説明

洗車用ブラシ

【目的】(1)洗浄効果を高め、(2)強度・耐久性に優れ、難燃性が高く、(3)含水量を抑えることができる洗車用ブラシを提供する。
【解決手段】洗車用ブラシ10は、回転軸11と、線洗浄体21と、面洗浄体22とを備える。回転軸11は取付孔12が水平方向に対して斜め方向に形成され、線洗浄体21は先端部が複数に分割された複数の短冊状洗浄片21aと山折部から谷折部にかけて及び/又は山折部を跨いで及び/又は谷折部を跨いで形成される丸め角略長方形状孔21cとを備え、面洗浄体22は短冊状洗浄片21aが外周端部22aの下側から非拘束状態で露出する態様で線洗浄体21の上側表面中心部寄り部位に上面視略円形状で内周端部22bが固定される上面視略リング状である。面洗浄体22が固定された線洗浄体21は、斜め方向に沿って傾斜して回転軸11に取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗車用ブラシに関し、更に詳しくは、複数種類の洗浄素材(線洗浄体、及び、面洗浄体)を重ね合わせて用いることにより、車体凹凸部、及び、車体平面部の両者の洗浄効果を高める技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フリンジ部と交差する方向に山折りと谷折りが交互に繰り返され、回転軸への取付け側が束ねられて腰部となった扇体をなす洗浄シートが、その山折り部及び谷折り部を回転軸の中心軸方向に向けて回転軸に取り付けられた自動洗車ブラシが開示されている。
【0003】
特許文献2には、洗車機の洗浄ブラシとして、不織布により円盤状に形成され、その放射方向に複数の山折と谷折とを交互に有し、周方向に波状に形成された洗浄体素材を備え、この洗浄体素材が複数枚重ねて設けられるとともに、同心円状に縫合して構成されている洗浄体素材を備えたものが開示されている。
【0004】
特許文献3には、洗車装置の回転ブラシとしてその請求項1には、(a)回転体の外周に円盤状にまたは軸方向にずらしながら螺旋状に洗浄体を取付けた、洗車装置の回転ブラシにおいて、
(b)前記洗浄体は、柔軟な素材からなり、基端部に複数回折り重ねて作られた複数の取付部を有し、その複数の取付部が回転体に該回転体の円周方向に全体にわたって取り付けられており、
(c)隣り合う全ての前記取付部の間は、基端から所定距離の非繋がり部による隙間を有しておりその非繋がり部よりも他端側で繋がっていることを特徴とする回転ブラシが開示されている。
その請求項2には、(a)回転体の外周に円盤状にまたは軸方向にずらしながら螺旋状に洗浄体を取付けた、洗車装置の回転ブラシにおいて、
(b)前記洗浄体は、略長方形をした柔軟な素材からなる複数の洗浄体部品からなり、前記洗浄体部品は素材のときの一方の長辺側に該長辺を複数回折り重ねた取付部を有し、
(c)これらの洗浄体部品の素材のときの短辺と隣り合った洗浄体部品の素材のときの短辺とは、全て前記一方の長辺から所定距離の間が非接続部となるように接続され、
(d)前記取付部が回転体に該回転体の円周方向に間隔を開けて取り付けられており、
(e)隣り合う取付部の間に、前記非接続部による隙間を有していることを特徴とする洗車装置の回転ブラシが開示されている。
その請求項3には、(a)回転体の外周に円盤状にまたは軸方向にずらしながら螺旋状に洗浄体を取付けた、洗車装置の回転ブラシにおいて、
(b)前記洗浄体は略長方形をした柔軟な素材からなり、該洗浄体は素材のときの一方の長辺側に所定深さの複数の切込みで分割して作られた複数の取付部を有し、
(c)その複数の取付部は、それぞれ複数回折り重ねられ回転体に該回転体の円周方向に間隔を開けて取り付けられており、
(d)隣り合う全ての取付部の間は、前記一方の長辺側に非繋がり部による隙間を有しており、その非繋がり部よりも他方の長辺側で繋がっていることを特徴とする洗車装置の回転ブラシが開示されている。
【0005】
特許文献4には、液晶表示パネルの基板を洗浄するための処理装置にて、搬送される基板を洗浄するためのブラシロールシャフトとして、炭素繊維強化プラスチックで作製した円筒状の芯材にて形成されたロールシャフト本体と、該ロールシャフト本体の外周面に装着したロールブラシとを備えたものが開示されている。ここで、ロールシャフト部の外周面の全部及び前記支軸の外周面の少なくとも一部を被覆して形成された外皮部分は、PVC熱収縮管を熱収縮させたものである。
