説明

活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物とその用途

【課題】硬度が良好で、伸び、柔軟性、触感の点でも良好であり、耐指紋視認性及び指紋拭取り性に優れた活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物(A)及びポリテトラメチレングリコール骨格部分の数平均分子量が600以上であるポリテトラメチレングリコール骨格を有する(メタ)アクリレート化合物(B)及び平均粒径が10μm以下であるシルクパウダー(C)を含有する組成物であって、該組成物の硬化膜のオレイン酸との接触角が25度以下である活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック表面の耐擦傷性、硬度、柔軟性、さらさらとした触感、耐指紋視認性及び指紋拭取り性に優れ、上塗りの可能な活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物に関する。更に詳しくは、ポリエステル、アクリル、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート等のプラスチック表面に塗布するのに適し、耐擦傷性、硬度に優れた活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物に関し、特に触感と耐指紋視認性及び指紋拭取り性に優れていることからタッチパネルディスプレイに用いるフィルムやインモールド成形で製造されるスイッチパネルのハードコートに適した活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。耐指紋視認性とは指紋押捺痕の見えにくさのことであり、指紋拭取り性とは付着した指紋押捺痕の拭取り易さのことである。
【0002】
更に、本発明は、成形品表面部分の曲面部においてクラックを発生させずに前記特性を有する成形品を得ることのできるハードコートフィルムを与える。特に成形性にも優れていることから、インモールド成形に際して用いるフィルムのハードコートにも適する。
【背景技術】
【0003】
現在、プラスチックは自動車業界、家電業界、電気電子業界を初めとして種々の産業で大量に使われている。このようにプラスチックが大量に使われているのは、その加工性に加えて軽量、安価、光学特性が優れている等の理由による。しかしながら、プラスチックはガラス等に比べて柔らかく、表面に傷が付きやすい等の欠点を有している。これらの欠点を改良するために、プラスチック表面にハードコート剤をコーティングする事が一般的な手段として行われている。このハードコート剤としては、シリコーン系、アクリル系、メラミン系等の熱硬化型のハードコート剤が用いられている。この中でも特に、シリコーン系ハードコート剤は硬度が高く品質が優れているため多く用いられているが、硬化時間が長く、高価であり、連続的に加工するフィルムに設けられるハードコートには適しているとは言えない。
【0004】
近年、感光性のアクリル系ハードコート剤が開発され利用されるようになった(特許文献1)。このような感光性ハードコート剤は、紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより直ちに硬化して硬い皮膜を形成するため、加工処理スピードが速く、又、硬度、耐擦傷性等にも優れた性能を持ち、トータルコスト的には安価になるため、今やハードコート剤の主流になっている。特に、ポリエステル等のフィルムの連続加工に使用されている。
感光性ハードコート剤を使用するプラスチックのフィルムとしては、ポリエステルフィルム、アクリルフィルム、ポリカーボネートフィルム、塩化ビニルフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム等であるが、ポリエステルフィルムが種々の優れた特性から最も広く使用されている。このポリエステルフィルムは、例えば、ガラスの飛散防止フィルム、自動車の遮光フィルム、ホワイトボード用表面フィルム、システムキッチン表面防汚フィルム、あるいは、電子材料的にはCRTフラットテレビ、タッチパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、有機ELディスプレイ等の機能性フィルムとして、又、家電製品のボディやスイッチパネル、携帯電話やパソコンの筐体、自動車内装用部品に広く用いられている。
【0005】
更に、プラスチックのフィルム以外ではポリカーボネートやアクリル等のシートや基板にハードコートをしたものが、光ディスクやバックライト周辺の液晶関連部材として使用されている。
【0006】
最近では、ハードコート剤をコーティングした基材には、耐擦傷性というハードコートとしての性能と共にそれ以外の機能性が求められてきている。例えば、フィルムを設けたCRT、LCD、PDP、タッチパネル等の表示体では、反射により表示体画面が見辛くなり目が疲れやすいという問題が生じるため、用途によっては表面反射防止能のあるハードコート処理が必要となっている(特許文献2)。
又、界面活性剤や導電性の金属酸化物を使用して帯電防止機能を付与したハードコートも開発されている(特許文献3)。
【0007】
更に、ハードコートとしての耐擦傷性、硬度といった特性と相反する伸びや柔軟性といった性能がハードコートに求められる場合もある。
【0008】
前記のように例えば、携帯電話やパソコン等の筐体、メーターカバー等の自動車内装材料、AV機器や家電製品の表示パネルやスイッチボタン等の成形加工等の成形加工分野においてもフィルムの使用が増えてきている。一般に、プラスチック製品の成形は金型を使用し射出成形にて行なうが、この製品の表面を加工する方法としてフィルムを金型内面に装着し成形と同時に成形品の表面に貼り付ける方法が提案されており、インモールド成形又はフィルムインサートインジェクション成形等と呼ばれている。即ち、金型にフィルムを挟み、同時に射出成形を行なうことによりフィルムの機能を成形と同時に付与することが可能となる。更に、この装着するフィルムに模様や柄を印刷したり、ハードコートフィルムを使用することによって、成形品への装飾や硬度アップといった美粧性、機能性を付与することもできる。
【0009】
前記ハードコートフィルムを使用する成形には、基材フィルムにハードコートを塗工し、ハードコートフィルムごと一体成形するインモールドラミネーション(IML)がある(特許文献4)。
【0010】
又、射出成形に使用するハードコートは、成形加工されたプラスチック製品の一番表面にあることから、表面硬度はもちろんのこと、質感といった美粧性や成形加工に耐えうる伸び、柔軟性といった性能も必要である。そのため、ハードコート層を基材フィルム上に形成させる場合、硬化(架橋)しているハードコートフィルムを一体成形してしまう方法や、まず、ハードコートフィルムの膜形成のみを行い成形後に硬化(架橋)させる方法等がある。
