説明

活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、これを用いたコーティング剤

【課題】 各種プラスチック基材との密着性に優れ、高屈折率、硬度等に優れる硬化物を与える活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、およびこれを用いたコーティング剤を提供すること。
【解決手段】 基ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物を含有するグリコール成分と芳香族カルボン酸成分とを重縮合させて得られるポリエステルエーテルポリオール(a1)の末端にポリイソシアネート(a2)を介して水酸基含有(メタ)アクリレート(a3)を反応させたウレタン(メタ)アクリレート(A)と光重合開始剤(B)を必須成分とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、該活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いたコーティング剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種プラスチック基材、とりわけ、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂等のとの密着性に優れ、高屈折率の硬化物を与える活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、これを用いたコーティング剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、熱硬化型樹脂に比べて硬化速度が速く、生産性の面で優位であるため、近年よく利用されている。ウレタンアクリレートは、原料の種類、配合比率により、用途にあった種々設計が施されるため、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の一成分として、光学部材(プラスチックレンズ、プリズム、光ファイバー等)、電気・電子部材(フレキシブルプリント配線板用ソルダーレジスト 、メッキレジスト 、多層プリント配線板用層間絶縁膜、感光性光導波路等)、シーリング材、接着剤、および紙、プラスチック等のコーティング剤など幅広い分野で使用されている。中でも、ポリエステル変性ウレタンアクリレートはポリエステル樹脂のもつ優れた加工性、耐衝撃性等の特徴を活かした設計が可能であり、木工用や金属素材用等の塗料分野で検討されている。
【0003】
最近、光学部材用途では、光学ディスプレイなどの小型化、薄型化に伴い、樹脂の高屈折率化が求められている。高屈折率化を実現する手段の一つとして、樹脂中の芳香環濃度を高めることが挙げられる。例えば、ビスフェノールA骨格を有するエポキシアクリレートは、その構造ゆえ高屈折率化の実現は可能であるが、各種プラスチック素材への付着性や加工性が不十分であることまた、塗膜が黄変する問題があり、特に光学部材用での使用には限界があった。
【0004】
光学部材用途でのそうした問題点を解決した樹脂組成物として、例えば、芳香族イソシアネートとビスフェノール骨格を有するグリコールを用いたウレタンアクリレートを用いたものや(例えば、特許文献1参照)、フルオレン等の骨格を有するアクリレートモノマーを用いたもの(例えば、特許文献2参照)等が提案されている。これらの樹脂組成物から得られる硬化物は高い屈折率を有し、光学部材に求められる要求性能を概ね満足しうるが、硬化物が硬脆くなりやすく、塗膜の加工性や基材への付着性に関して十分な性能を発現するには至らなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−255464号公報
【特許文献2】特開2010−7004号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
各種プラスチック基材との密着性に優れ、高屈折率、硬度等に優れる硬化物を与える活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、およびこれを用いたコーティング剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、ポリエステル変性ウレタンアクリレートが持つ優れた加工性、耐衝撃性等の特徴に注目し、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、芳香族多価カルボン酸を酸成分の主成分とし、それら芳香族多価カルボン酸、脂肪族多価カルボン酸、およびにビスフェノール誘導体をアルコール成分として共重合させたポリエステルエーテルポリオールを用いたポリエステルエーテル変性ウレタン(メタ)アクリレートを必須成分とする組成物が、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂等の各種プラスチック基材との密着性に優れ、高屈折率、硬度等に優れる硬化物を提供できることを見出し、発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物を含有するグリコール成分と芳香族カルボン酸成分とを重縮合させて得られるポリエステルエーテルポリオール(a1)の末端にポリイソシアネート(a2)を介して水酸基含有(メタ)アクリレート(a3)を反応させたウレタン(メタ)アクリレート(A)と光重合開始剤(B)を必須成分とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、該活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いたコーティング剤を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物によれば、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂等の各種プラスチック基材との密着性に優れ、高屈折率、硬度等に優れる硬化物を与える活性エネルギー線硬化型樹脂組成物および、これを用いたコーティング剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、樹脂成分としてビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物を含有するグリコール成分と芳香族カルボン酸成分とを重縮合させて得られるポリエステルエーテルポリオール(a1)の末端にポリイソシアネート(a2)を介して水酸基含有(メタ)アクリレート(a3)を反応させたウレタン(メタ)アクリレート(A)を必須成分とするものである。
