説明

洗車機

【課題】安価な構成で適正な車体両側の側面形状を検出することができる車形センサを備えた洗車機を提供することにある。
【解決手段】門型に形成された本体フレーム1に、自動車の車体面を洗車処理する洗車処理装置と、自動車の上面形状を検出する上面形状検出手段10と、自動車の側面形状を検出する側面形状検出手段11とを備えた洗車機であって、側面形状検出手段11は、本体フレーム1の片側内面に設けた形状検出部11aと、本体フレームの他方内面に設けた車幅検出部11bと、形状検出部11aで検出した車体片側の側面形状と車幅検出部11bで検出した車幅位置に基づいて車体両側の側面形状データを作成する車形制御部35とから構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体側面形状を検出する機能を備えた洗車機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、洗浄ブラシや乾燥ノズルを備えた本体フレームを自動車を跨ぐように走行させて車体面の洗浄/乾燥を図る洗車機では、洗車する車両の形状を認識する車形センサを備え、このセンサの検出結果に基づいて洗車ブラシや乾燥ノズルを車体面に接離させるようになっている。
【0003】
さて、近年の複雑化する車体形状に対応するため、車体上面形状の検出のみならず車体側面形状の検出が求められるようになっている。このうち、車体側面形状を検出する車形センサとして特許文献1が知られている。特許文献1の車形センサは、車体側面に超音波を照射して反射してくるまでの時間によって車体側面との距離を測定する反射型超音波センサを所定間隔で複数個上下に配列して構成されている。このような車形センサを洗車機に搭載する場合、車体の両側面形状を検出するために、本体フレームの両側に装備する必要があり、コスト高になるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−203321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の課題は、安価な構成で適正な車体両側の側面形状を検出することができる車形センサを備えた洗車機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するため本発明は、門型に形成された本体フレームに、自動車の車体面を洗車処理する洗車処理装置と、自動車の上面形状を検出する上面形状検出手段と、自動車の側面形状を検出する側面形状検出手段とを備えた洗車機であって、側面形状検出手段は、前記本体フレームの片側内面に設けた形状検出部と、本体フレームの他方内面に設けた車幅検出部と、形状検出部で検出した車体片側の側面形状と車幅検出部で検出した車幅位置に基づいて車体両側の側面形状データを作成する車形制御部とから構成したものである。
【0007】
形状検出部は、車体側面に向けて超音波を発信し車体側面からの反射波を受信する超音波センサを複数縦列に配置したセンサ部からなり、車幅検出部は、単一の超音波センサからなり、車形制御部は、各超音波センサから超音波を発信してから反射波を受信するまでの時間を計測し車体検出点までの距離を算出する距離演算部と、該距離演算部で検出される車体検出点の座標データと前記上面形状検出手段で検出される車体上面位置から車体側面上部の制御点を仮想する制御点検出部と、該制御点検出部で検出する制御点に基づいて反対側の制御点を仮想する車形データ作成部とからなる。
【0008】
洗車機は、自動車車体の上面に送風する上面乾燥ノズルと、該上面乾燥ノズルを車体形状に沿って高さ方向に昇降する昇降装置と、上面乾燥ノズルの両側面に取り付けられ自動車車体の側面上部に送風する側面上部乾燥ノズルと、該側面上部乾燥ノズルを車体形状に応じて幅方向に揺動する揺動装置と、車形データ作成部で作成した車形データに基づいて昇降装置及び揺動装置を制御する洗車制御手段を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明は以上のように構成され、自動車がほぼ左右対称の形状であることに着目して、一方の車体側面形状のみを検出し、検出した車体側面形状を他方の車幅位置に仮想することで、車体両側の車形データを作成するようにしたので、高価な車形センサは片側のみでよくなり、安価に車体側面形状を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の洗車機を示す平面図である。