【0006】
特許文献5には、湖または人工の大きい水体を含むことが可能な構造の底をクリーニングするための吸込み機器として、クリーニングされる表面上の連続移動するための回転手段と、吸込管とクリーニングされる材料を除去するブラシラインとからなるクリーニング手段等を備えたものが開示されている。当該クリーニング手段は、縦型PVC管によって形成される吸込管を具備する。
【0007】
特許文献6には、ブラシ形状の保持性に優れるとともに、車体突出物へのフリンジ片の絡み付きを防止できる自動洗車ブラシとして、回転軸の周囲に洗浄シートの一端側を束ねて取り付けてブラシ部とし、車体表面にブラシ部を回転接触させて洗車を行う自動洗車ブラシが開示されている。この自動洗車ブラシは、洗浄シートが合成樹脂発泡体シートと洗浄布とからなる。この合成樹脂発泡体シートは、一側が複数のフリンジ形成スリットにより複数のフリンジ片に細分され、更に各フリンジ片の先端部が先端分割スリットにより複数の先端片に分割形成され、合成樹脂発泡体シート上に少なくとも先端片を露出させるように洗浄布を重ね合わせ、フリンジ片側を自由端として回転軸に取り付ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実用新案登録第3079414号
【特許文献2】特開2008−189013
【特許文献3】特許第3585178号
【特許文献4】特開2009−165971
【特許文献5】特開2009−165971
【特許文献6】実用新案登録第3123116号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の自動洗車ブラシは、その洗浄シートがフリンジ部と交差する方向に山折りと谷折りが交互に繰り返され、この山折り部及び谷折り部が回転軸の中心軸方向に向けて回転軸に取り付けられたものであるため、洗車時に山折り部及び谷折り部が衝突したり、短冊部分同士が衝突してブラッシング時に発生する洗浄音が大きいという問題がある。
特に、ドライブスルー方式の洗車では、運転者が洗車中車内に居るため、洗車ブラッシング時に発生する洗浄音が低い洗車ブラシが求められている。このような状況において、特許文献1の自動洗浄ブラシは、洗浄音の点で要求特性を満たすものではなかった。
【0010】
特許文献2に記載の洗車機の洗浄ブラシは、洗浄体素材を山折り及び谷折りにしたり、洗浄体素材を同心円状に縫合したりする等、製造に手間がかかるといった問題がある。
【0011】
特許文献3に記載の洗車装置の回転ブラシの場合、「複数回折り重ねた取付部」は、波形や略台形、パルス型を意味し、なおかつ、折り曲げ加工されたものと解釈される(特許文献3の0010、同じく図1)ことから、洗車ブラッシング時における洗浄音が大きいという問題がある。
更に、「非繋がり部による隙間」とは、特許文献3における非連続部となっている5’A,5’A部分によって形成される隙間と解されるが、このような隙間は洗浄音を抑えないか、又は、却って洗浄音を発生させる原因となると考えられる。
【0012】
特許文献4,5は、ポリ塩化ビニルの用途例を示すが、従来、洗車用ブラシとしてポリ塩化ビニルを用いた例は知られていない。ポリ塩化ビニルからなる発泡体を洗車用ブラシとして用いると強度が低いという問題点があるからである。
【0013】
特許文献6は、先端分割スリットを形成させたものであるが構造が複雑な上、これに形成された末端凹部や中間凹部に汚れが残りやすいという問題点がある。また、特許文献6のものは、合成樹脂発泡体シート上に洗浄布を単に重ね合わせただけでもよいが洗浄布の長手方向両端部を合成樹脂発泡体シートの裏面側に折り返して縫製や接着等により一体化させているため面洗浄の効果が得られないという問題点がある。
【0014】
また、不織布のみからなる洗浄ブラシでは洗浄後の含水量が増加することにより重くなるという問題が指摘されていた。
【0015】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の第一の目的は、主として車体凹凸部に対する洗浄機能を発揮する線洗浄部と、主として車体平面部に対する洗浄機能を発揮する面洗浄体とを備えることにより、洗浄効果を高めることができる洗車用ブラシを提供することを目的とする。
本発明の第二の目的は、強度・耐久性に優れるとともに、難燃性が高い洗車用ブラシを提供することを目的とする。