【0011】
前記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物としては、例えば下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
【0012】
【化1】

【0013】
(式中のR,Rはそれぞれ独立して、炭素数2〜4のアルキレン基を表し、R〜R11はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、または炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基を表し、Y、Zは、それぞれ独立して水酸基又は炭素数炭素数2〜12のアシル基を表し、a、bは、2〜10の整数を、また、c、dは0〜4の整数を表す。)
前記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物におけるビスフェノール類としては、特に制限されるものではなく、例えばビスフェノールA、ビスフェノールS、フッ素化ビスフェノールA、塩素化ビスフェノールA、臭素化ビスフェノールA、4,4−ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アミン、トリシクロ[5,2,1,02,6]デカンジフェノールなどが挙げられる。
【0014】
これらの中でも、ビスフェノールS、ビスフェノールA、4,4’−(3,3,5−トリメチル−1,1−シクロヘキサンジイル)ビス(フェノール)、4,4’−(9H−フルオレン−9,9−ジイル)ビス(フェノール)、トリシクロ[5,2,1,02,6]デカンジフェノール等が好ましい。
【0015】
ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物におけるアルキレンオキサイド付加物としては、炭素数2〜4のアルキレンオキサイドが好ましい。
【0016】
ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物におけるアルキレンオキサイドの付加量は、ビスフェノール類の水酸基1当量あたり、アルキレンオキサイド2〜10モル付加したものが、得られるウレタン(メタ)アクリレートの結晶性、溶剤溶解性を制御する点から好ましい。
【0017】
また、必要に応じて、その他のジオール成分を配合しても良い。その他のジオール成分としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1、2−ブチレングリコール、トリメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、2−メチル−1,3−プロピレングリコール、トリエチレングリコール、オクタメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,6−ヘキサングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール等のアルキレングリコール類等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、また、2種以上を併用してもよい。
【0018】
前記ポリエステルエーテルポリオール(a1)におけるカルボン酸成分としては、特に制限されないが、カルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4´−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、インデン−4,7−ジカルボン酸、ナフタレン−2,5−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、アズレン−2,5−ジカルボン酸、ヘプタレン−1,7−ジカルボン酸、ビフェニレン−1,5−ジカルボン酸、as-インダセン−2,6−ジカルボン酸、s-インダセン−1,7−ジカルボン酸、アセナフチレン−3,8−ジカルボン酸、フルオレン−1,8−ジカルボン酸、フェナレン−4,8−ジカルボン酸、フェナントレン−1,6−ジカルボン酸、アントラセン−1,8−ジカルボン酸、フルオランテン−6,7−ジカルボン酸、アセフェナントリレン−3,8−ジカルボン酸、アセアントリレン−3,7−ジカルボン酸、トリフェニレン−2,10−ジカルボン酸、ピレン−1,6−ジカルボン酸、クリセン1,7−ジカルボン酸、ナフタセン−1,5−ジカルボン酸、プレイアンデン2,5−ジカルボン酸、ピセン−2,8−ジカルボン酸、ペリレン−2,8−ジカルボン酸、ペンタフェン−5,11−ジカルボン酸、ペンタセン2,6−ジカルボン酸、これらのアルキル核置換カルボン酸、および、これらのハロゲン核置換カルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0019】
前述のカルボン酸類のエステル類やハロゲン化物(たとえば、酸塩化物)であっても良い。また、フタル酸等においては、無水物等であっても良い。
【0020】
前述のカルボン酸成分としては、下記構造式で表される化合物が好ましい。該カルボン酸としては、ポリエステルエーテルポリオールの酸成分の60モル%以上が芳香族多価カルボン酸となることが好ましい。
【0021】
【化2】

【0022】
(式中、E、E、E、Eは、それぞれ独立に、カルボキシル基、ハロカルボニル基、炭素数1〜20のアルキルオキシカルボニル基、炭素数1〜20のシクロアルキルオキシカルボニル基、または、炭素数1〜20のアリールオキシカルボニル基を表す。また、R12、R13、R14はそれぞれ独立に、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、または炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基を表す。f、g、hはそれぞれ独立に、0〜4の整数を表す。)