【図2】ブロワノズル6・7の構成を示す説明図である。
【図3】側面形状検出装置11を示す説明図である。
【図4】制御系を示すブロック図である。
【図5】側面形状の検出動作を示す説明図である。
【図6】制御点Prの仮想を示す説明図である。
【図7】制御点Pr’の作成を示す説明図である。
【図8】普通車の乾燥状態を示す説明図である。
【図9】片寄って停車した車両に対する乾燥状態を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を基に、本発明の実施態様について説明する。
図1は本発明を備えた洗車機を示す平面図である。
1は本体フレームで、門型に形成され、床面に敷設されたレール2・2上を走行モータ3に駆動されて往復走行する。本体フレーム1は、図1に示すように、レール2・2で与えられる走行範囲の後端部に停止し、この位置から洗車を開始する。本体フレーム1には、洗車処理を行う各種の処理装置として、ブラシ装置4・5・5,ブロワノズル6・7・7・8・8をはじめ散水ノズル(図示しない)等が備えられ、走行モータ3の駆動による本体フレーム1の走行に伴って水,洗剤,ワックス等を散布してブラッシングする洗浄作業やブロワノズルより空気を吹き付ける乾燥作業を行う。
【0012】
前記ブラシ装置は、車体上面に沿って昇降し同上面をブラッシングする上面ブラシ装置4と、上面ブラシ装置4の後方に位置し車体に対して接離(開閉)動作し車体の前後面および側面をブラッシングする左右一対の側面ブラシ装置5・5とからなり、本体フレーム1の前側に洗浄部を形成している。
【0013】
前記ブロワノズルは、車体上面に沿って昇降し同上面に空気を吹き付けて乾燥をはかる上面ブロワノズル6と、上面ブロワノズル6の長手方向端部に取り付けられ車体側面上部に空気を吹き付けて乾燥をはかる左右一対の側面上部ブロワノズル7・7と、上面ブロワノズル6より本体フレーム1後方に位置し車体側面に空気を吹き付けて乾燥をはかる左右一対の側面下部ブロワノズル8・8とからなり、本体フレーム1の後側に乾燥部を形成している。
【0014】
9は走行エンコーダで、走行モータ3の出力軸に連係され、本体フレーム1が単位距離走行する毎にパルス出力し、そのパルス信号をカウントすることで本体フレーム1の走行位置を検知する。
【0015】
10は上面形状検出装置で、本体フレーム1内面のブラシ装置より前位置に設けられ、複数の発光素子を上下に配列させた発光部10aと、これに対応して複数の受光素子を上下に配列した受光部10bとを対向させてあり、前記エンコーダ9からのパルス信号に同期して両者間で光信号(赤外光)の授受を行い、これにより洗車する車体の上面位置を検出し、更にこれに伴いボンネット、ウィンドウ、ルーフ、トランクといった自動車の各部位、自動車の車種、突起物の位置と種別等を検出する。
【0016】
11は側面形状検出装置で、本体フレーム1内面の上面形状検出装置10より前位置に設けられ、超音波センサを上下に複数配列させた形状検出部11aと、超音波センサを単体で取り付けた車幅検出部11bと、車形制御部35を備え、車体側面に超音波を照射し、車体面で反射して戻ってくるまでの時間から車体側面との距離を測定するとともに、車体側面の傾斜を検出する。
【0017】
12は操作ボックスで、レール2・2で与えられる本体フレーム1の走行範囲(洗車エリア)に入る手前で自動車の運転席から操作可能な高さに設けられる料金投入と洗車内容の選択入力等の操作を受け付ける。
【0018】
本体フレーム1は、自動車が通り抜け可能なスペースに設置され、レール2・2で与えられる本体フレーム1の走行範囲を洗車エリアとしており、洗車を受ける自動車Aは、操作ボックス12で洗車受付を行った後、この洗車エリアに前方から進入し、洗車が終了すると洗車エリアの後方へ退場する。すなわち、自動車は前進走行して進入し、洗車後は同じく前進走行して退場するもので、洗車装置利用客(ドライバー)が自動車に乗ったまま洗車を受けて通り抜けるドライブスルー洗車を可能にしている。
