説明

活動量計

【課題】活動量の計測対象者の行動態様に応じて、活動量を精度良く推定することのできる活動量計を提供する。
【解決手段】加速度センサ11による加速度の検出結果に基づいて人体の活動量を計測する活動量計1は、加速度の検出結果から得られる加速度の標準偏差と所定時間当たりの歩数とに基づいて人体の行動態様を判定するとともに、判定した行動態様に応じて活動量を計測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加速度センサによる加速度の検出結果に基づいて人体の活動量を計測する活動量計に関する。
【背景技術】
【0002】
体幹である腰に上記活動量計を装着して、活動量である活動強度が計測されることが知られている。また、加速度センサを備える活動量計において、加速度センサにより検出された加速度に基づいて、歩数を計測するとともに活動強度を算出することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2008/120710号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
算出される活動量は、計測対象者の行動態様に応じて異なる。例えば、計測対象者が歩行しているときは、走っているときに比べて、算出される活動量は大きい。しかしながら、上記特許文献1に記載される活動強度計は、加速度に基づいて活動強度を算出しているものの、活動量を精度良く推定することができないおそれがある。すなわち、活動量計の装着部位に応じて加速度センサによる加速度の検出結果は異なるため、例えば腕に活動量計が装着されると、計測対象者の行動態様に応じて、活動量を精度良く推定することができないという問題がある。
【0005】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、活動量の計測対象者の行動態様に応じて、活動量を精度良く推定することのできる活動量計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記目的を達成するための手段について記載する。
・本発明の活動量計は、加速度センサによる加速度の検出結果に基づいて人体の活動量を計測する活動量計において、前記加速度の検出結果から得られる加速度の標準偏差と所定時間当たりの歩数とに基づいて前記人体の行動態様を判定するとともに、判定した前記行動態様に応じて前記活動量を計測することを特徴とする。
【0007】
・上記活動量計において、加速度の標準偏差が走行判定値以下、かつ、所定時間当たりの歩数が歩行判定歩数以上のときに、前記行動態様が歩行シーンであると判定することが好ましい。
【0008】
・上記活動量計において、前記行動態様が歩行シーンであると判定したときに、前記加速度の検出結果から得られた加速度の標準偏差と所定時間当たりの歩数とに基づいて前記活動量を算出することが好ましい。
【0009】
・上記活動量計において、加速度の標準偏差が前記走行判定値以上、かつ、所定時間当たりの歩数が走行判定歩数以上のときに、前記行動態様が走行シーンであると判定することが好ましい。
【0010】
・上記活動量計において、前記行動態様が走行シーンであると判定したときに、前記加速度の検出結果から得られた加速度の標準偏差と所定時間当たりの歩数とに基づいて前記活動量を算出することが好ましい。
【0011】
・上記活動量計において、前記行動態様が歩行シーンであると判定したときには、前記行動態様が走行シーンであると判定したときに比べて、前記活動量を算出するときの前記所定時間当たりの歩数の重みを大きくすることが好ましい。
【0012】
・上記活動量計において、前記行動態様が走行シーンであると判定したときには、前記行動態様が歩行シーンであると判定したときに比べて、前記活動量を算出するときの前記加速度の標準偏差の重みを大きくすることが好ましい。
【0013】
・上記活動量計において、前記行動態様が歩行シーンでないと判定され、かつ、前記行動態様が走行シーンでないと判定されたときに、前記行動態様が非歩行シーンであると判定することが好ましい。
【0014】
