説明

洗髪方法

【目的】洗髪によって毛髪の質感が損なわれにくいようにする。
【構成】洗剤を用いて毛髪を洗浄し、多価陽イオンが除去されかつナトリウムイオンが付与された機能水からなるすすぎ水を用いてこの毛髪から洗剤を洗い流す。使用可能な洗剤は、実質的に石鹸または合成界面活性剤からなるものであり、種類を問わない。必要に応じ、洗剤が洗い流された毛髪に対して毛髪用調整剤を適用し、この毛髪用調整剤を上記機能水からなるすすぎ水を用いて洗い流すこともできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗髪方法、特に、洗剤を用いた洗髪方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人の頭髪や愛玩動物の体毛の洗浄では、通常、洗剤を用いて洗浄した後に洗剤を水道水で洗い流している(例えば特許文献1)。
【0003】
しかし、上述の洗髪方法による洗浄後の毛髪は、光沢(艶)などの外観および滑らかさやしなやかさなどの触感が低下し、全体としての質感が損なわれることが多い。
【0004】
【特許文献1】特開平9−301834号公報
【0005】
本発明の目的は、洗髪によって毛髪の質感が損なわれにくいようにすることにある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の洗髪方法は、洗剤を用いて毛髪を洗浄する工程と、多価陽イオンが除去されかつナトリウムイオンが付与された機能水からなるすすぎ水を用いて毛髪から洗剤を洗い流す工程とを含んでいる。ここで用いられる洗剤は、実質的に石鹸からなるもの、または、実質的に合成界面活性剤からなるものである。この洗髪方法では、毛髪の質感を損なう原因となるいわゆる金属石鹸が洗浄後の毛髪に残留しにくいため、洗髪後の毛髪の質感が損なわれにくい。
【0007】
また、本発明の洗髪方法は、例えば、洗剤が洗い流された毛髪に対して毛髪用調整剤を適用する工程と、上記すすぎ水を用いて毛髪から毛髪用調整剤を洗い流す工程とをさらに含んでいる。この場合、洗剤として実質的に石鹸からなるものを用い、毛髪用調整剤として実質的にクエン酸からなるものを用いるのが好ましい。或いは、洗剤として実質的に合成界面活性剤からなるものを用い、毛髪用調整剤として化学品組成物からなるものを用いるのが好ましい。
【0008】
本発明の洗髪用すすぎ水は、多価陽イオンが除去されかつナトリウムイオンが付与された機能水からなるものである。この洗髪用すすぎ水は、毛髪の質感を損なう原因となるいわゆる金属石鹸を洗髪後の毛髪に残留させにくいため、洗髪後の毛髪の質感を損ないにくい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の洗髪方法は、毛髪の洗浄において用いた洗剤を多価陽イオンが除去されかつナトリウムイオンが付与された機能水からなるすすぎ水を用いて洗い流しているので、毛髪の質感を損ないにくい。
【0010】
また、本発明の洗髪用すすぎ水は、多価陽イオンが除去されかつナトリウムイオンが付与された機能水からなるため、各種の洗剤を用いて洗髪したときに洗剤の洗い流しのために用いると、毛髪の質感を損ないにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の洗髪方法は、洗剤を用いて毛髪を洗浄するための方法である。本発明の適用対象となる毛髪は、人の毛髪、すなわち頭髪や体毛の他、犬や猫などの愛玩動物の体毛、競走馬などの競技用動物の体毛並びにウマ、ウシおよびヒツジなどの家畜動物の体毛なども含む。
【0012】
本発明の洗髪方法では、先ず、毛髪を洗剤で洗浄する。ここでは、通常、水で潤した毛髪に適量の洗剤を適用し、洗剤を泡立てながら毛髪を洗浄する。
【0013】
本発明の洗髪方法は、洗剤の種類を選ばない。したがって、本発明の洗髪方法において用いられる洗剤は、洗髪用に用いられるものであれば特に限定されない。例えば、石鹸のみからなるものや石鹸に添加剤を適宜添加して混合したもののような実質的に石鹸からなるもの(いわゆる石鹸シャンプー)、および、合成界面活性剤のみからなるものや合成界面活性剤に添加剤を適宜添加して混合したもののような実質的に合成界面活性剤からなるもの(いわゆる合成シャンプー)が用いられる。
【0014】
