活性アルデヒドおよびケトンを放出できるジビニルエーテル誘導体および芳香表面への使用方法
本発明は、少なくとも1つの活性アルデヒドおよび/またはケトンを周囲環境へと制御して放出できるジビニルエーテル誘導体を提供する。本発明は、これらのジビニルエーテル誘導体の芳香成分またはフレーバー成分としての使用、並びにそれらを含有する芳香組成物および消費者物品にも関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、少なくとも1つの活性アルデヒドおよび/またはケトンを周囲環境へと制御して放出できるジビニルエーテル誘導体を提供する。本発明は、これらのジビニルエーテル誘導体の芳香成分またはフレーバー成分としての使用、並びにそれらを含有する芳香組成物および消費者物品にも関する。
【0002】
先行技術
我々の知る限り、先行技術において、以下に記載される式(I)の化合物のいずれも香料分野において有用であるとは知られておらず、且つ、特に特定の適用条件下で活性アルデヒドおよび/またはケトンを遊離することができるとは知られていない。
【0003】
多くの香料活性化合物は高揮発性であり、従って、限定された期間にわたって感知されるだけである。従って、特に香料およびフレーバーの分野において、活性揮発性分子の制御された放出を可能にする新規の効果的な前駆体を見出すために広範な研究が行われている。先行技術は、活性分子、例えば芳香剤の効果を長引かせるか、または強化できる、多くのかかる前駆体を開示している。それにもかかわらず、先行技術文献のいずれも、本発明においてアルデヒドおよび/またはケトンを制御して放出するための前駆体として使用され、様々な表面上へのそれらの適用に際して後者の芳香効果を長引かせる、ジビニルエーテルを開示していない。
【0004】
US7175871号は、いくつかのエノールエーテル、芳香成分としてのそれらの使用、並びに芳香組成物およびそれらを含む芳香および着香物品を開示する。かかる組成物および物品、並びに芳香表面のためのそれらの使用は、従ってここでは特許請求されていない。それにもかかわらず、本文献は香料中でのかかる化合物の使用のみを取り扱い、且つ、開示された化合物のいずれか、またはそれらの類似物が活性アルデヒドおよび/またはケトンを制御して放出する能力に関しては全く記載されていない。実際に、この先行技術文献は明らかに、開示された化合物を、揮発性化合物を放出するために使用できないことを、該化合物が「持続可能な熱、光、および塩基安定性」を有することを、第二段落21〜24行目に明らかに述べることによって示唆しており、それは、それらが活性アルデヒドおよび/またはケトンを放出するために必要とされるような化学的な劣化を受けにくいことを意味している。
【0005】
他の先行技術は、本発明において使用される化合物と構造的に関連している多数の化合物を開示している。それにもかかわらず、それらの先行技術の開示は本発明の課題、即ち以下に記載される式(I)の化合物の臭気性アルデヒドおよび/またはケトンの前駆体としての使用に全く関係していない。例えば、R.A.Aitken, P.K.G.Hodgson, J.J.MorrisonおよびA.O.Oyewale, Flash vacuum pyrolysis over magnesium; Part 1: Pyrolysis of benzylic, other aryl/alkyl and aliphatic halides, J.Chem.Soc,Perkin Trans.1,2002,402〜415は、種々の化合物、中でもジヘキシ−1−エニルエーテル(スキーム18、化合物番号63参照)の製造方法を開示している。US3256344号はジ(1,2−オレフィン性不飽和脂肪族)エーテルおよび特にジ(アルカジエニル)エーテルの製造方法を開示している。US5767325号およびUS4891451号は、エノールエーテルおよび相応する生成物の製造方法を記載している。それらの文献のいずれも、本発明において使用される化合物の香料中での使用も、少なくとも1つの活性アルデヒドおよび/またはケトン、より特定には芳香性のものを放出するそれらの能力も開示または示唆していない。
【0006】
発明の説明
驚くべきことに、我々は今回、以下に記載されるジビニルエーテル誘導体が、用途内で、少なくとも1つの活性アルデヒドおよび/またはケトンを効果的に放出できることを見出した。従って、本発明において使用される化合物は、用途内でのかかるアルデヒドおよび/またはケトンの長期的な持続性を、これらの活性な揮発性化合物の制御された放出系を提供することによって増加させる。さらには、本発明において使用されるジビニルエーテルは、放出されるべき相応するアルデヒドおよび/またはケトンを、用途内でより安定にすることも可能にする。
【0007】
用語「活性」は、ここでは、それが関連するアルデヒドまたはケトンが、その周囲環境内に、利点または効果、特に芳香、フレーバー、マスキング、昆虫忌避または昆虫誘引、殺菌、殺虫、殺真菌、および/または悪臭中和の効果をもたらすことができることを意味する。従って、例えば前記「活性アルデヒドおよび/またはケトン」は、それを芳香またはフレーバー成分として、昆虫忌避剤または昆虫誘引剤として、殺虫剤、殺菌剤、または殺真菌剤として、または悪臭中和剤として有用にする少なくとも1つの特性を有している。好ましい活性アルデヒドおよびケトンは、芳香成分またはフレーバー成分、昆虫忌避剤または昆虫誘引剤、または悪臭中和剤である。特に好ましい活性アルデヒドおよびケトンは、芳香成分またはフレーバー成分、あるいはさらに悪臭中和剤である。
【0008】
用語「悪臭中和剤」または「悪臭中和成分」は、ここで、悪臭、即ち、人間の鼻に対して不快であるか攻撃的である臭気の感知を、悪臭を中和および/またはマスキングすることによって低減できる化合物を意味する。特定の実施態様において、それらの化合物は公知の悪臭を引き起こすキー成分と反応する能力を有する。該反応は、悪臭材料が空気によって運ばれる水準の低減をもたらし、その結果、悪臭の感知の低減をもたらす。
【0009】
上記および下記に述べられる本発明の全ての実施態様によれば、化合物(I)は、下記に定義される通り、活性アルデヒドまたはケトンが芳香成分、即ち、芳香性アルデヒドである場合に、特に有用である。「芳香性アルデヒド」とは、香料産業において現在使用されている化合物であり、即ち、表面に適用された際に快い効果を付与するために芳香調製物または組成物中で活性成分として使用される化合物である。言い換えれば、芳香性のものであるとしてみなされる、かかるアルデヒドまたはケトンは、香料産業の分野の当業者によって、良い方向に、もしくは心地良いように、組成物の臭気または物品または表面の臭気を付与または修正されることができ、且つ、単に臭気を有するだけではないと認識されなければならない。さらには、この定義は、臭気を有している必要はないが、しかし芳香組成物、着香物品または表面の臭気を変調し、結果としてかかる組成物、物品または表面の臭気のユーザーによる感知を修正できる化合物を含むことも意味する。
【0010】
本発明は、活性アルデヒドまたはケトンの正確な特性とは無関係に、正確に同じ方式で行われる。従って、これによって、本発明を以下でさらに、「芳香性アルデヒドおよび/またはケトン」について特定の言及をして説明する場合でも、以下の実施態様を他の活性アルデヒドおよび/またはケトンにも適用可能であることが理解される(即ち、「芳香性」の表現を、例えば「フレーバー性」、「昆虫誘引性」、「昆虫忌避性」、「マスキング性」、「殺真菌性」、「殺虫性」または「殺細菌性」で、または「悪臭中和性」で置き換えることができる)。
【0011】
本発明は以下の式:
【化1】
[式中、
R1およびR2は同一または異なり、且つ、それぞれ随意に酸素原子を含むC2〜C15−炭化水素基を表し、且つ、それぞれの基R3は水素原子またはメチル基を表す]
によって定義される化合物を、
・ 式
【化2】
[式中、
R1、R2およびR3は式(I)と同一の意味を有する]
の活性アルデヒド; および/または
・ 式
【化3】
[式中、
R1、R2およびR3は式(I)と同一の意味を有する]
の活性アルデヒドまたはケトン
から選択される少なくとも1つの活性アルデヒドおよび/またはケトンの制御された放出のために用いる使用に関する。
【0012】
基R1およびR2は、それらが香料において使用され得る任意のアルデヒドまたはケトンから本質的に誘導されるので、非常に一般的である。
【0013】
本発明の好ましい実施態様によれば、式(I)の化合物はR1とR2とが同一であり、且つ随意に酸素原子を含むC6〜C15−炭化水素基を表すものである。
【0014】
より好ましい実施態様によれば、R1とR2とは同一であり、且つ以下からなる群から選択される:
a) 随意に酸素原子を含むC6〜C15−、好ましくはC6〜C10−直鎖、分枝鎖、または環式アルキルまたはアルケニル基、さらにより好ましくは、随意に酸素原子を含むC6〜C10−直鎖または分枝鎖アルキルまたはアルケニル基;
b) 1つまたはそれより多くのフェニル基で置換され、且つ随意に酸素原子を含むC2〜C9−直鎖、分枝鎖または環式アルキルまたはアルケニル基、好ましくは、1つのフェニル基で置換され、且つ随意に酸素原子を含むC2〜C6−直鎖、分枝鎖、または環式アルキルまたはアルケニル基、より好ましくは1つのフェニル基で置換され、且つ随意に酸素原子を含むC2〜C4−直鎖、分枝鎖または環式アルキルまたはアルケニル基、さらにより好ましくは1つのフェニル基で置換されたC2〜C4−直鎖または分枝鎖アルキルまたはアルケニル基、且つ、最も好ましくは1つのフェニル基で置換されたC2〜C4−直鎖または分枝鎖アルキル基;
c) 随意に8個までの炭素原子で置換され、且つ随意に酸素含有基で置換されたベンジル基、好ましくは非置換のベンジル基;および
d) 随意に9個までの炭素原子で置換され、且つ随意に酸素含有基で置換されたフェニル基、好ましくは非置換のフェニル基。
【0015】
好ましい実施態様によれば、上記で定義されるR1およびR2基は、いかなる酸素原子も含有しない。
【0016】
より好ましい実施態様によれば、R1およびR2基は、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ベンジル基、1−フェニルエチル基、1−メチル−3−フェニルプロピル基、4−ヘプテニル基、1,3,3−トリメチルブチル基、7−ノネニル基、8−ノネニル基、4−tert−ブチルベンジル基、2−フェニルエチル基、フェニル基、4−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、2,2−ジメチルプロピル基、6−オクテニル基、7−オクテニル基および4−tert−ブチルフェニル基からなる群から選択される。
【0017】
他の好ましい実施態様によれば、R3基は水素原子を表す。
【0018】
式(I)の化合物の例として、1,1’−オキシビス−1−デセン、1,1’−オキシビス−1−オクテン、1,1’−オキシビス−1−ノネン、1,1’−オキシビス−1−ウンデセン、1,1’−オキシビス−1−ドデセン、1,1’−オキシビス(2−メチル−1−デセン)、1,1’−オキシビス(2−メチル−1−ウンデセン)、1,1’−[オキシビス(1−プロペン−1,3−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−[オキシビス(1−ブテン−1,3−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−[オキシビス(2−メチル−1−ブテン−1,4−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−[オキシビス(3−メチル−1−ペンテン−1,5−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−オキシビス(1,6−ノナジエン)、1,1’−オキシビス(3,5,5−トリメチル−1−ヘキセン)、1,1’−オキシビス(1,9−ウンデセン)、1,1’−オキシビス(1,10−ウンデセン)および1,1’−[オキシビス(1−プロペン−1,3−ジイル)]ビス(4−tert−ブチルベンゼン)を挙げることができる。
【0019】
より特定には、1,1’−オキシビス−1−デセン、1,1’−オキシビス−1−ノネン、1,1’−オキシビス−1−ウンデセン、1,1’−オキシビス(2−メチル−1−デセン)、1,1’−[オキシビス(1−プロペン−1,3−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−[オキシビス(1−ブテン−1,3−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−[オキシビス(3−メチル−1−ペンテン−1,5−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−オキシビス(1,9−ウンデセン)、1,1’−オキシビス(1,10−ウンデセン)および1,1’−[オキシビス(1−プロペン−1,3−ジイル)]ビス(4−tert−ブチルベンゼン)が、本発明によって有利に使用される。
【0020】
1,1’−[オキシビス(1−プロペン−1,3−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−[オキシビス(1−ブテン−1,3−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−[オキシビス(3−メチル−1−ペンテン−1,5−ジイル)]ジベンゼンおよび1,1’−オキシビス(1,9−ウンデセン)が、本発明によってさらにより有利に使用される。
【0021】
実施態様のいずれかによれば、式(I)の化合物は有利には、ソフトウェアEPIwin v.3.10(2000、アメリカ合衆国環境保護庁で入手可能)を使用した計算によって得られる通り、0.01Pa未満の蒸気圧によって特徴付けられる。好ましい実施態様によれば、前記の蒸気圧は、0.001Pa未満である。
【0022】
上述の通り、化合物(I)は少なくとも1つの活性アルデヒドまたはケトンを放出できる。本発明の特定の実施態様によれば、前記の活性アルデヒドまたはケトンは有利には、ソフトウェアEPIwin v.3.10(2000、アメリカ合衆国環境保護庁で入手可能)を使用した計算によって得られる通り、2.0Paを上回る蒸気圧によって特徴付けられる。別の実施態様によれば、前記の蒸気圧は、5.0Paを上回るか、または7.0Paさえも上回る。
【0023】