・上記活動量計において、前記行動態様が非歩行シーンであると判定したときに、前記加速度の検出結果から得られた加速度の標準偏差に基づいて前記活動量を算出することが好ましい。
【0015】
・上記活動量計において、前記行動態様が非歩行シーンであると判定したときには、前記活動量の上限値を設定することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、活動量の計測対象者の行動態様に応じて、活動量を精度良く推定することのできる活動量計を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態の活動量計について、同活動量計の使用態様の一例を示す模式図。
【図2】同実施形態の活動量計の概略構成を示すブロック図。
【図3】同実施形態の活動量計の動作の流れを示すフローチャート。
【図4】同実施形態の活動量計について、行動態様に応じた加速度の標準偏差と所定時間当たりの歩数との関係を説明するためのグラフ。
【図5】腰に装着された活動量計により計測された活動強度と、所定時間当たりの歩数との関係を説明するためのグラフ。
【図6】計測対象者が歩行しているときに、腕に装着された本発明の活動量計が計測し活動強度と、腰に装着された活動量計が計測した活動強度との関係を示すグラフ。
【図7】計測対象者が走っているときに、腕に装着された本発明の活動量計が計測し活動強度と、腰に装着された活動量計が計測した活動強度との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示すように、計測対象者の人体9の活動量を算出する活動量計1は、人体9の腰92だけでなく腕91に装着することが可能である。活動量計1の本体となる筐体1Aには、腕91に巻かれるベルト1Bが取り付けられている。このベルト1Bが腕91に巻かれて、活動量計1が腕91に装着される。
【0019】
図2に示すように、活動量計1は、加速度センサ11と、サンプリング回路12と、演算処理回路2と、表示装置13と、メモリ14と、電池15とを備えている。加速度センサ11および演算処理回路2等の活動量計1を構成する各部は、活動量計1を容易に装着できるように1つの小さな筐体1Aに設けられている。
【0020】
加速度センサ11は、例えば、ピエゾ抵抗型の加速センサや静電容量型の加速度センサ等の、小型な半導体式の加速度センサである。また、加速度センサ11は、互いに直交する3つの軸方向における加速度を検出する3軸加速度センサである。加速度センサ11は、検出された加速度、すなわち加速度の検出結果を示す信号をサンプリング回路12に出力する。サンプリング回路12に出力される加速度の検出結果は、例えば、3つの軸方向における各加速度をベクトルの要素とする同ベクトルのノルムである。
【0021】
サンプリング回路12は、加速度センサ11から出力された信号を、所定のサンプリング周波数(例えば、7Hz)で抽出する。このようにして、演算処理回路2が加速度センサ11により検出された加速度に対して演算処理を施すことができるように、加速度センサ11による加速度の検出結果が加速度の離散値に変換される。サンプリング回路12は、加速度センサ11により検出された加速度の離散値を演算処理回路2に出力する。
【0022】
演算処理回路2は、1つまたは複数の集積回路からなるマイクロコンピュータにより構成されている。演算処理回路2は、歩数算出部21と、標準偏差算出部22と、活動量算出部23とにより構成されている。各算出部21〜23が互いに異なる集積回路により構成されてもよく、1つの集積回路により、算出部21〜23のうち少なくとも2つが構成されていてもよい。
【0023】
表示装置13は、例えば液晶パネルにより構成された表示部である。表示装置13は、活動量算出部23により算出された活動量に基づいて、活動量の計測結果を表示する。表示装置13は、活動量の計測結果として、例えば、単位がMETsで表される活動強度、単位がExで表される身体活動の量、および単位がcalで表される消費カロリーを表示する。
【0024】
