説明

活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ組成物

【課題】活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷に使用されるインク組成物であって、優れた硬化性や吐出性、保存安定性、多基材対応性を持つインク組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルおよびN−ビニルカプロラクタムを含む活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ組成物。また、N−ビニルカプロラクタムの含有量がインクジェットインキ組成物中3〜35重量%であることを特徴とする活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ組成物。さらに、2官能アクリレートモノマーを含むことを特徴とする上記活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷に使用されるインク組成物であって、優れた硬化性や吐出性、保存安定性、多基材対応性を持つインク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷方式は、被印刷基材に対してインク組成物の微小液滴を付着させ、画像や文字の記録を行うもので、印刷過程において版を使用しないことを特徴とする。版を使用しない印刷方式として、他にも電子写真方式がよく知られているが、装置コスト、ランニングコスト、印刷速度などの点でインクジェット印刷方式が優れているとされ、近年のオンデマンド印刷に対する需要増加もあるなかで、その需要がさらに拡大している。
【0003】
これらインクジェット印刷に使用されるインキ組成物に対しては、オフセット印刷やグラビア印刷に使用されるインキ組成物と比較し、厳しい粘度コントロールが要求される。これは、インキ組成物の粘度が変化することで、吐出時の液滴量が変化し、結果として印字物の画質が変化するためである。さらに近年では、インクジェット印刷方式が世界中で使用されていることもあり、長期間の輸送や貯蔵に対しても、粘度をはじめとした品質の変化ができる限り少ない、すなわち経時安定性に優れたインキ組成物が求められている。
【0004】
一方、近年ではインクジェットヘッドの性能向上に伴い、既存印刷市場の少ロット印刷対応に注目が集まっている。印刷市場では、生産性が重要であり、サイン市場で用いられているマルチパス方式では、必要とされる生産性を出すことが出来ない。そのため、マルチパス方式で得られない生産性を出すために、印刷市場に用いられるインクジェット印刷の方式は、印刷速度が速いシングルパス方式を用いることがほとんどである。シングルパス方式では、マルチパス方式と比べて顕著にノズル抜けが画質に反映するため、インキには優れた吐出性が必要とされる。
【0005】
また、サイン市場で用いられている基材のほとんどは、塩化ビニルシートであったが、印刷市場では紙系やフィルム系などの多種多様な基材が存在し、基材によってインキの密着性や広がり性が異なる。速い印刷速度と多基材印刷に対応するためには、硬化速度が速く、基材密着性の面で汎用性に優れた活性エネルギー線硬化型インクが最適である。
【0006】
しかしながら活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ組成物は、他の種類のインクジェットインキ組成物に対し、粘度や経時安定性のコントロールが難しいことが知られている。これは、活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ組成物の主成分が重合性モノマーであり、輸送や貯蔵中に発生する微量の重合開始成分により、重合性モノマーの重合反応が進行してしまうためである。
【0007】
すなわち、活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ組成物の開発にあたっては、長所である硬化性(生産性)や吐出性、保存安定性、多基材対応性などの品質を持つことが重要である。
【0008】
これまでにも、上記課題の解決のためにさまざまな検討がなされている。例えば特許文献1は、低粘度で吐出性が良いアクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルを用いているが、N−ビニルカプロラクタムを用いておらず、優れた硬化性を発現することができない。特許文献2は、重合性モノマーとしてN−ビニルラクタム類を使用し、さらに酸化防止剤や重合禁止剤を添加することで、保存安定性を改良しようとした例である。しかしながら明細書中で開示されているインク組成物は、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルを用いておらず、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷方式の長所であるはずの、印字物の強度や耐性が劣る結果となってしまい、好ましくない。また、文献3は、シングルパス方式を用いて印刷しているが、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルおよびN−ビニルラクタムを使用しておらず、優れた硬化性を発現することができない。
【0009】
以上のように、優れた硬化性や吐出性、保存安定性、多基材対応性を持つインク組成物は、いまだ得られていない現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】ヨーロッパ特許出願第119179号
【特許文献2】特開2009−120628号公報
【特許文献3】特開2009−083267号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷に使用されるインク組成物であって、優れた硬化性や吐出性、保存安定性、多基材対応性を持つインク組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、少なくとも、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルおよびN−ビニルカプロラクタムを含む活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ組成物を用いることで、前記課題が解決されることを見出して本発明を成したものである。
【0013】
すなわち本発明とは、以下の(1)〜(5)の発明に関するものである。
(1)少なくとも、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルおよびN−ビニルカプロラクタムを含む活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ組成物。
(2)前記組成物のN−ビニルカプロラクタムの含有量がインクジェットインキ組成物中5〜35重量%であることを特徴とする(1)に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ組成物。
