説明

活性エネルギー線硬化型コーティング用樹脂組成物

【課題】
活性エネルギー線を照射してコーティング塗膜を作成した際、防曇性能を有した塗膜が得られ、かつ硬化速度が速いながらも基材の反りを防ぐと共に密着性に優れた活性エネルギー線硬化型コーティング用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】
ポリグリセリン(平均重合度2〜20)とアルキレンオキサイド(炭素数2〜4)を反応して得られるポリグリセリンアルキレンオキサイド付加物(付加モル数50〜200)に脂肪酸(炭素数8〜32)及び(メタ)アクリル酸を反応して得られるエステル化物、あるいは、ポリグリセリン脂肪酸エステルにアルキレンオキサイドを付加反応した後に(メタ)アクリル酸を反応して得られるエステル化物(いずれのエステル化物も分子構造中に脂肪酸基と(メタ)アクリロイル基を必ず含む)を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物により上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線を照射してコーティング塗膜を作成した際、防曇性能を有した塗膜が得られ、かつ硬化速度が速いながらも基材の反りを防ぐと共に密着性に優れた活性エネルギー線硬化型コーティング用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチック材料やガラスなどは、高温多湿の場所または温度差や湿度差の大きい雰囲気下で使用された場合など、表面温度が露点温度以下になると、大気中の水分が凝結して細かい水滴となってその表面に付着し曇るという問題がある。プラスチック材料については、軽量性や加工性、透明性等の利点を有しており、自動車部品や建材、電化製品、包装材料、レンズなど幅広い分野で使用されているが、防曇性能が必要とされる用途においては、使用しづらい状況である。
【0003】
この問題に対し、従来から、非反応性の界面活性剤からなる防曇性組成物を基材の表面に塗布する方法が行われているが、この場合、塗布面を拭き取ることにより防曇性が損なわれ、持続性に問題がある。
【0004】
これに対し、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートと界面活性剤を主成分とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物をプラスチック表面に塗布し、紫外線照射することにより防曇性塗膜を得る方法が提案されている(特許文献1)。しかし、この組成物の場合、防曇性能は持続できるものの、塗膜の密着性が十分ではなかった。
【特許文献1】特開平7−330933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、活性エネルギー線を照射してコーティング塗膜を作成した際、防曇性能を有した塗膜が得られ、かつ硬化速度が速いながらも基材の反りを防ぐと共に密着性に優れた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究した結果、ポリグリセリン(平均重合度2〜20)とアルキレンオキサイド(炭素数2〜4)を反応して得られるポリグリセリンアルキレンオキサイド付加物(付加モル数50〜200)に脂肪酸(炭素数8〜32)(または低級アルコールの脂肪酸エステル)及び(メタ)アクリル酸(または低級アルコールの(メタ)アクリル酸エステル)を反応して得られるエステル化物、あるいは、ポリグリセリン(平均重合度2〜20)と脂肪酸(炭素数8〜32)(または低級アルコールの脂肪酸エステル)を反応して得られるポリグリセリン脂肪酸エステルにアルキレンオキサイド(炭素数2〜4)を付加反応(付加モル数50〜200)した後に(メタ)アクリル酸(または低級アルコールの(メタ)アクリル酸エステル)を反応して得られるエステル化物(いずれのエステル化物も分子構造中に脂肪酸基と(メタ)アクリロイル基を必ず含む)を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型コーティング用樹脂組成物により上記課題を解決するに至った。
【発明の効果】
【0007】
