説明

津波避難支援システム、津波避難支援方法、津波避難支援装置およびその制御方法と制御プログラム

【課題】時間経過につれて各地点の安全性が変化する中で、ユーザごとに現在位置における津波からの避難支援として、適切な避難地および避難ルートを報知すること。
【解決手段】通信端末を有するユーザの津波からの避難を支援する津波避難支援装置であって、現在位置情報と、歩行速度または走行速度と、地図情報と、到達予測時刻とに基づき、避難すべきユーザの避難時間を考慮して安全度に関連する複数指標のスコアを設定し、複数指標のスコアから地図上の各地点の安全の度合いを示す安全度予測値を算出し、地図上の各地点の安全度予測値に基づいて、避難候補地と、避難すべきユーザに対する現在位置情報の示す現在位置から避難候補地までの避難候補ルートとを生成し、生成した避難候補地と避難候補ルートとを、ネットワークを介してユーザが有する通信端末に送信することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震発生時に発生する津波からのユーザの避難を支援するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野において、特許文献1に示されているように、精細なデジタル標高データを用いて洪水ハザードマップを生成する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−340743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、あくまでも測定可能な雨量を基に洪水が起こった場合の浸水状況をシミュレートするものであって、測定誤差が大きく複雑に変化する津波に対応することができなかった。
【0005】
2011年3月11日の東日本大震災の被害状況を目の当たりにすると、事前の津波ハザードマップの予測を遥かに上回る破壊力や浸水地域の広大さ、世界一の大防潮堤などの破壊でその無力さを痛感せざるを得ない。今後はとにかく津波警報が出た段階で、できるだけ早く安全な避難地に全力で避難することが、命が助かるための最もよい判断であるという考え方が、専門家を含めた主要意見となってきている。
【0006】
しかし、今までは、ある地域にいるすべての人に、例えば学校や公民館など一律に避難地を設定していた。また、そこまでの地図上の最短ルートを避難ルートとして提示していた。このような単純なやり方では、津波のエネルギーや地形により予想外の規模になった場合や、時々刻々と変化する避難地や避難ルートの安全性に対して対応できなかった。すなわち、今回、避難地や避難ルートを固定することは非常に危険であることが明らかになった。
【0007】
本発明の目的は、上述の課題を解決する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る装置は、
通信端末を有するユーザの津波からの避難を支援する津波避難支援装置であって、
避難すべきユーザの現在位置情報を取得する現在位置情報取得手段と、
前記ユーザの現在位置情報の変化から、歩行速度または走行速度を算出する移動速度算出手段と、
前記避難すべきユーザを含む地域の地図情報を取得する地図情報取得手段と、
前記地図情報に含まれる各地点に津波が到達する到達予測時刻を取得する到達予測時刻取得手段と、
前記現在位置情報と、前記歩行速度または走行速度と、前記地図情報と、前記到達予測時刻とに基づき、前記避難すべきユーザの避難時間を考慮して安全度に関連する複数指標のスコアを設定し、前記複数指標のスコアから地図上の各地点の安全の度合いを示す安全度予測値を算出する安全度予測値算出手段と、
前記地図上の各地点の安全度予測値に基づいて、避難候補地と、前記避難すべきユーザに対する前記現在位置情報の示す現在位置から前記避難候補地までの避難候補ルートとを生成する避難候補情報生成手段と、
生成した前記避難候補地と前記避難候補ルートとを、ネットワークを介してユーザが有する前記通信端末に送信する支援情報送信手段と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る方法は、
通信端末を有するユーザの津波からの避難を支援する津波避難支援装置の制御方法であって、
避難すべきユーザの現在位置情報を取得する現在位置情報取得ステップと、
前記ユーザの現在位置情報の変化から、歩行速度または走行速度を算出する移動速度算出ステップと、
前記避難すべきユーザを含む地域の地図情報を取得する地図情報取得ステップと、
前記地図情報に含まれる各地点に津波が到達する到達予測時刻を取得する到達予測時刻取得ステップと、
前記現在位置情報と、前記歩行速度または走行速度と、前記地図情報と、前記到達予測時刻とに基づき、前記避難すべきユーザの避難時間を考慮して安全度に関連する複数指標のスコアを設定し、前記複数指標のスコアから地図上の各地点の安全の度合いを示す安全度予測値を算出する安全度予測値算出ステップと、
前記地図上の各地点の安全度予測値に基づいて、避難候補地と、前記避難すべきユーザに対する前記現在位置情報の示す現在位置から前記避難候補地までの避難候補ルートとを生成する避難候補情報生成ステップと、
生成した前記避難候補地と前記避難候補ルートとを、ネットワークを介してユーザが有する前記通信端末に送信する支援情報送信ステップと、
を備えることを特徴とする。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係るプログラムは、
通信端末を有するユーザの津波からの避難を支援する津波避難支援装置の制御方法であって、
避難すべきユーザの現在位置情報を取得する現在位置情報取得ステップと、
前記ユーザの現在位置情報の変化から、歩行速度または走行速度を算出する移動速度算出ステップと、
前記避難すべきユーザを含む地域の地図情報を取得する地図情報取得ステップと、
前記地図情報に含まれる各地点に津波が到達する到達予測時刻を取得する到達予測時刻取得ステップと、
前記現在位置情報と、前記歩行速度または走行速度と、前記地図情報と、前記到達予測時刻とに基づき、前記避難すべきユーザの避難時間を考慮して安全度に関連する複数指標のスコアを設定し、前記複数指標のスコアから地図上の各地点の安全の度合いを示す安全度予測値を算出する安全度予測値算出ステップと、
前記地図上の各地点の安全度予測値に基づいて、避難候補地と、前記避難すべきユーザに対する前記現在位置情報の示す現在位置から前記避難候補地までの避難候補ルートとを生成する避難候補情報生成ステップと、
生成した前記避難候補地と前記避難候補ルートとを、ネットワークを介してユーザが有する前記通信端末に送信する支援情報送信ステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係るシステムは、
ユーザの津波からの避難を支援する津波避難支援システムであって、
避難すべきユーザの現在位置情報を取得する現在位置情報取得手段と、
前記ユーザの現在位置情報の変化から、歩行速度または走行速度を算出する移動速度算出手段と、
前記避難すべきユーザを含む地域の地図情報を取得する地図情報取得手段と、
前記地図情報に含まれる各地点に津波が到達する到達予測時刻を取得する到達予測時刻取得手段と、
前記現在位置情報と、前記歩行速度または走行速度と、前記地図情報と、前記到達予測時刻とに基づき、前記避難すべきユーザの避難時間を考慮して安全度に関連する複数指標のスコアを設定し、前記複数指標のスコアから地図上の各地点の安全の度合いを示す安全度予測値を算出する安全度予測値算出手段と、
前記地図上の各地点の安全度予測値に基づいて、避難候補地と、前記避難すべきユーザに対する前記現在位置情報の示す現在位置から前記避難候補地までの避難候補ルートとを生成する避難候補情報生成手段と、
生成した前記避難候補地と前記避難候補ルートとを報知する支援情報報知手段と、
を備えることを特徴とする。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係る方法は、
ユーザの津波からの避難を支援する津波避難支援方法であって、
避難すべきユーザの現在位置情報を取得する現在位置情報取得ステップと、
前記ユーザの現在位置情報の変化から、歩行速度または走行速度を算出する移動速度算出ステップと、
前記避難すべきユーザを含む地域の地図情報を取得する地図情報取得ステップと、
前記地図情報に含まれる各地点に津波が到達する到達予測時刻を取得する到達予測時刻取得ステップと、
前記現在位置情報と、前記歩行速度または走行速度と、前記地図情報と、前記到達予測時刻とに基づき、前記避難すべきユーザの避難時間を考慮して安全度に関連する複数指標のスコアを設定し、前記複数指標のスコアから地図上の各地点の安全の度合いを示す安全度予測値を算出する安全度予測値算出ステップと、
前記地図上の各地点の安全度予測値に基づいて、避難候補地と、前記避難すべきユーザに対する前記現在位置情報の示す現在位置から前記避難候補地までの避難候補ルートとを生成する避難候補情報生成ステップと、
生成した前記避難候補地と前記避難候補ルートとを報知する支援情報報知ステップと、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、時間経過につれて各地点の安全性が変化する中で、ユーザごとに現在位置における津波からの避難支援として、適切な避難地および避難ルートを報知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係る津波避難支援システムの構成を示すブロック図である。
【図2A】本発明の第1実施形態に係る津波避難支援の概念を示す図である。
【図2B】本発明の第1実施形態に係る津波避難支援の概念を示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る津波避難支援システムの動作手順を示すシーケンス図である。
【図4A】本発明の第1実施形態に係る通信端末である携帯端末への津波支援情報報知例を示す図である。
【図4B】本発明の第1実施形態に係る通信端末である携帯端末への津波支援情報報知例を示す図である。
【図4C】本発明の第1実施形態に係る通信端末である携帯端末への津波支援情報報知例を示す図である。
【図4D】本発明の第1実施形態に係る通信端末である携帯端末への津波支援情報報知例を示す図である。
【図5A】本発明の第1実施形態に係る通信端末であるカーナビゲーション装置への津波支援情報報知例を示す図である。
【図5B】本発明の第1実施形態に係る通信端末であるカーナビゲーション装置への津波支援情報報知例を示す図である。
【図5C】本発明の第1実施形態に係る通信端末であるカーナビゲーション装置への津波支援情報報知例を示す図である。
【図5D】本発明の第1実施形態に係る通信端末であるカーナビゲーション装置への津波支援情報報知例を示す図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る属性情報DBの構成を示す図である。
【図7A】本発明の第1実施形態に係る現在位置情報の構成を示す図である。
【図7B】本発明の第1実施形態に係る移動速度情報の構成を示す図である。
【図8】本発明の第1実施形態に係る地図情報DBの構成を示す図である。
【図9】本発明の第1実施形態に係る津波到達予測時刻情報の構成を示す図である。
【図10A】本発明の第1実施形態に係る安全度予測値のための複数指数の構成を示す図である。
【図10B】本発明の第1実施形態に係るユーザ到達予測時刻の算出を説明する図である。
【図11】本発明の第1実施形態に係る安全度予測値演算アルゴリズムおよび候補選択条件の構成を示す図である。
【図12】本発明の第1実施形態に係る安全度予測値からの避難候補地および避難候補ルートの抽出を説明する図である。
【図13】本発明の第1実施形態に係る避難候補地および避難候補ルートの選択を説明する図である。
【図14】本発明の第1実施形態に係る避難候補ルートの選別を説明する図である。
【図15】本発明の第1実施形態に係る避難候補地および避難候補ルートの選別結果を示す図である。
