説明

活性エネルギー線硬化型インク組成物、インクジェット記録方法、及び印刷物

【課題】高湿下でもインクの微小液滴の硬化性が良好で、且つ硬化した膜は基材への密着性、柔軟性に優れ、基材のしわ及びカールを抑制することができる活性エネルギー線硬化型インク組成物を提供する。
【解決手段】(A)下記一般式(1)で表される多官能オリゴマー、(B)(A)多官能オリゴマーとは異なる構造のオキセタン化合物、および、(C)(A)多官能オリゴマーとは異なる構造のエポキシ化合物を含む重合性化合物を含有し、該重合性化合物のインク組成物における含有量に対して、オキセタニル基を有する化合物の総含有量が1質量%以上50質量%未満であり、エポキシ基を有する化合物の総含有量が50質量%を越え99質量%以下である活性エネルギー線硬化型インク組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録用として好適に用いられる活性エネルギー線硬化型インク組成物、インクジェット記録方法、及びこれを用いた印刷物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
3員環、4員環などの環状エーテル化合物は、高い反応性を示すことが知られており、光カチオン重合や酸無水物を用いる熱重合が適用される硬化性組成物に含まれる重合性化合物として利用されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
一方、画像データ信号に基づき、紙などの被記録媒体に画像を形成する画像記録方法として、電子写真方式、昇華型及び溶融型熱転写方式、インクジェット方式などがある。中でも、インクジェット方式は、安価な装置で実施可能であり、且つ、必要とされる画像部のみにインクを射出して被記録媒体上に直接画像形成を行うため、インクを効率良く使用でき、ランニングコストが安い。更に、騒音が少なく、画像記録方式として優れている。インクジェット方式によれば、普通紙のみならずプラスチックシート、金属板など非吸水性の被記録媒体にも印字可能であるが、印字する際の高速化及び高画質化が重要な課題となっており、印字後の液滴の乾燥、硬化に要する時間が、印刷物の生産性や印字画像の鮮鋭度に大きく影響する性質を有している。
【0004】
インクジェット方式の一つとして、放射線の照射により、硬化可能なインクジェット記録用インクを用いた記録方式がある。この方法によれば、インク射出後直ちに又は一定の時間後に放射線照射し、インク液滴を硬化させることで、印字の生産性が向上し、鮮鋭な画像を形成することができる。
紫外線などの放射線の照射により硬化可能なインクジェット記録用インクの高感度化を達成することにより、放射線に対し高い硬化性が付与され、インクジェット記録の生産性向上、消費電力低減、放射線発生器への負荷軽減による高寿命化、不充分硬化に基づく低分子物質の揮発発生の防止など、多くの利益が生じる。
【0005】
このような放射線、例えば紫外線による硬化型インクジェット方式は、比較的低臭気であり、速乾性、インク吸収性の無い被記録媒体への記録が出来る点で近年注目されつつある。その中の一つの形態として、被記録媒体への密着性に優れ、紫外線硬化時の収縮率が小さいカチオン重合型インク組成物が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
一般的には、活性エネルギー線硬化型のインクとしては、ラジカル重合型のものがよく知られ、実用化の例が多い。一方、カチオン重合型のインクは、ラジカル重合型インクに見られるような酸素による重合阻害が無く、低照度の光源を用いることができること、アクリルモノマーによる臭気がないこと、素材が低刺激性であることなど有利な点があるが、実用化の例は限られている。
その一因としては、高湿下で著しく感度低下する性質、温度により感度が依存する性質が挙げられる。環境依存性のあるインクは、その画質が環境に依存するという本質的な課題を有する。
【0007】
このような課題に対し、脂環式エポキシ化合物/オキセタン化合物=10/90〜90/10の比率からなる硬化性組成物が報告されている(特許文献4参照)。
また、硬化性等を向上させる素材として、特定構造を有するカチオン重合性オリゴマーを含む硬化性組成物が報告されている(特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−43540号公報
【特許文献2】特開平11−60702号公報
【特許文献3】特開平9−183928号公報
【特許文献4】特開2002−317139号公報
【特許文献5】米国特許出願公開第2009/0203811号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献4に記載される脂環式エポキシ化合物/オキセタン化合物の比率では、ある程度の硬化性を有するものの、低露光量で微小液滴を硬化させる場合において、高湿環境における感度レベルは十分ではなかった。また、特許文献5において、多官能オリゴマーとの併用を推奨されている重合性化合物はビニルエーテル化合物とエポキシ化合物であり、これらを用いた場合、高湿下における微小液滴の硬化性は充分でないことが判った。
【0010】
本発明は、前記従来技術における諸問題に鑑みなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明の目的は、高湿条件下でもインクの微小液滴の硬化性が良好で、且つ硬化した膜は被記録媒体への密着性、柔軟性に優れ、硬化した膜を設けた被記録媒体のしわ及びカールを抑制することができる活性エネルギー線硬化型インク組成物を提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、前記活性エネルギー線硬化型インク組成物を用いたインクジェト記録方法、及び該インクジェット記録方法によって記録された印刷物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
<1> (A)下記一般式(1)で表される多官能オリゴマー、(B)(A)多官能オリゴマーとは異なる構造のオキセタン化合物、および、(C)(A)多官能オリゴマーとは異なる構造のエポキシ化合物を含む重合性化合物を含有し、該重合性化合物のインク組成物における含有量に対して、オキセタニル基を有する化合物の総含有量が1質量%以上50質量%未満であり、エポキシ基を有する化合物の総含有量が50質量%を越え99質量%以下である活性エネルギー線硬化型インク組成物。但し、前記重合性化合物のうち、エポキシ基およびオキセタニル基の両方を有する化合物は、オキセタニル基を有する化合物として、インク組成物中におけるオキセタニル基を有する化合物およびエポキシ基を有する化合物の含有量を計算する。
【0012】
【化1】

【0013】
〔一般式(1)中、Xは芳香族骨格を表し、Yは芳香族骨格または脂肪族骨格を表す。A及びBは、各々独立に、エポキシ基又はオキセタニル基を表す。jは1〜3の整数を表し、kは0〜2の整数を表す。n1、n2、及びm1は、それぞれ独立に0又は1を表す。qは1〜50の整数を表す。〕
【0014】
<2> 前記インク組成物に含まれる前記重合性化合物の含有量に対して、前記オキセタニル基を有する化合物の総含有量が20質量%以上45質量%以下であり、前記エポキシ基を有する化合物の総含有量が、55質量%以上80質量%以下である<1>に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物。
<3> 前記インク組成物に含まれる前記重合性化合物の含有量に対して、前記(A)一般式(1)で表される多官能オリゴマーの含有量が、0.01質量%以上10質量%以下である<1>または<2>に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物。
<4> 前記インク組成物に含まれる前記重合性化合物の含有量に対して、前記(A)一般式(1)で表される多官能オリゴマーの含有量が、0.1質量%以上5質量%以下である<1>〜<3>のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物。
【0015】
<5> 前記一般式(1)におけるA及びBが、いずれもエポキシ基である<1>〜<4>のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物。
<6> 前記一般式(1)におけるA及びBが、いずれもオキセタニル基である<1>〜<4>のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物。
<7> 前記一般式(1)におけるYが、ビシクロ環またはトリシクロ環である<1>〜<6>のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物。
【0016】
<8> さらに、(D)下記一般式(2)で表されるスルホニウム塩を含有する<1>〜<7>のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物。
【0017】
【化2】

【0018】
〔一般式(2)中、Qは、陰イオンを表す。〕
【0019】
<9> インクジェット記録用である<1>〜<8>のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物。
<10> 被記録媒体上に、<9>に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物をインクジェット記録装置により吐出する工程、及び、吐出された活性エネルギー線硬化型インク組成物に活性放射エネルギー線を照射して、該活性エネルギー線硬化型インク組成物を硬化する工程を含むインクジェット記録方法。
【0020】
<11> 前記活性放射エネルギー線は、発光ダイオードにより照射され、発光ピーク波長が350nm〜420nmの範囲にあり、且つ、前記被記録媒体表面での最高照度が10mW/cm〜2,000mW/cmとなる紫外線である<10>に記載のインクジェット記録方法。
<12> <10>または<11>に記載のインクジェット記録方法によって記録された印刷物。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、高湿条件下でもインクの微小液滴の硬化性が良好で、且つ硬化した膜は被記録媒体への密着性、柔軟性に優れ、硬化した膜を設けた被記録媒体のしわ及びカールを抑制することができる活性エネルギー線硬化型インク組成物を提供することができる。
また、本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物を用いたインクジェト記録方法、及び該インクジェット記録方法によって記録された印刷物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<活性エネルギー線硬化型インク組成物>
本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物(以下、適宜「インク組成物」と称する。)は、(A)下記一般式(1)で表される多官能オリゴマー(以下、適宜「特定オリゴマー」と称する。)、(B)(A)多官能オリゴマーとは異なる構造のオキセタン化合物(以下、適宜単に「オキセタン化合物」と称する。)、および、(C)(A)多官能オリゴマーとは異なる構造のエポキシ化合物(以下、適宜単に「エポキシ化合物」と称する。)を含む重合性化合物を含有し、該重合性化合物のインク組成物における含有量に対して、オキセタニル基を有する化合物の総含有量が1質量%以上50質量%未満であり、エポキシ基を有する化合物の総含有量が、50質量%を越え99質量%以下であることを特徴とする。
【0023】
なお、本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物における重合性化合物は、(A)特定オリゴマー、(B)オキセタン化合物、および(C)エポキシ化合物以外に必要によって、インク組成物に含まれるビニルエーテル化合物、およびその他の構造を有するカチオン性重合性化合物である。上記した「重合性化合物」とは、インク組成物に含まれる(A)特定オリゴマー、(B)オキセタン化合物、(C)エポキシ化合物、およびその他の構造を有するカチオン重合性化合物の全体を示す。
【0024】
なお、前記(A)特定オリゴマーおよびその他の構造を有するカチオン重合性化合物のうち、エポキシ基およびオキセタニル基の両方を有する化合物は、オキセタニル基を有する化合物として、インク組成物中におけるオキセタニル基を有する化合物およびエポキシ基を有する化合物の含有量を計算する。(A)特定オリゴマーおよびその他の構造を有するカチオン重合性化合物がオキセタニル基を有さずエポキシ基のみを有する場合には、エポキシ基を有する化合物として、エポキシ基を有する化合物およびオキセタニル基を有する化合物の含有量を計算する。
即ち、本発明のインク組成物において、オキセタニル基を有する化合物とは、(A)特定オリゴマーがオキセタニル基を含有する場合には特定オリゴマーと、(B)オキセタン化合物と、その他の構造のカチオン重合性化合物でオキセタニル基を含有する重合性化合物とをいう。
また、エポキシ基を有する化合物とは、(A)特定オリゴマーがオキセタニル基を含有しない場合には特定オリゴマーと、(C)エポキシ化合物と、およびその他の構造のカチオン重合性化合物でエポキシ基を含有する重合性化合物とをいう。
【0025】
【化3】

