説明

活性エネルギー線硬化型オーバープリントニス組成物、印刷シートおよび印刷シート成形物

【課題】基材シート上に活性エネルギー線硬化型であるオーバープリントニス組成物を印刷し、活性エネルギー線を照射させ、硬化させて製造した印刷シートを真空成形加工、圧空成形加工または真空圧空成形加工等により成形加工を行い、成形品を製造する方法において使用される、活性エネルギー線硬化型であるオーバープリントニス組成物および印刷シート、さらには、この印刷シートにより製造される印刷シート成形物の提供。
【解決手段】本発明は、基材シート上に、オーバープリントニス組成物を印刷する方法において、使用されるオーバープリントニス組成物が、モノマーに可溶で平均分子量が30000〜100000の(メタ)アクリル樹脂、反応性ウレタンオリゴマー、単官能モノマーおよび無機フィラーを含有し、さらに、活性エネルギー線硬化型であることを特徴とするオーバープリントニス組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型であるオーバープリントニス組成物、これを用いて
製造される印刷シートおよび印刷シート成形物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、基材シート上に印刷等が施された印刷シート、特に印刷等が施されたプラスチックシート、その中でも熱可塑性樹脂シートを様々に成形加工させることが提案されている(特許文献1〜4)。さらに、印刷表面を保護し、美粧性(光沢性あるいはつや消し)向上のために、有機ビーズの一種であるフィラーを添加することが提案されている(特許文献6、7)。さらには、基材シート上に印刷等を施さないで、表面の保護あるいは美粧性
の向上を目指して、同様な試みが行われている。
【0003】
また、無機−有機ハイブリッド化合物を使用する方法(特許文献8〜10)、さらにコロイダルシリカの併用が提案されている(特許文献11〜13)。さらには、特許文献14には、コロイダルシリカおよびアクリル酸重合体の粒子を併用させる方法が提案されている。
【0004】
印刷シートを成形加工する方法について、特許文献1では、インサートモルディング成
形品および成形品に加飾を行うために用いられる紫外線硬化型着色インキが記載されてい
る。この方法では、印刷が施された印刷シートを加熱して柔軟化させ、真空成形あるいは
圧空成形によって所定のプラスチック樹脂成形品を作製している。これらの工程において
は、印刷されるインキが、基材シートである印刷シートから剥離あるいは亀裂を生じる場合があり、これに耐え得るものでなくてはならない。この特許文献1は、紫外線硬化型着色インキであり、引用されている溶剤を含有している耐熱性インキ(特許文献5)とは異なるが、着色インキであり、顔料を必須とし、印刷方法によっては、厚く印刷されるために、印刷面に剥離あるいは亀裂(クラック)等が生じやすい。
【0005】
また、特許文献2にも、インサートモルディング成形品およびその製造方法の記載があ
る。使用されている紫外線硬化型着色インキは、特許文献1と同様であり、この紫外線硬
化型着色インキの上にバインダー層を設けるようにして性能を向上させてはいるが、この
バインダー層は溶剤を含有させているものであり、この特許文献2で使用される紫外線硬
化型着色インキの印刷方法によっては、特許文献1と同様に、印刷面に剥離あるいは亀裂
(クラック)等が生じる。
【0006】
さらに、特許文献3にも、インサートモルディング成形品および成形品に加飾を行うた
めに用いられる紫外線硬化型着色インキが記載されている。しかしながら、特許文献1お
よび2と基本的に使用される紫外線硬化型着色インキは、同じものであり、この成形加工
においては、同様に、印刷面に剥離あるいは亀裂(クラック)等が生じやすい。
【0007】
また、特許文献4においては、インサートモルディングさせずに印刷が施された印刷シ
ートを真空成形、圧空成形または真空圧空成形して作製される成形品および印刷に使用さ
れる紫外線硬化型着色インキが記載されている。しかしながら、このままでは、印刷方法
によっては、厚く印刷されるために、印刷面に剥離あるいは亀裂(クラック)等が生じや
すい。
【0008】
さらに、特許文献1〜4では、印刷面上を保護するために、本発明のようなオーバープ
リントニスで印刷(塗工)していないために、剥離あるいは亀裂(クラック)等が生じや
すいと考えられる。
【0009】
他方、フィラーとしては、非特許文献1に挙げられているが、本発明の成形加工性に特
徴を有する活性エネルギー線硬化型であるオーバープリントニス組成物については、記述
がない。
【0010】
一方、美粧性(光沢性あるいはつや消し)向上のために、特に、つや消し用のコーティ
ング剤として特許文献6には、熱硬化性組成物が記載されているが、コーティング硬化後
の成形加工性は、充分ではない。
【0011】
さらに、球状ウレタンビーズおよび活性エネルギー線硬化型樹脂を含有する組成物が特
