説明

活性エネルギー線硬化型コーティングワニス組成物およびその印刷物

【課題】油性インキ上に印刷されても光沢に優れた印刷物を得ることが可能な活性エネルギー線硬化型コーティングワニスの提供。
【解決手段】粘度が50〜180mPa・sかつ重量平均分子量が450〜600の光重合性アクリレートモノマーを含有し、シリコーンオイルを全体の0.5〜1.0重量%含有し、またそのシリコーンオイルがジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体であることを特徴とする活性エネルギー線硬化型コーティングワニス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油性インキ上に印刷される活性エネルギー線硬化型コーティングワニスに関するものであり、光沢に優れた印刷物の提供が可能になる。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷物の高品質化、高級化により各種紙器、商業印刷、ラベルに対し、絵柄部分を油性インキで印刷後、活性エネルギー線硬化性コーティングワニスを塗工する研究がさかんに行われている。
【0003】
通常、油性インキ上に活性エネルギー線硬化型コーティングワニスをした場合、コーティングワニスのはじき現象が生じ、低光沢な印刷物となる。
【0004】
そのため、コーティングワニスのはじき現象を防止するための対策が必要となってくる。
【0005】
そこで、はじき現象問題を解決する手段として、活性エネルギー線硬化型コーティングワニスの表面張力を調整し、油性インキ上でのはじきを抑制する検討を行った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−99948
【特許文献2】特開2008−201893
【特許文献3】特開2008−37100
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、油性インキ上に印刷される活性エネルギー線硬化型コーティングワニスに関するものであり、光沢に優れた印刷物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、鋭意検討を行った結果、表面張力が、32〜45mN/mの光重合性アクリレートモノマーおよび光開始剤を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型コーティングワニスは、油性インキ上に印刷されても光沢に優れた印刷物を得ることが可能なことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、表面張力が、32〜45mN/mの光重合性アクリレートモノマーおよび光開始剤を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型コーティングワニスに関するものである。
【0010】
また、本発明は、前記光重合性アクリレートモノマーが、B型粘度計で測定した粘度50〜180mPa・s、かつ、ワニス全量の50重量%以上含有することを特徴とする上記の活性エネルギー線硬化型コーティングワニスに関するものである。
【0011】
さらに、本発明は、前記光重合性アクリレートモノマーが、重量平均分子量450〜600であることを特徴とする上記の活性エネルギー線硬化型コーティングワニスに関するものである。
【0012】
また、さらに、シリコーンオイルを、ワニス全量の0.5〜1.0重量%含有することを特徴とする上記の活性エネルギー線硬化型コーティングワニスに関するものである。
さらに、シリコーンオイルが、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体を含むことを特徴とする上記の活性エネルギー線硬化型コーティングワニスに関するものである。
【0013】
また、上記の活性エネルギー線硬化型コーティングワニスが、表面張力18〜23mN/mであることを特徴とする活性エネルギー線硬化型コーティングワニスに関するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、油性インキ上で光沢に優れた活性エネルギー線硬化型コーティングワニスの提供が可能となった。
【0015】
B型粘度計で測定した粘度が60〜180mPa・sと低いにもかかわらず、重量平均分子量が、450〜600の光重合性アクリレートモノマーを使用することで、油性インキ上でのコーティングワニスのレベリング性と、油性インキへのコーティングワニスのしみ込み抑制が可能となった。また、はじき現象を抑制するために、シリコーンオイルを使用することではじき現象抑制が可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明で使用する、活性エネルギー線とは、紫外線、電子線のことであるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0017】
本発明で使用される活性エネルギー線硬化型組成物の組成の例としては、
(a)非反応性樹脂 0〜9重量%
(b)光重合性アクリレートモノマー 30〜80重量%
(c)光開始剤、光助剤 1〜10重量%
(d)シリコーンオイル 0.8〜1重量%
(e)その他添加剤 0.1〜5重量%
が挙げられる。
【0018】
また、この中でも
(a)非反応性樹脂 0〜9重量%
(b)光重合性アクリレートモノマー 50〜80重量%
(c)光開始剤、光助剤 3〜5重量%
(d)シリコーンオイル 1重量%
(e)その他添加剤 0.1〜5重量%
がよい。
【0019】
本発明において、非反応性樹脂とはラジカル重合性二重結合を有しないものであり、非反応性樹脂としては、ポリエステル樹脂や、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、石油樹脂、ウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、分子内にラジカル重合性二重結合を持たないアミノ樹脂などの熱硬化性樹脂も使用する。
【0020】
本発明において、光重合性アクリレートモノマーとは単官能または多官能の(メタ)アクリレート類をいい、オリゴマーを含み、30〜80重量%の範囲で用いられる。
単官能モノマーとしてアルキル(カーボン数が2〜18)(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートがあり、さらにベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンモノメチロール(メタ)アクリレート等が例示される。
【0021】
多官能(メタ)アクリレート類としてはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジ(メタ)アクリレート(通称マンダ)、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート、1,6ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレ、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−ヘキサデカンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−2,4−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添加ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添加ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添加ビスフェノーAジ(メタ)アクリレート、水添加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリカプロラクトネートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールヘキサントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールオクタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラカプロラクトネート、テトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールエタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールブタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールオクタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート等を用いることができる。
【0022】
本発明で使用される光開始剤としては、水素引き抜き型として、ベンゾフェノン、p−メチルベンゾフェノン、p―クロルベンゾフェノン、テトラクロロベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイルー4’−メチルージフェニルサルファイド、2−イソプロピルチオシサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、アセトフェノン・アリールケトン系開始剤、4,4‘−ビス(ジエチルアニノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、p−ジメチルアミノアセトフェノン・ジアルキルアミノアリールケトン系開始剤、チオキサントン、キサントン系・そのハロゲン置換・多環カルボニル系開始剤などが挙げられる。また、開裂型光開始剤として、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α―アクリルベンゾイル・ベンゾイン系、ベンジル、2−メチルー2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパンー1−オン、2−ベンジルー2−ジメチルアミノー1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン、ベンジルメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシー2−メチルー1−フェニルプロパンー1−オン、1−(4−イソプロピルフェニルー2−ヒドロキシー2−メチルプロパンー1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニルー(2−ヒドロキシー2−プロピル)ケトン、4−(2−アクロイルーオキシエトキシ)フェニルー2−ヒドロキシー2−プロピルケトン、ジエトキシアセトフェノンなどがある。
【0023】
また、光開始助剤としては、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン・脂肪族アミン、4,4‘−ジエチルアミノベンゾフェノン、2−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジブチルエタノールアミンが挙げられる。
光開始剤は組成物100重量%に対して組成中に1〜10重量%の範囲で用いられる。
本発明で使用される光重合性アクリレートモノマーとしては、一般式(1)で表わされるものが使用される。
一般式(1)
【0024】
【化1】