【0011】
又、前記の各種表示装置、タッチパネル部材、成形品のスイッチボタン等については、さらさらとした触感や表面に指紋が付着しない、付着しにくい機能、所謂、耐指紋性の付与も求められてきている。しかしながら、現状ではさらさらとした触感は顧客の満足するレベルではなく、又、指紋が付着しない機能の付与は知られていない。替わりに指紋が付着しても簡単に拭取れるような性能が求められているのが現状である。
【0012】
さらさらとした触感を出す方法として、例えば、フッ素系材料やシリコーンオイル、脂肪酸エステル等をコーティング組成物中に混合して使用し、滑らかにすることによる試みがある。しかしながら、その表面に触れた際には塗膜との接触面積が大きくなり、さらさらとした触感を感じることはなかった。
【0013】
又、耐指紋性としての指紋拭取り性の向上方法として、例えば、フッ素系材料やシリコーンオイル等をコーティング組成物中に混合して使用し、表面の撥水・撥油性を向上させる方法がある。しかしながら、フッ素やシリコーンは低屈折率成分であるため、それが表面に存在すると指紋との屈折率差が大きくなり、少量付着している指紋でも目立ってしまうという欠点がある。更に、拭き取りが不十分であると、大きい屈折率差に加え、撥水・撥油機能があるために指紋との接触角が高くなり、より指紋が見えやすくなってしまうという欠点もある。
又、現在までに耐指紋視認性に優れたハードコートは知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平9−48934号公報
【特許文献2】特開平9−145903号公報
【特許文献3】特開平10−231444号公報
【特許文献4】特許第3007326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、前記の欠点を改善し、硬度が良好で、伸び、柔軟性の点で良好であり、さらさらとした触感、耐指紋視認性、指紋拭取り性に優れた活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは前記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、特定の化合物を含有する特定の物性範囲の樹脂組成物及びその硬化物が前記課題を解決することを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明は、
(1)分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物(A)、ポリテトラメチレングリコール骨格部分の数平均分子量が600以上であるポリテトラメチレングリコール骨格を有する(メタ)アクリレート化合物(B)及び平均粒径が10μm以下であるシルクパウダー(C)を含有する組成物であって、該組成物の硬化膜のオレイン酸との接触角が25度以下である活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物;
【0017】
(2)更に、光重合開始剤(D)を含有する前記(1)に記載の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物;
(3)一次粒径が0.1μm〜5μmの有機フィラー及び無機フィラーの少なくとも一方を含有する前記(1)又は(2)に記載の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物。
(4)一次粒径が1nm〜200nmのコロイダルシリカ(E)を含有する前記(1)〜(3)に記載の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物;
(5)希釈剤(F)を含有する前記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物;
(6)分子中に1〜2個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル化合物(G)を含有する前記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物;
【0018】
(7)分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物(A)が、活性水素を有する多官能(メタ)アクリレート化合物とポリイソシアネートとを反応させて得られる化合物である前記(1)〜(6)のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物;
(8)ポリテトラメチレングリコール骨格部分の数平均分子量が600以上であるポリテトラメチレングリコール骨格を有する(メタ)アクリレート化合物(B)が、分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物である前記(1)〜(7)のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物;
(9)ポリテトラメチレングリコール骨格部分の数平均分子量が600以上であるポリテトラメチレングリコール骨格を有する(メタ)アクリレート化合物(B)の添加量が、樹脂組成物の固形分100重量%に対して、0.1〜10重量%である前記(1)〜(8)のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物;
【0019】
(10)前記(1)〜(9)のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物の硬化膜を有するフィルム;
(11)前記(1)〜(9)のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物の硬化膜を有する基材;
(12)前記(1)〜(9)のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物の硬化膜を有する表示用部材;
(13)前記(1)〜(9)のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物の硬化膜を有するタッチパネル部材;
【0020】
(14)前記(1)〜(9)のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物の硬化膜を有するタッチパネル用ハードコートフィルム;
(15)前記(1)〜(9)のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物の硬化膜を有するディスプレイ用ハードコートフィルム;
(16)前記(1)〜(9)のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物の硬化膜を有するインモールド成形に使用するハードコートフィルム;