次に、洗剤で洗浄した毛髪から水を用いて洗剤を十分に洗い流す。ここで。洗剤を洗い流すための水、即ちすすぎ水として、多価陽イオンが除去されかつナトリウムイオンが付与された水(以下、「機能水」と云う場合がある)からなるものを用いる。この機能水は、通常、水道水、地下水、河川水、湖沼水および井戸水などの水(原水)を陽イオン交換樹脂により処理し、原水に含まれるカルシウムイオン(二価の陽イオン)、マグネシウムイオン(二価の陽イオン)、銅イオン(二価の陽イオン)、鉄イオン(二価および三価の陽イオン)およびアルミニウムイオン(三価の陽イオン)等をイオン交換樹脂側のナトリウムイオン(一価の陽イオン)と交換して得られるものである。
【0015】
原水を処理するために用いられる陽イオン交換樹脂は、架橋した三次元の高分子の母体、例えばスチレンとジビニルベンゼンとの共重合体に対し、スルホン酸基を導入した合成樹脂であり、スルホン酸基部分がナトリウム塩を形成しているものである。
【0016】
機能水において、多価陽イオンの濃度は、通常、0.2ミリモル/リットル未満に設定されているのが好ましく、実質的なゼロレベルを意味する測定限界未満に設定されているのが特に好ましい。ここで、多価陽イオンの濃度は、ICP発光分光分析法に基づいて測定した場合の濃度を意味する。
【0017】
一方、機能水において、ナトリウムイオンの濃度は、通常、0.3ミリモル/リットル以上500ミリモル/リットル未満に設定されているのが好ましく、0.5ミリモル/リットル以上200ミリモル/リットル未満に設定されているのがより好ましい。ここで、ナトリウムイオンの濃度は、ICP発光分光分析法に基づいて測定した場合の濃度を意味する。
【0018】
機能水は、原水を上述の陽イオン交換樹脂により処理することで容易に調製することができる。したがって、機能水は、量産が容易であり、しかも安価に製造することができる。
【0019】
上述の洗髪方法によれば、毛髪の艶および滑らかさなどの触感を損なう金属石鹸が毛髪に残留しにくくなり、また、毛髪の硬さを高める原因となるカルシウムの量を減少させることができる。したがって、この洗髪方法は、毛髪の質感を損ないにくい。
【0020】
本発明の洗髪方法では、上述の工程に加えて毛髪の調整工程を含んでいてもよい。この場合は、機能水からなるすすぎ水を用いて洗剤を洗い流した毛髪に対して艶や触感などを改善するための毛髪調整剤(いわゆるヘアリンス)の適量を適用し、毛髪を処理する。そして、毛髪へ適用された毛髪調整剤を上述の機能水からなるすすぎ水により洗い流す。
【0021】
ここで用いられる毛髪調整剤は、洗髪時において用いられる各種のものであり、特に限定されない。したがって、例えば、クエン酸のみからなるものやクエン酸に添加剤を適宜添加して混合したもののような実質的にクエン酸からなるもの(いわゆるクエン酸リンス)、および、各種のアルコール類やアンモニウム塩などの化学品を組合せた化学品組成物(いわゆる合成リンス)のような様々な種類のものが用いられる。
【0022】
但し、毛髪調整剤は、通常、洗髪時に使用する洗剤の種類に応じて選択するのが好ましい。例えば、洗剤として石鹸シャンプーを用いる場合はクエン酸リンスを選択するのが好ましく、洗剤として合成シャンプーを用いる場合は合成リンスを選択するのが好ましい。
【0023】
このような調整工程では、毛髪調整剤に由来の金属石鹸が毛髪に残留しにくくなり、また、毛髪の硬さを高めるカルシウム量の増加を抑制することができるため、毛髪調整剤による効果を毛髪へ効果的に付与することができる。
【0024】
上述の実施の形態では、すすぎ水として多価陽イオンが除去されかつナトリウムイオンが付与された機能水を用いているが、すすぎ水は、多価陽イオンが除去されかつナトリウムイオン以外のアルカリ金属イオン、例えばカリウムイオンが付与された機能水からなるものであってもよい。このような機能水は、上述の陽イオン交換樹脂として、スルホン酸基部分がカリウムなどのアルカリ金属塩を形成しているものを用い、この陽イオン交換樹脂を用いて原水を処理することで得ることができる。
【実施例】
【0025】
実施例および比較例において用いた毛束、機能水、水道水、シャンプー液およびリンス液は下記の通りである。
【0026】
<毛束>
長さ10cmに切り揃えられた1gの人毛黒髪(株式会社ビューラックスから購入した化学処理していない健常毛)を束ね、毛束を作成した。これを5%ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン溶液に1分間浸漬して洗浄し、蒸留水ですすいだ。これを乾燥したものを試験用の毛束として用いた。
【0027】
<機能水>
愛媛県松山市の水道水を陽イオン交換樹脂を用いて処理して得られた水のみからなるものであり、多価陽イオンの濃度が0.2ミリモル/リットル未満であり、かつ、ナトリウムイオンの濃度が0.3ミリモル/リットル以上500ミリモル/リットル未満の条件を満たしたもの。
<水道水>
愛媛県松山市の水道水。