さらにより好ましい実施態様において、前記の式(II)または(III)の活性アルデヒドは、式RCHOのアルデヒド、前記Rは直鎖またはα−分枝鎖のC6〜C12のアルキル基である、3−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−2−メチルプロパナール、4−デセナール、8−デセナール、9−デセナール、3−(6,6−ジメチル−ビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−エン−2−イル)プロパナール、2,4−ジメチル−3−シクロヘキセン−1−カルバルデヒド (Triplal(登録商標)、製造元: International Flavors & Fragrances、ニューヨーク、米国)、3.5−ジメチル−3−シクロヘキセン−1−カルバルデヒド、5,9−ジメチル−4,8−デカジエナール、2.6−ジメチル−5−ヘプテナール (メロナール)、3.7−ジメチルオクタナール、3,7−ジメチル−6−オクテナール (シトロネラール)、(3,7−ジメチル−6−オクテニル)アセトアルデヒド、3−ドデセナール、4−ドデセナール、4−ヘプテナール、7−ヒドロキシ−3,7−ジメチルオクタナール (ヒドロキシシトロネラール)、4−および3−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)−3−シクロヘキセン−1−カルバルデヒド (Lyral(登録商標)、製造元: International Flavors and Fragrances、ニューヨーク、米国)、3−(4−イソプロピルフェニル)−2−メチルプロパナール、2−(4−イソプロピルフェニル)プロパナール、(4R)−1−p−メンテン−9−カルバルデヒド (Liminal(登録商標)、製造元: Firmenich SA、ジュネーブ、スイス)、6−メトキシ−2.6−ジメチルヘプタナール (メトキシメロナール)、8(9)−メトキシ−トリシクロ[5.2.1.0.(2,6)]デカン−3(4)−カルバルデヒド (Scentenal(登録商標)、製造元: Firmenich SA、ジュネーブ、スイス)、2−(4−メチレンシクロヘキシル)プロパナール、4−(4−メチル−3−ペンテニル)−3−シクロヘキセン−1−カルバルデヒド (Acropal (登録商標)、製造元: Givaudan−Roure SA.、ヴェルニエ、スイス)、(4−メチルフェノキシ)アセトアルデヒド、(4−メチルフェニル)アセトアルデヒド、3−メチル−5−フェニルペンタナール、6−ノネナール、8−ノネナール、フェノキシアセトアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、3−フェニルブタナール (Trifernar(登録商標)、製造元: Firmenich SA、ジュネーブ、スイス)、3−フェニルプロパナール、2−フェニルプロパナール (ヒドラトロプアルデヒド)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパナール (Lilial(登録商標)、製造元: Givaudan−Roure SA、ヴェルニエ、スイス)、3−(4−tert−ブチルフェニル)プロパナール (Bourgeonal(登録商標)、製造元: Quest International、ナールデン、オランダ)、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン−4−カルバルデヒド、エキソ−トリシクロ[5.2.1.0(2.6)]デカン−8−エキソ−カルバルデヒド (Vertral(登録商標)、製造元: Symrise、ホルツミンデン、ドイツ)、2,6,6−トリメチル−ビシクロ[3.1.1]ヘプテン−3−カルバルデヒド (ホルミルピナン)、2.4.6−および3.5.6−トリメチル−3−シクロヘキセン−1−カルバルデヒド、2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−アセトアルデヒド (カンフォレニックアルデヒド)、2,5,6−トリメチル−4−ヘプテナール、3.5.5−トリメチルヘキサナール、2,6,10−トリメチル−9−ウンデセナール、10−ウンデセナールまたは9−ウンデセナールおよびそれらの混合物、例えばイントレレベンアルデヒド(Intreleven aldehyde) (製造元: International Flavors & Fragrances、ニューヨーク、米国)の群から選択され、その際、下線を引かれた化合物は、本発明のさらにより好ましい実施態様において特に有用な芳香性アルデヒドを表す。
【0024】
それらの特定の化学構造のおかげで、化合物(I)は残基および少なくとも1つの活性アルデヒドおよび/またはケトンを放出できる。これは、酸化性の分解反応を介して起こることがあり、それは露光によって影響されると考えられているが、しかし、熱、pH変化、および/または他の種類のメカニズムによって引き起こされることもある。
【0025】
式(I)の化合物は、アルデヒドおよび/またはケトンの混合物を多様な数の炭素原子と共に放出することがある。特に、式(I)の化合物は、そこからジビニルエーテルが調製されるアルデヒドと同数の炭素原子を有するアルデヒド、および/または1つまたは2つの炭素原子を少なく(less)有するアルデヒドまたはケトンを放出することがある。これは式(I)の化合物が、随意に異なる長さのR1またはR2基と共に、式(II)のアルデヒドおよび/または式(III)のアルデヒドまたはケトンを放出することがあることを意味している。
【0026】
上述の通り、本発明は、芳香成分の制御された放出のための上述の式(I)の化合物の使用に関する。言い換えれば、それは、芳香性アルデヒドの制御された放出によって、芳香組成物の臭気特性、物品または表面の臭気特性を付与、強化、改善または修正する方法であって、前記の組成物または物品に、効果的な量の少なくとも化合物(I) (ただし、R1がC8モノアルケニル基であり且つR2がC4〜C10−アルキル基およびC9 8−アルケン−1−イル基からなる群から選択される式(I)の化合物は除外される)を添加することを含むか、または表面を前記の組成物または物品を用いて処理することを含む方法に関する。
【0027】
「化合物(I)の使用」とは、ここで、前記の化合物を含有し、且つ、特に香料産業において有利に用いることができる任意の組成物の使用とも理解される。
【0028】
実際に芳香成分として有利に用いることができる前記の組成物が本発明の対象でもある。
【0029】
従って、本発明の他の対象は、以下を含む芳香組成物である:
a) 上記で定義された式(I)の少なくとも1つの化合物 (ただし、R1がC8モノアルケニル基であり且つR2がC4〜C10−アルキル基およびC9 8−アルケン−1−イル基からなる群から選択される式(I)の化合物は除外される);
b) 香料担体および香料ベースからなる群から選択される少なくとも1つの成分;および
c) 随意に少なくとも1つの香料助剤。
【0030】
「香料担体」とは、ここで、香料の観点から実質的に中性である、即ち、芳香成分の官能特性を著しく変更しない材料を意味する。前記担体は液体であってよい。
【0031】
液体担体としては、限定されない例として、乳化系、即ち、溶剤および界面活性剤系、または香料において一般的に使用される溶剤を挙げることができる。香料において一般に使用される溶剤の性質および種類の詳細な説明は、網羅できない。しかしながら、限定されない例として、溶剤、例えばジプロピレングルコール、ジエチルフタレート、イソプロピルミリステート、安息香酸ベンジル、2−(2−エトキシエトキシ)−1−エタノールまたはクエン酸エチルを挙げることができ、それらが最も一般的に使用されている。
【0032】
一般に、「香料ベース」とはここで、単数または複数の化合物(I)に伴う少なくとも1つの芳香相互成分を含む組成物を意味する。
【0033】
前記の芳香相互成分は、化合物(I)ではない。さらには、「芳香相互成分」によって、ここで、快い効果を付与するために芳香調製物または組成物中で使用される化合物を意味する。言い換えれば、芳香性成分としてみなされるための、かかる相互成分は、当業者によって、それが適用された組成物、物品または表面の臭気を良い方向に、望み通りまたは心地よいように付与または修正できるものであって、単に匂いを有するものではないとして認識されなければならない。
【0034】
ベース中に存在する芳香相互成分の性質および種類は、ここでより詳細な説明を請け負わず、それはいずれにせよ網羅できず、当業者はその一般的な知識、意図される使用または用途および所望の官能効果に基づき、それらを選択できる。一般的な用語において、それらの芳香相互成分は、アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、アセテート、ニトリル、テルペン炭化水素、窒素を含むまたは硫黄を含む複素環式化合物および精油に及ぶ化学的分類に属しており、且つ、前記の芳香相互成分は天然または合成由来であってよい。これらの相互成分の多くはいずれにせよ、参考文献、例えばS.Arctanderによる本、Perfume and Flavor Chemicals、1969、Montclair、ニュージャージー、米国、またはそのより最近の版、または同様の性質の他の文献、並びに香料分野における豊富な特許文献に列記されている。前記の相互成分は、様々な種類の芳香化合物を制御して放出することが知られている化合物であってもよいとも理解される。
【0035】
一般に、「香料助剤」はここで、追加的な利益、例えば色、特定の耐光性、化学的安定性などを付与できる成分を意味する。香料ベース中で通常使用される助剤の性質および種類の詳細な記載は網羅されないが、しかし、かかる成分は当業者にはよく知られている。
【0036】
少なくとも1つの化合物(I) (ただし、R1がC8モノアルケニル基であり且つR2がC4〜C10−アルキル基およびC9 8−アルケン−1−イル基からなる群から選択される式(I)の化合物は除外される)と、少なくとも1つの香料担体とからなる組成物が、本発明の特別な実施態様を表す。本発明の他の実施態様は、さらに少なくとも1つの香料ベースおよび随意に少なくとも1つの香料助剤を含む、かかる芳香組成物である。
【0037】
ここで、2つまたはそれより多くの化合物(I)の混合物を含む上述の組成物の可能性が重要であることを述べることは有用である。なぜなら、それは調香師が、様々な化合物(I)の香調を有する調和物および香料を調製することを可能にし、従って芳香の多彩さのための新しい道具を創造するからである。さらには、化合物(I)を、芳香成分のための他の化学的または物理的放出系との混和物中で使用できる。例えば、それらを、好ましくは種々の性質のカプセル化された成分と、またはさらに、化学反応または光化学反応の結果として活性成分が放出される公知の放出系の多くと組み合わせることができる。かかる放出系の例は、例えばWO95/04809号、EP0971021号、WO03/049666号、EP0936211号、WO99/60990号、WO01/28980号、WO08/093272号、WO98/47477号、US2004/0102357号、DE3003494号およびWO95/08976号内に見出されるが、ただし、かかる混合物は最終的な消費者製品内に、表面上へのその適用条件下で組み込まれ、相応する活性芳香成分の放出を可能にする。
【0038】
さらには、化合物(I)、または化合物(I)を含む芳香組成物 (ただし、R1がC8モノアルケニル基であり且つR2がC4〜C10−アルキル基およびC9 8−アルケン−1−イル基からなる群から選択される式(I)の化合物は除外される)は、現代の香料の全ての分野、例えば精巧な香料または機能性香料において有利に使用できる有用な芳香成分である。実際に、化合物(I)およびそれらを含む香料を、芳香性アルデヒドまたはケトンのより制御された堆積および次の放出を達成するために、精巧な香料または機能性香料中で有利に用いることができる。
【0039】
例えば、良好な直接性、低揮発性、および発香性分子または臭気影響分子の放出を提供する能力のおかげで、化合物(I)を、上記で定義された発香性成分の迅速または引き延ばされた解放効果が必要とされる任意の用途に組み込むことができ、さらに、処理された表面に、例えば洗濯またはボディケア工程における処理周期を超えて、同様に表面の濯ぎおよび/または乾燥工程を超えて、充分に持続し得る芳香および新鮮さを付与できる。本発明の芳香成分のために適した適用表面は特に、テキスタイル、硬質表面、例えばガラス窓、台所および浴室の表面、毛髪および皮膚である。
【0040】
従って、
a) 上記で定義された式(I)の少なくとも1つの化合物、または上記で定義された本発明の芳香組成物;および
b) 消費者製品ベース
を含む物品、同様に、表面、例えば上述のものの処理のためのかかる組成物の使用も本発明の対象である。明確化のために、「消費者製品ベース」とは、ここで、芳香成分と適合性がある消費者製品を意味することを言及すべきである。言い換えれば、本発明による着香物品は、消費者製品、例えば毛髪またはボディケア製品、例えばシャンプーまたはシャワージェル、洗剤または空気清浄剤に相応する、機能性配合物、並びに随意の付加的な有益剤(benefit agent)を、嗅覚的に有効な量の少なくとも1種の本発明の化合物と共に含む。
【0041】
消費者製品の成分の性質および種類は、ここではより詳細な説明を請け負わず、いずれにせよそれは網羅できず、当業者はその一般的な知識に基づき、且つ前記の製品の性質および所望の効果によってそれらを選択できる。
【0042】
適した消費者製品ベースの例は、固体または液体の洗剤および布地用柔軟剤、強洗浄用洗剤(heavy duty cleaner)、並びに香料産業において一般的な他の物品、即ち香水、コロンまたはアフターシェーブローション、着香セッケン、シャワーまたはバスソルト、ムース、クリーム、オイルまたはジェル、衛生製品またはヘアケア製品、例えばシャンプー、ボディケア製品、消臭剤または制汗剤、空気清浄剤およびさらに化粧品を含む。洗剤としては、家庭用のために意図されているかまたは産業用途のために意図されているかにかかわらず、ここでは例えば、様々な表面を洗い上げ、清浄化するか処理するための洗剤組成物または洗浄製品等の用途を含むことが意図されており、例えばテキスタイル、皿または硬質表面用に意図されている。他の着香物品は、布地用清浄剤、アイロン水、ペーパー、ワイプまたは漂白剤である。
【0043】
上述の消費者製品ベースのいくつかは、化合物(I)に対して攻撃的な媒体を表すことがあり、従って、後者を例えばカプセル化によって時期尚早な分解から保護することが必要であることがある。
【0044】
好ましい着香物品は、香水、コロン、アフターシェーブローション、着香石鹸、シャワーまたはバスソルト、ムース、クリーム、オイルまたはジェル、衛生製品またはヘアケア製品、例えばシャンプーおよび他のヘアトリートメント製品、またはさらにボディケア製品、例えば消臭剤または制汗剤である。
【0045】
様々な上述の物品または組成物中に混合され得る化合物(I)の割合は、広範な値に及ぶ。これらの値は、それらが混合されるべき物品または製品の性質、および所望の嗅覚効果、並びに、化合物(I)が当該技術分野で通常使用される芳香相互成分、溶剤または添加剤と混合される場合には所定の組成物中での相互成分の性質に依存する。
【0046】
例えば、本発明の芳香組成物内での化合物(I)の典型的な濃度は、芳香組成物の質量に対して1質量%〜40質量%、好ましくは5質量%〜20質量%に含まれる広範な値で変化してよい。それらの化合物が上述の様々な消費者製品の着香において直接的に適用される場合には、それより低い濃度、例えば消費者製品の総質量に対して0.001質量%〜5質量%、より好ましくは0.3質量%〜2質量%、またはさらに0.5〜1質量%のオーダーを使用できる。
【0047】
本発明の他の対象は、表面の着香方法、または式(II)のアルデヒドおよび式(III)のアルデヒドまたはケトンから選択される少なくとも1つの発香性アルデヒドまたはケトンの特徴的な香気の表面上での拡散効果を増加または長引かせるための方法であって、前記の表面を、化合物(I)を用いて、または化合物(I)を含有する上記で定義された組成物または物品を用いて、上記で定義された通り、前記のアルデヒドおよび/またはケトンを放出させやすい条件下で処理することを特徴とする方法に関する。かかる処理のために適した表面は、特に、テキスタイル、硬質表面、毛髪および皮膚である。かかる処理方法の特定の実施態様によれば、化合物(I)またはそれらを含有する組成物または物品が特定の表面に適用される条件は、光の使用を必要とする。他の実施態様によれば、本発明は1,1’−オキシビス−1−デセン、1,1’−オキシビス−1−オクテン、1,1’−オキシビス−1−ノネン、1,1’−オキシビス−1−ウンデセン、1,1’−オキシビス(2−メチル−1−デセン)、1,1’−オキシビス(2−メチル−1−ウンデセン)、1,1’−[オキシビス(1−プロペン−1,3−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−[オキシビス(1−ブテン−1,3−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−[オキシビス(2−メチル−1−ブテン−1,4−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−[オキシビス(3−メチル−1−ペンテン−1,5−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−オキシビス(1,6−ノナジエン)、1,1’−オキシビス(3,5,5−トリメチル−1−ヘキセン)、1,1’−オキシビス(1,9−ウンデセン)、1,1’−オキシビス(1,10−ウンデセン)および1,1’−[オキシビス(1−プロペン−1,3−ジイル)]ビス(4−tert−ブチルベンゼン)からなる群から選択される化合物に関する。
【0048】