【図16】本発明の第1実施形態に係る津波避難支援装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図17】本発明の第1実施形態に係る津波避難支援装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図18A】本発明の第1実施形態に係る避難候補地/避難候補ルート選別処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図18B】本発明の第1実施形態に係る避難候補情報生成および送信処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図19】本発明の第1実施形態に係る通信端末のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図20A】本発明の第1実施形態に係るナビゲーション機能を有しない通信端末の処理手順を示すフローチャートである。
【図20B】本発明の第1実施形態に係るナビゲーション機能を有する通信端末の処理手順を示すフローチャートである。
【図21】本発明の第2実施形態に係るに係る登録避難ルートテーブルの構成を示す図である。
【図22】本発明の第2実施形態に係る登録避難ルートテーブルを参照した避難候補地/避難候補ルートの選別処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図23】本発明の第3実施形態に係るルート上の障害物を示す障害物情報テーブルの構成を示す図である。
【図24】本発明の第3実施形態に係る障害物情報テーブル2300を考慮した避難候補ルートの選別処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図25】本発明の第4実施形態に係る津波避難支援システムの構成を示すブロック図である。
【図26】本発明の第5実施形態に係る津波避難支援システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態について例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施の形態に記載されている構成要素は単なる例示であり、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0016】
[第1実施形態]
《津波避難支援システムの構成》
本発明の第1実施形態としての津波避難支援システム100について、図1を用いて説明する。
【0017】
図1に示すように、津波避難支援システム100は、ネットワーク190を介して接続された、津波避難支援装置110と、津波到達予測時刻提供サーバ130と、地図情報提供サーバ140と、各種ユーザの通信端末150〜170とを含む。なお、図1の180は、避難所の一例である。
【0018】
津波避難支援装置110は、各ユーザの現在位置情報や津波の各地点への到達予測時刻などから生成した、各ユーザ用の避難候補情報である避難候補地および当該避難候補地への避難候補ルートを各ユーザに送信する。津波到達予測時刻提供サーバ130は、津波の発生源である地震などの規模や位置情報、あるいは衛星や偵察機、海上のブイなどからの情報、および地形情報に基づいて、時々刻々変化する地図上の各地点への津波到達予測時刻を算出して通知する(図9参照)。なお、津波到達予測時刻提供サーバ130による津波到達予測時刻の算出については、本実施形態での詳説は省略する。実際には、町や村などの比較的狭い地域について、予め地震の規模や地形あるいは気象庁などから得た情報などから津波の数値シミュレーションを行なってDBに蓄積し、それが現時点の本実施形態は、かかる津波到達予測時刻を取得してどのように使用するかを特徴とする。地図情報提供サーバ140は、各地域の詳細な地図情報において、各地点の海抜情報と、各地点がビルか道路か河川かなどの情報とを対応付けて提供する(図8参照)。各種ユーザの通信端末150〜170としては、単独ユーザの通信端末150と、複数ユーザからなるユーザグループの通信端末160と、車両の通信端末170とを含む。なお、ユーザの形態はこれらに限定されない。例えば、自転車や車椅子など他のあらゆる形態を含むものである。
【0019】
本実施形態においては、各ユーザの現在位置や津波の各地点への到達予測時刻に基づいて、避難所180を含む避難候補地および当該避難候補地への避難候補ルートを見付ける。そして、見付けた候補から安全な避難候補地および避難候補ルートを選別して、ユーザの避難を支援すべく誘導する。本実施形態によれば、時間経過につれて各地点の安全性が変化する中で、ユーザごとに現在位置における津波からの避難支援として、適切な避難地および避難ルートを報知することができる。なお、津波避難支援装置110は、広域をカバーする装置であってもよいが、予報区をカバーする、あるいは市町村をカバーする、あるいは更に狭い領域をカバーするものであるのが望ましい。
【0020】
《津波避難支援装置の構成》
本実施形態の津波避難支援装置110の構成を、図1に従って詳細に説明する。
【0021】
通信制御部111は、ネットワーク190を介してユーザの通信端末150〜170や各サーバ130,140と通信する。属性情報取得部112は、属性情報DB113にあらかじめ登録された属性情報、あるいは通信端末150〜170から送信された属性情報を取得する。属性情報DB113には、例えば、ユーザの性別や年齢などから所有する乗り物などに至るユーザの属性情報がユーザIDに対応付けて記憶される(図6参照)。
【0022】
現在位置情報取得部114は、ユーザの通信端末が例えばGPS衛星からの信号に基づいて得たユーザの現在位置情報を取得する。そして、移動速度算出部115は、異なる2時点(好ましくは、現在時刻と1つ前の時刻)の位置情報の差と時刻差とからユーザの移動速度を算出する(図7B参照)。到達予測時刻取得部116は、津波到達予測時刻提供サーバ130から、ユーザが居る地域の各地点の津波到達予測時刻を取得する(図9参照)。地図情報取得部117は、地図情報DB118から、または、地図情報DB118に無い場合は地図情報提供サーバ140から、対象地域の地図情報を取得する。地図情報DB118は、目標位置を中心とした対象地域の各地点の標高などを含む地図情報を格納する(図8参照)。
【0023】
安全度予測値算出部119は、ユーザの現在位置情報と移動速度、地図情報と各地点の津波の到達予測時刻、さらに、ユーザの属性情報とから、地図情報上の各地点の位置座標(緯度,経度)に対応付けて複数指標119aを生成する(図10A参照)。そして、複数指標を演算して、各地点位置座標(緯度,経度)に対応付けて安全度予測値119bを算出する(図12参照)。避難候補情報生成部120は、安全度予測値算出部119が算出した各地点の安全度予測値119bに基づいて、避難候補地および現在位置から避難候補地までの避難候補ルート120aを選別する(図12〜図15参照)。ここで、避難候補地および避難候補ルート120aは、複数の異なる条件により選別されて、2つか3つの推奨避難候補地および推奨避難候補ルートが生成される。
【0024】
避難候補情報生成部120からの避難候補地および避難候補ルート120bを受けて、支援情報送信部121は、支援情報を生成し、対応する通信端末IDを有する通信端末に支援情報を送信する。なお、支援情報は、避難候補地および避難候補ルートを地図上に重畳した表示画面情報と共に、警報や津波情報などを含む通知情報やユーザを誘導する誘導情報の表示画面情報や音声情報を含む。なお、表示画面においては避難候補地や避難候補ルートが識別可能に重畳された表示画面生成がなされる。識別可能とは、色の違いや線の違いなどを含む。
【0025】
なお、本実施形態においては、ユーザの避難支援として、目標と成るビルや看板などの特徴点を報知することについての詳細については言及していない。しかし、かかる処理はユーザの誘導/ナビゲーション処理には当然の処理であり、本実施形態のユーザの誘導/ナビゲーション処理に含まれるものである。
【0026】
《津波避難支援の概念》
次に、図2Aおよび図2Bに従って、本実施形態に係る津波避難支援の概念を説明する。
【0027】
図2Aは、15時12分に発生した地震による津波の到達予測時刻が15時50分である場合の、現在時刻15時22分における避難候補地および避難候補ルートを選別する例である。
【0028】
図2Aの下図は、対象地域の地図情報であり、現在位置情報に相当する現在地が示されている。XYの平面軸として、経度と緯度とが取られている。図2Aの中図は、本実施形態により地図上の各地点について算出された安全度予測値の概念図である。経度と緯度の平面の各地点について3次元のZ軸として安全度予測値が棒グラフ形状で示されている。Z軸の安全度予測値に対しては、避難地を選択するための避難地用閾値(Th1)と、避難ルートを選択するための避難ルート用閾値(Th2<Th1)とが設定されている。
【0029】
まず、避難候補地を選択するには、避難地用閾値(Th1)を超える安全度予測値が所定範囲に広がった場所を避難候補地とする。図2Aにおいては、避難地用閾値(Th1)から安全度予測値が突出している、避難所が第1避難候補地となり、高台が第2避難候補地となる。また、避難候補ルートを選択するには、現在地と避難候補地となった場所を結び、避難ルート用閾値(Th2)を超える地点列を避難候補ルートとする。図2Aにおいては、現在地と避難所を結び第1避難候補ルートと近道ではあるが階段のある第2避難候補ルートが選別され、現在地と高台とを結ぶ第3避難候補ルートが選別されている。図2Aの上図は、選別された避難候補地および避難候補ルートを地図上に重畳した、ユーザに報知する画面例である。
【0030】
図2Bは、図2Aから14分後の15時42分における避難候補地および避難候補ルートを選別する例である。
【0031】
図2Bの下図は、図2Aと同様の地図であるが、現在地が変化している。図2Bの中図は、15時32分において地図上の各地点の安全度予測値を算出した結果である。避難所や高台の安全度予測値には変化がないが、避難候補ルートになるか否かの道路に沿った地点の安全度予測値は、津波到達予測時刻が迫っているため、あるいは津波の規模がより明確になった情報などのため、変化している。例えば、川に掛かる橋については、津波が川をより早く遡るため既に安全度予測値が避難ルート用閾値(Th2)未満になっている。その結果、この川を渡る必要がある、図2Aの避難所に向かう第1避難候補ルートおよび第2避難候補ルートは避難候補ルートから排除される。したがって、避難候補ルートの無い避難所は第1避難候補地から排除される。したがって、図2Bでは、図2Aにおいて第2避難候補地であった高台が第1避難候補地となり、高台までのルートの内、川に遠いルートが第1避難候補ルートとして選別される。図2Bの上図は、選別された避難候補地および避難候補ルートを地図上に重畳した、ユーザに報知する画面例である。
【0032】
このように、本実施形態においては、現在位置と現在時刻、各地点へのユーザ到達予測時刻と津波到達予測時刻、各地点の海岸からの距離と河川からの距離などから求められた複数指標のスコアを演算して、安全度予測値を得る。その結果、15時22分時点の現在地では避難所への避難が推奨されたが、15時32分時点の現在地では高台への避難が推奨されることになった。例えば、15時32分にユーザがもっと橋の近くまで到達していたならば、橋を渡って避難所に行くことを推奨することもあり得る。一方、15時32分になっても図2Aの現在地からほどんど移動できていなければ(図2Bの○地点)、破線で示すように一旦引き返して高台に向かう避難候補ルートが推奨され得る。このように、時々刻々と変化する各地点の安全度予測値に基づいて、適切な避難候補地および避難候補ルートがユーザに報知されることになる。
【0033】
《津波避難支援システムの動作手順》
図3は、本実施形態に係る津波避難支援システム100の動作手順300を示すシーケンス図である。本実施形態では、あらかじめ登録しているユーザへの津波避難支援を例に説明するが、これに限定されない。
【0034】
まず、ズテップS301において、通信端末から津波避難支援装置210にユーザの属性情報を含む会員登録情報が送信される。ステップS303において、津波避難支援装置110は、受信した会員登録情報に基づいて、ユーザIDに対応付けて通信端末IDおよび属性情報を属性情報DB113に記憶する。そして、津波避難支援装置110は、ステップS305において、会員登録したユーザの通信端末に避難支援情報処理アプリケーションをダウンロードする。なお、避難支援情報処理アプリケーションは、通信端末が携帯端末である場合、あるいは携帯端末でも高機能機種か否かによって、また、車に搭載されたカーナビゲーション装置である場合に対応して、異なる機能を含むアプリケーションプログラムである。