(3)前記組成物に2官能アクリレートモノマーを含むことを特徴とする(1)〜(2)いずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ組成物。
(4)前記組成物に3官能以上の多官能アクリレートモノマー含むことを特徴とする、(1)〜(3)に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ組成物。
(5)(1)〜(4)によって得られる印刷物。
【発明の効果】
【0014】
アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルおよびN−ビニルカプロラクタムを含むことにより、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷に使用されるインク組成物であって、優れた硬化性や吐出性、保存安定性、多基材対応性を持つインク組成物を得ることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルおよびN−ビニルカプロラクタムを含むことにより、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷に使用されるインク組成物であって、優れた硬化性や吐出性、保存安定性、多基材対応性を持つインク組成物を得ることができるものである。
【0016】
アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルは、重合性反応基としてビニルエーテル基およびアクリロイル基を含有する重合性モノマーである。アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルは、2官能モノマーでありながら低粘度かつ硬化性が比較的速い特徴がある。また、吐出性、保存安定性、多基材密着性に優れている。本発明におけるアクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルの量はインクジェットインキ組成物中10重量%〜95重量%が好ましい。
【0017】
一方、N−ビニルカプロラクタムは、吐出性、多基材密着性の優れたモノマーであるが、N−ビニルカプロラクタムのみでは、硬化膜を形成することができず、硬化性、密着性が著しく悪くなる。他の重合性モノマーと併用することで優れた硬化性を発現することが知られている。原理は定かではないが、窒素を含むN−ビニルカプロラクタムのビニル基は、アクリレート基とビニル基の双方に対して反応性が良く、特にビニルエーテル基およびアクリロイル基を有するアクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルと併用することで、アクリレート基とビニル基の架橋を促し、今まで成しえなかった硬化性、多基材密着性を発現し、吐出性と保存安定性に優れたインク組成物を得ることができる。
【0018】
本発明におけるN−ビニルカプロラクタムの含有量は、インクジェットインキ組成物中5〜35重量%であることが好ましい。N−ビニルカプロラクタムの含有量が5重量%未満では、硬化性、密着性が十分に発現せず、35重量%以上を超えると、保存安定性がやや悪くなる。
【0019】
本発明では、2官能アクリレートモノマーを併用することにより、さらに硬化性をよくすることが出来る。2官能アクリレートモノマーの含有量は、インクジェットインキ組成物中8〜50重量%であることが好ましい。2官能アクリレートモノマーの含有量が8重量%未満では、十分な効果が得られず、50重量%を超える場合では、多基材に対する密着性が低下する。
【0020】
本発明における2官能アクリレートモノマーとして、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレートエトキシ化1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、エトキシ化トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジアクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジアクリレート、ネオペンチルグリコールオリゴアクリレート、1,4−ブタンジオールオリゴアクリレート、1,6−ヘキサンジオールオリゴアクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ジメチロールートリシクロデカンジアクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールFジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールFジアクリレート、プロポキシ化ビスフェノールFジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジアクリレート、イソシアヌル酸ジアクリレート、プロポキシ化イソシアヌル酸ジアクリレートなどが挙げられるがこれに限定されるものではない。2官能アクリレートモノマーは、一種または必要に応じて二種以上用いてもよい。
【0021】
本発明において、特に分子量が250以下の2官能アクリレートモノマーが、吐出性に優れており、具体例として、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートが挙げられるがこれに限定されるものではない。分子量が250以下の2官能アクリレートモノマーは、一種または必要に応じて二種以上用いてもよい。
【0022】
本発明では、多官能アクリレートモノマーを併用することにより、耐スクラッチ性などの硬化膜物性を良くすることが出来る。多官能アクリレートモノマーの含有量は、インクジェットインキ組成物中1〜10重量%であることが好ましい。多官能アクリレートモノマーの含有量が1重量%未満では、十分な効果が得られず、10重量%を超えると、多基材に対する密着性が低下する。
【0023】
本発明における多官能アクリレートモノマーとして、トリメチロールプロパントリアクリレート、ヒドロキシピバリン酸トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化リン酸トリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、テトラメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシレートグリセリルトリアクリレート、トリメチロールプロパンオリゴアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化イソシアヌール酸トリアクリレート、トリ(2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート)トリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレートなどが挙げられるがこれに限定されるものではない。多官能アクリレートモノマーは、一種または必要に応じて二種以上用いてもよい。
【0024】
