説明

活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、接着剤層、偏光板、光学フィルムおよび画像表示装置

【課題】2以上の部材、特には偏光子と透明保護フィルム層との接着性を向上し、かつ耐久性および耐水性を向上した接着剤層を形成できる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、偏光板、光学フィルムならびに画像表示装置を提供すること。
【解決手段】硬化性成分として、N−置換アミド系モノマー、および(メタ)アクリロイル基と酸基とが炭素数1〜10の有機基を介して結合した酸基含有(メタ)アクリレート系モノマーを含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物層により接着剤層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2以上の部材を接着する接着剤層を形成する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、特には偏光子と透明保護フィルムとの接着剤層を形成する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、および偏光板に関する。当該偏光板はこれ単独で、またはこれを積層した光学フィルムとして液晶表示装置(LCD)、有機EL表示装置、CRT、PDPなどの画像表示装置を形成しうる。
【背景技術】
【0002】
時計、携帯電話、PDA、ノートパソコン、パソコン用モニタ、DVDプレーヤー、TVなどでは液晶表示装置が急激に市場展開している。液晶表示装置は、液晶のスイッチングによる偏光状態を可視化させたものであり、その表示原理から、偏光子が用いられる。特に、TVなどの用途では、ますます高輝度、高コントラスト、広い視野角が求められ、偏光板においてもますます高透過率、高偏光度、高い色再現性などが求められている。
【0003】
偏光子としては、高透過率、高偏光度を有することから、例えばポリビニルアルコール(以下、単に「PVA」ともいう)にヨウ素を吸着させ、延伸した構造のヨウ素系偏光子が最も一般的に広く使用されている。一般的に偏光板は、ポリビニルアルコール系の材料を水に溶かしたいわゆる水系接着剤によって、偏光子の両面に透明保護フィルムを貼り合わせたものが用いられている(下記特許文献1および特許文献2)。透明保護フィルムとしては、透湿度の高いトリアセチルセルロースなどが用いられる。
【0004】
偏光板を製造する際に、ポリビニルアルコール系接着剤のような水系接着剤を用いた場合(いわゆるウェットラミネーション)には、偏光子と透明保護フィルムとを貼り合わせた後に、乾燥工程が必要となる。偏光板の生産性を向上させるためには、乾燥工程を短縮するか、乾燥工程を必要としない別の接着方法を採用することが望ましい。
【0005】
また水系接着剤を使用する場合には、偏光子との接着性を高めるために、偏光子の水分率も相対的に高くしておかないと(通常偏光子の水分率は30%程度)、接着性が良好な偏光板を得ることができない。しかし、このようにして得られた偏光板では、高温や、高温高湿度下での、寸法変化が大きいことなどの問題を有している。一方、寸法変化を抑えるには、偏光子の水分率を下げたり、透湿度の低い透明保護フィルムを用いたりすることができる。しかし、こうした偏光子と透明保護フィルムとを、水系接着剤を用いて貼り合わせると、乾燥効率が下がったり、偏光特性が下がったり、または外観の不具合が発生し実質上有用な偏光板を得ることができない。
【0006】
また、特にTVで代表されるように、近年、画像表示装置の大画面化が進むにつれ、偏光板の大型化も生産性やコストの面(歩留まり、取り数アップ)から非常に重要になっている。しかし、前述の水系接着剤を用いた偏光板では、バックライトの熱により偏光板が寸法変化を引き起こし、それがムラになって画面全体のうち一部分で黒表示が白く見えるといったいわゆる光抜け(ムラ)が顕著になってくるという問題がある。
【0007】
上述したウェットラミネーションでの問題点を解決すべく、水や有機溶剤を含有しない活性エネルギー線硬化型接着剤が提案されている。かかる活性エネルギー線硬化型接着剤として、大きく分けて光カチオン重合型と光ラジカル重合型とが挙げられる。
【0008】
光カチオン重合は、一般的に水の存在下で重合反応が阻害されることが知られている。よって、湿式延伸したPVA偏光子を完全乾燥後に接着剤中の硬化性成分を重合する場合は支障がない。しかしながら、PVA偏光子を十分に乾燥せず、含水率が高い状態で接着剤層を介して透明保護フィルムをラミネートすると、硬化性成分の光カチオン重合が阻害され、接着剤層が硬化不良を起こす場合がある。また、下記特許文献3に記載のとおり、エポキシ樹脂で硬化性成分を構成した場合、その光カチオン重合の重合速度が遅く、偏光板をロールトゥロール(Roll To Roll)で連続的に生産する場合、巻取り後にも硬化が進行し、偏光板にカールが発生する場合がある。このため、光カチオン重合型は、偏光板のロールトゥロール生産に適さない。加えて、光カチオン重合型で一般的に使用される、低分子量かつ低粘度のエポキシ樹脂には、変異原性や刺激性などの毒性を有するものが多く、安全面でも問題が指摘されている。
【0009】