【0035】
会員登録が済むと、通信端末は、ステップS307においてGPS衛星からの信号に基づいて現在位置情報を認識して、ステップS309において、その現在位置情報を津波避難支援装置210に通知する。津波避難支援装置110は、ステップS311において、受信した各登録通信端末に対応付けて現在位置情報を更新する。この現在位置情報の通知と更新は、所定時間間隔あるいは地図上における領域移動を検出した場合などに行なわれてよい。この通知と更新とにより、会員登録したユーザが持つ通信端末が現在どこに在るか(ユーザがどこに居るか)を追跡可能である。
【0036】
ステップS313において、地震が発生して津波の恐れがあることが気象庁などから発表されて、津波避難支援装置210に通知されたとする。津波避難支援装置210は、ステップS315において、津波警報・注意報が発令された地域に居るユーザの通信端末を、避難支援情報送信先として選択する。以降は、選択された避難支援情報送信先の現在位置を追跡しながら、避難が完了するまで避難支援情報を継続的に報知することになる。
【0037】
まず、津波避難支援装置210は、ステップS317において、避難支援情報送信先の通信端末に地震情報と津波警報(注意報)を送信する。そして、津波避難支援装置210は、対応する地域の地図情報が無い場合はステップS319において、地図情報提供サーバ140から対応する地図情報を取得する。ステップS321において、地震情報と津波警報(注意報)を受信した通信端末は避難支援情報処理アプリケーションを起動する。ここで、ユーザから避難支援情報要求の指示があれば、通信端末は、ステップS323において、避難支援情報要求を津波避難支援装置210に送信する。なお、ユーザから避難支援情報要求の指示がなくても、津波避難支援装置210からの避難支援情報の送信サービスが開始される。
【0038】
津波避難支援装置110は、ステップS325において、津波警報・注意報が出ている地域に居る各ユーザに対して、それぞれの避難候補地および避難候補ルートからなる避難支援情報を生成する。この避難支援情報の生成には、津波到達予測時刻提供サーバ130から提供される対象地域内の各地点における津波到達予測時刻が使用される。続いて、ステップS327およびS329において、津波避難支援装置110から対応する通信端末に避難支援情報が送信される。避難支援情報には、地図情報と、避難候補地情報と、避難候補ルート情報と、が含まれる。なお、通信端末がナビゲーション装置であれば、地図情報は既に通信端末に保持されているので、避難候補地情報と避難候補ルート情報とのみが送信される。通信端末では、ステップS331において、受信した避難支援情報が報知される。報知は、地図に避難候補地と避難候補ルートとが重畳された画面と共に、音声による情報が報知されるのが望ましい。
【0039】
ステップS333においては、ユーザの現在位置が安全な避難地に到達したことを表わしているかを判断し、到達まで避難支援情報の生成と送信とを繰り返す。ユーザが安全な避難地に到達したことを判断すると、ステップS333において、津波避難支援装置110は避難完了を通信端末に通知する。避難完了を受信した通信端末は、ステップS335において、避難完了をユーザに報知する。
【0040】
《津波支援情報報知例》
(携帯端末への報知)
図4A〜図4Dを参照して、本実施形態に係る通信端末150,160である携帯端末への津波支援情報報知例を示す。
【0041】
図4Aは、大津波警報が発令され、最初の避難候補地と避難候補ルートとが報知された時点(例えば、午後2時46分01秒)の表示画面および音声を示す。表示画面410の上部には、ユーザの現在地(☆印)と、2箇所の避難候補地XおよびYと、避難候補地Xへの避難候補ルート(実線)および避難候補地Yへの避難候補ルート(破線)が地図に重畳して表示されている。また、表示画面410の下部には、津波到達予測時刻までの時間(あと30分)と、それぞれの避難候補地への避難候補ルートを対象ユーザが徒歩で避難した場合の所用時間が表示されている。さらに、第2避難候補地Yへの避難候補ルート上に階段があることが表示されている。
【0042】
通信端末の下部のスピーカからは、“大津波警報がでました。避難してください。”との音声が流れている。
【0043】
図4Bは、避難候補地Xに向かって進んだ時点(例えば、午後2時50分18秒)の表示画面および音声を示す。表示画面420には、上部に現在地から避難地方向を見た映像が表示されている。表示画面420の中部には、ユーザの現在地(☆印)と、2箇所の避難候補地XおよびYと、避難候補地Xへの避難候補ルート(実線)および避難候補地Yへの避難候補ルート(破線:図4Aとは異なるルート)が地図に重畳して表示されている。また、表示画面420の下部には、津波到達予測時刻までの時間(あと20分)と、それぞれの避難候補地への避難候補ルートを対象ユーザが徒歩で避難した場合の所用時間が表示されている。図4Aと同様に、第2避難候補地Yへの避難候補ルート上に階段があることが表示されている。
【0044】
通信端末の下部のスピーカからは、“百メートル直進です。”との音声が流れている。
【0045】
図4Cは、避難候補地Xと避難候補地Yとの分岐地点に進んだ時点(例えば、午後2時55分51秒)の表示画面および音声を示す。表示画面430には、上部に現在地から避難地方向を見た映像が表示されている。表示画面430の中部には、ユーザの現在地(☆印)と、1つの避難候補地Yと、避難候補地Yへの避難候補ルート(実線)が地図に重畳して表示されている。また、表示画面430の下部には、津波到達予測時刻までの時間(あと15分)と、避難候補地Yへの避難候補ルートを対象ユーザが徒歩で避難した場合の所用時間が表示されている。図4Aおよび図4Bと同様に、避難候補地Yへの避難候補ルート上に階段があることが表示されている。
【0046】
通信端末の下部のスピーカからは、今までの第1避難候補地がXからYに変更されたことと、その理由が、“右に曲がります。より安全な避難所に向かいます。”との音声で誘導されている。
【0047】
図4Dは、ユーザが避難候補地Yに到達した時点(例えば、午後3時05分51秒)の表示画面および音声を示す。表示画面430には、上部にこの地域での津波の実際の到達位置が、第1波到達ライン(中太線)と最大波到達ライン(太線)とで地図に重畳して表示されている。図4Dの例では、最初の第1避難候補地Xに行っていれば、最大波到達ラインによって被害を受けたと思われる。また、表示画面430の下部には、避難が完了したことが、“もう安心です。お疲れ様でした。”の表示で伝えられている。
【0048】
通信端末の下部のスピーカからも、“もう安心です。”との音声で報知されている。
【0049】
上記のように、本実施形態によれば、ユーザの避難による到達地点において各地点の安全度予測値がその時点の情報・状況に基づいて再演算されて、適切な避難候補地および避難候補ルートが再選別されるので、より確実で安全性の高い避難誘導が可能である。
【0050】
なお、携帯端末において地図を使ったナビゲーション機能を実行可能であれば、携帯端末のナビゲーションアプリケーションを使ったナビゲーションが可能である。
【0051】
(カーナビゲーション装置への報知)
図5A〜図5Dを参照して、本実施形態に係る通信端末170であるカーナビゲーション装置への津波支援情報報知例を示す。
【0052】
図5Aは、大津波警報が発令され、最初の避難候補地と避難候補ルートとが報知された時点(例えば、午後2時46分01秒)の表示画面および音声を示す。表示画面510の右部には、ユーザの現在地(車)と、2箇所の避難候補地AおよびBと、避難候補地Aへの避難候補ルート(実線)および避難候補地Bへの避難候補ルート(破線)が地図に重畳して表示されている。さらに、最初の三叉路において、直進して海岸沿いに進むのは危険であることが警告されている。また、表示画面510の左部には、津波到達予測時刻までの時間(あと30分)と、それぞれの避難候補地への避難候補ルートを車で避難した場合の所用時間が表示されている。
【0053】
カーナビゲーション装置のスピーカからは、“大津波警報がでました。避難してください。”との音声が流れている。
【0054】
図5Bは、車が三叉路の手前まで進んだ時点(例えば、午後2時46分11秒)の表示画面および音声を示す。表示画面520の右部には、左側の地図上にユーザの現在地(車)と、避難候補地Aへの避難候補ルート(実線)とが重畳して表示されている。また、右側には、ユーザの現在地からの映像上にどちらに誘導しているかを明瞭に示している。表示画面50の左部には、津波到達予測時刻までの時間(あと30分)と、それぞれの避難候補地への避難候補ルートを車で避難した場合の所要時間が表示されている。
【0055】
カーナビゲーション装置のスピーカからは、“20メートル先、左折です。”との音声が流れている。
【0056】
図5Cは、車が第1避難候補地Aと第2避難候補地Bとの分岐地点に近付いた時点(例えば、午後2時55分31秒)の表示画面および音声を示す。表示画面520の右部には、ユーザの現在地(車)と、避難候補地Bへの避難候補ルート(実線)と避難候補地Aへの避難候補ルート(破線)とが重畳して表示されている。すなわち、この地点での安全度予測値の算出から、近くの避難候補地Aではなく、より高地であり避難所としてより安全な避難候補地Bへ行くように誘導が変更されている。例えば、渋滞あるいは障害物などで車がまだ図5Cの現在地まで到達していない場合は、そのまま避難候補地Aに行くように誘導する場合もあり得る。このように、現在時刻と現在位置とに従って、各地点の安全度予測値に基づいて避難候補地や避難候補ルートはより安全な選別をすることになる。
【0057】
カーナビゲーション装置のスピーカからは、“より安全な避難所に誘導します。”との誘導の音声が流れている。
【0058】
図5Dは、車が渋滞に巻き込まれたため進まなくなった時点(例えば、午後3時05分45秒)の表示画面および音声を示す。表示画面520の右部には、左側にユーザの現在地(車)と、渋滞発生の警告とが重畳して表示されている。そして、右側には車を捨てて近くのビルの屋上に避難することを指示している。すなわち、表示画面520の左部に表示されているように、津波到達まであと10分であるので、近くのビルへの避難を誘導する。例えば、本実施形態では、高層ビルまでの距離なども複数指標の1つに含まれており、この警報は近くに高層ビルがある地点で出すように制御され、車を出ても高層ビルが無い、あるいは遠いなどの危険を未然に防止できる。さらに、津波の高さに対して安全なビルの高さなども考慮するように指標を設定すれば、より安全な誘導ができる。
【0059】
カーナビゲーション装置のスピーカからは、“近くのビルの屋上に避難してください。”との誘導の音声が流れている。
【0060】
なお、本実施形態によれば、カーナビゲーション装置へ送信される避難支援情報は、基本的には避難候補地および避難候補ルートがあれば、カーナビゲーション装置に搭載された機能により誘導処理が可能である。
【0061】
《使用するデータ構成》
以下、本実施形態で使用する各種データの構成およびその生成方法を説明する。
【0062】
(属性情報DB)
図6は、本実施形態に係る属性情報DB113の構成を示す図である。なお、属性情報DB113の構成は、図6に限定されない。
【0063】
図6の610は、各ユーザに対応付けられた属性情報である。ユーザID611に対応付けて、通信端末ID612、住所・電話番号・性別・年齢などの特定情報613、体力情報や健康情報などの身体状態情報614、避難方法は徒歩なのか乗り物なのかの情報615などが記憶される。そして、ユーザがグループに属していればグループID616が記憶される。
【0064】
図6の620は、各グループに対応付けられた属性情報である。グループID621に対応付けて、通信端末ID622、住所・電話番号・グループ種別などの特定情報623、人数や構成などの状態情報624、避難方法は徒歩なのか乗り物なのかの情報615などが記憶される。なお、グループ種別は、例えば、老人ホーム、保育園、病院などである。かかるグループ種別により、1人のユーザの場合の歩行速度とは異なる遅い人を考慮した歩行速度が必要となる。あるいは、逆にグループであるため助け合うことにより、1人では遅い人が早くなることもあり得る。このような。グループによる状態変化も考慮されたグループとしての避難能力情報が記憶される。
