説明

活性アルデヒド又はケトンを放出することができる3〜7員の1,3−ジアザ−4−オキソ−複素環式誘導体

本発明は、生物学的活性アルデヒド又はケトンを制御された様式で周囲に放出することができる、3〜7員の1,3−ジアザ−4−オキソ−複素環式誘導体、例えばイミダゾリジノン誘導体を提供する。本発明は、この化合物の賦香成分又は風味付け成分としての使用、また同様にこのような誘導体を含有する賦香組成物及び消費者物品にも関する。本発明は、本発明の誘導体の製造方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、生物学的活性のあるアルデヒド又はケトンを制御された様式で周囲に放出することができる、3〜7員の1,3−ジアザ−4−オキソ−複素環式誘導体を提供する。本発明は、この化合物の賦香成分又は風味付け成分としての使用、また同様にこのような誘導体を含有する賦香組成物及び消費者物品にも関する。本発明は、本発明の複素環式誘導体の製造方法も提供する。
【0002】
先行技術
多くの活性化合物は高度に揮発性であり、従って限定された期間にわたり認識されることができるだけである。従って、特に香料製造業及びフレーバーリングの分野において、活性揮発性分子の制御された放出を可能にする新規の効果的な前駆体を見出すために大規模な研究が実施されてきている。先行技術は、活性化合物、例えばフレグランスの効果を長引かせるか又は促進することができる幾つかの前駆体を開示する。にもかかわらず、先行技術のいずれの文献も、アルデヒド及びケトンの制御された放出のための前駆体としての本発明の1,3−ジアザ−4−オキソ複素環式誘導体を開示しない。
【0003】
WO 00/02991においては、アミンとカルボニル化合物を反応させて、パフュームを放出することができるイミンを形成することが説明されている。しかしながら、この形成されるイミンは、比較的不安定であるために、液体適用において使用することが困難である。
【0004】
V. Jurcik 及び R. Wilhelmは、Tetrahedron 2004, 60, 3205-3210において、水中でのアミナールの製造を最近報告した。2種の異なる第2級アミン及び幾つかのジアミン(5〜7員環を有するアミナールを生じる)がアミナールを合成するために使用されている。にもかかわらず、この説明された化合物の構造は、本発明の1、3−ジアザ−4−オキソ−複素環式誘導体とは顕著に異なり、かつ、この刊行物中には、揮発性の活性アルデヒド及びケトンの放出の制御のためのこれらの化合物の可能性のある使用について証拠を提示しない。この論文は、生物学的に活性のある化合物のためのシントンとしてのアミナールに焦点をあてる。
【0005】
アルデヒド又はケトンの制御された放出のための前駆体として使用される関連する構造は、WO 00/24721及び02/38120中にも報告され、ここでオキサゾリジンが説明されている。しかしながら、これらの化合物は極めて異なり、というのもエステル誘導体の化学的安定性及び反応性は、アミド誘導体、すなわち、本発明の化合物のものとはかなり異なるからである。従って、これらの文献は、本発明を予期しない。
【0006】
先行技術において報告されている複素環式系はしばしば、余りに安定であるか又は余りに不安定であり、従って、実際の適用における揮発性化合物の制御された放出のための輸送系としてはむしろ不適当である。従って、様々な適用のために必要とされるとおりに前駆体の放出速度を得るために、安定性と不安定性との間での最適な平衡に達することが必要であり、このような課題を達成することは極めて困難である。WO 02/38120は、例えば、オキサゾリジンの光不安定性前駆体を記載し、これは恐らくは、加水分解に対するオキサゾリジン残基の安定性を増加させるためである。にもかかわらず、光不安定性輸送系はしばしば、実際の適用には理想的でなく、というのはこの放出速度は、前駆体が曝される光強度に依存するからである。従って、製品貯蔵の間に加水分解に対して十分に安定であり、かつ、更なる付加的な放出誘引、例えば光又は酵素に頼ることなく、加水分解により活性物質を放出する新規輸送系の開発に対する需要が未だに存在する。
【0007】
発明の説明
意外にも、3〜7員の1,3−ジアザ−4−オキソ複素環式誘導体が、酸性加水分解に十分安定であるが、適用において生理活性アルデヒド又はケトンの効率的な放出を可能にすることが見出された。本発明の化合物は、従って、適用における生物学的に活性のあるアルデヒド又はケトンの長期持続性を、これらの活性化合物の制御された放出系を提供することにより、増加させる。
【0008】
「活性」との用語は、本願明細書では、周囲の環境中へと利点又は作用、特に賦香作用、風味付与作用、マスキング作用、製薬的作用、農芸化学作用、昆虫忌避作用又は誘引作用、殺細菌作用、殺虫作用及び/又は殺真菌作用をもたらすことができるアルデヒド又はケトンであると意味される。従って、例えば、「活性アルデヒド又はケトン」は、これらの化合物を賦香成分又は風味付け成分として、昆虫忌避剤又は誘引剤として、又は医薬品、殺虫剤、殺細菌剤又は殺真菌剤として使用可能にするような少なくとも1の特性を有する。有利な活性アルデヒド又はケトンは、賦香成分又は風味付け成分、昆虫忌避剤又は誘引剤、殺細菌剤又は殺真菌剤である。特に有利な活性アルデヒド又はケトンは、賦香性又は風味付けアルデヒド又はケトンである。
【0009】
上記及び下記の本発明の実施態様の全てによれば、本発明の化合物は、活性アルデヒド又はケトンが賦香成分、即ち、賦香性アルデヒド又はケトンである場合に、特に有用である。「賦香性アルデヒド又はケトン」とは、香料産業において現在使用されている化合物であり、即ち、快い作用を付与するために賦香性調製物又は組成物中で活性成分として使用される化合物である。換言すれば、賦香成分であると考えられるこのようなアルデヒド又はケトンは、単に匂いを有するだけでなく、香料産業の分野の当業者によって良いようにかまたは気持ちよく組成物の匂いを付与又は変化させることができるものとして認識されなければならない。これからは、「賦香性アルデヒド又はケトン」を「賦香性化合物」とも呼ぶ。
【0010】
本発明は、活性アルデヒド又はケトンの正確な特性とは独立して、正確に同じ様式で実施される。従って、本発明が更に以下本願明細書において、「賦香性化合物」について特定の言及をして説明される場合であっても、この以下の実施態様は他の活性アルデヒド又はケトンにも適用可能であることが理解される(即ち、「賦香性」との表現は、例えば「フレーバー付与」、「昆虫誘引性」、「昆虫忌避性」、「マスキング」、「製薬学的」、「殺真菌性」、「殺虫性」又は「殺細菌性」との表現で置き換えることができる)。
【0011】
本発明の化合物は、生物学的に活性のあるアルデヒド又はケトンを制御された様式で放出することができる3〜7員の1,3−ジアザ−4−オキソ複素環式誘導体であり、この化合物は以下の式