【0028】
<シャンプー液A1>
20ミリリットルの機能水に毛髪洗浄用石鹸(ラウリン酸30.0重量%、ミリスチン酸10.2重量%、パルミチン酸19.3重量%,オレイン酸31.2重量%およびその他の脂肪酸9.3重量%を含有する純石鹸/三浦工業株式会社の商品名「軟太郎パウダーシャンプー」)2.0gを溶解し、40℃に温度調節したもの。
<シャンプー液B1>
20ミリリットルの水道水にシャンプー液A1で用いたものと同じ毛髪洗浄用石鹸2.0gを溶解し、40℃に温度調節したもの。
【0029】
<シャンプー液A2>
毛髪洗浄用石鹸(玉の肌石鹸株式会社の商品名「無添加せっけんシャンプー」/カリ石鹸素地を蒸留水に溶解したもの)5.0ミリリットルを5.0ミリリットルの機能水で希釈し、40℃に温度調節したもの。
<シャンプー液B2>
シャンプー液A2で用いたものと同じ毛髪洗浄用石鹸5.0ミリリットルを5.0ミリリットルの水道水で希釈し、40℃に温度調節したもの。
<シャンプー液C>
ラウレス硫酸ナトリウム27%液40.0%、コカミドプロピルベタイン10.0%、コカミドMEA2.5%、メチルパラペン0.2%、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.2%および適量のクエン酸を全量が100%となる量の精製水に加えて混合し、クエン酸でpHが6.5に調整されたものを調製した。
【0030】
<リンス液A>
500ミリリットルの機能水に毛髪用調整剤(三浦工業株式会社の商品名「軟太郎パウダーリンス」/クエン酸100%)1.0gを溶解し、40℃に温度調節したもの。
<リンス液B>
500ミリリットルの水道水に毛髪用調整剤(三浦工業株式会社の商品名「軟太郎パウダーリンス」/クエン酸100%)1.0gを溶解し、40℃に温度調節したもの。
<リンス液C>
セテアリルアルコール4.0%、塩化セチルトリメチルアンモニウム0.7%および適量のクエン酸を全量が100%となる量の精製水に加えて混合し、クエン酸でpHが4.1に調整されたものを調製した。
【0031】
実施例1
毛束をシャンプー液A1と機能水とを用いて洗浄した。ここでは、毛束の全体を機能水で濡らした後、3.0ミリリットルのシャンプー液A1を泡立てたもので毛束を30回擦って洗った。そして、これを1分間静置した後、機能水で20秒間すすいで自然乾燥させた。
【0032】
実施例2
実施例1で洗浄した自然乾燥前の毛束をリンス液Aを用いて調整した。ここでは、ビーカー内に入れたリンス液A50ミリリットルに毛束を1分間浸漬した後、毛束を機能水で20秒間すすぎ、自然乾燥させた。
【0033】
比較例1
シャンプー液B1と水道水とを用い、実施例1と同様にして毛束を洗浄した。
【0034】
比較例2
リンス液Bを用い、実施例2と同様にして比較例1で洗浄した自然乾燥前の毛束を調整した。
【0035】
実施例3
シャンプー液A2を用い、実施例1と同様にして毛束を洗浄した。
【0036】
実施例4
リンス液Aを用い、実施例2と同様にして実施例3で洗浄した自然乾燥前の毛束を調整した。
【0037】
比較例3
シャンプー液B2を用い、実施例1と同様にして毛束を洗浄した。
【0038】
比較例4
リンス液Bを用い、実施例2と同様にして比較例3で洗浄した自然乾燥前の毛束を調整した。
【0039】
評価1
実施例1,2および比較例1,2で洗浄した毛束の感触を官能試験により評価した。ここでは、洗浄方法を知らされていない8名の女性の試験者が各毛束を触り、下記の七つの評価項目についてそのときの感覚を官能的に採点した。各評価項目の採点は、比較例2で洗浄した毛束の感触を基準(0点)とし、その毛束より良いと感じたものを+3点までの範囲で加点し、また、その毛束より悪いと感じたものと−3点までの範囲で減点した。なお、毛束は温度や湿度の影響により感触が異なる可能性があるため、試験は、温度25℃、湿度50%に調節された環境で実施した。結果を表1に示す。表1の結果は、8名の試験者の平均値である。
【0040】
◎なめらかさ
基準よりもなめらか感が良好な場合は加点し、ざらざら感がある場合は減点した。
◎さらさら感
基準よりもさらさら感が良好な場合は加点し、べたつき感がある場合は減点した。
◎しっとり感
基準よりもしっとりしている場合は加点し、パサつき感がある場合は減点した。
◎手櫛通り
基準よりも通りがよい場合は加点し、悪い場合は減点した。
◎しなやかさ
基準よりも柔らかい場合は加点し、硬い場合は減点した。
◎艶
基準よりも視覚的によい場合は加点し、悪い場合は減点した。
◎総合評価
基準よりも良好と感じる場合は加点し、悪いと感じる場合は減点した。
【0041】
【表1】