本発明のポリグリセリンアルキレンオキサイド付加物(付加モル数50〜200)に脂肪酸(炭素数8〜32)(または低級アルコールの脂肪酸エステル)及び(メタ)アクリル酸(または低級アルコールの(メタ)アクリル酸エステル)を反応して得られるエステル化物、あるいは、ポリグリセリン脂肪酸エステルにアルキレンオキサイドを付加反応(付加モル数50〜200)した後に(メタ)アクリル酸(または低級アルコールの(メタ)アクリル酸エステル)を反応して得られるエステル化物(いずれのエステル化物も分子構造中に脂肪酸基と(メタ)アクリロイル基を必ず含む)を含有させることにより、活性エネルギー線を照射してコーティング塗膜を作成した際、防曇性能を有した塗膜が得られ、かつ、硬化速度が速く、基材フィルムの反りや塗膜のひび割れを発生させることのない活性エネルギー線硬化型コーティング用樹脂組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明では、ポリグリセリン(平均重合度2〜20)に対しアルキレンオキサイド(炭素数2〜4のアルキレンオキサイド)を付加した化合物(付加モル数50〜200)に脂肪酸(炭素数8〜32)(または低級アルコールの脂肪酸エステル)及び(メタ)アクリル酸(または低級アルコールの(メタ)アクリル酸エステル)を反応して得られるエステル化物、あるいは、ポリグリセリン(平均重合度2〜20)に脂肪酸(炭素数8〜32)(または低級アルコールの脂肪酸エステル)を反応させて得られたポリグリセリン脂肪酸エステルにアルキレンオキサイド(炭素数2〜4のアルキレンオキサイド)を付加反応(付加モル数50〜200)した後に(メタ)アクリル酸(または低級アルコールの(メタ)アクリル酸エステル)を反応して得られるエステル化物(いずれのエステル化物も分子構造中に脂肪酸基と(メタ)アクリロイル基を必ず含む)を用いることを特徴とするが、ポリグリセリンの重合度、アルキレンオキサイドの種類や付加モル数、脂肪酸基の種類や反応割合、(メタ)アクリロイル基の反応割合、アルキレンオキサイドを反応させる順序により種々の化合物を合成することができるので、以下に説明する。
【0009】
本発明で用いられるエステル化物に使用するポリグリセリンは、末端分析法によって得られる水酸基価から算出される平均重合度が2〜20のものであり、好ましくは同平均重合度が4〜20である。平均重合度が1すなわちグリセリンの場合、硬化速度が遅く好ましくなく、また平均重合度20より大きい場合、製造工程中に水洗することが困難である等製造上種々の問題があるので好ましくない。
【0010】
本発明で用いられるエステル化物に使用するアルキレンオキサイドは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどが挙げられるが、エチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドが好ましく、エチレンオキサイドがさらに好ましい。エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドは単独でも併用しても良い。アルキレンオキサイドの付加単位数は、ポリグリセリン1モルに対して50〜200モルであり、好ましくは60〜150モルである。付加モル数が50モルより少ない場合、本発明のアクリレートを含有した樹脂組成物を硬化させた際のコーティング塗膜の防曇性能が不十分となり、逆に付加モル数を200モルより増やすと本発明のアクリレートを製造する際、工程中で水洗による精製が難しくなる等種々の問題が発生し、製造が困難となるので好ましくない。
【0011】
本発明で用いられるエステル化物の脂肪酸基については、炭素数が8から32までの脂肪酸を用いるのであれば特に限定はなく、飽和脂肪酸基であっても不飽和脂肪酸基であっても良いし、直鎖であっても分枝であっても環状であっても良いし、また、水酸基等の含酸素官能基を持っていても良い。また、天然物であっても合成物であっても良い。また、反応割合については、ポリグリセリン1分子の水酸基またはポリグリセリン1分子にアルキレンオキサイドが付加した末端の水酸基のうち、1つ以上反応させることが好ましい。1つより少ないと、活性エネルギー線を照射して得られる硬化塗膜の防曇性能が劣るので好ましくない。
【0012】
本発明で用いられるエステル化物の(メタ)アクリロイル基の反応割合については、ポリグリセリン1分子にアルキレンオキサイドが付加した末端の水酸基またはポリグリセリン脂肪酸エステル1分子の水酸基にアルキレンオキサイドが付加した末端の水酸基のうち、3つ以上反応させることが好ましい。3つより少ないと、活性エネルギー線を照射して塗膜を硬化させる際の硬化速度が遅くなるだけでなく、本発明のアクリレートを製造する際、工程中で水洗することが困難となる等種々の問題が発生し好ましくない。
【0013】
本発明で用いられるエステル化物は、ポリグリセリン骨格にアルキレンオキサイドが付加していると共に脂肪酸基と(メタ)アクリロイル基を必ず含む分子構造となっているが、ポリグリセリンに対し、アルキレンオキサイドを反応させる順序によりエステル化物の分子構造が少し異なるので以下に説明する。
【0014】