【化1】

[前記式中、
nは、0〜3の間で変動する整数である、
1及びR2は、それぞれ式R1CHO又はR12COのアルデヒド又はケトンの残基であり、前記アルデヒド又はケトンは、80〜230g/molの範囲内の分子量を有し、かつ、賦香作用、風味付与作用、マスキング作用、製薬的作用、農芸化学作用、昆虫忌避作用又は誘引作用、殺細菌作用、殺虫作用及び/又は殺真菌作用を有する、
3は、水素原子又は式COOR9の1の基により場合により置換されているC1〜C4アルキル又はアルケニル基であり、R9は水素原子又はC1〜C4アルキル又はアルケニル基である、
4は、水素原子又は場合により1〜5個の酸素原子を含有するC1〜C12アルキル、アルケニル又はアリール基である、
5、R6、R7及びR8は、同時に又は相互に独立して、水素原子、又はC1〜C12アルキル、アルケニル又はアリール基であり、この基は場合により1〜5個の酸素原子及び/又は1個の硫黄原子及び/又は1、2又は3個の窒素原子を含有し、
4及びR5、又はR7及びR5は一緒になって、場合により1個の酸素原子を含有するC2〜C6アルカンジイル又はアルケンジイル基を形成してよい、
nが0でない場合には、R5及びR6は、これらの基が結合している炭素原子と一緒になって、カルボニル基を形成してよい]により定義される。
【0012】
本発明の特定の一実施態様によれば、式(I)の前記化合物は、次の化合物であることができる;
式中、
nは0又は1である、
2は、水素原子であり、R1は、式R1CHOのアルデヒドの残基であり、前記アルデヒドは、80〜230g/molの範囲内の分子量を有し、かつ、賦香作用、風味付与作用、マスキング作用、製薬的作用、農芸化学作用、昆虫忌避作用又は誘引作用、殺細菌作用、殺虫作用及び/又は殺真菌作用を有する、
3は、水素原子又はC1〜C4アルキル基である、
4は、水素原子又は場合により1又は2個の酸素原子を含有するC1〜C4アルキル基である、
5及びR6は、同時に又は相互に独立して、水素原子又はC1〜C10アルキル、アルケニル又はアリール基であり、前記基は場合により1〜5個の酸素原子及び/又は1個の硫黄原子及び/又は1、2又は3個の窒素原子を含有し、R4及びR5は、一緒になって、場合により1個の酸素原子を含有するC3〜C4アルカンジイル基を形成してよい、
7及びR8は、同時に又は相互に独立して、水素原子又はC1〜C4アルキル基であり、前記基は場合により1又は2個の酸素原子を含有し、R7及びR5は、一緒になって、場合により1個の酸素原子を含有するC3〜C4アルカンジイル基を形成してよい。
【0013】
本願明細書で以上又は以下においては、基とは「アルキル、アルケニル又はアリール基」であるとして定義される場合には、この基は線状、分枝鎖状又は環式のアルキル又はアルケニル基の形、場合によってアルキル又はアルケニル基で置換されているアリール基の形、又は、前記の基の混合物の形もにあることができることが意味され、例えば、1種のみへの特定の限定が言及されていない限りは、特定の基は線状アルキル、分枝鎖状アルケニル、(ポリ)環式アルキル及びアリール残基を含有してよい。
【0014】
この実施態様のいくつかによれば、式(I)の化合物は有利にソフトウェアEPIwin v.3.10(2000US Environmental Protection Agencyで入手可能)を用いて計算することによって得られるように、0.01Pa未満の蒸気圧によって特徴付けられる。有利な一実施態様によれば、前記の蒸気圧は、0.001Pa未満である。
【0015】
本発明の特定の一実施態様によれば、nは0であってよい。この場合には本発明の化合物はイミダゾリジノン誘導体である。
【0016】
上記で言及したとおり、本発明の化合物は、特定の分子量を有する生物学的に活性のある(それぞれ式R1CHO又はR12COの)アルデヒド又はケトンを放出することができる。本発明の特定の一実施態様によると、前記の生物学的に活性のあるアルデヒド又はケトンは、6又は7〜15個の炭素原子を含有する。
【0017】
更に、上記の実施態様の何れかによれば、前記の賦香性アルデヒドまたはケトンは、有利にソフトウェアEPIwin v.3.10(2000、US Environmental Protection Agencyで入手可能)を用いて計算することによって得られるように、2.0Paを上廻る蒸気圧によって特徴付けられる。別の実施態様によれば、蒸気圧は、5.0Paを上廻るかまたはなおいっそう7.0Paを上廻る。
【0018】
さらに一層より有利な一実施態様においては、式R1CHOの活性アルデヒドは、式R1CHO[式中R1は、線状又はα−分枝鎖状のC6〜C12アルキル基]ベンズアルデヒド、1,3−ベンゾジオキソール−5−カルボキサルデヒド(ヘリオトロピン)、3−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−2−メチルプロパナール、2,4−デカジエナール、2−デセナール、4−デセナール8−デセナール9−デセナール、3−(6,6−ジメチル−ビシクロ[3.1.1]ヘプタ−2−エン−2−イル)プロパナール、2,4−ジメチル−3−シクロヘキセン−1−カルバルデヒド(Triplal (R)、由来:International Flavors & Fragrances, ニューヨーク,米国)、3,5−ジメチル−3−シクロヘキセン−1−カルバルデヒド、1−(3,3−ジメチル−1−シクロヘキシル)−1−エタノン、5,9−ジメチル−4,8−デカジエナール、2,6−ジメチル−5−ヘプタナール(メロナール)、3,7−ジメチル−2,6−オクタジエナール(シトラール)、3,7−ジメチルオクタナール3,7−ジメチル−6−オクテナール(シトロネラール)、(3,7−ジメチル−6−オクテニル)−アセタルデヒド、3−ドデセナール、4−ドデセナール、3−エトキシ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド(エチルバニリン)、4−エチルベンズアルデヒド、3−(2−及び4−エチルフェニル)−2,2−ジメチルプロパナール、2−フランカルバルデヒド(フルフラール)、2,4−ヘプタジエナール4−へプテナール、2−ヘキシル−3−フェニル−2−プロペナール(ヘキシルケイ皮アルデヒド)、2−ヒドロキシベンズアルデヒド、7−ヒドロキシ−3,7−ジメチルオクタナール(ヒドロキシシトロネラール)、4−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒド(バニリン)、4−及び3−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)−3−シクロヘキセン−1−カルバアルデヒド(Lyral(R)、由来:International Flavors and Fragrances, ニューヨーク,米国)、4−イソプロピルベンズアルデヒド(クミンアルデヒド)、3−(4−イソプロピルフェニル)−2−メチルプロパナール、2−(4−イソプロピルフェニル)プロパナール、(4R)−1−p−メテン−9−カルバルデヒド(Liminal (R)、由来;Firmenich SA, ジュネーブ, スイス国)、2−及び4−メトキシベンズアルデヒド(アニスアルデヒド)、6−メトキシ−2,6−ジメチルヘプタナール(メトキシメロナール)、8(9)−メトキシ−トリシクロ[5.2.1.0.