(17)前記(1)〜(9)のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物の硬化膜を有する成形物;
に関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、優れた硬度、耐擦傷性、柔軟性、さらさらとした触感、耐指紋視認性、指紋拭取り性等に優れ、インモールド成形にも使用可能な活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物及びその硬化物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物(A)、ポリテトラメチレングリコール骨格部分の数平均分子量が600以上であるポリテトラメチレングリコール骨格を有する(メタ)アクリレート化合物(B)及び平均粒径が10μm以下であるシルクパウダー(C)を含有する組成物であって、該組成物の硬化膜のオレイン酸との接触角が25度以下である活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物である。以下、本発明について詳細に説明する。
【0023】
本発明の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物に含有される分子中に3個以上、好ましくは3〜12個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物(A)としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン(ECH)変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(EO)変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド(PO)変性グリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、EO変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、シリコーンヘキサ(メタ)アクリレート、3官能以上のエポキシ(メタ)アクリレート類、活性水素を有する多官能(メタ)アクリレートとポリイソシアネートとを反応させて得られる多官能ウレタン(メタ)アクリレート等のポリエステル(メタ)アクリレート又はその他のウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、これらは単独で用いても2種以上混合して用いてもよい。
【0024】
前記の活性水素を有する多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等のペンタエリスリトール類、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等のメチロール類、ビスフェノールAジエポキシアクリレート等のエポキシアクリレート類等が挙げられる。中でも、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートが好ましい。これらの活性水素を有する多官能(メタ)アクリレートは単独で用いても2種以上混合して用いてもよい。
【0025】
前記のポリイソシアネートとしては、鎖状飽和炭化水素、環状飽和炭化水素(脂環式)、芳香族炭化水素で構成されるポリイソシアネートを用いることができる。このようなポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の鎖状飽和炭化水素ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、水添トルエンジイソシアネート等の環状飽和炭化水素(脂環式)ポリイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニレンジイソシアネート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネートが挙げられる。中でも、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。これらポリイソシアネートは単独で用いても2種以上混合して用いてもよい。
【0026】
前記の多官能ウレタン(メタ)アクリレートは、前記の活性水素を有する多官能(メタ)アクリレートとポリイソシアネートとを反応させて得られる。活性水素を有する多官能(メタ)アクリレート中の活性水素基1当量に対し、ポリイソシアネートは、そのイソシアネート基当量として通常0.1〜50当量の範囲、好ましくは0.1〜10当量の範囲である。反応温度は通常30〜150℃、好ましくは50〜100℃の範囲である。反応の終点は、残存イソシアネートを過剰のn−ブチルアミンで反応させ、未反応のn−ブチルアミンを1N塩酸にて逆滴定する方法により算出したポリイソシアネートが0.5重量%以下となった時点とする。
【0027】
反応時間の短縮を目的として触媒を添加してもよい。該触媒としては塩基性触媒又は酸性触媒のいずれかが用いられる。
該塩基性触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、アンモニア等のアミン類、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、ピリジン、ピロール等が挙げられる。
該酸性触媒としては、例えば、ナフテン酸銅、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、トリブトキシアルミニウム、トリチタニウムテトラブトキシド、ジルコニウムテトラブトキシド等の金属塩類、塩化アルミニウム等のルイス酸類、2−エチルヘキサンスズ、オクチルスズトリラウリレート、ジブチルスズジラウリレート、オクチルスズジアセテート等のスズ化合物が挙げられる。
これらの触媒を使用する場合、その添加量はポリイソシアネート100重量部に対して通常0.1重量部〜1重量部程度である。
【0028】
更に、反応に際しては反応中の重合を防止するために重合禁止剤(例えば、メトキノン、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、フェノチアジン等)を使用することが好ましく、その使用量は反応混合物に対して0.01重量%〜1重量%程度、好ましくは0.05重量%〜0.5重量%程度である。反応温度は60〜150℃、好ましくは80〜120℃である。
【0029】
本発明の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物における分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物(A)の含有量は、該樹脂組成物の固形分を100重量%とした場合、通常20.0重量%〜98.9重量%であり、好ましくは45.0重量%〜90.0重量%である。
