説明

活性エネルギー線硬化型帯電防止性樹脂組成物

【課題】 得られる硬化物が帯電防止性、硬化物の透明性および高温高湿試験後の透明性に優れる活性エネルギー線硬化型帯電防止性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】 (メタ)アクリロイル基を含有する3級アミン塩(A1)と、(メタ)アクリロイル基を含有しない酸性化合物(a0)と(メタ)アクリロイル基を含有しないアミン(b2)から構成されるアミン塩(A2)、アミン塩骨格を含有せず(メタ)アクリロイル基を含有する化合物(B)、並びに光重合開始剤(C)を必須成分として含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型帯電防止性樹脂組成物を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線で硬化する光学レンズおよび光学レンズ用シートまたはフィルムとして有用な活性エネルギー線硬化型帯電防止性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、液晶ディスプレイ(LCD)やプラズマディスプレイ(PDP)等に代表されるフラットパネルディスプレイ(FPD)は、パソコンやテレビ、携帯電話まで多くの電子機器に不可欠なものとなっており、FPDを構成する数多くの光学用材料の需要も大きく伸びている。また、近年パネルサイズの大型化やデバイスの高精細化が進み、それに対応する各種光学レンズ用材料の開発も重要となってきている。
しかし、従来の光学レンズ用材料は、体積固有抵抗値が高く、摩擦などによって接触面に容易に静電気を帯びるため、例えば、製造の金型剥離工程において塵埃が付着しやすく、生産性に影響を与えるという問題があった。
ますますパネルサイズの大型化が進んでいくと考えられ、従って、生産性の観点から、これまで以上に帯電防止性能を兼ね備えた光学レンズ用材料が望まれている。
【0003】
帯電防止性を付与する対策として、長鎖脂肪族カルボン酸のナトリウム塩や4級アンモニウム塩からなる帯電防止剤を含有させる方法(例えば非特許文献1)、カルボン酸を含有する(メタ)アクリルモノマーの4級アンモニウム塩のような反応性帯電防止剤を含有させる方法(例えば特許文献1)、無機の導電性フィラーを含有させる方法(例えば特許文献2)などが提案されている。
【0004】
しかしながら、非特許文献1の方法では、活性エネルギー線硬化樹脂との相溶性が悪く透明性が確保できず、また高温高湿試験で帯電防止剤が硬化物表面へブリードアウトすることによる白化の問題がある。
また反応性界面活性剤を使用する特許文献1の方法では、添加量が少ないと十分な帯電防止性が発現せず、反対に添加量が多いと相溶性が悪く透明性が確保できないという問題がある。
無機の導電性フィラーを含有させる特許文献2の方法は、硬化物の透明性を損ない、コストが高くなる等の問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-179727号公報
【特許文献2】特開平10−235807号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「界面活性剤入門」〔2007年三洋化成工業株式会社発行、藤本武彦著〕、297頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、表面固有抵抗値が低いため帯電防止性に優れ、かつ、硬化直後の透明性が優れていることはもちろん、長期の高温、高湿度の雰囲気下でも帯電防止剤が硬化物表面へブリードアウトしないため白化が起こらず、透明性に優れた硬化物を与える樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、(メタ)アクリロイル基を含有する3級アミン塩(A1)と、(メタ)アクリロイル基を含有しない酸性化合物(a0)と(メタ)アクリロイル基を含有しないアミン(b2)から構成されるアミン塩(A2)、アミン塩骨格を含有せず(メタ)アクリロイル基を含有する化合物(B)、並びに光重合開始剤(C)を必須成分として含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型帯電防止性樹脂組成物;並びにこの活性エネルギー線硬化型帯電防止性樹脂組成物が硬化されてなる硬化物を用いた光学レンズ、光学レンズ用シートまたはフィルム;である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の活性エネルギー線硬化型帯電防止性樹脂組成物は、表面固有抵抗値が低いため帯電防止性能が高く、また、帯電防止剤と活性エネルギー線硬化樹脂との相溶性が良いため、硬化物の透明性に優れる。
さらに、(メタ)アクリロイル基を含有する3級アミン塩と(メタ)アクリロイル基を含有しないアミン塩の併用により、硬化物表面へのブリードアウトが起こらず、長期耐湿熱性に優れているため、光学用材料として長期間使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の帯電防止性樹脂組成物は、特定の化学構造を有し(メタ)アクリロイル基を含有する3級アミン塩(A1)、特定の化学構造を有するアミン塩(A2)、アミン塩骨格を含有せず(メタ)アクリロイル基を含有する化合物(B)、および光重合開始剤(C)の4成分を必須成分とする。
【0011】
本発明の活性エネルギー線硬化型帯電防止性樹脂組成物における第1の必須成分である (メタ)アクリロイル基を含有する3級アミン塩(A1)としては、(メタ)アクリロイル基を含有しない酸性化合物(a0)と(メタ)アクリロイル基を1個含有する3級アミン(b1)から構成される(メタ)アクリロイル基を1個含有する3級アミン塩(A11)、(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個含有する酸性化合物(a1)と(メタ)アクリロイル基を含有しない3級アミン(b0)から構成される(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個含有する3級アミン塩(A12)、(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個含有する酸性化合物(a1)と(メタ)アクリロイル基を1個含有する3級アミン(b1)から構成される(メタ)アクリロイル基を2個以上含有する3級アミン塩(A13)のいずれか、およびこれらの2種以上の混合物が好ましい。