(2,6)]デカン−3(4)−カルバルデヒド(Scentenal (R)、由来; Firmenich SA, ジュネーブ, スイス国)、4−メチルベンズアルデヒド、2−(4−メチレンシクロヘキシル)プロパナール、1−メチル−4−(4−メチル−3−ペンテニル)−3−シクロヘキセン−1−カルバルデヒド(Precyclemone(R) B,、由来;International Flavors & Fragrances, ニューヨーク,米国)、4−(4−メチル−3−ペンテニル)−3−シクロヘキセン−1−カルバルデヒド(Acropal(R)、由来; Givaudan-Roure SA., Vernier, スイス国)、(4−メチルフェノキシ)アセトアルデヒド、(4−メチルフェニル)アセトアルデヒド、3−メチル−5−フェニルペンタナール、2−(1−メチルプロピル)−1−シクロヘキサノン、2,4−ノナジエナール、2,6−ノナジエナール2−ノネナール6−ノネナール8−ノネナール2−オクテナール、フェノキシアセトアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド3−フェニルブタナール(Trifernal(R)、由来;Firmenich SA, ジュネーブ, スイス国)、3−フェニルプロパナール2−フェニルプロパナール(ヒドラトロプアルデヒド)、3−フェニル−2−プロペナール(ケイ皮アルデヒド)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパナール(Lilial(R)、由来;Givaudan-Roure SA, Vernier, スイス国)、3−(4−tert−ブチルフェニル)プロパナール(Bourgeonal(R)、由来;Quest International, Naarden, オランダ)、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン−4−カルバルデヒド、exo−トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン−8exo−カルバルデヒド(Vertral(R)、由来; Symrise, Holzminden, ドイツ国)、2,6,6−トリメチル−ビシクロ[3.1.1]ヘプタン−3−カルバルデヒド(ホルミルピナート)、2,4,6−及び3,5,6−トリメチル−3−シクロヘキセン−1−カルバルデヒド、2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−アセトアルデヒド(カンフォレンアルデヒド)、2,6,10−トリメチル−2,6,9,11−ドデカテトラエナール、2,5,6−トリメチル−4−ヘプテナール、3,5,5−トリメチルヘキサナール、2,6,10−トリメチル−9−ウンデセナール、2−ウンデセナール、10−ウンデセナール又は9−ウンデセナール及びその混合物、例えばIntreleven aldehyde (由来;International Flavors & Fragrances, ニューヨーク,米国)の群から選択される:その際、下線と共に示された化合物は、本発明のより一層有利な実施態様において特に有用なフレグランスアルデヒドである。
【0019】
それぞれ、式R12COの活性ケトンは有利には、式R12COのC6〜C11−ケトン[式中R1及びR2は線状アルキル基である]、ダマセノン及びダマスコン、イオノン及びメチルイオノン(例えば、Iralia(R) Total、由来: Firmenich SA, ジュネーブ, スイス国)、イロン、マクロ環ケトン、例えば、シクロペンタデカノン(Exaltone(R))又は3−メチル−4−シクロペンタデセン−1−オン及び3−メチル−5−シクロペンタデセン−1−オン(デルタムセノン(Delta Muscenone))又は3−メチル−1−シクロペンタデカノン(ムスコン(Muscone))(全てFirmenich SA, ジュネーブ, スイス国から)、1−(2−アミノフェニル)−1−エタノン、1−(5,5−ジメチル−1−シクロヘキセン−1−イル)−4−ペンテン−1−オン(Neobutenone(R), 由来: Firmenich SA, ジュネーブ, スイス国)、1−(3,3−ジメチル−1−シクロヘキシル)−1−エタノン、2,5−ジメチル−2−オクテン−6−オン、4,7−ジメチル−6−オクテン−3−オン、(3,7−ジメチル−6−オクテニルオキシ)アセトアルデヒド、1−(2,4−ジメチルフェニル)−1−エタノン、4−(1,1−ジメチルプロピル)−1−シクロヘキサノン(Orivone(R), 由来: International Flavors & Fragrances, ニューヨーク,米国)、2,4−ジ−tert−ブチル−1−シクロヘキサノン、エチル4−オクソペンタノアート、1−(4−エチルフェニル)−1−エタノン、2−ヘキシル−1−シクロペンタノン、2−ヒドロキシ−3−メチル−2−シクロペンテン−1−オン、4−(4−ヒドロキシ−1−フェニル)−2−ブタノン(ラズベリーケトン)、1−(2−及び4−ヒドロキシフェニル)−1−エタノン、4−イソプロピル−2−シクロヘキセン−1−オン、1−(4−イソプロピル−1−フェニル)−1−エタノン、1(6),8−p−メンタジエン−2−オン(カルボン(carvone))、4(8)−p−メンテン−3−オン、1−(1−p−メンテン−2−イル)−1−プロパノン、メトン、(1R,4R)−8−メルカプト−3−p−メンタノン、1−(4−メトキシフェニル)−1−エタノン、7−メチル−2H,4H−1,5−ベンゾジオキセピン−3−オン(Calone(R), 由来: C.A.L. SA, Grasse, フランス)、5−メチル−3−ヘプタノン6−メチル−5−ヘプテン−2−オン、メチル3−オキソ−2−ペンチル−1−シクロペンタンアセタート(Hedione(R), 由来: Firmenich SA, ジュネーブ, スイス国)、1−(4−メチルフェニル)−1−エタノン(4−メチルアセトフェノン)、5−メチル−exo−トリシクロ[6.2.1.0(2,7)]ウンデカ−4−オン、3−メチル−4−(1,2,2−トリメチルプロピル)−4−ペンテン−2−オン、2−ナフタレニル−1−エタノン、1−(オクタヒドロ−2,3,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)−1−エタノン(異性体混合物、Iso