説明

活性エネルギー線反応硬化型接着剤組成物、ラベルおよびボトル

【課題】 硬化後透明でかつ芳香族系のフィルムに対する高い接着性を示す活性エネルギー線反応硬化型接着剤組成物およびこれを用いたボトルラベル用接着剤を提供する。
【解決手段】 少なくとも共重合飽和ポリエステル樹脂と(メタ)アクリレートモノマーと光開始剤とを含有する樹脂組成物において、前記共重合飽和ポリエステル樹脂と前記(メタ)アクリレートモノマーの合計を100重量部としたとき前記共重合飽和ポリエステル樹脂が20〜50重量部、前記(メタ)アクリレートモノマーが50〜80重量部配合されており、前記共重合飽和ポリエステル樹脂を構成する多価アルコール成分の全量を100モル%としたとき、ジエチレングリコールが5モル%以上、80モル%以下であり、前記共重合飽和ポリエステル樹脂の30℃における比重が1.30以上1.40以下であり、前記(メタ)アクリレートモノマーが芳香環と水酸基を有するものであることを特徴とする活性エネルギー線反応硬化型接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は少なくとも共重合飽和ポリエステル樹脂と(メタ)アクリレートモノマーと光開始剤とを含有する活性エネルギー線反応硬化型接着剤組成物に関する。さらに詳しくはPET等の芳香族系樹脂からなるフィルムから主としてなるボトルラベルに対する接着性に特に優れるボトルラベル用接着剤組成物に関する。なお、本発明において、(メタ)アクリレートとは、アクリレートとメタクリレートの双方を指すものである。
【背景技術】
【0002】
活性エネルギー線反応硬化型の接着剤は、一般的には(メタ)アクリレートモノマーに(メタ)アクリル系樹脂を溶解しさらに光開始剤を配合したものであり、被接着材料に塗布された後、紫外線(以下、UVと略記する場合がある)や電子線(以下、EBと略記する場合がある)などの活性エネルギー線を照射して反応硬化させて使用される。
【0003】
溶剤溶解型の接着剤は接着に際して溶剤の揮散を必然的に伴う。これに対し活性エネルギー線反応硬化型の接着剤においては(メタ)アクリレートモノマーが溶剤兼反応性モノマーとして配合されており、活性エネルギー線の照射により反応し固化するので揮発性有機物の排出がなく、有機溶剤の使用できない環境でも、いわゆる無溶剤型の接着剤として幅広い分野で利用されている。特に食品や医薬品の包装に適する接着剤であると認識されている。
【0004】
ところが、飲料用等に大量に使用されているペットボトルやその他のボトル類のラベルには、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する場合がある)やポリスチレンのような芳香族樹脂系のフィルムが使用されることが多く、(メタ)アクリル系樹脂と(メタ)アクリレートモノマーから主としてなる接着剤では接着力が不足するという問題がある。また、近年フィルムをボトルに巻いた後、熱収縮させボトルの形状に沿わせる手法を取ることが多く、ますます高い接着力が必要になっている。
【0005】
特許文献1および特許文献2には90℃における粘度が3000mPa・s以上の紫外線硬化型接着剤からなる接着部が形成されている熱収縮フィルムが提案されているが、巻きつけ時の仮止め接着力を向上させることはできるが、硬化後の最終的な接着力を向上させるものではない。
【0006】
接着力の改良方策としては、例えば、特許文献3では、ガラス転移温度の異なる2種の共重合ポリエステルと芳香環を有する単官能(メタ)アクリレートモノマーとの組み合わせが提案されている。この提案では、確かに巻きつけ時の仮止め接着力と硬化後の最終的な接着力のバランスが取れるが、接着性に関してはまだまだ不十分である。
【0007】
一般的に被着体と接着剤の溶解度パラメータ(SP値)が近いほど接着力の向上には有利であるとされており、従って芳香族系のフィルムに適する接着剤を得るためには芳香族系樹脂を配合することが有利であることが推定できる。しかしながら、芳香族系樹脂は一般に(メタ)アクリレートモノマーへの溶解性が低く、ほとんどの(メタ)アクリレートモノマーへは溶解しないか、溶解しても溶液安定性が乏しく、相分離したり白濁することがあり透明な接着剤が得られないことが多い。
【0008】
また、未硬化状態では透明な接着剤が得られても、接着剤を塗布、硬化した後に相分離して接着層が白化することが多く、白化を起こすとボトルラベルの品位が悪くなる。
【0009】
特許文献3で使用されているフェノキシエチルアクリレートやトリロキシエチルアクリレート等の芳香環を有する(メタ)アクリレートモノマーは比較的芳香族系樹脂の溶解性は良好であるが、これでは先に述べたとおり良好な接着性をもった接着剤組成物を得ることは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−308164号公報
【特許文献2】特開2007−308165号公報