【0012】
ここで、(メタ)アクリロイル基を1個含有する3級アミン塩(A11)は、(メタ)アクリロイル基を含有しない酸性化合物(a0)と(メタ)アクリロイル基を1個含有する3級アミン(b1)から構成され、(メタ)アクリロイル基を1個のみ含有する。
【0013】
(メタ)アクリロイル基を含有しない酸性化合物(a0)は、分子内に(メタ)アクリロイル基を含有せず、かつ分子内にカルボキシル基、スルホ基、リン酸基などの酸性基を含有する酸性化合物であり、例えば安息香酸、アジピン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、2−エチルヘキシルアシッドフォスフェート、イソオクチルアシッドフォスフェート等が挙げられる。
【0014】
(メタ)アクリロイル基を1個含有する3級アミン(b1)としては、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレート、N−イソプロピルアクリルアミド等が挙げられる。
これらのうち、長期の高温、高湿度雰囲気下での透明性の観点から好ましいのはN,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレートである。
【0015】
3級アミン塩(A11)は、前記の酸性化合物(a0)と3級アミン(b1)を中和反応させることにより合成される。
3級アミン塩(A11)としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸とN,N−ジメチルアミノエチルアクリレートの塩、パラトルエンスルホン酸とN,N−ジメチルアミノエチルアクリレートの塩、安息香酸とN,N−ジメチルアミノエチルアクリレートの塩等が挙げられる。
【0016】
(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個含有する3級アミン塩(A12)は、(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個含有する酸性化合物(a1)と(メタ)アクリロイル基を含有しない3級アミン(b0)から構成され、分子内に(メタ)アクリロイル基を1個以上含有する。
【0017】
(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個含有する酸性化合物(a1)は、分子内に(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個含有し、かつ分子内にカルボキシル基、スルホ基、リン酸基などの酸性基を含有する酸性化合物であり、例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート等が挙げられる。
【0018】
(メタ)アクリロイル基を含有しない3級アミン(b0)としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、および後述する(メタ)アクリロイル基を含有しないアミン(b2)のうちの環状アミジン等が挙げられる。
【0019】
3級アミン塩(A12)は、前記の酸性化合物(a1)と3級アミン(b0)を中和反応させることにより合成される。
3級アミン塩(A12)としては、例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸と後述するDBUの塩、2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェートと後述するDBNの塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸と1−エチル−3−メチルイミダゾリウムの塩等が挙げられる。
【0020】
(メタ)アクリロイル基を2個以上含有する3級アミン塩(A13)は、前述の(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個含有する酸性化合物(a1)と、前述の(メタ)アクリロイル基を1個含有する3級アミン(b1)から構成され、分子内に(メタ)アクリロイル基を2個以上含有する。
構成要素の酸性化合物(a1)と3級アミン(b1)は(A11)と(A12)の説明で既に記載したものと同様である。
【0021】
3級アミン塩(A13)は、前記の酸性化合物(a1)と3級アミン(b1)を中和反応させることにより合成される。
3級アミン塩(A13)としては、例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸とN,N−ジメチルアミノエチルアクリレートの塩、2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェートとN,N−ジメチルアミノエチルアクリレートの塩等が挙げられる。
【0022】
これらの3級アミン塩(A1)のうち、帯電防止性および長期の高温、高湿度雰囲気下での透明性の観点から、好ましいのは(A11)および(A12)であり、さらに好ましくは(A11)、特に好ましくはドデシルベンゼンスルホン酸とN,N−ジメチルアミノエチルアクリレートの塩である。
【0023】
本発明の活性エネルギー線硬化型帯電防止性樹脂組成物における第2の必須成分であるアミン塩(A2)は、前述の(メタ)アクリロイル基を含有しない酸性化合物(a0)と分子内に(メタ)アクリロイル基を含有しないアミン(b2)から構成される。従って、アミン塩(A2)自体も分子内に(メタ)アクリロイル基を含有しない。
【0024】
(メタ)アクリロイル基を含有しないアミン(b2)としては、イミダゾール環を有する化合物(b21)、2−イミダゾリン環を有する化合物(b22)、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7(DBU)、および1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)−ノネン−5(DBN)などの環状アミジン、並びに前記の3級アミン(b0)等が挙げられる。
【0025】
イミダゾール環を有する化合物(b21)としては、イミダゾール単環化合物と、ベンゾイミダゾール化合物が挙げられ、具体例は下記のとおりである。