メモリ14は、演算処理回路2により読み書きが行われる記憶装置である。メモリ14には、演算処理回路2が実行するプログラム、人体9の行動態様に応じた活動量の演算式、活動量計1により計測された活動量等の情報が記憶される。メモリ14には、人体9の行動態様に応じた活動量の演算式として、歩行シーンに応じた演算式Aと、走行シーンに応じた演算式Bと、非歩行シーンに応じた演算式Cとが記憶されている。
【0025】
電池15は、例えばボタン型電池であって、小型の一次電池である。電池15は、加速度センサ11、演算処理回路2を構成するマイクロコンピュータ、および表示装置13等に直流電力を供給する。
【0026】
演算処理回路2の各算出部21〜23の動作について説明する。
歩数算出部21は、加速度センサ11により検出された加速度の離散値に基づいて、所定時間当たりの歩数を算出する。歩数算出部21は、例えば、サンプリング回路12から出力された信号が示す複数の加速度の離散値が、所定の閾値を越え、かつピーク値であるときに、カウンタを用いて歩数をカウントする。そして、歩数算出部21は、カウントされた累積の歩数を、加速度の離散値を抽出した時間で除することにより、所定時間当たりの歩数を算出する。例えば、上記サンプリング周波数が7Hzであって、84個の加速度の離散値が判定されたときには、カウントされた累積の歩数を、12で除することにより、12秒間当たりの歩数が算出される。
【0027】
標準偏差算出部22は、加速度センサ11により検出された加速度の離散値に基づいて、所定時間における加速度の標準偏差を算出する。加速度の標準偏差は、加速度センサ11により検出された加速度のばらつきを表す。標準偏差算出部22は、例えば、サンプリング回路12から出力された信号が示す複数の加速度の離散値の標本分散または不偏分散を算出する。そして、標準偏差算出部22は、標本分散または不偏分散の正の平方根を算出することにより加速度の標準偏差を算出する。
【0028】
活動量算出部23は、歩数算出部21により算出された所定時間当たりの歩数、および標準偏差算出部22により算出された加速度の標準偏差の少なくとも一方に基づいて、活動量を算出する。算出される活動量は、例えば、所定時間当たりの活動強度、活動強度の総和、活動強度と活動の実施時間との積等である。このように、活動量は、単位がMETsで表される活動強度に基づくものである。
【0029】
また、活動量算出部23は、歩数算出部21により算出された所定時間当たりの歩数と、標準偏差算出部22により算出された加速度の標準偏差とに基づいて人体9の行動態様を判定する。このとき、所定時間当たりの歩数と所定の判定歩数の比較結果と、加速度の標準偏差と所定の判定値の比較結果とに基づいて、人体9の行動態様が判定される。
【0030】
活動量算出部23は、加速度センサ11による加速度の検出結果から得られる加速度の標準偏差と所定時間当たりの歩数に基づいて人体9の行動態様を判定して、判定した行動態様に応じて活動量を算出する。このとき、活動量算出部23は、判定した行動態様に応じて、活動量が導かれる演算式A〜Cを使い分けることにより、歩行シーンおよび走行シーンおよび非歩行シーンのうちいずれかのシーンに応じた活動量の算出を行う。
【0031】
図2を参照しながら、加速度センサ11による加速度の検出結果に基づいて人体9の活動量を計測する活動量計1の動作の流れについて説明する。
ステップS1では、サンプリング回路12が、加速度センサ11から出力された信号である加速度信号を抽出する。
【0032】
ステップS2では、歩数算出部21が、ステップS1において抽出された加速度信号に基づいて、所定時間当たりの歩数を算出する。また、ステップS3では、標準偏差算出部22が、ステップS1において抽出された加速度信号に基づいて、加速度の標準偏差を算出する。ステップS2,S3の順序は逆であってもよい。なお、活動量が算出されるまでの時間を短縮するためには、ステップS2,S3は並列に行われることが好ましい。
【0033】
