互着しながら車体18に当接することがなく、細分割部12は、汚れ19が付着した車体18に均一に当接して、矢印Bの方向に移動する。そして、図3(d)の如く、ブラシ片4の描いた洗浄軌跡には、車体18に付着した汚れ19が均一に除去された洗浄面22が露出する。従って、図8(d)の如くの筋状の洗い残し71の発生が抑制されることから、洗車機用洗浄ブラシ1の洗浄性能が大幅に向上する。
【0053】
また、隣り合う細分割部12は、洗浄水等の液体により貼り付き、互着して一体化することがないので、ブラシ片4に凍結防止性能が具備される。
【0054】
次に、本発明の洗車機用洗浄ブラシ1の洗浄性能について試験した。下記に示した要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0055】
実施例として、厚みが0.5mmで表面に凹部8、及び凸部9を有するスパンボンド法不織布からなる布帛6と、厚みが2.5mmで無数の独立気泡15を有する8倍発泡の合成樹脂発泡体7の間に、ホットメルトフィルム16を挿入し、熱プレス機にてホットメルトフィルム16溶融して接合部14を形成し、接合部14を介して布帛6と合成樹脂発泡体7を一体化した厚みが3.0mmの接合片17を用意した。次に、トムソン型を用いて、接合片17を、長さが226mm、幅が50mmに切断すると共に、洗浄側に、長さ60mmのスリット11を9本形成すると共に、一方の端部に直径2mmの円孔13を設け、幅5mmの細分割部12を10本形成した。また、長さ方向の略中央部に直径4mmの取付孔23を2箇所設けたブラシ片4を、16枚製作した。次に、ブラシ片4を構成する布帛6の凹部8、及び凸部9が外方となるようブラシ片4の長さ方向の略中央部にて折り合わせると共に、取付孔23にリベット5を装着してブラシ部2を形成した。そして、直径が114mmで且つ長さが360mmの鉄製の略円筒形状の軸体3の外周等分4箇所に設けられた溝部10に、ブラシ部2を挿入すると共に、リベット5を軸体3に固定した。1箇所の溝部10に、ブラシ部2を4箇所ずつ形成することにより、実施例の試験用の洗車機用洗浄ブラシ1を1本製作した。
【0056】
比較例として、実施例のスパンボンド法不織布からなる布帛6の替わりに、厚みが0.5mmで表面に凹部8、及び凸部9が形成されていない平織の織布からなる布帛6を用いた以外は、上記に示した実施例の試験用の洗車機用洗浄ブラシ1と同一条件である比較例の試験用の洗車機用洗浄ブラシを1本製作した。
【0057】
次に、上記の如く構成された実施例の洗車機用洗浄ブラシ1、及び比較例の洗車機用洗浄ブラシを、それぞれ回転試験機に取り付け、240rpmの一定の回転速度で回転させる一方、一面に擬似汚れを塗布した白色ソリッド塗装鋼板を用意し、前記回転速度で回転している軸体3の外周部に取り付けられたブラシ片4の先端が描く仮想円上から30mmだけ軸体3の方向に近接した位置に前記白色ソリッド塗装鋼板を、その汚れ面が軸体3に対向した状態に配設すると共に、6L毎分の散布量にて洗浄水を吹き付けながら1分間に亘って鋼板の汚れ面にブラシ片4を当接させることによって鋼板の擬似汚れを除去した。
【0058】
そして、鋼板の汚れ面におけるブラシ片4によって擬似汚れを除去した部分の明度を、日本電色工業株式会社製の色差計NR−1で測定して、下記基準により、洗浄性能を判断した。なお、洗浄前の明度と、洗浄後の明度の差を、明度の向上とする。
○・・・明度の向上が+5以上
×・・・明度の向上が+5未満
【0059】
また、試験後の隣り合う細分割部12の洗浄水による貼り付き、すなわち互着の有無を目視観察して、下記基準により判断した。
○・・・細分割部の互着が無い