イミダゾール単環化合物: ・イミダゾール同族体:1−メチルイミダゾール、1−フェニルイミダゾール、1−ベンジルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−エチル−2−メチルイミダゾール、1−フェニル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−メチル−2−フェニルイミダゾール、1−メチル−2−ベンジルイミダゾール、1,4−ジメチルイミダゾール、1,5−ジメチルイミダゾール、1,2,4−トリメチルイミダゾール、1,4−ジメチル−2−エチルイミダゾールなど ・オキシアルキル誘導体:1−メチル−2−オキシメチルイミダゾール、1−メチル−2−オキシエチルイミダゾール、1−メチル−4−オキシメチルイミダゾール、1−(β−オキシエチル)−イミダゾール、1−メチル−2−エトキシメチルイミダゾール、1−エトキシメチル−2−メチルイミダゾールなど ・ニトロおよびアミノ誘導体:1−メチル−4(5)−ニトロイミダゾール、1,2−ジメチル−4(5)−ニトロイミダゾール、1,2−ジメチル−5(4)−アミノイミダゾール、1−メチル−4(5)−(2−アミノエチル)イミダゾール、1−(β−アミノエチル)イミダゾールなどベンゾイミダゾール化合物: 1−メチルベンゾイミダゾール、1−メチル−2−ベンジルベンゾイミダゾール、1−メチル−5(6)−ニトロベンゾイミダゾールなど。
【0026】
2−イミダゾリン環を有する化合物(b22)の具体例としては、1−メチルイミダゾリン、1,2−ジメチルイミダゾリン、1,2,4−トリメチルイミダゾリン、1,4−ジメチル−2−エチルイミダゾリン、1−メチル−2−フェニルイミダゾリン、1−メチル−2−ベンジルイミダゾリン、1−メチル−2−オキシエチルイミダゾリン、1−メチル−2−ヘプチルイミダゾリン、1−メチル−2−ウンデシルイミダゾリン、1−メチル−2−ヘプタデシルイミダゾリン、1−(β−オキシエチル)−2−メチルイミダゾリン、1−メチル−2−エトキシメチルイミダゾリン、1−エトキシメチル−2−メチルイミダゾリンなどが挙げられる。
【0027】
(メタ)アクリロイル基を含有しないアミン(b2)のうち、帯電防止性の観点から、イミダゾール環を有する化合物(b21)、2−イミダゾリン環を有する化合物(b22)、DBUおよびDBNから選ばれる1種以上の環状アミジンが好ましく、さらに好ましくはイミダゾール環を有する化合物(b21)およびDBU、特に好ましくはDBUである。
【0028】
構成要素の酸性化合物(a0)は(A11)の説明で既に記載したものと同様である。
【0029】
アミン塩(A2)は、前記の酸性化合物(a0)と、アミン(b2)を中和反応させることにより合成される。
アミン塩(A2)としては、例えば、2−エチルヘキシルアシッドフォスフェートとDBUの塩、ドデシルベンゼンスルホン酸とDBUの塩、ドデシルベンゼンスルホン酸と1−メチル−3−エチルイミダゾールの塩、安息香酸とDBNの塩等が挙げられる。
【0030】
これらのアミン塩(A2)のうち、帯電防止性と密着性の観点から好ましいのはドデシルベンゼンスルホン酸とDBUの塩およびドデシルベンゼンスルホン酸と1−メチル−3−エチルイミダゾールの塩であり、さらに好ましくはドデシルベンゼンスルホン酸とDBUの塩である。
【0031】
本発明の活性エネルギー線硬化型帯電防止性樹脂組成物における(A1)と(A2)の合計の含有量は、(A1)、(A2)、(B)および(C)の合計重量に基づいて、好ましくは1〜10重量%、さらに好ましくは1.5〜5重量%である。
(A1)と(A2)の含有合計量が1重量%以上であると、帯電防止性がより良好であり、樹脂硬化物本来の性能を発揮することができる。また10重量%以下であると、プラスチック基材への密着性がより良好である。
【0032】
本発明の帯電防止性樹脂組成物における(A1)と(A2)との含有比率(A1)/(A2)は、好ましくは20/80〜80/20、さらに好ましくは30/70〜70/30である。
(A1)の比率が20以上であると、高温高湿条件下においてもブリードアウトする恐れが無く、光学レンズの透明性がより良好で、プラスチック基材への密着性がより良好である。また、(A1)の比率が80以下であると、帯電防止性がより良好である。
【0033】
本発明の活性エネルギー線硬化型帯電防止性樹脂組成物における第3の必須成分は、アミン塩骨格を含有せず(メタ)アクリロイル基を含有する化合物(B)である。
【0034】
このようなアミン塩骨格を含有せず(メタ)アクリロイル基を含有する化合物(B)としては、例えば、下記のモノ(メタ)アクリレート(B1)、ジ(メタ)アクリレート(B2)、3〜6価アルコールまたは そのアルキレンオキサイド(以下、AOと略称することがある。)付加物のポリ(メタ)アクリレート(B3)、1個以上の(メタ)アクリロイル基とウレタン結合を有する化合物(B4)、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0035】
モノ(メタ)アクリレート(B1)
具体的には以下の(B11)〜(B14)が挙げられる。
1価アルコール(脂肪族、脂環式、芳香族および芳香脂肪族)の(メタ)アクリレート(B11)
ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、o−、m−、またはp−フェニルフェノールのモノ(メタ)アクリレート、3,3’−ジフェニル−4,4’−ジヒドロキシビフェニルのモノ(メタ)アクリレート、2.5モルのスチレンがフェノールに付加したスチレン化フェノールのモノ(メタ)アクリレートなど
【0036】
1価アルコールのアルキレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート](B12)
上記(B11)における1価アルコールのAO付加物の(メタ)アクリレート、例えばラウリルアルコールのエチレンオキサイド(以下、EOと略称することがある。)2モル付加物の(メタ)アクリレート、ラウリルアルコールのプロピレンオキサイド(以下、POと略称することがある。)3モル付加物の(メタ)アクリレートなど
【0037】
(アルキル)フェノールのAO付加物の(メタ)アクリレート(B13)
