説明

活性エネルギー線硬化型インクジェットマゼンタインキ

【課題】
本発明の目的は、優れた色再現性を実現し、かつ保存安定性に優れた活性エネルギー線硬化型インクジェットマゼンタインキを提供することである。
【解決手段】
無置換キナクリドンと2,9−ジメチルキナクリドンの2種類のマゼンタ顔料をそれぞれ含有すること活性エネルギー線硬化型インクジェットマゼンタインキ。
ならびに、インクジェットマゼンタインキの他に、少なくとも活性エネルギー線硬化型インクジェットイエローインキ、シアンインキを含むことを特徴とする、活性エネルギー線硬化型インクジェットインキセット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無置換キナクリドン(A)と2,9−ジメチルキナクリドン(B)の2種類のキナクリドン顔料をそれぞれ含むことを特徴とする、活性エネルギー線硬化型インクジェットマゼンタインキに関するもので、色再現域が広域で、保存安定性が良好なものである。
【背景技術】
【0002】
従来インクジェット印刷に使用されるインキ組成物としては、溶剤型、水型、油性型など多岐にわたっているが、プラスチックやガラスなどの非吸収性の基材にも適用できること、溶剤の揮発量を低減させ環境に優しいことなどから、近年は活性エネルギー線硬化型インクジェットインキの需要が増加している。とくに工業用インクジェット印刷においては、上記に加え耐水性、インキの乾燥エネルギー、乾燥によるヘッドへのインキ成分の付着などの点もあり、溶剤型や水型から活性エネルギー線硬化型インクジェットインキへの置き換えが期待されている。
【0003】
一方で、インクジェットインキはイエロー、マゼンタ、シアンの3色がどの程度の色再現ポテンシャルを持ち得るかにより、形成される画質の色再現性が大きく変化するため、顔料選定が非常に重要な因子であることは、特許文献1〜3に記載されている。
【0004】
特許文献1及び2は適切な顔料選択により所望の色域を確保しているが、水型インクジェットインキに関するものである。本発明は活性エネルギー線硬化型インクジェットインキであり、分散溶媒が重合性モノマーであることから、顔料分散が非常に困難であるという特徴を持つ。
【0005】
特許文献3は、無置換キナクリドンと2,9−ジクロルキナクリドンが同一結晶内に溶け合った、いわゆる固溶体をマゼンタ顔料として選択し、活性エネルギー線硬化型インクジェットインキにおいて広域な色再現を達成している。しかし、固溶体を使用した顔料分散体は保存安定性に乏しい。加えて、固溶体を使用した活性エネルギー線硬化型インクジェットインクは、印刷時の硬化速度が遅い傾向にあった。高速印刷が望まれる昨今の風潮から鑑みて、固溶体の使用は好ましくないと考えられる。
【0006】
また、特許文献3は透過吸収スペクトルから使用顔料を定義している。ところが、インクジェットインキによる印刷物の色合いや風合いは印刷メディアや顔料分散体の一次粒子径等に大きく依存することから、最終印刷物を考慮した上での色相は、反射スペクトルで評価するのが好適と考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−024072号公報
【特許文献2】特開2009−102661号公報
【特許文献3】国際公開2008/043692
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、優れた色再現性を実現し、かつ保存安定性に優れた活性エネルギー線硬化型インキを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明は、無置換キナクリドンと2,9−ジメチルキナクリドンの2種類のマゼンタ顔料をそれぞれ含有する活性エネルギー線硬化型インクジェットマゼンタインキに関する。
【0010】
本発明にて2種類のマゼンタ顔料をそれぞれ含有するとは、互いに異なる結晶構造をもつ顔料を独立に2種類含有することを意味する。従って、初めから2種類の顔料を混在させて分散するか、別々に分散した2種類の顔料分散体を後から混合しても良いが、固溶体の分散は含まれない。
【0011】
更に、本発明では2種類のマゼンタ顔料のうち、無置換キナクリドンが顔料中に重量比率40%以上75%未満含まれることを特徴とする活性エネルギー線硬化型インクジェットマゼンタインキに関する。
更に、本発明は少なくともマゼンタ、イエロー、シアンを含む3色以上のインキから構成されることを特徴とする活性エネルギー線硬化型インクジェットインキセットに関する。
更に、本発明はイエロー顔料としてベンズイミダゾロン骨格又はイソインドリン骨格を有する顔料を含有するイエローインキを含む、活性エネルギー線硬化型インクジェットインキセットに関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、優れた色再現性を達成し、かつ保存安定性に優れた活性エネルギー線硬化型インクジェットマゼンタインキを提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明で使用する一方のマゼンタ顔料である無置換キナクリドンはC.I.ピグメントバイオレット19として公知の顔料であり、クラリアント社の「Inkjet Magenta E5B02」、BASF社の「CROMOPHTAL RED 2020」などとして市販されている。
【0014】
本発明で使用するもう一方のマゼンタ顔料である2,9−ジメチルキナクリドンはC.I.ピグメントレッド122として公知の顔料であり、BASF社の「CROMOPHTAL JET Magenta DMQ」、「CROMOPHTAL Pink PT SA」、クラリアント社の「Toner Magenta E」、「Inkjet Magenta E02」などとして市販されている。
【0015】
本発明で使用するベンズイミダゾロン骨格を有するイエロー顔料として、C.I.ピグメントイエロー120、151、154、156、175、180、181、194などが挙げられるが、これらの中でもC.I.ピグメントイエロー180を用いることがより好ましい。
【0016】
本発明で使用するイソインドリン骨格を有するイエロー顔料として、C.I.ピグメントイエロー109、110、139、177、178、185などが挙げられるが、これらの中でもC.I.ピグメントイエロー185やC.I.ピグメントイエロー139を用いることがより好ましい。
【0017】
本発明で使用するイエロー顔料であるC.I.ピグメントイエロー180は、クラリアント社の「PV FAST YELLOW HG」、「Toner Yellow HG」などとして市販されている。