【0042】
評価2
実施例1および比較例1において洗浄された毛束について、なめらかさを表面摩擦係数の測定により評価した。ここでは、未処理の毛束(洗浄していない毛束)、実施例1で洗浄した毛束、比較例1で洗浄した毛束、実施例1の洗浄を3回繰り返した毛束、および、比較例1の洗浄を3回繰り返した毛束について、カトーテック株式会社製の摩擦感テスターを用いて表面摩擦係数を測定した。表面摩擦係数が小さいほど毛束のなめらかさは良好である。結果を表2に示す。
【0043】
【表2】

【0044】
表2によると、実施例1の洗浄では洗浄回数が増加しても表面摩擦係数が変動しない(すなわち、なめらかさが損なわれない)のに対し、比較例1の洗浄では洗浄回数の増加により表面摩擦係数が高まり、毛束のなめらかさが損なわれることがわかる。
【0045】
評価3
実施例1,2および比較例1,2において洗浄された各毛束から1本の毛髪を採り、それに金を蒸着させた場合の表面状態を電子顕微鏡写真(拡大率5,000倍)により対比した。実施例1および実施例2の写真をそれぞれ図1および図2に示し、比較例1および比較例2の写真をそれぞれ図3および図4に示す。
【0046】
図1および図3によると、実施例1で洗浄された毛髪は、比較例1の毛髪と同じくキューティクルが広がっているが、比較例1の毛髪において見られる金属石鹸の付着が認められない。また、図2および図4によると、実施例2および比較例2で洗浄された毛髪はいずれもキューティクルが閉じているが、実施例2の毛髪は、比較例2の毛髪において見られる金属石鹸の付着が認められない。金属石鹸の付着は、毛髪のなめらかさを阻害することになるため、実施例1,2の毛髪は比較例1,2の毛髪に比べてなめらかさが良好なものと考えられる。
【0047】
評価4
未処理の毛束(洗浄していない毛束)並びに実施例1および比較例1において洗浄後の毛束に付着している、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸およびオレイン酸の四種類の脂肪酸の量を測定した。これらの脂肪酸は、毛髪に最初から含まれるものであり、また、シャンプー液A1で用いた毛髪洗浄用石鹸にも含まれるものである。ここでは、重量を測定した約1gの毛束を分液ロートに入れ、これにジエチルエーテル20ミリリットルと5重量%クエン酸水20ミリリットルとを加えて10分間浸漬した後、クエン酸水層とジエチルエーテル層とを分離した。ジエチルエーテル層を濃縮した濃縮液に内標準物質として純度98%以上のヘプタデカン酸を加え、また、ジエチルエーテル層に含まれる脂肪酸をメチルエステル化した。さらに、ジエチルエーテル層に三フッ化ホウ素−メタノール溶液1ミリリットルを加えて2分間還流した後、ヘキサン5ミリリットルをさらに加えて1分間還流した。これに飽和食塩水を加えて分液し、ジエチルエーテル層に硫酸ナトリウムを加えて乾燥処理した。そして、乾燥処理後のジエチルエーテル層をろ過して得られた分析用試料をガスクロマトグラフィーにより分析し、上記四種類の脂肪酸の各量を定量した。結果を表3に示す。
【0048】
【表3】