フェノールのEO1モル付加物の(メタ)アクリレート、フェノールのEO2モル付加物の(メタ)アクリレート、トリブロモフェノールのEO1モル付加物の(メタ)アクリレート、ノニルフェノールのEO1モル付加物の(メタ)アクリレート、o−、m−、またはp−フェニルフェノールのAO付加物のモノ(メタ)アクリレート、3,3’−ジフェニル−4,4’−ジヒドロキシビフェニルのAO付加物のモノ(メタ)アクリレート、2.5モルのスチレンがフェノールに付加したスチレン化フェノールのAO付加物のモノ(メタ)アクリレート、3モルのスチレンがフェノールに付加したスチレン化フェノールのAO付加物のモノ(メタ)アクリレートなど
【0038】
アクリルアミドおよびアクリロイルモルホリン(B14)
ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミドおよびアクリロイルモルホリンなど
【0039】
これらのうち、好ましいのは、アルキルフェノールのAO付加物の(メタ)アクリレート(B13)であり、さらに好ましいのは、o−、m−、またはp−フェニルフェノールのAO付加物のモノ(メタ)アクリレート、3,3’−ジフェニル−4,4’−ジヒドロキシビフェニルのAO付加物のモノ(メタ)アクリレート、2.5モルのスチレンがフェノールに付加したスチレン化フェノールのAO付加物のモノ(メタ)アクリレート、3モルのスチレンがフェノールに付加したスチレン化フェノールのAO付加物のモノ(メタ)アクリレート)である。
【0040】
ジ(メタ)アクリレート(B2)
具体的には以下の(B21)〜(B24)が挙げられる。
ビスフェノールAのAO付加物のジ(メタ)アクリレートおよびビスフェノールFのAO付加物のジ(メタ)アクリレート(B21)
ビスフェノールFのEO4モル付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのEO10モル付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのEO30モル付加物のジ(メタ)アクリレート)、3,3’−ジフェニル−4,4’−ジヒドロキシビフェニルのジ(メタ)アクリレート、3,3’−ジフェニル−4,4’−ジヒドロキシビフェニルのAO付加物のジ(メタ)アクリレートなど;
ポリオキシアルキレンジ(メタ)アクリレート(B22)
ポリエチレングリコール(Mn400)、ポリプロピレングリコール(Mn200)およびポリテトラメチレングリコール(Mn650)の各ジ(メタ)アクリレートなど;
脂肪族2価アルコールのジ(メタ)アクリレート(B23)
ネオペンチルグリコールのジ(メタ)アクリレートおよび1,6−ヘキサンジオールのジ(メタ)アクリレートなど;
脂環含有2価アルコールのジ(メタ)アクリレート(B24)
ジメチロールトリシクロデカンのジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールのジ(メタ)アクリレートおよび水素化ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレートなど
【0041】
これらのうち、好ましいのは、(B21)および(B24)、さらに好ましくは(B21)、特に好ましくは、ビスフェノールAのAO付加物のジ(メタ)アクリレートおよびビスフェノールFのAO付加物のジ(メタ)アクリレート、3,3’−ジフェニル−4,4’−ジヒドロキシビフェニルのジ(メタ)アクリレート、3,3’−ジフェニル−4,4’−ジヒドロキシビフェニルのAO付加物のジ(メタ)アクリレートである。
【0042】
3〜6価アルコールおよびそのAO付加物のポリ(メタ)アクリレート(B3)
具体的には以下の(B31)と(B32)が挙げられる。
3〜6価アルコールのポリ(メタ)アクリレート(B31)
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンのトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのヘキサ(メタ)アクリレートなど;
3〜6価アルコールのAO付加物のポリ(メタ)アクリレート(B32)
トリメチロールプロパンのEO3モルとPO3モル付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのEO20モル付加物のトリ(メタ)アクリレート、グリセリンのEO3モルとPO3モル付加物のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのEO4モル付加物のテトラ(メタ)アクリレートなど
【0043】
これらのうち、好ましいのは3〜6価アルコールのAO付加物のポリ(メタ)アクリレート(B32)であり、さらに好ましいのは、トリメチロールプロパンのEO3モルとPO3モル付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのEO20モル付加物のトリ(メタ)アクリレート、グリセリンのEO3モルとPO3モル付加物のトリ(メタ)アクリレートである。
【0044】
1個以上の(メタ)アクリロイル基とウレタン結合を有する化合物(B4)
(B4)としては、例えば有機イソシアネート(Ba)とポリオール(Bb)、および水酸基含有(メタ)アクリレート(Bc)の反応により合成される。
【0045】
有機イソシアネート(Ba)は、芳香族イソシアネート(Ba1)、脂肪族イソシアネート(Ba2)、脂環式イソシアネート(Ba3)、芳香脂肪族イソシアネート(Ba4)、およびこれらの(Ba1)〜(Ba4)のイソシアヌレート化物(Ba5)などが挙げられる。これらは2種類以上組み合わせてもよい。
【0046】
芳香族イソシアネート(Ba1)としては、芳香族ジイソシアネートと3官能以上の芳香族ポリイソシアネートが挙げられる。
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、1,3−または1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、4, 4’−または2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、m−およびp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニ ル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンジイソシアネート、m−およびp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネートが挙げられる。
