説明

活性エネルギー線硬化型帯電防止性組成物および光学フィルム

【課題】濁りや分離がないなど相溶性が良好であり、かつ、帯電防止性や耐擦傷性、硬度に優れる硬化被膜を形成可能な活性エネルギー線硬化型帯電防止性組成物を提供すること。
【解決手段】イミダゾリウム系カチオン種(a1)および非フッ素系アニオン種(a2)からなるイオン液体(A)、ならびに、分子内に少なくとも3個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物からなり、かつ水酸基価が30mgKOH/g以下であるポリ(メタ)アクリレート類(B)が、溶解度パラメータ値(SP)が10〜15のアルコール類(c1)を含む有機溶剤(C)に溶解してなる、活性エネルギー線硬化型帯電防止性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型帯電防止性組成物および該組成物からなる硬化被膜をハードコート層とする光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイ等の表示部を保護するために使用される光学フィルムは通常、その表面に、帯電防止性に優れ且つ耐擦傷性や硬度を有する硬化被膜(ハードコート層)を備えており、そのような硬化被膜は、紫外線や電子線の照射により瞬時に硬化する活性エネルギー線硬化型組成物によって形成する。
【0003】
活性エネルギー線硬化型組成物としては、一般的に、ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートやジトリメチロールプロパンポリ(メタ)アクリレート等の、分子内に複数の(メタ)アクリロイル基を有するポリ(メタ)アクリレート類をメチルエチルケトン等の有機溶剤に溶解させたものが使用されており、更に種々の帯電防止剤を添加することにより目的とする組成物が得られる。
【0004】
帯電防止剤としては、例えば分子内に四級アンモニウム塩基構造を有する共重合体が知られているが(特許文献1を参照)、湿度依存性が強く、硬化被膜の帯電防止性が経時的に低下したり、低湿度条件で帯電防止性が発現し難かったりする等の問題がある。また、四級アンモニウム塩基は親水性の官能基であるため、該共重合体は前記したポリ(メタ)アクリレート類と相溶し難く、得られる組成物に濁りや分離が生じ易い問題もあった。
【0005】
湿度依存性が小さい帯電防止剤としては、例えばポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)やポリアニリン等の縮合系ポリマーが知られているが、色調が強いためハードコート層が着色してしまい、光学フィルムの用途が制限される等の問題があった。
【0006】
他方、アンチモン酸亜鉛微粒子等の導電性フィラーが使用されることもあるが、硬化被膜の透明性や硬度に悪影響が及ぶことがある他、可視光に由来する着色が生じることもあった。
【0007】
そこで斯界では、従来の帯電防止剤に代えてイオン液体が使用されることがあり、例えばイミダゾリウム系カチオン種とフッ素系ないし非フッ素系のカウンターアニオン種からなるものが知られている。しかし、イオン液体は極性物質であるため非極性化合物であるポリ(メタ)アクリレート類とは一般に相溶し難く、前記した所望の性能(帯電防止性、耐擦傷性、硬度、透明性等)を有する硬化被膜を与える組成物を設計するのが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−73305号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、濁りや分離がないなど相溶性が良好であり、かつ、帯電防止性や耐擦傷性、硬度に優れる硬化被膜を形成可能な活性エネルギー線硬化型帯電防止性組成物を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、ポリ(メタ)アクリレート類、イオン液体、及び有機溶剤の相互の親和性を最適化することにより前記課題を解決し得る組成物が得られると考え、鋭意検討を重ねた結果、所定のカチオン種及びアニオン種からなるイオン液体、所定水酸基価のポリ(メタ)アクリレート類、及び所定の溶解度パラメータ値(SP)を有するアルコール系有機溶剤を夫々選択することにより、目的とする活性エネルギー線硬化型帯電防止性組成物を完成した。
【0011】

すなわち本発明は、イミダゾリウム系カチオン種(a1)および非フッ素系アニオン種(a2)からなるイオン液体(A)、ならびに、分子内に少なくとも3個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物からなり、かつ水酸基価が30mgKOH/g以下であるポリ(メタ)アクリレート類(B)が、溶解度パラメータ値(SP)が10〜15のアルコール類(c1)を含む有機溶剤(C)に溶解してなる、活性エネルギー線硬化型帯電防止性組成物;当該活性エネルギー線硬化型帯電防止性組成物を基材フィルムの少なくとも片面に塗工し、硬化させることにより得られる光学フィルム、
【発明の効果】
【0012】
本発明の組成物は透明であり、帯電防止性や硬度、耐擦傷性、透明性に優れた硬化被膜を得ることができる。特に、帯電防止性については湿度依存性が小さいという利点がある。