本発明では、必要に応じて単官能モノマーを必要に応じて併用することが出来る。具体的には、イソボルニルアクリレート、ラウリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシルアクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソアミルアクリレート、トリメチロールプロパンフォルマルモノアクリレート、トリフルオロエチルアクリレート、アクリロイルモルホリン、N−ビニルピロリドン、ヒドロキシフェノキシエチルアクリレート、ヒドロキシフェノキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2-アクリロイロキシプロピルフタレート、β-カルボキシルエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、メチルフェノキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート(あるいは、そのエチレンオキサイド並び/またはプロピレンオキサイド付加モノマー)、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、1、4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド2−メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、ジプロピレングリコールアクリレート、エトキシ化コハク酸アクリレート、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレートを挙げることができるが、これに限定されるものではない。また、これら化合物は、一種または必要に応じて二種以上用いてもよい。
【0025】
本発明のインキには、上記以外にオリゴマー、プレポリマーと呼ばれるものを使用できる。具体的には、ダイセルUCB社製「Ebecryl230、244、245、270、280/15IB、284、285、4830、4835、4858、4883、8402、8803、8800、254、264、265、294/35HD、1259、1264、4866、9260、8210、1290.1290K、5129、2000、2001、2002、2100、KRM7222、KRM7735、4842、210、215、4827、4849、6700、6700−20T、204、205、6602、220、4450、770、IRR567、81、84、83、80、657、800、805、808、810、812、1657、1810、IRR302、450、670、830、835、870、1830、1870、2870、IRR267、813、IRR483、811、436、438、446、505、524、525、554W、584、586、745、767、1701、1755、740/40TP、600、601、604、605、607、608、609、600/25TO、616、645、648、860、1606、1608、1629、1940、2958、2959、3200、3201、3404、3411、3412、3415、3500、3502、3600、3603、3604、3605、3608、3700、3700−20H、3700−20T、3700−25R、3701、3701−20T、3703、3702、RDX63182、6040、IRR419」、サートマー社製「CN104、CN120、CN124、CN136、CN151、CN2270、CN2271E、CN435、CN454、CN970、CN971、CN972、CN9782、CN981、CN9893、CN991」、BASF社製「Laromer EA81、LR8713、LR8765、LR8986、PE56F、PE44F、LR8800、PE46T、LR8907、PO43F、PO77F、PE55F、LR8967、LR8981、LR8982、LR8992、LR9004、LR8956、LR8985、LR8987、UP35D、UA19T、LR9005、PO83F、PO33F、PO84F、PO94F、LR8863、LR8869、LR8889、LR8997、LR8996、LR9013、LR9019、PO9026V、PE9027V」、コグニス社製「フォトマー3005、3015、3016、3072、3982、3215、5010、5429、5430、5432、5662、5806、5930、6008、6010、6019、6184、6210、6217、6230、6891、6892、6893−20R、6363、6572、3660」、根上工業社製「アートレジンUN−9000HP、9000PEP、9200A、7600、5200、1003、1255、3320HA、3320HB、3320HC、3320HS、901T、1200TPK、6060PTM、6060P」、日本合成化学社製「紫光 UV−6630B、7000B、7510B、7461TE、3000B、3200B、3210EA、3310B、3500BA、3520TL、3700B、6100B、6640B、1400B、1700B、6300B、7550B、7605B、7610B、7620EA、7630B、7640B、2000B、2010B、2250EA、2750B」、日本化薬社製「カヤラッドR−280、R−146、R131、R−205、EX2320,R190、R130、R−300,C−0011、TCR−1234、ZFR−1122、UX−2201,UX−2301,UX3204、UX−3301、UX−4101,UX−6101、UX−7101、MAX−5101、MAX−5100,MAX−3510、UX−4101」等が挙げられる。
【0026】
また、インキの低粘度化、及び基材への濡れ広がり性を向上させるために、インキ中に有機溶剤を含有させてもよい。有機溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノブチルエーテルプロピオネート、ジエチルジグリコール、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノメチルエーテルブチレート、エチレングリコールモノエチルエーテルブチレート、エチレングリコールモノブチルエーテルブチレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルブチレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルブチレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルブチレート、プロピレングリコールモノメチルエーテルブチレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルブチレート等のグリコールモノアセテート類、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、エチレングリコールアセテートプロピオネート、エチレングリコールアセテートブチレート、エチレングリコールプロピオネートブチレート、エチレングリコールジプロピオネート、エチレングリコールアセテートジブチレート、ジエチレングリコールアセテートプロピオネート、ジエチレングリコールアセテートブチレート、ジエチレングリコールプロピオネートブチレート、ジエチレングリコールジプロピオネート、ジエチレングリコールアセテートジブチレート、プロピレングリコールアセテートプロピオネート、プロピレングリコールアセテートブチレート、プロピレングリコールプロピオネートブチレート、プロピレングリコールジプロピオネート、プロピレングリコールアセテートジブチレート、ジプロピレングリコールアセテートプロピオネート、ジプロピレングリコールアセテートブチレート、ジプロピレングリコールプロピオネートブチレート、ジプロピレングリコールジプロピオネート、ジプロピレングリコールアセテートジブチレート等のグリコールジアセテート類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル等の乳酸エステル類があげられる。この中でも、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチルジグリコールが好ましい。