これらの中でも、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸(含む無水物)、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸、ウビト酸、ホモフタル酸、ホモイソフタル酸、ホモテレフタル酸等を用いることが屈折率を高くすることができることから好ましい。
【0023】
また、必要に応じて、芳香族多価カルボン酸以外のカルボン酸としては、シュウ酸、(無水)コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、エイコサン二酸等の脂肪族二塩基酸類;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸等の脂環式ジカルボン酸類;(無水)マレイン酸、(無水)フマル酸、(無水)イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸類;P−オキシ安息香酸、酒石酸などのヒドロキシカルボン酸類などを上記芳香族多価カルボン酸類と併用できる。
【0024】
前記のポリエステルエーテルポリオール(a1)は、前記のポリオール成分とカルボン酸成分を反応して得られるが、重量平均分子量は、共重合の効果が得られやすく、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂等の各種プラスチック基材への付着性に優れることから500以上が好ましく、溶剤への溶解性が良好で、また、目的とするウレタン(メタ)アクリレート(A)中の二重結合量が少なくならず、塗膜の硬度が低下しにくいことから6,000以下が好ましい。さらに、1,000〜3,000であることが特に好ましい。
【0025】
前記のポリエステルエーテルポリオール(a1)の酸価(mgKOH/g)は5以下、特に、2以下であることが、後述のウレタン(メタ)アクリレート合成時に、ポリイソシアネートとの反応における不活性末端基が多くなりすぎないウレタン(メタ)アクリレートが得られ、その結果、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の活性エネルギー線に対する硬化性が低下しにくくなることから好ましい。
【0026】
前記のポリエステルエーテルポリオール(a1)の水酸基価(mgKOH/g)は20以上であることが水酸基含有量が少なくなりすぎず、その結果、目的とするウレタン(メタ)アクリレートの二重結合量が多くなり、硬化塗膜の硬度が低下しにくくなることから好ましい。また、水酸基価(mgKOH/g)は250以下であることが、共重合の効果が得られ易くなり、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂等の各種プラスチック基材への付着性が良好となることから好ましい。
【0027】
前記のポリエステルエーテルポリオール(a1)の製造方法としては、種々の方法が、挙げられる。例えば、ポリエステルエーテルポリオールとカルボン酸、或いはカルボン酸エステル類との反応では、触媒として、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の酢酸塩、亜鉛、マンガン、コバルト、アンチモン、ゲルマニウム、チタン、スズ、ジルコニウムの化合物が挙げられる。これらの中でも、特にエステル交換反応や重縮合反応等全てに有効な触媒としてテトラアルキルチタネート、蓚酸スズが好ましく用いられる。触媒は通常ポリエステルエーテルポリオールの全反応原料に対し0.005〜1.0重量%で使用されることが好ましい。
【0028】
前記の反応においては、常圧で不活性気体(例えば、窒素、アルゴン等)気流中で行なうか、或いは減圧下で行なうことが得られるポリオールの着色がないことから好ましい。また、反応温度としては、例えば、100〜300℃で行なえばよい。
【0029】
前記の反応において、カルボン酸ハロゲン化物(例えば、カルボン酸塩化物)を用いる場合は、通常のポリアリレートの製造方法である、界面重合法、溶液重合法等を用いることができるが、純度が高いポリオールが得られることから、界面重合法が好ましい。
【0030】
前記界面重合法では、カルボン酸ハロゲン化物を溶解させた有機溶媒溶液とビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物の水溶液とを接触させ、界面重縮合させることでポリエステルエーテルポリオールを得ることができる。より具体的には、ジカルボン酸ハロゲン化物をトルエンや塩化メチレン等の有機溶媒に溶解させ、また、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物をアルカリ金属水酸化物の水溶液(必要に応じて、親水性の有機溶媒を併用して)に各々0.1〜2モル/リットルの範囲で溶解させ、それら2液を接触させることにより、ジカルボン酸ハロゲン化物と、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物を界面重縮合させてポリエステルエーテルポリオールを得る例が挙げられる。この際、相間移動触媒や界面活性剤が添加されてもよい。なお、この際の反応温度は、通常100℃以下であることが好ましい。
【0031】
本発明に用いるポリイソシアネート(a2)としては、活性なイソシアネート基を2個以上有する化合物は何れも使用可能である。このようなポリイソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族系ポリイソシアネート、芳香族系ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0032】
前記脂肪族系ポリイソシアネートとしては、例えば、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,8−オクタメチレンジイソシアネート、L−リジンジイソシアネート等の脂肪族系ジイソシアネート或いは脂環式系ポリイソシアネートが挙げられる。
【0033】