【0013】
本発明の光学フィルムは、そうした硬化被膜をハードコート層として備えており、各種用途、特にフラットパネルディスプレイ等の表示部を保護するための光学フィルム積層体の部材として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の活性エネルギー線硬化型帯電防止性組成物(以下、単に組成物と略すことがある)は、イミダゾリウム系カチオン種(a1)(以下、(a1)成分という)および非フッ素系アニオン種(a2)(以下、(a2)成分という)からなるイオン液体(A)(以下、(A)成分という)、ならびに、分子内に少なくとも3個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物からなり、かつ水酸基価が30mgKOH/g以下であるポリ(メタ)アクリレート類(B)(以下、(B)成分という)が、溶解度パラメータ値(SP)が10〜15のアルコール類(c1)(以下、(c1)成分という)を含む有機溶剤(C)(以下、(C)成分という)に溶解してなるものである。
【0015】
(A)成分は常温で液体の溶融塩であり、(C)成分に溶解し、かつ(B)成分と相溶するため、硬化被膜の特に帯電防止性が良好になる。(A)成分をなす(a1)成分としては、各種公知のイミダゾリウム系カチオン種が使用でき、相溶性及び帯電防止性の観点より、特に下記一般式で表されるものが好ましい。
【0016】
【化1】

(式中、Rは水素又は炭素数1〜3のアルキル基を、Rは炭素数1〜5のアルキル基を、Rは水素又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
【0017】
(a2)成分としては、分子内にフッ素原子を有しないアニオン種であれば各種公知のものを使用できる。具体的には、特に相溶性及び帯電防止性の観点より、RSO、(Rは炭素数1〜3のアルキル基を表す。)、HSO、AlClおよびSCNからなる群より選ばれる1種が好ましい。
【0018】
(B)成分としては、分子内に少なくとも3個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物からなり、かつ水酸基価が30mgKOH/g以下であるポリ(メタ)アクリレート類であれば、各種公知のものを特に制限なく使用できる。水酸基価は、(A)成分との相溶性を確保し、かつ、硬化被膜の帯電防止性や耐擦傷性、硬度、透明性等をバランスよく発現させる目的で、好ましくは0〜20mgKOH/g程度、いっそう好ましくは5〜15である。(B)成分の具体例としては、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の非変性ポリ(メタ)アクリレート類;該非変性ポリ(メタ)アクリレート類のエトキシ化物、エチレンオキシドやプロピレンオキシド等のアルキレンオキシドによる変性物、および各種イソシアネート化合物によるウレタン変性物といった、前記水酸基価を有する変性ポリ(メタ)アクリレート類が挙げられ、これらは1種を単独で、或いは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0019】
なお、(B)成分と併せ、分子内に1個または2個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートや、水酸基価が30mgKOH/gを超えるポリ(メタ)アクリレート類(以下、(B’)成分という)を使用できる。その具体例としては、例えば、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは1種を単独で、或いは2種以上を組み合わせることができる。(B’)成分の使用量は、(B)成分に対して通常は0〜50重量%程度、好ましくは0〜30重量%である。
【0020】
(C)成分をなす(c1)成分としては、溶解度パラメータ値(SP)が10〜15のアルコール類であれば各種公知のものを特に制限なく使用でき、例えば、炭素数2〜5程度の脂肪族モノアルコールおよび/またはポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテルが好適である。溶解性パラメータ(SP)は、(A)成分と(B)成分を溶解し、かつ、硬化被膜の帯電防止性や硬度、耐溶剤性、透明性等をバランスよく発現させる目的で、好ましくは10〜14程度、いっそう好ましくは10〜12である。該脂肪族モノアルコールとしては、例えば、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、ノルマルブタノール、イソブタノール、ターシャリーブタノール等、また、該ポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテルとしては、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノエチエーテル、ポリエチレングリコールモノプロピルエーテル、ポリプロピレングリコールモノプロピルエーテル等が挙げられ、これらは1種を単独で、或いは2種以上を組み合わせて使用できる。また、(C)成分における(c1)成分の含有量は特に限定されないが、通常10〜100重量%程度、好ましくは20〜100重量%である。