【0027】
本願発明で説明する活性エネルギー線とは、電子線、紫外線、赤外線などの被照射体の電子軌道に影響を与え、ラジカル、カチオン、アニオンなどの重合反応の引き金と成りうるエネルギー線を示すが、重合反応を誘発させるエネルギー線であれば、これに限定しない。
【0028】
なお、活性エネルギー線の光源として紫外線を照射する場合、例えば高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、紫外線レーザー、LED、および太陽光を使用することができる。
【0029】
本発明のインク組成物中に含まれる光ラジカル重合開始剤としては、硬化速度、硬化塗膜物性、着色材料により自由に選択することができる。中でも、分子開裂型または水素引き抜き型のものが本発明に好適であり、具体的にはベンゾインイソブチルエーテル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,4,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)、4−ベンゾイル−4'−メチル−ジフェニルスルフィド、1,2−オクタンジオン、1−(4−(フェニルチオ)−2,2−(O−ベンゾイルオキシム))などが好適に用いられる。これらの光ラジカル重合開始剤は、磁性粉体や重合性化合物の光吸収によってのラジカル生成反応が阻害されない点、またラジカル発生効率が高くインク組成物の硬化性を高めることができる点で好ましい。
【0030】
また上記以外の光ラジカル重合開始剤として、分子開裂型では1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、および1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、また水素引き抜き型重合開始剤としてはベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノンなどを挙げることができる。
【0031】
前記光ラジカル重合開始剤は、活性エネルギー線の波長スペクトルや光ラジカル重合開始剤の光吸収スペクトルを考慮したうえで1種、または2種以上併用することができる。
【0032】
また上記光ラジカル重合開始剤に対し、増感剤としてトリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p−ジエチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N,N−ジメチルベンジルアミンおよび4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどの、前記重合性化合物と付加反応を起こさないアミン類を併用することもできる。もちろん、上記光ラジカル重合開始剤や増感剤は、インク組成物への溶解性に優れ、紫外線透過性を阻害しないものを選択して用いることが好ましい。
【0033】
上記光ラジカル重合開始剤は、重合性化合物に対し、2〜25重量%含有することが好ましい。2重量%未満であると硬化速度が著しく悪化し、25重量%より多いと、含有量が25重量%のものと硬化速度が変わらないばかりか、溶解残りが発生する場合があり、熱をかけて溶け残りを溶かしたとしても、インク組成物の粘度が上昇し、結果としてインク組成物の粘度を前記の好適な範囲内に収めることができず、吐出できなくなるといった問題が生じる。
【0034】
本発明では、基材への濡れ広がり性を向上させるために表面調整剤を加えることが好ましい。本発明における表面調整剤とは、インキに1重量%添加した際に、インキ表面張力を0.5mN/m以上下げる樹脂のことである。
【0035】
表面調整剤の具体例としては、ビックケミー社製「BYK−350、352、354、355、358N、361N、381N、381、392、BYK−300、302、306、307、310、315、320、322、323、325、330、331、333、337、340、344、370、375、377、355、356、357、390、UV3500、UV3510、UV3570」テゴケミー社製「Tegorad−2100,2200、2250、2500、2700」等が挙げられるがこれに限定されるものではない。これら表面調整剤は、一種または必要に応じて二種以上用いてもよい。
【0036】
表面調整剤は組成物中に、0.001〜5重量%含まれることが好ましい。0.001重量%未満では濡れ広がりが悪くなり、5重量%より多くても、表面調整剤がインキ界面に配向しきれず、一定の効果までしか発現しない。
【0037】
本発明では、インキの経時での粘度安定性、経時後の吐出性、記録装置内での機上の粘度安定性を高めるため、安定化剤を使用することが好ましい。安定化剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、フェノチアジン系化合物、ヒンダードアミン系化合物、リン系化合物が特に好適に使用される。具体的に例示すると、ヒンダードフェノール系化合物として、BASF社製「IRGANOX 1010、1010FF、1035、1035FF、1076、1076FD、1076DWJ、1098、1135、1330、245、245FF、245DWJ、259、3114、565、565DD、295」、精工化学社「BHTスワノックス」「ノンフレックス アルバ、MBP、EBP、CBP、BB」「TBH」、ADEKA社製「AO−20、30、50、50F、70、80、330」、本州化学社製「H−BHT」、エーピーアイ社「ヨシノックス BB、425、930」、フェノチアジン系化合物として、精工化学社製「フェノチアジン」、堺化学工業社製「フェノチアジン」「2−メトキシフェノチアジン」、「2−シアノフェノチアジン」、ヒンダードアミン系化合物として、BASF社製「IRGANOX 5067」「TINUVIN 144、765、770DF、622LD」、精工化学社「ノンフレックス H、F、OD−3、DCD、LAS−P」「ステアラー STAR」「ジフェニルアミン」「4−アミノジフェニルアミン」「4−オキシジフェニルアミン」、エボニックデグサ社製「HO−TEMPO」、日立化成社「ファンクリル 711MM、712HM」、リン系化合物として、BASF社製「トリフェニルホスフィン」「IRGAFOS 168、168FF」、精工化学社「ノンフレックス TNP」、その他の化合物として、BASF社製「IRGASTAB UV−10、22」、精工化学社製「ハイドロキノン」「メトキノン」「トルキノン」「MH」「PBQ」「TBQ」「2,5−ジフェニルーp−ベンゾキノン」、和光純薬社「Q−1300、1301」、RAHN社製「GENORAD 16、18、20」を挙げることができる。このうち、インキへの溶解性や、安定化剤自身の色味の点で、ヒンダードフェノール系化合物として精工化学社「BHTスワノックス」「ノンフレックス アルバ」、本州化学社製「H−BHT」、フェノチアジン系化合物として精工化学社製「フェノチアジン」、堺化学工業社製「フェノチアジン」、ヒンダードアミン系化合物としてエボニックデグサ社製「HO−TEMPO」、リン系化合物として、BASF社製「トリフェニルホスフィン」が好適に選択される。