本発明の第三の目的は、含水量を抑えた洗車用ブラシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明に係る洗車用ブラシは、
隣接する取付孔が水平方向に対して斜め方向に形成された回転軸と、
先端部が複数に分割された複数の短冊状洗浄片と、山折部から谷折部にかけて及び/又は山折部を跨いで及び/又は谷折部を跨いで形成される洗浄液抜き用及び折り目付与用の丸め角略長方形状孔とを備えた上面視略リング状の線洗浄体と、
前記短冊状洗浄片が外周端部の下側から非拘束状態で露出する態様で、前記線洗浄体の上側表面中心部寄り部位に上面視略円形状で内周端部が固定される上面視略リング状の面洗浄体とを備え、
前記面洗浄体が固定された線洗浄体は、前記斜め方向に沿って傾斜して前記回転軸に取り付けられていることを要旨とする。
【0017】
この場合に、前記線洗浄体は、難燃材を練り込んだEVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体からなる)、自己消火性機能を備えた軟質PVC(軟質ポリ塩化ビニルからなる)及び自己消火性機能を備えたPVCG(PVC(ポリビニルクロライド)及びSBR(スチレンブチルラバー)からなる)のいずれかから選ばれる一種又は複数からなることが好ましい。
【0018】
この場合に、前記面洗浄体は、PET(ポリエチレンテレフタレートからなる)からなる不織布に撥水材と難燃材とを混合して塗布したもの、又は、自己消火性機能を備えたPVCG(PVC(ポリビニルクロライド)及びSBR(スチレンブチルラバー)からなる)からなることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る洗車用ブラシは、先端部が複数に分割された複数の短冊状洗浄片と、山折部から谷折部にかけて及び/又は山折部を跨いで及び/又は谷折部を跨いで形成される洗浄液抜き用及び折り目付与用の丸め角略長方形状孔とを備えた上面視略リング状の線洗浄体と、前記短冊状洗浄片が外周端部の下側から非拘束状態で露出する態様で、前記線洗浄体の上側表面中心部寄り部位に上面視略円形状で内周端部が固定される上面視略リング状の面洗浄体とを備えたものであるから、線洗浄体が主として車体凹凸部に対する洗浄機能を発揮し、面洗浄体が主として車体平面部に対する洗浄機能を発揮するため、洗浄効果を高めることができるという効果がある。
【0020】
本発明に係る洗車用ブラシは、線洗浄体が難燃材を練り込んだEVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体からなる)、自己消火性機能を備えた軟質PVC(軟質ポリ塩化ビニルからなる)及び自己消火性機能を備えたPVCG(PVC(ポリビニルクロライド)及びSBR(スチレンブチルラバー)からなる)のいずれかから選ばれる一種又は複数からなる、及び/又は、面洗浄体がPET(ポリエチレンテレフタレートからなる)からなる不織布に撥水材と難燃材とを混合して塗布したもの、又は、自己消火性機能を備えたPVCG(PVC(ポリビニルクロライド)及びSBR(スチレンブチルラバー)からなる)からなるものであるため、強度・耐久性に優れるとともに、難燃性が高いという効果がある。
【0021】
本発明に係る洗車用ブラシは上記構成からなるため、面洗浄体(PET製)のみからなる洗車用ブラシに比べて含水量を抑えることができるという効果がある。更に、洗車の際に自動車の被洗浄面を傷つけずに優れた洗浄性能を発揮する、洗車ブラッシング時に発生する洗浄音が低いといった効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1A】本発明の一実施形態に係る洗車用ブラシ10(面洗浄体22が狭いもの)を回転軸11に取り付けた状態を示す斜視図である。
【図1B】本発明の一実施形態に係る洗車用ブラシ10(面洗浄体22が広いもの)を回転軸11に取り付けた状態を示す斜視図である。
【図2A】洗車用ブラシ10(分割数が少ない短冊状洗浄片21a)の(a)平面図、(b)側断面図である。
【図2B】洗車用ブラシ10(分割数が多い短冊状洗浄片21a)の(a)平面図、(b)側断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る洗車用ブラシ10を回転軸11に取り付けたときの線洗浄体21と面洗浄体22との関係を概念的に示す側断面図である。