【0065】
(現在位置情報)
図7Aは、本実施形態に係る現在位置情報700−1の構成を示す図である。なお、現在位置情報700−1の構成は、図7Aに限定されない。
【0066】
図7Aの現在位置情報テーブル710には、ユーザIDまたはグループID711に対応付けて、ユーザやグループが持っている通信端末から通知された現在位置情報712が(緯度,経度)の組みで記憶される。さらに、その現在位置情報712が津波警報や津波注意報が出ている地域に含まれているか、警報なのか注意報なのかの種別を示す津波警報・注意報フラグ713が記憶される。かかる津波警報・注意報フラグ713は、気象庁などから受信した警報や注意報を記憶する警報・注意報記憶テーブル720に基づいて、設定される。
【0067】
警報・注意報記憶テーブル720は、警報・種別721として、現在使用されている、大津波警報、津波警報、津波注意報に対応して、それぞれフラグ“11”、“10”、“01”が割り当てられている。フラグ“00”は何も出ていないことを示すフラグである。そして、それぞれのフラグ722が出ている地域情報723が記憶される。したがって、現在位置情報712がいずれかの地域情報723に含まれる場合は、そのフラグ722が、津波警報・注意報フラグ713に設定されることになる。
【0068】
(移動速度情報)
図7Bは、本実施形態に係る移動速度情報700−2の構成を示す図である。なお、移動速度情報700−2の構成は、図7Bに限定されない。移動速度は、歩行の場合は歩行速度であり、車などの場合は走行速度である。
【0069】
図7Bにおいては、津波警報・注意報フラグ731によってソートされたユーザID/グループID732に対応付けて、現在位置情報733と前回位置情報734とが(緯度,経度)の組みで記憶されている。この間の距離と経過時間とから、現在のユーザまたはグループの移動速度735が算出可能である。ここで、ユーザID/グループID732を津波警報・注意報フラグ731によってソートしているのは、大津波警報(11)の出た地域にいるユーザを優先して支援するためである。
【0070】
なお、時々刻々変化する移動速度735は、このように実時間で算出するのが望ましい。しかし、処理を簡略化するためには、各ユーザあるいは各グループの移動速度を属性情報としてあらかじめ登録しておき、それを使用して安全度予測値は演算しながら、現在位置情報だけはその都度更新するように制御してもよい。
【0071】
(地図情報)
図8は、本実施形態に係る地図情報DB118の構成を示す図である。なお、地図情報DB118の構成は、図8に限定されない。
【0072】
図8の810は、地図情報の領域を特定する識別情報である。識別情報810は、地図情報ID811に対応付けて、都道府県812、市・郡813、町・村814、(緯度,経度)の組みで示す中心位置815が記憶される。なお、中心位置815に限定されず、例えば、領域の左上やあるいは領域中の役所などの目標となる特異点であってもよい。
【0073】
識別情報810の各々に対応して、その領域中の各地点におけるデータが地図データ820が記憶されている。図8には、2つの例820−1および820−2が示されている。地図データ820には、各地点の緯度821と経度822とに対応付けて、その地点の標高823、道路上か否か824、畑や空き地上か825、障害物であるビル・家屋上、川・水路上、その他障害物上か826、などが記憶される。なお、図8では、地図上の各地点は、緯度/経度共に0.1秒毎、緯度では約3.1m/経度では2.5m毎、に記憶される例を示したが、必要とする精度に対応するものでこれに限定されない。津波避難支援においては、上記値で十分であると判断される。例えば、衛星画像などから得られる数値標高モデル(DEM:Digital Elevation Model)や数値表面モデル(DSM:Digital Surface Model)、また、建物などを除いた数値地形モデル(DTM:Digital Terrain Model)が、10m単位(例えば、1秒では約30m)で取得可能である。そして、日本では、航空レーザ測量をさらに組み合わせて、5mメッシュの標高データが提供されている(http://www1.gsi.go.jp/geowww/Laser_indexttml:国土地理院ホームページ参照)。更に、山岳地図などにおいて、0.1秒単位も提供されている。
【0074】
(津波到達予測時刻情報)
図9は、本実施形態に係る津波到達予測時刻情報900の構成を示す図である。なお、津波到達予測時刻提供サーバ130から取得される津波到達予測時刻情報900の構成は、図9に限定されない。
【0075】
図9の910は、町・村単位の津波到達予測時刻情報である。都道府県911、市・郡912、町・村913に対応付けて、海岸の所定位置への津波到達予測時刻914、津波予測高さ915、津波の予測エネルギー916、地震の予測エネルギー917などが記憶されている。
【0076】
また、図9の920は、各地点における津波到達予測時刻情報である。図8に示したと同様の緯度921と経度922との組みで表わされる領域内の各地点に対応付けて、津波到達予測時刻923と津波予測高さ924とが記憶されている。
【0077】
なお、取得される津波到達予測時刻が予報区単位である場合や、本実施形態の地点より広い範囲である場合には、津波観測点などの既知の地点から各地点への距離などに基づいて、現時点における各地点への津波到達予測時刻914が算出されてもよい。かかる算出には、図10Aの指標に示したような、海岸線からの距離および方向、河川からの距離および方向、道路の向きおよび幅なども考慮されてよい。例えば、日本では、全国の沿岸を66に分割した予報区単位の津波到達予測時刻と高さ予測とが提供されている(http://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/know/tsunami/ryouteki.html:気象庁ホームページ参照、その情報取得フォーマットについては、http://xml.kishou.go.jp/revise.html参照)。かかる津波到達予測時刻と高さ予測は、地震の規模や特徴あるいは海の深さや地形などの様々な条件に対応した数値シミュレーションをDBとして蓄積することにより実現している。また、町や村などの比較的狭い地域の津波到達予測時刻や高さ予測が、さらに細かい海岸線からの地形や植生などの様々な条件に対応した数値シミュレーションによりDBとして準備されて、現時点の津波情報に対応して各地点の津波到達予測時刻と高さ予測として提供される。
【0078】
(安全度予測値のための複数指標)
図10Aは、本実施形態に係る安全度予測値のための複数指数119aの構成を示す図である。なお、安全度予測値算出部119が設定する安全度予測値のための複数指数119aの構成は、図10Aに限定されない。かかる各指標について、各地点の安全度予測値を算出するための元となるスコアが記憶される。なお、スコアは、安全度予測値の演算への寄与の程度に対応してあらかじめ重み付けされてもよいし、あるいは、それぞれ独立に設定されて安全度予測値の演算時に重み付けされてもよい。
【0079】
図10Aの複数指数119aは、図8および図9に示したと同様の、緯度1001と経度1002との組みで表わされる領域内の各地点に対応付けて、本実施形態においては以下の情報が記憶される。図9にように取得した、津波到達予測時刻1003、津波予測高さ1004、津波の予測エネルギー1005、地震の予測エネルギー1006のスコアが記憶される。また、ユーザの現在位置情報からこの地点までの距離とユーザの移動速度とから、この地点へのユーザ到達予測時刻1007、そして、津波到達予測時刻1003とユーザ到達予測時刻との到達予測時刻の時間差1008のスコアが記憶される。また、この地点の地図上の情報から想定される津波に対する安全度の条件として、例えば、標高1009、海岸線からの距離および方向1010、河川からの距離および方向1011、道路上の地点では道路の向きおよび幅1012などのスコアが記憶される。さらに、緊急時の安全度を考慮する、例えば、一時避難地となり得る高層建築物までの距離などのスコアが記憶される。
【0080】
なお、より正確で安全性の高い避難支援に必要な他の取得可能な情報が、それぞれに安全度への寄与の度合いなどを考慮して追加される。また、図10Aでは、各地点に共通の指標を示したが、それぞれの地点により不要の指標や新たに追加する指標など、動的な指標を考えてもよい。
【0081】
(ユーザ到達予測時刻)
図10Bは、本実施形態に係るユーザ到達予測時刻1007の算出を説明する図である。
【0082】
図10Aに示したと同様の、緯度1021と経度1022とに対応付けて、緯度と経度とで表わしたユーザ現在位置情報1023、この地点のユーザからの距離1024、ユーザ移動速度1025(図7Bの移動速度735に相当)が記憶される。そして、ユーザからこの地点までの距離1024をユーザ移動速度1025で割った値である避難時間を、現在時刻に加えることによって、この地点へのユーザ到達予測時刻1007が算出される。
【0083】
なお、グループの場合も同様にグループ到達予測時刻が算出されるが、この場合には、グループの種別や構成に対応してグループの中の誰を対象に算出するかをあらかじめ設定しておく。例えば、最も遅い人に基づいて算出するなどが選択される。
【0084】
(安全度予測値演算アルゴリズム)
図11は、本実施形態に係る安全度予測値演算アルゴリズムおよび候補選択条件1100の構成を示す図である。なお、安全度予測値演算アルゴリズムおよび候補選択条件1100の構成は一例であり、図11に限定されない。
【0085】
安全度予測値演算アルゴリズムおよび候補選択条件1100には、異なるアルゴリズムや選択条件を決める情報として、例えば、津波の予測エネルギー1101、地震の震源地1102(あるいは、震源地から対象地域や地点までの距離でもよい)、地震の予測エネルギー1103、を使用したが、これに限定されない。
【0086】
これらの情報に対応付けて、例えば複数指標の加減乗除を含む安全度予測値演算アルゴリズム1104、演算時の各指標の重み付け1105が記憶される。なお、かかる重み付けは、極端な例で示すと、津波到達予測時刻よりもユーザ到達予測時刻がわずかでも遅いあるいは差がほとんど無い場合は、他の指標による安全度予測値への寄与がいくら大きくても、避難所や避難ルートには向かない。このように、1つの指標によって他の指標を考慮しない場合なども、重み付けとして設定される。
【0087】
また、演算結果の各地点の安全度予測値から、避難地を選択するための避難地選択用第1閾値Th1(1106)、避難ルートを選択するための避難地選択用第1閾値Th1より小さい避難ルート選択用第2閾値Th2(1107)が記憶される。さらに、選択された避難候補ルートから推奨する推奨避難候補ルートを選別するために使用される(図14参照)、避難地選択用第1閾値Th1と避難ルート選択用第2閾値Th2との中間の避難ルート選別用第3閾値(1108)が記憶される。なお、より確実で安全な避難支援情報生成にために、さらに詳細な閾値を設けてもよい。
【0088】
(避難候補地および避難候補ルートの抽出)
図12は、本実施形態に係る安全度予測値119bからの避難候補地および避難候補ルートの抽出を説明する図である。
【0089】
図12においては、各地点の緯度1201と経度1202とに対応付けて、図11の安全度予測値演算アルゴリズムで算出された安全度予測値1203が記憶されている。
【0090】
この安全度予測値1203が、図11の避難地選択用第1閾値Th1より大きい地点を避難候補地に選択する。図12においては、2つの避難候補地HP01とHP02とが選択されている。なお、1地点の範囲(図8の例では3.1m×2.5m)のみでは避難地とならないので、所定領域が避難地選択用第1閾値Th1を超える場合に避難候補地とするのが望ましい。なお、この選択された避難候補地が最終的な避難候補地になる訳ではない。例えば、避難候補地への避難候補ルートが選択あるいは選別できなければ、避難候補地には選別されない。本実施形態においては、安全度予測値も避難候補ルートの選択あるいは選別も時々刻々変化するので、避難候補地もそれに従って逐次変化する。しかし、避難候補地をユーザに移動の度に変更するのは危険であるので、今までの避難候補地の安全度予測値が低下する、あるいは今までの避難候補地よりかなり高い安全度予測値が出た場合に変更するなどの制御が必要である。