【0038】
本発明のインク組成物に着色剤を含有させる場合には染料、顔料を用いることができるが、印刷物の耐性の面から顔料をより好適に用いることができる。顔料としては一般的に印刷用途、塗料用途のインク組成物に使用される顔料を用いることができ、発色性、耐光性などの必要用途に応じて選択することができる。顔料成分としては、カーボンブラック、酸化チタン、炭酸カルシウム等の無彩色の顔料または有彩色の有機顔料が使用できる。有機顔料としては、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザエロー、ベンジジンエロー、ピラゾロンレッドなどの不溶性アゾ顔料、リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2Bなどの溶性アゾ顔料、アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーンなどの建染染料からの誘導体、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系有機顔料、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタなどのキナクリドン系有機顔料、ペリレンレッド、ペリレンスカーレットなどのペリレン系有機顔料、イソインドリノンエロー、イソインドリノンオレンジなどのイソインドリノン系有機顔料、ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジなどのピランスロン系有機顔料、チオインジゴ系有機顔料、縮合アゾ系有機顔料、ベンズイミダゾロン系有機顔料、キノフタロンエローなどのキノフタロン系有機顔料、イソインドリンエローなどのイソインドリン系有機顔料、ナフトール系有機顔料、その他の顔料として、フラバンスロンエロー、アシルアミドエロー、ニッケルアゾエロー、銅アゾメチンエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等が挙げられる。
【0039】
有機顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーで例示すると、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86 93、109、110、117、120、125、128、129、137、138、139、147、148、150、151、153、154、155、166、168、180、185、C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、C.I.ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、177、180、185、192、202、206、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、269、C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64、C.I.ピグメントグリーン7、36、C.I.ピグメントブラウン23、25、26等が挙げられる。
【0040】
カーボンブラックの具体例としては、デグサ社製「Special Black350、250、100、550、5、4、4A、6」「PrintexU、V、140U、140V、95、90、85、80、75、55、45、40、P、60、L6、L、300、30、3、35、25、A、G」、キャボット社製「REGAL400R、660R、330R、250R」「MOGUL E、L」、三菱化学社製「MA7、8、11、77、100、100R、100S、220、230」「#2700、#2650、#2600、#200、#2350、#2300、#2200、#1000、#990、#980、#970、#960、#950、#900、#850、#750、#650、#52、#50、#47、#45、#45L、#44、#40、#33、#332、#30、#25、#20、#10、#5、CF9、#95、#260」等が挙げられる。
【0041】
酸化チタンの具体例としては、石原産業社製「タイペークCR−50、50−2、57、80、90、93、95、953、97、60、60−2、63、67、58、58−2、85」「タイペークR−820,830、930、550、630、680、670、580、780、780−2、850、855」「タイペークA−100、220」「タイペークW−10」「タイペークPF−740、744」「TTO−55(A)、55(B)、55(C)、55(D)、55(S)、55(N)、51(A)、51(C)」「TTO−S−1、2」「TTO−M−1、2」、テイカ社製「チタニックスJR−301、403、405、600A、605、600E、603、805、806、701、800、808」「チタニックスJA−1、C、3、4、5」、デュポン社製「タイピュアR−900、902、960、706、931」等が挙げられる。
【0042】
上記顔料の中で、キナクリドン系有機顔料、フタロシアニン系有機顔料、ベンズイミダゾロン系有機顔料、イソインドリノン系有機顔料、縮合アゾ系有機顔料、キノフタロン系有機顔料、イソインドリン系有機顔料等は耐光性が優れているため好ましい。有機顔料は、レーザー散乱による測定値で平均粒径10〜200nmの微細顔料であることが好ましい。顔料の平均粒径が10nm未満の場合は、粒径が小さくなることによる耐光性の低下が生じ、200nmを越える場合は、分散の安定維持が困難になり、顔料の沈澱が生じやすくなる。
【0043】
有機顔料の微細化は下記の方法で行うことができる。すなわち、有機顔料、有機顔料の3重量倍以上の水溶性の無機塩および水溶性の溶剤の少なくとも3つの成分からなる混合物を粘土状の混合物とし、ニーダー等で強く練りこんで微細化したのち水中に投入し、ハイスピードミキサー等で攪拌してスラリー状とする。次いで、スラリーの濾過と水洗を繰り返して、水溶性の無機塩および水溶性の溶剤を除去する。微細化工程において、樹脂、顔料分散剤等を添加してもよい。