【0019】
図2は上面ブロワノズル6と側面上部ブロワノズル7の構成を示している。
上面ブロワノズル6は、側面視漏斗状をなし、上面にダクトホースが接続される接続筒部13を形成し、下面にスリット状の送風口14を開口し、両側面に支持枠15を連設しており、昇降装置16により上下方向に昇降される。
【0020】
昇降装置16は、上面ブロワノズル6を自動車の高さに応じて上下方向に昇降させる機構で、上面ブロワノズル6の支持枠15の外面に接続される台車18と、本体フレーム1の内側部に立設した昇降レール19と、台車18の上下に連結されるチェーン20と、このチェーン20が懸回される上下スプロケット21U・21Lと、左右の上スプロケット21U・21U同士を連結する回転軸22と、この回転軸22を正逆転する昇降モータ23とから構成されている。24U・24Lはリミットスイッチで、それぞれレール19の上下端近傍に備えられ、台車18の昇降限界位置を検出する。25は昇降エンコーダで、回転軸22の一端に連結され、回転軸22の回転方向を検出しながら単位角度回転毎にパルス信号を出力して上面ブロワノズル6の昇降位置を与えている。
【0021】
側面上部ブロワノズル7・7は、上面ブロワノズル6の両側面における支持枠15で囲まれた空間内に設けられ、下向きに送風口26を開口し、上面にダクトホースが接続される略筒状のノズル体27からなり、揺動装置28により左右方向に揺動される。
【0022】
ノズル体27は、ダクトホースからの送風をそのままの勢いで吹き出すもので、車体側面の上部に向けて送風するように、垂直下向きからわずかに内側に傾斜した姿勢で取り付けられている。この送風口26の形状は、円形であればよいが、それ以外にも楕円・多角形・近似円等でも良い。本出願人の実験によれば、短辺/長辺=0.2以上の長方形で囲まれる範囲で開口形状を設定すれば、車体面に対して十分な効果が得られた。
【0023】
揺動装置28は、側面上部ブロワノズル7・7を左右方向に揺動させて送風口26の風向を切り替えるための機構で、ノズル体27の外周面に設けた支持片29の下部を上面ブロワノズル6の側面に軸支して揺動自在とし、支持片29の上部にロット部を軸支し、上面ブロワノズル6の側面上部にシリンダ部を軸支したエアシリンダ30で揺動される。通常、側面上部ブロワノズル7・7は、エアシリンダ30のロット部を縮めた状態で、送風口26が垂直下向きから僅かに内側に指向した位置にあり、エアシリンダ30に空気を導入しロット部を伸ばすと、支持片29の下部を中心に回転し、本体フレーム1の内方下向きに指向した位置に揺動する。
【0024】
尚、これらブロワノズルは、特に図示しないが、ダクトホースを送風ブロワに接続して高圧風が供給される。送風ブロワは、各ブロワノズル毎に設置しても良いし、分岐風路を介してそれぞれのブロワノズルに分配送風しても良い。また、揺動装置28として、本実施例ではエアシリンダを使用し、所定角度単位で段階的に揺動するようにしているが、モータ等を用いて無段階に首振りさせるようにしても良い。
【0025】
このような構成により、上面ブロワノズル6は、昇降装置16によって車体の上面形状に沿って昇降され、車体上面との距離を適正に保持しながらブロワ乾燥を行う。側面上部ブロワノズル7・7は、揺動装置28によって車体の側面形状に合わせて揺動され、車体側面上部に指向させてブロワ乾燥を行うことができる。
【0026】
図3は側面形状検出装置11の構成を示している。
形状検出部11aは、本体フレーム1の一方内面に形成され、自動車の進入を検出する超音波センサ31と、上下等間隔に配列した超音波センサ32a〜32dを備えている。車幅検出部11bは、本体フレーム1の他方内面に形成され、形状検出部11aの超音波センサ31と対をなす超音波センサ33を備えている。
【0027】