許文献7には、記載されており、球状ウレタンビーズを含有させることにより、フレキシ
ブル性および強靭性は向上させることはできるが、成形加工性は充分ではない。
【0012】
他方、ケイ素を含有している無機−有機ハイブリッドモノマーを使用し、フレキシブル
性および硬さを兼ね備えた強靭性を有するオーバープリントニス組成物も、特許文献8〜
10に記載されているが、未だにコストが高く、特殊な用途に限られる。
【0013】
さらに、コロイダルシリカおよびケイ素を含有している無機−有機ハイブリッドモノマ
ーを併用する方法も、特許文献11〜13で考案され、表面物性的には、ほとんど問題の
ない表面保護硬化皮膜が得られているが、未だにコストが高く、しかも成形加工性につい
ては、問題点が残る。
【0014】
また光ディスク用の印刷インキとして、コロイダルシリカおよびアクリル酸重合体の粒
子を併用させる方法が、特許文献14に記載されているが、成形加工性についての記載は
なく、使用されるアクリル酸重合体もナトリウム分を含んでおり、問題点を抱えている。
【特許文献1】特開2003−145573号公報
【特許文献2】特開2003−145574号公報
【特許文献3】特開2003−326591号公報
【特許文献4】特開2004−314552号公報
【特許文献5】特開平8−3502号公報
【特許文献6】特表2004−516357号公報
【特許文献7】特WO2002/077058号公報
【特許文献8】特開平5−179157号公報
【特許文献9】特開平5−320289号公報
【特許文献10】特開2000−109732号公報
【特許文献11】特開2001−232728号公報
【特許文献12】特開2004−34338号公報
【特許文献13】特開2004−27111号公報
【特許文献14】特開2006−97015号公報
【非特許文献1】「機能性フィラー総覧」2000年11月30日、初版第1刷、編 集 フィラー研究会、発行者 瀬野 武、発行所 テクノネット社
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、活性エネルギー線硬化型であるオーバープリントニス組成物およびこ
れを用いて製造される印刷シートさらにこの印刷シートを成形加工して製造される成形物
を提供することにある。さらに、詳しくは、基材シート上に活性エネルギー線硬化型であるオーバープリントニス組成物を印刷し、活性エネルギー線を照射させ、硬化させて製造した印刷シートを真空成形加工、圧空成形加工または真空圧空成形加工等により成形加工を行い、成形品を製造する方法において使用される、活性エネルギー線硬化型であるオーバープリントニス組成物および印刷シート、さらには、この印刷シートにより製造される印刷シート成形物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は、上記問題を解決し、印刷面に剥離あるいは亀裂(クラック)等が生じさせ
ない、活性エネルギー線硬化型であるオーバープリントニス組成物およびこれを用いて製
造される印刷シートさらにこの印刷シートを成形加工して製造される成形物を見出し、本
発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち本発明は、基材シート上に、オーバープリントニス組成物を印刷する方法において、使用されるオーバープリントニス組成物が、モノマーに可溶で平均分子量が30000〜100000の(メタ)アクリル樹脂、反応性ウレタンオリゴマー、単官能モノマーおよび平均粒径0.1μm〜10μmの無機フィラーを含有し、さらに、活性エネルギー線硬化型であることを特徴とするオーバープリントニス組成物に関するものである。
【0018】
さらに、本発明は、無機フィラーがケイ素化合物粒子であることを特徴とする上記のオーバープリントニス組成物に関するものである。
【0019】
また、本発明は、無機フィラーが二酸化ケイ素粒子であることを特徴とする上記のオーバープリントニス組成物に関するものである。
【0020】
さらに、本発明は、無機フィラーがシリカ粒子およびタルク粒子であることを特徴とする上記のオーバープリントニス組成物に関するものである。
【0021】
また、本発明は、無機フィラーの真球度が0.9以上であることを特徴とする上記のオーバープリントニス組成物に関するものである。
【0022】
さらに、本発明は、モノマーに可溶な(メタ)アクリル樹脂のガラス転移温度が50〜250℃であることを特徴とする上記のオーバープリントニス組成物に関するものである。
【0023】
また、本発明は、反応性ウレタンオリゴマーの硬化皮膜のガラス転移温度が−60℃〜10℃であることを特徴とする上記のオーバープリントニス組成物に関するものである。
【0024】
さらに、本発明は、基材シートが熱可塑性樹脂シートであることを特徴とする上記のオーバープリントニス組成物に関するものである。
【0025】