E Super(R), 由来: International Flavors & Fragrances, ニューヨーク,米国)、3,4,5,6,6−ペンタメチル−3−ヘプテン−2−オン2−ペンチル−1−シクロペンタノン(Delphone, 由来: Firmenich SA, ジュネーブ, スイス国)、4−フェニル−2−ブタノン(ベンジルアセトン)、1−フェニル−1−エタノン(アセトフェノン)、2−及び4−tert−ブチル−1−シクロヘキサノン、1−(4−tert−ブチルフェニル)−1−エタノン)、2,4,4,7−テトラメチル−6−オクテン−3−オン、1,7,7−トリメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オン(カンファー)、2,6,6−トリメチル−1−シクロヘプタノン、2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1,4−ジオン、4−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−2−ブタノン(ジヒドロイオノン)、1−(2,4,4−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−2−ブテン−1−オン、1−(3,5,6−トリメチル−3−シクロヘキセン−1−イル)−1−エタノン、2,2,5−トリメチル−5−ペンチル−1−シクロペンタノンの群から選択され、その際下線と共に示された化合物は、本発明のさらに一層有利な実施態様において特に有用なフレグランスケトンである。
【0020】
本発明の特定の一実施態様によると、R3は水素原子又はメチル基である。本発明の特定の一実施態様によると、R4は水素原子である。
【0021】
本発明の特定の一実施態様によると、R6は水素原子である。
【0022】
本発明の特定の一実施態様によると、R5は、式R5CH(NH2)COOHのアミノ酸、特に天然のα−アミノ酸、例えばアラニン、アルギニン、アスパルギン、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、及びアスパルギン酸、グルタミン酸、又は、ノルロイシン、2−フェニルグリシン、イソアスパルギン及びイソグルタミンの群から選択された人工α−アミノ酸に由来する残基である。有利には、前記残基は、グリシン、R−システイン又はS立体配置を有する任意の他のアミノ酸に由来する。より有利には、前記残基は、グリシン又はS−プロリンに由来する。
【0023】
本発明の更なる一観点は、式(I)の化合物を製造するにあたり、上記で定義されたとおりの式R1CHOの活性アルデヒド又は式R12COの活性ケトンを、式(II)
【化2】

[式中、R3〜R8及びnは、式(I)に記載されたのと同じ意味合いを有する]のアミノアルキルアミド誘導体又は式(II)のアミノアルキルアミド誘導体に由来するその塩酸塩又は臭化水素酸塩と反応させる工程を含むことを特徴とする、式(I)の化合物の製造方法に関する。
【0024】
特定の一実施態様によると、この合成のために使用されるアミノアルキルアミド誘導体は、α−アミノ酸に由来するアミノアセトアミドである。このアミノアセトアミドは有利には、アラニンアミド、アルギニンアミド、システインアミド、グルタミンアミド、グリシンアミド、ヒスチジンアミド、ロイシンアミド、イソロイシンアミド、ノルロイシンアミド、リシンアミド、メチオニンアミド、フェニルアラニンアミド、2−フェニルグリシンアミド、プロリンアミド、セリンアミド、トレオニンアミド、トリプトファンアミド、チロシンアミド、バリンアミド、イソアスパラギンアミド、イソグルタミンアミド及びアスパラギン酸又はグルタミン酸のアミドの群から選択され、グリシンアミド及びプロリンアミドが特に有利である。幾つかのアミノアセトアミド誘導体が市販されている。
【0025】
特にシステインアミドは、R立体配置を有し、かつ他の全てのアミノアセトアミドはS立体配置を有し、これはこれら化合物が由来する天然のアミノ酸と同様である。従って、本発明の3〜7員の1,3−ジアザ−4−オキソ−複素環式誘導体は天然のアミノ酸に由来し、良好な生体親和性を有することが期待される。同じことはその分解生成物にも当てはまる。従って、式(I)の化合物は、活性アルデヒド又はケトンの制御された放出のための新規の特に興味深い前駆体を構成する可能性がある。
【0026】
その極めて特異的な化学構造のために、本発明の化合物は、分解反応を介して、残基及び生物学的に活性のあるケトン又はアルデヒドを放出することができる。この分解反応は、賦香性化合物の放出を生じるが、pH変化又は熱により影響を及ぼされると考えられ、しかしながら、これらは他の種類の機構により誘発されてもよい。
【0027】
上記したとおり、本発明は、賦香性成分の制御された放出のための上記した式(I)の化合物の使用に関する。言い換えると、本発明は、賦香性アルデヒド又はケトンの制御された放出により、賦香組成物又は賦香された物品の匂い特性を付与、促進、改善又は変更する方法であって、本発明の化合物少なくとも1種の有効量を前記組成物又は物品に添加することを含む方法に関する。「本発明の化合物の使用」とは、本願明細書では、前記の化合物を含有する任意の組成物の使用も理解されるべきであり、これは活性成分として香料産業において有利に使用されることができる。
【0028】
前記組成物は、実際には賦香成分として有利に使用されることができ、本発明の主題でもある。
【0029】
従って、本発明の他の主題は、次のものを含有する賦香組成物である:
i)賦香成分として上記で定義したとおりの本発明の化合物少なくとも1種、
ii)香料キャリア及び香料ベースからなる群から選択される少なくとも1種の成分、及び
iii)場合により少なくとも1種の香料助剤。
【0030】
「香料キャリア」とは、香料の観点から実質的に中性であり、即ち、賦香性成分の官能的特性を顕著に変更しない材料を本願明細書では意味する。前記キャリアは液体であってよい。
【0031】
液体キャリアとしては、限定する例としてではなく、乳化系、即ち、溶媒及び界面活性剤系、又は、香料において一般的に使用される溶媒を挙げてよい。香料において一般的に使用されている溶媒の性質及び種類の詳細な説明は、包括的であることができない。しかしながら、限定する例としてでなく、溶媒、例えばジプロピレングルコール、ジエチルフタラート、イソプロピルミリスタート、安息香酸ベンジル、2−(2−エトキシエトキシ)−1−エタノール又はクエン酸エチルを挙げることができ、これらは最も一般的に使用されている。
【0032】