前記脂環式系ポリイソシアネートとしては、例えば、水素化4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(水素化MDI)、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂環式系ジイソシアネート等が挙げられる。
【0034】
前記芳香族系ポリイソシアネートとしては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’−ビフェニルジイソシアネートトリデンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、p−テトラメチルキシレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネート等が挙げられる。
【0035】
また、3官能以上のポリイソシアネートも挙げられ、具体的には、例えば、トリフェニルメタントリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、4,4',4''−トリフェニルメタントリイソシアネート、2,4,4'−ビフェニルトリイソシアネート、2,4,4’−ジフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンフェニルイソシアネート等が挙げられる。
【0036】
更に、前記ポリイソシアネート化合物を用いて得られるイソシアヌレート型ポリイソシアネート、アダクト型ポリイソシアネート、ビュレット型ポリイソシアネート等もポリイソシアネート化合物として用いることができる。
【0037】
本発明で用いるポリイソシアネート化合物の中でも、脂肪族ジイソシアネートおよび/または脂環族ジイソシアネートを用いるのが、各種基材への付着性に優れる硬化物を作成することができることから好ましく、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、水素化4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(水素化MDI)、イソホロンジイソシアネートがより好ましい。また、ポリイソシアネート(a2)は各々を単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0038】
前記、水酸基含有(メタ)アクリレート(a3)としては、分子中に1個以上の水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物であれば、特に限定されることなく、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリセリンジ(メタ)
アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが実用的である。
【0039】
本発明で用いるウレタン(メタ)アクリレート(A)は、ポリエステルエーテルポリオール(a1)とポリイソシアネート(a2)と水酸基含有(メタ)アクリレート(a3)とを、種々のウレタン化反応の条件、すなわち20〜100℃で所定のNCO%になるまで反応させることにより得られる。反応は、アクリレート基が重合を起こさぬよう酸素を含んだ乾燥空気雰囲気化で行うことが好ましく、また、反応中にアクリレート基の重合が起こることを抑止するために、メトキノン、ハイドロキノン等の重合禁止剤や酸化防止剤を使用しても良い。
【0040】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物のウレタン(メタ)アクリレート(A)を得る際の、ポリエステルエーテルポリオール(a1)とポリイソシアネート(a2)との配合比は、ポリエステルエーテルポリオール(a1)の水酸基当量(i)とポリイソシアネート(a2)のイソシアネート当量(ii)との比[(i)/(ii)]が0.4〜0.6であることがウレタン(メタ)アクリレート(A)の物性バランスが良い点から好ましい。
【0041】
上記ウレタン化反応にあたっては、反応を促進するため、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート等に代表される有機錫系触媒や、トリエチルアミン等の3級アミン化合物を使用することができるが、触媒の種類、添加比率については特に限定されない。
【0042】
また上記ウレタン化反応にあたっては、イソシアネート基と反応する活性水素基を有しない有機溶剤を、単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。具体的な例として、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤等が挙げられる。
【0043】
なお、本発明で用いるビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物とカルボン酸成分とを重縮合させて得られるポリエステルエーテルポリオール(a1)のガラス転移温度(DSCによる)が50℃以下であることが、高結晶化を抑制し、溶剤溶解性を向上できることから好ましく、40℃以下であることが、ウレタン(メタ)アクリレート(A)製造時の取り扱いが容易でありまた、得られる硬化物の加工性が優れる点から更に好ましい。
【0044】
なお、本発明に用いるポリエステルエーテルポリオール(a1)の屈折率として、1.55〜1.65の範囲のものを用いると、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物の屈折率が高くなることから好ましい。
【0045】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、上記ウレタン(メタ)アクリレート(A)を含むことが特徴であるが、必要により(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート(A)以外のウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレート、ビニルウレタン樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの活性エネルギー線硬化型樹脂類を併用して硬化させてもよい。併用する(メタ)アクリレートは、単官能(メタ)アクリレート、2官能(メタ)アクリレート、3官能以上の(メタ)アクリレートのいずれでもよい。