3官能以上の芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば粗製TDI、粗製MDI(ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート)、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート等が挙げられる。
【0047】
脂肪族イソシアネート(Ba2)としては、脂肪族ジイソシアネートと3官能以上の脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えばエチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−または2,4,4 −トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、2,6−ジイソシアナトエチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネートが挙げられる。
3官能以上の脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタンおよび1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート等が挙げられる。
【0048】
脂環式イソシアネート(Ba3)としては、脂環式ジイソシアネートと3官能以上の脂環式ポリイソシアネートが挙げられる。
脂環式ジイソシアネートとしては、例えばイソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,4−または2,6−メチルシクロヘキサンジイソシアネート(水添TDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキシレン−1,2−ジカルボキシレートおよび2,5−または2,6−ノルボルナンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート(DDI);が挙げられる。
3官能以上の脂環式ポリイソシアネートとしては、例えばビシクロヘプタントリイソシアネート等が挙げられる。
【0049】
芳香脂肪族イソシアネート(Ba4)としては、例えば、m−またはp−キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジエチルベンゼンジイソシアネートおよびα,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等が挙げられる。
【0050】
ポリオール(Bb)には、脂肪族2価アルコール(Bb1)、脂環式骨格を有する2価アルコール(Bb2)、芳香脂肪族2価アルコール(Bb3)、これら(Bb1)〜(Bb3)のアルキレンオキサイド1〜50モル付加物(Bb4)等が挙げられる。また、これらは2種類以上組み合わせてもよい。
【0051】
脂肪族2価アルコール(Bb1)としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチルペンタンジオールおよびドデカンジオール等が挙げられる。
脂環式骨格を有する2価アルコール(Bb2)としては1,3−および1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
芳香脂肪族2価アルコール(Bb3)としてはキシリレングリコール、ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等が挙げられる。
【0052】
水酸基含有(メタ)アクリレート(Bc)としては、例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート[2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなど]、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート[ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなど]、アルキロール(メタ)アクリルアミド[N−メチロール(メタ)アクリルアミドなど]などが挙げられる。
【0053】
有機イソシアネート(Ba)とポリオール(Bb)、および水酸基含有(メタ)アクリレート(Bc)との反応におけるNCO/OH当量比は特に限定されないが、貯蔵安定性の観点から好ましくは1/0.5〜1/10、さらに好ましくは1/0.7〜1/5、とくに好ましくは1/1〜1/2である。
【0054】
原料の有機イソシアネート(Ba)とポリオール(Bb)、および水酸基含有(メタ)アクリレート(Bc)とを反応させて、1個以上の(メタ)アクリロイル基とウレタン結合を有する化合物(B4)の製造においては、ウレタン化触媒を用いてもよい。
ウレタン化触媒には、金属化合物(有機ビスマス化合物、有機スズ化合物、有機チタン化合物等)および4級アンモニウム塩が含まれる。
【0055】
これらのアミン塩骨格を含有せず(メタ)アクリロイル基を含有する化合物(B)の中で好ましいものは、硬化物に傷がついた場合の回復性の点から、1個以上の(メタ)アクリロイル基とウレタン結合を有する化合物(B4)であり、(B4)を用いる場合の含有量は、(B)の重量に基づいて、硬化性の観点から、好ましくは5〜50重量%、さらに好ましくは10〜45重量%である。
【0056】
本発明の活性エネルギー線硬化型帯電防止性樹脂組成物における(B)の含有量は、(A1)、(A2)、(B)および(C)の合計重量に基づいて、硬化性の観点から、好ましくは80.0〜98.7重量%、さらに好ましくは90.0〜98.0重量%である。
【0057】