【0026】
〔一般式(1)中、Xは芳香族骨格を表し、Yは芳香族骨格または脂肪族骨格を表す。A及びBは、各々独立に、エポキシ基、オキセタニル基のいずれかを表す。jは1〜3の整数を表し、kは0〜3の整数を表す。n1、n2、及びm1は、それぞれ独立に0又は1を表す。qは1〜50の整数を表す。〕
【0027】
本発明のインク組成物は、(A)特定オリゴマー、(B)オキセタン化合物、及び(C)エポキシ化合物以外の重合性化合物を含有していてもよい。また、硬化促進のため、例えば、活性エネルギー線の照射により酸を発生する光酸発生剤等をさらに含有していてもよい。
【0028】
本発明のインク組成物においては、エポキシ基を有する化合物の総含有量が、オキセタニル基を有する化合物の総含有量よりも大きいことを必須要件とする。具体的には、オキセタニル基を有する化合物の含有量が、全重合性化合物の含有量の総和に対して1質量%以上50質量%未満であり、エポキシ基を有する化合物の含有量が、全重合性化合物の含有量の総和に対して50質量%を越え、99質量%以下である。
【0029】
従来、オキセタニル基を有する化合物とエポキシ基を有する化合物とを併用して、活性エネルギー線硬化型インク組成物を得る場合は、エポキシ基を有する化合物の総含有量よりも、オキセタニル基を有する化合物の総含有量を多くインク組成物中に含有する必要があった。これは、オキセタニル基を有する化合物の総含有量よりもエポキシ基を有する化合物の総含有量を多くした場合、オキセタニル基を有する化合物とエポキシ基を有する化合物との重合により得られる重合体の分子量は大きくなりにくいためと考えられ、膜硬化性が低下することがあったためである。
【0030】
しかし、エポキシ基を有する化合物/オキセタニル基を有する化合物=50/50〜99/1(質量基準)の場合には、開環反応性の高いエポキシ基を有する化合物の量が多いので、重合の初期反応性自体は高く、特に、高湿下においても高い反応性を発揮することが判った。
これは、エポキシ基を有する化合物/オキセタニル基を有する化合物=10/90〜50/50(質量基準)の組成、あるいは、環状エーテル(エポキシ、オキセタン)とビニルエーテルの組み合わせ、ビニルエーテル単独では発現しない特性であることを見出した。その原因は、エポキシ基を有する化合物/オキセタニル基を有する化合物=10/90〜50/50(質量基準)ではエポキシ基を有する化合物の量が少ないこと、及び、ビニルエーテルを含む場合には、高湿下においてビニルエーテルが感度低下要因となることによるものと推測される。
【0031】
特許文献4には、エポキシ基を有する化合物、およびオキセタニル基を有する化合物からなる硬化性組成物で、エポキシ基を有する化合物/オキセタニル基を有する化合物=50/50〜90/10(質量基準)とする例が報告されている。この場合、確かにある程度の反応性を有するものの、低露光量で微小液滴を硬化させる場合において、高湿環境における感度レベルは十分でなく、さらに基材密着性が不十分である場合があった。
また、特許文献5には、硬化性等を向上させる素材として、特定構造を有するカチオン重合性オリゴマーを用いる例が報告されているが、併用を推奨されている重合性化合物はビニルエーテル化合物、およびエポキシ化合物であり、これらを用いても、高湿環境下における微小液滴の硬化性は充分でなかった。
【0032】
本発明においては、エポキシ基を有する化合物/オキセタニル基を有する化合物=50/50〜99/1(質量基準)という組成と特定構造の多官能オリゴマーとを組み合わせることにより、高湿環境下においても、高い初期反応性を発揮しつつ、特定構造を有する多官能オリゴマーによって生成したポリマーの分子量、およびガラス転移温度を向上させることができた。即ち本発明のインク組成物は、水による重合阻害で硬化が困難となる高湿環境下において、微小液滴でも、非常に高い硬化性を発現することを、見出したものである。
【0033】
なお、本発明において「高湿環境」とは、相対湿度(RH)で60%以上のことであり、本発明のインク組成物は60%RH以上でも十分な硬化性を有することを特徴とする。
また、本発明のインク組成物は活性エネルギー線の照射(露光)により重合するが、露光直後から短時間に硬化することを特徴とする。露光後から硬化の終了までの時間が長いと、滲み、かすれ等が生じて好ましくない。硬化が十分でないと、形成されたインク画像の表面が未硬化の低分子量成分に起因するベトツキなどを生じ、その後、経時で硬化が進行し、表面に硬化膜が形成されることにより、表面のベトツキが抑制されることになる。本発明では「硬化性が良好である」とは、露光によるインク組成物の硬化が速やかに進行し、表面のベトツキがないインク硬化画像が短時間で形成されることをいう。
【0034】
以下、本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物を構成する(A)特定オリゴマー、(B)オキセタン化合物、(C)エポキシ化合物、および必要に応じて含有し得る任意成分について説明する。
【0035】
〔(A)一般式(1)で表される多官能オリゴマー=特定オリゴマー〕
本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、下記一般式(A)で表される特定オリゴマーを含有する。
【0036】
【化4】

【0037】
〔一般式(1)中、Xは芳香族骨格を表し、Yは芳香族骨格または脂肪族骨格を表す。A及びBは、各々独立に、エポキシ基、オキセタニル基のいずれかを表す。jは1〜3の整数を表し、kは0〜2の整数を表す。n1、n2、及びm1は、それぞれ独立に0又は1を表す。qは1〜50の整数を表す。〕
【0038】
Xが表す芳香族骨格としては、ベンゼン骨格、あるいはナフタレン骨格が挙げられる。これらは無置換のものに限定されず、置換基を有していてもよい。置換基としては、特に制限ないが、例えば、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6の直鎖、分岐又は環状のアルキル基、又は炭素数1〜6のアルコキシ基などが挙げられる。Xが表す芳香族骨格中では、下記の式で表されるベンゼン骨格、あるいはナフタレン骨格が好ましい。
【0039】
【化5】

【0040】
Yとしては、ベンゼン骨格、ナフタレン骨格、ビフェニル骨格、脂肪族ビシクロ環骨格、脂肪族トリシクロ環骨格、またはフェニル基を有するメチン基が挙げられる。これらは無置換のものに限定されず、置換基を有していてもよい。置換基としては、特に制限ないが、例えば、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6の直鎖、分岐又は環状のアルキル基、又は炭素数1〜6のアルコキシ基などが挙げられる。これらの中でも、下記の式で表される構造がより好ましい。
【0041】
【化6】

【0042】
【化7】

【0043】
なお、本願における「芳香族骨格」とは直接芳香環に連結する構造を示し、直接芳香環に連結しない構造、例えば、フェニル基を有するメチン基は「脂肪族骨格」とする。また、本願における「脂肪族ビシクロ環骨格」とは、環が鎖式構造となるまで開くのに必要な環原子間結合の切断の数が2回である環のことをいう。また、本願における「脂肪族トリシクロ環骨格」とは、環が鎖式構造となるまで開くのに必要な環原子間結合の切断の数が3回である環のことをいう。
また、jは1または2、kは0または1、qは1〜20の整数であることが好ましい。
【0044】
また、前記一般式(1)におけるA、及びBが、いずれもエポキシ基であるか、いずれもオキセタニル基である特定オリゴマーが、特定オリゴマーの合成の簡便性の観点で好ましい。
さらに、一般式(1)におけるYが、前記の式のビフェニル骨格、ビシクロ環またはトリシクロ環であることが、硬化性向上等の観点で好ましく、前記トリシクロ環はジシクロペンタジエン構造であることがより好ましい。
【0045】
以下に、特定オリゴマーの代表的な具体例を挙げるが、本発明はこれらの具体例に何ら限定されるものではない。なお、下記構造におけるnは2〜20の整数を示す。
【0046】
【化8】

【0047】
【化9】

【0048】
本発明のインク組成物における特定オリゴマーの含有量は、インク組成物に含まれる全重合性化合物の含有量の総和に対して質量換算で、0.01%以上10%以下が好ましく、0.1%以上5%以下がさらに好ましい。インク組成物が、この範囲で特定オリゴマーを含有することにより、硬化性と柔軟性のバランスが良好となる。
【0049】
〔(B)一般式(1)とは異なる構造のオキセタン化合物〕
本発明のインク組成物は、カチオン重合性化合物として、(A)特定オリゴマー、(C)エポキシ化合物と共に、少なくとも1種の(B)一般式(1)とは異なる構造のオキセタン化合物を含有する。
オキセタン化合物は、分子中に環状エーテルである4員環のオキセタニル基を有し、かつ一般式(1)とは異なる構造であれば、特に制限は無く、公知のオキセタン化合物を用いることができる。オキセタン化合物は、単官能であっても多官能であってもよい。
【0050】
オキセタン化合物としては、特開2001−220526号、同2001−310937号、同2003−341217号の各公報に記載される如き、公知のオキセタン化合物を任意に選択して使用できる。
オキセタン化合物は、オキセタン環を1〜4個有する化合物であることが好ましい。このような化合物を使用することで、インク組成物の粘度を、よりハンドリング性の良好な範囲に維持することが容易となり、インク組成物が硬化することにより形成される硬化膜と被記録媒体との高い密着性を得ることができる。
【0051】
オキセタン化合物のうち、分子内に1〜2個のオキセタン環を有するオキセタン化合物としては、下記一般式(A2−1)〜(A2−3)で示される化合物が挙げられる。
【0052】
【化10】