【0046】
単官能(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(n=2)(メタ)アクリレート、ノニルフェノールプロピレンオキサイド変性(n=2.5)(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、フルフリル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0047】
2官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0048】
3官能以上の(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレー
ト、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリロイルオキシエトキシトリメチロールプロパン、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0049】
本発明に用いる光重合開始剤(B)としては、紫外線、電子線、放射線等でラジカルを発生することが可能な化合物であり、各種のものが使用できるが、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モノホリノ−プロパン−1−オン、トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、4−t−ブチル−トリクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1等のアセトフェノン系類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン系類;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4′メチルジフェニルサルファイド、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系;チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン類;1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2(O−エトキシカルボニル)オキシム等のアシルオキシムエステル系類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系類;メチルフェニルグリオキシレート等のグリオキシエステル系類;その他にベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、ジベンゾスベロン、2−エチルアンスラキノン、4,4′−ジエチルイソフタロフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ミヒラーケトン等が挙げられる。
【0050】
これらのうち、特にベンゾフェノン、ベンジル、チオキサントン、アントラキノン等の水素引き抜きによってラジカルを発生するタイプの化合物は、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリブチルアミン、ミヒラーケトン、4,4′−ジエチルアミノベンゾフェノン、2−ジメチルアミノエチル安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル等の第三アミンと併用するのが一般的である。
【0051】
これらの中でも、ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が好ましく、これらを単独で使用、または、2 種以上併用してもよい。また、必要により、光重合開始剤と共に、ハイドロキノン、ベンゾキノン、トルハイドノキノン、パラターシャリーブチルカテコール等の重合禁止剤類を併用することもできる。
【0052】
本発明に用いられる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物には、目的に応じて、さらに、有機溶剤、光安定剤、顔料、天然ないしは合成高分子類、その他の配合剤等を使用することができる。
【0053】
上記有機溶剤は、粘度調節のために本発明の組成物に添加されるものであり、有機溶剤を添加した場合は、塗装後に熱風乾燥機等により有機溶剤を除去することが好ましく、その使用量は、特に限定されないが、通常は塗装剤の固形分濃度が5〜45重量%となる範囲である。
【0054】
有機溶剤としては、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メタノール、エタノール、n−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸n−アミル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn−アミルケトン、シクロヘキサノン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドまたはエチレンカーボネート等が挙げられる。
【0055】
光安定剤としては、ヒンダ−ドアミン系安定剤が挙げられ、各種のものが使用できるが、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシー2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重合物、ポリ〔{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、1−〔2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−4−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ピロリジン−2,5−ジオン、N−メチル−3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ピロリジン−2,5−ジオン等が挙げられる。
【0056】