【特許文献3】特許3758085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は芳香族系のフィルムに対する高い接着性を示しかつ溶液安定性良好で反応硬化させた後でも白化することのない活性エネルギー線反応硬化型接着剤組成物およびこれを用いて接着されたラベル、さらには前記ラベルを装着されたボトルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、本発明の目的を達成すべく活性エネルギー線反応硬化型樹脂組成物を鋭意検討した結果、特定のポリエステル樹脂と特定の(メタ)アクリレーモノマーを使用することにより、接着力に優れかつ溶液安定性良好で反応硬化させた後でも透明である活性エネルギー線反応硬化型接着剤組成物を得られることを見出し、本発明に到達した。
【0013】
すなわち、本発明は以下の活性エネルギー線反応硬化型接着剤組成物およびこれを用いたボトルラベル用接着剤である。
(1) 少なくとも共重合飽和ポリエステル樹脂と(メタ)アクリレートモノマーと光開始剤とを含有する樹脂組成物において、前記共重合飽和ポリエステル樹脂と前記(メタ)アクリレートモノマーの合計を100重量部としたとき前記共重合飽和ポリエステル樹脂が20〜50重量部、前記(メタ)アクリレートモノマーが50〜80重量部配合されており、前記共重合飽和ポリエステル樹脂を構成する多価アルコール成分の全量を100モル%としたとき、ジエチレングリコールが5モル%以上、80モル%以下であり、前記共重合飽和ポリエステル樹脂の30℃における比重が1.30以上1.40以下であり、前記(メタ)アクリレートモノマーが芳香環と水酸基を有するものであることを特徴とする活性エネルギー線反応硬化型接着剤組成物。
(2) 前記(メタ)アクリレートモノマーが2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートまたは/および2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルメタクリレートであることを特徴とする(1)記載の活性エネルギー線反応硬化型接着剤組成物。
(3) 前記共重合飽和ポリエステル樹脂の数平均分子量が8000以上40000以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載の活性エネルギー線反応硬化型接着剤組成物。
(4) 温度70℃、角速度5rad/sにおける動的粘度が5dPa・s以上150dPa・s以下である(1)〜(3)のいずれかに記載の活性エネルギー線反応硬化型接着剤組成物。
(5) (1)〜(4)のいずれかに記載の活性エネルギー線反応硬化型接着剤組成物を用いたボトルラベル用接着剤組成物。
(6) (1)〜(4)のいずれかに記載の活性エネルギー線反応硬化型接着剤組成物によって接着されたラベル。
(7) (1)〜(4)のいずれかに記載の活性エネルギー線反応硬化型接着剤組成物によって接着された熱収縮性ラベル。
(8) (6)または(7)に記載のラベルが装着されたボトル。
【発明の効果】
【0014】
本発明の活性エネルギー線反応硬化型接着剤組成物は仮止め接着力に優れ、なおかつ硬化反応後も透明であり接着強度が高い。収縮性ラベルの接着に用いた場合には、収縮後の接着性保持にも優れる。よって、収縮ボトルラベル用の接着剤組成物としても有用である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に用いられる共重合飽和ポリエステル樹脂は、本発明の共重合飽和ポリエステル樹脂と(メタ)アクリレートモノマーの合計重量100重量部あたり20〜50重量部配合されていることが必要であり、25〜45重量部配合されていることが好ましく、30〜40重量部配合されていることがさらに好ましい。共重合飽和ポリエステル樹脂の配合比率が低すぎると芳香族系フィルム等への接着力が低くなる傾向にあり、高すぎると接着剤組成物の粘度が高くなりすぎて取り扱いが困難となる傾向がある。
【0016】
前記共重合飽和ポリエステル樹脂は、これを構成する多価アルコール成分の全量を100モル%としたとき、ジエチレングリコールが5モル%以上80モル%以下であることが必要であり、好ましくは10モル%以上70モル%以下、より好ましくは15モル%以上65モル%以下、さらに好ましくは20モル%以上60モル%以下である。ジエチレングリコールの比率が低すぎるとPETフィルム等芳香族系のフィルムへの接着性が低下することがあり、高すぎると耐水性が低下することがある。
【0017】
前記共重合飽和ポリエステル樹脂を構成するジエチレングリコール以外の成分としては、特に限定されることなく汎用の酸成分、グリコール成分を用いることができる。
【0018】
前記酸成分としては例えばテレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族二塩基酸、p−オキシ安息香酸、p−(ヒドロキシエトキシ)安息香酸などの芳香族オキシカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ダイマー酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸があげられ、これらから選ばれる2種以上を併用しても良い。前記酸成分は芳香族二塩基酸から主としてなるものが好ましく、PETフィルム等の芳香族系のフィルムに対する接着力を高める効果がある。テレフタル酸とイソフタル酸の合計が共重合飽和ポリエステル樹脂を構成する酸成分の75重量%以上であることが好ましく、90重量%以上出ることがより好ましく、95重量%以上であることが更に好ましい。