【0053】
一般式(A2−1)〜(A2−3)中、Ra1は、水素原子、炭素数1〜6の直鎖、分岐又は環状のアルキル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基、フリル基、又はチエニル基を表す。一般式(A2−2)および(A2−3)のように、分子内に2つのRa1が存在する場合、それらは同じであっても異なるものであってもよい。
a1として表される直鎖、分岐又は環状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。直鎖、分岐又は環状のアルキル基としては直鎖アルキル基が好ましく、エチル基、プロピル基、ブチル基がより好ましく、エチル基がもっとも好ましい。
フルオロアルキル基としては、例えば、直鎖、分岐又は環状のアルキル基の水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されたものが好ましく挙げられる。
a1として表されるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、トリル基等が挙げられる。
【0054】
一般式(A2−1)中、Ra2は、水素原子、炭素数1〜6個の直鎖、分岐又は環状のアルキル基、炭素数2〜6個のアルケニル基、芳香環を有する基、炭素数2〜6個のアルキルカルボニル基、炭素数2〜6個のアルコキシカルボニル基、又は炭素数2〜6個のN−アルキルカルバモイル基を表す。
a2として表される直鎖、分岐又は環状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
a2として表されるアルケニル基としては、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等が挙げられる。
a2として表される芳香環を有する基としては、フェニル基、ベンジル基、フルオロベンジル基、メトキシベンジル基、フェノキシエチル基等が挙げられる。
a2として表されるアルキルカルボニル基としては、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基等が挙げられる。
a2として表されるアルキコキシカルボニル基としては、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等が、N−アルキルカルバモイル基としては、エチルカルバモイル基、プロピルカルバモイル基、ブチルカルバモイル基、ペンチルカルバモイル基等が挙げられる。
a2は置換基を有していてもよく、置換基としては、1〜6の直鎖、分岐又は環状のアルキル基、フッ素原子が挙げられる。
【0055】
一般式(A2−2)中、Ra3は、鎖状又は分岐状のアルキレン基、鎖状又は分岐状の2価の不飽和炭化水素基、カルボニル基、カルボキシ基を含むアルキレン基、カルバモイル基を含むアルキレン基、又は、以下に示す部分構造(A3−1)〜(A3−3)のいずれかを表す。
【0056】
a3として表されるアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が挙げられ、ポリ(アルキレンオキシ)基としては、ポリ(エチレンオキシ)基、ポリ(プロピレンオキシ)基等が挙げられる。
a3として表される2価の不飽和炭化水素基としては、プロペニレン基、メチルプロペニレン基、ブテニレン基等が挙げられる。
【0057】
【化11】

【0058】
部分構造(A3−1)〜(A3−3)が2価である場合、部分構造(A3−1)中のRa4は、水素原子、炭素数1〜4個の直鎖、又は分岐のアルキル基、炭素数1〜4個のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、低級アルキルカルボキシル基、カルボキシル基、又はカルバモイル基を表す。部分構造(A3−2)中のRa5は、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、>NH、>SO、>SO、−C(CF−、又は、−C(CH−を表す。部分構造(A3−3)中のRa6は、炭素数1〜4個の直鎖、又は分岐のアルキル基、又は、アリール基を表し、nは0〜2,000の整数である。部分構造(A3−3)中のRa7は、炭素数1〜4個の直鎖、又は分岐のアルキル基、アリール基、又は、下記部分構造(A7−1)を有する1価の基を表す。下記部分構造(A7−1)中、Ra8は炭素数1〜4個の直鎖、又は分岐のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基であり、mは0〜100の整数である。
【0059】
【化12】

【0060】
一般式(A2−1)で表される化合物として、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(OXT−101:東亞合成(株)製)、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン〔OXT−212:東亞合成(株)製〕、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン〔OXT−211:東亞合成(株)製〕が挙げられる。式(A2−2)で表される化合物としては、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン〔OXT−121:東亞合成(株)〕が挙げられる。また、式(A2−3)で表される化合物としては、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル〔OXT−221:東亞合成(株)〕が挙げられる。
【0061】
3〜4個のオキセタン環を有する化合物としては、下記一般式(A2−4)で示される化合物が挙げられる。
【0062】
【化13】

【0063】
一般式(A2−4)において、Ra1は、前記一般式(A2−1)におけるRa1と同義である。また、Ra9は、多価連結基を示し、例えば、下記(i)〜(v)で示される基等の炭素数1〜12の分枝状アルキレン基、下記(iv)で示される基等の分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基、又は下記(v)で示される基等の分枝状ポリシロキシ基等が挙げられる。sは、3又は4である。
【0064】
【化14】

【0065】
上記(i)において、Ra10はメチル基、エチル基又はプロピル基を表す。また、上記(iv)において、pは1〜10の整数である。
【0066】
また、本発明に好適に使用しうるオキセタン化合物の別の態様として、側鎖にオキセタン環を有する下記一般式(A2−5)で示される化合物が挙げられる。
【0067】
【化15】

【0068】
一般式(A2−5)において、Ra1及びRa8は一般式(A2−1)におけるRa1及び部分構造(A7−1)におけるRa8と同義である。Ra11はメチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基等の炭素数1〜4の直鎖、分岐又は環状のアルキル基又はトリアルキルシリル基であり、rは1〜4の整数である。
【0069】
このようなオキセタン環を有する化合物については、特開2003−341217号公報、段落番号[0021]〜[0084]に詳細に記載され、ここに記載の化合物は本発明にも好適に使用しうる。
特開2004−91556号公報に記載されたオキセタン化合物も本発明に併用することができる。当該化合物は、同公報の段落番号[0022]〜[0058]に詳細に記載されている。
【0070】
オキセタン化合物の含有量を制御することで、本発明のインク組成物の感度及び膜物性を更に向上させることができる。具体的には、本発明のインク組成物におけるオキセタニル基を有する化合物の含有量は、重合性化合物の含有量に対し、1質量%以上50質量%未満であることが必要であり、10質量%以上45質量%以下であることが好ましく、20質量%以上45質量%以下であることがより好ましい。
この範囲にあることで高湿下での硬化性が良好となる。
ここで「重合性化合物の含有量」とは、(A)特定オリゴマー、(B)オキセタン化合物、および(C)エポキシ化合物の合計に、後述するビニルエーテル等のその他の構造のカチオン重合性化合物等のインク組成物に含まれる重合性化合物の含有量の合計のことを言う。
【0071】
また、上記で説明したオキセタン化合物においては、本発明のインク組成物中、単官能のオキセタン化合物の含有量は、特定オリゴマーを除くオキセタニル基を有する化合物の総含有量に対して、50質量%未満であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。オキセタン化合物の含有量がこの範囲にあることで硬化性が良好となる。
また、インクの粘度、吐出安定性、膜物性の観点から、特定多官能オリゴマーを除くオキセタン化合物は、重量平均分子量(Mw)が100以上350以下であることが好ましく、150以上250以下であることがより好ましい。
また、上記で説明したオキセタン化合物の中でも、下記2種のオキセタンが、硬化性の観点で特に好ましい。
【0072】
【化16】

【0073】
〔(C)一般式(1)とは異なる構造のエポキシ化合物〕
本発明のインク組成物は、カチオン重合性化合物として、(A)特定オリゴマー、(B)オキセタン化合物と共に、少なくとも1種の(C)一般式(1)とは異なる構造のエポキシ化合物を含有する。
エポキシ化合物は、エポキシ環を1つ有する単官能のエポキシ化合物であっても、エポキシ環を2つ以上有する多官能のエポキシ化合物であってもよく、単官能のエポキシ化合物と多官能のエポキシ化合物とを併用してもよい。
【0074】
エポキシ化合物としては、例えば、脂環式エポキシド、及び、脂肪族エポキシドなどのエポキシ化合物が挙げられる。
【0075】
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロへキセン又はシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましく挙げられる。
脂肪族エポキシドとしては、脂肪族多価アルコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ−又はポリ−グリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル又は1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリン或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ−又はトリ−グリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテルに代表されるポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0076】
次に、本発明に好適な単官能及び多官能のエポキシ化合物を詳しく例示する。
単官能エポキシ化合物の例としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイド等が挙げられる。
【0077】
また、多官能エポキシ化合物の例としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,1,3−テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン等が挙げられる。
【0078】
これらのエポキシ化合物のなかでも、多官能の脂環式エポキシドが、硬化速度に優れるという観点から好ましく、具体的には、シクロへキセンオキシド部位を有する下記化合物が好ましい。
【0079】
【化17】