【0091】
また、安全度予測値1203が、図11の避難ルート選択用第2閾値Th2より大きい地点の現在位置から避難候補地までの列を避難候補ルートに選択する。図12においては、現在位置から避難候補地HP01に続く避難候補ルートHL011が選択されている。なお、この選択された避難候補ルートがすべて最終的な避難候補ルートに選別される訳ではない。図11の避難ルート選別用第3閾値や時々刻々変化し新たに得られた他の障害条件などに基づいて、より確実で安全な避難候補ルートが選別されてユーザに報知されることになる。かかる避難ルートの変更も、上記避難候補地同様に、ユーザに混乱を起こさないように制御されるのが望ましい。
【0092】
(避難候補地および避難候補ルートの選択)
図13は、本実施形態に係る避難候補地および避難候補ルートの選択1300を説明する図である。図13には、図12で安全度予測値から選択された避難候補地および避難候補ルートから、あらかじめ登録された避難所と一致する避難候補地、あるいは、地図情報から得られる道路情報に一致する避難候補ルートを、優先的に避難候補地および避難候補ルートとする例を示す。
【0093】
図12に従って選択された避難候補地ID1301と登録された避難所との一致1302が判定される。また、図12に従って選択された避難候補ルートID1303と道路情報との一致1304が判定される。その結果、道路情報と一致する避難候補ルートを有し、登録された避難所と一致する避難候補地が、優先的に推奨する避難候補地/避難候補ルート1305として選択される。
【0094】
図13では、登録された避難所や道路情報を候補選択の条件としたが、第2実施形態や第3実施形態などに示す他の条件を考慮してもよい。
【0095】
(避難候補ルートの選別)
図14は、本実施形態に係る避難候補ルートの選別1400を説明する図である。図14に示す避難候補ルートの選別条件は一例であって、図14に限定されない。
【0096】
図14において、横軸は現在位置から避難候補地までの移動距離や移動時間である。例えば、図13で選択された避難候補地HP01への避難候補ルートHL011のように、ルートに沿った安全度予測値のなだらかな単純増加である場合には、避難候補ルートHL011を推奨避難候補ルートとして選別する。また、避難候補ルートHL012のように、短い距離または早い時間で避難所選択用第1閾値を超える場合には、避難候補ルートHL012を推奨避難候補ルートとして選別する。
【0097】
一方、避難候補ルート1401のように、短い距離または短い時間で急速に安全度予測値が上がるが、その先で避難ルート選別用第3閾値よりも低下する場合は、避難候補ルートから排除する。また、避難候補ルート1402のように、安全度予測値が最初の移動ではほとんど上昇しない場合も、避難候補ルートから排除する。さらに、安全度予測値が現在位置から低下する避難候補ルートも排除する。ただし、この選別の結果、1つも避難候補地や避難候補ルートが残らない場合には、次善策としてこれらの避難候補ルートからより安全と思われる避難候補ルートが選別される場合もある。
【0098】
このように、単に避難ルート選択用第2閾値を超える地点の列であっても、そのルートに沿った安全度予測値の変化によっては、避難候補ルートから排除する場合がある。かかる処理により、より確実で安全な避難候補ルートが推奨されることになる。
【0099】
(避難候補地および避難候補ルートの選別結果)
図15は、本実施形態に係る避難候補地および避難候補ルート120aの選別結果を示す図である。
【0100】
避難候補地および避難候補ルート120aの選別結果には、推奨避難候補順位1501の順位に従って、選択・選別された避難候補地ID1502と、避難候補ルートID1503とが記憶される。
【0101】
《津波避難支援装置のハードウェア構成》
図16は、本実施形態に係る津波避難支援装置110のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0102】
図16で、CPU1410は演算制御用のプロセッサであり、プログラムを実行することで図1の津波避難支援装置110の各機能構成部を実現する。ROM1620は、初期データおよびプログラムなどの固定データおよびプログラムを記憶する。また、通信制御部111は、ネットワークを介する通信端末150〜170、津波到達予測時刻提供サーバ130、あるいは地図情報提供サーバ140との通信を制御する。
【0103】
RAM1640は、CPU1610が一時記憶のワークエリアとして使用するランダムアクセスメモリである。RAM1640には、本実施形態の実現に必要なデータを記憶する領域が確保されている。1641は、通信相手のユーザを特定するユーザIDである。1642は、ユーザが使用中の通信端末IDである。700−1/700−2は、図7Aおよび図7Bに示した現在位置情報/移動速度である。1643は、選択された地域の地図情報である。900は、図9に示した津波到達予測時刻である。119aは、図10Aに示した複数指標である。119bは図12に示した安全度予測値である。1106〜1108は、図11に示した第1閾値〜第3閾値である。120aは、図15に示した避難候補地/避難候補ルートである。
【0104】
ストレージ1650は、データベースや各種のパラメータ、あるいは本実施形態の実現に必要な以下のデータまたはプログラムが記憶されている。113は、図6に示した属性情報情報DBである。118は、図8に示した地図情報DBである。1100/1140は、図11と図14に示した安全度予測値演算アルゴリズムや避難候補情報選別条件などである。
【0105】
ストレージ1650には、以下のプログラムが格納される。1651には、津波避難支援装置110の全体を制御する津波避難支援プログラムが格納される。1652には、津波避難支援プログラム1651において、津波到達予測時刻などの各情報を取得する各情報取得モジュールが格納される。1653には、津波避難支援プログラム1651において、安全度予測値を算出する安全度予測値演算モジュールが格納される。1654には、津波避難支援プログラム1651において、安全度予測値に基づいて避難公報情報を生成すする避難候補情報生成モジュールが格納される。1655には、津波避難支援プログラム1651において、支援情報を送信する支援情報送信モジュールが格納される。
【0106】
なお、図16には、本実施形態に必須なデータやプログラムのみが示されており、本実施形態に関連しないデータやプログラムは図示されていない。
【0107】
《津波避難支援装置の処理手順》
図17は、本実施形態に係る津波避難支援装置110の処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートは、図16のCPU1610によりRAM1640を使用しながら実行されて、図1の津波避難支援装置110の各機能構成部を実現する。
【0108】
まず、ステップS1711においては、気象庁などからの津波警報あるいは津波注意報を受信したかを判定する。また、ステップS1731においては、通信端末150〜170から位置情報を受信したかを判定する。また、ステップS1741においては、津波避難支援のための会員登録情報を受信したかを判定する。
【0109】
津波警報あるいは津波注意報を受信するとステップS1713に進んで、登録された会員で津波警報や津波注意報の出た地域に居るユーザを、津波警報や注意報の出た地域情報とユーザの現在位置情報に基づいて選別する。次に、ステップS1715において、各ユーザの現在位置情報と、警報や注意報の出たそれぞれの地域の地図情報と、各ユーザの属性情報と、地域の各地点の津波到達時刻情報とを、各DBや通信端末やサーバから取得する。そして、ステップS1717において、各ユーザについて、ステップS1715で得た情報に基づいて複数指標のスコアを設定して、この複数指標のスコアから地域内の各地点の安全度予測値を算出する。
【0110】
ステップS1719においては、算出された各地点の安全度予測値に基づいて、第1閾値〜第3閾値などの条件に従い、避難候補地と避難候補ルートを選択し、さらに推奨する候補を選別する(図18A参照)。そして、ステップS1721において、選別された推奨する避難候補地および避難候補ルートを含む避難候補情報を生成して、対象ユーザの通信端末に対して送信する(図18B参照)。
【0111】
一方、通信端末150〜170からの位置情報の受信であればステップS1733に進んで、ユーザの現在位置情報を更新する(図7A参照)。また、会員登録情報の受信であればステップS1743に進んで、属性情報DB113にユーザIDに対応付けて受信した属性情報を登録する。
【0112】
(避難候補地/避難候補ルート選別処理)
図18Aは、本実施形態に係る避難候補地/避難候補ルート選別処理S1719の処理手順S1719−1を示すフローチャートである。
【0113】
まず、ステップS1811において、安全度予測値が第1閾値(図11参照)を超える地点を仮の避難候補地とする。なお、前述したように、所定範囲の地点で第1閾値を超える場所とする。そして、ステップS1813においては、仮の避難候補地の中から、あらかじめ登録された登録避難所に一致する候補地があれば、その避難候補地を優先して選抜する。
【0114】
次に、ユーザの現在位置と選択された避難候補地を結び、第2閾値(図11参照)を超える地点列であるルートを仮の避難候補ルートとする。なお、避難候補ルートの選択においても、所定幅以上であることが条件になる。かかる所定幅は、避難が徒歩であるのか車であるのかにより条件が異なることになる。
【0115】
ステップS1817においては、避難候補ルートが無い避難候補地を候補から排除する。次に、選択された避難候補ルートの中から地図情報にある道路に沿うルートを優先して選抜する。そして、ステップS1821において、選択された避難候補ルートに対してさらに安全条件(図14参照)を基準に優先順位を付ける。
【0116】
上記ステップで選別された避難候補地と避難候補ルートとを優先順位の順に記憶する(図15参照)。
【0117】
なお、ステップS1811〜S1821までの処理順序は図18Aに限らない、先に避難候補ルートを選択し、避難候補地の無いルートを排除してもよいし、これら候補の排除を選抜や優先順位を付けた後に行なってもよい。
【0118】
このように、安全度予測値が第2閾値を超える地点の列による避難候補ルートの内、地図情報に含まれる道路情報に一致するルートであって、道路情報と属性情報とからユーザが避難可能と判断されるルートを、推奨避難候補ルートとして選別する。
【0119】
(避難候補情報生成および送信処理)
図18Bは、本実施形態に係る避難候補情報生成および送信処理S1721の処理手順を示すフローチャートである。
【0120】
まず、ステップS1831において、最初の避難候補情報の送信であるかを判定する。初期送信であればステップS1835に進んで、通信端末150〜170に対して初期の通知音声の送信を行なう。例えば、図4Aや図5Aの“大津波警報が出ました。避難してください。”や、あるいは単なる警報音の信号であってもよい。
【0121】
次に、ステップS1837において、避難候補情報を送る送信先の通信端末に画像編集機能やナビゲーション機能があるか否かを判定する。画像編集機能やナビゲーション機能があるかの情報は、通信端末の機種から判断したり、あるいは属性情報として登録したりすればよい。通信端末に画像編集機能があればステップS1839に進んで、ステップS1719で選別された避難候補地と避難候補ルートとを通信端末に送信する。後の地図上への重畳処理や、あるいはナビゲーション機能は、通信端末が行なうことになる。
【0122】
一方、画像編集機能やナビゲーション機能が無いのであれば、津波避難支援装置110においてその処理を完了した情報を通信端末に送信することになる。例えば、ナビゲーションの一例として、ステップS1841においてはユーザの現在位置が避難候補ルートに沿っているかを判定し、沿ってなければステップS1843において警報を出して修正指示をする(図4A〜図4D、図5A〜図5Dには、この警報については図示していない)。ステップS1845においては、地図上にユーザ現在位置、避難候補地、避難候補ルートを推奨順位が判別可能に重畳する。ここで判別可能とは、異なる色や、図4A〜図4D、図5A〜図5Dのような異なる線を含む。そして、ステップS1847において、重畳された地図情報を避難候補情報として通信端末に送信する。なお、この時に必要な音声データも共に送信する。