本発明の活性エネルギー線硬化型帯電防止性樹脂組成物における第4の必須成分である光重合開始剤(C)としては、ヒドロキシベンゾイル系化合物(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインアルキルエーテル等)、ベンゾイルホルメート系化合物(メチルベンゾイルホルメート等、チオキサントン系化合物(イソプロピルチオキサントン等)、ベンゾフェノン系化合物(ベンゾフェノン等)、リン系化合物(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等)、ケタール系化合物(ベンジルジメチルケタール等)、1,3αアミノアルキルフェノン系化合物(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン等)、オキシムエステル系化合物(1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1(O−アセチルオキシム))等があげられる。
【0058】
これらの光重合開始剤(C)のうち、硬化物の着色防止の観点から好ましいのは2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよび2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドである。
【0059】
本発明の活性エネルギー線硬化型帯電防止性樹脂組成物における光重合開始剤(C)の含有量は、(A1)、(A2)、(B)および(C)の合計重量に基づいて、硬化性および硬化物の着色の観点から、好ましくは0.3〜10重量%、さらに好ましくは0.5〜8重量%である。
【0060】
本発明における硬化物の表面固有抵抗値は、本発明の帯電防止性樹脂組成物を後述する方法で活性エネルギー線により硬化したフィルムを、JIS−K6911に準じて20℃、65%相対湿度雰囲気下で測定したものであり、好ましくは1×1014Ω以下、さらに好ましくは1×1013Ω以下である。
【0061】
また、本発明の活性エネルギー線硬化型帯電防止性樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で必要により種々の添加剤(D)を含有させてもよい。
添加剤には、可塑剤、有機溶剤、分散剤、消泡剤、チクソトロピー性付与剤(増粘剤)、スリップ剤、酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤および紫外線吸収剤が含まれる。
本発明の帯電防止性樹脂組成物における添加剤(D)の合計含有量は、(A1)、(A2)、(B)および(C)の合計重量に対して、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは0.5〜15重量%である。
【0062】
本発明の帯電防止性樹脂組成物を用いた成形体の製造方法は、特に限定されないが、例えば次の方法で塗工、成形することができる。すなわち、本発明の帯電防止性樹脂組成物を予め20〜50℃に温調し、成形体形状(例えば光学レンズ形状)が得られる金型(型温は好ましくは20〜50℃、さらに好ましくは25〜40℃)にディスペンサー等を用いて、硬化後の厚みが50〜150μmとなるように塗工(または充填)し、塗膜上から透明基材(透明フィルムを含む)を空気が入らないように加圧積層し、さらに該透明基材上から後述の活性エネルギー線を照射して該塗膜を硬化させた後に、型から離型し成形体(レンズシート)を得る。
【0063】
透明基材(透明フィルムを含む)としては、メチルメタクリレート(共)重合物、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリシクロオレフィン等の樹脂からなるものが挙げられる。
【0064】
本発明における活性エネルギー線としては、活性光線及び電子線等が挙げられる。
本発明において、活性光線とは250nm〜830nmの波長を有する光線を意味する。
本発明の帯電防止性樹脂組成物を活性エネルギー線により硬化させる場合は、種々の活性エネルギー線照射装置[例えば、紫外線照射装置[型番「VPS/I600」、フュージョンUVシステムズ(株)製]を使用できる。使用するランプとしては、例えば高圧水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。活性エネルギー線の照射量(mJ/cm2)は、組成物の硬化性および硬化物の可撓性の観点から好ましくは10〜10,000、さらに好ましくは100〜5,000である。
【実施例】
【0065】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
【0066】
製造例1
フラスコにドデシルベンゼンスルホン酸(a0−1)100部を入れ、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート(b1−1)125部を加えて1時間攪拌し、(メタ)アクリロイル基を1個含有する3級アミン塩(A11−1)を得た。
【0067】
製造例2
フラスコに2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(a1−1)557部を入れ、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7[商品名「DBU」サンアプロ(株)製](b0−1)443部を加えて1時間攪拌し、(メタ)アクリロイル基を1個含有する3級アミン塩(A12−1)を得た。
【0068】
製造例3
フラスコに2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(a1−1)557部を入れ、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート(b1−1)443部を加えて1時間攪拌し、(メタ)アクリロイル基を2個含有する3級アミン塩(A13−1)を得た。
【0069】
製造例4
攪拌機、コンデンサー、温度計、滴下ポンプを備えたフラスコに安息香酸(a0−2)100部入れ、40℃まで昇温した後、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(b0−2)のモノメチル炭酸塩のメタノール70%溶液(合成方法は特開2001−316372号公報記載の方法に従った。)218部を3時間かけて滴下し、50℃で1時間熟成した。その後、メタノールを減圧除去し、(メタ)アクリロイル基を含有しないアミン塩(A2−1)を得た。
【0070】
製造例5