一つのエステル化物は、ポリグリセリンにアルキレンオキサイドを反応させポリグリセリンアルキレンオキサイドを得た後、脂肪酸(または低級アルコールの脂肪酸エステル)及び(メタ)アクリル酸(または低級アルコールの(メタ)アクリル酸エステル)を反応させて得られるエステル化物である。このエステル化物では、ポリグリセリンの水酸基全てにアルキレンオキサイドが付加し、その分子枝の末端に脂肪酸基及び(メタ)アクリロイル基が付いた分子構造となる。脂肪酸(または低級アルコールの脂肪酸エステル)と(メタ)アクリル酸(または低級アルコールの(メタ)アクリル酸エステル)を反応させる順序については、脂肪酸(または低級アルコールの脂肪酸エステル)が先であっても、アクリル酸(または低級アルコールの(メタ)アクリル酸エステル)が先であっても、また同時であってもかまわないが、脂肪酸基を1分子中に反応させる数の制御や後工程の事を加味すると、脂肪酸(または低級アルコールの脂肪酸エステル)を先に反応させる方が好ましい。
【0015】
もう一つのエステル化物は、ポリグリセリンに脂肪酸(または低級アルコールの脂肪酸エステル)を反応させポリグリセリン脂肪酸エステルを得た後、アルキレンオキサイドを付加反応し、その後、(メタ)アクリル酸(または低級アルコールの(メタ)アクリル酸エステル)を反応させて得られるエステル化物である。このエステル化物では、ポリグリセリンの水酸基のいくつかに脂肪酸基が付いており、脂肪酸基が付いていない残りの水酸基にアルキレンオキサイドが付加し、その分子の末端に(メタ)アクリロイル基が付いた分子構造となる。言い換えれば、分子の末端に脂肪酸基が付いている分子枝には、アルキレンオキサイドが付加しておらず、分子の末端に(メタ)アクリロイル基が付いている分子枝には、アルキレンオキサイドが付加している分子構造となっている。
【0016】
上記した分子構造が異なるエステル化物は、脂肪酸または低級アルコールの脂肪酸エステル及び(メタ)アクリル酸または低級アルコールの(メタ)アクリル酸エステルを反応させ、分子構造中に脂肪酸基及び(メタ)アクリロイル基を導入するが、その方法として、脂肪酸及び(メタ)アクリル酸を末端水酸基に反応させて生成水を抜き出しながらエステル化物を得る脱水エステル化法と低級アルコールの脂肪酸エステル及び低級アルコールの(メタ)アクリル酸エステルを末端水酸基に反応させて生成低級アルコールと低級アルコールの(メタ)アクリル酸エステルを抜き出しながらエステル化物を得るエステル交換法とが例示できる。脱水エステル化法で用いられる脂肪酸としては、例えばカプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等の直鎖飽和脂肪酸やオブツシル酸、カプロレイン酸、ウンデシレン酸、リンデル酸、ツズ酸、フィゼテリン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、アスクレピン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、ゴンドイン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、セラコレイン酸、キシメン酸、ルメクエン酸等のモノエン不飽和脂肪酸、リノール酸、8,11−イコサジエン酸等のジエン不飽和脂肪酸、ヒラゴ酸、α−エレオステアリン酸、β−エレオステアリン酸、プニカ酸、リノレン酸、γ−リノレン酸、8,11,14−エイコサトリエン酸、7,10,13−ドコサトリエン酸等のトリエン不飽和脂肪酸、4,8,11,14−ヘキサデカテトラエン酸、モロクチ酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、8,12,16,19−ドコサテトラエン酸等のテトラエン不飽和脂肪酸、4,8,12,15,18−エイコサペンタエン酸、イワシ酸等のペンタエン不飽和脂肪酸、ニシン酸等のヘキサエン不飽和脂肪酸、イソ酸、アンテイソ酸、ツベルクロステアリン酸等の枝分れ脂肪酸、タリリン酸、ステアロール酸、クレペニン酸、キシメニン酸等の三重結合をもつ脂肪酸、マルバリン酸、ステルクリン酸、ヒドノカルピン酸、ショールムーグリン酸、ゴルリン酸等の脂環式脂肪酸、サビニン酸、2−ヒドロキシテトラデカン酸、イプロール酸、2−ヒドロキシヘキサデカン酸、ヤラピノール酸、ユニベリン酸、アンブレットール酸、アリューリット酸、2−ヒドロキシオクタデカン酸、12−ヒドロキシオクタデカン酸、18−ヒドロキシオクタデカン酸、9,10−ヒドロキシオクタデカン酸、リシノール酸、カムロレン酸、リカン酸、フェロン酸、セレブロン酸等の含酸素脂肪酸、2-エチルヘキサン酸、イソノナン酸、イソミリスチン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸などの合成脂肪酸などが挙げられる。また、エステル交換法で用いられる低級アルコールの脂肪酸エステルとしては、脱水エステル化法で用いられる脂肪酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル等が挙げられ、低級アルコールの(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル等が挙げられる。