水溶性の無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム等が挙げられる。これらの無機塩は、有機顔料の3重量倍以上、好ましくは20重量倍以下の範囲で用いる。無機塩の量が3重量倍よりも少ないと、所望の大きさの処理顔料が得られない。また、20重量倍よりも多いと、後の工程における洗浄処理が多大であり、有機顔料の実質的な処理量が少なくなる。
【0044】
水溶性の溶剤は、有機顔料と破砕助剤として用いられる水溶性の無機塩との適度な粘土状態をつくり、充分な破砕を効率よく行うために用いられ、水に溶解する溶剤であれば特に限定されないが、混練時に温度が上昇して溶剤が蒸発し易い状態になるため、安全性の点から沸点120〜250℃の高沸点の溶剤が好ましい。水溶性溶剤としては、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2−(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、液体ポリエチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、低分子量ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0045】
本発明において顔料は、十分な濃度および十分な耐光性を得るため、インク組成物中に0.1〜30重量%の範囲で含まれることが好ましい。
【0046】
本発明では、顔料の分散性およびインク組成物の保存安定性を向上させるために顔料分散剤を添加するのが好ましい。顔料分散剤としては、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ステアリルアミンアセテート等を用いることができる。
【0047】
分散剤の具体例としては、BYK Chemie社製「Anti−Terra−U(ポリアミノアマイド燐酸塩)」、「Anti−Terra−203/204(高分子量ポリカルボン酸塩)」、「Disperbyk−101(ポリアミノアマイド燐酸塩と酸エステル)、107(水酸基含有カルボン酸エステル)、110、111(酸基を含む共重合物)、130(ポリアマイド)、161、162、163、164、165、166、170(高分子共重合物)」、「400」、「Bykumen」(高分子量不飽和酸エステル)、「BYK−P104、P105(高分子量不飽和酸ポリカルボン酸)」、「P104S、240S(高分子量不飽和酸ポリカルボン酸とシリコン系)」、「Lactimon(長鎖アミンと不飽和酸ポリカルボン酸とシリコン)」が挙げられる。
【0048】
また、Efka CHEMICALS社製「エフカ44、46、47、48、49、54、63、64、65、66、71、701、764、766」、「エフカポリマー100(変性ポリアクリレート)、150(脂肪族系変性ポリマー)、400、401、402、403、450、451、452、453(変性ポリアクリレート)、745(銅フタロシアニン系)」、共栄社化学社製「フローレン TG−710(ウレタンオリゴマー)、「フローノンSH−290、SP−1000」、「ポリフローNo.50E、No.300(アクリル系共重合物)」、楠本化成社製「ディスパロン KS−860、873SN、874(高分子分散剤)、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル型)」が挙げられる。
【0049】
さらに、花王社製「デモールRN、N(ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩)、MS、C、SN−B(芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩)、EP」、「ホモゲノールL−18(ポリカルボン酸型高分子)、「エマルゲン920、930、931、935、950、985(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)、「アセタミン24(ココナッツアミンアセテート)、86(ステアリルアミンアセテート)」、ルーブリゾール社製「ソルスパース5000(フタロシアニンアンモニウム塩系)、13940(ポリエステルアミン系)、17000(脂肪酸アミン系)、24000GR、32000、33000、35000、39000、41000、53000、J−100」、日光ケミカル社製「ニッコール T106(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)、MYS−IEX(ポリオキシエチレンモノステアレート)、Hexagline 4−0(ヘキサグリセリルテトラオレート)」、味の素ファインテクノ社製「アジスパーPB821、822、824、827、711」、テゴケミサービス社製「TEGODisper685」等が挙げられる。
【0050】
特に、安定性が良く吐出性に優れた分散剤として、ルーブリゾール社製のソルスパーズ32000、ソルスパーズJ−100が挙げられる。
【0051】
分散剤はインク組成物中に0.01〜10重量%含まれることが好ましい。
【0052】
本発明のインク組成物には、顔料の分散性およびインク組成物の保存安定性をより向上させるために、有機顔料の酸性誘導体を顔料の分散時に配合することが好ましい。
【0053】
本発明のインク組成物に着色剤を含有させる場合、あらかじめ重合性モノマー、顔料分散剤、顔料、添加剤をサンドミル等の通常の分散機を用いてよく分散し、顔料を高濃度に含有する濃縮液を作成したのち、残りの重合性モノマーにより希釈することが好ましい。この方法により、通常の分散機による分散においても充分な分散が可能であり、また過剰な分散エネルギーがかからず、多大な分散時間を必要としないため、分散時に原料が変質することなく、安定性に優れたインク組成物を製造することができる。
【0054】
本発明のインク組成物については、印刷適性や印字物耐性を高めるため、表面調整剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などの添加剤を必要に応じて使用することができる。
【0055】
本発明のインク組成物は、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルおよびN−ビニルカプロラクタム、その他の重合性モノマー、安定化剤、光重合開始剤、添加剤、および着色剤を含有させる場合には上記顔料濃縮液を添加、混合し、光重合開始剤を溶解させることで製造される。この際、ヘッドでの詰まりを防止するため、光重合開始剤の溶解後に、孔径3μm以下、好ましくは孔径1μ以下のフィルターにて濾過することが好ましい。
【0056】
本発明のインク組成物は、25℃での粘度を5〜50mPa・sに調整することが好ましく、5〜30mPa・sに調整することがより好ましく、5〜15mPa・sに調整することが特に好ましい。この粘度領域であれば、特に通常の5〜30KHzの周波数を有するヘッドから10〜50KHzの高周波数のヘッドにおいても安定した吐出特性を示す。ここで粘度が5mPa・s未満の場合は、高周波数のヘッドにおいて、吐出の追随性の低下が認められ、50mPa・sを越える場合は、加熱による粘度の低下機構をヘッドに組み込んだとしても吐出そのものの低下を生じ、吐出の安定性が不良となり、全く吐出できなくなる。