【図4】各試験で用いた(a)洗車ブラシ及び(b)洗車方法を示す図面代用写真である。
【図5A】洗浄力試験の(a)洗車前と(b)洗車後を比較して示す図面代用写真である。
【図5B】洗浄力試験の(a)洗車前と(b)洗車後を比較して示す図面代用写真である。
【図6】耐久試験の結果を示す図面代用写真であり、(a)を部分的に拡大したものが(b)である。
【符号の説明】
【0023】
10 洗車用ブラシ
11 回転軸
12 回転軸の取付孔
20 洗浄体
21 線洗浄体
21a 短冊状洗浄片
21b 中心露出部位
21c 丸め角略長方形状孔
21d 取付部
21e スリット
21f 固定部
22 面洗浄体
22a 外周端部
22b 内周端部
A 間隔
B 取付孔群
C 間隔
D 直径
E 扇形幅
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明の一実施形態に係る洗車用ブラシ10について図面を参照して説明する。
【0025】
(構成)
図1A及び図1Bは、本発明の一実施形態に係る洗車用ブラシ10として、それぞれ、面洗浄体22が狭いもの、広いものを回転軸11に取り付けた状態を示す斜視図である。図2A及び図2Bは、洗車用ブラシ10として、それぞれ、分割数が少ない短冊状洗浄片21aと多い短冊状洗浄片21aの(a)平面図、(b)側断面図である。図3は、洗車用ブラシ10を回転軸11に取り付けたときの線洗浄体21と面洗浄体22との関係を概念的に示す側断面図である。
【0026】
これらの図に示す洗車用ブラシ10は、被洗浄車両をその側面側及び上面側から覆う洗車走行フレーム(いわゆるガソリンスタンドの洗車装置)の左右両側に鉛直方向を軸方向として設けられる回転軸11と、この回転軸11に取り付けられる洗浄体20とを備える。洗浄体20は、面洗浄体22が固定された線洗浄体21をいう。
【0027】
回転軸11は、洗浄体20を取り付けるための取付孔12,12…を備える。図2A、図2Bに示すように、取付孔12,12…は、所定間隔A又は任意間隔を開け、かつ、回転軸11の水平方向に対して斜め方向に(換言すれば、軸方向にシフトして)、回転軸11の外周が4〜20程度に分割又は等分割され、その分割された外周面上に並んで楕円を形成する態様で形成される。すなわち、各洗浄体20を1個取り付ける取付孔12,12…は、取付孔群Bを形成する。斜め方向の角度θは水平方向に対して5〜30°が好ましく、12.5°がより好ましい。各洗浄体20を取り付ける取付孔12,12…の取付孔群Bに隣接する他の取付孔群Bもまた、同様である。
【0028】
回転軸11に形成される各取付孔群Bの鉛直方向での所定間隔Cは、以下の式(1)の関係を満たすものが好ましい。回転軸11の鉛直方向で被洗浄面に未洗浄部分が残らないようにするためである。
0<C<Dsinθ…式(1)
但し、C:各取付孔群Bの鉛直方向での所定間隔
D:線洗浄体21(洗浄体20)の直径
θ:取付孔群Bの水平方向に対する角度θ
【0029】
洗浄体20は、上記のように線洗浄体21と面洗浄体22とからなり、面洗浄体22が縫製、融着、接着その他の方法で線洗浄体21の中央付近稍々回転軸11寄りの固定部21fに線洗浄体21の上面視外周円状に対して同心円状に固定される。例えば、固定方法が縫製の場合には、図3に示す固定部21fで面洗浄体22が線洗浄体21に固定されるため、図1Aや図1Bに示す洗車用ブラシ10は、線洗浄体21の短冊状洗浄片21aが非拘束状態であり、回転軸11寄りの中心露出部位21bが線洗浄体21によって構成される。洗浄体20は、ドーナツ状の面洗浄体22が線洗浄体21に被せられた態様で構成される。
【0030】
洗浄体20は、略長方形状の素材を数枚(4〜12枚、洗車用ブラシ10の大きさに応じて適宜調整する)、縫合、融着、接着その他の方法で筒状にし、後述する取付部21dをヒダ状又はボックス状に折りたたむ若しくは波状に形成して上面視略リング状にしたものである(図1A、図1B等参照)。このような形状は機械加工による折り部分・曲げ部分が「明確なものではない方」が制音性の点で好ましい。洗浄体20は、外形に着目すれば上面視サークル型ともいえるが、回転軸11が中央に配置される関係から上面視ドーナツ型という方が好ましい。
【0031】