ステップS4では、活動量算出部23が、計測対象者の行動態様が歩行シーンであるか否かを判定する。行動態様が歩行シーンであるか否かの判定は、ステップS2において算出された所定時間当たりの歩数と所定の歩行判定歩数との比較結果、および、ステップS3において算出された加速度の標準偏差と所定の走行判定値との比較結果に基づいて行われる。例えば、活動量算出部23は、加速度の標準偏差が走行判定値以下、かつ、所定時間当たりの歩数が歩行判定歩数以上のときに、人体9の行動態様が歩行シーンであると判定する。走行判定値としては、例えば0.6(G)を用いることができる。また、所定時間当たりの歩数としては、例えば12秒間当たりの歩数を用いることができ、歩行判定歩数としては、例えば16(歩)を用いることができる。すなわち、例えば、算出された加速度の標準偏差が0.6以上、かつ、算出された12秒間当たりの歩数が16以上のときに、人体9の行動態様が歩行シーンであると判定される。
【0034】
図4は、加速度センサ11による加速度の検出結果から得られる加速度の標準偏差と所定時間当たりの歩数との関係を示す散布図である。図4の散布図の横軸は加速度の標準偏差に対応するとともに、図4の散布図の縦軸は12秒間当たりの歩数であるピッチに対応している。また、図4中において、「・」は、計測対象者が歩行しているときに得られたデータを示すとともに、「×」は、計測対象者が走っているときに得られたデータを示している。
【0035】
図4に示すように、計測対象者が歩行しているときに得られた加速度の標準偏差とピッチとの対応を示すデータと、計測対象者が走っているときに得られた加速度の標準偏差とピッチとの対応を示すデータはグループ分けすることが可能である。すなわち、計測対象者が歩行しているときに得られたデータ、計測対象者が歩行しているときに得られたデータとは離れている。このため、加速度の標準偏差と所定の判定値との比較結果に基づいて、人体9の行動態様が歩行シーンであることを判定することができる。また、加速度の標準偏差が走行判定値以下であっても、所定時間当たりの歩数が歩行判定歩数未満であれば、計測対象者は歩かずに腕91を振っているものと推測される。このため、所定時間当たりの歩数と所定の判定歩数との比較結果に基づいて、人体9の行動態様が歩行シーンであることを適切に判定することができる。
【0036】
行動態様が歩行シーンであるとステップS4において判定されたときは、ステップS5で、活動量算出部23が、演算式Aを用いて、加速度センサ11による加速度の検出結果から得られた加速度の標準偏差と所定時間当たりの歩数に基づいて活動量を算出する。
【0037】
図5は、活動量計1が腰92に装着されたときに計測された活動強度と、活動量計1が腕91に装着されたときの加速度の検出結果から得られる所定時間当たりの歩数との関係を示す散布図である。図5の散布図の横軸は活動量計1が腰92に装着されたときに計測された活動強度SW(単位:METs)に対応するとともに、図5の散布図の縦軸は12秒間当たりの歩数であるピッチに対応している。
【0038】
図5に示すように、活動量計1が腰92に装着されたときに計測される活動強度SWと、活動量計1が腕91に装着されたときに算出されるピッチとは、正の相関がある。活動強度SWと活動量計1が腕91に装着されたときに算出されるピッチとの相関は、活動強度SWと活動量計1が腕91に装着されたときに算出される加速度の標準偏差との相関に比べて強い。
【0039】
従って、ステップS5では、活動量算出部23は、活動量を算出するときの所定時間当たりの歩数の重みを大きくしている。すなわち、例えば、所定時間当たりの歩数を演算式Aにおける主パラメータとし、加速度の標準偏差を演算式Aにおける補助パラメータとして、活動量算出部23が演算式Aを演算することによって、歩行シーンに応じた活動量が算出される。このように加速度の標準偏差と所定時間当たりの歩数とに基づいて活動量が算出されることにより、活動量計1が腕91に装着されたときに計測される活動量と、活動量計1が腰92に装着されたときに計測される活動量との誤差を小さくすることができる。
【0040】
図6は、計測対象者が歩いているときにおいて、本発明の活動量計1が腕91に装着されたときに計測された活動強度と、活動量計1が腰92に装着されたときに計測された活動強度との関係を示す散布図である。図6の散布図の横軸は活動量計1が腕91に装着されたときに計測された活動強度SA(単位:METs)に対応するとともに、図6の散布図の縦軸は活動量計1が腰92に装着されたときに計測された活動強度SA(単位:METs)に対応している。活動強度SAは、演算式Aを用いて算出された活動量に基づくものである。また、図6中における直線L1は、図6のデータの線形近似線を示している。