好ましくは、該化合物は、1,1’−オキシビス−1−デセン、1,1’−オキシビス−1−ノネン、1,1’−オキシビス−1−ウンデセン、1,1’−オキシビス(2−メチル−1−ウンデセン)、1,1’−[オキシビス(1−プロペン−1,3−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−[オキシビス(1−ブテン−1,3−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−[オキシビス(3−メチル−1−ペンテン−1,5−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−オキシビス(1,9−ウンデセン)、1,1’−オキシビス(1,10−ウンデセン)および1,1’−[オキシビス(1−プロペン−1,3−ジイル)]ビス(4−tert−ブチルベンゼン)からなる群から選択される。さらにより好ましくは、1,1’−[オキシビス(1−プロペン−1,3−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−[オキシビス(1−ブテン−1,3−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−[オキシビス(3−メチル−1−ペンテン−1,5−ジイル)]ジベンゼンおよび1,1’−オキシビス(1,9−ウンデセン)からなる群から選択される。
【0049】
化合物(I)を、US3256344号内に記載される一般的な方法によって調製できる。
【0050】
従って、以下の化合物が調製され、そして評価された。質量分析データ(EI、70eV)を主な同位体(一般にZ,E−異性体)についてのみ提供する。NMRスペクトルを、1Hについて400MHzで、および13Cについて100MHzで、溶剤としてCDCl3を使用して記録した。ケミカルシフトδは、標準としてのTMSについてのppmで示され、結合定数JはHzで表されている。
【0051】
1. デカナールから調製された1,1’−オキシビス−1−デセン
【0052】
2. オクタナールから調製された1,1’−オキシビス−1−オクテン
【0053】
3. ノナナールから調製された1,1’−オキシビス−1−ノネン
【0054】
4. ウンデカナールから調製された1,1’−オキシビス−1−ウンデセン
【0055】
5. ドデカナールから調製された1,1’−オキシビス−1−ドデセン
【0056】
6. 2−メチルデカナールから調製された1,1’−オキシビス(2−メチル−1−デセン)
【0057】
7. 2−メチルウンデカナールから調製された1,1’−オキシビス(2−メチル−1−ウンデセン)
【0058】
8. 3−フェニルプロパナールから調製された1,1’−[オキシビス(1−プロペン−1,3−ジイル)]ジベンゼン
【0059】
9. 3−フェニルブタナールから調製された1,1’−[オキシビス(3−メチル−1−プロペン−1,3−ジイル)]ジベンゼン
【0060】
10. 2−メチル−4−フェニルブタナールから調製された1,1’−[オキシビス(2−メチル−1−ブテン−1,4−ジイル)]ジベンゼン
【0061】
11. 3−メチル−5−フェニルペンタナールから調製された1,1’−[オキシビス(3−メチル−1−ペンテン−1,5−ジイル)]ジベンゼン
【0062】
12. 6(E)−ノネナールから調製された1,1’−オキシビス(1,6−ノナジエン)
【0063】
13. 3,5,5−トリメチルヘキサナールから調製された1,1’−オキシビス(3,5,5−トリメチル−1−ヘキセン)
【0064】
14. 9−ウンデセナールから調製された1,1’−オキシビス(1,9−ウンデセン)
【0065】
15. 3−(4−tert−ブチルフェニル)プロパナールから調製された1,1’−[オキシビス(1−プロペン−1,3−ジイル)]ビス(4−tert−ブチルベンゼン)
【0066】
16. 10−ウンデセナールから調製された1,1’−オキシビス(1,10−ウンデセン)
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】香料放出に対する光の効果を示す図である。
【図2】香料放出に対する光の効果を示す図である。
【図3】乾いた毛髪上でのシャンプーからのアルデヒド放出を示す図である。
【図4】乾いた毛髪上でのシャンプーからのアルデヒド放出を示す図である。
【図5】乾いた毛髪上での濯ぎ落としコンディショナーからのアルデヒドC10放出を示す図である。
【図6】ジビニルエーテルの酸化性分解を示す図である。
【図7】試験されたジビニルエーテルから得られたイオンクロマトグラムを示す図である。
【図8】試験されたジビニルエーテルから得られたイオンクロマトグラムを示す図である。
【図9】試験されたジビニルエーテルから得られたイオンクロマトグラムを示す図である。
【図10】試験されたジビニルエーテルから得られたイオンクロマトグラムを示す図である。
【図11】試験されたジビニルエーテルから得られたイオンクロマトグラムを示す図である。
【0068】
実施例
本発明は、ここで、以下の実施例を用いてさらに詳細に説明され、その際、省略形は、当該技術分野で通常の意味を有し、且つ、温度は摂氏度(℃)で示される。
【0069】
これらの実施例は限定するものとは意図されておらず、且つ、本願において引用される化合物の全てを用いて同様の効果を得ることができる。
【0070】
実施例1
芳香組成物の調製
芳香組成物(組成物A)を、以下の成分を混合することによって調製した。
【0071】
【表1】
1) 製造元: Firmenich SA、ジュネーブ、スイス
2) 製造元: Firmenich SA、ジュネーブ、スイス
3) ペンタデカノリド、製造元 Firmenich SA、ジュネーブ、スイス
4) 3,3−ジメチル−5−(2’,2’,3’−トリメチル−3’−シクロペンテン−1’−イル)−4−ペンテン−2−オール、製造元: Firmenich SA、ジュネーブ、スイス
5) 2−Tert−ブチル−1−シクロヘキシルアセテート、製造元: International Flavors and Fragrances、米国。
【0072】
本発明による芳香組成物を、500部の1,1’−オキシビス−1−デセンを上述の組成物Aに添加することによって調製した。
【0073】
実施例2
芳香組成物の調製
芳香組成物(組成物B)を、以下の成分を混合することによって調製した。
【0074】
【表2】
1) 製造元: Firmenich SA、ジュネーブ、スイス
2) 製造元: Firmenich SA、ジュネーブ、スイス
3) ペンタデセノリド、製造元: Firmenich SA、ジュネーブ、スイス
4) メチルジヒドロジャスモネート、製造元: Firmenich SA、ジュネーブ、スイス
5) 3,3−ジメチル−5−(2’,2’,3’−トリメチル−3’−シクロペンテン−1’−イル)−4−ペンテン−2−オール、製造元: Firmenich SA、ジュネーブ、スイス
6) 4−メチル−3−デセン−5−オール、製造元:Givaudan−Roure SA、ヴェルニエ、スイス。
【0075】
本発明による芳香組成物を、166部の1,1’−{オキシビス[1−ブテン−1,3−ジイル]}ジベンゼンを上述の組成物Bに添加することによって調製した。
【0076】
実施例3
アルコール消臭剤の製造およびそれらの嗅覚的評価
以下の消臭剤組成物を、一般に知られる方法で、示される割合で以下の成分を用いて調製した:
【表3】
1) 5−クロロ−2−(2,4−ジクロロフェノキシ)フェノール、製造元:Ciba Chemicals。
【0077】
0.47%の1,1’−オキシビス−1−デセン(試料A、本発明による)、0.46%のノナナール(試料B、比較)、または0.50%のデカナール(試料C、比較)をこの消臭剤にそれぞれ添加することによって、3つの試料を調製した。
【0078】
それぞれの試料を0.15gの量で、4.5cm×12cmの紙製ブロッター上に均質に塗布した。該ブロッターを1時間、24時間、および48時間、室温で、且つ周囲の研究所の光の下で保管した。
【0079】
その後、該ブロッターを、10人のパネリストによるブラインド試験において嗅覚的に評価し、彼らはそれぞれの試料の芳香の強度を、0〜10の尺度でランク付けするよう依頼され、その際、0は無香を意味し、且つ10は非常に強い香りを意味した。以下の表4に示されるデータは、ジビニルエーテルが遊離アルデヒドを48時間にわたって放出し、且つ、ブロッターから素早く蒸発した相応する遊離アルデヒドと比較した場合、より強い嗅覚強度を提供したことを示す。
【0080】
【表4】
【0081】
実施例4
ボディローションの調製およびそれらの嗅覚的評価
ボディローション組成物を、一般に知られる方法で、示される割合で使用される以下の成分を用いて調製した:
【表5】
1) DMDM ヒダントインおよびヨードプロピニル(Iodoproynyl)ブチルカルバメート、製造元:Lonza。
【0082】
0.47%の1,1’−オキシビス−1−ノネン(試料D、本発明による)、0.45%のオクタナール(試料E、比較)、および0.50%のノナナール(試料F、比較)を、このボディローションにそれぞれ添加することによって、3つの試料を調製した。
【0083】
それぞれの試料を0.15gの量で、4.5cm×12cmの紙製ブロッター上に均質に塗布した。該ブロッターを1時間、24時間、および48時間、室温で、且つ周囲の研究所の光の下で保管した。
【0084】
その後、ブロッターを、10人のパネリストによるブラインド試験において嗅覚的に評価し、彼らはそれぞれの試料の芳香の強度を、0〜10の尺度でランク付けするよう依頼され、その際、0は無香を意味し、且つ10は非常に強い香りを意味した。以下の表6に示されるデータは、ジビニルエーテルが相応する遊離アルデヒドを48時間にわたって放出し、且つ、ブロッターから素早く蒸発した遊離アルデヒドと比較した場合、より強い嗅覚強度を提供したことを示す。
【0085】
【表6】
【0086】
実施例5
透明シャワージェルの調製およびそれらの嗅覚的評価
以下のシャワージェル組成物を、一般に知られる方法で、示される割合で以下の成分を用いて調製した:
【表7】
1) テトラナトリウム EDTA、製造元:BASF
2) ラウリル硫酸ナトリウム 35%、製造元:Cognis
3) コカミドプロピルベタイン、製造元:Degussa
4) ココグルコシド、製造元:Cognis。
【0087】
0.5%の1,1’−[オキシビス(1−プロペン−1,3−ジイル)]ジベンゼン(試料G、本発明による)、0.48%のフェニルアセトアルデヒド(試料H、比較)、0.5%の1,1’−オキシビス−1−デセン(試料I、本発明による)、0.48%のノナナール(試料J、比較)、および0.52%のデカナール(試料K、比較)を、シャワージェル組成物に添加することによって、5つの試料を調製した。
【0088】
それぞれの試料を0.82gの量で、6cm×11cmの羊毛見本上に適用した。該見本をその後、30秒間洗い、温水(37℃)で10秒間濯ぎ、その後、周囲の研究所の光の下で乾燥させた。
【0089】
2、4、6および8時間の乾燥後、その羊毛見本を、10人のパネリストによるブラインド試験において嗅覚的に評価し、彼らはそれぞれの試料の芳香の強度を、1〜7の尺度でランク付けするよう依頼され、その際、1は無香を意味し、且つ7は非常に強い香りを意味した。以下の表8に示されるデータは、ジビニルエーテルが相応する遊離アルデヒドを8時間にわたって放出し、且つ、乾燥した羊毛見本から素早く蒸発した遊離アルデヒドと比較した場合、より強い嗅覚強度を提供したことを示す。
【0090】
【表8】
【0091】
実施例6
ジビニルエーテルからの活性アルデヒドの放出における光の効果
試料GおよびIを0.82gの量で、実施例5の通りに、6cm×11cmの羊毛見本上に適用した(それぞれの試料用に3つの見本)。該見本を30秒間洗い、温水(37℃)で10秒間濯ぎ、その後、暗いところ(DARK)、直射日光中(LUX)、または周囲の研究所の光の下(LAB)のいずれかで乾燥させた。
【0092】
8時間の乾燥後、該羊毛見本を、10人のパネリストによるブラインド試験において嗅覚的に評価し、彼らはそれぞれの試料の芳香の強度を、1〜7の尺度でランク付けするよう依頼され、その際、1は無香を意味し、且つ7は非常に強い香りを意味した。以下の表9に示されるデータは、光の存在が、相応するジビニルエーテルからの芳香性アルデヒドの放出を促進することを示す。
【0093】
【表9】
【0094】
羊毛見本のヘッドスペース分析を行って、ジビニルエーテルから放出されたアルデヒドのガス濃度を露光の関数として測定した。
【0095】
処理された羊毛見本の半片を、閉じられた20mlのヘッドスペース式バイアル中に設置した。該試料を10分間60℃で平衡させ、気相中に拡散したアルデヒドを蓄積させる。気相からの揮発性材料を、Supelco製の85mmのポリアクリレート繊維を用いて捕捉する。その後、該繊維をGC−MSシステム中で脱着させ、揮発物の吸着量を分析した。GC−MS条件は以下の通りである: GC Agilent 6890N、MS Agilent 5973N+PAL、Col. キャピラリー HP−5MS、30m×250Mu×0.25Mu、圧力 80.5kPa、ヘリウム流(Helium glow) 1.2ml/分、検出器MSD、T° 80℃、7℃/分 250℃まで3分間、1Mu、スプリット20。
【0096】
表1に示されるGC−MAのデータは、高められた露光(LUX)で、1,1’−オキシビス−1−デセンがより完全にアルデヒドデカナールおよびノナナールへと分解したことを示した。図2に示される通り、同じことが1,1’−[オキシビス(1−プロペン−1,3−ジイル)]ジベンゼンについても観察できた。この結果は、光の存在中でのアルデヒドの強化された放出を示す定性的な評価を確認する。
【0097】
実施例7
パール仕上げシャンプーの調製およびそれらの嗅覚的評価
以下のパール仕上げシャンプー組成物を、一般に知られる方法で、示される割合で以下の成分を用いて調製した:
【表10】
1) グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、製造元:Rhodia
2) ココベタイン、製造元:Cognis
3) ラウリル硫酸ナトリウム、製造元:Cognis
4) ジメチコーン、ラウレス−23、ラウレス−4およびサリチル酸、製造元:Dow Corning
5) グリコールジステアレート、製造元:Cognis
6) コカミドMIPA、製造元:Degussa。
【0098】
4つの試料を以下の表11に記載の通りに調製した:
【表11】
【0099】
欧州人の褐色の毛髪見本(10g)を30秒間、温水(37℃)を用いて湿らせ、2.5gの試料L、M、NおよびOを用いて30秒間、泡を立てるために指の間で穏やかにこすりながら洗浄した。その後、該見本を30秒間、水を用いて手で濯ぎ、2.5gの前と同一の試料を用いて2回洗浄し、そして水を用いて30秒間、泡が毛髪から、および濯ぎ水から完全に消失するまで濯いだ。過剰な水を、指先で該見本からしぼり出した。処理された毛髪見本を、室温で、周囲の研究所の光の下で乾燥させた。6時間および24時間の乾燥後、該毛髪見本を、12人のパネリストによるブラインド試験において嗅覚的に評価し、彼らはそれぞれの試料の芳香の強度を、0〜7の尺度でランク付けするよう依頼され、その際、1は無香を意味し、且つ7は非常に強い香りを意味した。表12および図3および4に示されるデータは、アルデヒドがジビニルエーテルから、後者が香料と混合されている場合、6〜24時間にわたって放出されたことを示す。
【0100】
芳香の強度は、6および24時間後、試料Mの適用よりも試料Lの適用のほうが低く、試験の両方の工程で、1,1’−[オキシビス(1−ブテン−1,3−ジイル)]ジベンゼンからの感知できるアルデヒドの放出を示す(表12および図3参照)。このことは、試料M中の3−フェニルブタナールのグリーンノートに気付くことができた熟練したパネリストによって確認された。強度は6時間から24時間で低下した。1,1’−[オキシビス(1−ブテン−1,3−ジイル)]ジベンゼンを含有する組成物Mの嗅覚強度は、組成物Lの嗅覚強度よりも高いままであり、1,1’−[オキシビス(1−ブテン−1,3−ジイル)]ジベンゼンの長く持続する特性を示す。
【0101】
表12および図4は、遊離した香料(試料N)の強度が6時間から24時間で低下した一方で、1,1’−オキシビス−1−デセンを含有する試料Oの嗅覚強度は6時間から24時間で増加することを示し、そのことはアルデヒドの緩慢な放出を示している。
【0102】
【表12】
【0103】
実施例8
濯ぎ落としコンディショナーの調製およびそれらの嗅覚的評価
以下の濯ぎ落としコンディショナー組成物を、一般に知られる方法で、示される割合で以下の成分を用いて調製した:
【表13】
1) ヒドロキシエチルセルロース、製造元:Hercules
2) セテアリルアルコールおよびジパルミトイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトスルフェートおよびセテアレス−20、製造元:Cognis