また、本発明は、上記のオーバープリントニス組成物を印刷し、活性エネルギー線を照射させ、硬化させて製造した印刷シートに関するものである。
【0026】
さらに、本発明は、上記の印刷シートを、成形加工して製造されることを特徴とする印刷シート成形物に関するものである。
【0027】
また、本発明は、上記の成形加工が、真空成形加工、圧空成形加工または真空圧空成形加工により行われて製造されることを特徴とする印刷シート成形物に関するものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明により、印刷面に剥離あるいは亀裂(クラック)等が生じさせず、良好な印刷面
を有する印刷シート、さらにこの印刷シートを成形加工して製造される成形物を提供する
ことが可能となった。さらに、美粧性、特につや消し性を有する印刷シートおよび印刷シ
ート成形物を提供することが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明は、基材シート上に、活性エネルギー線硬化型であるオーバープリントニス組成物を印刷し、活性エネルギー線を照射させ、硬化させて製造した印刷シートを真空成形加工、圧空成形加工または真空圧空成形加工等により成形加工を行い、成形品を製造することである。
【0030】
基材シートとしては、後の成形加工を考慮するとプラスチックシート、その中でも熱可塑性樹脂シートが好ましい。熱可塑性樹脂シートに使用される熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられるが、基材シート上への印刷の容易性および最終の成形品の諸物性を勘案すると、ポリカーボネート樹脂およびポリエステル樹脂が好ましく、さらには、ポリエステル樹脂が好適に使用できる。
【0031】
本発明においては、活性エネルギー線硬化型であるオーバープリントニス組成物を基材シートに印刷あるいは塗工する前に、基材シート上に予め通常のインキによって印刷しておくことも可能である。
【0032】
また、基材シート上への印刷に使用されるインキとしては、溶剤型あるいは活性エネルギー線硬化型等の何れのインキでも使用可能であるが、後工程の成形加工のことを考慮するとインキであるため、顔料を含んでいることから厚く印刷すると、印刷面の剥離あるいは亀裂(クラック)等が発生する可能性が増大する。一般的に公知である印刷方法は何れも使用可能であり、例えば、オフセット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、樹脂凸版印刷、インクジェット印刷等が挙げられるが、印刷層の厚さとしては、10μm以下、より好ましくは、5μm以下、さらに、好ましくは、3μm以下が良い。
【0033】
さらに、基材シート上に予め印刷しておいた印刷面上に、活性エネルギー線硬化型であるオーバープリントニス組成物を印刷し、もしくは塗工し、活性エネルギー線を照射して、オーバープリントニス組成物を硬化させて、印刷シートを作製する。
【0034】
活性エネルギー線硬化型であるオーバープリントニス組成物を印刷し、もしくは塗工す
る方法は、一般的に公知である印刷方法は何れも使用可能であり、例えば、オフセット印
刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、樹脂凸版印刷、インクジェット印刷等が挙げられる
が、上記の印刷面の保護、さらに、剥離あるいは亀裂(クラック)防止等を勘案すると、
スクリーン印刷が好適である。
【0035】
また、予め基材シート上に印刷しておくインキを活性エネルギー線硬化型を選択した場合には、活性エネルギー線硬化型インキを印刷後、活性エネルギー線を照射せずに、その上に本発明である活性エネルギー線硬化型であるオーバープリントニス組成物を印刷もしくは塗工してから活性エネルギー線を照射し、活性エネルギー線硬化型インキおよび活性エネルギー線硬化型であるオーバープリントニス組成物を同時に硬化させる方法も可能である。
【0036】
本発明に使用される活性エネルギー線硬化型であるオーバープリントニス組成物の組成
としては
モノマーに可溶で平均分子量が30000〜100000の(メタ)アクリル樹脂
1〜20重量%
反応性ウレタンオリゴマー 5〜30重量%
単官能モノマー 20〜70重量%
平均粒径10μm以下の無機フィラー 5〜30重量%
その他添加剤 1〜20重量%
などが好ましい組成として挙げられる。
【0037】
本発明に使用されるモノマーに可溶で平均分子量が30000〜100000の(メタ)アクリル樹脂としては、(メタ)アクリレートに代表されるモノマーを原料として合成したホモポリマーあるいはコポリマーであり、より好ましくは、ガラス転移温度が50〜250℃が良いが、処方時に、モノマーに可溶であることが必須条件である。
【0038】