洗浄体20は、筒状にしたものを回転軸11に取り付けたものであるため、上面視ドーナツ型に加工して回転軸11に取り付けて洗車機を運転しても、洗浄体20がバラバラにならず、線洗浄体21の上に面洗浄体22が固定されたものであるため、特に、面洗浄体22の面どうしが衝突することによって生ずる衝突音が低減される。ドライブスルー方式の洗車において洗浄中車内の運転者がブラッシング音に煩わされることがない。
【0032】
線洗浄体21は、回転軸11に取り付けた状態で上面視略リング状の形状である。線洗浄体21は、先端部が複数に分割された複数の短冊状洗浄片21aと、中心露出部位21bを含むシート状部分と、山折部から谷折部にかけて及び/又は山折部を跨いで及び/又は谷折部を跨いで形成される洗浄液抜き用及び折り目付与用の丸め角略長方形状孔21cとを備える。短冊状洗浄片21aは、その分割方法は、線洗浄体21を構成する素材を図2Aのように単に分割して短冊状洗浄片21aを構成したものでもよいし、図2Bのように分割した後更に分割して短冊状洗浄片21aを構成したものでもよい。図示は省略するが分割を繰り返してより細かく分割して短冊状洗浄片21aを構成したものでもよい。
【0033】
線洗浄体21は、その内周端部に回転軸11に取り付けるための取付部21d,21d…を備える。更に、線洗浄体21の回転軸側には、スリット21eが適宜形成される。スリット21eを設けると洗浄体20の振動を吸収・抑制でき、洗浄音を抑えることができるためである。また、洗浄体20が車体表面に当たりやすくして洗浄効果を高めるためである。洗浄体20は、面洗浄体22が取り付けられた線洗浄体21の取付部21d,21d…と取付孔12,12…どうしを重ね合わせて取付具(ビス、ボルト、ねじ等)を用いてこれを抜脱不能に貫通させることにより、上記の斜め方向に沿って傾斜して回転軸11に取り付けられる。
【0034】
線洗浄体21の素材は、難燃材を練り込んだEVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体からなる)、自己消火性機能を備えた軟質PVC(軟質ポリ塩化ビニルからなる)及び自己消火性機能を備えたPVCG(PVC(ポリビニルクロライド)及びSBR(スチレンブチルラバー)からなる)のいずれかから選ばれる一種又は複数からなるものであればよい。
【0035】
面洗浄体22は、洗浄体20を回転軸11に取り付けた状態で上面視略リング状の形状である。面洗浄体22は、短冊状洗浄片21aが外周端部22aの下側から非拘束状態で露出する態様で、線洗浄体21の上側表面の中心部寄りの固定部21fに上面視略円形状で内周端部22bが固定される。面洗浄体22の扇形幅E(図2A、図2B参照)は、図1Aに示すように短めにしてもよいし、図1Bに示すように長めにしてもよく、洗浄速度、洗浄液、洗浄車両に応じて適宜変更される。短冊状洗浄片21aの露出態様は、扇形幅Eに応じて異なるが、最先端部の分割片となる短冊状洗浄片21aのみが露出する態様(図2A参照)でもよいし、最先端部の分割片より中心部寄りの分割片も併せて露出する態様(図2B参照)でもよい。
【0036】
面洗浄体22の素材は、PET(ポリエチレンテレフタレートからなる)からなる不織布に撥水材と難燃材とを混合して塗布したもの、又は、自己消火性機能を備えたPVCG(PVC(ポリビニルクロライド)及びSBR(スチレンブチルラバー)からなる)からなるものであればよい。
【実施例】
【0037】
本発明の実施例について説明する。
(洗車用ブラシ10の作製)
(1)線洗浄体21の材料として、EVA(エチレンビニルアセテート)に難燃材を練り込んだものを用意した。また、面洗浄体22の材料として、PET(ポリエチレンテレフタレートからなる)からなる不織布に撥水材と難燃材とを混合して塗布したものを用意した。
【0038】
(2)洗浄体20として、面洗浄体22を線洗浄体21に重ね合わせて縫合したものを6個作製し、回転軸11に積み重ねて取り付けた(図4(a)参照)。これにより、洗車用ブラシ10(実施例)を得た。また、EVAからなる線洗浄体21を6個作製し、回転軸11に積み重ねて得たEVAブラシ(比較例1)、PETからなる面洗浄体22を6個作製し、回転軸11に積み重ねて得たPETブラシ(比較例2)を得た。
(3)得られた洗車用ブラシ10(実施例)、PETブラシ(比較例2)の重量を測定した。
【0039】
(洗浄力試験及びその評価)