【0049】
表3によると、比較例1において洗浄後の毛束は脂肪酸量が大きく増加しているのに対し、実施例1において洗浄後の毛束は殆ど脂肪酸量が増加していないことが分かる。これによると、比較例1の洗浄では毛髪洗浄用石鹸を十分に洗い流すことができなかったのに対し、実施例1の洗浄では毛髪洗浄用石鹸を十分に洗い流せていることになる。
【0050】
評価5
未処理の毛束(洗浄していない毛束)並びに実施例1,2および比較例1,2において洗浄後の毛束に含まれるカルシウム量を測定した。ここでは、重量を測定した約1gの毛束を分液ロートに入れ、これにジエチルエーテル20ミリリットルと5重量%クエン酸水20ミリリットルとを加えて10分間浸漬した後、クエン酸水層とジエチルエーテル層とを分離した。そして、クエン酸水層に王水1ミリリットルを加えて25ミリリットルに調節した後、このクエン酸水層をフイルターでろ過した。ICP発光分光分析法によりこのろ液に含まれるカルシウム量を測定した。なお、実施例2および比較例2については、洗浄と調整とを1回だけ実施した場合と、5回繰り返した場合とについて、カルシウム量の測定をした。結果を表4に示す。
【0051】
【表4】

【0052】
毛髪中のカルシウムは、J.Soc.Cosmet.Japan.Vol.22,No2 1988において報告されているように、増加するに従って毛髪の剛性を高めることになる。したがって、表4によると、実施例1,2の方法による洗髪は、比較例1,2の方法による洗髪に比べて洗浄後の毛髪をしなやかにすることができる。
【0053】
評価6
未処理の毛束(洗浄していない毛束)並びに実施例3,4および比較例3,4において洗浄された各毛束の光沢(艶)を測定した。ここでは、三次元変角光度計(株式会社村上色彩技術研究所製の型番「GP−200」)を用い、毛束に白色光を当てて反射した光の強度を測定してG値を計算した。G値は数値が大きいほど毛束の艶が良好なことを示している。結果を表5に示す。
【0054】
【表5】

【0055】
実施例5
毛束をシャンプー液C、リンス液Cおよび機能水を用いて洗浄した。ここでは、毛束の全体を機能水で濡らした後、255.6ミリグラムのシャンプー液Cを泡立てたもので毛束を30回擦って洗った。そして、これを1分間静置した後、機能水で20秒間すすいだ。次に、216.2ミリグラムのリンス液Cを毛束に付け、これを30回擦って毛束に馴染ませた。そして、1分間静置した後、毛束を機能水で20秒間すすぎ、自然乾燥させた。
【0056】
比較例5
機能水に替えて水道水を用い、実施例5と同様にして毛束を洗浄した。
【0057】
評価7
実施例5および比較例5で洗浄した毛束の感触を評価1と同様の方法の官能試験により比較例5を基準として評価した。結果を表6に示す。表6の結果は、8名の試験者の平均値である。
【0058】
【表6】