×・・・細分割部の互着が有る
【0060】
【表1】

【0061】
上記試験結果より、実施例の洗車機用洗浄ブラシ1は、軸体3の回転に伴い、ブラシ片4を構成する布帛6が、合成樹脂発泡体7により毛腰を付与されながら、表面に形成された凹部8、及び凸部9により擬似汚れを掻き取ると共に、ブラシ片4に形成された細分割部12には、凹部8、及び凸部9が形成されていることから、隣り合う細分割部12が重なり合っても接触面積が小さいので、互着することがなく、洗い残しの発生が抑制され、優れた洗浄性能を有するものであった。
【0062】
一方、比較例の洗車機用洗浄ブラシは、軸体3の回転に伴い、ブラシ片4を構成する布帛6が、合成樹脂発泡体7により毛腰を付与されながら、鋼板に当接するものの、布帛6の表面には、凹部8、及び凸部9が形成されていないので、擬似汚れを掻き取ることができず、細分割部12は互着すると共に、鋼板には筋状の洗い残しが発生し、洗浄性能の劣るものであった。
【0063】
(実施例2)
図4(a)は、本発明の第2の実施例における洗車機用洗浄ブラシの正面図、図4(b)は、チャンネルブラシの断面図、図4(c)は、ブラシ片の平面図、図5は、本発明の第2の実施例における洗車機用洗浄ブラシを構成する係止具が固定された軸体を前面側から見た斜視図、図6は、チャンネルブラシの製造状態を前面側から見た斜視図である。なお、上記第1の実施例と同一部材については、詳しい説明を省略する。
【0064】
図4(a)、及び図4(b)において、洗車機用洗浄ブラシ31は、短冊状のブラシ片34を芯線42、及び帯状体43にて挟み付けると共に、折り合わして形成された長尺形状のチャンネルブラシ41が、略円筒形状の軸体33の外周部に螺旋状に巻き付けられ、ブラシ部32が形成されてあると共に、チャンネルブラシ41の両端部に係止具35を覆い被せ、係止具35の両端部をネジ40にて軸体33に固定して形成されている。
【0065】
チャンネルブラシ41を構成する芯線42は、概丸形断面を有する略円柱形状で、アルミニウム、ステンレス、鉄等の金属材料からなる。また、帯状体43は、概コ字状断面を有する長尺形状で、アルミニウム、鉄等の金属材料からなる。
【0066】
図4(b)、及び図4(c)において、ブラシ片34は、布帛36と合成樹脂発泡体37が接合部44を介して一体化した短冊状であり、図4(b)の如く、芯線42、及び帯状体43にて挟み付けられてチャンネルブラシ41に形成されてあると共に、布帛36の一面の全域に亘り形成された凹部38、及び凸部39が外方となるよう概V字断面を有するように折り合わされている。従って、ブラシ片34は、洗車機用洗浄ブラシ31の回転に伴い、凹部38、及び凸部39が形成された面が被洗浄面に当接する。
【0067】
洗車機用洗浄ブラシ31は、下記の手順にて製作される。
【0068】
最初に、図5の如く、略円筒形状の軸体33の外周部の両端部近傍に、複数の爪45を有する係止具35を、ネジ40にて固定する。次に、図2(d)にて示した平板状の接合片17からトムソン型、レーザーカッター等を用いて、短冊状のブラシ片34を抜き取る。そして、図6の如く、断面が概コ字状の長尺の帯状体43にたいして、複数本のブラシ片34の略中央部が、帯状体43の上部に重なるよう基台46に設置する。なお、ブラシ片34は、接合部44を介して布帛36と合成樹脂発泡体37が形成された面の内、布帛36が形成された面が帯状体43の上部に位置するよう設置する。次いで、縦ロール47を使用して、芯線42にてブラシ片34を挟み付けると共に、芯線42を概コ字状の帯状体43の内部に押し込む。次に、帯状体43の両側に設置された横ロール48を使用して、帯状体43を両側から、かしめる。その結果、図4(b)の如く、外方に凹部38、及び凸部39を有するよう構成された短冊状のブラシ片34の略中央部が芯線42、及び帯状体43に挟み付けられて折り合わされたチャンネルブラシ41が形成される。