【0041】
図6に示すように、活動量計1が腕91に装着されたときに計測される活動強度SWと、活動量計1が腰92に装着されたときに計測される活動強度SAとは、強い正の相関がある。活動強度SAの算出に用いられる演算式Aは、腕91に活動量計1が装着されたときに歩行シーンに対応する演算式である。従って、演算式活動量計1が腕91に装着されたときに算出される活動量と、活動量計1が腰92に装着されたときに算出される活動量との差が小さい。
【0042】
一方、行動態様が歩行シーンであるとステップS4において判定されなかったときには、ステップS6で、活動量算出部23は、計測対象者の行動態様が走行シーンであるか否かを判定する。行動態様が走行シーンであるか否かの判定は、ステップS2において算出された所定時間当たりの歩数と所定の走行判定歩数との比較結果、および、ステップS3において算出された加速度の標準偏差と所定の走行判定値との比較結果に基づいて行われる。例えば、活動量算出部23は、加速度の標準偏差が走行判定値以上、かつ、所定時間当たりの歩数が走行判定歩数以上のときに、人体9の行動態様が走行シーンであると判定する。走行判定値は、上述のごとく、例えば0.6(G)を用いることができる。また、所定時間当たりの歩数としては、例えば12秒間当たりの歩数を用いることができる。歩行判定歩数は、走行判定歩数以上の値であって、例えば28(歩)を用いることができる。すなわち、例えば、算出された加速度の標準偏差が0.6以上、かつ、算出された12秒間当たりの歩数が28以上のときに、人体9の行動態様が走行シーンであると判定される。
【0043】
上述のごとく、図4に示すように、計測対象者が歩行しているときに得られたデータ、計測対象者が歩行しているときに得られたデータとは離れている。このため、加速度の標準偏差と所定の判定値との比較結果に基づいて、人体9の行動態様が走行シーンであることを判定することができる。また、加速度の標準偏差が走行判定値以上であっても、所定時間当たりの歩数が走行判定歩数未満であれば、計測対象者は歩かずに腕91を激しく振っているものと推測される。このため、所定時間当たりの歩数と所定の判定歩数との比較結果に基づいて、人体9の行動態様が走行シーンであることを適切に判定することができる。
【0044】
行動態様が走行シーンであるとステップS6において判定されたときは、ステップS7で、活動量算出部23は、演算式Bを用いて、加速度センサ11による加速度の検出結果から得られた加速度の標準偏差と所定時間当たりの歩数に基づいて活動量を算出する。
【0045】
計測対象者が走るときにおいては、活動量計1が腰92に装着されたときに計測された活動強度と、活動量計1が腕91に装着されたときの加速度の検出結果から得られる所定時間当たりの歩数との相関は低い。さらに、計測対象者が走るときにおいては、活動量計1が腰92に装着されたときに計測された活動強度と、活動量計1が腕91に装着されたときの加速度の検出結果から得られる加速度の標準偏差との相関も比較的低い。
【0046】
従って、ステップS7では、活動量算出部23は、活動量を算出するときの加速度の標準偏差の重みを大きくしている。すなわち、例えば、加速度の標準偏差を演算式Bにおける主パラメータとし、所定時間当たりの歩数を演算式Bにおける補助パラメータとして、活動量算出部23が演算式Bを演算することによって、走行シーンに応じた活動量が算出される。加速度センサ11による加速度の検出結果から得られる加速度の標準偏差と所定時間当たりの歩数の双方に基づいて、走行シーンにおける活動量を精度良く算出することができる。
【0047】
図7は、計測対象者が走っているときにおいて、本発明の活動量計1が腕91に装着されたときに計測された活動強度と、活動量計1が腰92に装着されたときに計測された活動強度との関係を示す散布図である。図7の散布図の横軸は活動量計1が腕91に装着されたときに計測された活動強度SA(単位:METs)に対応するとともに、図7の散布図の縦軸は活動量計1が腰92に装着されたときに計測された活動強度SW(単位:METs)に対応している。活動強度SAは、演算式Aを用いて算出された活動量に基づくものである。また、図7中における直線L2は、図7のデータの線形近似線を示している。