【0059】
評価8
実施例5および比較例5の洗髪方法を5回繰り返した後の毛束について、評価2と同様の方法で表面摩擦係数を測定し、未処理の毛束との比較でなめらかさを評価した。結果を表7に示す。表7によると、実施例5は、比較例5に比べて洗髪後の毛束のなめらかさが損なわれにくいことがわかる。
【0060】
【表7】

【0061】
評価9
実施例5および比較例5において洗浄された各毛束から1本の毛髪を採り、それに金を蒸着させた場合の表面状態を電子顕微鏡写真(拡大率5,000倍)により対比した。実施例5の写真を図5に示し、比較例5の写真を図6に示す。図5および図6によると、実施例5で洗浄された毛髪は、比較例5の毛髪と同じくキューティクルが閉じているが、比較例5の毛髪において見られる金属石鹸の付着が認められない。したがって、実施例5の毛髪は比較例5の毛髪に比べてなめらかさが良好なものと考えられる。
【0062】
評価10
未処理の毛束(洗浄していない毛束)並びに実施例5および比較例5において洗浄後の毛束に含まれるカルシウム量を測定した。ここでは、重量を測定した約1gの毛束を分液ロートに入れ、これにジエチルエーテル20ミリリットルと5重量%クエン酸水20ミリリットルとを加えて10分間撹拌した後、クエン酸水層とジエチルエーテル層とを分離した。そして、クエン酸水層に王水0.5ミリリットルを加えてメスフラスコで50ミリリットルに調節した後、このクエン酸水層をフイルターでろ過した。ICP発光分光分析法によりこのろ液に含まれるカルシウム量を測定した。結果を表8に示す。
【0063】
【表8】

【0064】
表8によると、実施例5で洗髪後の毛束は比較例5による場合よりもカルシウム量が減少している。したがって、実施例5の方法による洗髪は、比較例5の方法による洗髪に比べて洗浄後の毛髪をしなやかにすることができる。
【0065】
評価11
未処理の毛束(洗浄していない毛束)並びに実施例5および比較例5による洗浄を5回繰り返した毛束の光沢(艶)を評価6と同様の方法で評価した。結果を表9に示す。
【0066】
【表9】

【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】実施例1において洗浄された毛髪に金を蒸着させた場合の表面状態の電子顕微鏡写真。
【図2】実施例2において洗浄された毛髪に金を蒸着させた場合の表面状態の電子顕微鏡写真。
【図3】比較例1において洗浄された毛髪に金を蒸着させた場合の表面状態の電子顕微鏡写真。
【図4】比較例2において洗浄された毛髪に金を蒸着させた場合の表面状態の電子顕微鏡写真。
【図5】実施例5において洗浄された毛髪に金を蒸着させた場合の表面状態の電子顕微鏡写真。
【図6】比較例5において洗浄された毛髪に金を蒸着させた場合の表面状態の電子顕微鏡写真。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗剤を用いて毛髪を洗浄する工程と、
多価陽イオンが除去されかつナトリウムイオンが付与された機能水からなるすすぎ水を用いて前記毛髪から前記洗剤を洗い流す工程と、
を含む洗髪方法。
【請求項2】
前記洗剤が実質的に石鹸からなるものである、請求項1に記載の洗髪方法。
【請求項3】
前記洗剤が実質的に合成界面活性剤からなるものである、請求項1に記載の洗髪方法。
【請求項4】
前記洗剤が洗い流された前記毛髪に対して毛髪用調整剤を適用する工程と、
前記すすぎ水を用いて前記毛髪から前記毛髪用調整剤を洗い流す工程と、
をさらに含む請求項1に記載の洗髪方法。
【請求項5】
前記洗剤が実質的に石鹸からなるものであり、かつ、前記毛髪用調整剤が実質的にクエン酸からなるものである、請求項4に記載の洗髪方法。
【請求項6】
前記洗剤が実質的に合成界面活性剤からなるものであり、かつ、前記毛髪用調整剤が化学品組成物からなるものである、請求項4に記載の洗髪方法。
【請求項7】
多価陽イオンが除去されかつナトリウムイオンが付与された機能水からなる洗髪用すすぎ水。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−239583(P2008−239583A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−85885(P2007−85885)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】