【0021】
なお、(C)成分には、ケトン類、エステル類、および芳香族炭化水素類等の非アルコール類(以下、(c2)成分という)を含めてよい。ケトン類としてはメチルエチルケトンやメチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が、エステル類としては酢酸エチルや酢酸ブチル等が、芳香族炭化水素類としてはトルエンやキシレン等が挙げられ、これらは1種を単独で、或いは2種以上を組み合わせて使用できる。その使用量は通常、(C)成分中0〜90重量%程度、好ましくは0〜80重量%である。
【0022】
本発明の組成物には、必要に応じて各種の重合開始剤(以下、(D)成分という)を含めてよい。具体的には、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−シクロヘキシルフェニルケトン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイド、エチル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィネート、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、メチルベンゾイルホルメート、4−メチルベンゾフェノン、4−フェニルベンソフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、1−[4−(4−ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル]−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルホニル)プロパン−1−オン等が挙げられ、これらは1種を単独で、或いは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0023】
本発明の組成物は、(A)成分および(B)成分ならびに必要に応じて(D)成分を(C)成分に溶解させることにより得られる。各成分の含有量は特に制限されないが、該組成物の相溶性及び硬化被膜の帯電防止性等を考慮すると、(C)成分100重量部に対して(A)成分が通常3〜30重量部程度、好ましくは3〜20重量部であり、(B)成分が通常70〜97重量部程度、好ましくは80〜97重量部であり、(D)成分が通常0〜15重量部程度、好ましくは0〜10重量部である。
【0024】
こうして得られる組成物には、光増感剤や表面調整剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、無機フィラー、有機フィラー、シランカップリング剤、コロイダルシリカ、接着性改良剤、消泡剤、湿潤剤、防錆剤、安定化剤等の添加剤を配合できる。
【0025】
本発明の光学フィルムは、本発明の組成物を各種基材フィルムの少なくとも片面に塗工し、活性エネルギー線(紫外線または電子線)を照射して硬化させることにより得られる。
【0026】
基材フィルムとしては、例えば、ポリカーボネートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、エポキシ樹脂フィルム、メラミン樹脂フィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ABS樹脂フィルム、AS樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルム、脂環式ポリオレフィン系樹脂フィルム等が挙げられる。また、厚みも特に限定されないが、通常25〜1000μm程度、好ましくは25〜200μmである。また、基材フィルムにはハードコート層以外の中間層(接着層、離型層、屈折率調整層など)が予め備わっていてよい。
【0027】
塗工方法としては、例えばバーコーター塗工、メイヤーバー塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工、リバースグラビア塗工、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷法等が挙げられる。また、塗工量は特に限定されないが、乾燥後の重量が0.05〜30g/m程度、好ましくは0.1〜20g/m程度になる範囲である。
【0028】
活性エネルギー線としては、紫外線や電子線が挙げられる。紫外線光源としては、キセノンランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプを有する紫外線照射装置が挙げられる。また、光量、光源、搬送速度等の条件は適宜調整すればよく、例えば高圧水銀灯を使用する場合には、光量が通常80〜160W/cm程度、搬送速度が通常5〜50m/分程度である。
【0029】