3) アモジメチコーンおよびトリデセス−6、製造元:Rhodia
4) ベヘントリモニウムクロリド、製造元:Clariant
5) セチルエステル、製造元:Croda
6) セチルアルコール、製造元:Croda。
【0104】
2つの試料を、上記の濯ぎ落としコンディショナー組成物から、以下の成分を用いて調製した:
【表14】
【0105】
試料P(比較)およびQ(本発明による)を、以下のプロトコルに従って欧州人の褐色の毛髪見本上に適用した: 10gの毛髪見本を30秒間、37℃での水を用いて湿らせ、そして2.5gの着香されていないシャンプー、例えば実施例7、表10に従って調製されたパール仕上げシャンプーを用いて洗浄した。該毛髪見本を30秒間濯ぎ、そして過剰な水を指先でしぼり出した。試料PおよびQを1gの量で、それぞれ毛髪見本PおよびQの上に適用した。該毛髪見本を指先の間で穏やかにこすり、そして清浄な櫛で1分間梳いた。該組成物を2分間、髪の上に留めさせた。毛髪見本をその後、30秒間、37℃の水を用いて2回濯ぎ、そして過剰な水を指先でしぼり出した。その後、処理された毛髪見本を、室温で、周囲の研究所の光の下で乾燥させた。
【0106】
24時間、48時間および72時間後、該毛髪見本を、6人のパネリストによるブラインド試験において嗅覚的に評価し、彼らはそれぞれの試料の芳香の強度を、1〜7の尺度でランク付けするよう依頼され、その際、1は無香を意味し、且つ7は非常に強い香りを意味した。図5および表15に示されるデータは、1,1’−オキシビス−1−ウンデセンが24時間、48時間および72時間にわたって遊離アルデヒドを放出し、且つ、乾燥した毛髪から素早く蒸発する遊離アルデヒドと比較してより強い嗅覚強度を提供したことを示す。
【0107】
【表15】
【0108】
実施例9
シャワージェルの調製およびそれらの嗅覚的評価
シャワージェル組成物を実施例5、表7に記載の通りに調製した。0.5gの1,1’−オキシビス(1,9−ウンデセン)(試料R、本発明による)、0.52%の9−ウンデセナール(試料S、比較)、0.48%の9−デセナール(試料T、比較)、0.5%の1,1’−オキシビス(1,10−ウンデセン)(試料U、本発明による)、0.52%の10−ウンデセナール(試料V、比較)、および0.48%の9−デセナール(試料W、比較)をシャワージェル組成物に添加することによって、6つの試料を調製した。
【0109】
それぞれの試料を0.50gの量で、6cm×11cmの羊毛見本上に適用した。該見本をその後、10秒間洗い、温水(38℃)で20秒間濯ぎ、その後、ホットプレート(32℃)上、周囲の研究所の光の下で乾燥させた。
【0110】
ホットプレート上での4時間および8時間の乾燥後、該羊毛見本を、8人のパネリストによるブラインド試験において嗅覚的に評価し、彼らはそれぞれの試料の芳香の強度を、1〜10の尺度でランク付けするよう依頼され、その際、1は無香を意味し、且つ10は非常に強い香りを意味した。表16に示されるデータは、ジビニルエーテルが相応する遊離アルデヒドを8時間にわたって放出し、且つ、乾燥した羊毛見本から素早く蒸発した遊離アルデヒドと比較した場合、より強い嗅覚強度を提供したことを示す。
【0111】
【表16】
【0112】
実施例10
ジビニルエーテルの分解
一連の紙製ブロッター(6×0.7cm)に、容積式ピペットを使用してそれぞれ40μlのジビニルエーテルを装填した。以下のジビニルエーテルを試験した:1,1’−[オキシビス(1−プロペン−1,3−ジイル)]ジベンゼン (3−フェニルプロパナールから調製されたジビニルエーテル)、1,1’−[オキシビス(1−ブテン−1,3−ジイル)]ジベンゼン (3−フェニルブタナールから調製されたジビニルエーテル)、1,1’−オキシビス(1,9−ウンデセン) (9−ウンデセナールから調製されたジビニルエーテル)、1,1’オキシビス−1−デセン (デカナールから調製されたジビニルエーテル)および1,1’−オキシビス(2−メチル−1−ウンデセン) (2−メチルウンデカナールから調製されたジビニルエーテル)。
【0113】
それぞれのブロッターを15mlの透明なガラスバイアル(Supelco、27159)内部に設置し、そして隔膜を備えたねじ蓋で密封した。該バイアルを酸素で1分間パージし(20〜26ml/分)、その後、365nmのUV−Aランプ(UVP、95−0042−07)から10インチ離して設置した。定期的にバイアルを回収し、そして1mlの内部標準溶液(アセトン中、40mg/mlのドデカン)を隔膜を通してバイアル内に注入した。バイアルを手で振り混ぜた後、蓋を取り除き、そしてさらに15mlのアセトン(メスシリンダー)を添加した。該バイアルに再度蓋をして、1分間、手で攪拌し、その後、さらに9分間、留めておく。該アセトン溶液をGC−FIDによって、30m×0.25mm(25μm膜) HP−1カラム、およびAgilent 6850ガスクロマトグラフを使用して分析した。オーブンの温度を100℃に設定し、そして30℃/分で140℃まで、その後、2℃/分で150℃まで、その後、40℃/分で280℃まで上昇させ、最後にこの温度で3分間保持した。
【0114】
残留ジビニルエーテルの量を、GCピーク面積を内部標準のものと比較することによって測定し、且つ、時間ゼロでの初期の分析に対して残留しているパーセントとして報告する。図6はそれぞれのジビニルエーテルの損失を表す。このグラフは、揮発物が2〜14日の期間にわたって累進的に放出されることを示す。
【0115】
それらの抽出物のGC−MS分析もまた、揮発性化合物の形成を明らかにする。それぞれのジビニルエーテルの分解によって形成される最も豊富な揮発性化合物を表17に示す。
【0116】
【表17】
【0117】
実施例11
ジビニルエーテルによって放出された揮発物の分析
揮発性生成物の形成を、ジビニルエーテルを装填され、且つ1〜5日間、エージングされた紙製ブロッター(6×0.7cm)のヘッドスペース分析を実施することによって示した。試験されたジビニルエーテルは、1,1’−オキシビス−1−デセン、1,1’−[オキシビス(1−プロペン−1,3−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−[オキシビス(1−ブテン−1,3−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−オキシビス(2−メチル−1−ウンデセン)および1,1’−[オキシビス(1−プロペン−1,3−ジイル)]ビス(4−tert−ブチルベンゼン)であった。
【0118】
ブロッターの先端部だけをジビニルエーテル試料内に浸漬させた。その後、該ブロッターを、先端部が周囲の研究所の条件に曝露されるように支持した。特定の時間のエージングの後、該ブロッターを20mlのバイアル内で、隔膜を備えた蓋を用いて密封した。該ヘッドスペースは40℃で平衡に達し、そして隔膜を介してバイアル内に差し込まれた2cmのStableFlexTM繊維(Supelco)で30分間、ヘッドスペースを試料採取した。その後、該繊維を、30m×0.25mm(0.25μm膜)のDB−Iキャピラリーカラムを備えたGC−MSシステム(5973質量選択検出器と結合されたAgilent 6890N)内へと脱着させた(250℃、5分)。オーブンの温度を50℃で3分間保持し、その後、6℃/分で240℃まで上昇させ、最終的にこの温度で10分間保持した。図7〜11は、試験されたジビニルエーテルから得られた全イオンクロマトグラムである。該クロマトグラムは、周囲雰囲気に曝露することの結果としての揮発性化合物の出現を示す。表18に、それぞれのジビニルエーテルによって放出された種々の揮発物を列記する。
【0119】
【表18】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、少なくとも1つの活性アルデヒドおよび/またはケトンを周囲環境へと制御して放出できるジビニルエーテル誘導体を提供する。本発明は、これらのジビニルエーテル誘導体の芳香成分またはフレーバー成分としての使用、並びにそれらを含有する芳香組成物および消費者物品にも関する。
【0002】
先行技術
我々の知る限り、先行技術において、以下に記載される式(I)の化合物のいずれも香料分野において有用であるとは知られておらず、且つ、特に特定の適用条件下で活性アルデヒドおよび/またはケトンを遊離することができるとは知られていない。
【0003】
多くの香料活性化合物は高揮発性であり、従って、限定された期間にわたって感知されるだけである。従って、特に香料およびフレーバーの分野において、活性揮発性分子の制御された放出を可能にする新規の効果的な前駆体を見出すために広範な研究が行われている。先行技術は、活性分子、例えば芳香剤の効果を長引かせるか、または強化できる、多くのかかる前駆体を開示している。それにもかかわらず、先行技術文献のいずれも、本発明においてアルデヒドおよび/またはケトンを制御して放出するための前駆体として使用され、様々な表面上へのそれらの適用に際して後者の芳香効果を長引かせる、ジビニルエーテルを開示していない。
【0004】
US7175871号は、いくつかのエノールエーテル、芳香成分としてのそれらの使用、並びに芳香組成物およびそれらを含む芳香および着香物品を開示する。かかる組成物および物品、並びに芳香表面のためのそれらの使用は、従ってここでは特許請求されていない。それにもかかわらず、本文献は香料中でのかかる化合物の使用のみを取り扱い、且つ、開示された化合物のいずれか、またはそれらの類似物が活性アルデヒドおよび/またはケトンを制御して放出する能力に関しては全く記載されていない。実際に、この先行技術文献は明らかに、開示された化合物を、揮発性化合物を放出するために使用できないことを、該化合物が「持続可能な熱、光、および塩基安定性」を有することを、第二段落21〜24行目に明らかに述べることによって示唆しており、それは、それらが活性アルデヒドおよび/またはケトンを放出するために必要とされるような化学的な劣化を受けにくいことを意味している。
【0005】
他の先行技術は、本発明において使用される化合物と構造的に関連している多数の化合物を開示している。それにもかかわらず、それらの先行技術の開示は本発明の課題、即ち以下に記載される式(I)の化合物の臭気性アルデヒドおよび/またはケトンの前駆体としての使用に全く関係していない。例えば、R.A.Aitken, P.K.G.Hodgson, J.J.MorrisonおよびA.O.Oyewale, Flash vacuum pyrolysis over magnesium; Part 1: Pyrolysis of benzylic, other aryl/alkyl and aliphatic halides, J.Chem.Soc,Perkin Trans.1,2002,402〜415は、種々の化合物、中でもジヘキシ−1−エニルエーテル(スキーム18、化合物番号63参照)の製造方法を開示している。US3256344号はジ(1,2−オレフィン性不飽和脂肪族)エーテルおよび特にジ(アルカジエニル)エーテルの製造方法を開示している。US5767325号およびUS4891451号は、エノールエーテルおよび相応する生成物の製造方法を記載している。それらの文献のいずれも、本発明において使用される化合物の香料中での使用も、少なくとも1つの活性アルデヒドおよび/またはケトン、より特定には芳香性のものを放出するそれらの能力も開示または示唆していない。
【0006】
発明の説明
驚くべきことに、我々は今回、以下に記載されるジビニルエーテル誘導体が、用途内で、少なくとも1つの活性アルデヒドおよび/またはケトンを効果的に放出できることを見出した。従って、本発明において使用される化合物は、用途内でのかかるアルデヒドおよび/またはケトンの長期的な持続性を、これらの活性な揮発性化合物の制御された放出系を提供することによって増加させる。さらには、本発明において使用されるジビニルエーテルは、放出されるべき相応するアルデヒドおよび/またはケトンを、用途内でより安定にすることも可能にする。
【0007】
用語「活性」は、ここでは、それが関連するアルデヒドまたはケトンが、その周囲環境内に、利点または効果、特に芳香、フレーバー、マスキング、昆虫忌避または昆虫誘引、殺菌、殺虫、殺真菌、および/または悪臭中和の効果をもたらすことができることを意味する。従って、例えば前記「活性アルデヒドおよび/またはケトン」は、それを芳香またはフレーバー成分として、昆虫忌避剤または昆虫誘引剤として、殺虫剤、殺菌剤、または殺真菌剤として、または悪臭中和剤として有用にする少なくとも1つの特性を有している。好ましい活性アルデヒドおよびケトンは、芳香成分またはフレーバー成分、昆虫忌避剤または昆虫誘引剤、または悪臭中和剤である。特に好ましい活性アルデヒドおよびケトンは、芳香成分またはフレーバー成分、あるいはさらに悪臭中和剤である。
【0008】
用語「悪臭中和剤」または「悪臭中和成分」は、ここで、悪臭、即ち、人間の鼻に対して不快であるか攻撃的である臭気の感知を、悪臭を中和および/またはマスキングすることによって低減できる化合物を意味する。特定の実施態様において、それらの化合物は公知の悪臭を引き起こすキー成分と反応する能力を有する。該反応は、悪臭材料が空気によって運ばれる水準の低減をもたらし、その結果、悪臭の感知の低減をもたらす。
【0009】
上記および下記に述べられる本発明の全ての実施態様によれば、化合物(I)は、下記に定義される通り、活性アルデヒドまたはケトンが芳香成分、即ち、芳香性アルデヒドである場合に、特に有用である。「芳香性アルデヒド」とは、香料産業において現在使用されている化合物であり、即ち、表面に適用された際に快い効果を付与するために芳香調製物または組成物中で活性成分として使用される化合物である。言い換えれば、芳香性のものであるとしてみなされる、かかるアルデヒドまたはケトンは、香料産業の分野の当業者によって、良い方向に、もしくは心地良いように、組成物の臭気または物品または表面の臭気を付与または修正されることができ、且つ、単に臭気を有するだけではないと認識されなければならない。さらには、この定義は、臭気を有している必要はないが、しかし芳香組成物、着香物品または表面の臭気を変調し、結果としてかかる組成物、物品または表面の臭気のユーザーによる感知を修正できる化合物を含むことも意味する。
【0010】
本発明は、活性アルデヒドまたはケトンの正確な特性とは無関係に、正確に同じ方式で行われる。従って、これによって、本発明を以下でさらに、「芳香性アルデヒドおよび/またはケトン」について特定の言及をして説明する場合でも、以下の実施態様を他の活性アルデヒドおよび/またはケトンにも適用可能であることが理解される(即ち、「芳香性」の表現を、例えば「フレーバー性」、「昆虫誘引性」、「昆虫忌避性」、「マスキング性」、「殺真菌性」、「殺虫性」または「殺細菌性」で、または「悪臭中和性」で置き換えることができる)。
【0011】
本発明は以下の式:
【化1】
[式中、
R1およびR2は同一または異なり、且つ、それぞれ随意に酸素原子を含むC2〜C15−炭化水素基を表し、且つ、それぞれの基R3は水素原子またはメチル基を表す]
によって定義される化合物を、
・ 式
【化2】
[式中、
R1、R2およびR3は式(I)と同一の意味を有する]
の活性アルデヒド; および/または
・ 式
【化3】
[式中、
R1、R2およびR3は式(I)と同一の意味を有する]
の活性アルデヒドまたはケトン
から選択される少なくとも1つの活性アルデヒドおよび/またはケトンの制御された放出のために用いる使用に関する。
【0012】
基R1およびR2は、それらが香料において使用され得る任意のアルデヒドまたはケトンから本質的に誘導されるので、非常に一般的である。
【0013】
本発明の好ましい実施態様によれば、式(I)の化合物はR1とR2とが同一であり、且つ随意に酸素原子を含むC6〜C15−炭化水素基を表すものである。
【0014】
より好ましい実施態様によれば、R1とR2とは同一であり、且つ以下からなる群から選択される:
a) 随意に酸素原子を含むC6〜C15−、好ましくはC6〜C10−直鎖、分枝鎖、または環式アルキルまたはアルケニル基、さらにより好ましくは、随意に酸素原子を含むC6〜C10−直鎖または分枝鎖アルキルまたはアルケニル基;