【0018】
本発明で使用するイエロー顔料であるC.I.ピグメントイエロー185は、BASF社の「Palitol Yellow D 1155」、「Palitol Yellow L 1155」などとして市販されている。
【0019】
本発明で使用するイエロー顔料であるC.I.ピグメントイエロー139は、BASF社の「Palitol Yellow D 1819」、クラリアント社の「Novoperm Yellow M2R 70」などとして市販されている。
【0020】
有機顔料の微細化は下記の方法で行うことができる。すなわち、有機顔料、有機顔料の3重量倍以上の水溶性の無機塩および水溶性の溶剤の少なくとも3つの成分からなる混合物を粘土状の混合物とし、ニーダー等で強く練りこんで微細化したのち水中に投入し、ハイスピードミキサー等で撹拌してスラリー状とする。次いで、スラリーの濾過と水洗を繰り返して、水溶性の無機塩および水溶性の溶剤を除去する。微細化工程において、樹脂、顔料分散剤等を添加してもよい。
【0021】
水溶性の無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム等が挙げられる。これらの無機塩は、有機顔料の3重量倍以上、好ましくは20重量倍以下の範囲で用いる。無機塩の量が3重量倍よりも少ないと、所望の大きさの処理顔料が得られない。また、20重量倍よりも多いと、後の工程における洗浄処理が多大であり、有機顔料の実質的な処理量が少なくなる。
【0022】
水溶性の溶剤は、有機顔料と破砕助剤として用いられる水溶性の無機塩との適度な粘土状態をつくり、充分な破砕を効率よく行うために用いられ、水に溶解する溶剤であれば特に限定されないが、混練時に温度が上昇して溶剤が蒸発し易い状態になるため、安全性の点から沸点120〜250℃の高沸点の溶剤が好ましい。水溶性溶剤としては、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2−(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、液体ポリエチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、低分子量ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0023】
本発明の顔料分散体は、いずれも塩基性顔料分散剤を使用することが好適である。
【0024】
本発明で使用する塩基性顔料分散剤は、日本ルーブリゾール社よりソルスパース13000シリーズ、24000SC、24000GR、28000、32000シリーズ、33000、35000シリーズ、36000シリーズ、39000、56000、J100の商品名で市販されているのでこれを利用してもよく、このうちソルスパース32000、35000、39000、56000、J100を用いることが好ましく、ソルスパース32000、J100を用いることがより好ましい。
【0025】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキには、従来既知の重合性モノマーやオリゴマー、プレポリマーを必要に応じて使用することができる。
【0026】
前記を含め、活性エネルギー線硬化型モノマーの具体例としては、単官能モノマーとしてベンジル(メタ)アクリレート、(エトキシ(またはプロポキシ)化)2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(オキシエチル) (メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、β-カルボキシルエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミドを挙げることができる。
また多官能モノマーとしては、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、(エトキシ(またはプロポキシ)化)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(エトキシ(またはプロポキシ)化) 1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(エトキシ(またはプロポキシ)化)ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ネオペンチルグリコール変性)トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(またはテトラ) (メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(またはテトラ) (メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(またはテトラ) (メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
以上の活性エネルギー線硬化型モノマーは、単独で用いられてもよいし、2種以上併用されてもよい。
【0027】
このうち本発明のインクジェットインキにおいては、単官能モノマーとしてフェノキシエチルアクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、イソボロニルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、N−ビニルカプロラクタム、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミドを、また多官能モノマーとしてジメチロールートリシクロデカンジアクリレート、(エトキシ(またはプロポキシ)化)ビスフェノールAジアクリレート、(エトキシ(またはプロポキシ)化)ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルアクリレートをより好適に用いることができる。