【0019】
また、前記グリコール成分としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチルペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ノナンジオール、メチルオクタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジプロピレングリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ダイマージオール、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、水素化ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、水素化ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。また、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリカプロラクトン、ポリカーボネートジオール等の高分子量グリコールを共重合しても良い。また、これらから選ばれる2種以上を併用しても良い。
【0020】
本発明に用いられる前記共重合飽和ポリエステル樹脂には、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸、ナトリウムスルホテレフタル酸、2−ナトリウムスルホ−1,4−ブタンジオール、2,5−ジメチル−3−ナトリウムスルホ−2,5−ヘキサンジオール等のスルホン酸金属塩基を有する酸成分および/またはグリコール成分を共重合しても良い。スルホン酸金属塩基を有する酸成分および/またはグリコール成分を共重合することにより、接着性が向上する場合がある。
【0021】
また、本発明に用いられる共重合飽和ポリエステル樹脂の原料の一部として、無水トリメリット酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の三官能以上の化合物を共重合してもよく、接着性が向上する場合がある。また、ポリエステルを重合後、ラクトンや酸無水物等による末端変性成分を導入しても良く、接着性が向上する場合がある。
【0022】
本発明に用いられる共重合飽和ポリエステル樹脂は、30℃における比重が1.30以上1.40以下であることを特徴とし、好ましくは1.33以上1.38以下である。30℃における比重が低すぎるとPETフィルム等芳香族系のフィルムへの接着性が低下することがあり、逆に高すぎると(メタ)アクリレートモノマーへの溶解性が低くなる傾向にあり、また溶解しても溶液安定性が悪くなることがある。共重合飽和ポリエステル樹脂の30℃における比重を1.30以上1.40以下とするには、例えば酸成分を芳香族ジカルボン酸のみ使用し、グリコール成分にエチレングリコールとジエチレングリコールを使用しジエチレングリコールの比率を20モル%とすればよい。
【0023】
本発明に用いられる共重合飽和ポリエステル樹脂は、ただ1種類の共重合飽和ポリエステル樹脂で構成されてもいても良いし、2種類以上組み合わせて構成されても問題ない。
【0024】
本発明の活性エネルギー線反応硬化型接着剤組成物を構成する前記(メタ)アクリレートモノマーは芳香環と水酸基を有することを特徴とする。このような(メタ)アクリレートモノマーを用いることにより、高い接着力が得られ、なおかつ共重合飽和ポリエステル樹脂の溶解性が良好となり、接着剤組成物の溶液安定性が良好でありかつ反応硬化後の接着剤層も透明となる。
【0025】
本発明に用いられる(メタ)アクリレートモノマーは、本発明の共重合飽和ポリエステル樹脂と(メタ)アクリレートモノマーの合計重量100重量部あたり50〜80重量部配合されていることが必要であり、55〜75重量部配合されていることが好ましく、60〜70重量部配合されていることがさらに好ましい。(メタ)アクリレートモノマーの配合比率が低すぎると組成物の粘度が高くなりすぎて取り扱いが困難になる傾向があり、また硬化不足により硬化後の最終接着力が低くなる傾向にある。一方、(メタ)アクリレートモノマーの配合比率が高すぎると粘度が低くなりすぎて仮止め接着力が低下する傾向がある。
【0026】
本発明に用いられる(メタ)アクリレートモノマーとしては2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、p−メトキシフェノキシエチル(メタ)アクリレート、o−メトキシフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、ビスフェノールFジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物等があげられる。
【0027】