b) 1つまたはそれより多くのフェニル基で置換され、且つ随意に酸素原子を含むC2〜C9−直鎖、分枝鎖または環式アルキルまたはアルケニル基、好ましくは、1つのフェニル基で置換され、且つ随意に酸素原子を含むC2〜C6−直鎖、分枝鎖、または環式アルキルまたはアルケニル基、より好ましくは1つのフェニル基で置換され、且つ随意に酸素原子を含むC2〜C4−直鎖、分枝鎖または環式アルキルまたはアルケニル基、さらにより好ましくは1つのフェニル基で置換されたC2〜C4−直鎖または分枝鎖アルキルまたはアルケニル基、且つ、最も好ましくは1つのフェニル基で置換されたC2〜C4−直鎖または分枝鎖アルキル基;
c) 随意に8個までの炭素原子で置換され、且つ随意に酸素含有基で置換されたベンジル基、好ましくは非置換のベンジル基;および
d) 随意に9個までの炭素原子で置換され、且つ随意に酸素含有基で置換されたフェニル基、好ましくは非置換のフェニル基。
【0015】
好ましい実施態様によれば、上記で定義されるR1およびR2基は、いかなる酸素原子も含有しない。
【0016】
より好ましい実施態様によれば、R1およびR2基は、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ベンジル基、1−フェニルエチル基、1−メチル−3−フェニルプロピル基、4−ヘプテニル基、1,3,3−トリメチルブチル基、7−ノネニル基、8−ノネニル基、4−tert−ブチルベンジル基、2−フェニルエチル基、フェニル基、4−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、2,2−ジメチルプロピル基、6−オクテニル基、7−オクテニル基および4−tert−ブチルフェニル基からなる群から選択される。
【0017】
他の好ましい実施態様によれば、R3基は水素原子を表す。
【0018】
式(I)の化合物の例として、1,1’−オキシビス−1−デセン、1,1’−オキシビス−1−オクテン、1,1’−オキシビス−1−ノネン、1,1’−オキシビス−1−ウンデセン、1,1’−オキシビス−1−ドデセン、1,1’−オキシビス(2−メチル−1−デセン)、1,1’−オキシビス(2−メチル−1−ウンデセン)、1,1’−[オキシビス(1−プロペン−1,3−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−[オキシビス(1−ブテン−1,3−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−[オキシビス(2−メチル−1−ブテン−1,4−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−[オキシビス(3−メチル−1−ペンテン−1,5−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−オキシビス(1,6−ノナジエン)、1,1’−オキシビス(3,5,5−トリメチル−1−ヘキセン)、1,1’−オキシビス(1,9−ウンデセン)、1,1’−オキシビス(1,10−ウンデセン)および1,1’−[オキシビス(1−プロペン−1,3−ジイル)]ビス(4−tert−ブチルベンゼン)を挙げることができる。
【0019】
より特定には、1,1’−オキシビス−1−デセン、1,1’−オキシビス−1−ノネン、1,1’−オキシビス−1−ウンデセン、1,1’−オキシビス(2−メチル−1−デセン)、1,1’−[オキシビス(1−プロペン−1,3−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−[オキシビス(1−ブテン−1,3−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−[オキシビス(3−メチル−1−ペンテン−1,5−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−オキシビス(1,9−ウンデセン)、1,1’−オキシビス(1,10−ウンデセン)および1,1’−[オキシビス(1−プロペン−1,3−ジイル)]ビス(4−tert−ブチルベンゼン)が、本発明によって有利に使用される。
【0020】
1,1’−[オキシビス(1−プロペン−1,3−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−[オキシビス(1−ブテン−1,3−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−[オキシビス(3−メチル−1−ペンテン−1,5−ジイル)]ジベンゼンおよび1,1’−オキシビス(1,9−ウンデセン)が、本発明によってさらにより有利に使用される。
【0021】
実施態様のいずれかによれば、式(I)の化合物は有利には、ソフトウェアEPIwin v.3.10(2000、アメリカ合衆国環境保護庁で入手可能)を使用した計算によって得られる通り、0.01Pa未満の蒸気圧によって特徴付けられる。好ましい実施態様によれば、前記の蒸気圧は、0.001Pa未満である。
【0022】
上述の通り、化合物(I)は少なくとも1つの活性アルデヒドまたはケトンを放出できる。本発明の特定の実施態様によれば、前記の活性アルデヒドまたはケトンは有利には、ソフトウェアEPIwin v.3.10(2000、アメリカ合衆国環境保護庁で入手可能)を使用した計算によって得られる通り、2.0Paを上回る蒸気圧によって特徴付けられる。別の実施態様によれば、前記の蒸気圧は、5.0Paを上回るか、または7.0Paさえも上回る。
【0023】
さらにより好ましい実施態様において、前記の式(II)または(III)の活性アルデヒドは、式RCHOのアルデヒド、前記Rは直鎖またはα−分枝鎖のC6〜C12のアルキル基である、3−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−2−メチルプロパナール、4−デセナール、8−デセナール、9−デセナール、3−(6,6−ジメチル−ビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−エン−2−イル)プロパナール、2,4−ジメチル−3−シクロヘキセン−1−カルバルデヒド (Triplal(登録商標)、製造元: International Flavors & Fragrances、ニューヨーク、米国)、3.5−ジメチル−3−シクロヘキセン−1−カルバルデヒド、5,9−ジメチル−4,8−デカジエナール、2.6−ジメチル−5−ヘプテナール (メロナール)、3.7−ジメチルオクタナール、3,7−ジメチル−6−オクテナール (シトロネラール)、(3,7−ジメチル−6−オクテニル)アセトアルデヒド、3−ドデセナール、4−ドデセナール、4−ヘプテナール、7−ヒドロキシ−3,7−ジメチルオクタナール (ヒドロキシシトロネラール)、4−および3−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)−3−シクロヘキセン−1−カルバルデヒド (Lyral(登録商標)、製造元: International Flavors and Fragrances、ニューヨーク、米国)、3−(4−イソプロピルフェニル)−2−メチルプロパナール、2−(4−イソプロピルフェニル)プロパナール、(4R)−1−p−メンテン−9−カルバルデヒド (Liminal(登録商標)、製造元: Firmenich SA、ジュネーブ、スイス)、6−メトキシ−2.6−ジメチルヘプタナール (メトキシメロナール)、8(9)−メトキシ−トリシクロ[5.2.1.0.(2,6)]デカン−3(4)−カルバルデヒド (Scentenal(登録商標)、製造元: Firmenich SA、ジュネーブ、スイス)、2−(4−メチレンシクロヘキシル)プロパナール、4−(4−メチル−3−ペンテニル)−3−シクロヘキセン−1−カルバルデヒド (Acropal (登録商標)、製造元: Givaudan−Roure SA.、ヴェルニエ、スイス)、(4−メチルフェノキシ)アセトアルデヒド、(4−メチルフェニル)アセトアルデヒド、3−メチル−5−フェニルペンタナール、6−ノネナール、8−ノネナール、フェノキシアセトアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、3−フェニルブタナール (Trifernar(登録商標)、製造元: Firmenich SA、ジュネーブ、スイス)、3−フェニルプロパナール、2−フェニルプロパナール (ヒドラトロプアルデヒド)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパナール (Lilial(登録商標)、製造元: Givaudan−Roure SA、ヴェルニエ、スイス)、3−(4−tert−ブチルフェニル)プロパナール (Bourgeonal(登録商標)、製造元: Quest International、ナールデン、オランダ)、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン−4−カルバルデヒド、エキソ−トリシクロ[5.2.1.0(2.6)]デカン−8−エキソ−カルバルデヒド (Vertral(登録商標)、製造元: Symrise、ホルツミンデン、ドイツ)、2,6,6−トリメチル−ビシクロ[3.1.1]ヘプテン−3−カルバルデヒド (ホルミルピナン)、2.4.6−および3.5.6−トリメチル−3−シクロヘキセン−1−カルバルデヒド、2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−アセトアルデヒド (カンフォレニックアルデヒド)、2,5,6−トリメチル−4−ヘプテナール、3.5.5−トリメチルヘキサナール、2,6,10−トリメチル−9−ウンデセナール、10−ウンデセナールまたは9−ウンデセナールおよびそれらの混合物、例えばイントレレベンアルデヒド(Intreleven aldehyde) (製造元: International Flavors & Fragrances、ニューヨーク、米国)の群から選択され、その際、下線を引かれた化合物は、本発明のさらにより好ましい実施態様において特に有用な芳香性アルデヒドを表す。
【0024】
それらの特定の化学構造のおかげで、化合物(I)は残基および少なくとも1つの活性アルデヒドおよび/またはケトンを放出できる。これは、酸化性の分解反応を介して起こることがあり、それは露光によって影響されると考えられているが、しかし、熱、pH変化、および/または他の種類のメカニズムによって引き起こされることもある。
【0025】
式(I)の化合物は、アルデヒドおよび/またはケトンの混合物を多様な数の炭素原子と共に放出することがある。特に、式(I)の化合物は、そこからジビニルエーテルが調製されるアルデヒドと同数の炭素原子を有するアルデヒド、および/または1つまたは2つの炭素原子を少なく(less)有するアルデヒドまたはケトンを放出することがある。これは式(I)の化合物が、随意に異なる長さのR1またはR2基と共に、式(II)のアルデヒドおよび/または式(III)のアルデヒドまたはケトンを放出することがあることを意味している。
【0026】
上述の通り、本発明は、芳香成分の制御された放出のための上述の式(I)の化合物の使用に関する。言い換えれば、それは、芳香性アルデヒドの制御された放出によって、芳香組成物の臭気特性、物品または表面の臭気特性を付与、強化、改善または修正する方法であって、前記の組成物または物品に、効果的な量の少なくとも化合物(I) (ただし、R1がC8モノアルケニル基であり且つR2がC4〜C10−アルキル基およびC9 8−アルケン−1−イル基からなる群から選択される式(I)の化合物は除外される)を添加することを含むか、または表面を前記の組成物または物品を用いて処理することを含む方法に関する。
【0027】
「化合物(I)の使用」とは、ここで、前記の化合物を含有し、且つ、特に香料産業において有利に用いることができる任意の組成物の使用とも理解される。
【0028】
実際に芳香成分として有利に用いることができる前記の組成物が本発明の対象でもある。
【0029】
従って、本発明の他の対象は、以下を含む芳香組成物である:
a) 上記で定義された式(I)の少なくとも1つの化合物 (ただし、R1がC8モノアルケニル基であり且つR2がC4〜C10−アルキル基およびC9 8−アルケン−1−イル基からなる群から選択される式(I)の化合物は除外される);
b) 香料担体および香料ベースからなる群から選択される少なくとも1つの成分;および
c) 随意に少なくとも1つの香料助剤。
【0030】
「香料担体」とは、ここで、香料の観点から実質的に中性である、即ち、芳香成分の官能特性を著しく変更しない材料を意味する。前記担体は液体であってよい。
【0031】
液体担体としては、限定されない例として、乳化系、即ち、溶剤および界面活性剤系、または香料において一般的に使用される溶剤を挙げることができる。香料において一般に使用される溶剤の性質および種類の詳細な説明は、網羅できない。しかしながら、限定されない例として、溶剤、例えばジプロピレングルコール、ジエチルフタレート、イソプロピルミリステート、安息香酸ベンジル、2−(2−エトキシエトキシ)−1−エタノールまたはクエン酸エチルを挙げることができ、それらが最も一般的に使用されている。
【0032】
一般に、「香料ベース」とはここで、単数または複数の化合物(I)に伴う少なくとも1つの芳香相互成分を含む組成物を意味する。
【0033】
前記の芳香相互成分は、化合物(I)ではない。さらには、「芳香相互成分」によって、ここで、快い効果を付与するために芳香調製物または組成物中で使用される化合物を意味する。言い換えれば、芳香性成分としてみなされるための、かかる相互成分は、当業者によって、それが適用された組成物、物品または表面の臭気を良い方向に、望み通りまたは心地よいように付与または修正できるものであって、単に匂いを有するものではないとして認識されなければならない。
【0034】
ベース中に存在する芳香相互成分の性質および種類は、ここでより詳細な説明を請け負わず、それはいずれにせよ網羅できず、当業者はその一般的な知識、意図される使用または用途および所望の官能効果に基づき、それらを選択できる。一般的な用語において、それらの芳香相互成分は、アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、アセテート、ニトリル、テルペン炭化水素、窒素を含むまたは硫黄を含む複素環式化合物および精油に及ぶ化学的分類に属しており、且つ、前記の芳香相互成分は天然または合成由来であってよい。これらの相互成分の多くはいずれにせよ、参考文献、例えばS.Arctanderによる本、Perfume and Flavor Chemicals、1969、Montclair、ニュージャージー、米国、またはそのより最近の版、または同様の性質の他の文献、並びに香料分野における豊富な特許文献に列記されている。前記の相互成分は、様々な種類の芳香化合物を制御して放出することが知られている化合物であってもよいとも理解される。
【0035】
一般に、「香料助剤」はここで、追加的な利益、例えば色、特定の耐光性、化学的安定性などを付与できる成分を意味する。香料ベース中で通常使用される助剤の性質および種類の詳細な記載は網羅されないが、しかし、かかる成分は当業者にはよく知られている。
【0036】
少なくとも1つの化合物(I) (ただし、R1がC8モノアルケニル基であり且つR2がC4〜C10−アルキル基およびC9 8−アルケン−1−イル基からなる群から選択される式(I)の化合物は除外される)と、少なくとも1つの香料担体とからなる組成物が、本発明の特別な実施態様を表す。本発明の他の実施態様は、さらに少なくとも1つの香料ベースおよび随意に少なくとも1つの香料助剤を含む、かかる芳香組成物である。
【0037】
ここで、2つまたはそれより多くの化合物(I)の混合物を含む上述の組成物の可能性が重要であることを述べることは有用である。なぜなら、それは調香師が、様々な化合物(I)の香調を有する調和物および香料を調製することを可能にし、従って芳香の多彩さのための新しい道具を創造するからである。さらには、化合物(I)を、芳香成分のための他の化学的または物理的放出系との混和物中で使用できる。例えば、それらを、好ましくは種々の性質のカプセル化された成分と、またはさらに、化学反応または光化学反応の結果として活性成分が放出される公知の放出系の多くと組み合わせることができる。かかる放出系の例は、例えばWO95/04809号、EP0971021号、WO03/049666号、EP0936211号、WO99/60990号、WO01/28980号、WO08/093272号、WO98/47477号、US2004/0102357号、DE3003494号およびWO95/08976号内に見出されるが、ただし、かかる混合物は最終的な消費者製品内に、表面上へのその適用条件下で組み込まれ、相応する活性芳香成分の放出を可能にする。