一般的には、「香料ベース」とは、本願明細書では、少なくとも1種の賦香性共成分を含有する組成物を意味する。前記の賦香性共成分は、本発明の化合物でない。さらに、「賦香性共成分」の場合、本願明細書中では、快よい効果を付与するために賦香性調製物又は組成物中で使用される化合物を意味する。換言すれば、賦香性成分であると考えられるかかる共成分は、当業者によって良いようにかまたは気持ちよいように組成物の匂いを付与又は変更させることができるものであって、まさに1つの匂いを有するだけでないこととして認められなければならない。
【0033】
ベース中に存在する賦香性共成分の性質及び種類は、ここではより詳細な説明を認めず、このような説明はいずれにせよ包括的とはならず、当業者はこのような成分を一般的知識を根拠に、そして意図される用途又は適用及び所望される官能的効果に応じて選択することができる。一般的な用語においては、これらの賦香性共成分は、アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、アセタート、ニトリル、テルペン炭化水素、窒素性又は硫黄性複素環式化合物及び精油にまで変動する化学的クラスに属し、この賦香性共成分は天然又は合成由来であることができる。このような共成分の多くの例はいずれにせよ、参考文献、例えばS. Arctander, Perfume and Flavor Chemicals, 1969, Montclair, New Jersey, USAによる書物またはその最新の版、または同様の種類の他の作品、ならびに香料産業分野における豊富な特許文献に見出すことができる。前記共成分は、様々な種類の賦香性化合物を制御された様式で放出することが知られている化合物であってもよいことも理解される。
【0034】
一般的には、「香料助剤」とは、本願明細書では、更なる付加された利点、例えば色、特定の光耐性、化学的安定性その他を付与することができる成分を意味する。香料ベース中で一般的に使用される助剤の性質及び種類の詳細な説明は包括的であることができないが、しかしながら前記成分は当分野の当業者にとっては良く知られていることを言及すべきである。
【0035】
少なくとも1種の本発明の化合物及び少なくとも1種の香料キャリアからなる本発明の組成物は、本発明の特定の実施態様を提示し、また同様に少なくとも1種の本発明の化合物、少なくとも1種の香料キャリア、少なくとも1種の香料ベース及び場合により少なくとも1種の香料助剤を含有する賦香性組成物もである。
【0036】
上記した組成物中で1種より多い本発明の化合物又は類似の種類の他の前駆体を有するとの可能性が重要であることをここで言及することが有用であり、というのは、これによりパーフューマーは、本発明の様々な化合物の匂い調性(tonality)を有するアコード、パフュームを調製し、これによりその研究のための新規の道具を作成することができるからである。
【0037】
さらに、本発明の化合物又はこの化合物を含有する賦香性組成物は、有用な賦香性成分であり、この成分は現代の香料産業の分野の全て、例えばファイン香料産業又は機能的香料産業において有利に使用されることができる。無論、本発明の化合物は、賦香性化合物のより制御された沈着(deposition)及び結果としての放出を達成するためにファイン香料産業又は機能的香料産業において有利に利用されてよい。例えば、本発明の化合物は、良好な直接性、低揮発性及び発香性分子の良好に制御された放出のために、上記で定義された発香性成分の迅速又は持続された放出の作用を要求する任意の適用において組み込まれることができ、かつ、さらに、洗浄及び/又は乾燥プロセスを超えて十分に持続するであろう処理表面に対してフレグランス及びフレッシュさを付与することができる。適した表面は、特に、テキスタイル、硬質表面、髪及び皮膚である。
【0038】
結果として、
i)賦香性成分として上記で定義したとおりの少なくとも1種の本発明の化合物、及び
ii)消費者製品ベース
を含有する賦香された物品も、本発明の主題である。
【0039】
明確性のために、「消費者製品ベース」とは、本願明細書では、賦香性成分と相容性である消費者製品を意味することを言及すべきである。言い換えると、本発明による賦香された物品は、機能性処方物また同様に場合により付加的な利得剤(benefit agent)を含有し、消費者製品、例えば洗剤又はエアフレッシュナーに相応し、かつ、少なくとも1種の本発明の化合物の嗅覚的に有効な量を含有する。
【0040】
消費者製品の構成成分の性質及び種類は、ここではより詳細な説明を認めず、このような説明はいずれにせよ包括的とはならず、当業者はこのような成分を一般的知識を根拠に、そして前期製品の所望される性質及び作用に応じて選択することができる。
【0041】
適した消費者製品ベースの例は、固体又は液体の洗剤及び布用柔軟剤また同様に香料産業において一般の他の物品、即ちパフューム、コロン又はアフターシェーブローション、賦香されたセッケン、シャワージェル又はバスソルト、ムース、クリーム、オイル又はゲル、衛生製品又は髪用ケア製品、例えばシャンプー、ボディケア製品、デオドラント又は制汗剤、エアフレッシュナー及びまた化粧品も含む。家庭用又は工業用の使用に意図されようとそうでなかろうと、洗剤としては、意図された適用、例えば洗剤組成物又はクリーニング製品であって、様々な表面を洗ったり又はきれいにしたりするための製品が存在し、これは例えばテキスタイル、皿又は硬質表面処理のために意図される。他の賦香された物品は、布リフレッシャー、アイロン水、ペーパー、ワイプ又は漂白剤である。
【0042】
特に、本発明の化合物が、例えば2.5〜7の範囲内を含むような酸性pHを有する物品のためにとりわけ適することを見出した。
【0043】
前述の消費者製品ベースのいくつかは、本発明の化合物のためのアグレッシブな媒体を提示してよく、この結果これは、未熟な分解から後者の物品を例えばカプセル化により保護するために必要であってよい。
【0044】
有利な賦香性組成物又は賦香された物品は、パフューム、布用洗剤又は柔軟剤ベースである。
【0045】
本発明の化合物が組み込まれることができる布用洗剤又は柔軟剤組成物の典型的な例は、WO 97/34986 又はUS特許公報4,137,180及び5,236,615 又はEP 799 885に説明されている。使用できる他の典型的な洗剤及び柔軟剤組成物は、Ullman's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 第A8巻, 315-448頁(1987)及び第A25巻, 747-817頁(1994); Flick, Advanced Cleaning Product Formulations, Noye Publication, Park Ridge, New Jersey (1989); Showell, in Surfactant Science Series, 71巻: Powdered Detergents, Marcel Dekker, New York (1988); Proceedings of the World Conference on Detergents (4th, 1998, Montreux, Switzerland), AOCS プリントといった文書に説明されている。