超音波センサ31・33は、それぞれ本体フレーム1の前面から支持アーム34により前方に突出させた状態で、確実な車体認識と消防法の観点から地上高60cmを目安に取り付けられ、入車待機中においてセンサ31を送信用・センサ33を受信用(むろんその逆でもよい)として使用することで透過型検出器として機能させ、自動車が進入してきたことを検出する。また、洗車中において各センサ31・33を反射型検出器として機能させ、車体側面に超音波を送受して車体側面との距離を測定し、自動車の車幅と形状を検出する。
【0028】
超音波センサ32a〜32dは、本体フレーム1の内面に適宜間隔Lをあけて配列され、車体側面に超音波を送受して車体側面との距離を測定し、各センサでの車体検出点を直線で結んで側面輪郭を検出する。超音波センサ32aは、超音波センサ31から間隔L上部に位置し、普通車のドアと窓の切替付近に超音波を照射し、超音波センサ32bは、超音波センサ32aから間隔L上部に位置し、普通車の窓に超音波を照射し、超音波センサ32cは、超音波センサ32bから間隔L上部に位置し、普通車の窓とルーフの切替付近でワゴン車の窓付近に超音波を照射し、超音波センサ32dは、超音波センサ32cから間隔L上部に位置し、ワゴン車の窓とルーフの切替付近に超音波を照射する。
【0029】
これにより、超音波センサ31を最下位・超音波センサ32dを最上位として車体検出点が測定され、各検出点の座標データに基づいて直線化し車体側面形状を検出するものである。
【0030】
図4は制御系を示すブロック図である。
車形制御部35は、各超音波センサ31,32a〜32d,33を数珠繋ぎに接続し、各超音波センサに対して送信選択信号・受信選択信号・選択信号シフトクロック・超音波発振信号を出力し、各超音波センサからの超音波受信信号を受けるセンサ駆動部36と、超音波を発信してから反射波を受信するまでの時間を計測し車体検出点までの距離を算出する距離演算部37と、該距離演算部37で検出される車体検出点の座標データと車体上面位置から側面上部ブロワノズル7,7の制御データとして使用される制御点を仮想する制御点検出部38と、該制御点検出部38で検出される片側の制御点に基づいて反対側の制御点を仮想する車形データ作成部39を備えている。
【0031】
洗車制御部40は、走行エンコーダ9で得られる本体フレーム1の走行位置データと、上面形状検出装置10で得られる上面車形データと、側面形状検出装置11で得られる側面車形データに基づいて洗車駆動部41を制御して前記各ブラシ及びノズルを駆動するものである。
【0032】
続いて、このように構成する本発明の動作について説明する。
洗車利用者が操作ボックス12において洗車料金を投入し、希望する洗車メニューを選択した後、自動車を乗り入れていく。本体フレーム1の超音波センサ31,33で自動車が所定の停車位置に停車されたことを検出すると、本体フレーム1の往行に伴う洗浄工程が実行される。洗浄工程では、まず走行エンコーダ9で本体フレーム1の走行位置を検出しながら上面形状検出装置10及び側面形状検出装置11で自動車の上面形状及び側面形状を認識していく。
【0033】
ここで、車形制御部35で実行される車体側面形状の検出動作について、図5〜7に基づいて説明する。尚、車体上面形状は特許4047672号に記載されている方法で検出される。
【0034】
センサ駆動部36は、本体フレーム1が所定距離走行する毎に出力される走行エンコーダ9のパルス信号をトリガにして、駆動させたい超音波センサに送信/受信選択信号をシフトしたあと、超音波発振信号を出力し、同時に反射波の受信信号を受ける。距離演算部37は、超音波発振から反射波受信までの時間によりでセンサと水平の車体面までの距離Xを測定し、車体検出点Pにおける座標データを作成する。例えば、図5に示すように、超音波センサ31で検出される車体検出点P1の座標データは、超音波センサ31から水平の車体面を検出点とし、X1=超音波センサ31で検出する距離,Y1=超音波センサ31の取付高さで与えられる。同様にして、超音波センサ32a〜32dの検出点P2〜P5で座標データを作成していく。
【0035】