なお、本発明において、モノマーに可溶であるとは、アクリルモノマーの一つであるフェノキシエチルアクリレート70gに測定しようとするサンプルA(本発明では、モノマーに可溶な(メタ)アクリル樹脂)30gを投入し、モノマーが蒸発させないようにしたフラスコ内で、80℃1時間混合後、常温に戻してサンプルが析出しないあるいは溶液が濁らないことを示す。
【0039】
さらに、本発明で使用される無機フィラーは、モノマーに可溶でないものを使用することが好ましい。
【0040】
モノマーに可溶で平均分子量が30000〜100000の(メタ)アクリル樹脂の原料として合成するのに使用できるモノマーは、アルキル(カーボン数が2〜18)(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートがあり、さらにベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンモノメチロール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルフォリン等(以上単官能モノマー)が例示される。
【0041】
さらに、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メ
タ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、 ジプロピレングリ
コールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポ
リプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリ
レート、ペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ
)アクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジ(メタ)アクリレート(通
称マンダ)、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジカプロラクトネートジ(メタ)
アクリレート、1,6ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレ、1,8−オクタンジオール
ジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−ヘ
キサデカンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−2,4−ペンタンジオールジ
(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)ア
クリレート、ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート
、水添加ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水
添加ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添加
ビスフェノーAジ(メタ)アクリレート、水添加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレー
ト、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリ
レート、トリメチロールプロパントリカプロラクトネートトリ(メタ)アクリレート、ト
リメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールヘキサントリ(メタ)ア
クリレート、トリメチロールオクタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール
トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジグリ
セリンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレ
ート、ジトリメチロールプロパンテトラカプロラクトネート、テトラ(メタ)アクリレー
ト、ジトリメチロールエタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールブタンテト
ラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ジト
リメチロールオクタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メ
タ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエ
リスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)ア
クリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート等(以上多官能モノ