【0069】
そして、チャンネルブラシ41の一方の端部に形成されたブラシ片34は切り取られ、前記チャンネルブラシ41の端部は、図5に示した一方の係止具35の両側に形成された爪45の間に挿入され、爪45を内側に折り畳むことにより、固定される。次に、軸体33を回転させながら、1本の長尺形状に形成されたチャンネルブラシ41を、軸体33の外周部の周りに捩りを加えて螺旋状に巻き付け、チャンネルブラシ41の他方の端部に形成されたブラシ片34を切り取り、軸体33の外周部に取り付けられた他方の係止具35に形成された爪45にて、チャンネルブラシ41の他方の端部を固定し、洗車機用洗浄ブラシ31が製造される。
【0070】
上記の如く構成された洗車機洗浄ブラシ31の動作、作用は下記の通りである。
【0071】
ブラシ片34は、短冊状にて形成されている為、被洗浄面の細かな凹凸部分、曲面部分、あるいは隙間等に当接し、汚れを掻き出す。また、隣り合うブラシ片34、あるいは隣接して相前後するブラシ片34が、洗車中に仮に重なり合っても、ブラシ片34を構成する布帛36には凹部38、及び凸部39が形成されている為、平滑面からなるブラシ片が重なり合う場合に比べて、接触面積が小さく、密着し難い。従って、重なり合ったブラシ片34は、ブラシ片34の被洗浄面への接触時の衝撃力のみにて、再び容易に離れ、互いにばらけることが可能であり、長期間に亘り、洗浄水等の液体によるブラシ片34の貼り付き、すなわち互着が防止される。その為、洗車機用洗浄ブラシ31は、ブラシ片34が一体化して互着しながら被洗浄面に当接することがなく、被洗浄面に均一に当接するので、洗い残しの発生が抑制され、洗浄性能が大幅に向上する。
【0072】
また、隣り合うブラシ片34は、洗浄水等の液体により貼り付き、互着して一体化することがないので、ブラシ片34に凍結防止性能が具備される。
【0073】
また、ブラシ部32は、ブラシ片34が芯線42、及び帯状体43に挟み付けられ、折り合わされて形成されたチャンネルブラシ41にて、軸体33の外周部に形成されてあり、チャンネルブラシ41は係止具35にて軸体33に固定されてあることから、洗車機用洗浄ブラシ31を製作する際、連続的にチャンネルブラシ41を形成し、軸体33の外周部に螺旋状に巻き付け、係止具35をネジ40にて軸体33に固定すればよいので、作業性が大幅に向上する。その為、洗車機用洗浄ブラシ31の生産コストの低減につながる。
【0074】
さらに、ブラシ部32は、チャンネルブラシ41により傾斜角度を有して軸体33の外周部に巻き付けられて装着されているので、洗車中における洗車機用洗浄ブラシ31の保水性が高まり、洗浄性能がより一層向上する。
【0075】
なお、軸体33の外周部に、チャンネルブラシ41からなるブラシ部32を装着して、洗車機用洗浄ブラシ31を形成する方法は、上記に示したチャンネルブラシ41を、軸体33の外周部に螺旋状に巻き付けて固定する方法以外にも、例えば、複数本の長尺形状のチャンネルブラシ41を用意し、軸体33の外周部の等分箇所に、前記チャンネルブラシ41を配置し、チャンネルブラシ41の両端部のブラシ片34を切り取り、チャンネルブラシ41の両端部に概Ω形状の係止具35を覆い被せ、前記係止具35をネジ40にて固定して洗車機用洗浄ブラシ31を形成しても構わない。複数本のチャンネルブラシ41を、軸体33の外周部に配置する際、長尺形状のチャンネルブラシ41を軸体33の長手方向にたいして、直線状に配置してもよいし、チャンネルブラシ41に捩りを加えて、軸体33の長手方向に配置してもよい。また、略アリ溝状の溝部が形成された軸体33にチャンネルブラシ41を挿入し、固定してもよい。