【0017】
また、本発明のエステル化物の性状は、ポリグリセリンの平均重合度とアルキレンオキサイドの付加モル数、脂肪酸の種類やエステル化度のバランスにより、常温で液体であったり固体であったりするが、固体の場合でも塗膜作成の際、加熱や有機溶剤などの配合により樹脂組成物が液状で、問題なく基材に塗布できれば、目的とする性能が得られる。
【0018】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、ポリグリセリンアルキレンオキサイド付加物に脂肪酸(または低級アルコールの脂肪酸エステル)及び(メタ)アクリル酸(または低級アルコールの(メタ)アクリル酸エステル)を反応して得られるエステル化物、あるいは、ポリグリセリン脂肪酸エステルにアルキレンオキサイドを付加反応した後に(メタ)アクリル酸(または低級アルコールの(メタ)アクリル酸エステル)を反応して得られるエステル化物(いずれのエステル化物も分子構造中に脂肪酸基と(メタ)アクリロイル基を必ず含む)を含有することを特徴とするが、本発明で用いられるエステル化物以外に他の(メタ)アクリル系モノマーやアクリル系オリゴマーであるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーやエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーを単独若しくは2種以上併用しても良い。樹脂組成物に対し、防曇性能や硬化性、密着性、硬化収縮などの性能が損なわれない限り、任意の割合で併用することが出来る。
【0019】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物において、本発明で用いられる(メタ)アクリレート以外の他の(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシ−ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルジエトキシ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、水添ジシクロペンタジエン(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリプロポキシジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリエトキシヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリプロポキシヘキサ(メタ)アクリレート等のモノマー類を挙げることができる。
【0020】
これらのうち、エチレンオキサイド骨格が多く含まれるメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリエトキシヘキサ(メタ)アクリレートなどが、防曇性能を損なわない点で好ましい。
【0021】
本発明の樹脂組成物は公知の方法によって硬化する事ができる。活性エネルギー線とは、電子線、X線、紫外線、低波長領域の可視光等エネルギーの高い電子線若しくは電磁波の総称であり、通常装置の簡便性及び普及性により紫外線が好ましい。紫外線を照射できる装置として多くの種類があるが、任意に選択できる。また、低波長領域側の可視光等エネルギーとして、青色LEDを用いることも可能である。
【0022】
本発明において上記の中で、紫外線を用いて硬化させる場合に、ラジカル重合系光重合開始剤を使用する必要がある。光重合開始剤としては、公知のどのような光重合開始剤であっても良いが配合後の貯蔵安定性の良い事が要求される。この様な光重合開始剤としては、例えば分子内開裂型開始剤として、ベンジルケタール類、α−ヒドロキシアセトフェノン類、アミノアセトフェノン類、アシルフォスフィンオキサイド類、ベンゾイン類等、水素引き抜き型開始剤として、ベンゾフェノン類、チオキサントン類等が挙げられ、単独または2種以上を併用することができる。光重合開始剤を使用する必要がある場合、その使用量は、通常組成物の0.1〜15重量%、好ましくは0.5〜10重量%、さらに好ましくは1〜7重量%である。
【0023】
ベンジルケタール類としては、例えば2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン等、α−ヒドロキシアセトフェノン類としては、例えば1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン等、アミノアセトフェノン類としては、例えば2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン等、アシルフォスフィンオキサイド類としては、例えばビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、モノアシルフォスフィンオキサイド等、ベンゾイン類としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等が挙げられる。ベンゾフェノン類としては、例えばベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド等、チオキサントン類としては、例えば2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン等が挙げられる。