顔料としては、特に限定されるものではなく、例えば、塗料原料便覧1970年度版(日本塗料工業会編)に記載されている体質顔料、白顔料、黒顔料、灰色顔料、赤色顔料、茶色顔料、緑色顔料、青顔料、紫顔料、金属粉顔料、発光顔料、真珠色顔料等の有機顔料や無機顔料、さらにはプラスチック顔料などが挙げられる。
これら顔料の具体例としては種々のものが掲げられ、有機顔料としては、例えば、ベンチジンエロー、ハンザエロー、レーキッド4R等の如き、各種の不溶性アゾ顔料;レーキッドC、カーミン6B、ボルドー10等の如き溶性アゾ顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の各種の(銅)フタロシアニン系顔料;ローダミンレーキ、メチルバイオレットレーキ等の各種の塩素性染め付けレーキ、キノリンレーキ、ファストスカイブルー等の各種の媒染染料系顔料、アンスラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ペリノン系顔料等の如き、各種の建染染料系顔料、シンカシアレッドB等の各種のキナクリドン系顔料、ヂオキサジンバイオレット等の各種のヂオキサジン系顔料、クロモフタール等の如き各種の縮合アゾ顔料;アニリンブラックなどが挙げられる。
【0057】
無機顔料としては、例えば、黄鉛、ジンククロメート、モリブデートオレンジ等の各種のクロム酸塩;紺青等の各種のフェロシアン化合物、酸化チタン、亜鉛華、マピコエロー、酸化鉄、ベンガラ、酸化クロームグリーン等の各種の金属酸化物、カドミウムエロー、カドミウムレッド、硫化水銀等の各種の硫化物ないしはセレン化物、硫酸バリウム、硫酸鉛等の各種の硫酸塩、ケイ酸カルシウム、群青等の、各種のケイ酸塩;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の、各種の炭酸塩、コバルトバイオレット、マンガン紫等の各種の燐酸塩、アルミニウム粉、金粉、銀粉、銅粉、ブロンズ粉、真鍮粉等の如き、各種の金属粉末顔料、これら金属のフレーク顔料、マイカ・フレーク顔料、金属酸化物を被覆した形のマイカ・フレーク顔料、雲母状酸化鉄顔料等の如き、メタリック顔料やパール顔料、黒鉛、カーボンブラック等が挙げられる。
体質顔料としては、例えば、沈降性硫酸バリウム、ご粉、沈降炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、寒水石、アルミナ白、シリカ、含水微粉シリカ(ホワイトカーボン)、超微粉無水シリカ(アエロジル)、珪砂(シリカサンド)、タルク、沈降性炭酸マグネシウム、ベントナイト、クレー、カオリン、黄土などが挙げられる。
【0058】
顔料の使用割合は、顔料の種類、望まれる色相、用いる光重合開始剤等により異なり、特に限定されるものではないが、紫外線により硬化する場合、着色顔料は硬化に必要な紫外線の多くを吸収してしまうため、硬化するのに十分な紫外線がラジカル重合性不飽和二重結合に供給できる範囲が好ましく、通常はエネルギー硬化型塗装剤用樹脂組成物の固形分100重量部に対して顔料は30重量部以下となる範囲が好ましい。
また、天然ないしは合成高分子類としては、各種のものが使用でき、例えば、熱可塑性アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂類、ポリイソシアネート化合物、ポリエポキシド類、アルキド樹脂類、尿素樹脂類、メラミン樹脂類、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル系共重合体類、ポリブタジエン系エラストマー、飽和ポリエステル類または飽和ポリエーテル類、ニトロセルロース類またはセルロースアセテートブチレート等のセルロース誘導体類、アマニ油、桐油、大豆油、ヒマシ油、エポキシ化油類等の油脂類等が挙げられる。
【0059】
その他の配合剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、界面活性剤、スリップ剤、消泡剤等が挙げられる。
【0060】
本発明の活性エネルギー硬化型用樹脂組成物は、必要に応じて、前記の添加剤を併用して、プラスチック用コーティング剤として用いることができる。
【0061】
以上に説明したような本発明の活性エネルギー硬化型樹脂組成物は必要に応じて、有機溶剤等により適当な塗装粘度に調整した後、硬化後の塗膜厚さが0.5〜200μm程度となるように、各種塗工機(バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、エアナイフコーター、スピンコーター、ブレードコーター等)を用いてまたは、スプレー塗装、刷毛塗り、ローラ塗装、カーテンコート、フローコート、浸漬塗りなどで基材に塗装し、例えば100〜2000mJ/cm2程度の紫外線を照射し硬化させることにより、塗膜を製造することができる。紫外線発生源としては実用性、経済性の面から紫外線ランプが一般に用いられている。具体的には、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ガリウムランプ、メタルハライドランプ、太陽光等の紫外線などが挙げられる。紫外線の他、可視光、レーザー光、電子線、X線、γ線、プラズマ、マイクロウェーブ等のエネルギー線も使用できる。照射雰囲気は空気でもよいし、窒素、アルゴン等の不活性ガスでもよい。
【0062】
プラスチック基材としては、各種の合成樹脂成型品が挙げられる。合成樹脂成型品の具体例は、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合(ABS)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、繊維強化複合材料(FRP)、ポリエステル樹脂、ポリメチルメタクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂、ポリアリルジグリコールカーボネート樹脂などが挙げられる。また合成樹脂成型品とは、これらの樹脂からなるシート状成型品、フィルム状成型品、各種射出成型品などである。
【実施例】
【0063】
以下に、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。また例中、部、%は特に断りがない限り重量基準である。
【0064】
重量平均分子量の測定