【0057】
また本発明のインク組成物は、ピエゾヘッドにおいては10μS/cm以下の電導度とし、ヘッド内部での電気的な腐食のないインキとすることが好ましい。またコンティニュアスタイプにおいては、電解質による電導度の調整が必要であり、この場合には0.5mS/cm以上の電導度に調整する必要がある。
【0058】
本発明のインク組成物を使用するには、まずこのインク組成物をインクジェット記録方式用プリンタのプリンタヘッドに供給し、このプリンタヘッドから基材上に吐出し、その後紫外線又は電子線などの活性エネルギー線を照射する。これにより印刷媒体上のインク組成物は速やかに硬化する。
【0059】
本発明で用いられる印刷基材については特に限定はないが、ポリカーボネート、硬質塩ビ、軟質塩ビ、ポリスチレン、発砲スチロール、PMMA、ポリプロピレン、ポリエチレン、PETなどのプラスチック基材やこれら混合または変性品、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙などの紙基材、ガラス、ステンレスなどの金属基材などが挙げられる。
【0060】
[実施例]
以下実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の態様がこれらの例に限定されるものではない。なお以下については、部数は全て重量部を表す。
【0061】
(顔料分散体Aの作成)
顔料 カーボンブラック顔料(デグサ社製)
「Special Black350」 30.0部
顔料分散剤 ソルスパース32000(ルーブリゾール社製) 6.0部
モノマー アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル 64.0部
上記材料をハイスピードミキサー等で均一になるまで撹拌した後、得られたミルベースを横型サンドミルで約1時間分散することで、顔料分散体Aを作製した。
【0062】
(顔料分散体Bの作成)
顔料 キナクリドン顔料(クライアント社製)
「E5B02」 35.0部
顔料分散剤 ソルスパース32000(ルーブリゾール社製) 10.5部
モノマー アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル 54.5部
顔料分散体Aと同様に、上記材料をハイスピードミキサー等で均一になるまで撹拌した後、得られたミルベースを横型サンドミルで約1時間分散することで、顔料分散体Bを作製した。
【0063】
(顔料分散体Cの作成)
顔料 カーボンブラック顔料(デグサ社製)
「Special Black350」 30.0部
顔料分散剤 ソルスパース32000(ルーブリゾール社製) 6.0部
モノマー ジプロピレンクリコールジアクリレート 64.0部
顔料分散体Aと同様に、上記材料をハイスピードミキサー等で均一になるまで撹拌した後、得られたミルベースを横型サンドミルで約1時間分散することで、顔料分散体Cを作製した。
【0064】
(顔料分散体Dの作成)
顔料 キナクリドン顔料(クライアント社製)
「E5B02」 35.0部
顔料分散剤 ソルスパースJ−100(ルーブリゾール社製) 10.5部
モノマー アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル 54.5部
顔料分散体Aと同様に、上記材料をハイスピードミキサー等で均一になるまで撹拌した後、得られたミルベースを横型サンドミルで約1時間分散することで、顔料分散体Dを作製した。
【0065】
[実施例1〜実施例9]
次に、表1配合処方にて、表の上から順次撹拌しながら添加し、重合開始剤が溶解するまで穏やかに混合させた後、1μmのメンブランフィルターで濾過を行い、粗大粒子を除去することでインクジェットインキ組成物を得た。
【0066】
表1におけるインキ原料は、
・アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル (日本触媒社製)
・N−ビニルカプロラクタム (BASF社製)
・ジプロピレングリコールジアクリレート (BASF社製)
・1,6ーヘキサンジオールジアクリレート (大阪有機化学工業社製)
・1,9−ノナンジオールジアクリレート (大阪有機化学工業社製)
・トリプロピレングリコールジアクリレート (サートマー社製)
・トリメチロールプロパントリアクリレート (東亞合成社製)
・ペンタエリスリトールトリアクリレート (東亞合成社製)
・ ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート (東亞合成社製)
・イルガキュア819 (BASF社製)
・Lucirin TPO(BASF社製)
・イルガキュア369(BASF社製)
・KAYACURE BMS(日本化薬社製)
・BYK−UV3510(BYK Chemie社製)
・BHTスワノックス(精工化学社製)
・フェノチアジン(精工化学社製)
を使用して作製した。
【0067】
次にこのインクジェットインキ組成物を用い、京セラヘッドを積んだインクジェット吐出装置により、インキ液滴量14pl、600×600dpiの印字条件で、表面処理条件を変えたコート紙、アート紙、マットコート紙、キャストコート紙、の各基材上へ吐出した。吐出後ハリソン東芝ライティング社製140W/cm、メタルハライドランプ1灯、コンベア速度25〜50m/min、1Passで紫外線硬化し、塗膜を得た。
【0068】
表1における印刷基材は、
PET:リンテック社製 PET K2411
PP:リンテック社製 OPP 50C
コート紙: 王子製紙株式会社製 OKトップコート+
PVC:メタマーク社製 MD5
【0069】
[実施例10〜実施例17]
実施例1〜9と同様に、表2配合処方にて、インクジェットインキ組成物を作製し、印刷、硬化を行った。
【0070】
[比較例1〜比較例10]
実施例1〜9と同様に、表3配合処方にて、インクジェットインキ組成物を作製し、印刷、硬化を行った。
【0071】
(硬化性試験)
上記で作成したインキ組成物を、印刷速度を変えて印刷し、100%ベタ印字部分が1Passで硬化する印字速度から硬化性の程度を判断した。印刷物を触診し、インキが手に付かない状態を硬化判断した。
評価基準は以下の通りであり、○以上を硬化性良好とする。
◎:50m/minで硬化する
○:37.5m/minで硬化する
△:25m/minで硬化する
×:25m/minで硬化しない
【0072】
(表面シワ判定試験)
表面シワは内部硬化性が不十分の時に過剰な表面硬化によって発生し、特にBLACKインキで起こりやすい。
表面シワ判断は、上記で作製したインクジェットインキ組成物を100用いて、ベタ印字部分を印字速度25m/min・1Passで硬化させ、印刷物表面に過剰な表面硬化による表面シワが発生しているか目視で判断した。
評価基準は以下の通りであり、○以上を表面シワ良好とする。
◎:表面に硬化不良によるシワがない
○:表面にわずかにシワがある
△:表面にややシワがある
×:表面にかなりシワがある
【0073】
(吐出性試験)
吐出性は、上記で作製したインクジェットインキ組成物を、京セラヘッドを積んだインクジェット吐出装置でノズルチェックパターンを印刷し、10万発印刷後、再度ノズルチェックパターンを印刷し、ノズル抜けの個数で吐出性を評価した。評価基準は以下の通りであり、○以上を吐出安定性良好とする。