【0024】
さらに、光増感剤を単独あるいは2種以上と組合せて用いることができる。光増感剤としては、例えばN,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類があげられる。
【0025】
本発明の樹脂組成物は、所望により、非イオン系界面活性剤、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両性イオン系界面活性剤等の界面活性剤、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン等の有機溶剤、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、アクリルポリマー等の非反応性高分子樹脂;ポリジアリルフタレート、ポリジアリルイソフタレート等の反応性高分子樹脂;レベリング剤、消泡剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、光安定剤、熱安定剤、重合禁止剤等の添加剤;炭酸カルシウム、タルク、シリカ、硫酸バリウム等の無機フィラー等を併用することができる。
【0026】
本発明の樹脂組成物は、活性エネルギー線によって硬化させる際、公知の方法により、塗膜、フィルム等様々な形態とすることができる。よって、この組成物は、防曇性能が必要となるコーティング剤、ライニング剤、光学材料等の用途で利用することが出来、また、硬質及び可橈性プラスチック、ガラス、金属基板など広い範囲の基板上へ適用できる。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものでない。
【0028】
<合成例1>
温度計、撹拌機、還流冷却管、水分離管、空気吹き込み管を備えた反応器に、テトラグリセリン(平均重合度4のポリグリセリン)1molにエチレンオキサイド60mol付加した化合物200g(0.07mol)、トルエン300g、パラトルエンスルホン酸15g、ハイドロキノン0.5g、オレイン酸20g(0.07mol)を仕込み、一定量の空気を吹き込み、かつ撹拌しながらトルエン還流雰囲気まで昇温し、約5時間かけて脱水エステル化反応を行った。続いて、アクリル酸51g(0.71mol)を仕込み、同様に約15時間かけて脱水エステル化反応を行った。反応終了後、60℃まで冷却し、トルエンを追加した。その後、水酸化ナトリウム水溶液で未反応のアクリル酸を中和洗浄し、水層を除去した。更に有機層を塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、水層を除去してから、トルエンを減圧留去し、テトラグリセリンのエチレンオキサイド60mol付加物のオレイン酸及びアクリル酸のエステル化物(A1)を得た。また、この化合物は、テトラグリセリンのエチレンオキサイド60mol付加物1molに対して、オレイン酸を1mol、アクリル酸を5mol反応させた化合物である。
【0029】
ここでポリグリセリンの平均重合度(n)は、末端分析法によって得られる水酸基価から算出される値であり、詳しくは、次式(式1)及び(式2)から平均重合度(n)を算出した。
(式1)分子量=74n+18
(式2)水酸基価=56110(n+2)/分子量
【0030】
<合成例2>
オレイン酸20g(0.07mol)をラウリン酸28g(0.14mol)、アクリル酸を40g(0.55mol)に変更した以外は合成例1と同様の反応を行い、テトラグリセリンのエチレンオキサイド60mol付加物のラウリン酸及びアクリル酸のエステル化物(A2)を得た。また、この化合物は、テトラグリセリンのエチレンオキサイド60mol付加物1molに対して、ラウリン酸を2mol、アクリル酸を4mol反応させた化合物である。
【0031】
<合成例3>
テトラグリセリン1molにエチレンオキサイド60mol付加した化合物をデカグリセリン(平均重合度10のポリグリセリン)1molにエチレンオキサイド60mol付加した化合物200g(0.06mol)、オレイン酸20g(0.07mol)をイソステアリン酸17g(0.06mol)、アクリル酸を95g(1.32mol)に変更した以外は合成例1と同様の反応を行い、デカグリセリンのエチレンオキサイド60mol付加物のイソステアリン酸及びアクリル酸のエステル化物(A3)を得た。また、この化合物は、デカグリセリンのエチレンオキサイド60mol付加物1molに対して、イソステアリン酸を1mol、アクリル酸を11mol反応させた化合物である。