【0123】
ステップS1831に判定で、最初の避難候補情報の送信ではなく2回目以降であれば、ステップS1833に進む。ステップS1833においては、前回の避難支援情報からの避難候補地または避難候補ルートの変更があるか否かを判定する。変更が無ければ何もせずにリターンする。変更があればステップS1835に進んで、ステップS1835〜S1947を実行する。なお、2回目以降のステップS1835における音声通知は、変更内容の通知やその地点で必要な通知に対応して変わる(図4A〜図4D、図5A〜図5D参照)。
【0124】
なお、図18Bにおいては、避難途中のナビゲーション(例えば、図4Bや図5B参照)は、処理手順が煩雑となるため省略している。
【0125】
《通信端末のハードウェア構成》
図19は、本実施形態に係る通信端末150〜170のハードウェア構成を示すブロック図である。なお、図19には、画像編集機能やナビゲーション機能が有る通信端末と無い通信端末との両方を図示している。図19においては、画像編集機能やナビゲーション機能が有る通信端末が有する部分は破線で示している。
【0126】
図19で、CPU1910は演算制御用のプロセッサであり、プログラムを実行することで通信端末150〜170の各機能構成部を実現する。ROM1920は、初期データおよびプログラムなどの固定データおよびプログラムを記憶する。また、通信制御部1930は、ネットワークを介する津波避難支援装置110との通信を制御する。なお、通信端末がナビゲーション機能を有する場合には、通信制御部1930は、地図情報提供サーバ140から直接にユーザが現在居る地域の地図情報の提供を受信してよい。
【0127】
RAM1940は、CPU1910が一時記憶のワークエリアとして使用するランダムアクセスメモリである。RAM1940には、本実施形態の実現に必要なデータを記憶する領域が確保されている。1941は、通信端末を使用中のユーザを特定するユーザIDである。1942は、通信端末を特定する通信端末IDである。1943は、入力部から入力された、あるいはあらかじめ登録されたユーザの属性情報である。1944は、GPS機能により取得した通信端末の現在位置情報である。1945は、津波避難支援装置110から受信した避難候補地および避難候補ルートを含む避難候補情報である。1946は、通信制御部1930を介して受信した受信データであり、1947は、通信制御部1930を介して送信する送信データである。1948は、入出力インタフェース1960を介して入力された入力データであり、1949は、入出力インタフェース1960を介して出力する出力データである。
【0128】
ストレージ1950は、データベースや各種のパラメータ、あるいは本実施形態の実現に必要な以下のデータまたはプログラムが記憶されている。1951は、画像編集機能やナビゲーション機能を有する通信端末が保持する地図情報DBである。ストレージ1950には、以下のプログラムが格納される。1952には、通信端末の全体を制御する通信端末情報処理プログラムが格納される。1953には、通信端末情報処理プログラム1952において、通信制御部1930を介するデータの送受信を制御する送受信制御モジュールが格納される。1954には、通信端末情報処理プログラム1952において、入出力インタフェース1960を介したデータの入出力を制御する入出力制御モジュールが格納される。1955には、津波避難支援装置110への会員登録時にダウンロードされる津波避難支援アプリケーションが格納される。なお、かかる津波避難支援アプリケーションは、通信端末の機種や有する機能によって異なるものであり、津波避難支援装置110の処理と津波避難支援アプリケーションと通信端末があらかじめ有する機能とが協働して、本実施形態の津波避難支援が実現される。1956は、通信端末がナビゲーション機能を有する場合に格納されるナビゲーション処理アプリケーションである。
【0129】
入出力インタフェース1960は、各種周辺機器からの入出力をインタフェースする。入出力インタフェース1960には、入力機器として、タッチパネル1962、キーボード1963、マイク1965、GPS信号受信部1966が接続されている。また、出力機器として、表示部1961やスピーカ1964が接続されている。なお、入出力機器については、通信端末が必要とする機能により変更可能であり、図19に限定されない。
【0130】
なお、図19には、本実施形態に必須なデータやプログラムのみが示されており、本実施形態に関連しないデータやプログラムは図示されていない。
【0131】
《通信端末の処理手順》
以下、ナビゲーション機能を有しない通信端末の処理手順と、ナビゲーション機能を有する通信端末の処理手順とを、それぞれ分けて説明する。
【0132】
(ナビゲーション機能を有しない通信端末の処理手順)
図20Aは、本実施形態に係るナビゲーション機能を有しない通信端末、例えば携帯電話など、の処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートは、図19のCPU1910がRAM1940を使用しながら実行して、通信端末の各機能構成部を実現する。なお、図20Aには、通信端末の本実施形態とは関連の少ない機能については図示していない。
【0133】
まず、ステップS2011において、津波避難支援装置210からの津波警報あるいは津波注意報の受信であるかを判定する。津波警報あるいは津波注意報の受信であればステップS2013に進んで、津波避難支援アプリケーションを起動する。なお、津波警報あるいは津波注意報の受信は、津波避難支援装置210からに限定せずに、いずれかから津波警報あるいは津波注意報を受信した場合には、津波避難支援アプリケーションを起動して、津波避難支援装置210に問い合わせる手順であってもよい。
【0134】
津波避難支援アプリケーションにおいては、ステップS2015において、GPS信号から取得した通信端末の現在位置情報を津波避難支援装置110に送信する。次に、ステップS2017においては、津波避難支援装置110からの支援情報の受信であるかを判定する。支援情報の受信であればステップS2019において、支援情報の表示部1961へ避難候補地や避難候補ルートを識別可能に表示し、スピーカ1964からの音声出力を行なう。支援情報の受信がなければステップS2021に進んで、津波避難支援装置110からの避難完了情報の受信であるかを判定する。避難完了情報の受信でなければステップS2015に戻って、ステップS2015〜S2021の処理を繰り返す。
【0135】
なお、ステップS2015の現在位置情報の送信は所定期間ごとに行なう、あるいはユーザの指示や他のイベント発生時に行なう、あるいは津波避難支援装置110からの要求で行なうなどが考えられる。津波避難支援装置110における図18Bのフローチャートと協働して、支援情報は避難候補地や避難候補ルートの変更があった場合や、ユーザに報知する必要のある場合に、通信端末に送信されるよう制御される。津波避難支援装置110から避難完了情報を受信したならばステップS2023に進んで、津波避難支援アプリケーションを終了する。
【0136】
なお、本実施形態においては、避難完了の判断は津波避難支援装置110のみに持たせている。すなわち、通信端末からは避難完了を指示できない。これは、東日本大震災においても経験したように、一旦避難地に到達しても、その避難地が津波の規模などから安全か否かは客観的に判断する必要があるためである。すなわち、津波避難支援装置110があらゆる情報から安全を確認できるまでは、ユーザの判断で通信端末の津波避難支援アプリケーションを終了させないためである。
【0137】
津波警報や注意報でない場合は、ステップS2031において、会員登録であるかが判定される。会員登録であればステップS2033に進んで、ユーザ情報および属性情報の津波避難支援装置110への送信をする。そして、ステップS2035において、津波避難支援装置110から津波避難支援アプリケーションをダウンロードして取得する。
【0138】
(ナビゲーション機能を有する通信端末の処理手順)
図20Bは、本実施形態に係るナビゲーション機能を有する通信端末、例えばカーナビゲーション装置など、の処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートは、図19のCPU1910がRAM1940を使用しながら実行して、通信端末の各機能構成部を実現する。なお、図20Bにも、通信端末の本実施形態とは関連の少ない機能については図示していない。
【0139】
まず、ステップS2041において、津波避難支援装置210からの津波警報あるいは津波注意報の受信であるかを判定する。津波警報あるいは津波注意報の受信であればステップS2043に進んで、津波避難支援アプリケーションを起動する。なお、津波警報あるいは津波注意報の受信は、図20Aと同様に、津波避難支援装置210からに限定せずに、いずれかから津波警報あるいは津波注意報を受信した場合には、津波避難支援アプリケーションを起動して、津波避難支援装置210に問い合わせる手順であってもよい。
【0140】
津波避難支援アプリケーションにおいては、ステップS2045において、GPS信号から取得した通信端末の現在位置情報を津波避難支援装置110に送信する。次に、ステップS2047においては、津波避難支援装置110からの支援情報の受信を待機する。支援情報の受信であればステップS2049において、ナビゲーション処理アプリケーションを起動する。そして、受信した支援情報である避難候補地および避難候補ルートを使用したナビゲーションを行なう。なお、かかるナビゲーション処理アプリケーションの中で、現在位置情報の取得と現在位置情報の津波避難支援装置210への送信が随時に行なわれるが、図20Bには煩雑になるため図示していない。
【0141】
ステップS2049のナビゲーション処理に並行して、ステップS2051において、津波避難支援装置110からの避難完了情報の受信があるかを判定する。避難完了情報の受信でなければステップS2053に進んで、津波避難支援装置110からの支援情報の変更指示があるかを判定する。支援情報の変更が無ければステップS2049に進んで、避難候補および避難候補ルートの変更無しにナビゲーション処理を継続する。一方、支援情報を変更指示があればステップS2047に戻って、変更された新たな支援情報の受信を待って、ステップS2049において新たな避難候補地および避難候補ルートに基づいたナベゲーションを行なう。津波避難支援装置110から避難完了情報を受信したならばステップS2055に進んで、津波避難支援アプリケーションを終了する。
【0142】
なお、ステップS2061〜S2065の会員登録の手順は、図20AのステップS2031〜S2035と同様であるので、説明は省略する。
【0143】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る津波避難支援システムについて説明する。本実施形態に係る津波避難支援システムにおける津波避難支援装置は、上記第1実施形態と比べると、避難候補ルートの選別をあらかじめ登録された避難ルートを参照して行なう点で異なる。その他の構成および動作は、第1実施形態と同様であるため、同じ構成および動作についてはその詳しい説明を省略する。
【0144】
本実施形態によれば、装置に設定された一般的な基準や条件に基づくだけでなく、実際に訓練などを行なった避難地や避難ルートを優先的に選別するので、ユーザに対して安全性がより確実な避難支援ができる。特に、本実施形態によれば、避難ルートが道路に限定されず、日頃から訓練を行なっている公有地や畑や庭などの私有地中の近道ルート、あるいはルート中に乗り越え可能な塀がある近道ルートなどを、選別可能である。なお、本実施形態は、町や村などの比較的狭い地域について現実に使用している避難ルートが推奨されるので、旅行や仕事でたまたまこの地域に来ている地域に不案内な人には非常に貴重な情報となる。
【0145】
(登録避難ルートを参照した避難候補ルートの選別)
図21は、本実施形態に係る登録避難ルートテーブル2100の構成を示す図である。なお、登録避難ルートテーブル2100は、例えば、図16のストレージ1650に記憶されて、図1の避難候補情報生成部120において、避難候補ルートの選別に使用されることになる。