マー)を用いることもできる。
【0042】
また、本発明に用いる反応性ウレタンオリゴマーは、エチレン性不飽和二重結合を有す
る。
【0043】
さらに、本発明に用いる反応性ウレタンオリゴマーは、平均分子量5000以上であることが好ましく、5000〜40000がより好ましい。
【0044】
また、反応性ウレタンオリゴマーの硬化皮膜のガラス転移温度は、−60〜10℃が良
く、−60〜−10℃がより好ましく、−60〜−30℃がさらに好ましい。
【0045】
反応性ウレタンオリゴマーは、オーバープリントニス組成物の組成中5%〜30%で用いられることが好ましく、5%〜20%で用いられることがさらに好ましい。5%未満の場合、凝集力に効果を発揮しない。また、30%より多く用いるとオーバープリントニス組成物の皮膜の硬化が悪くなる。
【0046】
また、本発明に使用される単官能モノマーとしては、アルキル(カーボン数が2〜18
)(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、
ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アク
リレート、ステアリル(メタ)アクリレートがあり、さらにベンジル(メタ)アクリレー
ト、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリシ
クロデカンモノメチロール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルフォリン、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が例示される。
【0047】
さらに、本発明に使用される無機フィラーは、コールカウンター法により測定した体積基準平均粒径(D50)が、10μm以下が好ましく、5μmがさらに良い。また、下限は、0.1μm以上が良く、1μm以上が好ましい。
【0048】
なお、本発明の無機フィラーの平均粒径は、すべてコールカウンター法により測定した体積基準平均粒径(D50)を表す。
【0049】
さらに、本発明で使用される無機フィラーは、無機微粒子あるいは無機粉末のうち真球度が0.9以上のものが好ましく、その意味で、単純な無機フィラーではなく、無機フィラーを使用することが好ましい。
【0050】
なお、本発明において、真球度とは、走査型電子顕微鏡により、形状の観察を行い、無機フィラーの粒子の最短径/最長径の比率(=真球度)を表し、0.6〜1.0の範囲にあるものが好ましく、0.9〜1.0の範囲がより良い。
【0051】
また、本発明に使用される無機フィラーによって、硬さを兼ね備えた強靭性が向上することができる。さらに、美粧性、特に、つや消し性が向上する。無機フィラーは、非特許文献1にも記載されているような無機フィラーであれば良く、特に、ケイ素化合物の粒子またはタルクの粒子が好ましい。
【0052】
また、無機フィラーとしては、ガラス(粒子)、シリカ(粒子)、アルミナシリケート、タルク、マイカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸カルシウムおよびタルクが挙げられるが、ケイ素化合物およびタルクが良い。
【0053】
無機フィラーの含有量としては、活性エネルギー線硬化型であるオーバープリントニス組成物の組成として、5〜30重量%が好ましく、つや消し性を考えると、15〜30重量%が良い。30重%より多く含有させると、ニスの成形加工性が低下し、5重量%未満であると、含有させている効果がほとんど認められない。
【0054】
本発明では、上記のように、基材シート上に、活性エネルギー線硬化型であるオーバープリントニス組成物を印刷し、もしくは塗工し、活性エネルギー線を照射して、活性エネルギー線硬化型であるオーバープリントニス組成物を硬化させて、印刷シートを作製後、この印刷シートを真空成形、圧空成形あるいは真空圧空成形して、印刷シート成形物を製造する。
【0055】
本発明において、ガラス転移温度の測定は、試験片を室温から、10℃/分の割合で昇
温させ、熱分析装置にて厚さ方向の熱膨張量を測定し、ガラス転移温度の前後の曲線に接
線を引き、接線の交点からガラス転移温度(省略する場合には、Tgとする。)を求める
TMA法にて測定を行なった。
【0056】
また、本発明の平均分子量は、重量平均分子量を表し、GPC(Gel Permeation Chromatography)により測定した。測定において以下の装置、カラム、検出器および溶媒を使用した。
【0057】
装置:東ソー株式会社製 HLC−8220GPC
カラム:TSKgel SuperHM−H
検出器:RI
溶媒:THF(テトラヒドロフラン)
本発明において、活性エネルギー線硬化型とは、紫外線あるいは電子線硬化型を主とし
て示し、紫外線硬化型である場合は、光開始剤が必要である。
【0058】
本発明で使用される光開始剤の例として、水素引き抜き型開始剤として、ベンゾフェノ