【0038】
さらには、化合物(I)、または化合物(I)を含む芳香組成物 (ただし、R1がC8モノアルケニル基であり且つR2がC4〜C10−アルキル基およびC9 8−アルケン−1−イル基からなる群から選択される式(I)の化合物は除外される)は、現代の香料の全ての分野、例えば精巧な香料または機能性香料において有利に使用できる有用な芳香成分である。実際に、化合物(I)およびそれらを含む香料を、芳香性アルデヒドまたはケトンのより制御された堆積および次の放出を達成するために、精巧な香料または機能性香料中で有利に用いることができる。
【0039】
例えば、良好な直接性、低揮発性、および発香性分子または臭気影響分子の放出を提供する能力のおかげで、化合物(I)を、上記で定義された発香性成分の迅速または引き延ばされた解放効果が必要とされる任意の用途に組み込むことができ、さらに、処理された表面に、例えば洗濯またはボディケア工程における処理周期を超えて、同様に表面の濯ぎおよび/または乾燥工程を超えて、充分に持続し得る芳香および新鮮さを付与できる。本発明の芳香成分のために適した適用表面は特に、テキスタイル、硬質表面、例えばガラス窓、台所および浴室の表面、毛髪および皮膚である。
【0040】
従って、
a) 上記で定義された式(I)の少なくとも1つの化合物、または上記で定義された本発明の芳香組成物;および
b) 消費者製品ベース
を含む物品、同様に、表面、例えば上述のものの処理のためのかかる組成物の使用も本発明の対象である。明確化のために、「消費者製品ベース」とは、ここで、芳香成分と適合性がある消費者製品を意味することを言及すべきである。言い換えれば、本発明による着香物品は、消費者製品、例えば毛髪またはボディケア製品、例えばシャンプーまたはシャワージェル、洗剤または空気清浄剤に相応する、機能性配合物、並びに随意の付加的な有益剤(benefit agent)を、嗅覚的に有効な量の少なくとも1種の本発明の化合物と共に含む。
【0041】
消費者製品の成分の性質および種類は、ここではより詳細な説明を請け負わず、いずれにせよそれは網羅できず、当業者はその一般的な知識に基づき、且つ前記の製品の性質および所望の効果によってそれらを選択できる。
【0042】
適した消費者製品ベースの例は、固体または液体の洗剤および布地用柔軟剤、強洗浄用洗剤(heavy duty cleaner)、並びに香料産業において一般的な他の物品、即ち香水、コロンまたはアフターシェーブローション、着香セッケン、シャワーまたはバスソルト、ムース、クリーム、オイルまたはジェル、衛生製品またはヘアケア製品、例えばシャンプー、ボディケア製品、消臭剤または制汗剤、空気清浄剤およびさらに化粧品を含む。洗剤としては、家庭用のために意図されているかまたは産業用途のために意図されているかにかかわらず、ここでは例えば、様々な表面を洗い上げ、清浄化するか処理するための洗剤組成物または洗浄製品等の用途を含むことが意図されており、例えばテキスタイル、皿または硬質表面用に意図されている。他の着香物品は、布地用清浄剤、アイロン水、ペーパー、ワイプまたは漂白剤である。
【0043】
上述の消費者製品ベースのいくつかは、化合物(I)に対して攻撃的な媒体を表すことがあり、従って、後者を例えばカプセル化によって時期尚早な分解から保護することが必要であることがある。
【0044】
好ましい着香物品は、香水、コロン、アフターシェーブローション、着香石鹸、シャワーまたはバスソルト、ムース、クリーム、オイルまたはジェル、衛生製品またはヘアケア製品、例えばシャンプーおよび他のヘアトリートメント製品、またはさらにボディケア製品、例えば消臭剤または制汗剤である。
【0045】
様々な上述の物品または組成物中に混合され得る化合物(I)の割合は、広範な値に及ぶ。これらの値は、それらが混合されるべき物品または製品の性質、および所望の嗅覚効果、並びに、化合物(I)が当該技術分野で通常使用される芳香相互成分、溶剤または添加剤と混合される場合には所定の組成物中での相互成分の性質に依存する。
【0046】
例えば、本発明の芳香組成物内での化合物(I)の典型的な濃度は、芳香組成物の質量に対して1質量%〜40質量%、好ましくは5質量%〜20質量%に含まれる広範な値で変化してよい。それらの化合物が上述の様々な消費者製品の着香において直接的に適用される場合には、それより低い濃度、例えば消費者製品の総質量に対して0.001質量%〜5質量%、より好ましくは0.3質量%〜2質量%、またはさらに0.5〜1質量%のオーダーを使用できる。
【0047】
本発明の他の対象は、表面の着香方法、または式(II)のアルデヒドおよび式(III)のアルデヒドまたはケトンから選択される少なくとも1つの発香性アルデヒドまたはケトンの特徴的な香気の表面上での拡散効果を増加または長引かせるための方法であって、前記の表面を、化合物(I)を用いて、または化合物(I)を含有する上記で定義された組成物または物品を用いて、上記で定義された通り、前記のアルデヒドおよび/またはケトンを放出させやすい条件下で処理することを特徴とする方法に関する。かかる処理のために適した表面は、特に、テキスタイル、硬質表面、毛髪および皮膚である。かかる処理方法の特定の実施態様によれば、化合物(I)またはそれらを含有する組成物または物品が特定の表面に適用される条件は、光の使用を必要とする。他の実施態様によれば、本発明は1,1’−オキシビス−1−デセン、1,1’−オキシビス−1−オクテン、1,1’−オキシビス−1−ノネン、1,1’−オキシビス−1−ウンデセン、1,1’−オキシビス(2−メチル−1−デセン)、1,1’−オキシビス(2−メチル−1−ウンデセン)、1,1’−[オキシビス(1−プロペン−1,3−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−[オキシビス(1−ブテン−1,3−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−[オキシビス(2−メチル−1−ブテン−1,4−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−[オキシビス(3−メチル−1−ペンテン−1,5−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−オキシビス(1,6−ノナジエン)、1,1’−オキシビス(3,5,5−トリメチル−1−ヘキセン)、1,1’−オキシビス(1,9−ウンデセン)、1,1’−オキシビス(1,10−ウンデセン)および1,1’−[オキシビス(1−プロペン−1,3−ジイル)]ビス(4−tert−ブチルベンゼン)からなる群から選択される化合物に関する。
【0048】
好ましくは、該化合物は、1,1’−オキシビス−1−デセン、1,1’−オキシビス−1−ノネン、1,1’−オキシビス−1−ウンデセン、1,1’−オキシビス(2−メチル−1−ウンデセン)、1,1’−[オキシビス(1−プロペン−1,3−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−[オキシビス(1−ブテン−1,3−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−[オキシビス(3−メチル−1−ペンテン−1,5−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−オキシビス(1,9−ウンデセン)、1,1’−オキシビス(1,10−ウンデセン)および1,1’−[オキシビス(1−プロペン−1,3−ジイル)]ビス(4−tert−ブチルベンゼン)からなる群から選択される。さらにより好ましくは、1,1’−[オキシビス(1−プロペン−1,3−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−[オキシビス(1−ブテン−1,3−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−[オキシビス(3−メチル−1−ペンテン−1,5−ジイル)]ジベンゼンおよび1,1’−オキシビス(1,9−ウンデセン)からなる群から選択される。
【0049】
化合物(I)を、US3256344号内に記載される一般的な方法によって調製できる。
【0050】
従って、以下の化合物が調製され、そして評価された。質量分析データ(EI、70eV)を主な同位体(一般にZ,E−異性体)についてのみ提供する。NMRスペクトルを、1Hについて400MHzで、および13Cについて100MHzで、溶剤としてCDCl3を使用して記録した。ケミカルシフトδは、標準としてのTMSについてのppmで示され、結合定数JはHzで表されている。
【0051】
1. デカナールから調製された1,1’−オキシビス−1−デセン
【0052】
2. オクタナールから調製された1,1’−オキシビス−1−オクテン
【0053】
3. ノナナールから調製された1,1’−オキシビス−1−ノネン
【0054】
4. ウンデカナールから調製された1,1’−オキシビス−1−ウンデセン
【0055】
5. ドデカナールから調製された1,1’−オキシビス−1−ドデセン
【0056】
6. 2−メチルデカナールから調製された1,1’−オキシビス(2−メチル−1−デセン)
【0057】
7. 2−メチルウンデカナールから調製された1,1’−オキシビス(2−メチル−1−ウンデセン)
【0058】
8. 3−フェニルプロパナールから調製された1,1’−[オキシビス(1−プロペン−1,3−ジイル)]ジベンゼン
【0059】
9. 3−フェニルブタナールから調製された1,1’−[オキシビス(3−メチル−1−プロペン−1,3−ジイル)]ジベンゼン
【0060】
10. 2−メチル−4−フェニルブタナールから調製された1,1’−[オキシビス(2−メチル−1−ブテン−1,4−ジイル)]ジベンゼン
【0061】
11. 3−メチル−5−フェニルペンタナールから調製された1,1’−[オキシビス(3−メチル−1−ペンテン−1,5−ジイル)]ジベンゼン
【0062】
12. 6(E)−ノネナールから調製された1,1’−オキシビス(1,6−ノナジエン)
【0063】
13. 3,5,5−トリメチルヘキサナールから調製された1,1’−オキシビス(3,5,5−トリメチル−1−ヘキセン)
【0064】
14. 9−ウンデセナールから調製された1,1’−オキシビス(1,9−ウンデセン)
【0065】
15. 3−(4−tert−ブチルフェニル)プロパナールから調製された1,1’−[オキシビス(1−プロペン−1,3−ジイル)]ビス(4−tert−ブチルベンゼン)
【0066】
16. 10−ウンデセナールから調製された1,1’−オキシビス(1,10−ウンデセン)
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】香料放出に対する光の効果を示す図である。
【図2】香料放出に対する光の効果を示す図である。
【図3】乾いた毛髪上でのシャンプーからのアルデヒド放出を示す図である。
【図4】乾いた毛髪上でのシャンプーからのアルデヒド放出を示す図である。
【図5】乾いた毛髪上での濯ぎ落としコンディショナーからのアルデヒドC10放出を示す図である。
【図6】ジビニルエーテルの酸化性分解を示す図である。
【図7】試験されたジビニルエーテルから得られたイオンクロマトグラムを示す図である。
【図8】試験されたジビニルエーテルから得られたイオンクロマトグラムを示す図である。
【図9】試験されたジビニルエーテルから得られたイオンクロマトグラムを示す図である。
【図10】試験されたジビニルエーテルから得られたイオンクロマトグラムを示す図である。
【図11】試験されたジビニルエーテルから得られたイオンクロマトグラムを示す図である。
【0068】
実施例
本発明は、ここで、以下の実施例を用いてさらに詳細に説明され、その際、省略形は、当該技術分野で通常の意味を有し、且つ、温度は摂氏度(℃)で示される。
【0069】
これらの実施例は限定するものとは意図されておらず、且つ、本願において引用される化合物の全てを用いて同様の効果を得ることができる。
【0070】
実施例1
芳香組成物の調製
芳香組成物(組成物A)を、以下の成分を混合することによって調製した。
【0071】
【表1】
1) 製造元: Firmenich SA、ジュネーブ、スイス
2) 製造元: Firmenich SA、ジュネーブ、スイス
3) ペンタデカノリド、製造元 Firmenich SA、ジュネーブ、スイス
4) 3,3−ジメチル−5−(2’,2’,3’−トリメチル−3’−シクロペンテン−1’−イル)−4−ペンテン−2−オール、製造元: Firmenich SA、ジュネーブ、スイス
5) 2−Tert−ブチル−1−シクロヘキシルアセテート、製造元: International Flavors and Fragrances、米国。
【0072】
本発明による芳香組成物を、500部の1,1’−オキシビス−1−デセンを上述の組成物Aに添加することによって調製した。
【0073】
実施例2
芳香組成物の調製
芳香組成物(組成物B)を、以下の成分を混合することによって調製した。
【0074】
【表2】
1) 製造元: Firmenich SA、ジュネーブ、スイス
2) 製造元: Firmenich SA、ジュネーブ、スイス
3) ペンタデセノリド、製造元: Firmenich SA、ジュネーブ、スイス
4) メチルジヒドロジャスモネート、製造元: Firmenich SA、ジュネーブ、スイス
5) 3,3−ジメチル−5−(2’,2’,3’−トリメチル−3’−シクロペンテン−1’−イル)−4−ペンテン−2−オール、製造元: Firmenich SA、ジュネーブ、スイス
6) 4−メチル−3−デセン−5−オール、製造元:Givaudan−Roure SA、ヴェルニエ、スイス。
【0075】
本発明による芳香組成物を、166部の1,1’−{オキシビス[1−ブテン−1,3−ジイル]}ジベンゼンを上述の組成物Bに添加することによって調製した。
【0076】
実施例3
アルコール消臭剤の製造およびそれらの嗅覚的評価
以下の消臭剤組成物を、一般に知られる方法で、示される割合で以下の成分を用いて調製した:
【表3】
1) 5−クロロ−2−(2,4−ジクロロフェノキシ)フェノール、製造元:Ciba Chemicals。
【0077】
0.47%の1,1’−オキシビス−1−デセン(試料A、本発明による)、0.46%のノナナール(試料B、比較)、または0.50%のデカナール(試料C、比較)をこの消臭剤にそれぞれ添加することによって、3つの試料を調製した。
【0078】
それぞれの試料を0.15gの量で、4.5cm×12cmの紙製ブロッター上に均質に塗布した。該ブロッターを1時間、24時間、および48時間、室温で、且つ周囲の研究所の光の下で保管した。
【0079】
その後、該ブロッターを、10人のパネリストによるブラインド試験において嗅覚的に評価し、彼らはそれぞれの試料の芳香の強度を、0〜10の尺度でランク付けするよう依頼され、その際、0は無香を意味し、且つ10は非常に強い香りを意味した。以下の表4に示されるデータは、ジビニルエーテルが遊離アルデヒドを48時間にわたって放出し、且つ、ブロッターから素早く蒸発した相応する遊離アルデヒドと比較した場合、より強い嗅覚強度を提供したことを示す。
【0080】
【表4】
【0081】
実施例4
ボディローションの調製およびそれらの嗅覚的評価
ボディローション組成物を、一般に知られる方法で、示される割合で使用される以下の成分を用いて調製した:
【表5】
1) DMDM ヒダントインおよびヨードプロピニル(Iodoproynyl)ブチルカルバメート、製造元:Lonza。
【0082】
0.47%の1,1’−オキシビス−1−ノネン(試料D、本発明による)、0.45%のオクタナール(試料E、比較)、および0.50%のノナナール(試料F、比較)を、このボディローションにそれぞれ添加することによって、3つの試料を調製した。
【0083】
それぞれの試料を0.15gの量で、4.5cm×12cmの紙製ブロッター上に均質に塗布した。該ブロッターを1時間、24時間、および48時間、室温で、且つ周囲の研究所の光の下で保管した。
【0084】
その後、ブロッターを、10人のパネリストによるブラインド試験において嗅覚的に評価し、彼らはそれぞれの試料の芳香の強度を、0〜10の尺度でランク付けするよう依頼され、その際、0は無香を意味し、且つ10は非常に強い香りを意味した。以下の表6に示されるデータは、ジビニルエーテルが相応する遊離アルデヒドを48時間にわたって放出し、且つ、ブロッターから素早く蒸発した遊離アルデヒドと比較した場合、より強い嗅覚強度を提供したことを示す。