中でも、本発明に用いられる共重合飽和ポリエステル樹脂の溶解性や取り扱いやすさから、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルメタクリレートが好ましく、最も好ましいのは2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートである。
【0028】
本発明に用いられる共重合飽和ポリエステル樹脂の数平均分子量は、8000以上40000以下が好ましい。分子量が低すぎるとPETフィルム等芳香族系のフィルムへの接着性が低下することがあり、逆に高すぎると組成物の粘度が高くなりすぎて取り扱いが困難になるとともに(メタ)アクリレートモノマーへの溶解性が低下する傾向がある。より好ましくは10000以上30000以下である。
【0029】
本発明に用いる共重合飽和ポリエステル樹脂のガラス転移温度(以下、Tgと略記する場合がある)は特に限定されるものではないが、あまりTgの低い樹脂であると接着剤として硬化させた後も熱によって接着層からはみ出す恐れがあるため、常温より高い方が好ましく、40℃以上がさらに好ましい。
【0030】
本発明で用いる光開始剤としては特に限定されるものではないが、例えば、クロロアセトフェノン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチルトリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル(4−ドデシル)プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、フェニル2−ヒドロキシ−2−プロピルケトン、ヒドロキシアセトフェノン、α−アミノアセトフェノンなどのアセトフェノン類、ベンジルジメチルケタール(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)などのケタール類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインアルキルエーテル、α−メチルベンゾインなどのベンゾイン類、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、p−クロルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’−(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、p−ジメチルアミノベンゾフェノン、〔4−(メチルフェニルチオ)フェニル〕フェニルメタノンなどのベンゾフェノン類、9,10−アントラキノン、1−クロルアントラキノン、2−クロルアントラキノン、2−エチルアントラキノンなどのアントラキノン類、2−ヒドロシ−2−メチルプロピオフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンなどのプロピオフェノン類、ジベンゾスベロンなどのスベロン類、ミヒラーケトン(4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン)などのミヒラーケトン類、ベンジルなどのベンジル類、ジフェニルジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントンなどのチオキサントン類などの含イオウ化合物類、メチレンブルー、エオシン、フルオレセインなどの色素類などが挙げられる。その他に1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、アゾビスイソブチルニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,4,6−トリメチロールベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2−ヒドロシ−2−メチル−1−〔4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,2−ジクロロ−p−フェノキシアセトフェノン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2(o−エトキシカルボニル)オキシム、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、ジベンゾスベロン、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、フェナンスレンキノン、1,4−ジベンゾイルベンゼン、10−ブチル−2−クロロアクリドン、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラキス(3,4,5−トリメトキシフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルジフェニルエーテル、アクリル化ベンゾフェノンなどもある。
【0031】
これらの光開始剤は単独で使用しても良いし、2種以上併用して使用しても良い。これらの光開始剤の配合量は、樹脂組成物全体の0.05重量部以上、20重量部以下、より好ましくは0.5重量部以上、10重量部以下である。