【0048】
図7に示すように、活動量計1が腕91に装着されたときに計測される活動強度SWと、活動量計1が腰92に装着されたときに計測される活動強度SAとは、正の相関がある。従って、図7から、活動量計1が腕91に装着されたときに算出される活動量と、活動量計1が腰92に装着されたときに算出される活動量との差が小さいことが判る。
【0049】
換言すれば、ステップS5においては、ステップS7に比べて、活動量の算出において、所定時間当たりの歩数を重視する度合いが大きい。活動量計1が腕91に装着されたときの加速度の検出結果から得られる所定時間当たりの歩数と活動強度との相関が非常に高いため、所定時間当たりの歩数を重視する度合いが大きいことにより、歩行シーンにおける活動量をより精度良く算出することができる。
【0050】
一方、行動態様が走行シーンでないとステップS6において判定されたときは、行動態様が非歩行シーンであると判定して、ステップS8で、活動量算出部23が、非歩行シーンにおける活動量を算出する。すなわち、人体9の行動態様が歩行シーンでも走行シーンでもないと判定されるときに、人体9の行動態様が走行シーンであると判定される。ステップS8では、活動量算出部23は、演算式Cを用いて、加速度センサ11による加速度の検出結果から得られた加速度の標準偏差に基づいて活動量を算出する。
【0051】
人体9の行動態様が、歩行シーンでも走行シーンでもないと判定されたときに非歩行シーンであると判定される本実施形態においては、換言すれば、非歩行シーンであるか否かの判定が、加速度の標準偏差と所定時間当たりの歩数とに基づいて行われている。すなわち、加速度の標準偏差が走行判定値以下、かつ、所定時間当たりの歩数が歩行判定歩数未満のとき、および同標準偏差が走行判定値以上、かつ、同歩数が走行判定歩数未満のときに、人体9の行動態様が非歩行シーンであると判定される。
【0052】
非歩行シーンは、歩行シーンとも走行シーンとも異なる行動シーンであって、例えば、体幹である腰92は動かさずに腕91だけを動かすシーンや、腰92及び腕91の双方を動かさないシーンである。このようなシーンにおいては、加速度センサ11による加速度の検出結果から得られる所定時間当たりの歩数に基づかずとも、加速度の標準偏差に基づくことにより、活動量を精度良く算出することができる。さらに、ステップS8においては、算出される活動量の上限値が設定され、活動量算出部23は、設定された上限値を超えない範囲で活動量を算出する。すなわち、体幹である腰92は動かさずに腕91だけを動かすシーンにおける活動量は、歩行シーンや走行シーンにおける活動量に比べて小さい。このため、活動量の上限値が設定されることにより、非歩行シーンにおける活動量の算出精度低下を抑制することができる。
【0053】
ステップS5,S7,S8のうちいずれかのステップを経て活動量が算出されると、表示装置13が算出された活動量を表示する(ステップS9)。また、メモリ14が、算出された活動量を記憶する(ステップS10)。
【0054】
本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)活動量計は、加速度センサによる加速度の検出結果から得られる加速度の標準偏差と所定時間当たりの歩数とに基づいて人体の行動態様を判定するとともに、判定した行動態様に応じて人体の活動量を計測する。よって、活動量計は、加速度の標準偏差と所定時間当たりの歩数とに基づいて行動態様を判定するため、加速度の標準偏差及び所定時間当たりの歩数の一方のみに基づいて行動態様が判定される場合に比べて、行動態様をより適切に判定することが可能となる。従って、活動量の計測対象者の行動態様に応じて、活動量を精度良く推定することができる。その結果、人体9の体幹を除く部位である腕91に活動量計1が装着された場合であっても、活動量を精度良く計測することができる。
【0055】