【0080】
その中でも、エポキシ環がさらにメチル基で置換された部分構造を持つことが好ましいため、下記化合物が特に好ましい。
【0081】
【化18】

【0082】
また、インクの粘度、吐出安定性、膜物性の観点から、特定多官能オリゴマーを除くエポキシ化合物は、重量平均分子量(Mw)が100以上300以下であることが好ましく、120以上250以下であることがより好ましい。
エポキシ化合物の含有量を制御することで、本発明のインク組成物の感度及び膜物性を更に向上させることができる。具体的には、本発明のインク組成物における(C)エポキシ化合物の含有量は、全重合性化合物の合計量に対し、50質量%を越え99質量%以下であることが必要であり、55質量%以上90質量%以下であることが好ましく、55質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。
また、インク組成物に含まれる全重合性化合物に対して、(B)オキセタン化合物の含有量が20質量%以上45質量%以下であり、且つ、(C)エポキシ化合物の含有量が、55質量%以上80質量%以下であることが最も好ましい。
【0083】
また、上記で説明したエポキシ化合物においては、本発明のインク組成物中、単官能のエポキシ化合物の含有量は、特定オリゴマーを除く全エポキシ化合物の総含有量に対して、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることが、硬化性の観点から、より好ましい。
【0084】
本発明のインク組成物は、必須成分である(A)特定オリゴマー、(B)オキセタン化合物、および(C)エポキシ化合物のほか、必要に応じてその他の構造のカチオン重合性化合物を含有してもよい。
(ビニルエーテル化合物)
本発明においては、その他の構造のカチオン重合性化合物として、ビニルエーテル化合物を用いることができる。
ビニルエーテル化合物としては、単官能ビニルエーテル化合物、ジ−又はトリ−ビニルエーテル化合物のごとき多官能ビニルエーテル化合物が挙げられる。
単官能ビニルエーテル化合物と多官能ビニルエーテル化合物は、特開2008−257892号公報の段落番号[0121]及び[0122]に記載される化合物を好適に用いることができる。
【0085】
ビニルエーテル化合物としては、ジ−又はトリ−ビニルエーテル化合物が、硬化性、被記録媒体との密着性、形成された画像の表面硬度などの観点から好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。
【0086】
本発明のインク組成物中のビニルエーテル化合物の含有量は、インク組成物の全固形分に対して、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
【0087】
(その他のカチオン重合性化合物)
さらに、その他の構造のカチオン重合性化合物としては、放射線の照射により酸を発生する化合物から発生する酸により重合反応を開始し、硬化する化合物であれば特に制限はなく、光カチオン重合性化合物として知られる各種公知のカチオン重合性のモノマーを使用することができる。他のカチオン重合性化合物としては、例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892号、同2001−40068号、同2001−55507号、同2001−310938号、同2001−310937号、同2001−220526号などの各公報に記載されているカチオン重合性化合物のうち、特定オリゴマー、オキセタン化合物、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物の範疇に包含されないカチオン重合性化合物が挙げられる。
【0088】
〔放射線の照射により酸を発生する化合物〕
本発明のインク組成物は、放射線の照射により酸を発生する化合物(以下、「光酸発生剤」とも称する。)を含有することが好ましい。本発明においては、放射線の照射により発生した酸によって、特定オリゴマー、オキセタン化合物、エポキシ化合物等の重合性化合物の重合反応が促進し、より迅速に硬化し易い。
この光酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、或いはマイクロレジスト等に使用されている光(400〜200nmの紫外線、遠紫外線、特に好ましくは、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー光)、ArFエキシマレーザー光、電子線、X線、分子線又はイオンビームなどの照射により酸を発生する化合物を、適宜選択して使用することができる。
【0089】
このような光酸発生剤としては、放射線の照射により分解して酸を発生するジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩などのオニウム塩化合物、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o−ニトロベンジルスルホネート等のスルホネート化合物などを挙げることができる。本発明のインク組成物に用いることのできる光酸発生剤の種類、具体的化合物、および好ましい例としては、特開2008−13646号公報の段落〔0066〕〜〔0122〕に記載の化合物を挙げることができる。
【0090】
本発明のインク組成物に用いることのできる光酸発生剤の特に好ましい例として、下記一般式(2)で表されるスルホニウム塩が挙げられる。本発明のインク組成物と、一般式(2)で表されるスルホニウム塩とを併用することで、より高い硬化性が得られる。
【0091】
【化19】