【0046】
前述の様々な物品又は組成物中に本発明による化合物が組み込まれることができる割合は、値の大きな範囲内で変動してよい。これらの値は、本発明の化合物が、この分野で一般的に使用される賦香性共成分、溶媒又は添加剤と混合される場合に、賦香されるべき物品又は製品の性質及び所望される嗅覚的効果また同様に所定の組成物中の共成分の性質に依存している。
【0047】
例えば、典型的な濃度は、0.001〜10質量%のオーダーにあるか、又は更には、組み込まれる組成物の質量に対する本発明の化合物のオーダーにある。これらの化合物が前述の様々な消費者製品の賦香において直接的に適用される場合に、これらの値よりも低い濃度、例えば0.001〜5質量%が使用できる。
【0048】
本発明の他の主題は、表面の賦香方法又は表面に対する発香成分の特徴的なフレグランスの分散作用を増強するか又は持続するための方法であって、前記表面が、本発明の化合物の存在下で処理されていることを特徴とする方法に関する。適した表面は、特に、テキスタイル、硬質表面、髪及び皮膚である。
【0049】
実施例
本発明は、以下において次の例によりさらに詳細に記載され、ここで、省略形は、当分野で通常の意味を有し、温度は摂氏度(℃)で示されている。高解像度エレクトロスプレー質量スペクトル(HR-ESI-MS)を、Agilent Eclipse Plus C18 カラム(2.1 x 100 mm i.d.)を備えたAgilent 1200 RR高性能液体クロマトグラフィで記録し、水の勾配(ギ酸0.1%)/アセトニトリルを含有する、を用いて0.5ml/分で50℃で溶出し、350℃で、5ml/分でN2流でもって、40psiのネブライザー圧力、キャピラリー電圧3000V及びフラグメンター電圧140Vでもって、MSD TOF HR G3250A質量分析計(マルチモードソース、デュアルモードポジティブ)に連結した。市販の試薬及び溶媒を、他に記載がない限りは精製せずに使用した。反応を標準的なガラス器中でN2下で実施した。
【0050】
幾つかの化合物のために特定の立体配座又は立体配置が示されるものの、このことは、説明した異性体にこれら化合物の使用を限定することを意味しない。本発明によれば、全ての可能な立体配座又は立体配置異性体が、同じ作用を有することが予期される。
【0051】
実施例1
1,3−ジアザ−4−オキソ−複素環式誘導体の製造
a)2−(2−フェニルプロピル)イミダゾリジン−4−オンの合成
3−フェニルブタナール(Trifernal(R)、0.67g、4.5mmol)、グリシンアミドヒドロクロリド(0.50g、4.5mmol)、トリエチルアミン(0.46g、4.5mmol)及びK2CO3のエタノール(4ml)中の混合物を、24時間60℃に加熱した。この溶媒を次いで40℃で真空下で除去した。この残分をエーテル中に取り込み、この溶媒を、ジアステレオ異性体の混合物としての高度に粘性のある油0.52g(57%)の収率まで蒸発させた。
HR−ESI−MS (pos.): 205.1333 [M+H]+; C12172+, 計算: 205.1340。
【0052】
b)(±)−(7a−S)−3−(2−フェニルプロピル)ヘキサヒドロ−1H−ピロロ[1,2−C]イミダゾール−1−オンの合成
Trifernal(R)(0.65g、4.4mmol)、S−プロリンアミド(0.50g、4.4mmol)及びK2CO3のエタノール(4.48g)中の混合物を24時間60℃で加熱した。次いでこの溶媒を40℃で真空下で除去した。この残分をエーテル中に取り込み、この溶媒を、ジアステレオ異性体の混合物としての油1.03g(97%)の収率まで蒸発させた。
HR−ESI−MS (pos.): 245.1658 [M+H]+; C15212+, 計算: 245.1653。
【0053】
c)(5S)−5−メチル−2−(2−フェニルプロピル)イミダゾリジン−4−オンの合成
3−フェニルブタナール(Trifernal(R)、1.18g、8.0mmol)、S−アラニンアミドヒドロクロリド(1.00g、8.0mmol)、トリエチルアミン(0.81g、8.0mmol)及びK2CO3(0.98g)のエタノール(8ml)中の混合物を、24時間60℃に加熱した。この溶媒を次いで40℃で真空下で除去した。この残分をエーテル中に取り込み、濾過し、この濾過物を濃縮させた。真空下での乾燥により、ジアステレオ異性体混合物としての油1.87g(quant.)を生じた。
HR−ESI−MS (pos.): 219.1488 [M+H]+; C13192+, 計算: 219.1497。
【0054】
d)(5S)−5−ベンジル−2−(2−フェニルプロピル)イミダゾリジン−4−オンの合成
Trifernal(R)(0.74g、5.0mmol)、S−フェニルアラニンアミドヒドロクロリド(1.00g、8.0mmol)、トリエチルアミン(0.51g、5.0mmol)及びK2CO3(0.98g)のエタノール(8ml)中の混合物を、24時間60℃に加熱した。次いでこの溶媒を真空下で40℃で除去し、この残分を真空下で乾燥させて、ジアステレオ異性体の混合物としての固形物の収率1.41g(96%)を生じた。
HR−ESI−MS (pos.): 295.1804 [M+H]+; C19232+, 計算: 295.1810。
【0055】
e)(5S)−5−ベンジル−2−ノニルイミダゾリジン−4−オンの合成
デカナール(0.78g、5.0mmol)、S−フェニルアラニンアミドヒドロクロリド(1.00g、5.0mmol)、トリエチルアミン(0.51g、5.0mmol)及びK2CO3(1.00g)のエタノール(8ml)中の混合物を、24時間60℃に加熱した。次いでこの溶媒を次いで40℃で真空下で除去した。この残分をエーテル中に取り込み、濾過し、ジアステレオ異性体の混合物としての油1.67g(quant.)の収率まで濃縮させた。
HR−ESI−MS (pos.): 303.2408 [M+H]+; C19312+, 計算: 303.2436。
【0056】
f)(5S)−5−イソブチル−2−(2−フェニルプロピル)イミダゾリジン−4−オンの合成
Trifernal(R)(0.89g、6.0mmol)、S−ロイシンアミドヒドロクロリド(1.00g、6.0mmol)、トリエチルアミン(0.61g、6.0mmol)及びK2CO3(約1g)のエタノール(8ml)中の混合物を、24時間60℃に加熱した。次いでこの溶媒を真空下で40℃で除去した。この残分をエーテル中に取り込み、濾過し、ジアステレオ異性体の混合物としての油1.70g(quant.)の収率まで濃縮させた。