【0085】
【表6】
【0086】
実施例5
透明シャワージェルの調製およびそれらの嗅覚的評価
以下のシャワージェル組成物を、一般に知られる方法で、示される割合で以下の成分を用いて調製した:
【表7】
1) テトラナトリウム EDTA、製造元:BASF
2) ラウリル硫酸ナトリウム 35%、製造元:Cognis
3) コカミドプロピルベタイン、製造元:Degussa
4) ココグルコシド、製造元:Cognis。
【0087】
0.5%の1,1’−[オキシビス(1−プロペン−1,3−ジイル)]ジベンゼン(試料G、本発明による)、0.48%のフェニルアセトアルデヒド(試料H、比較)、0.5%の1,1’−オキシビス−1−デセン(試料I、本発明による)、0.48%のノナナール(試料J、比較)、および0.52%のデカナール(試料K、比較)を、シャワージェル組成物に添加することによって、5つの試料を調製した。
【0088】
それぞれの試料を0.82gの量で、6cm×11cmの羊毛見本上に適用した。該見本をその後、30秒間洗い、温水(37℃)で10秒間濯ぎ、その後、周囲の研究所の光の下で乾燥させた。
【0089】
2、4、6および8時間の乾燥後、その羊毛見本を、10人のパネリストによるブラインド試験において嗅覚的に評価し、彼らはそれぞれの試料の芳香の強度を、1〜7の尺度でランク付けするよう依頼され、その際、1は無香を意味し、且つ7は非常に強い香りを意味した。以下の表8に示されるデータは、ジビニルエーテルが相応する遊離アルデヒドを8時間にわたって放出し、且つ、乾燥した羊毛見本から素早く蒸発した遊離アルデヒドと比較した場合、より強い嗅覚強度を提供したことを示す。
【0090】
【表8】
【0091】
実施例6
ジビニルエーテルからの活性アルデヒドの放出における光の効果
試料GおよびIを0.82gの量で、実施例5の通りに、6cm×11cmの羊毛見本上に適用した(それぞれの試料用に3つの見本)。該見本を30秒間洗い、温水(37℃)で10秒間濯ぎ、その後、暗いところ(DARK)、直射日光中(LUX)、または周囲の研究所の光の下(LAB)のいずれかで乾燥させた。
【0092】
8時間の乾燥後、該羊毛見本を、10人のパネリストによるブラインド試験において嗅覚的に評価し、彼らはそれぞれの試料の芳香の強度を、1〜7の尺度でランク付けするよう依頼され、その際、1は無香を意味し、且つ7は非常に強い香りを意味した。以下の表9に示されるデータは、光の存在が、相応するジビニルエーテルからの芳香性アルデヒドの放出を促進することを示す。
【0093】
【表9】
【0094】
羊毛見本のヘッドスペース分析を行って、ジビニルエーテルから放出されたアルデヒドのガス濃度を露光の関数として測定した。
【0095】
処理された羊毛見本の半片を、閉じられた20mlのヘッドスペース式バイアル中に設置した。該試料を10分間60℃で平衡させ、気相中に拡散したアルデヒドを蓄積させる。気相からの揮発性材料を、Supelco製の85mmのポリアクリレート繊維を用いて捕捉する。その後、該繊維をGC−MSシステム中で脱着させ、揮発物の吸着量を分析した。GC−MS条件は以下の通りである: GC Agilent 6890N、MS Agilent 5973N+PAL、Col. キャピラリー HP−5MS、30m×250Mu×0.25Mu、圧力 80.5kPa、ヘリウム流(Helium glow) 1.2ml/分、検出器MSD、T° 80℃、7℃/分 250℃まで3分間、1Mu、スプリット20。
【0096】
表1に示されるGC−MAのデータは、高められた露光(LUX)で、1,1’−オキシビス−1−デセンがより完全にアルデヒドデカナールおよびノナナールへと分解したことを示した。図2に示される通り、同じことが1,1’−[オキシビス(1−プロペン−1,3−ジイル)]ジベンゼンについても観察できた。この結果は、光の存在中でのアルデヒドの強化された放出を示す定性的な評価を確認する。
【0097】
実施例7
パール仕上げシャンプーの調製およびそれらの嗅覚的評価
以下のパール仕上げシャンプー組成物を、一般に知られる方法で、示される割合で以下の成分を用いて調製した:
【表10】
1) グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、製造元:Rhodia
2) ココベタイン、製造元:Cognis
3) ラウリル硫酸ナトリウム、製造元:Cognis
4) ジメチコーン、ラウレス−23、ラウレス−4およびサリチル酸、製造元:Dow Corning
5) グリコールジステアレート、製造元:Cognis
6) コカミドMIPA、製造元:Degussa。
【0098】
4つの試料を以下の表11に記載の通りに調製した:
【表11】
【0099】
欧州人の褐色の毛髪見本(10g)を30秒間、温水(37℃)を用いて湿らせ、2.5gの試料L、M、NおよびOを用いて30秒間、泡を立てるために指の間で穏やかにこすりながら洗浄した。その後、該見本を30秒間、水を用いて手で濯ぎ、2.5gの前と同一の試料を用いて2回洗浄し、そして水を用いて30秒間、泡が毛髪から、および濯ぎ水から完全に消失するまで濯いだ。過剰な水を、指先で該見本からしぼり出した。処理された毛髪見本を、室温で、周囲の研究所の光の下で乾燥させた。6時間および24時間の乾燥後、該毛髪見本を、12人のパネリストによるブラインド試験において嗅覚的に評価し、彼らはそれぞれの試料の芳香の強度を、0〜7の尺度でランク付けするよう依頼され、その際、1は無香を意味し、且つ7は非常に強い香りを意味した。表12および図3および4に示されるデータは、アルデヒドがジビニルエーテルから、後者が香料と混合されている場合、6〜24時間にわたって放出されたことを示す。
【0100】
芳香の強度は、6および24時間後、試料Mの適用よりも試料Lの適用のほうが低く、試験の両方の工程で、1,1’−[オキシビス(1−ブテン−1,3−ジイル)]ジベンゼンからの感知できるアルデヒドの放出を示す(表12および図3参照)。このことは、試料M中の3−フェニルブタナールのグリーンノートに気付くことができた熟練したパネリストによって確認された。強度は6時間から24時間で低下した。1,1’−[オキシビス(1−ブテン−1,3−ジイル)]ジベンゼンを含有する組成物Mの嗅覚強度は、組成物Lの嗅覚強度よりも高いままであり、1,1’−[オキシビス(1−ブテン−1,3−ジイル)]ジベンゼンの長く持続する特性を示す。
【0101】
表12および図4は、遊離した香料(試料N)の強度が6時間から24時間で低下した一方で、1,1’−オキシビス−1−デセンを含有する試料Oの嗅覚強度は6時間から24時間で増加することを示し、そのことはアルデヒドの緩慢な放出を示している。
【0102】
【表12】
【0103】
実施例8
濯ぎ落としコンディショナーの調製およびそれらの嗅覚的評価
以下の濯ぎ落としコンディショナー組成物を、一般に知られる方法で、示される割合で以下の成分を用いて調製した:
【表13】
1) ヒドロキシエチルセルロース、製造元:Hercules
2) セテアリルアルコールおよびジパルミトイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトスルフェートおよびセテアレス−20、製造元:Cognis
3) アモジメチコーンおよびトリデセス−6、製造元:Rhodia
4) ベヘントリモニウムクロリド、製造元:Clariant
5) セチルエステル、製造元:Croda
6) セチルアルコール、製造元:Croda。
【0104】
2つの試料を、上記の濯ぎ落としコンディショナー組成物から、以下の成分を用いて調製した:
【表14】
【0105】
試料P(比較)およびQ(本発明による)を、以下のプロトコルに従って欧州人の褐色の毛髪見本上に適用した: 10gの毛髪見本を30秒間、37℃での水を用いて湿らせ、そして2.5gの着香されていないシャンプー、例えば実施例7、表10に従って調製されたパール仕上げシャンプーを用いて洗浄した。該毛髪見本を30秒間濯ぎ、そして過剰な水を指先でしぼり出した。試料PおよびQを1gの量で、それぞれ毛髪見本PおよびQの上に適用した。該毛髪見本を指先の間で穏やかにこすり、そして清浄な櫛で1分間梳いた。該組成物を2分間、髪の上に留めさせた。毛髪見本をその後、30秒間、37℃の水を用いて2回濯ぎ、そして過剰な水を指先でしぼり出した。その後、処理された毛髪見本を、室温で、周囲の研究所の光の下で乾燥させた。
【0106】
24時間、48時間および72時間後、該毛髪見本を、6人のパネリストによるブラインド試験において嗅覚的に評価し、彼らはそれぞれの試料の芳香の強度を、1〜7の尺度でランク付けするよう依頼され、その際、1は無香を意味し、且つ7は非常に強い香りを意味した。図5および表15に示されるデータは、1,1’−オキシビス−1−ウンデセンが24時間、48時間および72時間にわたって遊離アルデヒドを放出し、且つ、乾燥した毛髪から素早く蒸発する遊離アルデヒドと比較してより強い嗅覚強度を提供したことを示す。
【0107】
【表15】
【0108】
実施例9
シャワージェルの調製およびそれらの嗅覚的評価
シャワージェル組成物を実施例5、表7に記載の通りに調製した。0.5gの1,1’−オキシビス(1,9−ウンデセン)(試料R、本発明による)、0.52%の9−ウンデセナール(試料S、比較)、0.48%の9−デセナール(試料T、比較)、0.5%の1,1’−オキシビス(1,10−ウンデセン)(試料U、本発明による)、0.52%の10−ウンデセナール(試料V、比較)、および0.48%の9−デセナール(試料W、比較)をシャワージェル組成物に添加することによって、6つの試料を調製した。
【0109】
それぞれの試料を0.50gの量で、6cm×11cmの羊毛見本上に適用した。該見本をその後、10秒間洗い、温水(38℃)で20秒間濯ぎ、その後、ホットプレート(32℃)上、周囲の研究所の光の下で乾燥させた。
【0110】
ホットプレート上での4時間および8時間の乾燥後、該羊毛見本を、8人のパネリストによるブラインド試験において嗅覚的に評価し、彼らはそれぞれの試料の芳香の強度を、1〜10の尺度でランク付けするよう依頼され、その際、1は無香を意味し、且つ10は非常に強い香りを意味した。表16に示されるデータは、ジビニルエーテルが相応する遊離アルデヒドを8時間にわたって放出し、且つ、乾燥した羊毛見本から素早く蒸発した遊離アルデヒドと比較した場合、より強い嗅覚強度を提供したことを示す。
【0111】
【表16】
【0112】
実施例10
ジビニルエーテルの分解
一連の紙製ブロッター(6×0.7cm)に、容積式ピペットを使用してそれぞれ40μlのジビニルエーテルを装填した。以下のジビニルエーテルを試験した:1,1’−[オキシビス(1−プロペン−1,3−ジイル)]ジベンゼン (3−フェニルプロパナールから調製されたジビニルエーテル)、1,1’−[オキシビス(1−ブテン−1,3−ジイル)]ジベンゼン (3−フェニルブタナールから調製されたジビニルエーテル)、1,1’−オキシビス(1,9−ウンデセン) (9−ウンデセナールから調製されたジビニルエーテル)、1,1’オキシビス−1−デセン (デカナールから調製されたジビニルエーテル)および1,1’−オキシビス(2−メチル−1−ウンデセン) (2−メチルウンデカナールから調製されたジビニルエーテル)。
【0113】
それぞれのブロッターを15mlの透明なガラスバイアル(Supelco、27159)内部に設置し、そして隔膜を備えたねじ蓋で密封した。該バイアルを酸素で1分間パージし(20〜26ml/分)、その後、365nmのUV−Aランプ(UVP、95−0042−07)から10インチ離して設置した。定期的にバイアルを回収し、そして1mlの内部標準溶液(アセトン中、40mg/mlのドデカン)を隔膜を通してバイアル内に注入した。バイアルを手で振り混ぜた後、蓋を取り除き、そしてさらに15mlのアセトン(メスシリンダー)を添加した。該バイアルに再度蓋をして、1分間、手で攪拌し、その後、さらに9分間、留めておく。該アセトン溶液をGC−FIDによって、30m×0.25mm(25μm膜) HP−1カラム、およびAgilent 6850ガスクロマトグラフを使用して分析した。オーブンの温度を100℃に設定し、そして30℃/分で140℃まで、その後、2℃/分で150℃まで、その後、40℃/分で280℃まで上昇させ、最後にこの温度で3分間保持した。
【0114】
残留ジビニルエーテルの量を、GCピーク面積を内部標準のものと比較することによって測定し、且つ、時間ゼロでの初期の分析に対して残留しているパーセントとして報告する。図6はそれぞれのジビニルエーテルの損失を表す。このグラフは、揮発物が2〜14日の期間にわたって累進的に放出されることを示す。
【0115】
それらの抽出物のGC−MS分析もまた、揮発性化合物の形成を明らかにする。それぞれのジビニルエーテルの分解によって形成される最も豊富な揮発性化合物を表17に示す。
【0116】
【表17】
【0117】
実施例11
ジビニルエーテルによって放出された揮発物の分析
揮発性生成物の形成を、ジビニルエーテルを装填され、且つ1〜5日間、エージングされた紙製ブロッター(6×0.7cm)のヘッドスペース分析を実施することによって示した。試験されたジビニルエーテルは、1,1’−オキシビス−1−デセン、1,1’−[オキシビス(1−プロペン−1,3−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−[オキシビス(1−ブテン−1,3−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−オキシビス(2−メチル−1−ウンデセン)および1,1’−[オキシビス(1−プロペン−1,3−ジイル)]ビス(4−tert−ブチルベンゼン)であった。
【0118】
ブロッターの先端部だけをジビニルエーテル試料内に浸漬させた。その後、該ブロッターを、先端部が周囲の研究所の条件に曝露されるように支持した。特定の時間のエージングの後、該ブロッターを20mlのバイアル内で、隔膜を備えた蓋を用いて密封した。該ヘッドスペースは40℃で平衡に達し、そして隔膜を介してバイアル内に差し込まれた2cmのStableFlexTM繊維(Supelco)で30分間、ヘッドスペースを試料採取した。その後、該繊維を、30m×0.25mm(0.25μm膜)のDB−Iキャピラリーカラムを備えたGC−MSシステム(5973質量選択検出器と結合されたAgilent 6890N)内へと脱着させた(250℃、5分)。オーブンの温度を50℃で3分間保持し、その後、6℃/分で240℃まで上昇させ、最終的にこの温度で10分間保持した。図7〜11は、試験されたジビニルエーテルから得られた全イオンクロマトグラムである。該クロマトグラムは、周囲雰囲気に曝露することの結果としての揮発性化合物の出現を示す。表18に、それぞれのジビニルエーテルによって放出された種々の揮発物を列記する。
【0119】
【表18】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式
【化1】
[式中、
R1およびR2は同一または異なり、且つ、随意に酸素原子を含むC2〜C15−炭化水素基をそれぞれ表し、且つ、両方のR3は互いに独立して水素原子またはメチル基を表す]
の化合物を、
・ 式
【化2】
[式中、
R1、R2およびR3は式(I)と同一の意味を有する]
の活性アルデヒド; および/または
・ 式
【化3】
[式中、
R1、R2およびR3は式(I)と同一の意味を有する]
の活性アルデヒドまたはケトン
から選択される少なくとも1つの活性アルデヒドおよび/またはケトンの制御された放出のために用いる使用。
【請求項2】
R1およびR2が同一であり、且つ随意に酸素原子を含むC2〜C15−炭化水素基を表す、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
R1およびR2が、
a) 随意に酸素原子を含むC6〜C15−直鎖、分枝鎖または環式アルキルまたはアルケニル基
b) 1つまたはそれより多くのフェニル基で置換され、且つ随意に酸素原子を含むC2〜C9−直鎖、分枝鎖または環式アルキルまたはアルケニル基
c) 随意に8個までの炭素原子および随意に酸素原子で置換されたベンジル基;または
d) 随意に9個までの炭素原子および随意に酸素原子で置換されたフェニル基
を表す、請求項2の使用。
【請求項4】
R1およびR2が、
a) 随意に酸素原子を含むC6〜C10−直鎖、分枝鎖または環式アルキルまたはアルケニル基、