【0032】
本発明の接着剤組成物の粘度は、温度70℃、角速度5rad/sにおける動的粘度が5〜150dPa・sであり、好ましくは15〜80dPa・s、より好ましくは25〜75dPa・sである。粘度が低すぎると被接着物に接着剤組成物を塗工する際の仮止め接着力が劣る傾向にあり、また塗工時に垂れが生じやすい傾向にある。逆に高すぎると塗工しにくくなり取り扱いも困難な傾向になる。
【0033】
本発明の接着剤組成物の代表的な使用方法として、飲料用等に大量に使用されているペットボトルやその他のボトル類のラベルの接着に用いることを挙げることができる。これらのラベルにはPETやポリスチレンのような芳香族樹脂系のフィルムが使用されることが多く、本発明の接着剤組成物はこれらの素材からなるラベルに対して高い接着性を示すいが、ラベルの素材はこれらのものに限定されるものではない。近年、ラベルをボトルに巻いた後、熱収縮させボトルの形状に沿わせる手法が取られることが多く、ますます高い接着力が必要になっているが、本発明の好ましい実施態様においては、このような熱収縮ラベルの接着にも好適である。
【実施例】
【0034】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。実施例中、単に部とあるのは重量部を示す。
【0035】
<ポリエステル樹脂の特性評価方法>
1.組成
クロロホルム−dに試料樹脂を溶解し、VARIAN社製400MHz−NMR装置を用い、H−NMRスペクトルにより樹脂組成および組成比を求めた。
【0036】
2.数平均分子量
試料樹脂を、樹脂濃度が0.5重量%程度となるようにテトラヒドロフランに溶解または希釈し、孔径0.5μmのポリ四フッ化エチレン製メンブランフィルターで濾過し、GPC測定試料とした。テトラヒドロフランを移動相とし、島津製作所社製のゲル浸透クロマトグラフ(GPC)Prominenceを用い、示差屈折計(RI計)を検出器として、カラム温度30℃、流量1ml/分にて樹脂試料のGPC測定を行なった。数平均分子量既知の単分散ポリスチレンのGPC測定結果を用いて試料樹脂のポリスチレン換算数平均分子量を求め、それを本発明における試料樹脂の数平均分子量とした。ただしカラムは昭和電工(株)製のshodex KF−802、804L、806Lを用いた。
【0037】
3.ガラス転移温度
試料樹脂5mgをアルミニウム製サンプルパンに入れて密封し、セイコーインスツルメンツ(株)製の示差走査熱量分析計(DSC)DSC−220を用いて、200℃まで、昇温速度20℃/分にて測定し、ガラス転移温度以下のベースラインの延長線と遷移部における最大傾斜を示す接線との交点の温度で求めた。
【0038】
4.比重
30℃の塩化カルシウム水溶液に試料樹脂の樹脂片を投入し、塩化カルシウムまたは水を追加して塩化カルシウム水溶液の比重を調整して樹脂片が浮上も沈降もせず水溶液中に留まるように調整した。次いでその水溶液の30℃での比重を浮沈式標準比重計を用いて測定し、試料樹脂の30℃における比重とした。
【0039】
<共重合飽和ポリエステル樹脂の合成>
<ポリエステル(a)の合成例>
撹拌機、温度計、留出用冷却器を装備した反応缶内にジメチルテレフタレート440重量部、ジメチルイソフタレート422重量部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルエステル27重量部、エチレングリコール338重量部、ジエチレングリコール385重量部、テトラブチルチタネート0.3重量部加え、170〜220℃で常圧3時間エステル交換反応を行った。次いで、反応系を220℃から260℃まで昇温するとともに系内をゆっくり減圧してゆき、60分かけて500Paとした。そしてさらに130Pa以下で60分間重縮合反応を行い、ポリエステル(a)を得た。
【0040】
ポリエステル(a)は、酸成分としてテレフタル酸50モル%、イソフタル酸48モル%、5−ナトリウムスルホイソフタル酸2モル%、ジオール成分としてエチレングリコール40モル%、ジエチレングリコール60モル%の組成を有していた。またガラス転移温度は41℃、数平均分子量は25000、比重は30℃で1.34であった。
【0041】
<ポリエステル(b)の合成例>
ポリエステル(a)と合成例の場合と同様の反応缶内にテレフタル酸376重量部、イソフタル酸368部、無水トリメリット酸8.7部、エチレングリコール255部、ジエチレングリコール403部、テトラブチルチタネート0.3重量部加え、190〜240℃まで250kPaで3時間加圧エステル化反応を行った。エステル化反応終了後、反応系を240℃から260℃まで昇温するとともに系内をゆっくり減圧してゆき、60分かけて500Paとし、さらに130Pa以下で60分間重縮合反応を行なった。重縮合終了後缶内を窒素で常圧に戻した後220℃に冷却し、無水トリメリット酸8.7部を投入して付加反応をおこないポリエステル(b)を得た。
【0042】
ポリエステル(b)は、酸成分としてテレフタル酸50モル%、イソフタル酸49モル%、トリメリット酸1モル%、ジオール成分としてエチレングリコール35モル%、ジエチレングリコール65モル%、後付加のTMAとして1モル%の組成を有していた。またガラス転移温度は34℃、数平均分子量は18000、比重は30℃で1.33であった。