本発明において固形分とは、活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物から希釈剤(F)と、コロイダルシリカ(E)が溶媒を含有する場合はその溶媒を除いた部分を意味する。
【0030】
本発明の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物に含有されるポリテトラメチレングリコール骨格部分の数平均分子量が600以上であるポリテトラメチレングリコール骨格を有する(メタ)アクリレート化合物(B)としては、例えば、ポリテトラメチレングリコールのポリエステル(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールのエポキシ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールのウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、ポリテトラメチレングリコールのウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。ポリテトラメチレングリコール骨格部分の数平均分子量は、好ましくは600〜10000程度である。
【0031】
該ポリテトラメチレングリコールのポリエステル(メタ)アクリレートや該ポリテトラメチレングリコールのエポキシ(メタ)アクリレートは,市販品でもよく、公知の製造方法又はそれを応用した方法により得られる化合物でもよく、例えば,後記の合成例に示す化合物が挙げられる。
【0032】
該ポリテトラメチレングリコールのウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリテトラメチレングリコール骨格部分の数平均分子量が600以上であるポリテトラメチレングリコールと、ヘキサメチレンジイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート等の有機ポリイソシアネート類と、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の水酸基含有エチレン性不飽和化合物類との反応物が挙げられる。ポリテトラメチレングリコール、有機ポリイソシアネート類、水酸基含有エチレン性不飽和化合物類は、それぞれ単独で用いても2種以上混合して用いてもよい。
又、ポリテトラメチレングリコールと共に、他のポリオール類を使用してもよい。他のポリオール類としては、ポリテトラメチレングリコール以外のポリエーテルポリオール、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートジオール等が挙げられる。
ポリテトラメチレングリコールのウレタン(メタ)アクリレートとして好ましい化合物としては、例えば、分子量が1000〜2000のポリテトラメチレングリコールとイソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチルアクリレートとの反応物(アクリロイル基:2個)等が挙げられる。
【0033】
前記のポリテトラメチレングリコールのウレタン(メタ)アクリレートは、ポリテトラメチレングリコールの水酸基1当量当たり有機ポリイソシアネート類のイソシアネート基を好ましくは1.1〜2.0当量で、好ましくは70〜90℃で反応させ、次いで、この反応物1当量当たり水酸基含有エチレン性不飽和化合物類を1.0〜1.5当量反応させて得ることができる。該ポリテトラメチレングリコールのウレタン(メタ)アクリレートはアクリロイル基が分子の2以上の末端部に結合している化合物が好ましい。
【0034】
本発明の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物におけるポリテトラメチレングリコール骨格部分の数平均分子量が600以上であるポリテトラメチレングリコール骨格を有する(メタ)アクリレート化合物(B)の含有量は、該樹脂組成物の固形分を100重量%とした場合、通常0.1重量%〜10重量%、好ましくは1重量%〜5重量%である。(メタ)アクリレート化合物(B)が少ないと指紋拭取り性が悪くなり、多すぎるとハードコート性が低下する傾向にある。
【0035】
本発明の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物に含有されるシルクパウダー(C)は平均一次粒径が10μm以下である。該シルクパウダーは文献公知の方法で製造することも可能であり、又、市販されているものを用いることもでき、例えば、ながすな繭社製のシルクパウダー等が挙げられる。又、シルクパウダー表面をシランカップリング剤等で処理をして反応性基を持たせたものを使用してもよい。
本発明において一次粒径とは、凝集を崩した時にその粒子が持つもっとも小さな粒径を意味し、BET法の平均粒子径として測定することができる。
前記のシルクパウダー(C)としては、その一次粒径が10μm以下のもの、好ましくは0.1μm〜5μmのものを使用するのがよい。
シルクパウダー(C)の含有量としては、該樹脂組成物の固形分を100重量%とした場合、通常1.0重量%〜10.0重量%であり、好ましくは2.0重量%〜6.0重量%である。
【0036】
本発明の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物には光重合開始剤(D)を含有してもよい。該光重合開始剤(D)としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類、アセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン等のアセトフェノン類、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン等のアントラキノン類、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類、アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類、ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、4,4’−ビスメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド等のホスフィンオキシド類等が挙げられる。又、市場より入手容易なチバ・スペシャリティケミカルズ社製イルガキュア184(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、イルガキュア907(2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン)、BASF社製ルシリンTPO(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド)等が挙げられる。又、これらは単独で用いても2種以上混合して用いてもよい。
