説明

活性エネルギー線硬化型塗料組成物

【課題】種々の基材に対して、特にプラスチック基材に対して、硬化膜が耐指紋性、ハードコート性及び透明性に優れる活性エネルギー線硬化型塗料組成物の提供。
【解決手段】(メタ)アクリル基を2個以上有する化合物(A)、フルオロエチレン(b-1)、水酸基含有ビニルエーテル(b-2)及び水酸基含有しないビニルモノマー(b-3)を構成単量体単位とする共重合体(B)及び有機溶剤(C)を含有する活性エネルギー線硬化型塗料組成物。
(A)〜(C)成分の割合としては、(A)及び(B)成分の合計量100重量部に対して、(A)成分:90〜99.9重量部、(B)成分:0.1〜10重量部及び(C)成分:1〜1000重量部が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の基材、特にプラスチック基材に対して、耐指紋性、ハードコート性、透明性を有する硬化膜を形成可能な活性エネルギー線硬化型塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属、ガラス及びプラスチック等の種々の基材に対しては、基材表面を保護したり、美観や意匠性を付与する目的で、塗料組成物を使用して基材上に保護膜を形成する手法が用いられる。
特に、プラスチック基材は、軽量であり、耐衝撃性及び易成形性等に優れているが、表面が傷つきやすく硬度が低いため、そのまま使用すると外観を著しく損なうという欠点がある。このため、プラスチック基材の表面を塗料組成物で塗装し、いわゆるハードコート処理して、ハードコート性(耐擦傷性や鉛筆硬度等)を付与し表面硬度を向上することが求められる。加えてディスプレイやタッチパネル等の光学部材に使用する場合、視認性を確保する観点から指紋、皮脂、汗等の汚れが目立ち難く拭取り易いといった耐指紋性の付与や高精細画像を損なわないため塗膜の透明性を維持することが求められている。
【0003】
耐指紋性を付与する手法として、長鎖アルキル基を含有する化合物を添加し塗膜表面を親油性にすることで指紋脂の接触角が低下することにより、指紋を目立ち難くする手法がある(特許文献1、2)。しかしこれらの硬化物は、耐擦傷性試験でキズがついたり鉛筆硬度が低いなど、十分なハードコート性が得られないものであった。またポリフルオロアルキル基やポリフルオロエーテル基を含有する化合物を添加し塗膜表面を撥水撥油性にすることで指紋脂を弾き(接触角を高く)拭取り易くする手法がある(特許文献3、4、5)。しかしこれらの硬化物についた指紋脂の接触角が大きいので、光が散乱して指紋が白く目立ち易くなるものであった。また粒径の違う金属酸化物微粒子を2種類以上塗料に配合し塗膜表面に凹凸を形成することにより、指との接触面積を減らし指紋が付き難く、目立ち難く、拭取り易くする手法がある(特許文献6、7)。しかしこれらの硬化物はヘイズが大きく透明性を失うため、画像が白身がかり視認性を低下させてしまうものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−353808号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2010−77282号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開1985−49079号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開4556151号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】特開2008−537557号公報(特許請求の範囲)
【特許文献6】特許4464449号公報(特許請求の範囲)
【特許文献7】特開2010−25734(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、種々の基材に対して、特にプラスチック基材に対して、硬化膜が耐指紋性(指紋が目立ち難く且つ拭取り易い)、ハードコート性及び透明性に優れる活性エネルギー線硬化型塗料組成物を見出すため鋭意検討を行った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、多官能(メタ)アクリレート、フルオロエチレンと水酸基含有ビニルエーテルモノマーの重合体である耐指紋性付与剤を含有する組成物が、耐指紋性、ハードコート性及び透明性に優れることを見出し、本発明を完成した。
以下、本発明を詳細に説明する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の組成物によれば、種々の基材に対して、特にプラスチック基材に対して、硬化膜が耐指紋性、ハードコート性、透明性に優れたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、(メタ)アクリル基を2個以上有する化合物(A)〔以下、「(A)成分」という〕、フルオロエチレン(b-1)、水酸基含有ビニルエーテル(b-2)及び水酸基含有しないビニルモノマー(b-3)を構成単量体単位とする共重合体(B)〔以下、「(B)成分」という〕及び有機溶剤(C)〔以下、「(C)成分」という〕を含有する活性エネルギー線硬化型塗料組成物に関する。
以下、それぞれの成分及び組成物の詳細について説明する。
尚、本明細書においては、アクリロイル基又はメタクリロイル基を(メタ)アクリロイル基と表し、又、アクリレート又はメタクリレートを(メタ)アクリレートと表す。
【0009】
1.(A)成分
本発明の(A)成分は、(メタ)アクリル基を2個以上有する化合物である。