ン、p−メチルベンゾフェノン、p−クロルベンゾフェノン、テトラクロロベンゾフェノ
ン、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノ
ン、4−ベンゾイル−4' −メチル−ジフェニルサルファイド、2−イソプロピルチオキ
サントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4ジエチルチオキサントン、2,4ジ
クロロチオキサントン、アセトフェノン等のアリールケトン系開始剤、4,4' −ビス(
ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4' −ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、
p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、p−ジメチルアミノアセトフェノン等のジアル
キルアミノアリールケトン系開始剤、チオキサントン、キサントン系のおよびそのハロゲ
ン置換系の多環カルボニル系開始剤等が例示される。また、光開裂型開始剤として、ベン
ゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α−アクリルべ
ンゾイン等のベンゾイン系、ベンジル、イルガキュア907(チバスペシャルティケミカ
ルズ社製2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパンー1−オン)
、イルガキュア369(チバスペシャルティケミカルズ社製2−ベンジル−2−ジメチル
アミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン)、イルガキュア651(チバ
スペシャルティケミカルズ社製ベンジルメチルケタール)、イルガキュア184(チバス
ペシャルティケミカルズ社製1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、ダロキュ
ア1173(チバスペシャルティケミカルズ社製2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェ
ニルプロパン−1−オン)、(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチ
ルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−
2−プロピル)ケトン、ZLI3331(チバスペシャルティケミカルズ社製4−(2−
アクリロイル−オキシエトキシ)フェニル−2−ヒドロキシ−2−プロピルケトン、ジエ
トキシアセトフェノン、エサキュアーKIP100(ラムベルティ社製)、ルシリンTP
O( BASF社製)、BTTB(日本油脂(株)製)、CGI1700( チバスペシャル
ティケミカルズ社製)等が例示される。
【0059】
また、光開始助剤を光開始剤と併用して用いることもできる。光開始助剤としては、水
素供与体である第3級アミン類が用いられる。具体的にはトリエタノールアミン、メチル
ジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等の脂肪族アミンや、4,4'−ジエ
チルアミノベンゾフェノン、2−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安
息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等の芳香族アミンが挙げられ、好
ましくはトリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジブチルエタノールアミン
、トリイソプロパノールアミン、4,4'−ジエチルアミノベンゾフェノンである。
【0060】
本発明において、光開始剤は活性エネルギー線硬化型であるオーバープリントニス組成
物の組成中に0.1%〜30%含み、好ましくは、1〜15%で用いる。
【0061】
本発明に使用される添加剤としては、耐摩擦、ブロッキング防止、スベリ、スリキズ防
止、消泡を目的として、例えば、カルナバ、木ろうなどの植物系ワックス、鯨ろう、ラノ
リンなどの動物系ワックス、モンタンなどの鉱物系ワックス、パラフィン、マイクロクリ
スタリンなどの石油系ワックス(以上天然ワックス)やサゾール、ポリエチレンなどの合
成炭化水素ワックス、シリコーンオイルあるいはシリコーンアクリレートなどのシリコーン系添加剤、硬化ひまし油などの水素化ワックス、脂肪酸アミドなどのアミド系ワックス、他、ケトン、アミン、イミド、エステル化合物及びポリテトラフルオロエチレン(以上合成ワックス)を使用することが出来る。
【実施例】
【0062】
以下に、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の権