【0037】
本発明の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物における光重合開始剤(D)の含有量は、該樹脂組成物の固形分を100重量%とした場合、0重量%〜10重量%程度、好ましくは1重量%〜7重量%程度である。
【0038】
又、前記の光重合開始剤(D)は硬化促進剤と併用することもできる。該硬化促進剤としては、例えば、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、2−メチルアミノエチルベンゾエート、ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、EPA等のアミン類や2−メルカプトベンゾチアゾール等の水素供与体が挙げられる。本発明の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物における該硬化促進剤の含有量は、該樹脂組成物の固形分を100重量%とした場合、0重量%〜5重量%程度である。
【0039】
本発明の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物には一次粒径が1nm〜200nmのコロイダルシリカ(E)を含有してもよい。該コロイダルシリカ(E)は、溶媒に分散させたコロイド溶液として用いても、分散溶媒を含有しない微粉末のシリカとして用いてもよい。該分散溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、エチレングリコール等の多価アルコール類又はその誘導体、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジメチルアセトアミド等のケトン類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類、トルエン、キシレン等の非極性溶媒、2−ヒドロキシエチルアクリレート等のアクリレート類、その他の一般有機溶剤類、水等が使用できる。その使用量はコロイダルシリカ100重量%に対して、通常100重量%〜900重量%である。
【0040】
前記のコロイダルシリカは文献公知の方法で製造することも可能であり、又、市販されているものを用いることもできる。該コロイダルシリカとしては、例えば、日産化学工業社製のオルガノシリカゾルMEK−ST等が挙げられる。
又、シリカ表面をシランカップリング剤等で処理をして反応性基を持たせたものを使用してもよい。
前記のコロイダルシリカ(E)としては、その一次粒径が1nm〜200nmのもの、好ましくは1nm〜100nmのもの、より好ましくは1nm〜50nmのものを使用することができる。特に、1nm〜100nmの場合、透明性が確保され、1nm〜50nmの場合、透明性とヘイズで十分に良好な結果が得られる。
【0041】
本発明の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物に一次粒径が1nm〜200nmのコロイダルシリカ(E)を含有する場合、その含有量は、該樹脂組成物の固形分を100重量%とした場合、分散媒を除いた固形分として1重量%〜70重量%、好ましくは5重量%〜50重量%である。
【0042】
本発明の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物には希釈剤(F)を含有してもよく、例えば、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−ヘプタラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン類、ジオキサン、1,2−ジメトキシメタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン類、フェノール、クレゾール、キシレノール等のフェノール類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、乳酸エチル、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、トルエン、キシレン、ジエチルベンゼン、シクロヘキサン等の炭化水素類、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、モノクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ等の石油系溶剤等の有機溶剤類、2H,3H−テトラフルオロプロパノール等のフッ素系アルコール類、パーフルオロブチルメチルエーテル、パーフルオロブチルエチルエーテル等のフルオロエーテル類、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール等のアルコール類、ケトンとアルコールの両方の性能を兼ね備えたジアセトンアルコール等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上混合して用いてもよい。
【0043】
本発明の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物には分子中に1〜2個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル化合物(G)を含有してもよく、該(メタ)アクリル化合物(G)としては成分(B)以外の化合物であり、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート(例えば、日本化薬(株)製、KAYARAD HX−220、HX−620等)、ビスフェノールAのEO付加物のジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、脂環式(メタ)アクリレート類(トリシクロデカン(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンタン(メタ)アクリレート等)、フェニルグリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルフォリン、水酸基を有する(メタ)アクリレート類(2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等)、エチルカルビトール(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上混合して用いてもよい。
【0044】