(A)成分としては、モノマーでも、オリゴマーでも使用することができる。
(A)成分としては、(メタ)アクリロイル基を2個有する化合物〔以下、「2官能(メタ)アクリレート」という〕及び(メタ)アクリロイル基を3個以上有する化合物〔以下、「3官能以上(メタ)アクリレート」という〕が挙げられる。
【0010】
2官能(メタ)アクリレートにおいて、モノマーの例としては、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールZのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、チオビスフェノールのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールZのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSのジ(メタ)アクリレート、チオビスフェノールのジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリンのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ダイマー酸ジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメチロールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0011】
2官能(メタ)アクリレートにおいて、オリゴマーの例としては、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられ、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。
【0012】
3官能以上(メタ)アクリレートとしては種々の化合物が使用でき、具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのトリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのアルキレンオキサイド付加物のトリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンのトリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド付加物のトリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのトリ、テトラ、ペンタ又はヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのアルキレンオキサイド付加物のトリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ(メタ)アクリレート及びイソシアヌレートのアルキレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
この場合、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0013】
(A)成分としては、ポリイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートの反応物(以下、「ウレタンアダクト」という)が好ましい。
ウレタンアダクトとしては、(メタ)アクリロイル基を2個以上有し、水酸基を1個以上有する(メタ)アクリレート〔以下、「水酸基含有多官能(メタ)アクリレート」という〕とポリイソシアネートとの付加反応物がより好ましい。
【0014】
水酸基含有多官能(メタ)アクリレートとしては、種々の化合物が使用でき、具体的には、イソシアヌレートのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのジ又はトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンのジ又はトリ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールのジ、トリ、テトラ又はペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
この場合、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
又、これらの(メタ)アクリレートは、さらにカプロラクトンにより変性されたものであっても良い。
【0015】
ポリイソシアネートの例としては、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート及びこれらのヌレート型三量体等が挙げられる。
【0016】
ウレタンアダクトの他の例としては、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート型三量体と、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート又はそのカプロラクトン変性物との付加反応等が挙げられる。
この場合、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0017】