【0092】
一般式(2)中、Qは、陰イオンを表す。
【0093】
で表される陰イオン(アニオン)としては下記の化合物が挙げられる。スルホン酸アニオン(例えば、アルキルスルホン酸アニオン、アリールスルホン酸アニオン)、ベンゾイルギ酸アニオン、PF、SbF、BF、ClO、カルボン酸アニオン(例えば、アルキルカルボン酸アニオン、アリールカルボン酸アニオン、アラルキルカルボン酸アニオン)、スルフィン酸アニオン、硫酸アニオン、ボレートアニオン、スルホニルイミドアニオン、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチルアニオン等、ハロゲンアニオン、ポリマー型スルホン酸アニオン、ポリマー型カルボン酸アニオン、テトラアリールボレートアニオンが挙げられる。
【0094】
これらの中でも、非求核性アニオンであることが好ましい。非求核性アニオンとは、求核反応を発現する能力が著しく低いアニオンであり、分子内求核反応による経時分解を抑制することができるアニオンである。
非求核性アニオンとしては、例えば、PF、SbF、BF、スルホニルイミドアニオン、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチルアニオン、テトラアリールボレートアニオンが好ましい態様として挙げられる。
【0095】
光酸発生剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明のインク組成物中の光酸発生剤の含有量は、インク組成物の全固形分に対して、0.1質量%以上20質量%以下が好ましく、0.5質量%以上10質量%以下がより好ましく、1質量%以上7質量%以下が更に好ましい。
【0096】
〔着色剤〕
本発明のインク組成物は、着色画像を得るために、着色剤を含有することが好ましい。
本発明に用いることのできる着色剤としては、特に制限はないが、耐候性に優れ、色再現性に富んだ顔料及び油溶性染料が好ましく、溶解性染料等の任意の公知の着色剤から選択して使用することができる。本発明のインク組成物に好適に使用し得る着色剤は、硬化反応である重合反応において重合禁止剤として機能しないことが好ましい。これは、活性エネルギー線による硬化反応の感度を低下させないためである。
また、本発明の着色剤としては顔料の方がより好ましい。
【0097】
(顔料)
顔料としては、特に限定されるものではなく、一般に市販されているすべての有機顔料及び無機顔料、又は顔料を、分散媒として不溶性の樹脂等に分散させたもの、或いは顔料表面に樹脂をグラフト化したもの等を用いることができる。また、樹脂粒子を染料で染色したもの等も用いることができる。
これらの顔料としては、例えば、伊藤征司郎編「顔料の辞典」(2000年刊)、W.Herbst,K.Hunger「Industrial Organic Pigments」、特開2002−12607号公報、特開2002−188025号公報、特開2003−26978号公報、特開2003−342503号公報に記載の顔料が挙げられる。
【0098】
本発明のインク組成物において使用できる有機顔料及び無機顔料の具体例としては、特開2008−13646号公報の段落〔0126〕〜〔0131〕に記載の化合物を挙げることができる。
【0099】
顔料の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、ジェットミル、ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ニーダー、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル等の分散装置を用いることができる。
顔料の分散を行う際に分散剤を添加することも可能である。分散剤としては、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリアクリレート、脂肪族多価カルボン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、顔料誘導体等を挙げることができる。また、Zeneca 社のSolsperse シリーズなどの市販の高分子分散剤を用いることも好ましい。
また、分散助剤として、各種顔料に応じたシナジストを用いることも可能である。これらの分散剤及び分散助剤は、顔料100質量部に対し、1〜50質量部添加することが好ましい。
【0100】
インク組成物において、顔料などの諸成分の分散媒としては、溶剤を添加してもよく、また、無溶媒で、低分子量成分であるカチオン重合性化合物を分散媒として用いてもよいが、本発明が適用されるインク組成物は、放射線硬化型のインクであり、インクを被記録媒体上に適用後、硬化させるため、無溶剤であることが好ましい。これは、硬化されたインク画像中に、溶剤が残留すると、耐溶剤性が劣化したり、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound)の問題が生じるためである。このような観点から、分散媒としては、カチオン重合性化合物を用い、中でも、最も粘度が低いカチオン重合性化合物を選択することが分散適性やインク組成物のハンドリング性向上の観点から好ましい。
【0101】
顔料の平均粒径は、0.02μm〜0.4μmにするのが好ましく、0.02μm〜0.1μmとするのが更に好ましく、より好ましくは、0.02μm〜0.07μmの範囲である。
顔料粒子の平均粒径を上記の好ましい範囲となるよう、顔料、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を設定する。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性及び硬化感度を維持することができる。
【0102】
(染料)
本発明のインク組成物に着色剤として用いることのできる染料は、油溶性のものが好ましい。具体的には、25℃での水への溶解度(水100gに溶解する色素の質量)が1g以下であるものを意味し、好ましくは0.5g以下、より好ましくは0.1g以下である。従って、所謂、水に不溶性の油溶性染料が好ましく用いられる。
【0103】
本発明のインク組成物に用いることのできる染料は、インク組成物に必要量溶解させるために上記記載の染料母核に対して油溶化基を導入することも好ましい。
油溶化基としては、長鎖、分岐アルキル基、長鎖、分岐アルコキシ基、長鎖、分岐アルキルチオ基、長鎖、分岐アルキルスルホニル基、長鎖、分岐アシルオキシ基、長鎖、分岐アルコキシカルボニル基、長鎖、分岐アシル基、長鎖、分岐アシルアミノ基長鎖、分岐アルキルスルホニルアミノ基、長鎖、分岐アルキルアミノスルホニル基及びこれら長鎖、分岐置換基を含むアリール基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールカルボニルオキシ基、アリールアミノカルボニル基、アリールアミノスルホニル基、アリールスルホニルアミノ基等が挙げられる。
また、カルボン酸、スルホン酸を有する水溶性染料に対して、長鎖、分岐アルコール、アミン、フェノール、アニリン誘導体を用いて油溶化基であるアルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルアミノスルホニル基、アリールアミノスルホニル基に変換することにより染料を得てもよい。
【0104】
前記油溶性染料としては、融点が200℃以下のものが好ましく、融点が150℃以下であるものがより好ましく、融点が100℃以下であるものが更に好ましい。融点が低い油溶性染料を用いることにより、インク組成物中での色素の結晶析出が抑制され、インク組成物の保存安定性が良くなる。
また、退色、特にオゾンなどの酸化性物質に対する耐性や硬化特性を向上させるために、酸化電位が貴である(高い)ことが望ましい。このため、本発明で用いる油溶性染料として、酸化電位が1.0V(vs SCE)以上であるものが好ましく用いられる。酸化電位は高いほうが好ましく、酸化電位が1.1V(vs SCE)以上のものがより好ましく、1.15V(vs SCE)以上のものが特に好ましい。
【0105】
イエロー色の染料としては、特開2004−250483号公報の記載の一般式(Y−I)で表される構造の化合物が好ましい。
特に好ましい染料は、特開2004−250483号公報の段落番号[0034]に記載されている一般式(Y−II)〜(Y−IV)で表される染料であり、具体例として特開2004−250483号公報の段落番号[0060]から[0071]に記載の化合物が挙げられる。尚、該公報記載の一般式(Y−I)の油溶性染料はイエローのみでなく、ブラックインク、レッドインクなどのいかなる色のインク組成物に用いてもよい。
【0106】
マゼンタ色の染料としては、特開2002−114930号公報に記載の一般式(A2−1)、(4)で表される構造の化合物が好ましく、具体例としては、特開2002−114930号公報の段落[0054]〜[0073]に記載の化合物が挙げられる。
特に好ましい染料は、特開2002−121414号公報の段落番号[0084]から[0122]に記載されている一般式(M−1)〜(M−2)で表されるアゾ染料であり、具体例として特開2002−121414号公報の段落番号[0123]から[0132]に記載の化合物が挙げられる。尚、該公報記載の一般式(3)、(4)、(M−1)〜(M−2)の油溶性染料はマゼンタのみでなく、ブラックインク、レッドインクなどのいかなる色のインク組成物に用いてもよい。
【0107】
シアン色の染料としては、特開2001−181547号公報に記載の式(I)〜(IV)で表される染料、特開2002−121414号公報の段落番号[0063]から[0078]に記載されている一般式(IV−1)〜(IV−4)で表される染料が好ましいものとして挙げられ、具体例として特開2001−181547号公報の段落番号[0052]から[0066]、特開2002−121414号公報の段落番号[0079]から[0081]に記載の化合物が挙げられる。
特に好ましい染料は、特開2002−121414号公報の段落番号[0133]から[0196]に記載されている一般式(C−I)、(C−II)で表されるフタロシアニン染料であり、更に一般式(C−II)で表されるフタロシアニン染料が好ましい。この具体例としては、特開2002−121414号公報の段落番号[0198]から[0201]に記載の化合物が挙げられる。尚、前記式(I)〜(IV)、(IV−1)〜(IV−4)、(C−I)、(C−II)の油溶性染料はシアンのみでなく、ブラックインクやグリーンインクなどのいかなる色のインク組成物に用いてもよい。
【0108】
これらの着色剤は、インク組成物中、固形分換算で、1質量%以上20質量%以下添加されることが好ましく、2質量%以上10質量%以下がより好ましい。
【0109】
以下に、本発明のインク組成物に、必要に応じて用いることのできる種々の添加剤について述べる。
【0110】
〔紫外線吸収剤〕
本発明のインク組成物には、得られる画像(硬化物)の耐候性向上、退色防止の観点から、紫外線吸収剤を用いることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo .24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤等が挙げられる。
本発明のインク組成物中の紫外線吸収剤の含有量は、目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、インク組成物の全固形分に対し、0.5質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
【0111】
〔増感剤〕
本発明のインク組成物には、光酸発生剤の酸発生効率の向上、感光波長の長波長化の目的で、必要に応じ、増感剤を添加してもよい。
増感剤としては、光酸発生剤に対し、電子移動機構又はエネルギー移動機構で増感させるものであれば、何れでもよい。好ましくは、アントラセン、9,10−ジアルコキシアントラセン、ピレン、ペリレンなどの芳香族多縮環化合物、アセトフェノン、ベンゾフェノン、チオキサントン、ミヒラーケトンなどの芳香族ケトン化合物、フェノチアジン、N−アリールオキサゾリジノンなどのヘテロ環化合物が挙げられる。
本発明のインク組成物中の増感剤の含有量は、目的に応じて適宜選択されるが、光酸発生剤に対し0.1モル%以上5モル%以下で用いることが好ましく、0.3モル%以上1.5モル%以下がより好ましい。
【0112】
〔酸化防止剤〕
本発明のインク組成物には、組成物の安定性向上のために、酸化防止剤を添加することができる。
酸化防止剤としては、欧州特許出願公開第223739号、同第309401号、同第309402号、同第310551号、同第310552号、同第459416号の各明細書、独国特許発明第3435443号明細書、特開昭54−48535号公報、同62−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、米国特許第4814262号明細書、米国特許第4980275号明細書等に記載のものを挙げることができる。
本発明のインク組成物中の酸化防止剤の含有量は、目的に応じて適宜選択されるが、インク組成物の全固形分に対し0.1質量%以上8質量%以下であることが好ましい。
【0113】
〔褪色防止剤〕
本発明のインク組成物には、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。
有機系の褪色防止剤としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類、などが挙げられる。
金属錯体系の褪色防止剤としては、ニッケル錯体、亜鉛錯体、などが挙げられ、具体的には、リサーチディスクロージャーNo.17643の第VIIのI〜J項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許に記載された化合物や、特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁に記載された代表的化合物の一般式及び化合物例に含まれる化合物を使用することができる。
本発明のインク組成物中の褪色防止剤の含有量は、目的に応じて適宜選択されるが、インク組成物の全固形分に対し、0.1質量%以上8質量%以下であることが好ましい。
【0114】
〔導電性塩類〕
本発明のインク組成物には、吐出物性の制御を目的として、チオシアン酸カリウム、硝酸リチウム、チオシアン酸アンモニウム、ジメチルアミン塩酸塩などの導電性塩類を添加することができる。
【0115】
〔溶剤〕
本発明のインク組成物には、有機溶剤や水を添加することも有効である。
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、などが挙げられる。
この場合、有機溶剤や水の添加量は、極微量から、インク総量の50質量%程度まで添加することができる。
【0116】
〔高分子化合物〕
本発明のインク組成物には、硬化して形成される皮膜の物性を調整するため、各種高分子化合物を添加することができる。
高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、アクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合体が好ましい。更に、高分子化合物の共重合組成として、「カルボキシル基含有モノマー」、「メタクリル酸アルキルエステル」、又は「アクリル酸アルキルエステル」を構造単位として含む共重合体も好ましく用いられる。
【0117】
〔界面活性剤〕
本発明のインク組成物には、界面活性剤を添加することができる。
界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。なお、前記界面活性剤の代わりに有機フルオロ化合物を用いてもよい。前記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。前記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
【0118】
この他にも、本発明のインク組成物には、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、ポリオレフィンやPET等の被記録媒体への密着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤーなどを含有させることができる。
【0119】
前記タッキファイヤーとしては、具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20の直鎖、分岐又は環状のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環属アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香属アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などが挙げられる。
【0120】
<インク組成物の好ましい物性>
本発明のインク組成物は、インクジェット記録に適用する場合、吐出性を考慮し、吐出時の温度におけるインク粘度が、5mPa・s〜30mPa・sであることが好ましく、7mPa・s〜20mPa・sが更に好ましい。このため、前記範囲になるように適宜組成比を調整し決定することが好ましい。
また、室温(25〜30℃)でのインク組成物の粘度は、7〜120mPa・sが好ましく、10〜80mPa・sが更に好ましい。室温での粘度を高く設定することにより、多孔質な被記録媒体を用いた場合でも、被記録媒体中へのインク浸透を防ぎ、未硬化モノマーの低減、臭気低減が可能となり、更にインク液滴着弾時のドット滲みを抑えることができ、その結果として画質を改善することができる。
【0121】
本発明のインク組成物の表面張力は、20mN/m〜40mN/mであることが好ましく、20mN/m〜30mN/mであることが更に好ましい。また、本発明のインク組成物を、ポリオレフィン、PET、コート紙、非コート紙など様々な被記録媒体へ記録する場合、滲みおよび浸透の観点から、前記表面張力は20mN/m以上が好ましく、濡れ性の点では30mN/m以下であることが好ましい。
【0122】
本発明のインク組成物は、インクジェット記録用のインクとして好適に用いることができる。
インクジェット記録方式には特に制限はなく、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出する電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出する音響型インクジェット方式、インクを加熱して気泡を形成し、発生した圧力を利用するサーマル型インクジェット方式、等のいずれであってもよい。なお、前記インクジェット記録方式には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
前記のうち、ピエゾ素子を用いたドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)のインクジェット記録用インクとして好適である。
【0123】
<インクジェット記録方法及び印刷物>
本発明におけるインクジェット記録方法は、被記録媒体上に、本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物をインクジェット記録装置により吐出する工程(画像記録工程)、及び吐出された活性エネルギー線硬化型インク組成物に活性エネルギー線を照射して、該活性エネルギー線硬化型インク組成物を硬化する工程(画像硬化工程)、を含む。
即ち、本発明におけるインクジェット記録方法は、インクジェット記録によって画像を形成する画像記録工程と画像硬化工程とを含む方法である。
また、本発明における印刷物は、本発明のインクジェット記録方法によって記録された記録物である。
【0124】
前記画像硬化工程においては、画像硬化工程において活性エネルギー線を利用し、画像記録工程で被記録媒体に画像記録した後、記録された画像に活性エネルギー線を照射することによって、画像化に寄与する重合性化合物の重合硬化が進行し、良好に硬化され堅牢性の高い画像を形成することができる。
前記画像硬化工程においては、インク組成物の有する感応波長に対応する波長領域の活性エネルギー線を発する光源を用いて重合硬化を促進する露光処理を行なうことができる。光源、露光時間及び光量は、本発明における重合性化合物の重合硬化の程度に応じて適宜選択すればよい。
【0125】
画像硬化工程において硬化した画像の厚みは、2μm〜30μmであることが好ましい。ここで、「画像の厚み」とは、インク組成物により形成された画像を硬化した硬化物の厚みのことである。該画像の厚みが2μm〜30μmであることで、低濃度から高濃度の画像を表現することができる。