なお、本発明における重量平均分子量はGPCによるポリスチレン換算で測定したものであり、具体的には、東ソー(株)社製HLC8220システムを用い以下の条件で行った。
分離カラム:東ソー(株)製TSKgelGMHHR−Nを4本使用。
カラム温度:40℃。移動層:和光純薬工業(株)製テトラヒドロフラン。
流速:1.0ml/分。試料濃度:1.0重量%。
試料注入量:100マイクロリットル。検出器:示差屈折計
【0065】
ガラス転移温度の測定
示差走査熱量計((株)TAインスツルメント製、示差走査熱量計(DSC)Q100)を用いて、窒素雰囲気下、温度範囲:−100〜250℃、昇温温度:10℃/分の条件で2回走査を行い、2回目の測定結果をガラス転移温度(Tg)とした。
【0066】
水酸基価の測定
後述するポリエステルエーテルポリオール5.0gを無水酢酸、N−メチルピロリドン、4−ジメチルアミノピリジンの混合液50mlに溶解した後、1時間加熱還流攪拌してアセチル化し、続いてイオン交換水1.5mlを加え5分間加熱還流攪拌した。一方、ポリエステルポリオールを加えずに同様のブランク試験を実施した。冷却後、双方の液にフェノールフタレインを指示薬として、0.5N−KOHで滴定を行い、両者の差から水酸基価をmgKOH/g単位で求めた。
【0067】
不揮発分の測定
後述するウレタン(メタ)アクリレート(A−1〜A−3、RA−1)、エポキシアクリレート(RA−2)を1.0g秤量し、トルエン、メタノール混合中性溶剤5mlで溶解し、107.5℃にて1時間乾燥させた。乾燥前後の重量差から不揮発分(%)を求めた。
【0068】
ポリエステルエーテルポリオールの屈折率測定
屈折率計((株)アタゴ製、デジタル屈折率計RX−5000α)を用いてポリエステルポリオールのD線の屈折率測定を行った。
【0069】
合成例1 ポリエステルエーテルポリオール(PES−1)
4つ口フラスコに、ニューポール−BPE−20T(ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物、三洋化成(株)製)2167部、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル473部、テレフタル酸ジメチル301部、無水フタル酸15部を、テトラブチルチタネート0.09部を仕込み、窒素気流下、220℃で24時間反応させ、ポリエステルエーテルポリオール(PES−1)を得た。PES−1は、常温で黄色固体であり、酸価が0.1mgKOH/g、水酸基価が102mgKOH/gであった。得られた結果を表1に示す。
【0070】
合成例2 ポリエステルエーテルポリオール(PES−2)
原料にニューポール−BPE−20T 3062部、イソフタル酸379部、テレフタル酸ジメチル474部、無水フタル酸85部を使用した他は合成例1と同様の操作を行い、ポリエステルエーテルポリオール(PES−2)を得た。PES−2は、常温で淡黄色固体であり、酸価が0.1mgKOH/g、水酸基価が112mgKOH/gであった。得られた結果を表1に示す。
【0071】
比較合成例1 ポリエステルポリオール(PES−3)
原料にエチレングリコール 127部、ネオペンチルグリコール317部、イソフタル酸291部、テレフタル酸437部を使用した他は合成例1と同様の操作を行い、ポリエステルポリオール(PES−3)を得た。PES−3は、常温で淡黄色固体であり、酸価が1.1mgKOH/g、水酸基価が63mgKOH/gであった。得られた結果を表1に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
合成例3 ウレタン(メタ)アクリレート(A−1)
攪拌機、ガス導入管、コンデンサーおよび温度計を備えた2リットルのフラスコを使用し、メチルイソブチルケトン554部、ポリエステルポリオールPES−1 440部、アロニックスM−305〔東亜合成(株)製ペンタエリスリトールトリアクリレート〕416部、イソホロンジイソシアネート177部、K−NOX−BHT〔共同薬品(株)製酸化防止剤〕2.0部、メトキノン〔精工化学工業(株)製重合禁止剤〕0.2部、ネオスタンU−830〔日東化成(株)製ジオクチル錫バーサテート〕0.3部を用い、空気を導入しながら85℃でイソシアネート価が0.2%以下になるまで反応させ、ポリウレタン(メタ)アクリレート(A−1)〔不揮発分;67.0%、ガードナー粘度;W−X(25℃)〕を得た。
【0074】
合成例4 ウレタン(メタ)アクリレート(A−2)
合成例3と同様の反応装置に、メチルイソブチルケトン534部、ポリエステルポリオールPES−2 402部、アロニックスM−305〔東亜合成(株)製ペンタエリスリトールトリアクリレート〕416部、イソホロンジイソシアネート178部、K−NOX−BHT〔共同薬品(株)製酸化防止剤〕2.0部、メトキノン〔精工化学工業(株)製重合禁止剤〕0.2部、ネオスタンU−830〔日東化成(株)製ジオクチル錫バーサテート〕0.3部を用い、空気を導入しながら85℃でイソシアネート価が0.2%以下になるまで反応させ、ポリウレタン(メタ)アクリレート(A−2)〔不揮発分;66.0%、ガードナー粘度;V−W(25℃)〕を得た。
【0075】
合成例5 ウレタン(メタ)アクリレート(A−3)
合成例3と同様の反応装置に、メチルイソブチルケトン525部、ポリエステルポリオールPES−1 605部、2−ヒドロキシエチルアクリレート〔大阪有機化学工業(株)〕130部、イソホロンジイソシアネート244部、K−NOX−BHT〔共同薬品(株)製酸化防止剤〕2.0部、メトキノン〔精工化学工業(株)製重合禁止剤〕0.2部、ネオスタンU−830〔日東化成(株)製ジオクチル錫バーサテート〕0.3部を用い、空気を導入しながら85℃でイソシアネート価が0.2%以下になるまで反応させ、ポリウレタン(メタ)アクリレート(A−3)〔不揮発分;67.0%、ガードナー粘度;Z−Z(25℃)〕を得た。
【0076】
比較合成例2 ウレタン(メタ)アクリレート(RA−1)
合成例3と同様の反応装置に、酢酸ノルマルブチル740部、ポリエステルポリオールPES−3 530部、2−ヒドロキシプロピルアクリレート〔大阪有機化学工業(株)〕80部、イソホロンジイソシアネート133部、K−NOX−BHT〔共同薬品(株)製酸化防止剤〕1.5部、メトキノン〔精工化学工業(株)製重合禁止剤〕0.2部、ネオスタンU−830〔日東化成(株)製ジオクチル錫バーサテート〕0.2部を用い、空気を導入しながら85℃でイソシアネート価が0.2%以下になるまで反応させ、ポリウレタン(メタ)アクリレート(RA−1)〔不揮発分;50.3%、ガードナー粘度;F−G(25℃)〕を得た。