(2)活動量計1は、加速度の標準偏差が走行判定値以下、かつ、所定時間当たりの歩数が歩行判定歩数以上のときに、人体9の行動態様が歩行シーンであると判定する。このため、歩行シーンであると判定したときに歩行シーンに応じた最適な活動量の計測を行うことにより、歩行シーンにおける活動量を精度良く推定することができる。
【0056】
(3)活動量計1は、人体9の行動態様が歩行シーンであると判定したときに、加速度の検出結果から得られた加速度の標準偏差と所定時間当たりの歩数とに基づいて活動量を算出する。このため、加速度の標準偏差および所定時間当たりの歩数のいずれか一方に基づいて活動量を算出する場合に比べて、活動量を精度良く推定することができる。
【0057】
(4)活動量計1は、加速度の標準偏差が走行判定値以上、かつ、所定時間当たりの歩数が走行判定歩数以上のときに、人体9の行動態様が走行シーンであると判定する。このため、走行シーンであると判定したときに走行シーンに応じた最適な活動量の計測を行うことにより、走行シーンにおける活動量を精度良く推定することができる。
【0058】
(5)活動量計1は、人体9の行動態様が走行シーンであると判定したときに、加速度の検出結果から得られた加速度の標準偏差と所定時間当たりの歩数とに基づいて活動量を算出する。このため、加速度の標準偏差および所定時間当たりの歩数のいずれか一方に基づいて活動量を算出する場合に比べて、活動量を精度良く推定することができる。
【0059】
(6)活動量計1は、人体9の行動態様が歩行シーンであると判定したときには、行動態様が走行シーンであると判定したときに比べて、活動量を算出するときの所定時間当たりの歩数の重みを大きくする。活動量の計測対象者が歩行する場合には、活動量と所定時間当たりの歩数との相関が高いことが確認されている。従って、歩行シーンの活動量の算出において、加速度の検出結果から得られた所定時間当たりの歩数の重みが大きいため、歩行シーンにおける活動量をより精度良く推定することができる。
【0060】
(7)活動量計1は、人体9の行動態様が走行シーンであると判定したときには、行動態様が歩行シーンであると判定したときに比べて、活動量の算出するときの加速度の標準偏差の重みを大きくする。活動量の計測対象者が走る、即ち走行する場合には、歩行する場合に比べて、活動量と所定時間当たりの歩数との相関が低くなることが確認されている。従って、走行シーンの活動量の算出において、加速度の検出結果から得られた加速度の標準偏差の重みを大きくして、走行シーンにおける活動量を加速度の標準偏差と所定時間当たりの歩数の双方に基づいてより精度良く推定することができる。
【0061】
(8)活動量計1は、人体9の行動態様が歩行シーンでないと判定され、かつ、人体9の行動態様が走行シーンでないと判定されたときに、人体9の行動態様が非歩行シーンであると判定する。このため、非歩行シーンであると判定したときに非歩行シーンに応じた最適な活動量の計測を行うことにより、非歩行シーンにおける活動量を精度良く推定することができる。
【0062】
(9)活動量計1は、人体9の行動態様が非歩行シーンであると判定したときに、加速度の検出結果から得られた加速度の標準偏差に基づいて活動量を算出する。従って、非歩行シーンにおいては所定時間当たりの歩数が活動量の算出に影響しないため、非歩行シーンにおける活動量の算出を簡素化することができ、かつ、活動量を精度良く推定することができる。
【0063】
(10)活動量計1が、非歩行シーンであると判定したときには、活動量の上限値を設定する。活動量計1が腕91に装着された場合には、活動量の計測対象者が歩行および走行していない場合であっても、腕91を振ることによって大きな加速度が検出されうる。しかしながら、腕91を振るだけの行動は体幹を動かす行動ではないため活動量は大きくない。従って、非歩行シーンの活動量の算出において、活動量の上限値が設定されることにより、同上限値を超えない範囲で活動量が算出されるため、非歩行シーンにおいて活動量をより精度良く推定することができる。
【0064】
(その他の実施形態)
なお、本発明の実施態様は上記各実施形態に限られるものではなく、例えば以下に示すように変更することもできる。また以下の変形例は、上記各実施形態についてのみ適用されるものではなく、異なる変形例同士を互いに組み合わせて実施することもできる。