【0076】
また、ブラシ部32の形成方法は、上記に示したチャンネルブラシ41以外にも、例えば、軸体33の外周部に、短冊状のブラシ片34を植え付ける複数の穴部を設け、前記穴部にたいしてブラシ片34を、固定手段であるステープルで挟み付け、ブラシ片34を二つ折りにして、穴部の底面にたいして打ち込み、ブラシ片34を軸体33に固定する丸線型ブラシ、あるいは穴部にたいして短冊状のブラシ片34を、固定手段である薄い平板で押さえ込み、ブラシ片34を二つ折りにして、穴部の内周面に嵌合するように穴部の底面にたいして前記平板を打ち込み、ブラシ片34を軸体33に固定する平線型ブラシ、あるいは穴部にたいして短冊状のブラシ片34を、固定手段であるナイロン等の引き込み線で押さえ込み、ブラシ片34を二つ折りにして、前記引き込み線を軸体33の内周面に這わせて、ブラシ片34を軸体33に固定する引込型ブラシ等も採用できる。軸体33の外周部に設けられた穴部は、軸体33の外周部に等分間隔で設けても良いし、千鳥状に設けても良い。穴部の穴径は、ブラシ片34の植毛量に応じて、適時、設定される。
【0077】
(実施例3)
図7は、本発明の洗車機用洗浄ブラシが搭載されてある洗車機の正面図である。
【0078】
図7において、洗車機50は、本発明の洗車機用洗浄ブラシ51が搭載されてあり、洗車機用洗浄ブラシ51は駆動源52により回転駆動される。複数のノズル53からは、被洗浄面にたいして、洗浄剤、及び洗浄水等が散布され、洗車機用洗浄ブラシ51により、被洗浄面に付着している汚れが除去され、洗浄後は洗車機50の乾燥手段である乾燥機54により被洗浄面が乾燥される。なお、洗車機用洗浄ブラシ51は、上記実施例における洗車機用洗浄ブラシ1、31のいずれかと同一である。
【0079】
上記の如く構成された洗車機50の動作、作用は下記の通りである。
【0080】
洗車機50は、ブラシ片4、34が長期間に亘って毛腰を保持しながら被洗浄面に当接すると共に、ブラシ片4、34を構成する布帛6、36に形成された凹部8、38、及び凸部9、39が被洗浄面に強固に付着した汚れを掻き取る高い洗浄性能を有する洗車機用洗浄ブラシ51が搭載されてある為、駆動源52により洗車機用洗浄ブラシ51の回転を低速に設定すると共に、洗浄時間を短時間に設定した場合においても、高い洗浄性能が発揮される。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の洗車機用洗浄ブラシは、主に、自動車あるいは車両の外面の被洗浄面に付着した汚れ等を洗浄する為の洗車機に搭載する洗車機用洗浄ブラシとして使用する。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】(a)本発明の第1の実施例における洗車機用洗浄ブラシを前面側から見た斜視図、(b)図1(a)の断面図
【図2】(a)布帛の平面図、(b)合成樹脂発泡体の平面図、(c)布帛、ホットメルトフィルム、合成樹脂発泡体を重ね合わせた側面図、(d)接合片を前面側から見た斜視図、(e)ブラシ片の平面図
【図3】(a)本発明の第1の実施例における洗車機用洗浄ブラシの洗車時の使用状態を示す部分断面図、(b)重なり合った状態の細分割部の部分側面図、(c)本発明の第1の実施例におけるブラシ片の汚れの除去を示す部分拡大平面図、(d)本発明の第1の実施例におけるブラシ片の汚れの除去を示す部分拡大平面図