(A)成分は、市販されており、具体的には、日本合成化学工業(株)製の紫光シリーズUV−1400B、UV−1700B、UV−6300B、UV−7550B、UV−7600B、UV−7605B、UV−7610B、UV−7620EA、UV−7630B、UV−7640B、UV−6630B、UV−7000B、UV7510B、UV−7461TE、UV−2000B、UV−2010B、UV−2250EA、UV−2750B、DIC(株)製のユニディックシリーズV−4000BA、V−4005、V−4018、V−4025、V−4026、V−4075、V−4200−70、V−4205、V−4260、V−4263、15−829、17−813、17−806、S2−371、新中村化学工業(株)製のU−4HA、U−6HA、U−6LPA、UA−1100H、UA−53H、UA−33H、ダイセルサイテック(株)製のEBECRYLシリーズ204、206、220、264、265、1259、1290K、5129、8201、8210、8301、294/25HD、4820、8405、共栄社化学(株)製のUA−306H、UA−306I、UA−306T、UA−510H、荒川化学工業(株)製のビームセットシリーズ、東亞合成(株)製のOT−1000シリーズ、日立化成ポリマー(株)製のテスラックシリーズ、サートマー社製のCNシリーズ等が挙げられる。
【0018】
(A)成分としては、3官能以上(メタ)アクリレートが、硬化物が高硬度となる点で好ましい。
【0019】
2.(B)成分
(B)成分は、フルオロエチレン(b-1)〔以下、「(b-1)」という〕、水酸基含有ビニルエーテル(b-2)〔以下、「(b-2)」という〕及び水酸基含有しないビニルモノマー(b-3)〔以下、「(b-3)」という〕を構成単量体単位とする共重合体である。
(B)成分は、組成物の硬化物に耐指紋性を付与するための成分である。
(B)成分としては、(b-1)、(b-2)及び単量体(b-3)を構成単量体単位とする共重合体であれば種々の共重合体が使用可能である。
【0020】
(b-1)のフルオロエチレンとしては、種々の化合物が使用できる。具体的な例としては、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン及びフッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン及びペンタフルオロプロピレン等が挙げられる。これらの中でも、クロロトリフルオロエチレンが好ましい。
【0021】
(b-2)のヒドロキシアルキルビニルエーテルとしては、種々の化合物が使用できる。具体的には、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、7−ヒドロキシヘプチルビニルエーテル、8−ヒドロキシオクチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル及びグリシジルビニルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、4−ヒドロキシブチルビニルエーテルが好ましい。
【0022】
(b-3)の水酸基含有しないビニルモノマーとしては、前記(b-1)及び(b-2)と共重合性を有し、ビニル基を有する化合物であれば種々の化合物が使用できる。
(b-3)の具体例としては、アルキルビニルエーテル、ビニルエステル、α−オレフィン及び(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アルキルビニルエーテルとしては、エチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、N−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等が挙げられる。
ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、イソノナン酸ビニル及びp−t−ブチル安息香酸が挙げられる。
これらの中でも、p−t−ブチル安息香酸ビニル及びエチルビニルエーテルが好ましい。
【0023】
(B)成分の分子量としては、数平均分子量で3,000〜30,000が好ましい。
尚、本発明において、数平均分子量とは、ゲル・パーミエーションクロマトグラフィーにより測定した分子量をポリスチレン換算した値を意味する。
【0024】
(B)成分は、水酸基を有する共重合体であり、その水酸基価としては、40〜89mgKOH/gであるものが好ましい。
【0025】
(b-1)、(b-2)、(b-3)の共重合割合としては、(b-1):(b-2):(b-3)=40〜60:1〜30:10〜59(重量比)が好ましい。
【0026】
(B)成分は、構成単量体である(b-1)〜(b-3)を使用し、常法に従い重合して得られたものが使用できる。
重合方法としては、例えば、溶液重合、懸濁重合、塊状重合及び乳化重合等が挙げられる。
【0027】
(B)成分の具体的な例としては、DIC(株)製のフルオネートK−700、K−702、K−703、K−704、K−705、K−707、K−708、旭硝子(株)製のルミフロンシリーズ等が挙げられる。
【0028】
(A)及び(B)成分の割合としては、(A)及び(B)成分の合計量100重量部に対して、(A)成分:90〜99.9重量部で(B)成分:0.1〜10重量部であり、より好ましくは、(A)成分:99.5〜95重量部で(B)成分:0.5〜5重量部である。
(B)成分の割合を0.1重量部以上とすることで、耐指紋性を付与することができ、(B)成分の割合を10重量部以下にすることで、透明性を得ることができる。
【0029】
3.(C)成分
(C)成分は、有機溶剤である。
(C)成分としては、(A)及び(B)成分を溶解することができれば種々の化合物を使用することができる。
【0030】