硬化皮膜の平均膜厚は特に限定されないが、通常0.05〜30μm程度、好ましくは0.1〜20μmである。また、表面抵抗値も特に限定されないが、通常2.0×1011Ω/□未満、好ましくは1.0×10〜1.0×1011Ω/□である。また、鉛筆硬度(JIS K 5400準拠、荷重500g)も限定されないが、通常H以上、好ましくは1〜3Hである。また、ヘイズ値も限定されないが、通常通常0.7以下、好ましくは0.5以下である。
【実施例】
【0030】
以下に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、その技術的範囲はこれら実施例に限定されない。また実施例中、「%」及び「部」は特に断りのない限り「重量%」を意味する。また、「水酸基価」はJISK0070で規定される値である。
【0031】
<活性エネルギー線硬化型帯電防止性組成物の調製>
実施例1
カチオン種を1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、アニオン種をエチルサルフェートとするイオン液体(シグマ・アルドリッチ・ジャパン(株)製)10.0部、ならびにジペンタエリスリトールペンタアクリレートおよびジペンタエリスリトールヘキサアクリレートからなる混合物(商品名「ビームセット700」、荒川化学工業(株)製、水酸基価6mgKOH/g;表1中、ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレートと表記する)90.0部を、ポリプロピレングリコールモノエチルエーテル(商品名「アーコソルブPM」、協和発酵ケミカル(株)製、SP値10.4、以下PGMEという)105.0部に加えてよく混合した。次いで、得られた組成物に1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(商品名「イルガキュアー184」、BASFジャパン(株)製)を5部配合し、良く混合することによって、活性エネルギー線硬化型組成物を調製した。外観は透明であり、濁りや分離等はなかった。
【0032】
実施例2〜10、比較例1〜6
(B)成分及び(C)成分を表1に示す種及び量に変更した他は実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化型組成物を調製した。なお、助溶剤は、(C)成分と予め混合する態様で使用した。また、各組成物はいずれも外観が透明であり、濁りや分離等はなかった。
【0033】
【表1】

【0034】
表1中、(B)成分の商品名は以下の通りである。
ペンタエリスリトールテトラアクリレート…商品名「ビームセット710」、荒川化学工業(株)製
エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート…商品名「NKエステル ATM−4E」、新中村化学工業(株)製
トリメチロールプロパンEO(エチレンオキサイド)変性トリアクリレート…商品名「アロニックスM350」、東亜合成(株)製
トリメチロールプロパントリアクリレート…商品名「ビスコート#295」、大阪有機化学工業(株)製
ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート(OHV=47)…商品名「アロニックスM400」、東亜合成(株)製
ポリペンタエリスリトールポリアクリレート…商品名「ビスコート#802」、大阪有機化学工業(株)製
【0035】
表1中、(C)成分の各記号は以下の意味である。
n−BuOH…ノルマルブタノール
IPA…イソプロパノール
TR…トルエン
MEK…メチルエチルケトン
EA…酢酸エチル
【0036】
比較例7
<帯電防止剤として四級アンモニウム塩基構造含有共重合体を使用した態様>
撹拌装置、冷却管を備えた反応装置に、ヒドロキシエチルメタクリレート130.0部、ε−カプロラクトン1140.0部、オクチル酸スズ1.3部を加え、150℃まで昇温し、6時間保温した後に冷却して、重量平均分子量約5500のポリエステル構造含有単官能ビニルモノマーを得た。その後、撹拌装置、冷却管を備えた反応装置に、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド(DMC)100.0部、前述のポリエステル構造含有単官能ビニルモノマー成分60.0部、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)40部、PGME 800.0部を加え、80℃まで昇温した。次いで2,2´−アゾビス(メチルブチロニトリル)(AMBN)8部、PGME32.0部を加え、重合反応を開始、90℃で6時間保温した後に冷却し、四級アンモニウム塩構造含有ポリマーの溶液(不揮発分20%)を得た。
次いで、該4級アンモニウム塩基含有共重合体25部、ならびにジペンタエリスリトールペンタアクリレートおよびジペンタエリスリトールヘキサアクリレートからなるヒドロキシポリ(メタ)アクリレート(水酸基価6mgKOH/g)95.0部を、PGME 90.0部に加えてよく混合した。次いで、得られた組成物にイルガキュアー184を5.0部配合し、良く混合することによって、活性エネルギー線硬化型組成物を調製した。また、外観は透明であり、濁りや分離等はなかった。
【0037】
比較例8
<帯電防止剤を使用しない態様>