【図4】(a)本発明の第2の実施例における洗車機用洗浄ブラシの正面図、(b)チャンネルブラシの断面図、(c)ブラシ片の平面図
【図5】本発明の第2の実施例における洗車機用洗浄ブラシを構成する係止具が固定された軸体を前面側から見た斜視図
【図6】チャンネルブラシの製造状態を前面側から見た斜視図
【図7】本発明の洗車機用洗浄ブラシが搭載されてある洗車機の正面図
【図8】(a)従来例における洗浄体の平面図、(b)重なり合った状態の分割片の部分側面図、(c)従来例における洗浄体の汚れの除去を示す部分拡大平面図、(d)従来例における洗浄体の汚れの除去を示す部分拡大平面図
【符号の説明】
【0083】
1、31、51 洗車機用洗浄ブラシ
2、32 ブラシ部
3、33 軸体
4、34 ブラシ片
5 リベット
6、36 布帛
7、37 合成樹脂発泡体
8、38 凹部
9、39 凸部
10 溝部
11 スリット
12 細分割部
13、63 円孔
14、44、65 接合部
15 独立気泡
16 ホットメルトフィルム
17 接合片
18、68 車体
19、69 汚れ
20 角部
21 空間部
22、72 洗浄面
23 取付孔
35 係止具
40 ネジ
41 チャンネルブラシ
42 芯線
43 帯状体
45 爪
46 基台
47 縦ロール
48 横ロール
50 洗車機
52 駆動源
53 ノズル
54 乾燥機
61 切込み
62 分割片
64 洗浄体
66 布体
67 合成樹脂発泡体シート
70 隙間部
71 洗い残し

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車あるいは車両の外面の被洗浄面に付着した汚れ等を洗浄する為の洗車機に使用する洗車機用洗浄ブラシにおいて、前記洗車機用洗浄ブラシは、ブラシ部及び軸体を有し、前記ブラシ部は前記軸体の外周部に形成されてあると共に、前記被洗浄面に当接するブラシ片及び前記軸体に前記ブラシ片を固定する固定手段を有し、前記ブラシ片は少なくとも片面に凹部及び/又は凸部が形成された布帛、及び合成樹脂発泡体を有すると共に、前記合成樹脂発泡体の少なくとも片面に前記布帛が接合されてあり、前記布帛に形成された凹部及び/又は凸部が前記被洗浄面に当接するよう形成されてあることを特徴とする洗車機用洗浄ブラシ。
【請求項2】
請求項1記載の構成よりなる洗車機用洗浄ブラシにおいて、ブラシ片はスリットによる細分割部を有することを特徴とする洗車機用洗浄ブラシ。
【請求項3】
請求項1記載の構成よりなる洗車機用洗浄ブラシにおいて、ブラシ部は複数の短冊状のブラシ片が集束されて、固定手段にて軸体に固定されてあることを特徴とする洗車機用洗浄ブラシ。
【請求項4】
請求項1から3記載の構成よりなる洗車機用洗浄ブラシにおいて、ブラシ部はブラシ片が少なくとも帯状体に挟み付けられて形成されたチャンネルブラシ、及び前記チャンネルブラシを軸体に固定する固定手段を有することを特徴とする洗車機用洗浄ブラシ。
【請求項5】
駆動源と、被洗浄面に散布する洗浄剤及び洗浄水を噴出させるノズルと、洗浄後の被洗浄面を乾燥させる乾燥手段を備えると共に、請求項1から4のいずれか1項に記載の洗車機用洗浄ブラシを搭載した洗車機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−67164(P2009−67164A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−236042(P2007−236042)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(391044797)株式会社コーワ (283)
【Fターム(参考)】