【0146】
登録避難ルートテーブル2100は、登録避難ルートID2101に対応付けて、登録者2102、地図上で避難ルートを示す避難ルート情報2103、登録避難ルートの属性2104、その避難ルートを使用した避難訓練回数2105、最終避難訓練日2106などを記憶する。なお、登録避難ルートの属性2104には、避難ルートの幅や傾斜、道路なのか畑や空き地、他人の敷地内かなどが記憶される。
【0147】
このように、登録者により登録された登録避難ルートは、津波避難支援装置110が客観的な測定情報から選択・選別された避難候補ルートに比較して、途中で何が起こるか未知のための安全度のブレや低下を抑えた、確実性の高い避難候補ルートとして推奨される。また、第1実施形態のように道路上に限定してしまうと、畑や他人の敷地内を通って直線的に避難地に向かう近道となる避難ルートが排除されてしまう。本実施形態においては、避難ルートの属性2104と避難するユーザの属性情報との対比からもより適切な選別ができると共に、避難訓練回数2105や最終避難訓練日2106の情報から、より安全性・確実性を保証できることになる。特に、この地域に不案内のユーザには適切な支援が可能である。
【0148】
(避難候補ルートの選別処理)
図22は、本発明の第2実施形態に係る登録避難ルートテーブル2100を参照した避難候補地/避難候補ルート選別処理S1719の処理手順S1719−2を示すフローチャートである。
【0149】
最初のステップS1811からS1817までは、図18Aと同様であるので説明は省略する。ステップS2219において、避難候補ルートの中から、あらかじめ登録避難ルートテーブル2100に登録された登録避難ルートと一致する避難候補ルートを優先的に選別する。あるいは、その一部が一致する場合には、その部分だけを登録避難ルートに置き換えてもよい。ステップS2221において、登録避難ルートが有るか否かで分岐する。登録避難ルートが有る場合は図18AのステップS1923に進み、登録避難ルートが無い場合は図18AのステップS1919に進む。以降の処理は図8Aと同様であるので、説明は省略する。
【0150】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る津波避難支援システムについて説明する。本実施形態に係る津波避難支援システムにおける津波避難支援装置は、上記第1実施形態および第2実施形態と比べると、障害物を考慮して避難候補ルートを選別する点で異なる。ここで障害物としては、壁やフェンスなどの固定的な物や、車の渋滞や事故、工事や災害による通行止めなどの時々刻々変化する物を含む。その他の構成および動作は、第1実施形態と同様であるため、その詳しい説明を省略する。
【0151】
本実施形態によれば、避難候補ルートを辿って避難していて、突然障害物に突き当たって災害に遭遇するのを未然に回避することができる。
【0152】
(障害物を考慮した避難候補ルートの選別)
図23は、本実施形態に係るルート上の障害物を示す障害物情報テーブル2300の構成を示す図である。なお、障害物情報テーブル2300は、例えば、図16のストレージ1650に記憶されて、図1の避難候補情報生成部120において、避難候補ルートの選別に使用される。
【0153】
障害物情報テーブル2300は、障害物ID2301に対応付けて、その位置情報である緯度2302と経度2303、障害物の内容2304、障害となる期間2305、回復予測2306を記憶する。例えば、障害物の内容2304には、壁や階段などの固定的な障害物も、工事中や渋滞などの流動的な障害物もある。
【0154】
これらの情報は、あらかじめ取得可能な固定のものは避難候補ルートの選択で使用されてもよい。しかし、流動的な障害物の情報は、逐次通知および収集された情報に従って、避難候補ルートの選別を動的に変化させる。したがって、最終的な推奨避難候補ルートの選別に使用される。本実施形態のこのような構成により、時々刻々変化する状況に適切に対処することができ、より安全な避難支援情報が報知できる。
【0155】
(避難候補地/避難候補ルートの選別処理)
図24は、本実施形態に係る障害物情報テーブル2300を考慮した避難候補地/避難候補ルート選別処理S1719の処理手順S1719−3を示すフローチャートである。
【0156】
最初のステップS1811からS1815までは、図18Aと同様であるので説明は省略する。ステップS2417において、避難候補ルート上に、障害物情報テーブル2300に登録された障害物があることが判明した場合には、その避難候補ルートを排除する。そして、図18AのステップS1817に進む。以降の処理は図8Aと同様であるので、説明は省略する。
【0157】
このように、本実施形態においては、車の渋滞情報や、建物の倒壊による不通情報や、亀裂や液状化による不通情報や、土砂崩れによる不通情報、を含む現在の道路不通情報を取得する道路情報取得部を有する。そして、避難候補ルート上に階段や急坂や障害物があって、ユーザの属性情報から当該避難候補ルートでの避難が無理と判断した場合、または、避難候補ルート上に階段や障害物があって、乗り物による避難である場合などに、避難不可能と判断する。
【0158】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態に係る津波避難支援システムについて説明する。本実施形態に係る津波避難支援システムにおける津波避難支援装置は、上記第1実施形態乃至第3実施形態と比べると、あらかじめ登録されたユーザに対する津波避難支援ではなく、不特定多数の問合せユーザに対して、避難候補地および避難候補ルートを報知する点で異なる。その他の構成および動作は、第1実施形態乃至第3実施形態と同様であるため、同じ構成および動作については同じ符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0159】
本実施形態によれば、あらかじめ登録されていない不特定多数のユーザに対しても、津波避難の支援情報を提供することができる。
【0160】
《津波避難支援システムの構成》
図25は、本実施形態に係る津波避難支援システム2500の構成を示すブロック図である。なお、本実施形態に係る津波避難支援システム2500の構成における第1実施形態との相違点は、あらかじめ会員登録するための属性情報DBを有しない点である。他の機能構成部において同じ機能を果たす構成は、同じ参照番号を付して説明は省略する。
【0161】
図25の津波避難支援装置2510は、ユーザID/通信端末ID取得部2512を有する。かかるユーザID/通信端末ID取得部2512は、会員ではない不特定多数のユーザからの津波避難支援要求を取得する。なお、ユーザID/通信端末ID取得部2512が第1実施形態のようにユーザの属性情報をも取得するような構成も可能である。しかしながら、実際に津波警報や注意報が出ている中で属性情報などのユーザによる入力や通信処理は行なわずに、処理するのが望ましい。
【0162】
したがって、本実施形態の安全度予測値算出部2519は、基本的にユーザの属性情報は考慮せずに、ユーザの居る地域の各地点の複数指標2519aのスコアを設定し、安全度予測値1519bを演算する。このように、本実施形態では属性情報が無いので、避難候補情報生成部2520の避難候補地および避難候補ルート2520a(2520b)の選別も、第1実施形態と比較して、ユーザの属性を明瞭に特定できない分、広い範囲での選別になるのはやむを得ない。その他の基本的な安全度予測値算出部2519および避難候補情報生成部2520の構成および処理は、第1実施形態と同様であるので、説明は省略する。
【0163】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態に係る津波避難支援システムについて説明する。東日本大震災においては、携帯電話などの通信端末が使用できなくなり、津波情報をラジオから得た人が圧倒的に多かったとの結果が発表されている。本実施形態は、それを考慮した構成である。本実施形態に係る津波避難支援システムにおける津波避難支援装置は、上記第1実施形態乃至第4実施形態と比べると、ユーザが携帯するのが音声受信機器(ラジオを含む)である点で異なる。その他の構成および動作は、第1実施形態乃至第4実施形態と同様であるため、同じ構成および動作については同じ符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0164】
本実施形態によれば、より安価な設備によってより確実に、ユーザに津波避難の支援情報を提供することができる。
【0165】
《津波避難支援システムの構成》
図26は、本実施形態に係る津波避難支援システム2600の構成を示すブロック図である。なお、本実施形態に係る津波避難支援システム2600の構成における第1実施形態との相違点は、ラジオなどの音声受信機器に避難候補地および避難候補ルートに関する音声電波を発振するための機能を有する点である。他の機能構成部において同じ機能を果たす構成は、同じ参照番号を付して説明は省略する。
【0166】
図26の津波避難支援装置2610は、避難候補情報生成部120から出力された避難候補地および避難候補ルート120bを受けて、支援情報の音声を生成して送信する支援情報音声送信部2621を有する。なお、支援情報の音声は、ユーザの現在位置情報と地図情報とに基づいて生成される、画面がなくても分かるような音声による誘導である。したがって、支援情報音声送信部2621は、避難候補地および避難候補ルート120と、ユーザの現在位置情報と、地図情報とから、音声報知すべき文章を生成する音声合成器を有している。その場合に、津波避難の誘導に必要な文章のひな形を登録しておくのが望ましい。
【0167】
津波避難支援装置2610の支援情報音声送信部2621が生成した支援情報音声は、音声電波発振部2690によって音声電波として音声受信機器(ラジオを含む)に向けて発振される。なお、支援情報音声送信部2621から音声電波発振部2690への情報伝達は、公衆のネットワークでもよいが特定の回線であるのが望ましい。また、音声電波発振部2690は商用ラジオ放送局であっても、緊急時に開設される仮説ラジオ放送局であってもよい。あるいは、町や村の専用ラジオ局であってもよい。
【0168】
一方、ユーザが有するラジオなどの音声受信機器2650および2660には、音声電波発振部2690からの電波を受信する機能と共に、GPS衛星からの信号から現在位置情報を取得して津波避難支援装置2610に送信する機能を追加することが必要である。かかる追加は廉価に簡単な構成により実現可能である。
【0169】
[他の実施形態]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステムまたは装置も、本発明の範疇に含まれる。また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用されてもよいし、単体の装置に適用されてもよい。
【0170】
さらに、本発明は、実施形態の機能を実現する情報処理プログラムが、システムあるいは装置に直接あるいは遠隔から供給される場合にも適用可能である。したがって、本発明の機能をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされる制御プログラム、あるいはその制御プログラムを格納した媒体、その制御プログラムをダウンロードさせるWWW(World Wide Web)サーバも、本発明の範疇に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信端末を有するユーザの津波からの避難を支援する津波避難支援装置であって、
避難すべきユーザの現在位置情報を取得する現在位置情報取得手段と、
前記ユーザの現在位置情報の変化から、歩行速度または走行速度を算出する移動速度算出手段と、
前記避難すべきユーザを含む地域の地図情報を取得する地図情報取得手段と、
前記地図情報に含まれる各地点に津波が到達する到達予測時刻を取得する到達予測時刻取得手段と、
前記現在位置情報と、前記歩行速度または走行速度と、前記地図情報と、前記到達予測時刻とに基づき、前記避難すべきユーザの避難時間を考慮して安全度に関連する複数指標のスコアを設定し、前記複数指標のスコアから地図上の各地点の安全の度合いを示す安全度予測値を算出する安全度予測値算出手段と、