【0043】
<ポリエステル(c)の合成例>
ポリエステル(c)は、ポリエステル(b)と同様にして、但し、仕込み組成のみ変更して合成を行った。得られたポリエステルの組成及び特性の測定結果を表1に示す。
【0044】
<ポリエステル(d)、(f)〜(j)の合成例>
ポリエステル(d)、(g)〜(j)は、ポリエステル(b)と同様にして、ポリエステル(f)は、ポリエステル(a)と同様にして、但し、仕込み組成のみ変更して合成を行った。得られたポリエステルの組成及び特性の測定結果を表1および表2に示す。
【0045】
<ポリエステル(e)の合成例>
ポリエステル(a)の合成例の場合と同様の反応缶内にテレフタル酸368重量部、イソフタル酸368部、無水トリメリット酸17.4部、エチレングリコール368部、ジエチレングリコール210部、テトラブチルチタネート0.3重量部加え、190〜240℃まで250kPaで3時間加圧エステル化反応を行った。エステル化反応終了後、反応系を240℃から260℃まで昇温するとともに系内をゆっくり減圧してゆき、60分かけて500Paとし、さらに130Pa以下で60分間重縮合反応を行なった。重縮合終了後缶内を窒素で常圧に戻した後210℃に冷却し、ε−カプロラクトン52質量部を仕込んで1時間加熱攪拌し、開環付加反応をおこないポリエステル(e)を得た。
【0046】
ポリエステル(e)は、酸成分としてテレフタル酸49モル%、イソフタル酸49モル%、トリメリット酸2モル%、ジオール成分としてエチレングリコール70モル%、ジエチレングリコール30モル%、後付加のε−カプロラクトンとして10モル%の組成を有していた。またガラス転移温度は38℃、数平均分子量は16000、比重は30℃で1.35であった。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
尚、表1および表2中の組成に関する記号は以下の意味である。
TPA:テレフタル酸
IPA:イソフタル酸
GCM:5−ナトリウムスルホイソフタル酸
SA :セバシン酸
TMA:トリメリット酸
DEG:ジエチレングリコール
EG :エチレングリコール
NPG:ネオペンチルグリコール
CL :ε−カプロラクトン
【0050】
<実施例1>
ポリエステル(a)30部、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート64部を混合し、ポリエステル(a)を完全に溶解させた後、光開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン3部、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン3部を配合し、活性エネルギー線反応硬化型接着剤組成物を得た。次いで別記する方法により、接着剤組成物の特性を評価した。接着剤組成物の配合組成および接着剤組成物特性の評価結果を表3に示す。
【0051】
<実施例2〜7、比較例1〜8>
実施例1と同様の方法で実施例2〜7及び比較例1〜8の活性エネルギー線反応硬化型接着剤組成物を得た。接着剤組成物の配合組成および接着剤組成物特性の評価結果を表3および表4に示す。
【0052】
【表3】

【0053】
【表4】

【0054】
尚、表3および表4中の組成に関する記号は以下の意味である。
(メタ)アクリレートモノマー
Ma:2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート
Mb:2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルメタクリレート
Mc:2−アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート
Md:フェノキシエチルアクリレート
Me:2−ヒドロキシ−1,3−ジメタクリロキシプロパン
Mf:4−ヒドロキシブチルアクリレート
光開始剤
Ra:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
Rb:2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン
Rc:2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン
【0055】
<接着剤組成物の特性評価方法>
<粘度>
TAインスツルメント社製レオメーターAR550を用いて、直径25mmアルミパン内に接着剤組成物を挟み込んで加熱し、温度70℃に固定して250rad/sから1rad/sまで角速度を変化させて動的粘度の測定を行い、そのうち角速度=5rad/sのときの動的粘度の値を本特許における粘度とした。
【0056】
<溶液安定性評価法>
実施例および比較例で得られた活性エネルギー線反応硬化型接着剤組成物を5℃に冷却して24時間放置し溶液の状態を目視で確認し、ついで25℃に暖めて4時間経過した後の溶液の状態を目視で観察した。
◎:5℃で透明な均一溶液、25℃でも透明な均一溶液
○:5℃では白濁、25℃に戻すと透明な均一溶液