【0028】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキには、上記以外にオリゴマー、プレポリマーと呼ばれるものを使用できる。具体的には、ダイセルUCB社製「Ebecryl230、244、245、270、280/15IB、284、285、4830、4835、4858、4883、8402、8803、8800、254、264、265、294/35HD、1259、1264、4866、9260、8210、1290.1290K、5129、2000、2001、2002、2100、KRM7222、KRM7735、4842、210、215、4827、4849、6700、6700−20T、204、205、6602、220、4450、770、IRR567、81、84、83、80、657、800、805、808、810、812、1657、1810、IRR302、450、670、830、835、870、1830、1870、2870、IRR267、813、IRR483、811、436、438、446、505、524、525、554W、584、586、745、767、1701、1755、740/40TP、600、601、604、605、607、608、609、600/25TO、616、645、648、860、1606、1608、1629、1940、2958、2959、3200、3201、3404、3411、3412、3415、3500、3502、3600、3603、3604、3605、3608、3700、3700−20H、3700−20T、3700−25R、3701、3701−20T、3703、3702、RDX63182、6040、IRR419」、サートマー社製「CN104、CN120、CN124、CN136、CN151、CN2270、CN2271E、CN435、CN454、CN970、CN971、CN972、CN9782、CN981、CN9893、CN991」、BASF社製「Laromer EA81、LR8713、LR8765、LR8986、PE56F、PE44F、LR8800、PE46T、LR8907、PO43F、PO77F、PE55F、LR8967、LR8981、LR8982、LR8992、LR9004、LR8956、LR8985、LR8987、UP35D、UA19T、LR9005、PO83F、PO33F、PO84F、PO94F、LR8863、LR8869、LR8889、LR8997、LR8996、LR9013、LR9019、PO9026V、PE9027V」、コグニス社製「フォトマー3005、3015、3016、3072、3982、3215、5010、5429、5430、5432、5662、5806、5930、6008、6010、6019、6184、6210、6217、6230、6891、6892、6893−20R、6363、6572、3660」、根上工業社製「アートレジンUN−9000HP、9000PEP、9200A、7600、5200、1003、1255、3320HA、3320HB、3320HC、3320HS、901T、1200TPK、6060PTM、6060P」、日本合成化学社製「紫光 UV−6630B、7000B、7510B、7461TE、3000B、3200B、3210EA、3310B、3500BA、3520TL、3700B、6100B、6640B、1400B、1700B、6300B、7550B、7605B、7610B、7620EA、7630B、7640B、2000B、2010B、2250EA、2750B」、日本化薬社製「カヤラッドR−280、R−146、R131、R−205、EX2320,R190、R130、R−300,C−0011、TCR−1234、ZFR−1122、UX−2201,UX−2301,UX3204、UX−3301、UX−4101,UX−6101、UX−7101、MAX−5101、MAX−5100,MAX−3510、UX−4101」などを挙げることができるがこれに限定されるものではない。
【0029】
本発明において紫外線等の活性エネルギー線を用いてインキを硬化させる場合には、光重合開始剤を配合する。本発明で用いることができる光重合開始剤としては公知の光重合開始剤を使用することができ、分子開裂型や水素引き抜き型でラジカルを発生させる光重合開始剤を使用することが好ましい。本発明に用いることができる光重合開始剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、ラジカルを発生させる光重合開始剤とカチオンを発生させる光重合開始剤とを併用してもよい。
【0030】
光重合開始剤の具体例としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタノン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、1,2−オクタンジオン、1−[4−(フェニルチオ)−、2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−、1−(O−アセチルオキシム)、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、4−ベンゾイル−4'−メチル−ジフェニルスルフィドなどを挙げることができるがこれに限定されるものではない。
【0031】
また上記光重合開始剤に対し、増感剤として例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p−ジエチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N,N−ジメチルベンジルアミンおよび4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等を併用することもできる。もちろん、上記光重合開始剤や増感剤は、活性エネルギー線硬化性化合物への溶解性に優れ、紫外線透過性を阻害しないものを選択して用いることが好ましい。
【0032】
上記光重合開始剤は、重合性モノマーに対し、2〜20重量%含有することが好ましい。2重量%未満であると硬化性が著しく悪化し、20重量%より多いと、含有量が20重量%のものと硬化性が変わらないばかりか、未溶解成分が発生する場合があり、インクジェット吐出性の悪化、低温における光重合開始剤の析出、といった問題がある。
【0033】
本発明のインク組成物は、ヘッドでの詰まりを防止するため、分散後および/または光ラジカル重合開始剤の溶解後に、孔径3μm以下、好ましくは孔径1μ以下のフィルターにて濾過することが好ましい。
【0034】
以下実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の態様がこれらの例に限定されるものではない。また下記の実施例、比較例の詳細な条件を以下の表1〜4に、結果を表5に示す。なお以下の表中の数字は、全て重量部を表す。
【0035】
【表1】