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートおよびジペンタエリスリトールヘキサアクリレートからなるヒドロキシポリ(メタ)アクリレート(水酸基価6mgKOH/g)100.0部を、PGME 105.0部に加えてよく混合した。次いで、得られた組成物にイルガキュアー184を5.0部配合し、良く混合することによって、活性エネルギー線硬化型組成物を調製した。
【0038】
参考例1
<帯電防止剤として縮合系ポリマーを使用した態様>
市販のポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)のエタノール分散液17部(荒川化学工業(株)製)、ならびにジペンタエリスリトールペンタアクリレートおよびジペンタエリスリトールヘキサアクリレートからなるヒドロキシポリ(メタ)アクリレート(水酸基価6mgKOH/g)99.7部を、PGME 88.3部に加えてよく混合した。次いで、得られた組成物にイルガキュアー184を5.0部配合し、良く混合することによって、活性エネルギー線硬化型組成物を調製した。外観は透明であるが、青色に着色していた。濁りや分離等はなかった。
【0039】
<光学フィルムの作製>
実施例1に係る組成物を、100μm厚のポリエステルフィルム(東洋紡績(株)製、商品名「コスモシャインA−4100」)上に、#9バーコーターで塗布し(計算値:膜厚5〜6μm)、80℃で1分乾燥させ、空気中、高圧水銀灯(200mJ/cm)の下を2度通過させることにより光学フィルムを作製した。他の実施例、比較例及び参照例1に係る組成物についても同様にして光学フィルムを作製した。
【0040】
<表面抵抗値>
実施例1に係る光学フィルムの硬化被膜側の表面抵抗を、市販抵抗率計(三菱化学(株)製、製品名「ハイレスタMCP−HT−450」)を用い、JIS K 6911に準じ、印加電圧500V、及び湿度50〜55%の環境下で測定した。また、湿度を25〜30%に変更した他は同様の条件においても表面抵抗を測定した。他の実施例、比較例及び参照例1に係る光学フィルムについても同様にして測定した。結果を表2に示す。
【0041】
<耐擦傷性>
実施例1に係る光学フィルムの硬化皮膜を、スチールウール(10mm×10mm)を底に貼り付けた重りで50回擦り、塗膜外観を基準で目視評価した。他の実施例、比較例及び参照例1に係る光学フィルムについても同様にして評価した。結果を表2に示す。
【0042】
<鉛筆硬度>
実施例1に係る光学フィルムの硬化皮膜を、荷重500gの鉛筆引っかき試験(JIS K 5400準拠)により評価した。他の実施例、比較例及び参照例1に係る光学フィルムについても同様にして評価した。結果を表2に示す。
【0043】
<透明性>
実施例1に係る光学フィルムの全光線透過率値(%)を、村上色彩技術研究所製カラーへイズメーターを用い、JIS K 5400に準拠して測定した。他の実施例、比較例及び参照例1に係る光学フィルムについても同様にして測定した。結果を表2に示す。
【0044】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
イミダゾリウム系カチオン種(a1)および非フッ素系アニオン種(a2)からなるイオン液体(A)、ならびに、分子内に少なくとも3個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物からなり、かつ水酸基価が30mgKOH/g以下であるポリ(メタ)アクリレート類(B)が、溶解度パラメータ値(SP)が10〜15のアルコール類(c1)を含む有機溶剤(C)に溶解してなる、活性エネルギー線硬化型帯電防止性組成物。
【請求項2】
(a1)成分が下記一般式で表される、請求項1の活性エネルギー線硬化型帯電防止性組成物。
【化1】

(式中、Rは水素又は炭素数1〜3のアルキル基を、Rは炭素数1〜5のアルキル基を、Rは水素又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
【請求項3】
(a2)成分がRSO、(Rは炭素数1〜3のアルキル基を表す。)、HSO、AlClおよびSCNからなる群より選ばれる1種である、請求項1または2の活性エネルギー線硬化型帯電防止性組成物。
【請求項4】
(c1)成分が炭素数2〜5の脂肪族モノアルコールおよび/またはポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテルである、請求項1〜3のいずれかの活性エネルギー線硬化型帯電防止性組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの活性エネルギー線硬化型帯電防止性組成物を基材フィルムの少なくとも片面に塗工し、硬化させることにより得られる光学フィルム。


【公開番号】特開2013−23525(P2013−23525A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157641(P2011−157641)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000168414)荒川化学工業株式会社 (301)
【Fターム(参考)】