【0126】
前記画像硬化工程においては、インク組成物の有する感応波長に対応する波長領域の活性エネルギー線を発する光源を用いて重合硬化を促進する露光処理を行なうことができる。光源については、後述する。
【0127】
本発明のインク組成物を用いてインクジェット記録された印刷物は、画像部が紫外線などの放射線照射により硬化しており、画像部の強度に優れるため、例えば、平版印刷版のインク受容層(画像部)としても用いることができる。
【0128】
前記画像記録工程においては、インクジェットプリンタなどのインクジェット記録装置によるインクジェット記録方法を適用するのが好ましい。具体的には、前記画像記録工程は、本発明のインク組成物を吐出するインクジェット記録装置を用いて画像を記録することが好ましい。
【0129】
次に、本発明のインクジェット記録方法の具体的な実施態様について、当該方法に好適に採用され得るインクジェット記録装置の詳細を含めて、以下に説明する。
【0130】
・システム
インクを吐出するインクジェット記録システムとしては、特開2002−11860号公報に示すような形態が一例としてあげられるが、これに限定されるものではなく、他の形態であってもよい。
【0131】
・インク保持手段
インクを保持する手段としては、公知のインクカートリッジに充填することが好ましく、特開平5−16377号公報に開示されるように変形可能な容器に収納し、タンクとなすことも可能である。また特開平5−16382に開示されるように、サブタンクを有するとインクをヘッドへの供給が更に安定する。また特開平8−174860号公報に開示されるように、インク供給室の圧力が低下した場合に、弁の移動によりインクを供給する形態のカートリッジを用いることも可能である。これらのインク保持手段でヘッド内のメニスカスを適切にたもつための負圧付与方法としては、インク保持手段の高さすなわち水頭圧による方法、またインク流路中にもうけたフィルタの毛細管力による方法、また、ポンプ等により圧力を制御する方法、また、特開昭50−74341号公報に開示されるようにインクをインク吸収体に保持し、この毛細管力により負圧を付与する方法等が適切である。
【0132】
・インク供給路
インクをこれらインク保持手段からヘッドに供給する方法として、ヘッドユニットに直接保持手段を連結する方法でもよいし、チューブ等の流路により連結する方法でもよい。これらインク保持手段および流路は、インクに対して良好な濡れ性を持つような素材であること、もしくは表面処理が施されていることが好ましい。
【0133】
・ヘッド
インクを打滴する方法としては、特開平5−104725号公報に開示されるように、連続的にインク滴を吐出させ、画像に応じて滴を偏向して被記録媒体に着弾させるか、させないかを選択制御する方法であってもよいし、所謂オンデマンド方式を呼ばれる、画像として必要な部分にのみインク滴を吐出させる方式であってもよい。オンデマンド方式は、特開平5−16349号公報に開示されるように、圧電素子等を用いて構造体の変形によりインク圧を発生させ、吐出させる方式であってもよいし、特開平1−234255号公報に開示されるように、熱エネルギーによる気化にともなう膨張により発生する圧力で吐出する方式であってもよい。また特開2001−277466号公報に開示されるように、電界により被記録媒体への吐出を制御する方式であってもよい。
【0134】
インクジェット記録方法においては、本発明のインク組成物を用いて被記録媒体に画像記録を行なうが、その際に使用するインク吐出ノズル等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。ノズルは、例えば特開平5−31908号公報に記載されるような形態が適用可能である。なお、このとき複数色のインクを吐出させるため、ノズルは特開2002−316420号公報に記載されるように、複数列に構成されることにより、高速にカラー画像を形成することが可能となり、さらに複数のノズル列を有するヘッドユニットを複数配置することにより更に高速化が可能である。
【0135】
さらにノズルを特開昭63−160849号公報に記載されるように画像の幅と同等以上の幅分配置し、所謂ラインヘッドとなし、これらのノズルからの打滴と同時に被記録媒体を移動させることにより、高速に画像を形成することが可能となる。
またノズルの表面は、特開平5−116327号公報に開示されるような表面処理を施すことにより、ノズル表面へのインク滴の飛沫の付着、およびインク滴の付着を防ぐことが可能となる。
【0136】
このような処理を施しても、なお汚れが付着する場合があり、このため、特開平6−71904号公報に開示されるように、ブレードにより清掃を行うことが好ましい。
また、ノズルから各色のインクが均等に吐出されるとは限らず、特定のインクは長時間吐出されない場合もありうる。このようなときに、メニスカスを安定に保つために、特開平11−157102号公報に開示されるように、画像領域外で適宜インクを吐出させ、ヘッドに新しいインクを補給することにより、インク物性を適性値に維持することが好ましい。
【0137】
また、このような処置を施してもなお気泡がヘッド内に侵入もしくはヘッド内で発生することがある。このような場合は、特開平11−334092号公報に記載されるように、ヘッド外より強制的にインクを吸引することにより、物性の変化したインクを廃棄するとともに、気泡もヘッド外に排出することができる。更に長時間打滴しない場合は特開平11−138830号公報に開示されるように、キャップでノズル表面を覆うことによりノズル表面を保護することができる。これらの措置を講じてもなお吐出しない場合がありうる。
ノズルの一部が吐出しない状態で画像をプリントすると、画像にムラが発生する等の問題が発生する。このようなことを避けるため、特開平2000−343686号公報に開示されるように、吐出しないことを検出して処置をとることが有効である。
【0138】
ヘッドユニットを特開平6−115099号公報に記載されるように機械的に移動させ、これと同期させて被記録媒体を直交方向に間欠的に移動させることにより重畳打滴を行うと、被記録媒体の間欠的な移動の精度不良にともなうムラを見えにくくする効果があり、高画質を実現することが可能となる。このとき、ヘッドの移動速度、被記録媒体の移動量、ノズル数の関係を適宜設定することにより、画質と記録速度の関係を好ましい関係に設定することが可能となる。
【0139】
また、逆にヘッドを固定し、被記録媒体を機械的に所定方向に往復移動するとともに、それと直交方向に間欠移動させることにより、同様の効果を得ることが可能である。
【0140】
・温度制御
インクジェット記録装置には、インク組成物の温度の安定化手段を備えることが好ましく、一定温度にする部位はインクタンク(中間タンクがある場合は中間タンク)からノズル射出面までの配管系、部材の全てが対象となる。
【0141】
インクジェット記録方法においては、上記インク組成物を40〜80℃に加熱して、インク組成物の粘度を30mPa・s以下、好ましくは20mPa・s以下に下げた後、射出することが好ましく、この方法を用いることにより高い吐出安定性を実現することができる。一般に、活性エネルギー線硬化型インク組成物では、概して水性インクより粘度が高いため、印字時の温度変動による粘度変動幅が大きい。このインク組成物の粘度変動は、そのまま液滴サイズ、液滴吐出速度に対して大きな影響を与え、これにより画質劣化を引き起こすため、印字時のインク組成物温度はできるだけ一定に保つことが必要である。このためにはインク温度検出手段と、インク加熱手段、および検出されたインク温度に応じて加熱を制御する制御手段を有することが好ましい。
【0142】
温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク組成物流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断もしくは断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンタ立上げ時間を短縮するため、あるいは熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うとともに、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
あるいは、インク温度に応じてインクを吐出させる手段への印加エネルギーを制御する手段を有することも好適である。
インク組成物の温度の制御幅は設定温度±5℃とすることが好ましく、より好ましくは設定温度±2℃、更に好ましくは設定温度±1℃である。
【0143】
・露光
光源としては、α線、γ線、X線、紫外線、可視光線、赤外光線、電子線などが挙げられる。具体的には、一般的に用いられる水銀灯、メタルハライドランプ等を用いてもよいし、発光ダイオード、半導体レーザ、蛍光灯等を用いることができる。また、熱陰極管、冷陰極管、電子線、X線等、インクの重合反応が進行する光源、電磁波等を用いることができる。
【0144】
活性エネルギー線のピーク波長は、200nm〜600nmであることが好ましく、300nm〜450nmであることがより好ましく、350nm〜420nmであることがさらに好ましい。また、活性エネルギー線の出力は、2,000mJ/cm以下であることが好ましく、より好ましくは、10mJ/cm〜2,000mJ/cmであり、さらに好ましくは、20mJ/cm〜1,000mJ/cmであり、特に好ましくは、50mJ/cm〜800mJ/cmである。
【0145】
活性エネルギー線の照射は、発光ピーク波長が350nm〜420nmであり、かつ、露光面である被記録媒体表面での最高照度が10mW/cm〜1,000mW/cmとなる紫外線を発生する発光ダイオードから照射されることが好ましい。
【0146】
露光に、メタルハライドランプを用いる場合であれば、ランプは10〜1000W/cmのものを使用し、露光面照度が、1mW/cm〜100W/cmの照度であることが好ましい。
【0147】
また、高圧水銀灯、メタルハライドランプ等では放電にともない、オゾンが発生するため、排気手段を有することが好ましい。排気手段は、インク吐出時に発生するインクミストの回収を兼ねるべく配置してあることが好適である。
【0148】
次に活性エネルギー線の好ましい照射条件について述べる。基本的な照射方法は、特開昭60−132767号公報に開示されている。具体的には、ヘッドユニットの両側に光源を設け、シャトル方式でヘッドと光源を走査する。照射は、インク着弾後、一定時間をおいて行われることになる。更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させる。WO99/54415号では、照射方法として、光ファイバーを用いた方法やコリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されている。本発明においては、これらの照射方法を用いることが可能である。
【0149】
硬化させるための活性エネルギー線がインク吐出ノズルに照射されると、ノズル面表面に付着したインクミスト等が固化し、インク吐出の妨げとなる可能性があるため、ノズルへの照射を最小限にとどめるため、遮光等の措置を施すことが好ましい。具体的には、ノズルプレートへの照射を防止する隔壁を設ける、あるいは迷光を低減するべく被記録媒体への入射角を限定するための手段を設ける等が好適である。
【0150】
また、本発明では、着弾から照射までの時間を0.01秒〜0.5秒とすることが望ましく、好ましくは0.01秒〜0.3秒、更に好ましくは0.01秒〜0.15秒後に放射線を照射することにある。このように着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、着弾インクが硬化前に滲むことを防止するこが可能となる。また、多孔質な被記録媒体に対しても光源の届かない深部までインク組成物が浸透する前に露光することができる為、未反応モノマーの残留を抑えられ、その結果として臭気を低減することができる。上記説明したインクジェット記録方法と本発明のインク組成物とを併せて用いることにより、大きな相乗効果をもたらすことになる。このような記録方法を取ることで、表面の濡れ性が異なる様々な被記録媒体に対しても、着弾したインクのドット径を一定に保つことが出来、画質が向上する。
【0151】
・システムパラメータ
画像を形成するうえで、被記録媒体上でのインク着弾径は10μm〜500μmの間にあることが好適であり、このためには吐出時のインク滴の直径は5μm〜250μmであることが好ましく、このときのノズル径は15μm〜100μmであることが好ましい。
画像を形成するためには1インチあたりの画素数が50dpi〜2400dpiであることが好ましく、そのためには、ヘッドのノズル密度は10dpi〜2400dpiであることが好ましい。ここで、ヘッドのノズル密度は低くとも、被記録媒体の搬送方向に対して傾ける、あるいは複数のヘッドユニットを相対的にずらして配置することにより、ノズル間隔の大きいヘッドで高密度の着弾を実現することが可能である。また上記のようにヘッドもしくは被記録媒体の往復移動により、低ノズルピッチでヘッドが移動するごとに被記録媒体を所定量搬送させ、インク滴を異なる位置に着弾させることにより、高密度の画像記録を実現することができる。
【0152】
被記録媒体へのインク打滴量としては、良好な階調を表現するためには0.05g/m〜25g/mの間で任意量に制御できることが好適であり、これを実現するためにヘッドからの吐出インク滴の大きさ、及び/又は数量を制御することが好ましい。
【0153】
ヘッドと被記録媒体の間隔に関しては、広すぎるとヘッドもしくは被記録媒体の移動に伴う空気の流れでインク滴の飛翔が乱れ、着弾位置精度が低下する。逆に間隔が狭いと、被記録媒体の凹凸、搬送機構に起因する振動等によりヘッドと被記録媒体が接触する危険性があり、0.5mm〜2mm程度に維持されることが好ましい。
【0154】
・インクセット
インクは単色であってもよいし、シアン、マゼンタ、イエローのカラーであってもよいし、さらにブラックを加えた4色、あるいはさらに特色と呼ばれるこれら以外の特定色のインクを用いてもよい。色材は、染料であってもよいし、顔料であってもよい。これらのインクの打滴順は、明度の低い順に着弾するように打滴させてもよいし、明度の高い順に着弾させてもよいし、画像記録品質上好適な順に打滴させることが好ましい。
【0155】
明度の高い色から順に重ねていくと、下部のインクまで活性エネルギー線が到達しやすく、硬化感度の阻害、残留モノマーの増加および臭気の発生、密着性の劣化が生じにくい。また、照射は、全色を射出してまとめて露光することが可能だが、1色毎に露光するほうが、硬化促進の観点で好ましい。
記録するべき画像信号は、たとえば特開平6−210905号公報に記載されるように、良好な色再現を得るべく信号処理を施すことが好ましい。
【0156】
また、本発明のインク組成物は、インクジェット記録用途以外に、三次元造形用途などにも利用可能であり、缶印刷用途や食品用途にも利用できる。これらの用途については公知の方法を利用して画像形成することができ、例えば特許第2679586号公報などの記載を参照することができる。
【0157】
・被記録媒体
本発明のインク組成物を用いて記録される被記録媒体としては、インク浸透性の被記録媒体、および、インク非浸透性の被記録媒体をともに使用することができる。インク浸透性の被記録媒体は、普通紙、インクジェット専用紙、コート紙、電子写真共用紙、布、不織布、多孔質膜、高分子吸収体等が挙げられる。これらについては特開2001−1891549号公報などに「被記録材」として記載されている。
【0158】
前記インク非浸透性の被記録媒体としては、アート紙、合成樹脂、ゴム、樹脂コート紙、ガラス、金属、陶器、木材等が挙げられる。加えて各機能を付加する為に、これら材質を複数組み合わせ複合化した被記録媒体を使用することもできる。
【0159】
前記合成樹脂としてはいかなる合成樹脂も用いることができるが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、および、ポリブタジエンテレフタレート等のポリエステル;ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリウレタン、および、ポリプロピレン等のポリオレフィン;並びに、アクリル樹脂、ポリカーボネート、および、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体等や、ジアセテート、トリアセテート、ポリイミド、セロハン、および、セルロイド等が挙げられる。
【0160】
前記合成樹脂を用いた被記録媒体の形状(厚み)は、フィルム状でもよいし、カード状またはブロック状でもよく、特に限定されることなく所望の目的に応じて適宜選定することができる。また、これら合成樹脂は透明であってもよいし、不透明であってもよい。前記合成樹脂の使用形態としては、いわゆる軟包装に用いられるフィルム状で用いることが好ましい態様の一つであり、各種非吸収性のプラスチックおよびそのフィルムを用いることができる。各種プラスチック製のフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、二軸延伸ポリスチレン(OPS)フィルム、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、二軸延伸ナイロン(ONy)フィルム、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、および、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムを挙げることができる。
【0161】
前記樹脂コート紙としては、例えば、透明ポリエステルフィルム、不透明ポリエステルフィルム、不透明ポリオレフィン樹脂フィルム、および、紙の両面をポリオレフィン樹脂でラミネートした紙支持体が挙げられ、前記紙の両面をポリオレフィン樹脂でラミネートした紙支持体が特に好ましい。
【0162】
以上のように、本発明によると硬化性、密着性、柔軟性等の各特性を複合かつ高度に満たすインク組成物が得られ、これを用いた画像記録によると、密着性及び柔軟性に優れた画像を記録した印刷物を得ることができる。
【実施例】
【0163】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、本実施例ではインク組成物の一例としてインクジェット記録用のインクを作製した例を示す。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は質量基準である。
【0164】
<顔料分散物の調製>
インク調製に先立って、以下に示す処方で、顔料を、分散剤とともに重合性化合物に加えて顔料分散物を調製した。
【0165】
・顔料PB−15:4(Irgalite Blue GLVO:チバスペシャリティーケミカルズ社製) 20%
・オキセタン化合物(OXT−221:東亜合成社製、下記に示す。) 72%
・分散剤(Solsperse28000:ルーブリゾール社製) 8%
上述の成分を混合してなる混合液をボールミルに入れて、直径0.6mmのジルコンビーズを使用して、16時間分散して顔料分散物を得た。
【0166】
〔実施例1〕
以下に示す組成となるように、上記で調製した顔料分散物、重合性化合物、光酸発生剤、増感剤、及び界面活性剤を混合し、高速水冷式撹拌機により撹拌し、UVインクジェット用シアンインク組成物を得た。
【0167】
・顔料PB−15:4(Irgalite Blue GLVO:チバスペシャリティーケミカルズ社製) 2%
・分散剤(Solsperse28000:ルーブリゾール社製)0.8%
・光酸発生剤(Irgacure250:チバスペシャリティーケミカルズ社製、下記構造) 6%
・増感剤(9,10−ジブトキシアントラセン) 3%
・界面活性剤(BYK307:BYK Chemie社製) 0.2%
・特定オリゴマー(a−1、下記構造) 3%
・オキセタン化合物(OXT−221:東亜合成社製) 10%
・エポキシ化合物(C3000:ダイセル化学工業社製、下記構造) 87%
【0168】
〔実施例2〜13、比較例1〜5〕
実施例1のUVインクジェット用シアンインク組成物の調製において、特定オリゴマーの種類と量、オキセタン化合物の種類と量、エポキシ化合物の種類と量、および光酸発生剤の種類を表1に記載のように変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2〜13、比較例1〜5のインク組成物を調製した。実施例10では光酸発生剤をIrgacure250の代わりに、一般式(2)で表されるスルホニウム塩であるp−1化合物を用いた。比較例5では特定オリゴマーの代わりに、下記に示す構造の比較化合物(c−1)を用いた。
【0169】
【表1】