(C)成分の好ましい具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール及びブタノール等のアルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノエーテル;ダイアセトンアルコール等のアセトンアルコール;ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族化合物;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン;ジブチルエーテル等のエーテル;並びにN−メチルピロリドン等が挙げられる。
(C)成分としては、これら化合物の1種のみを使用しても、2種類以上を組合わせて使用してもよい。
【0031】
(C)成分の割合としては、(A)及び(B)成分の合計量100重量部に対して、1〜1000重量部が好ましく、より好ましくは10〜500重量部、特に好ましくは50〜200重量部である。
(C)成分の含有割合を1〜1000重量部とすることで、組成物を塗工に適当な粘度とすることができ、後記する公知の塗布方法で組成物を塗布することができる。
【0032】
4.活性エネルギー線硬化型塗料組成物
本発明の組成物は、前記(A)〜(C)成分を必須とする活性エネルギー線硬化型塗料組成物に関する。
組成物の製造方法としては、常法に従えば良く、前記必須成分及び必要に応じてその他成分を、攪拌・混合して製造することができる。
【0033】
本発明の組成物の硬化物は、耐指紋性を有するものである。具体的には、オレイン酸に対する接触角が1〜30°を有するものが好ましい。
【0034】
本発明の組成物は、前記(A)〜(C)成分を必須とするものであるが、目的に応じて、光重合開始剤、1個のエチレン性不飽和基を有する化合物、顔料、染料、表面調整剤、紫外線吸収剤、及びポリマー等の種々の成分を配合することができる。
【0035】
本発明の組成物は、活性エネルギー線の照射により硬化する組成物であり、可視光線及び紫外線等を使用する場合には、組成物に光重合開始剤を配合する。尚、電子線により硬化する場合には、光重合開始剤は必ずしも必要ではない。
【0036】
光重合開始剤の具体例としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−〔4−(1−メチルビニル)フェニル〕プロパノン}及び2−ヒドロキシ−1−{4−〔4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル〕フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン等のアセトフェノン系化合物;ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン及び4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルスルファイド等のベンゾフェノン系化合物;メチルベンゾイルフォルメート、オキシフェニル酢酸の2−(2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ)エチルエステル及びオキシフェニル酢酸の2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステル等のα−ケトエステル系化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のフォスフィンオキサイド系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル及びベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン系化合物;チタノセン系化合物;1−〔4−(4−ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル〕−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルフィニル)プロパン−1−オン等のアセトフェノン/ベンゾフェノンハイブリッド系光開始剤;2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−〔4−(フェニルチオ)〕−1,2−オクタンジオン等のオキシムエステル系光重合開始剤;並びにカンファーキノン等が挙げられる。
【0037】
光重合開始剤としては、これら化合物の1種のみを使用しても、2種類以上を組合わせて使用してもよい。
【0038】
光重合開始剤の含有割合としては、(A)及び(B)成分の合計量100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.5〜7重量部、特に好ましくは1〜5重量部である。
光重合開始剤の含有割合を0.1〜10重量部とすることで、組成物が硬化性に優れるものとなり、組成物の硬化膜が耐擦傷性に優れたものとなる。
【0039】
又、組成物の粘度調整や硬度調整の目的で、1個のエチレン性不飽和基を有する化合物を使用することもできる。