HR−ESI−MS (pos.): 261.1954 [M+H]+; C19252+, 計算: 261.1966。
【0057】
g)(5S)−5−イソブチル−2−(2,4,4−トリメチルペンチル)イミダゾリジン−4−オンの合成
3,5,5−トリメチルヘキサナール(3.06g、21.5mmol)、S−ロイシンアミドヒドロクロリド(3.00g、18.0mmol)及びトリエチルアミン(1,78g、18.0mmol)のジクロロメタン(25ml)中の混合物を還流して16時間逆水分離器を用いて加熱した。次いでこの溶液を0℃に冷却し、トリフロロ酢酸(3.09g、27.1mmol)を滴加した。室温に加熱後、混合物を撹拌したまま5時間おいた。この得られる懸濁液をKOH(2N、20ml)で塩基性化(pH約11)にした。この混合物をジクロロメタン(5x)で抽出し、有機相を乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。残りの揮発成分をクーゲルロール蒸発により除去して、ジアステレオ異性体の混合物としての油5.71g(quant.)を生じた。
HR−ESI−MS (pos.): 255.2457 [M+H]+; C15312+, 計算: 255.2436。
【0058】
実施例2
1,3−ジアザ−4−オキソ−複素環式誘導体の酸性加水分解に対する安定性
本発明による3〜7員の1,3−ジアザ−4−オキソ−複素環式誘導体の酸性加水分解に対する安定性を、リン酸緩衝液溶液(D2O/CD3OD 1:1)中でNMR分光器により試験した。
【0059】
測定のために、酸性重水素化したリン酸緩衝液ストック溶液を、オルト−リン酸(由来:Fluka)2.07g、一塩基性KH2PO4(由来:Acros)1.46g及び酸化ジュウテリウム77.36g(=70ml、D20℃=1.105g/ml)から調製した。この最終反応溶液のpHを決定するために、D2O/CD3OD 1:1(v/v)の最終混合物を生じるために、緩衝液ストック溶液0.5mlをCD3OD 0.5mlで希釈した。この溶液のpHを26.4℃で2.75と測定し、この相応するpD値を式pD=pH測定+0.33を用いて3.08と計算した。
【0060】
10mMの生成物溶液を次いで、CD3OD 0.35ml及び2−(2−フェニルプロピル)イミダゾリジン−4−オン0.1ml(CD3OD 0.3ml中11.0mg)又は(±)−(7aS)−3−(2−フェニルプロピル)ヘキサヒドロ−1H−ピロロ[1,2−C]イミダゾール−1−オン0.1ml(CD3OD 0.4ml中8.8mg)それぞれを、上記で説明したリン酸緩衝液ストック溶液0.45mlに添加することにより調製した。これらの溶液の1H−NMRスペクトルを500MHzでBruker AV 500分光器で2及び5日後に記録した。前駆体の加水分解はこれらの条件下で観察されなかった。
【0061】
実施例3
1,3−ジアザ−4−オキソ−複素環式誘導体を含有する布用柔軟剤ベースの性能
式(I)の化合物の制御された放出作用を、この化合物を含有する布用柔軟剤での処理後1及び3日後に、乾燥した布に対するヘッドスペース分析により証明する。本発明の化合物で処理した試料中で、遊離のフレグランスアルデヒド又はケトンを有する相応する対照試料に比較して、遊離アルデヒド及びケトンの量がより高いことが、検出された。この試験は以下のようにして実施された。
布用柔軟剤ベース(pH約3.14)を、以下の成分を用いて調製した:
Stepantex(R)VK90(由来:Stepan)、16.5%(w/w)
塩化カルシウム 0.2%(w/w)
水 83.3%(w/w)。
【0062】
本発明の化合物からの活性アルデヒド/ケトンの時間にわたる放出を、相応する改変していない遊離アルデヒド/ケトンと比較して以下の実験において決定した:
1lビーカー中に、2−(2−フェニルプロピル)イミダゾリジン−4−オンの溶液(A、エタノール2ml中に36.0mg)1ml又は(±)−(7aS)−3−(2−フェニルプロピル)ヘキサヒドロ−1H−ピロロ[1,2−C]イミダゾール−オン(B、エタノール2ml中に36.1mg)それぞれ、を、均質化した布用柔軟剤ベース1.80gに添加し、脱塩した冷たい水道水600gで充填した。賦香していない洗剤粉末で前もって洗浄し、かつ、約12×12cmのシートに切断した、2つのコットンシート(EMPAコットン試験布Nr221、由来:Eidgenoessische Materialpruefanstalt (EMPA))を、それぞれのビーカーに添加し、3分間手で撹拌し、2分間そのままにし、次いで手でしぼり、この残分の水の量を見積もるために秤量した。参考試料として、等モル量の改変していないTrifernal(R)(それぞれA及びBのためのエタノール5ml中65.3mg及び54.7mg)を含有する溶液1mlを当初の布用柔軟剤ベースさらに1.80gに添加し、これは前述したとおりに処理されている。全てのコットンシートを、それぞれ1又は3日間釣り干しした。乾燥したコットンシートのうち1つを、ヘッドスペースサンプリングセル(内容積約160ml)中に配置し、25℃でサーモスタット処理し、約200ml/mlの一定空気流にそれぞれさらした。この空気を活性炭を通して濾過し、NaClの飽和溶液を通して吸引し、これは約75%の一定湿分に相応する。15分間の間この揮発成分を廃棄物Tenax(R)カートリッジに吸着させ、次いで15分間きれいなTenax(R)カートリッジに吸着させた。このサンプリングを60分間ごとに7回繰り返した(廃棄カートリッジ上で45分間のタッピング、及び、きれいなカートリッジ上で15分間)。全ての実験を2回実施した。このカートリッジを、J&W Scientific DB1毛管カラム(30m、内径0.45mm、被膜0.42mm)およびFID検出器を装備したCarlo Erba MFC 500ガスクロマトグラフに結合されたPerkin Elmer TurboMatrix ATD脱着器上で脱着した。この揮発成分を、70℃から開始して130℃へ3℃/分での及び次いで260℃へ25℃/分での2段階の温度勾配を用いて分析した。この注入温度は240℃であり、この検出温度は260℃であった。ヘッドスペース濃度(ng/lで)を、5個の異なる濃度のエタノール中のアルデヒドを用いて外部標準校正により獲得した。それぞれの校正溶液2mlを、それぞれマイクロリットルシリンジを用いて3個のきれいなTenax(R)中に注入した。ヘッドスペースサンプリングから生じるのと同じ条件下で、全てのカートリッジをすぐさま脱着した。遊離の参照アルデヒドに比較した(カッコ内に示される)に比較して、アルデヒドの以下の平均の量を本発明の化合物を含有する試料から1及び3日後に乾燥した布で検出した:
【表1】

【0063】
このデータは、遊離の活性化合物に比較して、相応するアルデヒドのより高い量が、本発明の化合物からのヘッドスペース中に放出されたことを示す。
【0064】
水性緩衝溶液(実施例2参照のこと)中での加水分解に対するその固有の安定性にもかかわらず、2−(2−フェニルプロピル)イミダゾリジン−4−オン及び(±)−(7aS)−3−(2−フェニルプロピル)−ヘキサヒドロ−1H−ピロロ−[1,2−C]イミダゾール−1−オンが意外なことに、実際の適用において、適した速度で所望される活性アルデヒド又はケトンを放出する。多くの先行技術の前駆体とは対照的に、本発明の化合物は、酸性加水分解に対する十分な生成物安定性と実際の適用における加水分解の際の効率的な放出速度との間での理想的な妥協点を提示するように見える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

[nは、0〜3の間で変動する整数である、
1及びR2は、それぞれ式R1CHO又はR12COのアルデヒド又はケトンの残基であり、前記アルデヒド又はケトンは、80〜230g/molの範囲内の分子量を有し、かつ、賦香作用、風味付与作用、マスキング作用、製薬的作用、農芸化学作用、昆虫忌避作用又は誘引作用、殺細菌作用、殺虫作用及び/又は殺真菌作用を有する、
3は、水素原子又は式COOR9の1の基により場合により置換されているC1〜C4アルキル又はアルケニル基であり、R9は水素原子又はC1〜C4アルキル又はアルケニル基である、
4は、水素原子又は場合により1〜5個の酸素原子を含有するC1〜C12アルキル、アルケニル又はアリール基である、
5、R6、R7及びR8は、同時に又は相互に独立して、水素原子、又はC1〜C12アルキル、アルケニル又はアリール基であり、この基は場合により1〜5個の酸素原子及び/又は1個の硫黄原子及び/又は1、2又は3個の窒素原子を含有し、R4及びR5、又はR7及びR5は一緒になって、場合により1個の酸素原子を含有するC2〜C6アルカンジイル又はアルケンジイル基を形成してよい、
nが0でない場合には、R5及びR6は、これらの基が結合している炭素原子と一緒になって、カルボニル基を形成してよい]
の化合物。
【請求項2】
nは0又は1である、
2は、水素原子であり、R1は、式R1CHOのアルデヒドの残基であり、前記アルデヒドは、80〜230g/molの範囲内の分子量を有し、かつ、賦香作用、風味付与作用、マスキング作用、製薬的作用、農芸化学作用、昆虫忌避作用又は誘引作用、殺細菌作用、殺虫作用及び/又は殺真菌作用を有する、
3は、水素原子又はC1〜C4アルキル基である、
4は、水素原子又は場合により1又は2個の酸素原子を含有するC1〜C4アルキル基である、
5及びR6は、同時に又は相互に独立して、水素原子又はC1〜C10アルキル、アルケニル又はアリール基であり、前記基は場合により1〜5個の酸素原子及び/又は1個の硫黄原子及び/又は1、2又は3個の窒素原子を含有し、R4及びR5は、一緒になって、場合により1個の酸素原子を含有するC3〜C4アルカンジイル基を形成してよい、
7及びR8は、同時に又は相互に独立して、水素原子又はC1〜C4アルキル基であり、前記基は場合により1又は2個の酸素原子を含有し、R7及びR5は、一緒になって、場合により1個の酸素原子を含有するC3〜C4アルカンジイル基を形成してよい、
ことを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
アルデヒド又はケトンが、賦香性アルデヒド若しくはケトン又は風味付けするアルデヒド若しくはケトンであることを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
アルデヒド又はケトンが7〜15個の炭素原子を含有することを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
nが0であることを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
6が水素原子であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項7】
5が、アラニン、アルギニン、アスパルギン、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、及びアスパルギン酸、グルタミン酸からなる群から選択されたα−アミノ酸、又は、ノルロイシン、2−フェニルグリシン、イソアスパルギン及びイソグルタミンの群から選択された人工α−アミノ酸に由来する残基であることを特徴とする、請求項1、5又は6記載の化合物。
【請求項8】
5はグリシン又はS−プロリンに由来する残基であることを特徴とする、請求項7記載の化合物。
【請求項9】
式(I)の化合物を製造するにあたり、式R1HCOの活性アルデヒド又は式R12COの活性ケトンを、式
【化2】

[式中、n及びR3〜R8は、請求項1に記載されたのと同じ意味合いを有する]のアミノアルキルアミド誘導体又はその塩酸塩又は臭化水素酸塩と反応させる工程を含むことを特徴とする、式(I)の化合物の製造方法。
【請求項10】
賦香成分、風味付与成分、マスキング成分、製薬的成分、農芸化学的成分、昆虫忌避成分又は誘引成分、殺細菌成分、殺虫成分及び/又は殺真菌成分の制御された放出のための式(I)の化合物の使用。
【請求項11】
賦香成分又は風味付け成分の制御された放出のための請求項10記載の使用。
【請求項12】
a)賦香成分として少なくとも1種の式(I)の化合物、
b)香料キャリア及び香料ベースからなる群から選択される少なくとも1種の成分、及び
c)場合により少なくとも1種の香料助剤
を含有することを特徴とする、賦香組成物。
【請求項13】
a)活性成分として少なくとも1種の式(I)の化合物、及び
b)消費者製品ベース
を含有することを特徴とする、消費者物品。

【公表番号】特表2010−527990(P2010−527990A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508938(P2010−508938)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【国際出願番号】PCT/IB2008/051668
【国際公開番号】WO2008/142591
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(390009287)フイルメニツヒ ソシエテ アノニム (146)
【氏名又は名称原語表記】FIRMENICH SA
【住所又は居所原語表記】1,route des Jeunes, CH−1211 Geneve 8, Switzerland
【Fターム(参考)】