b) 随意に酸素原子を含むC2〜C6−直鎖、分枝鎖または環式アルキルまたはアルケニル基
c) ベンジル基;または
d) フェニル基
を表す、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
R1およびR2が、
a) C6〜C10−直鎖、分枝鎖または環式アルキルまたはアルケニル基;
b) 1つのフェニル基で置換されたC2〜C4−直鎖、分枝鎖または環式アルキルまたはアルケニル基
c) ベンジル基;または
d) フェニル基
を表す、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
式(I)の化合物が、1,1’−オキシビス−1−デセン、1,1’−オキシビス−1−オクテン、1,1’−オキシビス−1−ノネン、1,1’−オキシビス−1−ウンデセン、1,1’−オキシビス−1−ドデセン、1,1’−オキシビス(2−メチル−1−デセン)、1,1’−オキシビス(2−メチル−1−ウンデセン)、1,1’−[オキシビス(1−プロペン−1,3−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−[オキシビス(1−ブテン−1,3−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−[オキシビス(2−メチル−1−ブテン−1,4−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−[オキシビス(3−メチル−1−ペンテン−1,5−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−オキシビス(1,6−ノナジエン)、1,1’−オキシビス(3,5,5−トリメチル−1−ヘキセン)、1,1’−オキシビス(1,9−ウンデセン)、1,1’−オキシビス(1,10−ウンデセン)および1,1’−[オキシビス(1−プロペン−1,3−ジイル)]ビス(4−tert−ブチルベンゼン)からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
少なくとも1つの活性アルデヒドおよび/またはケトンが芳香成分またはフレーバー成分であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
a) 請求項1から7までのいずれか1項で定義された式(I)の少なくとも1つの化合物 (ただし、R1がC8モノアルケニル基であり且つR2がC4〜C10−アルキル基およびC9 8−アルケニル基からなる群から選択される式(I)の化合物は除外される);
b) 香料担体および香料ベースからなる群から選択される少なくとも1つの成分;および
c) 随意に少なくとも1つの香料助剤
を含むことを特徴とする、芳香組成物。
【請求項9】
a) 活性成分として、請求項1から7までのいずれか1項で定義された式(I)の少なくとも1つの化合物(ただし、R1がC8モノアルケニル基であり且つR2がC4〜C10−アルキル基およびC9 8−アルケニル基からなる群から選択される式(I)の化合物は除外される)、または請求項8に記載の芳香組成物;および
b) 消費者製品ベース
を含むことを特徴とする、消費者物品。
【請求項10】
固体または液体洗剤、布地用柔軟剤、香水、コロン、アフターシェーブローション、着香石鹸、シャワーまたはバスソルト、ムース、クリーム、オイルまたはジェル、衛生製品、ヘアケア製品、例えばシャンプー、ボディケア製品、消臭剤または制汗剤、空気清浄剤、化粧品、繊維清浄剤、アイロン水、紙、ワイプまたは漂白剤の形態であることを特徴とする、請求項9に記載の消費者物品。
【請求項11】
表面の臭気特性を付与、強化、改善または修正する方法であって、前記の表面を、請求項1から7までのいずれか1項で定義された式(I)の化合物 (ただし、R1がC8モノアルケニル基であり且つR2がC4〜C10−アルキル基およびC9 8−アルケニル基からなる群から選択される式(I)の化合物は除外される)、請求項8に記載の芳香組成物、または請求項9または10に記載の着香物品と接触させるか、またはそれらで処理することを含む方法。
【請求項12】
請求項1に定義された式(II)のアルデヒドおよび式(III)のアルデヒドまたはケトンから選択される少なくとも1つの発香性アルデヒドおよび/またはケトンの特徴的な香気の表面上での拡散効果を増加または長引かせるための方法であって、前記の表面を、請求項1に定義された化合物(I)を用いて、または前記の化合物(I)を含有する組成物または物品を用いて、前記の少なくとも1つのアルデヒドおよび/またはケトンを時間にわたって放出させやすい条件下で処理することを特徴とする方法。
【請求項13】
表面処理を光の存在中で行う、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
1,1’−オキシビス−1−デセン、1,1’−オキシビス−1−オクテン、1,1’−オキシビス−1−ノネン、1,1’−オキシビス−1−ウンデセン、1,1’−オキシビス(2−メチル−1−デセン)、1,1’−オキシビス(2−メチル−1−ウンデセン)、1,1’−[オキシビス(1−プロペン−1,3−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−[オキシビス(1−ブテン−1,3−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−[オキシビス(2−メチル−1−ブテン−1,4−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−[オキシビス(3−メチル−1−ペンテン−1,5−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−オキシビス(1,6−ノナジエン)、1,1’−オキシビス(3,5,5−トリメチル−1−ヘキセン)、1,1’−オキシビス(1,9−ウンデセン)、1,1’−オキシビス(1,10−ウンデセン)および1,1’−[オキシビス(1−プロペン−1,3−ジイル)]ビス(4−tert−ブチルベンゼン)からなる群から選択される化合物。
【請求項15】
1,1’−[オキシビス(1−プロペン−1,3−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−[オキシビス(1−ブテン−1,3−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−[オキシビス(3−メチル−1−ペンテン−1,5−ジイル)]ジベンゼンおよび1,1’−オキシビス(1,9−ウンデセン)からなる群から選択される、請求項14に記載の化合物。
【請求項1】
式
【化1】
[式中、
R1およびR2は同一または異なり、且つ、随意に酸素原子を含むC2〜C15−炭化水素基をそれぞれ表し、且つ、両方のR3は互いに独立して水素原子またはメチル基を表す]
の化合物を、
・ 式
【化2】
[式中、
R1、R2およびR3は式(I)と同一の意味を有する]
の活性アルデヒド; および/または
・ 式
【化3】
[式中、
R1、R2およびR3は式(I)と同一の意味を有する]
の活性アルデヒドまたはケトン
から選択される少なくとも1つの活性アルデヒドおよび/またはケトンの制御された放出のために用いる使用。
【請求項2】
R1およびR2が同一であり、且つ随意に酸素原子を含むC2〜C15−炭化水素基を表す、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
R1およびR2が、
a) 随意に酸素原子を含むC6〜C15−直鎖、分枝鎖または環式アルキルまたはアルケニル基
b) 1つまたはそれより多くのフェニル基で置換され、且つ随意に酸素原子を含むC2〜C9−直鎖、分枝鎖または環式アルキルまたはアルケニル基
c) 随意に8個までの炭素原子および随意に酸素原子で置換されたベンジル基;または
d) 随意に9個までの炭素原子および随意に酸素原子で置換されたフェニル基
を表す、請求項2の使用。
【請求項4】
R1およびR2が、
a) 随意に酸素原子を含むC6〜C10−直鎖、分枝鎖または環式アルキルまたはアルケニル基、
b) 随意に酸素原子を含むC2〜C6−直鎖、分枝鎖または環式アルキルまたはアルケニル基
c) ベンジル基;または
d) フェニル基
を表す、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
R1およびR2が、
a) C6〜C10−直鎖、分枝鎖または環式アルキルまたはアルケニル基;
b) 1つのフェニル基で置換されたC2〜C4−直鎖、分枝鎖または環式アルキルまたはアルケニル基
c) ベンジル基;または
d) フェニル基
を表す、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
式(I)の化合物が、1,1’−オキシビス−1−デセン、1,1’−オキシビス−1−オクテン、1,1’−オキシビス−1−ノネン、1,1’−オキシビス−1−ウンデセン、1,1’−オキシビス−1−ドデセン、1,1’−オキシビス(2−メチル−1−デセン)、1,1’−オキシビス(2−メチル−1−ウンデセン)、1,1’−[オキシビス(1−プロペン−1,3−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−[オキシビス(1−ブテン−1,3−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−[オキシビス(2−メチル−1−ブテン−1,4−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−[オキシビス(3−メチル−1−ペンテン−1,5−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−オキシビス(1,6−ノナジエン)、1,1’−オキシビス(3,5,5−トリメチル−1−ヘキセン)、1,1’−オキシビス(1,9−ウンデセン)、1,1’−オキシビス(1,10−ウンデセン)および1,1’−[オキシビス(1−プロペン−1,3−ジイル)]ビス(4−tert−ブチルベンゼン)からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
少なくとも1つの活性アルデヒドおよび/またはケトンが芳香成分またはフレーバー成分であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
a) 請求項1から7までのいずれか1項で定義された式(I)の少なくとも1つの化合物 (ただし、R1がC8モノアルケニル基であり且つR2がC4〜C10−アルキル基およびC9 8−アルケニル基からなる群から選択される式(I)の化合物は除外される);
b) 香料担体および香料ベースからなる群から選択される少なくとも1つの成分;および
c) 随意に少なくとも1つの香料助剤
を含むことを特徴とする、芳香組成物。
【請求項9】
a) 活性成分として、請求項1から7までのいずれか1項で定義された式(I)の少なくとも1つの化合物(ただし、R1がC8モノアルケニル基であり且つR2がC4〜C10−アルキル基およびC9 8−アルケニル基からなる群から選択される式(I)の化合物は除外される)、または請求項8に記載の芳香組成物;および
b) 消費者製品ベース
を含むことを特徴とする、消費者物品。
【請求項10】
固体または液体洗剤、布地用柔軟剤、香水、コロン、アフターシェーブローション、着香石鹸、シャワーまたはバスソルト、ムース、クリーム、オイルまたはジェル、衛生製品、ヘアケア製品、例えばシャンプー、ボディケア製品、消臭剤または制汗剤、空気清浄剤、化粧品、繊維清浄剤、アイロン水、紙、ワイプまたは漂白剤の形態であることを特徴とする、請求項9に記載の消費者物品。
【請求項11】
表面の臭気特性を付与、強化、改善または修正する方法であって、前記の表面を、請求項1から7までのいずれか1項で定義された式(I)の化合物 (ただし、R1がC8モノアルケニル基であり且つR2がC4〜C10−アルキル基およびC9 8−アルケニル基からなる群から選択される式(I)の化合物は除外される)、請求項8に記載の芳香組成物、または請求項9または10に記載の着香物品と接触させるか、またはそれらで処理することを含む方法。
【請求項12】
請求項1に定義された式(II)のアルデヒドおよび式(III)のアルデヒドまたはケトンから選択される少なくとも1つの発香性アルデヒドおよび/またはケトンの特徴的な香気の表面上での拡散効果を増加または長引かせるための方法であって、前記の表面を、請求項1に定義された化合物(I)を用いて、または前記の化合物(I)を含有する組成物または物品を用いて、前記の少なくとも1つのアルデヒドおよび/またはケトンを時間にわたって放出させやすい条件下で処理することを特徴とする方法。
【請求項13】
表面処理を光の存在中で行う、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
1,1’−オキシビス−1−デセン、1,1’−オキシビス−1−オクテン、1,1’−オキシビス−1−ノネン、1,1’−オキシビス−1−ウンデセン、1,1’−オキシビス(2−メチル−1−デセン)、1,1’−オキシビス(2−メチル−1−ウンデセン)、1,1’−[オキシビス(1−プロペン−1,3−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−[オキシビス(1−ブテン−1,3−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−[オキシビス(2−メチル−1−ブテン−1,4−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−[オキシビス(3−メチル−1−ペンテン−1,5−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−オキシビス(1,6−ノナジエン)、1,1’−オキシビス(3,5,5−トリメチル−1−ヘキセン)、1,1’−オキシビス(1,9−ウンデセン)、1,1’−オキシビス(1,10−ウンデセン)および1,1’−[オキシビス(1−プロペン−1,3−ジイル)]ビス(4−tert−ブチルベンゼン)からなる群から選択される化合物。
【請求項15】
1,1’−[オキシビス(1−プロペン−1,3−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−[オキシビス(1−ブテン−1,3−ジイル)]ジベンゼン、1,1’−[オキシビス(3−メチル−1−ペンテン−1,5−ジイル)]ジベンゼンおよび1,1’−オキシビス(1,9−ウンデセン)からなる群から選択される、請求項14に記載の化合物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2012−502092(P2012−502092A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526598(P2011−526598)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【国際出願番号】PCT/IB2009/053790
【国際公開番号】WO2010/029462
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(390009287)フイルメニツヒ ソシエテ アノニム (146)
【氏名又は名称原語表記】FIRMENICH SA
【住所又は居所原語表記】1,route des Jeunes, CH−1211 Geneve 8, Switzerland
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【国際出願番号】PCT/IB2009/053790
【国際公開番号】WO2010/029462
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(390009287)フイルメニツヒ ソシエテ アノニム (146)
【氏名又は名称原語表記】FIRMENICH SA
【住所又は居所原語表記】1,route des Jeunes, CH−1211 Geneve 8, Switzerland
【Fターム(参考)】
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