【0065】
・活動量計1が、行動態様毎に活動量が導かれるマップ(写像)を有し、判定した行動態様に応じて、マップを使い分ける構成であってもよい。すなわち、演算式に代えてマップを用いて活動量が算出される構成であってもよい。
【0066】
・加速度の標準偏差と所定時間当たりの歩数とに基づいて行動態様が判定されるのであれば、図3に示す動作の流れは適宜変更してもよい。例えば、歩行シーンおよび走行シーンであるか否かを判定する前に、活動量算出部23が、計測対象者の行動態様が非歩行シーンであるか否かを判定してもよい。また、歩行シーンであるか否かを判定する前に、走行シーンであるか否かを判定してもよい。
【0067】
・加速度の標準偏差と比較される走行判定値、所定時間当たりの歩数と比較される歩行判定歩数および走行判定歩数は、上記実施形態に記載の数値に限定されない。すなわち、走行判定値、歩行判定歩数、および走行判定歩数を適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…活動量計、9…人体、11…加速度センサ、91…腕、92…腰(体幹)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速度センサによる加速度の検出結果に基づいて人体の活動量を計測する活動量計において、
前記加速度の検出結果から得られる加速度の標準偏差と所定時間当たりの歩数とに基づいて前記人体の行動態様を判定するとともに、判定した前記行動態様に応じて前記活動量を計測する
ことを特徴とする活動量計。
【請求項2】
請求項1に記載の活動量計において、
加速度の標準偏差が走行判定値以下、かつ、所定時間当たりの歩数が歩行判定歩数以上のときに、前記行動態様が歩行シーンであると判定する
ことを特徴とする活動量計。
【請求項3】
請求項2に記載の活動量計において、
前記行動態様が歩行シーンであると判定したときに、前記加速度の検出結果から得られた加速度の標準偏差と所定時間当たりの歩数とに基づいて前記活動量を算出する
ことを特徴とする活動量計。
【請求項4】
請求項2または3に記載の活動量計において、
加速度の標準偏差が前記走行判定値以上、かつ、所定時間当たりの歩数が走行判定歩数以上のときに、前記行動態様が走行シーンであると判定する
ことを特徴とする活動量計。
【請求項5】
請求項4に記載の活動量計において、
前記行動態様が走行シーンであると判定したときに、前記加速度の検出結果から得られた加速度の標準偏差と所定時間当たりの歩数とに基づいて前記活動量を算出する
ことを特徴とする活動量計。
【請求項6】
請求項5に記載の活動量計において、
前記行動態様が歩行シーンであると判定したときには、前記行動態様が走行シーンであると判定したときに比べて、前記活動量を算出するときの前記所定時間当たりの歩数の重みを大きくする
ことを特徴とする活動量計。
【請求項7】
請求項5または6に記載の活動量計において、
前記行動態様が走行シーンであると判定したときには、前記行動態様が歩行シーンであると判定したときに比べて、前記活動量を算出するときの前記加速度の標準偏差の重みを大きくする
ことを特徴とする活動量計。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれか一項に記載の活動量計において、
前記行動態様が歩行シーンでないと判定され、かつ、前記行動態様が走行シーンでないと判定されたときに、前記行動態様が非歩行シーンであると判定する
ことを特徴とする活動量計。
【請求項9】
請求項8に記載の活動量計において、
前記行動態様が非歩行シーンであると判定したときに、前記加速度の検出結果から得られた加速度の標準偏差に基づいて前記活動量を算出する
ことを特徴とする活動量計。
【請求項10】
請求項8または9に記載の活動量計において、
前記行動態様が非歩行シーンであると判定したときには、前記活動量の上限値を設定する
ことを特徴とする活動量計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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