【0025】
シリコーンオイルは、全体の0.5〜1.0重量%含有する。含有量が0.4重量%以下であれば、油性インキ上でコーティングワニスの弾き現象が生じる、また、1.1重量%以上であれば、アクリレートモノマーへの溶解性が乏しく、分離する傾向にある。その結果、低光沢な印刷物となる。
【0026】
一方、組成物中への、(e)その他添加剤として、耐摩擦、ブロッキング防止、スベリ、スリキズ防止、暗反応防止を目的とする各種添加剤を使用することができ、必要に応じて、帯電防止剤、界面活性剤、消泡剤、重合禁止剤などを添加してもよい。
【0027】
なお、本発明において、粘度は、B型粘度計で測定し、重量平均分子量は、東ソー(株)製ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(HLC−8020。以下GPCと称す。)で測定した。検量線は標準ポリスチレンサンプルにより作成した。溶離液はテトラヒドロフランを、カラムにはTSKgel SuperHM-M(東ソー(株)製)3本を用いた。測定は流速0.6ml/分、注入量10μl、カラム温度40℃で行った。
【0028】
また、本発明において、表面張力とは、協和界面科学(株)製自動表面張力計(CBVP−Z型)を使用し、Wilhelmey法で測定したものである。
【実施例】
【0029】
実施例として本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例により何等限定されるものではない。以下、表中の数字は、重量%を示す。
【0030】
表1、2に示す処方により活性エネルギー線硬化型コーティングワニス組成物を作成した。
【0031】
活性エネルギー線硬化型コーティングニスの製造方法は、温度60℃で加温し攪拌溶解する。
【0032】
【表1】