制御点検出部38は、検出された各車体検出点P1〜P4の座標データと、上面形状検出装置10で検出される車体上面位置Hとから制御点Prの座標データを仮想する。制御点Prは、側面上部ブロワノズル7,7を揺動制御する際に目標とする車体ポイントであり、車体側面とルーフ面との境界部からバイザーの装備を想定して下方にオフセットHaした位置で、且つ各検出点P1〜P4を近似的に結ぶ直線上に仮想される。すなわち、図6に示すように、制御点PrのY座標Yrは、上面形状検出装置10で実測される車高Hとオフセット量Haから算出(=H−Ha)され、X座標Xrは、各検出点P1〜P4の座標データに基づき最小二乗近似法で与えられる傾きa・y切片b及びY座標Yrから算出(=(Yr−b)/a)される。
【0036】
車形データ作成部39は、図7に示すように、超音波センサ33で測定される車体の反対側面までの距離X6と、制御点Prの距離Xrに基づいて車体の反対側の制御点Pr’の距離Xr’(=Xr−X1+X6)を算出する。一般的に自動車の側面には傾斜があり、ドア付近の車幅とルーフ面の車幅とに寸法差が生じるが、ドア付近の車幅・片側面の傾き・車高といったパラメータを検出することで、車体側面とルーフの境界点Prを仮想することができる。しかも車体は特殊装備を除いてほぼ左右対称であることから、逆側面の境界点Pr’も仮想することができる。
【0037】
こうして、走行エンコーダ9がパルス信号を出力する毎に、車体上面と車体側面の形状検出が行われ、本体フレーム1の往行が終了すると全体の形状認識が完了する。本体フレーム1の往行時には、洗浄部において、散水ノズルより洗浄水及び洗剤水を放出しながら、上面ブラシ4が自動車の上面形状に沿って駆動して車体上面のブラッシング洗浄を行い、側面ブラシ5・5が開閉動作により自動車の前面・側面・後面のブラッシング洗浄が行われる。
【0038】
本体フレーム1が往復走行し、洗浄工程が終了すると、本体フレーム1の往行に伴う乾燥工程が実行される。乾燥工程は、乾燥部において、上面ブロワノズル6が、自動車の上面形状に沿って昇降し、できるだけ車体に近づいた状態で自動車の上面に送風し、側面上部ブロワノズル7・7が、自動車の上面形状に応じてノズル体27の揺動位置を変位させて車体の側面上部に向けて送風し、側面下部ブロワノズル8・8が、車体の側面下部に向けて送風し、洗浄後の車体をブロワ乾燥する。
【0039】
図8・9は乾燥時の送風状態を示している。
上面ブロワノズル6からの送風は、主に自動車Aの車体上面に作用し、本体フレーム1の往行によって残留する水滴を車体後方に追いやりながら吹き飛ばしていく。側面上部ブロワノズル7・7の送風は、主に車体側面上部(普通車における窓付近)に作用し、残留する水滴を車体下方に追いやりながら吹き飛ばしていく。側面下部ブロワノズル8・8からの送風は、主に車体側面下部(普通車におけるドア付近)に作用し、残留する水滴及び車体上面から流れる水滴を吹き飛ばしていく。
【0040】
このうち側面上部ブロワノズル7・7からの送風は、筒状のノズル体27によってほとんど損失のない状態で車体に吹き付けられ、コアンダ効果により車体面に沿って拡散していき、広域にわたって水滴除去の乾燥力が発揮される。この送風が車体上面まで拡散してしまうと、上面ブロワノズル6からの送風と干渉してしまい、打ち消しあった部位に水滴の滞留が発生しやすくなる。よって、側面上部ブロワノズル7・7は、常に車体側面上部に設定した制御点Pr,Pr’に向けて送風するよう、車種や車体部位に応じて揺動位置が制御される。
【0041】
普通車の場合、上面形状からボンネット・キャビン・トランク等の車体部位が推定され、キャビンに対しては、車体側面上部が窓部で幅狭な急傾斜となっているため、側面上部ブロワノズル7・7を内向きにしてこの車体側面上部に指向させている(図8)。また、左右いずれかに片寄って停車した自動車や斜めに停車した自動車であっても、左右それぞれ揺動角度を調整して、制御点に合わせて側面上部ブロワノズル7・7を指向させることができる(図9)。
【0042】
こうして自動車が乾燥部を抜けると、乾燥工程が終了となる。その後、自動車Aをそのまま前進させて洗車エリアから退場させるよう促し、自動車の退場が検出されると、本体フレーム1をレール後端の待機位置に戻して次の洗車に備える。
【0043】