本発明の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物における分子中に1〜2個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル化合物(G)の含有量は、該樹脂組成物の固形分を100重量%とした場合、0重量%〜20.0重量%、好ましくは1.0重量%〜10.0重量%である。
【0045】
更に、本発明の本発明の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物には、必要に応じてレベリング剤、消泡剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、酸化防止剤、重合禁止剤、架橋剤、コロイダルシリカ(E)以外の無機微粒子、フィラー等を添加し、それぞれ目的とする機能性を付与することも可能である。
レベリング剤としてはフッ素系化合物、シリコーン系化合物、アクリル系化合物等が挙げられるが、耐指紋視認性を妨げないアクリル系、高沸点溶剤系の使用が好ましい。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物等が挙げられ、光安定化剤としてはヒンダードアミン系化合物、ベンゾエート系化合物等が挙げられ、酸化防止剤としてはフェノール系化合物等が挙げられる。
重合禁止剤としては、メトキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノン等が挙げられ、架橋剤としては、前記ポリイソシアネート類、メラミン化合物等が挙げられる。
無機微粒子としては、アンチモン酸亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛、酸化錫、アンチモンドープ酸化錫、リンドープ酸化錫、インジウムドープ酸化錫等の導電性金属酸化物、酸化チタン、酸化ジルコニウム等の屈折率を調整するための金属酸化物が挙げられる。
フィラーとしては、平均粒径がμmオーダーのシリカやアクリルビーズ、ウレタンビーズ等が挙げられ、塗膜表面に凹凸を付ける目的で使用することができる。
【0046】
本発明の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物は、前記成分(A)、成分(B)、成分(C)、必要に応じて成分(D)、成分(E)、成分(F)、成分(G)及びその他の成分を任意の順序で混合して得られる。こうして得られた本発明の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物は経時的に安定である。
【0047】
本発明の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物を基材フィルム上に、該樹脂組成物の乾燥後の膜厚が通常0.1μm〜50μm、好ましくは1μm〜20μmになるように塗布し、乾燥後、活性エネルギー線を照射して硬化膜を形成させることにより得られるフィルムも本発明に含まれる。本発明の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物を最表層に持ってくることにより、多層コートのフィルムとして使用することもできる。
該基材フィルムとしては特に限定されず、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアクリレート、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリエーテルスルホン、シクロオレフィン系ポリマー等が挙げられる。使用するフィルムとしては、柄や易接着層、下地層を設けたもの、コロナ処理等の表面処理をしたもの、離型処理をしたものであってもよい。
【0048】
該活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物の塗布方法としては、例えば、バーコーター塗工、メイヤーバー塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工、リバースグラビア塗工、マイクログラビア塗工、マイクロリバースグラビアコーター塗工、ダイコーター塗工、ディップ塗工、スピンコート塗工、スプレー塗工等が挙げられる。
本発明の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物を硬化させる活性エネルギー線としては、紫外線、電子線等が挙げられる。
紫外線により硬化させる場合、光源としてはキセノンランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプ等を有する紫外線照射装置が使用され、必要に応じて光量、光源の配置等が調整される。高圧水銀灯を使用する場合、80〜120W/cmのエネルギーを有するランプ1灯に対して搬送速度5〜60m/分で硬化させるのが好ましい。
電子線により硬化させる場合、100〜500eVのエネルギーを有する電子線加速装置を使用するのが好ましく、その際、光重合開始剤(D)は使用しなくてもよい。
【0049】
本発明の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物を硬化して得られた硬化膜のオレイン酸との接触角は25度以下であることが好ましく、23度以下がより好ましい。30度以上あると、付着した指紋押捺痕が見えやすくなってしまう。オレイン酸は指紋押捺痕の成分に近い物質であるので、オレイン酸との接触角が低くなれば指紋押捺痕が見えにくくなると予想される。
【0050】
本発明の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物の硬化膜を有する基材も本発明に含まれる。又、該硬化膜を有する表示用部材、タッチパネル部材も本発明に含まれる。
【0051】
更に、該硬化膜を有するタッチパネル用ハードコートフィルム、ディスプレイ用ハードコートフィルム、インモールド成形に使用するハードコートフィルムも本発明含まれ、該硬化膜を有するタッチパネル、ディスプレイ等の成形物も本発明に含まれる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。又、実施例中、特に断りがない限り部は重量部を示す。
【0053】
合成例1
乾燥容器中にポリテトラメチレングリコール(保土谷化学工業製PTG−2000SN;分子量1993)を1395.1部、イソホロンジイソシアネートを311.2部入れ、攪拌しながら徐々に80℃まで昇温し、80℃にて反応させた。イソシアネートの割合が6.7〜7.2%の範囲に入ったら、2−ヒドロキシエチルアクリレートを167.4部、メトキノンを0.5部添加し、再度80℃まで徐々に昇温し、5時間攪拌しながら反応させ、次いでジブチルスズラウリレートを0.15部添加して、イソシアネートの割合が0.1%以下となり反応がほぼ定量的に終了するまで更に反応を進めた。合成されたポリテトラメチレングリコールのウレタンアクリレートはアクリロイル基を2個有していた。