【0032】
<合成例4>
テトラグリセリン1molにエチレンオキサイド60mol付加した化合物をデカグリセリン(平均重合度10のポリグリセリン)1molにエチレンオキサイド150mol付加した化合物200g(0.03mol)、オレイン酸20g(0.07mol)をイソステアリン酸8.5g(0.03mol)、アクリル酸を71g(0.98mol)に変更した以外は合成例1と同様の反応を行い、デカグリセリンのエチレンオキサイド150mol付加物のイソステアリン酸及びアクリル酸のエステル化物(A4)を得た。また、この化合物は、デカグリセリンのエチレンオキサイド150mol付加物1molに対して、イソステアリン酸を1mol、アクリル酸を11mol反応させた化合物である。
【0033】
<合成例5>
テトラグリセリン1molにエチレンオキサイド60mol付加した化合物をペンタデカグリセリン(平均重合度15のポリグリセリン)1molにエチレンオキサイド150mol付加した化合物200g(0.03mol)、オレイン酸20g(0.07mol)をイソステアリン酸26g(0.09mol)、アクリル酸を91g(1.26mol)に変更した以外は合成例1と同様の反応を行い、ペンタデカグリセリンのエチレンオキサイド150mol付加物のイソステアリン酸及びアクリル酸のエステル化物(A5)を得た。また、この化合物は、ペンタデカグリセリンのエチレンオキサイド150mol付加物1molに対して、イソステアリン酸を3mol、アクリル酸を14mol反応させた化合物である。
【0034】
<合成例6>
テトラグリセリン1molにエチレンオキサイド60mol付加した化合物をジグリセリン(平均重合度2のポリグリセリン)1molにエチレンオキサイド50mol付加した化合物200g(0.09mol)、オレイン酸20g(0.07mol)をラウリン酸18g(0.09mol)、アクリル酸を49g(0.68mol)に変更した以外は合成例1と同様の反応を行い、ジグリセリンのエチレンオキサイド50mol付加物のラウリン酸及びアクリル酸のエステル化物(A6)を得た。また、この化合物は、ジグリセリンのエチレンオキサイド50mol付加物1molに対して、ラウリン酸を1mol、アクリル酸を3mol反応させた化合物である。
【0035】
<合成例7>
テトラグリセリン(平均重合度4のポリグリセリン)50g(0.16mol)とイソステアリン酸45g(0.16mol)を反応器に入れ、触媒及び窒素気流下、240℃で約3時間反応させて、エステル化物を得た。その後、エチレンオキサイド422g(9.59mol)を公知の方法で付加させ、テトラグリセリン1molにイソステアリン酸1mol反応したエステル化物にエチレンオキサイドが60mol付加した化合物(B)を得た。次に、合成例1と同様の反応器に、得られた化合物(B)200g(0.06mol)、トルエン300g、パラトルエンスルホン酸15g、ハイドロキノン0.5g、アクリル酸43g(0.60mol)仕込み、一定量の空気を吹き込み、かつ撹拌しながらトルエン還流雰囲気まで昇温し、約15時間かけて脱水エステル化反応を行った。これ以降は、合成例1と同様の反応を行い、化合物(B)1molにアクリル酸を5mol反応させた化合物(A7)を得た。また、この化合物は、テトラグリセリンにイソステアリン酸1molを反応させたエステル化物1molに対して、エチレンオキサイド60mol付加させた後、アクリル酸を5mol反応させた化合物である。
【0036】
<比較合成例1>
合成例1と同様の反応器に、テトラグリセリン(平均重合度4のポリグリセリン)1molにエチレンオキサイド20mol付加した化合物200g(0.17mol)、トルエン300g、パラトルエンスルホン酸15g、ハイドロキノン0.5g、アクリル酸147g(2.04mol)仕込み、一定量の空気を吹き込み、かつ撹拌しながらトルエン還流雰囲気まで昇温し、約15時間かけて脱水エステル化反応を行った。これ以降は、合成例1と同様の反応を行い、テトラグリセリン1molにエチレンオキサイド20mol付加した化合物のアクリレート化物(A8)を得た。
【0037】
<比較合成例2>
テトラグリセリン1molにエチレンオキサイド20mol付加した化合物をデカグリセリン(平均重合度10のポリグリセリン)1molにエチレンオキサイド24mol付加した化合物200g(0.11mol)、アクリル酸を190g(2.64mol)に変更した以外は比較合成例1と同様の反応を行い、デカグリセリン1molにエチレンオキサイド24mol付加した化合物のアクリレート化物(A9)を得た。
【0038】
実施例1〜7、比較例1〜4を表1に示すような処方で(数値は重量部を示す。)各成分を混合し、各種組成物を光重合開始剤が溶解し均一になるよう調製し、各種評価を行った。実施例中の評価は、以下の方法で行った。