【0036】
※PV19:C.I.ピグメントバイオレット19
※PR122:C.I.ピグメントレッド122
※PR202:C.I.ピグメントレッド202
(BASF社製「CINQUASIA MAGENTA RT−235D」)
※DPGDA:ジプロピレングリコールジアクリレート
(コグニス社製「PHOTOMER4226」)
【0037】
顔料分散体は、表1に記載した材料をハイスピードミキサーで均一になるまで撹拌後、得られたミルベースをダイノミルで分散した。分散は、径1mmのジルコニアビーズを充填した。分散時間に関して特に制限はないが、今回は2.5〜3.5時間が好適だった。
【0038】
【表2】

【0039】
※DAROCUR TPO:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド
(BASF社製)
※KAYACURE BMS:4−ベンゾイル−4'−メチル−ジフェニルスルフィド
(日本化薬(株)製)
※SB−PI704:エチル−4−(ジメチルアミノ)−ベンゾエート
(サートマー社製)
【0040】
マゼンタインキは、表2に記載した材料を順次撹拌しながら添加、混合し、光重合開始剤が溶解するまで穏やかに混合させた後、孔径1μmのメンブランフィルターで濾過を行い、粗大粒子を除去することでインクジェットインク組成物を得た。
【0041】
【表3】

【0042】
※PY180:C.I.ピグメントイエロー180
※PR185:C.I.ピグメントイエロー185
※PR139:C.I.ピグメントイエロー139
※PR150:C.I.ピグメントイエロー150
(ランクセス社製「Yellow Pigment E4GN」)
※PEA:2−フェノキシエチルアクリレート
(大阪有機化学工業(株)製「ビスコート#192」)
【0043】
イエロー顔料分散体は、表3に記載した材料をマゼンタ顔料分散体同様の製造方法で作製した。
【0044】
【表4】