車体表面(ドア部分)に汚れ(墨汁希釈液)を塗布し、洗車用ブラシ10(実施例:ハイブリッドブラシ)及びEVAブラシ(比較例1)を用いて洗車を行った(図4(b)参照)。そして、汚れの残り具合を比較評価した。洗車用ブラシ10(実施例)は図5A(凹凸部分)及び図5B(平面部分)に示すように車体表面の凹凸部分・平面部分共に洗浄残り部分もなく良好な結果が得られた。一方、EVAブラシ(比較例1)では凹凸部分では良好な結果が得られたが平面部分では汚れが残る結果になった。総合的に判断すると実施例が比較例1に比べて高い洗浄結果が得られた。
【0040】
(耐久試験及びその評価)
実洗車を行い約1万台相当後の摩耗状況を観察し評価した。実洗車は上記の洗浄力試験と同様に実施した。その結果、洗車用ブラシ10(実施例)については、図6に示すように、線洗浄体21は先端部の摩耗もなく良好であり、面洗浄体22は先端の2〜3mmに布緩みがあったが実用には問題ない結果が得られた。この結果、強度・耐久性に優れることが分かった。
【0041】
(含水試験及びその評価)
上記耐久試験の後、実施例及び比較例2の重量を測定し含水率を求めた。実施例では、洗車開始前の重量が3.15kg、1万台洗車相当洗車後の重量が4.5kgとなり、含水率が142.8%という結果が得られた。比較例2では、洗車開始前の重量が3.5kg、1万台洗車相当洗車後の重量が6.4kgとなり、含水率が183%という結果が得られた。ガソリンスタンドの洗車機での洗車用ブラシの電子制御はその回転速度、洗浄液量、重量変化を反映させることが望ましい。良好な洗浄効果を得るには適度な含水量が好ましいが電子制御の観点から含水量が多いとその変化が予測できず電子制御が困難である。洗車用ブラシ10は乾燥状態の重量に対する洗浄後の重量が140%±10%程度であれば電子制御に支障を来すことなく洗浄効果も良好とすることができる。今回の含水試験では実施例は142.8%という結果になったため、電子制御に支障を来すことなく良好な洗浄効果を発揮できることが分かった。一方、比較例2は183%という結果になったため、電子制御がしにくいことが分かった。その結果、実施例に係るハイブリッドブラシ(線洗浄体と面洗浄体とを重ね合わせたもの)が優れていることが分かった。
【0042】
以上本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明に係る洗車用ブラシは、洗浄効果を高めることができ、強度・耐久性に優れるとともに、難燃性が高く、含水量を抑えることができるため、ガソリンスタンドをはじめとする洗車業界で産業上利用価値が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する取付孔が水平方向に対して斜め方向に形成された回転軸と、
先端部が複数に分割された複数の短冊状洗浄片と、山折部から谷折部にかけて及び/又は山折部を跨いで及び/又は谷折部を跨いで形成される洗浄液抜き用及び折り目付与用の丸め角略長方形状孔とを備えた上面視略リング状の線洗浄体と、
前記短冊状洗浄片が外周端部の下側から非拘束状態で露出する態様で、前記線洗浄体の上側表面中心部寄り部位に上面視略円形状で内周端部が固定される上面視略リング状の面洗浄体とを備え、
前記面洗浄体が固定された線洗浄体は、前記斜め方向に沿って傾斜して前記回転軸に取り付けられていることを特徴とする洗車用ブラシ。
【請求項2】
前記線洗浄体は、難燃材を練り込んだEVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体からなる)、自己消火性機能を備えた軟質PVC(軟質ポリ塩化ビニルからなる)及び自己消火性機能を備えたPVCG(PVC(ポリビニルクロライド)及びSBR(スチレンブチルラバー)からなる)のいずれかから選ばれる一種又は複数からなることを特徴とする請求項1に記載の洗車用ブラシ。
【請求項3】
前記面洗浄体は、PET(ポリエチレンテレフタレートからなる)からなる不織布に撥水材と難燃材とを混合して塗布したもの、又は、自己消火性機能を備えたPVCG(PVC(ポリビニルクロライド)及びSBR(スチレンブチルラバー)からなる)からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の洗車用ブラシ。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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