フラスコにドデシルベンゼンスルホン酸(a0−1)100部を入れ、DBU(b0−1)125部を加えて1時間攪拌し、(メタ)アクリロイル基を含有しないアミン塩(A2−2)を得た。
【0071】
製造例6
撹拌装置および温度計を取り付けたガラス製の反応容器に、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2モル付加物[ニューポールBP−2P、三洋化成工業(株)製]364部、キシリレンジイソシアネート[タケネート500、三井武田ケミカル(株)製]を393部、ジブチルチンジラウレート1.0部仕込み、80℃で6時間反応させた。
ウレタン化反応の終点はイソシアネート含量で規定し、イソシアネート含量が11.6%以下になったのを確認した後、2−ヒドロキシエチルアクリレート[商品名:ライトエステルHOA、共栄社化学(株)製]を243部加え、75℃で3時間反応した。ウレタン化反応の終点はイソシアネート含量で規定し、イソシアネート含量が0.1%以下になったのを確認した後、60℃に冷却し、ウレタンアクリレート(B−1)を得た。
【0072】
製造例7
撹拌装置および温度計を取り付けたガラス製の反応容器に、ビスフェノールAのエチレンオキサイド10モル付加物[商品名:ニューポール BPE−100、三洋化成工業(株)製]540部、ヘキサメチレンジイソシアネート[商品名:デュラネート50M、旭化成ケミカルズ(株)製]272部、およびウレタン化触媒としてビスマストリ(2−エチルヘキサノエート)(2−エチルヘキサン酸50%溶液)[商品名:ネオスタンU−600、日東化成(株)製]1.0部仕込み、80℃で3時間反応させた。
ウレタン化反応の終点はイソシアネート含量で規定し、イソシアネート含量が8.40%以下になったのを確認した後、2−ヒドロキシエチルアクリレート188部を加え、75℃で3時間反応した。ウレタン化反応の終点はイソシアネート含量で規定し、イソシアネート含量が0.1%以下になったのを確認した後、60℃に冷却し、ウレタンアクリレート(B−2)を得た。
【0073】
製造例8
撹拌および温度調節機能の付いたステンレス製オートクレーブに、o−フェニルフェノール[商品名:OPP、三光(株)製]659部、水酸化カリウム0.5部を投入し、反応系内を窒素で置換した後、減圧下(0.002MPa)、120℃にて1時間脱水を行った。次いでエチレンオキサイド341部を150℃にて、ゲージ圧が0.1〜0.3MPaとなるように導入し、o−フェニルフェノールのエチレンオキサイド2モル付加物を得た。
撹拌装置および温度計を取り付けたガラス製の反応容器に、上記o−フェニルフェノールのエチレンオキサイド2モル付加物249部、トルエン333部、パラトルエンスルホン酸2部を投入し、均一化した。ここにアクリル酸83部を投入した後、110℃まで昇温した後、12時間反応を行った。さらに、減圧下で6時間反応し、o−フェニルフェノールのアクリレートのトルエン溶液を得た。これに10%水酸化ナトリウム溶液を333部入れ、遠心分離し、さらに溶剤留去して、o−フェニルフェノールのエチレンオキサイド2モル付加物のモノアクリレート(B−4)を得た。
【0074】
実施例1〜8および比較例1〜6
表1に記載の各成分と配合量に従って、一括で配合し、ディスパーサーで均一になるまで混合攪拌し、実施例1〜8および比較例1〜6の帯電防止性樹脂組成物を得た。
【0075】
【表1】

【0076】
なお、表1中に記載した化合物の記号は、以下の化合物を表す。
(B−3):o−フェニルフェノールのEO1モル付加物のモノアクリレート[商品名「A−LEN−10」新中村化学(株)製]
(B−5):フェノキシエチルアクリレート[商品名「ライトアクリレートPO−A」、共栄社化学(株)製]
(B−6):ビスフェノールAのEO10モル付加物のジアクリレート[商品名「ニューフロンティアBPE−10」、第一工業製薬(株)製]
(B−7):アクリロイルモルホリン[商品名「ACMO」、興人(株)製]
(B−8):トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート[商品名「GX−8430」、第一工業製薬(株)製]
(B−9):ポリエチレングリコールジアクリレート[平均分子量400、商品名「PE−400」、第一工業製薬(株)製]
(B−10):ペンタエリスリトールテトラアクリレート[商品名「ライトアクリレートPE−4A」、共栄社化学(株)製]
【0077】
(C−1):1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[商品名「イルガキュア184」BASF社製]
(C−2):2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド[商品名「ダロキュアーTPO」、BASF社製]
(D−1):(メタ)アクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン系スリップ剤[商品名「BYK−UV3500」ビックケミー・ジャパン(株)製]
(D−2):エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド変性ポリジメチルシロキサン系スリップ剤[商品名「BYK−UV3510」ビックケミー・ジャパン(株)製]
(D−3):芳香族縮合リン酸エステル系可塑剤[商品名「CR−741」、大八化学工業(株)製]
(D−4):ヒンダードフェノール系酸化防止剤[商品名「イルガノックス1010」、BASF社製]
(D−5):トリアジン系紫外線吸収剤[商品名「チヌビン400」、BASF社製]
(D−6):アンチモン酸亜鉛のメタノ−ル/イソプロパノールゾル[セルナックスCX−Z300IM:日産化学工業(株)製]
【0078】
本発明および比較のための帯電防止性樹脂組成物の表面固有抵抗値、硬化物の全光線透過率、高温高湿試験後の全光線透過率を下記の方法で測定した。
その結果を表1に示す。
【0079】
<表面固有抵抗値>
活性エネルギー線硬化型帯電防止性樹脂組成物を、厚さ40μmでガラス板に上に塗布した後に、ポリエステルフィルム(商品名 コスモシャインA4300−150μm:東洋紡(株)製)をかぶせて、1000mJ/cm2の紫外線照射し光硬化した。その後、PETフィルムと光硬化樹脂をガラス板より離型し、樹脂フィルムを得た。
上記樹脂フィルムを20℃、65%相対湿度雰囲気下でデジタル超絶縁/微少電流計(DSM−8103/SME−8310:日置電機(株)製)を用いて表面固有抵抗値の測定を行った。