【0077】
比較合成例3 ビスフェノールAエポキシアクリレート(RA−2)
合成例3と同様の反応装置に、エピクロン850S〔DIC(株)製ビスフェノールA型エポキシ樹脂〕1082部、K−NOX−BHT〔共同薬品(株)製酸化防止剤〕3部、メトキノン〔精工化学工業(株)製重合禁止剤〕0.4部、98%アクリル酸〔大阪有機化学工業(株)製〕407部を投入し、60℃以下で均一に混合した後に、トリフェニルフォスフィン〔城北化学工業(株)製〕7部を投入した。空気を導入しながら100℃で酸価が2以下になるまで反応を継続した。目標酸価に到達した後に80℃以下の降温し、トルエン370部を投入、均一混合することで、ビスフェノールAエポキシアクリレート(RA−2)〔不揮発分;80.1%、ガードナー粘度;X−Y(25℃)〕を得た。
【0078】
実施例1〜3及び比較例1、2
合成例3〜5、比較合成例2、3で得られたポリウレタン(メタ)アクリレート(A−1)〜(A−3)、(RX−1)及び、エポキシアクリレート(RX−2)を用いて表2に示す配合により本発明の活性エネルギー線硬化型塗装剤用樹脂組成物を含有してなる塗装剤(X−1)〜(X−3)、比較対照用の塗装剤(RX−1)、(RX−2)を調製した。
【0079】
【表2】

【0080】
実施例及び比較例において得られた複層塗膜は、以下の方法により形成し評価した。
<塗膜の形成方法>
ポリカーボネート基材〔TP技研株式会社製〕、ガラス板、又は、透明表面処理PETフィルム〔東洋紡績株式会社製、膜厚125μm〕上に、本発明の塗装剤(X−1)〜(X−3)または比較対照用の塗装剤(RX−1)、(RX−2)を、バーコーター(No.26)を用いて塗装した後、熱風乾燥器を用いて60℃で10分間乾燥を行い、有機溶剤を揮発除去した。次いで、紫外線照射装置を用いて80W/cmの高圧水銀灯下を通過させて積算照度が800mJ/cmになるまで紫外線を照射して硬化塗膜を得た。この硬化塗膜の下記方法に従って、屈折率、付着性、鉛筆硬度を評価した。評価結果を表3に示す。
【0081】
<評価方法>
(1)屈折率:透明表面処理PETフィルム上に作製した硬化物を、プリズムカプラ式屈折率計(METRICON社製、モデル2010)を用いて測定した。
(2)付着性:硬化塗膜にカッターナイフで1mm×1mmの100個の碁盤目を作成し、ニチバン(株)製セロハンテープを貼り付けた後、剥離を行った。この時に塗膜が剥離せずに基材に密着している碁盤目の数を数えて評価した。
(3)鉛筆硬度:ガラス板上に塗装した硬化塗膜を、三菱鉛筆ユニを用いて1kg荷重で引っ掻き試験し、キズが付く最低の硬さの1ランク下の硬さで表示した。
【0082】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルエーテルポリオール(a1)とポリイソシアネート(a2)と水酸基含有(メタ)アクリレート(a3)とを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート(A)と光重合開始剤(B)とを含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物であって、前記ポリエステルエーテルポリオール(a1)が、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物を含有するグリコール成分と芳香族カルボン酸成分とを重縮合させて得られるポリエステルエーテルポリオールを必須成分とすることを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
ポリエステルエーテルポリオール(a1)を構成するビスフェノール類アルキレンオキサイド付加物を含有するグリコール成分が、下記一般式(1)で表される請求項1記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。

(式中のR,Rはそれぞれ独立して、炭素数2〜12のアルキレン基を表し、R〜R11はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、または炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基を表し、Y、Zは、それぞれ独立して水酸基又は炭素数炭素数2〜12のアシル基を表し、a、bは、2〜10の整数を、また、c、dは0〜4の整数を表す。)
【請求項3】
前記芳香族カルボン酸成分が、下記一般式(2)及び/又は下記一般式(3)で表される芳香族カルボン酸成分である請求項1記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。

(式中、E、E、E、E4は、それぞれ独立に、カルボキシル基、ハロカルボニル基、炭素数1〜20のアルキルオキシカルボニル基、炭素数1〜20のシクロアルキルオキシカルボニル基、または、炭素数1〜20のアリールオキシカルボニル基を表す。また、R12、R13、R14はそれぞれ独立に、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、または炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基を表す。f、g、hはそれぞれ独立に、0〜4の整数を表す。)
【請求項4】
前記芳香族カルボン酸成分がフタル酸誘導体を含有するものである請求項1記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1つに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を含有するコーティング剤。

【公開番号】特開2013−56967(P2013−56967A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194919(P2011−194919)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】