◎:10万発印字後にノズル抜けなし
○:10万発印字後にノズル抜け1〜2コ
△:10万発印字後にノズル抜け3〜5コ
×:10万発印字後にノズル抜け6コ以上
【0074】
(耐スクラッチ性試験)
耐スクラッチ性試験は、上記で作製したインクジェットインキ組成物を用いて、100%ベタ印字部分を印字速度25m/min・1Passで硬化させ、得られた硬化膜を爪で10回擦って、硬化膜の剥離具合を評価した。評価基準は以下の通りであり、○以上を吐出安定性良好とする。
◎:爪で擦っても傷が付かず、硬化膜も取れない
○:爪で擦ると傷が付くが、硬化膜は取れない
△:爪で擦ると硬化膜がやや取れる
×:爪で擦ると簡単に硬化膜が取れる
【0075】
(保存安定性試験)
上記で作製したインク組成物をスクリュー管瓶(容量約7mL)に6mL取り分け密栓したのち、60℃環境下に7日間静置した後に測定した粘度を、作製直後の初期粘度と比較することで、経時安定性の評価を行った。粘度の測定には東機産業社製TVE25L型粘度計を使用した。またこのときの評価基準は以下の通りであり、○以上を保存安定性良好とする。
◎:経時試験後の粘度上昇が、初期粘度と比較して5%未満
○:経時試験後の粘度上昇が、初期粘度と比較して5%以上10%未満
△:経時試験後の粘度上昇が、初期粘度と比較して10%以上15%未満
×:経時試験後の粘度上昇が、初期粘度と比較して15%以上
【0076】
(密着性試験)
密着性試験は、上記で作製したインクジェットインキ組成物を用いて、1.5cm×1.5cmの大きさに100%ベタを印刷し、印字部分を印字速度25m/min・1Passで硬化させ、得られた硬化膜にセロハン密着テープを貼り付け、上面から消しゴムでこすり、セロハン密着テープの塗工面への密着を充分に行った後、90°で剥離させることで行い、剥離後の塗膜の基材への密着の程度から判断した。評価基準は以下の通りであり、○以上を密着性良好とする。
◎:テープ剥離面積が1%未満
○:テープ剥離面積が1%以上〜10%未満
△:テープ剥離面積が10%以上〜25%未満
×:テープ剥離面積が25%以上
―:硬化膜を形成できないため、評価できない
【0077】
実施例1〜17は、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルおよびN−ビニルカプロラクタムを含有した例であり、硬化性、表面シワ、吐出性、耐スクラッチ性、保存安定性、密着性のいずれにおいても、良好な結果が得られた。
【0078】
実施例1〜2、5〜17は、N−ビニルカプロラクタムを5〜35重量%含有したものであり、保存安定性、硬化性がいずれも◎以上と、非常に良好な評価結果が得られている。
【0079】
実施例9〜17は、2官能アクリレートモノマーを併用しており、表面シワが非常に良好になっている。また、実施例9、11〜15、17は2官能アクリレートモノマーの量が8〜50重量%であり、表面シワが非常に良好のまま、良好な密着性を維持している。さらに、実施例9〜12、15、17は分子量250以下の2官能アクリレートモノマーを用いており、表面シワが◎のまま、良好な吐出性を保っている。
【0080】
実施例15〜17は、多官能アクリレートモノマーを併用しており、耐スクラッチ性が非常に良好になっている。さらに、実施例15、17は、多官能アクリレートモノマーの量が1重量%以上〜10重量%以下であり、耐スクラッチ性が非常に良好なまま、良好な吐出性と密着性を保っている。
【0081】
比較例1、2、7、9は、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルを用いているが、N−ビニルカプロラクタムを含んでおらず、硬化性と耐スクラッチ性が劣る。結果となっている。また、比較例10は、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルと多官能アクリレートモノマーを併用して、硬化性が改善されているが、吐出性と密着性が著しく悪くなっている。
【0082】
比較例3、8は、N−ビニルカプロラクタムを用いているが、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルを含んでおらず、硬化性、耐スクラッチ性、保存安定性、密着性が著しく悪くなっている。また、比較例3は、重合性モノマーとしてN−ビニルカプロラクタムしか用いておらず、硬化膜を形成することができない。
【0083】
比較例4〜6は、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルおよびN−ビニルカプロラクタムを用いておらず、硬化性、表面シワ、耐スクラッチ性、吐出性、密着性の全項目を良好にすることはできない。
【0084】
以上の結果から、優れた硬化性や吐出性、保存安定性、多基材対応性を有するインク組成物を得るためには、クリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルおよびN−ビニルカプロラクタムを含む活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ組成物を用いることが必須条件であることが確認された。
【0085】
【表1】

【0086】
【表2】

【0087】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷に使用されるインク組成物であって、優れた硬化性や吐出性、保存安定性、多基材対応性を持つインク組成物であることから、例えば工業用途や産業用途でのインクジェット印刷に利用することができる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルおよびN−ビニルカプロラクタムを含む活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ組成物。
【請求項2】
請求項1において、N−ビニルカプロラクタムの含有量がインクジェットインキ組成物中5〜35重量%であることを特徴とする活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ組成物。
【請求項3】
さらに、2官能アクリレートモノマーを含むことを特徴とする請求項1または2記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ組成物。
【請求項4】
請求項1〜3において、3官能以上の多官能アクリレートモノマー含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ組成物。
【請求項5】
請求項1〜4記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ組成物を用いて印刷してなる印刷物。


【公開番号】特開2013−47305(P2013−47305A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186471(P2011−186471)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】