1個のエチレン性不飽和基を有する化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸、アクリル酸のマイケル付加型のダイマー、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノールのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、アルキルフェノールのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、パラクミルフェノールのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、オルトフェニルフェノール(メタ)アクリレート、オルトフェニルフェノールのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンメチロール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、N−(2−(メタ)アクリロキシエチル)ヘキサヒドロフタルイミド、N−(2−(メタ)アクリロキシエチル)テトラヒドロフタルイミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等が挙げられる。
【0040】
5.塗装方法
本発明の組成物が適用できる基材としては、種々の材料に適用でき、金属、ガラス及びプラスチック等が挙げられる。
プラスチックの具体例としては、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂及びポリウレタン樹脂等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
本発明の組成物は、特にプラスチック基材に好ましく適用でき、いわゆる耐指紋性が付与されたハードコート剤として使用することができる。
【0041】
本発明の組成物の塗装方法としては、常法に従えば良い。
具体的には、塗料組成物を基材に塗布した後必要であれば乾燥し、活性エネルギー線を照射する方法等が挙げられる。
本発明の塗料組成物の基材への塗布方法としては、バーコート、ロールコート、スピンコート、ディップコート、グラビアコート、フローコート、ナイフコート、ダイコート、キャップコート及びスプレーコート等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0042】
基材に対する組成物の塗装方法及び乾燥後の膜厚は、目的に応じて適宜設定すれば良い。
乾燥温度は、適用する基材が変形等の問題を生じない温度以下であれば特に限定されるものではない。
【0043】
本発明の組成物を硬化させるための活性エネルギー線としては、紫外線、可視光線及び電子線等が挙げられる。
紫外線照射装置としては、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、タングステンランプ、メタルハライドランプ、UV無電極ランプ、LEDランプ等が挙げられる。
電子線照射装置としては、岩崎電気(株)製のアイライトビーム、ウシオ電機(株)製のMini−EB、NHVコーポレーションのキュアトロン等が挙げられる。
照射エネルギーは、活性エネルギー線の種類や配合組成に応じて適宜設定すべきものであるが、例として高圧水銀ランプでUV照射する場合は、UV−A領域の照射エネルギーで100〜5,000mJ/cm2が好ましく、200〜1,000mJ/cm2がより好ましい。
電子線を照射する場合は、30〜300kV、10〜300kGyが好ましい。
【0044】
本発明の組成物の硬化膜は、耐指紋性、ハードコート性、透明性に優れるものであり、本発明の組成物の硬化膜を有する材料は、この特性を生かして種々の用途に使用することができる。
例えば、表示板用前面板、タッチパネル、携帯電話のディスプレイや筐体、液晶テレビ等の前面板、家電製品の筐体、照明器具、眼鏡等の各種レンズが挙げられる。
【実施例】
【0045】
以下に、実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。尚、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
又、以下において「部」とは重量部を意味し、「%」とは重量%を意味する。
【0046】
(実施例1〜実施例5)
表1に示す成分を常法に従い攪拌・混合し、活性エネルギー線硬化型塗料組成物を製造した。
尚、表1の数値は、重量部数を表す。又、表中の略称は下記を意味する。
【0047】
○略称
(A)成分
・M−305:ペンタエリスリトールトリアクリレートとテトラアクリレートの混合物、東亞合成(株)製商品名アロニックスM−400。
・UA:M−305とヘキサメチレンジイソシアネートの反応物であるウレタンアダクト
(B)成分
・K−703:フッ素系樹脂、DIC(株)製商品名フルオネートK−703、有効成分60%、水酸基価68mgKOH/g、(b-1):(b-2):(b-3)=51:15:34(NMR測定、積分強度比より概算(JEOL製JNM−ECA400))。数平均分子量:12000(SEC測定(東ソー製HLC−8120)、PSt換算)。
(C)成分
・MEK:メチルエチルケトン
その他の成分
・Irg−184:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、チバ・ジャパン(株)製光ラジカル重合開始剤、商品名イルガキュア184;。
【0048】
【表1】

【0049】
(比較例1〜比較例5)
表2に示す成分を常法に従い攪拌・混合し、光硬化型塗料組成物を製造した。
尚、表2の数値は、重量部数を表す。又、表中の略称は、前記で定義したもの以外は下記を意味する。
【0050】
○略称
(B)’成分
・RS−72K:フッ素系添加剤、DIC(株)製商品名メガファックRS−72K。
・DAC−HP:フッ素系添加剤、ダイキン工業(株)製商品名オプツールDAC−HP。
【0051】
【表2】

【0052】
表1及び表2に示す組成物を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名ルミラーU35、125μm厚、東レ(株)製)に、乾燥後の塗膜厚さが約5μmとなるようにバーコーターで塗布し、70℃の熱風乾燥機で5分間乾燥した後、紫外線照射又は電子線照射を行って硬化膜を作成した。