前記地図上の各地点の安全度予測値に基づいて、避難候補地と、前記避難すべきユーザに対する前記現在位置情報の示す現在位置から前記避難候補地までの避難候補ルートとを生成する避難候補情報生成手段と、
生成した前記避難候補地と前記避難候補ルートとを、ネットワークを介してユーザが有する前記通信端末に送信する支援情報送信手段と、
を備えることを特徴とする津波避難支援装置。
【請求項2】
前記避難すべきユーザの属性情報を取得する属性情報取得手段をさらに備え、
前記安全度予測値算出手段は、さらに前記属性情報に基づき、前記安全度予測値を算出することを特徴とする請求項1に記載の津波避難支援装置。
【請求項3】
前記属性情報取得手段は、登録されたユーザに対応付けて属性情報を記憶する記憶手段を有し、該記憶手段から前記属性情報を取得することを特徴とする請求項2に記載の津波避難支援装置。
【請求項4】
前記避難すべきユーザは複数ユーザからなるユーザグループを含み、前記属性情報は、前記ユーザグループとしての避難能力情報を含むことを特徴とする請求項2または3に記載の津波避難支援装置。
【請求項5】
前記現在位置情報取得手段は、ユーザが所有する通信端末がGPS信号に基づいて得た現在位置情報を、前記通信端末から受信する受信手段を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の津波避難支援装置。
【請求項6】
前記地図情報は、少なくとも地図上の各地点の標高を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の津波避難支援装置。
【請求項7】
前記安全度に関連する複数指標は、少なくとも、前記地図上の各地点におけるユーザの到達予測時刻と津波の到達予測時刻との時間差を含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の津波避難支援装置。
【請求項8】
前記安全度に関連する複数指標は、さらに、各地点の、ユーザの現在位置からの距離と、標高と、海岸線からの距離および方向と、河川からの距離および方向と、道路上の場合の道路の向きおよび幅と、を含むことを特徴とする請求項7に記載の津波避難支援装置。
【請求項9】
前記安全度予測値算出手段は、前記複数指標の各スコアを設定する時、または、前記複数指標のスコアから前記安全度予測値を算出する時に、前記複数指標の各スコアに対応する重み付けを行なう重み付け手段を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の津波避難支援装置。
【請求項10】
前記避難候補情報生成手段は、前記安全度予測値が第1閾値を超える場所を避難候補地とすることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の津波避難支援装置。
【請求項11】
前記避難候補情報生成手段は、前記安全度予測値が第1閾値を超える前記避難候補地の内、あらかじめ登録された避難所に一致する避難候補地を推奨する避難候補地とすることを特徴とする請求項10に記載の津波避難支援装置。
【請求項12】
前記避難候補情報生成手段は、前記安全度予測値が第2閾値を超える地点であって、前記避難候補地と前記現在位置情報が示す前記ユーザの現在位置とを結ぶ地点の列を避難候補ルートとすることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の津波避難支援装置。
【請求項13】
前記避難候補情報生成手段は、前記安全度予測値が第2閾値を超える地点の列による前記避難候補ルートの内、前記安全度予測値がルートに沿って単純増加する避難候補ルート、または、前記安全度予測値がルートに沿ってより短い距離で所定の安全度予測値に到達する避難候補ルートを推奨避難候補ルートとして選別し、前記安全度予測値が前記安全度予測値がルートに沿って前記第2閾値より大きいが第3閾値よりも小さくなる場合は、推奨避難候補ルートとしないことを特徴とする請求項12に記載の津波避難支援装置。
【請求項14】
前記避難候補情報生成手段は、前記安全度予測値が第2閾値を超える地点の列による前記避難候補ルートの内、あらかじめ設定された避難ルートに一致するルートを、推奨避難候補ルートとして選別することを特徴とする請求項12または13に記載の津波避難支援装置。
【請求項15】
前記避難候補情報生成手段は、前記安全度予測値が第2閾値を超える地点の列による前記避難候補ルートの内、あらかじめユーザにより登録された避難ルートにすくなくとの一部が一致するルートを、推奨避難候補ルートとして選別することを特徴とする請求項12乃至14のいずれか1項に記載の津波避難支援装置。
【請求項16】
前記避難候補情報生成手段は、前記安全度予測値が第2閾値を超える地点の列による前記避難候補ルートの内、前記地図情報に含まれる道路情報に一致するルートであって、前記道路情報とユーザの属性情報とから前記ユーザが避難可能と判断されるルートを、推奨避難候補ルートとして選別することを特徴とする請求項12乃至15のいずれか1項に記載の津波避難支援装置。
【請求項17】
前記避難候補情報生成手段は、避難候補ルート上に階段や急坂や障害物があって、前記ユーザの属性情報から当該避難候補ルートでの避難が無理と判断した場合、または、避難候補ルート上に階段や障害物があって、乗り物による避難である場合に、避難不可能と判断することを特徴とする請求項16に記載の津波避難支援装置。
【請求項18】
車の渋滞情報と、建物の倒壊による不通情報と、亀裂や液状化による不通情報と、土砂崩れによる不通情報と、を含む現在の道路不通情報を取得する道路情報取得手段をさらに備え、
前記避難候補情報生成手段は、前記道路不通情報を考慮して不通のルートを避難候補ルートから排除することを特徴とする請求項1乃至17のいずれか1項に記載の津波避難支援装置。
【請求項19】
前記支援情報送信手段は、前記地図情報で表わされる地図上に、前記現在位置情報が示す前記ユーザの現在位置と前記避難候補地と前記避難候補ルートとを識別可能に重畳した表示画面を生成する表示画面生成手段を有することを特徴とする請求項1乃至18のいずれか1項に記載の津波避難支援装置。
【請求項20】
前記表示画面生成手段は、前記避難候補ルートが複数ある場合に、最も推奨する推奨避難候補ルートから順に多くとも3つの避難候補ルートを、推奨する順位を識別可能に前記地図上に重畳した表示画面を生成することを特徴とする請求項19に記載の津波避難支援装置。
【請求項21】
前記支援情報送信手段は、前記ユーザの現在位置情報の変化により避難候補地または推奨避難候補ルートに変更が有る場合、支援情報と共に変更を知らせる通知音声を送信し、避難候補地および推奨避難候補ルートに変更がない場合、支援情報は送信しないことを特徴とする請求項19または20に記載の津波避難支援装置。
【請求項22】
通信端末を有するユーザの津波からの避難を支援する津波避難支援装置の制御方法であって、
避難すべきユーザの現在位置情報を取得する現在位置情報取得ステップと、
前記ユーザの現在位置情報の変化から、歩行速度または走行速度を算出する移動速度算出ステップと、
前記避難すべきユーザを含む地域の地図情報を取得する地図情報取得ステップと、
前記地図情報に含まれる各地点に津波が到達する到達予測時刻を取得する到達予測時刻取得ステップと、
前記現在位置情報と、前記歩行速度または走行速度と、前記地図情報と、前記到達予測時刻とに基づき、前記避難すべきユーザの避難時間を考慮して安全度に関連する複数指標のスコアを設定し、前記複数指標のスコアから地図上の各地点の安全の度合いを示す安全度予測値を算出する安全度予測値算出ステップと、
前記地図上の各地点の安全度予測値に基づいて、避難候補地と、前記避難すべきユーザに対する前記現在位置情報の示す現在位置から前記避難候補地までの避難候補ルートとを生成する避難候補情報生成ステップと、
生成した前記避難候補地と前記避難候補ルートとを、ネットワークを介してユーザが有する前記通信端末に送信する支援情報送信ステップと、
を備えることを特徴とする津波避難支援装置の制御方法。
【請求項23】
通信端末を有するユーザの津波からの避難を支援する津波避難支援装置の制御方法であって、
避難すべきユーザの現在位置情報を取得する現在位置情報取得ステップと、
前記ユーザの現在位置情報の変化から、歩行速度または走行速度を算出する移動速度算出ステップと、
前記避難すべきユーザを含む地域の地図情報を取得する地図情報取得ステップと、
前記地図情報に含まれる各地点に津波が到達する到達予測時刻を取得する到達予測時刻取得ステップと、
前記現在位置情報と、前記歩行速度または走行速度と、前記地図情報と、前記到達予測時刻とに基づき、前記避難すべきユーザの避難時間を考慮して安全度に関連する複数指標のスコアを設定し、前記複数指標のスコアから地図上の各地点の安全の度合いを示す安全度予測値を算出する安全度予測値算出ステップと、
前記地図上の各地点の安全度予測値に基づいて、避難候補地と、前記避難すべきユーザに対する前記現在位置情報の示す現在位置から前記避難候補地までの避難候補ルートとを生成する避難候補情報生成ステップと、
生成した前記避難候補地と前記避難候補ルートとを、ネットワークを介してユーザが有する前記通信端末に送信する支援情報送信ステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とする制御プログラム。
【請求項24】
ユーザの津波からの避難を支援する津波避難支援システムであって、
避難すべきユーザの現在位置情報を取得する現在位置情報取得手段と、
前記ユーザの現在位置情報の変化から、歩行速度または走行速度を算出する移動速度算出手段と、
前記避難すべきユーザを含む地域の地図情報を取得する地図情報取得手段と、
前記地図情報に含まれる各地点に津波が到達する到達予測時刻を取得する到達予測時刻取得手段と、
前記現在位置情報と、前記歩行速度または走行速度と、前記地図情報と、前記到達予測時刻とに基づき、前記避難すべきユーザの避難時間を考慮して安全度に関連する複数指標のスコアを設定し、前記複数指標のスコアから地図上の各地点の安全の度合いを示す安全度予測値を算出する安全度予測値算出手段と、
前記地図上の各地点の安全度予測値に基づいて、避難候補地と、前記避難すべきユーザに対する前記現在位置情報の示す現在位置から前記避難候補地までの避難候補ルートとを生成する避難候補情報生成手段と、
生成した前記避難候補地と前記避難候補ルートとを報知する支援情報報知手段と、
を備えることを特徴とする津波避難支援システム。
【請求項25】
ユーザの津波からの避難を支援する津波避難支援方法であって、
避難すべきユーザの現在位置情報を取得する現在位置情報取得ステップと、
前記ユーザの現在位置情報の変化から、歩行速度または走行速度を算出する移動速度算出ステップと、
前記避難すべきユーザを含む地域の地図情報を取得する地図情報取得ステップと、
前記地図情報に含まれる各地点に津波が到達する到達予測時刻を取得する到達予測時刻取得ステップと、
前記現在位置情報と、前記歩行速度または走行速度と、前記地図情報と、前記到達予測時刻とに基づき、前記避難すべきユーザの避難時間を考慮して安全度に関連する複数指標のスコアを設定し、前記複数指標のスコアから地図上の各地点の安全の度合いを示す安全度予測値を算出する安全度予測値算出ステップと、
前記地図上の各地点の安全度予測値に基づいて、避難候補地と、前記避難すべきユーザに対する前記現在位置情報の示す現在位置から前記避難候補地までの避難候補ルートとを生成する避難候補情報生成ステップと、
生成した前記避難候補地と前記避難候補ルートとを報知する支援情報報知ステップと、
を含むことを特徴とする津波避難支援方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【公開番号】特開2013−89078(P2013−89078A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229833(P2011−229833)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【特許番号】特許第4961505号(P4961505)
【特許公報発行日】平成24年6月27日(2012.6.27)
【出願人】(503176550)株式会社アイエスエム (9)
【Fターム(参考)】