【0054】
合成例2
乾燥容器中にポリテトラメチレングリコール(保土谷化学工業製PTG−850SN;分子量850)を595.0部、イソホロンジイソシアネートを311.2部入れ、攪拌しながら徐々に80℃まで昇温し、80℃にて反応させた。イソシアネートの割合が、6.7〜7.2%の範囲に入ったら、2−ヒドロキシエチルアクリレートを167.4部、メトキノンを0.5部添加し、再度80℃まで徐々に昇温し、5時間攪拌しながら反応させ、次いでジブチルスズラウリレートを0.15部添加して、イソシアネートの割合が0.1%以下となり反応がほぼ定量的に終了するまで更に反応を進めた。合成されたポリテトラメチレングリコールのウレタンアクリレートはアクリロイル基を2個有していた。
【0055】
合成例3
乾燥容器中にポリテトラメチレングリコール(保土谷化学工業製PTG−2900;分子量2900)を2030.0部、イソホロンジイソシアネートを311.2部入れ、攪拌しながら徐々に80℃まで昇温し、80℃にて反応させた。イソシアネートの割合が6.7〜7.2%の範囲に入ったら、2−ヒドロキシエチルアクリレートを167.4部、メトキノンを0.5部添加し、再度80℃まで徐々に昇温し、5時間攪拌しながら反応させ、次いでジブチルスズラウリレートを0.15部添加して、イソシアネートの割合が0.1%以下となり反応がほぼ定量的に終了するまで更に反応を進めた。合成されたポリテトラメチレングリコールのウレタンアクリレートはアクリロイル基を2個有していた。
【0056】
合成例4
乾燥容器中にポリテトラメチレングリコール(保土谷化学工業製PTG−2000SN;分子量1993)を1395.1部、ヘキサメチレンジイソシアネートを235.2部入れ、攪拌しながら徐々に80℃まで昇温し、80℃にて反応させた。イソシアネートの割合が6.7〜7.2%の範囲に入ったら、ペンタエリスリトールトリアクリレートを425.7部、メトキノンを0.5部添加し、再度80℃まで徐々に昇温し、5時間攪拌しながら反応させ、次いでジブチルスズラウリレートを0.15部添加して、イソシアネートの割合が0.1%以下となり反応がほぼ定量的に終了するまで更に反応を進めた。合成されたポリテトラメチレングリコールのウレタンアクリレートはアクリロイル基を6個有していた。
【0057】
合成例5
乾燥容器中にポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル(四日市合成社製エポゴーセー;分子量650)を1300.0部、アクリル酸を146.9部、TMAC(テトラメチルアンモニウムクロリド)を0.5部、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)を0.5部添加し、徐々に98℃まで昇温し、98℃にて反応させた。合成されたポリテトラメチレングリコールのエポキシアクリレートはエポキシ当量15800、酸価0.73でアクリロイル基を2個有していた。
【0058】
合成例6
ポリテトラメチレングリコール(保土谷化学工業製PTG−2000SN;分子量1993)を1000.0部、アクリル酸を86.4部、フェノチアジンを0.4部、硫酸を0.8部、n−ヘプタン1000mlをフラスコに仕込み、窒素で希釈した空気を吹き込みながら留出液を静置層で水層とヘプタン層に分離し、ヘプタン層をフラスコに戻しつつ反応させた。留出水の量がほぼ理論量に達した時点で反応を中止し、反応液を水中に滴下して生成物を析出させ、濾過してポリテトラメチレングリコールのジアクリレートを得た。
【0059】
合成例7
乾燥容器中にポリプロピレングリコール(保土谷化学工業製PPG−2000SN;分子量2000)を1395.1部、ヘキサメチレンジイソシアネートを235.2部入れ、攪拌しながら徐々に80℃まで昇温し、80℃にて反応させた。イソシアネートの割合が6.7〜7.2%の範囲に入ったら、2−ヒドロキシプロピルアクリレートを184.7部、メトキノンを0.5部添加し、再度80℃まで徐々に昇温し、5時間攪拌しながら反応させ、次いでジブチルスズラウリレートを0.15部添加して、イソシアネートの割合が0.1%以下となり反応がほぼ定量的に終了するまで更に反応を進めた。合成されたポリプロピレングリコールのウレタンアクリレートはアクリロイル基を2個有していた。
【0060】
実施例1〜12及び比較例1〜4
各構成成分を表1に示す割合で配合した樹脂組成物を易接着処理済みPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(100μm)上にバーコーターにて塗布し、約80〜100℃で乾燥後、紫外線照射器(ハリソン東芝ライティング株式会社:KUV−40151−1XKA−DM)により高圧水銀灯:80W/cm;ランプ高さ:10cm;コンベアスピード:5m/分×3パス(エネルギー:約200mW/cm、約360mJ/cm)の条件で硬化させ、膜厚約4μmのハードコートフィルムを得た。尚、表1において単位は「部」を表す。
【0061】
表1


【0062】
(注)
※1:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート/ヘキサアクリレート混合物
※2:ペンタエリスリトールトリアクリレート/テトラアクリレート混合物
※3:日本化薬社製KAYARAD DPHA−40H(10官能ウレタンアクリレート)
※4:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
※5:日産化学工業社製オルガノシリカゾル、固形分30%、MEK(メチルエチルケトン)分散液(平均粒子径:10nm〜15nm)
※6:日産化学工業社製オルガノシリカゾル、固形分30%、MIBK(メチルイソブチルケトン)分散液(平均粒子径:10nm〜15nm)
※7:テトラヒドロフルフリルアクリレート
※8:ながすな繭社製のシルクパウダー
【0063】
実施例1〜12、比較例1〜4で得られたハードコートフィルムにつき、下記項目を評価し、その結果を表2に示した。
【0064】
(鉛筆硬度)
JIS K 5600に従い、鉛筆引っかき試験機を用いて、前記組成の塗工フィルムの鉛筆硬度を測定した。詳しくは、測定する硬化皮膜を有するポリエステルフィルム上に、鉛筆を45度の角度でセットし、上から750gの荷重をかけて5mm程度引っかき、5回中4回以上傷の付かなかった鉛筆の硬さで表した。
【0065】
(耐指紋性視認)
後記の人口指紋液を50〜100μmピッチの樹脂型にて前記組成の塗工フィルムに押印し、その印痕を目視で確認した。
○:ほとんど見えない
△:やや見える
×:はっきり見える
【0066】
(指紋拭取り性)
(耐指紋視認性)の印痕を200g/cmの荷重をかけて10往復させて拭取り、痕の残り状況を目視で確認した。
○:痕残りなし
△:やや残りあり
×:残り目立つ
【0067】
<人口指紋液>
以下の組成比にて調製して使用した。
オレイン酸: 6.1%