紫外線(UV)照射は、アイグラフィックス(株)製紫外線照射機(高圧水銀ランプ)を使用し、ランプ高さを24cm、コンベア速度8.8m/分で3パス照射した。1パス当りの照射エネルギーは、EIT社製のUV POWER PUCKのUV−A領域で、200mJ/cm2であった(合計600mJ/cm2)。又、ピーク照度はUV−A領域で220mW/cm2であった。
電子線(EB)照射は、岩崎電気(株)製電子線照射機を使用し、加速電圧200kV、ビーム電流5.1mA、コンベア速度5.0m/分、線量100kGy、酸素濃度は100ppm以下であった。
得られた硬化膜について、耐指紋性、ハードコート性(耐擦傷性、鉛筆硬度)、透明性及び接触角(水、オレイン酸)を、以下に示す方法で評価した。それらの評価結果を表3に示す。
【0053】
○耐指紋性(目立ち難さ)
塗膜表面に鼻脂を付けた指腹を500g荷重で3秒間押し当て、比較例1で作製した塗膜に付いた指紋と比較して指紋が目立ち難いものを○、指紋が目立ち易いものを×とした。
【0054】
○耐指紋性(指紋拭取り性)
上記により付着した指紋をティシュペーパー(大王製紙(株)製)に500gの荷重をかけ3往復で拭取った。3往復以内で拭取れる場合は○、6往復以内で拭取れる場合は△、7往復以上必要な場合は×とした。
指紋の目立ち難さ、拭取り易さが何れも○と判断されるものを耐指紋性良好とした。
【0055】
○耐擦傷性
耐擦傷性は、日本スチールウール(株)製ボンスター#0000に500g荷重をかけ50往復擦ったときのキズの本数で判定した。キズが0本を◎、1〜3本以下を○、4〜10本を△、11本以上を×とし、3本以下を良好とした。
【0056】
○鉛筆硬度
JIS−K5600−5−4に従い評価した。
【0057】
○透明性
目視にて曇り等の不具合が発生していないか塗膜の外観確認を行った。曇り等の不具合のない場合を○、ある場合を×とした。
【0058】
○接触角測定
Dataphysics OCAシステム(英弘精機(株)製)を使用し、塗膜表面に水とオレイン酸をそれぞれ10μl滴下し30秒後の接触角を常温で測定した。
【0059】
【表3】

【0060】
実施例1〜5の組成物は硬化物表面が親油性であり、指紋脂を濡れ広げ光の散乱を抑制することにより指紋が目立ち難く、拭取り易いことから良好な耐指紋性が得られると同時にハードコート性、透明性に優れるものであった。
これに対して、(B)成分を含まない比較例1の組成物は、硬化物の指紋拭取り性が悪かった。(B)成分に代え撥水撥油性のフッ素系添加剤(B)'を含む比較例2、3の組成物は、硬化物表面に付いた指紋が目立ち易かった。(B)成分の添加量を15部に増やした比較例4は、耐擦傷性と透明性が悪化した。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の活性エネルギー線硬化型塗料組成物は、金属、ガラス及びプラスチック等の種々の基材の塗装に好適に使用することができ、特に、耐指紋性が付与されたプラスチック基材用のハードコート材として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル基を2個以上有する化合物(A)、フルオロエチレン(b-1)、水酸基含有ビニルエーテル(b-2)及び水酸基含有しないビニルモノマー(b-3)を構成単量体単位とする共重合体(B)及び有機溶剤(C)を含有する活性エネルギー線硬化型塗料組成物。
【請求項2】
前記(A)及び(B)成分の合計量100重量部に対して、(A)〜(C)成分を下記の割合で含有する請求項1記載の活性エネルギー線硬化型塗料組成物。
(A)成分:90〜99.9重量部
(B)成分:0.1〜10重量部
(C)成分:1〜1000重量部
【請求項3】
前記(A)成分が、(メタ)アクリル基を3個以上有する化合物を含む請求項1又は請求項2記載の活性エネルギー線硬化型塗料組成物。
【請求項4】
前記(B)成分が、水酸基価が40〜89mgKOH/gである請求項1〜請求項3記載の活性エネルギー線硬化型塗料組成物。
【請求項5】
前記(B)成分の数平均分子量が3,000〜30,000である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型塗料組成物。
【請求項6】
前記(B)成分のフルオロエチレンがクロロトリフルオロエチレンである請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型塗料組成物。
【請求項7】
前記(B)成分が、フルオロエチレン(b-1)と水酸基含有ビニルエーテル(b-2)と水酸基含有しないビニルモノマー(b-3)の共重合割合が、重量比で(b-1):(b-2):(b-3)=40〜60:1〜30:10〜59とする共重合体である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型塗料組成物。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の組成物の硬化膜。
【請求項9】
硬化物のオレイン酸に対する接触角が1〜30°である請求項8記載の硬化膜。
【請求項10】
請求項7又は請求項8に記載の硬化膜を有する物品。

【公開番号】特開2013−1714(P2013−1714A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130616(P2011−130616)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】