【0170】
表1に示す数値は、インク組成物の調製における各成分の配合比(質量%)を示す。また、表1に示される各化合物の詳細を以下に示す。
【0171】
特定オリゴマー(a−1)〜(a−5)の構造、および比較化合物(c−1)の構造は下記に示す通りである。(a−1)〜(a−5)におけるnは、いずれも平均値で5である。(c−1)の重量平均分子量は約10000である。
【0172】
【化20】

【0173】
【化21】

【0174】
オキセタン化合物として用いた「OXT−211」、「OXT−221」は、いずれも東亞合成(株)製であり、下記に構造を示す。
エポキシ化合物として用いた「C3000」は二官能エポキシ化合物であり、「フェニルグリシジルエーテル」は単官能エポキシ化合物であり、それぞれの構造は、下記化学式に示す通りである。
なお、「C3000」はダイセル化学工業(株)製であり、「フェニルグリシジルエーテル」はALDRICH社製である。
【0175】
【化22】

【0176】
【化23】

【0177】
光酸発生剤として用いたIrgacure250、およびp−1は、下記に示す通りである。
【0178】
【化24】


Irgacure250
【0179】
【化25】

【0180】
実施例1〜13、および比較例1〜5の各インク組成物における全重合性化合物中のオキセタニル基を有する化合物の含有量、全重合性化合物中のエポキシ基を有する化合物の含有量、オキセタニル基を有する化合物中の単官能オキセタン化合物の含有量、およびエポキシ基を有する化合物中の単官能エポキシ化合物の含有量を質量%で表2に示した。また、オキセタニル基を有する化合物とエポキシ基を有する化合物との含有量の比を示した。
【0181】
【表2】