【0033】

【表2】

【0034】
非反応樹脂としては、ポリエステル樹脂、光重合アクリレートモノマー1としては、ポリエチレンオキサイド変性グリセロールトリアクリレート(粘度75−95mPa・s、重量平均分子量480、表面張力33.5mN/m)、光重合アクリレートモノマー2としては、トリメチロールプロパントリアクレレート(粘度60−120mPa・s、重量平均分子量296、表面張力35.8mN/m)、光重合アクリレートモノマー3としては、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート(粘度160mPa・s、重量平均分子量1892、表面張力37.9mN/m)、水素引き抜き型開始剤としては、4−メチルベンゾフェノンを使用する。シリコーンオイル1は、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体、シリコーンオイル2は、ポリアルキルシロキサン、シリコーンオイル3は、アクリル変性ポリシロキサンを指す。
【0035】
(光沢評価方法)
北越マリコート(北越製紙製コートボール)上に、油性インキ(TK NEX NV100、東洋インキ製造株式会社製 枚葉プロセスインキ)を塗工し、油性インキ上に実施例1、比較例1〜7の活性エネルギー線硬化型コーティングワニスを塗工。
活性エネルギー線硬化型コーティングワニスを塗工後、160W/cmの強度を有する高圧水銀灯(オゾンタイプ)1灯の下10cmのところを30m/分のコンベアーにのせ照射し、硬化させた。それぞれ得られた印刷物に対する光沢をグロスメーター(60°反射)にて評価した。
【0036】
以上の結果を表3にまとめて示す。
【0037】
【表3】

【0038】
実施例1、比較例1〜3にてシリコーンオイル量の検討を行った。シコーンオイル含有量が0.4重量%以下では、油性インキによって活性エネルギー線硬化型コーティングワニスがはじかれ、結果として、低光沢な印刷物となる。一方、シコーンオイル含有量が1.1重量%以上では、シリコーンオイルのアクリレートモノマーに対する溶解性が乏しく、分離する傾向にある。その結果、低光沢な印刷物となる。
【0039】
実施例1、比較例4〜5にて光重合性アクリレートモノマーの検討を行った。光重合性アクリレートモノマーの重量平均分子量が450よりも小さい場合、塗工後、活性エネルギー線硬化型コーティングワニスが油性インキに対して染み込むことで、レベリング性が損なわれ、結果として低光沢な印刷物となる。一方、光重合性アクリレートモノマーの重量平均分子量が600よりも大きい場合、塗工後、活性エネルギー線硬化型コーティングワニスが油性インキに対して染み込みは抑制されるが、重量平均分子量が大きいためレベリング性が損なわれ、結果として低光沢な印刷物となる。
【0040】
実施例1、比較例6〜7にてシリコーンオイル種の検討を行った。比較例6、比較例7は活性エネルギー線硬化型コーティングワニスの表面張力が実施例1よりも大きく、結果としてレベリング性が実施例1よりも劣るため低光沢な印刷物となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面張力が、32〜45mN/mの光重合性アクリレートモノマーおよび光開始剤を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型コーティングワニス。
【請求項2】
前記光重合性アクリレートモノマーが、B型粘度計で測定した粘度50〜180mPa・s、かつ、ワニス全量の50重量%以上含有することを特徴とする請求項1記載の活性エネルギー線硬化型コーティングワニス。
【請求項3】
前記光重合性アクリレートモノマーが、重量平均分子量450〜600であることを特徴とする請求項1または2記載の活性エネルギー線硬化型コーティングワニス。
【請求項4】
さらに、シリコーンオイルを、ワニス全量の0.5〜1.0重量%含有することを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の活性エネルギー線硬化型コーティングワニス。
【請求項5】
シリコーンオイルが、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体を含むことを特徴とする請求項4記載の活性エネルギー線硬化型コーティングワニス。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか記載の活性エネルギー線硬化型コーティングワニスが、表面張力18〜23mN/mであることを特徴とする活性エネルギー線硬化型コーティングワニス。


【公開番号】特開2012−201882(P2012−201882A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71225(P2011−71225)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】