このように本発明では、上面ブロワノズル6の側面に側面上部ブロワノズル7・7を設けたので、車体側面の窓部に残りやすい水滴を効率良く確実に吹き飛ばすことができる。しかも側面上部ブロワノズル7・7は筒状のノズル体からなるため、損失が少ない状態で車体に吹き付けられ、コアンダ効果により車体に沿って拡散し車体側面に対して広域に作用することで、車体の残滴をきわめて少なくすることができる。また、上面ブロワノズル6を昇降・前後揺動可能にし、側面上部ブロワノズル7・7を左右揺動可能にしたため、車種や車体部位に対応した乾燥形態が可能になる。更に、側面上部ブロワノズル7・7を揺動自在にしているため、車体形状の入り組んだ部分、例えばドアミラー周辺を乾燥する場合に、本体フレームの走行を減速もしくは停止して、側面上部ブロワノズル7・7を揺動させることで更に乾燥効果を高めることができる。
【0044】
尚、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、請求項の記載を逸脱しない範囲で種々の実施態様が考えられる。実施例では本体フレーム1の前寄りに洗浄部を形成し後寄りに乾燥部を形成してあるが、現在広く普及している門型洗車機のように前寄りに乾燥部を設け後寄りに洗浄部を設け、本体の往復走行により洗車動作を行うものに適用できることは勿論である。また、本体フレーム内に自動車を走行させて洗浄する洗車機においても同様に適用できる。更に、実施例の洗浄部Sではブラッシング洗浄を行うが、ブラシを備えず高圧スプレーで洗浄をはかる方式のブラシレス洗車機にも適用可能であることは明らかである。また、側面上部ブロワノズル7・7を単独で前後方向に揺動可能にし、車体の前後面に対して側面上部ブロワノズル7・7だけを指向させたり、車体部位に応じて前後に揺動させるようにしても良い。
【符号の説明】
【0045】
1 本体フレーム
6 上面ブロワノズル
7 側面上部ブロワノズル
10 上面形状検出装置
11 側面形状検出装置
11a 形状検出部
11b 車幅検出部
31 超音波センサ
32 超音波センサ
33 超音波センサ
35 車形制御部
37 距離演算部
38 制御点検出部
39 車形データ作成部
40 洗車制御部
41 洗車駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
門型に形成された本体フレームに、自動車の車体面を洗車処理する洗車処理装置と、自動車の上面形状を検出する上面形状検出手段と、自動車の側面形状を検出する側面形状検出手段とを備えた洗車機であって、
前記側面形状検出手段は、前記本体フレームの片側内面に設けた形状検出部と、本体フレームの他方内面に設けた車幅検出部と、形状検出部で検出した車体片側の側面形状と車幅検出部で検出した車幅位置に基づいて車体両側の側面形状データを作成する車形制御部とから構成したことを特徴とする洗車機。
【請求項2】
前記形状検出部は、車体側面に向けて超音波を発信し車体側面からの反射波を受信する超音波センサを複数縦列に配置したセンサ部からなり、前記車幅検出部は、単一の超音波センサからなり、
前記車形制御部は、各超音波センサから超音波を発信してから反射波を受信するまでの時間を計測し車体検出点までの距離を算出する距離演算部と、該距離演算部で検出される車体検出点の座標データと前記上面形状検出手段で検出される車体上面位置から車体側面上部の制御点を仮想する制御点検出部と、該制御点検出部で検出する制御点に基づいて反対側の制御点を仮想する車形データ作成部とからなることを特徴とする上記請求項1記載の洗車機。
【請求項3】
自動車車体の上面に送風する上面乾燥ノズルと、該上面乾燥ノズルを車体形状に沿って高さ方向に昇降する昇降装置と、前記上面乾燥ノズルの両側面に取り付けられ自動車車体の側面上部に送風する側面上部乾燥ノズルと、該側面上部乾燥ノズルを車体形状に応じて幅方向に揺動する揺動装置と、前記車形データ作成部で作成した車形データに基づいて前記昇降装置及び揺動装置を制御する洗車制御手段を備えたことを特徴とする上記請求項2記載の洗車機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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