【0039】
硬化性:調製された組成物を厚さ100μmのポリカーボネート樹脂フィルム上にバーコーターにより塗布し(厚み10μm)、次いで高圧水銀灯(ランプ出力2kw)を平行に配した光源下20cmの位置で照射して硬化させた。硬化するまでの積算光量(mJ/cm2)をウシオ電機(株)製積算光量計UIT−250(受光部365nm)を用いて求めた。また、硬化性以外の評価は、500mJ/cm2の紫外線を照射し硬化させた。
○・・・300mJ/cm2未満で完全に硬化した。
×・・・300mJ/cm2以上で完全に硬化した。
【0040】
防曇性(a)呼気試験:23℃、50%の恒温恒湿室内下で、上記の方法で硬化した塗膜に息を吹きかけ、曇りの状態を目視にて評価した。
○・・・全く曇らない。
×・・・曇りが発生する。
【0041】
防曇性(b)60℃蒸気試験:23℃、50%の恒温恒湿室内下で、上記の方法で硬化した塗膜を、60℃の温水の入ったガラスビーカーの水面から10cm上に1分間固定し、曇りの状態を目視にて評価した。
○・・・1分間全く曇らない。
△・・・30秒以上60秒未満で曇りが発生する。
×・・・0秒以上30秒未満で曇りが発生する。
【0042】
収縮性:上記の方法で硬化した基材の反りを目視にて観察した。
○・・・・基材のポリカーボネートに反りが見られない。
×・・・・基材のポリカーボネートに反りが見られる。
【0043】
密着性:上記の方法で硬化した塗膜をJIS K 5400に記載された碁盤目テープ法により測定した。
○・・・・100升中、全く剥離が見られない。
×・・・・100升中、剥離が見られる。

【0044】
【表1】

【0045】
表1の評価結果から、本発明の活性エネルギー線硬化型コーティング用樹脂組成物は、紫外線等の活性エネルギー線を照射して塗膜を作成する際、かつ基材を収縮させることなく、硬化速度が速く、得られた塗膜は防曇性を有し、密着性も良好である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明のポリグリセリンアルキレンオキサイド付加物に脂肪酸(または低級アルコールの脂肪酸エステル)及び(メタ)アクリル酸(または低級アルコールの(メタ)アクリル酸エステル)を反応して得られるエステル化物、あるいは、ポリグリセリン脂肪酸エステルにアルキレンオキサイドを付加反応した後に(メタ)アクリル酸(または低級アルコールの(メタ)アクリル酸エステル)を反応して得られるエステル化物(いずれのエステル化物も分子構造中に脂肪酸基と(メタ)アクリロイル基を必ず含む)を含有した樹脂組成物を用い、活性エネルギー線を照射してコーティング塗膜を作成することにより、防曇性能を有しかつ、硬化の際、硬化速度が速く、基材フィルムの反りや塗膜のひび割れを発生させず、密着性も良好な塗膜が得られる。この事から、プラスチック、ガラスなどの基材表面に防曇性能や密着性能などを合わせ持った塗膜を得ることができるコーティング剤として利用することが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリグリセリン(平均重合度2〜20)とアルキレンオキサイド(炭素数2〜4)を反応して得られるポリグリセリンアルキレンオキサイド付加物(付加モル数50〜200)に脂肪酸(炭素数8〜32)(または低級アルコールの脂肪酸エステル)及び(メタ)アクリル酸(または低級アルコールの(メタ)アクリル酸エステル)を反応して得られるエステル化物(分子構造中に脂肪酸基と(メタ)アクリロイル基を必ず含む)を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型コーティング用樹脂組成物。
【請求項2】
ポリグリセリン(平均重合度2〜20)と脂肪酸(炭素数8〜32)(または低級アルコールの脂肪酸エステル)を反応して得られるポリグリセリン脂肪酸エステルにアルキレンオキサイド(炭素数2〜4)を付加反応(付加モル数50〜200)した後に(メタ)アクリル酸(または低級アルコールの(メタ)アクリル酸エステル)を反応して得られるエステル化物(分子構造中に脂肪酸基と(メタ)アクリロイル基を必ず含む)を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型コーティング用樹脂組成物。
【請求項3】
光重合開始剤を含有する請求項1記載の活性エネルギー線硬化型コーティング用樹脂組成物。

【公開番号】特開2010−280765(P2010−280765A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133474(P2009−133474)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(390028897)阪本薬品工業株式会社 (140)
【Fターム(参考)】