△:5℃では白濁、25℃に戻しても白濁
×:5℃では沈降物あり、25℃に戻しても沈降物が残存
【0057】
<硬化後透明性評価方法>
実施例および比較例で得られた活性エネルギー線反応硬化型接着剤を厚さ25μmの透明収縮PETフィルム上に厚みが5μmになるよう塗布し、同じフィルムでラミネートした後、次いで(株)東芝製UVランプH8000L/2を用いて照射量が150mJ/cmになるようUV照射し、ラミネート積層フィルムを作成した。そのラミネート積層フィルムを日立(株)製の分光光度計U−3210を用いて、波長550nmにおいて透過度を測定し透明性を下記の3段階で評価した。
○:透過度95%以上
△:透過度90%以上95%未満
×:透過度90%未満
【0058】
<接着性評価方法>
実施例および比較例で得られた活性エネルギー線反応硬化型接着剤を前記<硬化後透明性評価方法>と同様にしてラミネート積層フィルムを作成し、その後そのラミネート積層フィルムを15mm幅に切断して、温度23℃、湿度50%雰囲気下でT字(180°)剥離モード、引張速度100mm/分で引っ張り試験を行い、硬化後の接着力を測定した。
【0059】
<耐収縮接着性評価方法>
前記<硬化後透明性評価方法>と同様にして得たラミネート積層フィルムを15mm幅に切断して、長さ100mmの短冊状の試験片とした。これを90℃の温水の中に投入し30秒放置して収縮させ、次いで常温下で放冷した。試験片の15mm幅に切断した端面の捲れ具合を観察し、下記の4段階で評価した。
◎:端面から幅方向に目視で捲れを検知できない。
○:端面から幅方向に1mm未満の捲れ上がりあり。
△:端面から幅方向に1mm以上2mm未満の捲れ上がりあり。
×:端面から幅方向に2mm以上の捲れあがり、または全面剥がれあり。
【0060】
表3と表4で示すとおり、実施例1〜5は比較例1〜8に比べて接着性、耐収縮接着性において卓越した性能を有することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の活性エネルギー線反応硬化型接着剤組成物は反応硬化後も透明でかつ接着強度が高く、収縮性ラベルの接着に用いた場合には収縮後の接着性保持にも優れる。よって、特にPETフィルム等の芳香族系樹脂からなる熱収縮性ラベルの接着に適し、収縮ボトルラベル用の接着剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも共重合飽和ポリエステル樹脂と(メタ)アクリレートモノマーと光開始剤とを含有する樹脂組成物において、前記共重合飽和ポリエステル樹脂と前記(メタ)アクリレートモノマーの合計を100重量部としたとき前記共重合飽和ポリエステル樹脂が20〜50重量部、前記(メタ)アクリレートモノマーが50〜80重量部配合されており、前記共重合飽和ポリエステル樹脂を構成する多価アルコール成分の全量を100モル%としたとき、ジエチレングリコールが5モル%以上、80モル%以下であり、前記共重合飽和ポリエステル樹脂の30℃における比重が1.30以上1.40以下であり、前記(メタ)アクリレートモノマーが芳香環と水酸基を有するものであることを特徴とする活性エネルギー線反応硬化型接着剤組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリレートモノマーが2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートまたは/および2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルメタクリレートであることを特徴とする請求項1記載の活性エネルギー線反応硬化型接着剤組成物。
【請求項3】
前記共重合飽和ポリエステル樹脂の数平均分子量が8000以上40000以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の活性エネルギー線反応硬化型接着剤組成物。
【請求項4】
温度70℃、角速度5rad/sにおける動的粘度が5dPa・s以上150dPa・s以下である請求項1〜3のいずれかに記載の活性エネルギー線反応硬化型接着剤組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の活性エネルギー線反応硬化型接着剤組成物を用いたボトルラベル用接着剤組成物。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の活性エネルギー線反応硬化型接着剤組成物によって接着されたラベル。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の活性エネルギー線反応硬化型接着剤組成物によって接着された熱収縮性ラベル。
【請求項8】
請求項6または7に記載のラベルが装着されたボトル。

【公開番号】特開2011−148962(P2011−148962A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24107(P2010−24107)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】