【0045】
イエローインキは、表4に記載した材料をマゼンタインキと同様の製造方法で作製した。
【0046】
(シアン顔料分散体の作製)
顔料 LIONOL BLUE FG−7400G
(東洋インキ(株)製 フタロシアニン顔料) 30.0部
顔料分散剤 ソルスパース32000 9.0部
モノマー 2−フェノキシエチルアクリレート 61.0部
上記材料をマゼンタ顔料分散体と同様の製造方法で作製した。
【0047】
(シアンインキ)
シアン顔料分散体 16.7部
DPGDA 73.3部
DAROCUR TPO 5.0部
KAYACURE BMS 2.5部
SB−PI704 2.5部
上記原料をマゼンタインキと同様の製造方法で作製した。
【0048】
上記マゼンタ、イエロー、シアンインキにおいて、マゼンタインキ:イエローインキ=1:1で混色した際の色相をRED領域と定義し、マゼンタインキ:シアンインキ=1:1で混色した際の色相をBLUE領域と定義した。
【0049】
上記RED領域およびBLUE領域が、欧州の色標準であるFOGRA39をどの程度満足させるかにより、各組合せを評価した。
【0050】
上記FOGRA39との色比較は、Lab表色系により実施した。すなわち、インクジェット印刷により再現したRED及びBLUE領域において、分光測色計X−RITE528を用い、光源D50、視野角2°にてLab値を測定した。
【0051】
インクジェット印刷はシングルパス方式によって行い、印刷基材としてPET50(K2411)PA−T1 8LK(リンテック(株)製)を使用した。
【0052】
測定したLab値とFOGRA39のLab値において、これらの値の差分を二乗したものを足し合わせた数値の平方根ΔEを算出し、座標値の比較を実施した。
【0053】
上記Lab値の比較を具体的に式で表すと、次のようになる。

ΔE=((LFOG−L)+(aFOG−a)+(bFOG−b)1/2

但し、LFOGとはFOGRA39のL値を表し、Lとは実測のL値を表す。また、a、bともLと同様の記載法である。
【0054】
上記算出法にて求められたΔE値について、2以下を再現し得る場合を◎、3以下を再現できるが2以下を再現できない場合を○、5以下を再現できるが3以下を再現できない場合を△、5を超える場合を×として評価した。
【0055】
上記マゼンタインキ、イエローインキの保存安定性について、60℃1週間後の粘度変化率が10%未満である場合を◎、10%以上15%未満である場合を○、15%以上である場合を×を評価した。
【0056】
上記粘度変化率とは、初期粘度に対する粘度の変化を示すものである。具体的には、下記式にて算出した。

粘度変化率(%)={(60℃1週間保管後の粘度値)−(初期粘度値)}
/(初期粘度値)×100

【0057】
【表5】

【0058】
インキセットの評価結果を表5に示した。実施例7〜9、及び15〜17が最適な条件であったが、実施例1〜52はいずれも総じて良好な傾向だった。実施例7〜9及び15〜17が特に好適だった理由として、選択したマゼンタ顔料とその配合比が最適だったこと、及びイエロー顔料としてC.I.ピグメントイエロー180を選択したことが挙げられる。この結果から、マゼンタ顔料を適切な配合比で分散し、インキ化することが肝要であることが示された。更に、イエローインキとして、C.I.ピグメントイエロー180を使用したものが安定性良好であることが示された。一方で、比較例1〜8は顔料の分散性は良好であるが、所望の色相を再現することができなかった。これは、一種類のマゼンタ顔料のみでマゼンタインキを作製しているためであり、二種類のマゼンタ顔料を選択し、それぞれの長所を引き出すことが如何に重要であるかを示している。比較例9〜12は無置換キナクリドン以外のマゼンタ顔料として2,9−ジクロルキナクリドン(C.I.ピグメントレッド202)を選択しており、RED領域の色再現が満足できず、また分散性も不良であった。比較例13〜20はマゼンタ顔料として固溶体を選択したが、RED領域の色再現が満足できなかった。加えて、分散性が不良であり、インキの保存安定性が悪化する結果となった。






【特許請求の範囲】
【請求項1】
無置換キナクリドン(A)と2,9−ジメチルキナクリドン(B)の2種類のキナクリドン顔料をそれぞれ含むことを特徴とする、活性エネルギー線硬化型インクジェットマゼンタインキ。
【請求項2】
無置換キナクリドン(A):2,9−ジメチルキナクリドン(B)=75:25〜40:60の割合(重量比)でそれぞれ含むことを特徴とする、請求項1記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットマゼンタインキ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットマゼンタインキの他に、活性エネルギー線硬化型インクジェットイエローインキと、活性エネルギー線硬化型インクジェットシアンインキを少なくとも含むことを特徴とする、活性エネルギー線硬化型インクジェットインキセット。
【請求項4】
請求項3に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットイエローインキが、ベンズイミダゾロン骨格又はイソインドリン骨格をもつイエロー顔料を含むことを特徴とする、活性エネルギー線硬化型インクジェットインキセット。

















【公開番号】特開2013−47307(P2013−47307A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186473(P2011−186473)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【出願人】(711004436)東洋インキ株式会社 (2)
【Fターム(参考)】