オリーブ油:29.3%
ホホバ油: 47.5%
スクアレン:17.1%
【0068】
(接触角)
自動接触角計(協和界面科学株式会社製DM500)を用いて、前記組成の塗工フィルムの接触角を測定した。詳しくは、測定する硬化皮膜を有するポリエステルフィルム上に、オレイン酸を滴下して測定した。
【0069】
(触感)
塗工フィルム上を指でなぞり、そのさらさらとした滑り易さを評価した。
◎;さらさらとしてスムーズに面上を滑らせられる。
○;面上をほぼ問題なく滑らせられる。
△;指がときどき閊える。
×;指が閊える。
【0070】
(延伸率)
引張り試験機(株式会社オリエンテック製RTM−250)を使用し、幅10mm×長さ50mmのフィルムを常温で毎分50mmのスピードで延伸して目視でクラックが入った時の延伸率を示した。例えば、75mmでクラックが入ったフィルムの延伸率は(75−50)/50=50%とする。
【0071】
表2

【0072】
表2の結果から明らかなように、シルクパウダーを含有する本発明の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物の硬化皮膜を有するフィルムは、硬度、伸び、耐指紋視認性、指紋拭取り性及び触感のすべての性能が良好であった。比較例1は成分(B)、成分(C)を含まず、耐指紋視認性及び指紋拭取り性、触感が不良であった。比較例2は成分(C)を含まず、耐指紋視認性及び指紋拭取り性が劣り、触感が不良であった。比較例3は骨格部がポリテトラメチレングリコールであるがジ(メタ)アクリロイル基を有しておらず(成分(B)を含まない)、耐指紋視認性及び指紋拭取り性が劣っていた。比較例4は骨格部がポリプロピレングリコールであり(成分(B)を含まない)、耐指紋視認性及び指紋拭取り性がかなり劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物を使用して得られたハードコートフィルムは、高硬度で耐指紋視認性、指紋拭取り性及び触感が良好である。又、該樹脂組成物は延伸率も良好である。従って、本発明の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物はタッチパネルディスプレイに用いるフィルムのハードコートに適し、又、折り曲げ工程のあるような成形に際して用いられるハードコートフィルムの材料として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物(A)、ポリテトラメチレングリコール骨格部分の数平均分子量が600以上であるポリテトラメチレングリコール骨格を有する(メタ)アクリレート化合物(B)及び平均粒径が10μm以下であるシルクパウダー(C)を含有する組成物であって、該組成物の硬化膜のオレイン酸との接触角が25度以下である活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物。
【請求項2】
更に、光重合開始剤(D)を含有する請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物。
【請求項3】
一次粒径が0.1μm〜5μmの有機フィラー及び無機フィラーの少なくとも一方を含有する請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物。
【請求項4】
一次粒径が1nm〜200nmのコロイダルシリカ(E)を含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物。
【請求項5】
希釈剤(F)を含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物。
【請求項6】
分子中に1〜2個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル化合物(G)を含有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物。
【請求項7】
分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物(A)が、活性水素を有する多官能(メタ)アクリレート化合物とポリイソシアネートとを反応させて得られる化合物である請求項1〜5のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物。
【請求項8】
ポリテトラメチレングリコール骨格部分の数平均分子量が600以上であるポリテトラメチレングリコール骨格を有する(メタ)アクリレート化合物(B)が、分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物である請求項1〜6のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物。
【請求項9】
ポリテトラメチレングリコール骨格部分の数平均分子量が600以上であるポリテトラメチレングリコール骨格を有する(メタ)アクリレート化合物(B)の添加量が、樹脂組成物の固形分100重量%に対して、0.1〜10重量%である請求項1〜7のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物の硬化膜を有するフィルム。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物の硬化膜を有する基材。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物の硬化膜を有する表示用部材。
【請求項13】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物の硬化膜を有するタッチパネル部材。
【請求項14】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物の硬化膜を有するタッチパネル用ハードコートフィルム。
【請求項15】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物の硬化膜を有するディスプレイ用ハードコートフィルム。
【請求項16】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物の硬化膜を有するインモールド成形に使用するハードコートフィルム。
【請求項17】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物の硬化膜を有する成形物。

【公開番号】特開2012−7028(P2012−7028A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142361(P2010−142361)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】