【0080】
以下の判定基準により評価した。
○:表面固有抵抗値が1.0×1014Ω以下
×:表面固有抵抗値が1.0×1014Ωを超える
【0081】
<テストピースの作成>
樹脂組成物をガラス板の片面に厚さが100μmになるようにアプリケーターで塗布した後、厚さ100μmのポリエステルフィルムを樹脂塗布面に貼り合わせ、ローラーを上から転がして空気を押し出した。
紫外線照射装置により、ポリエステルフィルム面側から紫外線を1000mJ/cm2照射して、硬化させた。PETフィルムに密着した硬化物をガラス板から剥離し、テストピースを作成した。
【0082】
<硬化物の透明性(全光線透過率)>
上記テストピースをJIS−K7105に準拠し、全光線透過率測定装置[商品名「haze−garddual」、BYK ガードナー(株)製]を用いて全光線透過率(%)を測定した。
【0083】
<高温高湿試験後の透明性(全光線透過率)>
上記テストピースを65℃、相対湿度95%の条件下で100時間静置し、さらに23℃、相対湿度50%の雰囲気下で3時間静置した後、JIS−K7105に準拠し、全光線透過率測定装置を用いて全光線透過率(%)を測定した。
【0084】
表1の結果から、本発明の活性エネルギー線硬化型帯電防止性樹脂組成物を硬化させてなる硬化物(硬化フィルム)は帯電防止性、硬化時の透明性および高温高湿試験後の透明性に優れることがわかる。
一方、(メタ)アクリロイル基を有さないアミン塩(A2)を使用しない比較例1、比較例2および比較例3は、表面固有抵抗値が高くなり、帯電防止性が悪い。また、(メタ)アクリロイル基を有する3級アミン塩(A1)を使用しない比較例4および比較例5は高温高湿試験後の透明性が悪い。
なお、導電性フィラーとしてアンチモン酸亜鉛のメタノ−ル/イソプロパノールゾルを添加した比較例6は硬化時の透明性および高温高湿試験後の透明性が悪い。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の活性エネルギー線硬化型帯電防止性樹脂組成物が硬化された硬化物は、帯電防止性、透明性および高温高湿試験後の透明性が優れているため、光学部材、電気・電子部材としても有用である。
また、本発明の帯電防止性樹脂組成物が硬化された硬化物を用いた光学部品は、プラスチックレンズ(プリズムレンズ、レンチキュラーレンズ、マイクロレンズ、フレネルレンズ、視野角向上レンズ等)、光学補償フィルム、位相差フィルム、プリズム、光ファイバー、フレキシブルプリント配線用ソルダーレジスト、メッキレジスト、多層プリント配線板用層間絶縁膜、感光性光導波路として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリロイル基を含有する3級アミン塩(A1)と、(メタ)アクリロイル基を含有しない酸性化合物(a0)と(メタ)アクリロイル基を含有しないアミン(b2)から構成されるアミン塩(A2)、アミン塩骨格を含有せず(メタ)アクリロイル基を含有する化合物(B)、並びに光重合開始剤(C)を必須成分として含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型帯電防止性樹脂組成物。
【請求項2】
(メタ)アクリロイル基を含有する3級アミン塩(A1)が、下記の(A11)、(A12)および(A13)からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の活性エネルギー線硬化型帯電防止性樹脂組成物。
(A11):(メタ)アクリロイル基を含有しない酸性化合物(a0)と(メタ)アクリロイル基を1個含有する3級アミン(b1)から構成される3級アミン塩
(A12):(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個含有する酸性化合物(a1)と(メタ)アクリロイル基を含有しない3級アミン(b0)から構成される3級アミン塩
(A13):(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個含有する酸性化合物(a1)と(メタ)アクリロイル基を1個含有する3級アミン(b1)から構成される3級アミン塩
【請求項3】
(メタ)アクリロイル基を含有しないアミン(b2)が、イミダゾール環を有する化合物(b21)、2−イミダゾリン環を有する化合物(b22)、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7および1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)−ノネン−5からなる群より選ばれる1種以上の環状アミジンである請求項1または2記載の帯電防止性樹脂組成物。
【請求項4】
(メタ)アクリロイル基を1個含有する3級アミン(b1)が、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートまたはN,N−ジメチルアミノプロピルアクリレートである請求項2または3記載の帯電防止性樹脂組成物。
【請求項5】
(A1)、(A2)、(B)および(C)の合計重量に基づいて、(A1)と(A2)の合計の含有量が1〜10重量%である請求項1〜4いずれか記載の帯電防止性樹脂組成物。
【請求項6】
該3級アミン塩(A1)と該アミン塩(A2)との含有比率(A1)/(A2)が20/80〜80/20である請求項1〜5いずれか記載の帯電防止性樹脂組成物。
【請求項7】
活性エネルギー線照射による硬化物の20℃、65%相対湿度雰囲気下での表面固有抵抗値が1×1014Ω以下である請求項1〜6いずれか記載の帯電防止性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7いずれか記載の活性エネルギー線硬化型帯電防止性樹脂組成物が硬化されてなる硬化物を用いた光学レンズ、光学レンズ用シートまたはフィルム。

【公開番号】特開2013−64127(P2013−64127A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−191295(P2012−191295)
【出願日】平成24年8月31日(2012.8.31)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】