【0182】
<印字、露光>
上記で得られた実施例及び比較例の各インク組成物を、ピエゾ方式のインクジェットヘッドを用いて打滴を行った。ヘッドは25.4mmあたり150のノズル密度で、318ノズルを有しており、これを2個ノズル列方向にノズル間隔の1/2ずらして固定することにより、メディア上にはノズル配列方向に25.4mmあたり300滴打滴される。
【0183】
ヘッドおよびインクは、ヘッド内に温水を循環させることにより吐出部分近辺が50±0.5℃となるように制御されている。ヘッドからのインク吐出は、ヘッドに付与されるピエゾ駆動信号により制御され、1滴あたり6〜42plの吐出が可能であって、本実施例ではヘッドの下1mmの位置でメディアが搬送されながらヘッドより打滴される。搬送速度は50〜200mm/sの範囲で設定可能である。またピエゾ駆動周波数は最大4.6kHzまでが可能であって、これらの設定により打滴量を制御することができる。
本評価では、搬送速度90mm/s、駆動周波数1.9kHzとすることにより、24plにインク吐出量を制御し、10g/mの打滴を行い、ベタ印字画像を得た。
【0184】
メディアは打滴された後、露光部に搬送され紫外発光ダイオード(UV−LED)により露光される。本実施例ではUV−LEDは日亜化学製NCCU033(商品名)を用いた。本LEDは1チップから波長365nmの紫外光を出力するものであって、約500mAの電流を通電することにより、チップから約100mWの光が発光される。これを7mm間隔に複数個配列し、メディア表面で0.3W/cmのパワーが得られる。打滴後露光されるまでの時間、および露光時間はメディアの搬送速度およびヘッドとLEDの搬送方向の距離により変更可能である。
【0185】
本実施例では着弾後、約0.5秒後に露光した。メディアとの距離および搬送速度の設定に応じて、被記録媒体上の露光エネルギーを0.01〜15J/cmの間で調整した。本実施例では搬送速度により露光エネルギーを調整した。これら露光パワー、露光エネルギーの測定にはウシオ電機製スペクトロラディオメータURS−40D(商品名)を用い、波長220〜400nmの間を積分した値を用いた。本評価では被記録媒体として厚みPETフィルムまたはポリ塩化ビニル製のシートを使用し、印字及び露光テストは25℃、50%RHの環境で実施し、露光量は500mJ/cmとした。硬化した画像の厚みは19μmであった。
【0186】
<評価>
実施例及び比較例の各インク組成物の硬化膜の柔軟性、及び被記録媒体との密着性、硬化した膜を設けた被記録媒体のしわ、カールの発生に関して、以下の手法で評価した。結果を表3に示す。
【0187】
1.柔軟性
柔軟性の評価は、PVCシートを20cm×20cm角に切り取り、10回折り曲げた後に硬化膜に生じた亀裂の程度を目視で確認し評価した。この折り曲げ試験は、下記の基準により評価した。3点以上を実用上問題の無い状態と評価した。
5:亀裂が生じていない
4:亀裂の数が2本以下で、かつ亀裂の長さが3cm未満
3:亀裂の数が3〜5本で、かつ亀裂の長さが3cm未満
2:亀裂の数が5本以上、又は亀裂の長さが3cm以上
1:折り曲げによって膜全体が割れる
【0188】
2.密着性
下記のように、PVC基板に対する密着性の評価を行った。
すなわち、硬化膜上の2cm×1cm角の範囲にセロテープ(登録商標)を貼りつけて強く圧着し、硬化膜面からセロテープ(登録商標)を垂直に素早く剥離して、その後のPVC基板における硬化膜の状態を目視観察した。この密着性試験は、下記の基準により評価した。3点以上を実用上問題の無い状態と評価した。
5:硬化膜が基材から剥がれていない
4:硬化膜の剥がれが全体の10%未満である
3:硬化膜の剥がれが全体の10%以上30%未満である
2:硬化膜の剥がれが全体の30%以上50%未満である
1:硬化膜の剥がれが全体の50%以上である
【0189】
3.しわ、カール
照射、硬化後に、硬化した膜を設けた被記録媒体(印刷物)にしわやカールが発生していないかを目視観察した。このしわ、カール試験は、下記の基準により評価した。3点以上を実用上問題の無い状態と評価した。
5:しわやカールが全く発生していない
4:しわ、カールが発生している面積が膜全体の30%未満である
3:しわ、カールが発生している面積が膜全体の30%以上50%未満である
2:しわ、カールが発生している面積が膜全体の50%以上70%未満である
1:しわ、カールが発生している面積が膜全体の70%以上である
【0190】
また、下記の条件で、インクの硬化性を評価した。
4.硬化性
25℃、70%RHの環境下、各インク組成物を、上記装置を用いて6pLのドットをPVC製のシート上に重ならないように打滴し、100mJ/cmの露光を行い、インクを硬化させて印刷物を得た。硬化性は印刷物の表面べとつきの有無を触指で判断し、下記の基準により評価した。
5:露光終了直後に触っても画像はタッキネスがない。
4:露光終了直後に触ると画像はタッキネスがあるが、30秒後にはタッキネスがなくなる。
3:露光終了直後に触ると画像はタッキネスがあるが、60秒後にはタッキネスがなくなる。
2:露光終了直後に触ると画像はタッキネスがあるが、90秒後にはタッキネスがなくなる。
1:露光終了直後に触ると画像はタッキネスがあり、90秒後にもタッキネスがなくならない。
【0191】
【表3】

【0192】
表3に記載の結果より、実施例1〜13のインク組成物は、比較例1〜5のインク組成物と比較して、硬化性が高く感度が高いことがわかる。さらに本発明を用いた実施例は、柔軟性が良好で、被記録媒体との密着性が高く、硬化した膜を設けた被記録媒体にしわやカールの発生がないことがわかる。
実施例4と比較例1、5との比較から、本発明の組成において、特定オリゴマーを添加することで硬化性、膜物性が大きく向上することがわかる。また、実施例4と比較例2、3との比較から、特定オリゴマーを使用する場合であっても、本発明の組成においてのみ、高い硬化性と膜物性が達成されることがわかる。
比較例3の結果からわかるとおり、エポキシ基を有する化合物/オキセタニル基を有する化合物=10/90〜50/50(質量基準)の組成物では、エポキシ基を有する化合物/オキセタニル基を有する化合物=50/50〜99/1(質量基準)の組成物のように、高湿下・微小液滴を低露光量で硬化させる場合において初期反応性を十分に確保できていないため、重合反応自体が遅く、特定多官能オリゴマーを添加するだけでは、本発明同様の効果を奏することはない。
さらに、比較例1と実施例4の比較において、特定多官能オリゴマーを添加することで本発明特有の効果である、格別な硬化性の向上が見られるのは、初期反応性が高いものの、生成ポリマーの分子量が低く硬化が不十分な比較例1に対して、剛直性が高い多官能オリゴマーの効果により、本発明特有の作用である生成ポリマーの高分子量化・ガラス転移温度の向上が起こることによると考えられる。
【0193】
実施例1、2と実施例3、4とを比較すると、全重合性化合物の含有量の総和に対して、オキセタニル基を有する化合物の含有量が30〜40質量%、エポキシ基を有する化合物が55〜70質量%の範囲にある実施例3、4の方が、硬化性、硬化膜の柔軟性がより良好であることがわかる。また、実施例4と実施例11との比較より、光酸発生剤として、特定のスルホニウム塩を用いることで、インク組成物の硬化が十分に発揮されることがわかる。
さらに、実施例4と実施例12、および13との比較により、オキセタン化合物及びエポキシ化合物が1官能であるよりも2官能モノマーである方が、硬化性が良好になることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で表される多官能オリゴマー、(B)(A)多官能オリゴマーとは異なる構造のオキセタン化合物、および、(C)(A)多官能オリゴマーとは異なる構造のエポキシ化合物を含む重合性化合物を含有し、該重合性化合物のインク組成物における含有量に対して、オキセタニル基を有する化合物の総含有量が1質量%以上50質量%未満であり、エポキシ基を有する化合物の総含有量が50質量%を越え99質量%以下である活性エネルギー線硬化型インク組成物。但し、前記重合性化合物のうち、エポキシ基およびオキセタニル基の両方を有する化合物は、オキセタニル基を有する化合物として、インク組成物中におけるオキセタニル基を有する化合物およびエポキシ基を有する化合物の含有量を計算する。
【化1】


〔一般式(1)中、Xは芳香族骨格を表し、Yは芳香族骨格または脂肪族骨格を表す。A及びBは、各々独立に、エポキシ基又はオキセタニル基を表す。jは1〜3の整数を表し、kは0〜2の整数を表す。n1、n2、及びm1は、それぞれ独立に0又は1を表す。qは1〜50の整数を表す。〕
【請求項2】
前記インク組成物に含まれる前記重合性化合物の含有量に対して、前記オキセタニル基を有する化合物の総含有量が20質量%以上45質量%以下であり、前記エポキシ基を有する化合物の総含有量が、55質量%以上80質量%以下である請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物。
【請求項3】
前記インク組成物に含まれる前記重合性化合物の含有量に対して、前記(A)一般式(1)で表される多官能オリゴマーの含有量が、0.01質量%以上10質量%以下である請求項1または請求項2に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物。
【請求項4】
前記インク組成物に含まれる前記重合性化合物の含有量に対して、前記(A)一般式(1)で表される多官能オリゴマーの含有量が、0.1質量%以上5質量%以下である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物。
【請求項5】
前記一般式(1)におけるA及びBが、いずれもエポキシ基である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物。
【請求項6】
前記一般式(1)におけるA及びBが、いずれもオキセタニル基である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物。
【請求項7】
前記一般式(1)におけるYが、ビシクロ環またはトリシクロ環である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物。
【請求項8】
さらに、(D)下記一般式(2)で表されるスルホニウム塩を含有する請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物。
【化2】


〔一般式(2)中、Qは、陰イオンを表す。〕
【請求項9】
インクジェット記録用である請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物。
【請求項10】
被記録媒体上に、請求項9に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物をインクジェット記録装置により吐出する工程、及び、吐出された活性エネルギー線硬化型インク組成物に活性放射エネルギー線を照射して、該活性エネルギー線硬化型インク組成物を硬化する工程を含むインクジェット記録方法。
【請求項11】
前記活性放射エネルギー線は、発光ダイオードにより照射され、発光ピーク波長が350nm〜420nmの範囲にあり、且つ、前記被記録媒体表面での最高照度が10mW/cm〜2,000mW/cmとなる紫外線である請求項10に記載のインクジェット記録方法。
【請求項12】
請求項10または請求項11に記載のインクジェット記録方法によって記録された印刷物。

【公開番号】特開2011−208090(P2011−208090A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79523(P2010−79523)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】