利範囲を何ら制限するものではない。なお、本発明において「部」は、「重量部」を表し、「%」は、「重量%」を表す。
【0063】
以下の表に示す処方(表1:実施例1〜5、表2:比較例1〜3)により、活性エネルギー線硬化型であるオーバープリントニス組成物を作製した。オーバープリントニス組成物の作製方法は以下のようである。アクリル樹脂および開始剤を単官能モノマーで溶解した後、その他の全原料を投入し、混合器により混合して、作製した。
【0064】
透明な0.5mm厚のポリエステル樹脂シート上に、表1および表2により作製した活性エネルギー線硬化型であるオーバープリントニス組成物をスクリーン印刷により、印刷(塗工)し(印刷厚20μm)、160W/cmの強度を有するメタルハライドランプ1灯の下10cmのところを10m/分のコンベアーに載せ、照射し、硬化させ、印刷シートを作製した。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
得られた印刷シートの印刷面(塗工面)を綿布で擦った時の状態を目視にて評価した(
硬化性試験)。
〔評価〕
◎:変化なし。
○:印刷面(塗工面)の一部にキズが観察されるが、剥離は観察できない。
△:印刷面(塗工面)の一部(50%未満)に剥離が観察される。
×:印刷面(塗工面)の一部(50%以上)または全部に剥離が観察される。
【0068】
さらに、得られた印刷シートを印刷面(塗工面)を表にして、90°および180°に
折り曲げ、剥離および亀裂(クラック)の度合いを50倍ルーペで観察した(成形性適性
試験)。
〔評価〕
◎:剥離および亀裂(クラック)が観察されない。
○:剥離は観察されないが、亀裂(クラック)が少し観察される。
△:剥離はほとんど観察されないが(多少観察される。)、さらに亀裂(クラッ
ク)も観察される。
×:剥離が観察され、亀裂(クラック)も観察される。
以上の評価結果を表3に示す
【0069】
【表3】

【0070】
表3の実施例である本発明の活性エネルギー線硬化型であるオーバープリントニス組成
物を使用して作製した印刷シートを用いて、製造した印刷シート成形物は、その表面の印
刷面(塗工面)に剥離あるいは亀裂(クラック)等が生じず、一方、比較例においては、
剥離も亀裂(クラック)も観察される。すなわち、本発明で、硬化性および成形適性に優れた、活性エネルギー線硬化型であるオーバープリントニス組成物、およびこれを用いて製造される印刷シート、さらにこの印刷シートを成形加工して製造される成形物が提供可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シート上に、オーバープリントニス組成物を印刷する方法において、使用されるオーバープリントニス組成物が、モノマーに可溶で平均分子量が30000〜100000の(メタ)アクリル樹脂、反応性ウレタンオリゴマー、単官能モノマーおよび平均粒径0.1μm〜10μmの無機フィラーを含有し、さらに、活性エネルギー線硬化型であることを特徴とするオーバープリントニス組成物。
【請求項2】
無機フィラーがケイ素化合物粒子であることを特徴とする請求項1記載のオーバープリントニス組成物。
【請求項3】
無機フィラーが二酸化ケイ素粒子であることを特徴とする請求項1乃至2何れか記載のオーバープリントニス組成物。
【請求項4】
無機フィラーがシリカおよびタルク粒子であることを特徴とする請求項1乃至3何れか記載のオーバープリントニス組成物。
【請求項5】
無機フィラーの真球度が0.9以上であることを特徴とする請求項1乃至4何れか記載のオーバープリントニス組成物。
【請求項6】
モノマーに可溶な(メタ)アクリル樹脂のガラス転移温度が50〜250℃であることを特徴とする請求項1乃至5何れか記載のオーバープリントニス組成物。
【請求項7】
反応性ウレタンオリゴマーの硬化皮膜のガラス転移温度が−60℃〜10℃であること
を特徴とする請求項1乃至6何れか記載のオーバープリントニス組成物。
【請求項8】
基材シートが熱可塑性樹脂シートであることを特徴とする請求項1乃至7何れか記載のオーバープリントニス組成物。
【請求項9】
請求項1乃至8何れか記載のオーバープリントニス組成物を印刷し、活性エネルギー線を照射させ、硬化させて製造した印刷シート。
【請求項10】
請求項9記載の印刷シートを、成形加工して製造されることを特徴とする印刷シート成形物。
【請求項11】
請求項10記載の成形加工が、真空成形加工、圧空成形加工または真空圧空成形加工により行われて製造されることを特徴とする印刷シート成形物。


【公開番号】特開2008−163296(P2008−163296A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−183760(P2007−183760)
【出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】