一方、光ラジカル重合型では、水によって重合反応が阻害されないため、PVA偏光子の水分率が高い状態で接着剤層を介して透明保護フィルムをラミネートしても支障がない。また、光ラジカル重合の重合速度は、光カチオン重合に比して速いため、偏光板のロールトゥロール生産にも適する。かつエポキシ樹脂に比して、光ラジカル重合型で使用される硬化性成分の毒性は低い。
【0010】
本発明者らはN−置換アミド系モノマーを硬化性成分として使用した、ラジカル重合型の活性エネルギー線硬化型接着剤を開発した(下記特許文献4)。かかる接着剤は、高湿度下および高温下の過酷な環境下において優れた耐久性を発揮するものであるが、市場においては、さらなる接着性および/または耐水性を向上できる接着剤が要求されつつあるのが実情であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−220732号公報
【特許文献2】特開2001−296427号
【特許文献3】特許4306270号公報
【特許文献4】特開2008−287207号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、2以上の部材、特には偏光子と透明保護フィルム層との接着性を向上し、かつ耐久性および耐水性を向上した接着剤層を形成できる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、偏光板、光学フィルムならびに画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。即ち、本発明に係る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、硬化性成分として、下記一般式(1):
CH=C(R)−CONH2−m−(X−O−R (1)
(Rは水素原子またはメチル基を示し、Xは−CH−基または−CHCH−基を示し、Rは−(CH−H基(ただし、nは0,1または2)を示し、mは1または2を示す)で表されるN−置換アミド系モノマー、および(メタ)アクリロイル基と酸基とが炭素数1〜10の有機基を介して結合した酸基含有(メタ)アクリレート系モノマーを含有することを特徴とする。本発明において、(メタ)アクリレート基とは、アクリレート基および/またはメタクリレート基を意味する。
【0014】
上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物において、前記有機基が(ポリ)アルキレンオキサイド基であることが好ましい。
【0015】
上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物において、前記酸基がリン酸基であることが好ましい。
【0016】
上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物において、前記酸基含有(メタ)アクリレート系モノマーが、下記一般式(2):
(CH=C(R)−COO−Y)−PO−(OH)3−r (2)
(Rは水素原子またはメチル基を示し、Yは−(CHCHR−O)−(ただし、Rは水素原子、メチル基またはクロロメチル基を示し、sは1〜6を示す)で表される(ポリ)アルキレンオキサイド基を示し、rは1,2または3を示す)で表されるリン酸基含有(メタ)アクリレート系モノマーであることが好ましい。
【0017】
上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物において、硬化性成分を構成するモノマーの合計量に対する前記酸基含有(メタ)アクリレート系モノマーの割合が、0.01質量%以上10質量%未満であることが好ましい。
【0018】
上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物において、さらに、2個以上の炭素−炭素二重結合を有するモノマーを含有することが好ましい。
【0019】
また、本発明に係る接着剤層は、前記いずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物層により形成されたものであることを特徴とする。
【0020】
上記接着剤層において、ガラス転移温度(Tg)が60℃以上であることが好ましい。
【0021】
また、本発明に係る偏光板は、偏光子の少なくとも一方の面に、接着剤層を介して透明保護フィルムが設けられている偏光板であって、前記接着剤層が前記いずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物層により形成されたものであることを特徴とする。
【0022】
上記偏光板において、前記接着剤層のガラス転移温度(Tg)が60℃以上であることが好ましい。
【0023】
また、本発明に係る光学フィルムは、前記いずれかに記載の偏光板が、少なくとも1枚積層されていることを特徴とする。
【0024】
さらに、本発明に係る画像表示装置は、前記いずれかに記載の偏光板、および/または前記に記載の光学フィルムが用いられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、水系接着剤に比べて耐久性が高い。また、光ラジカル重合型であるため、光カチオン重合型に比して重合速度が速く、生産性に優れる。また、硬化性成分としてN−置換アミド系モノマーと酸基含有(メタ)アクリレート系モノマーとを含有するため、接着性、耐久性および耐水性に優れる。
【0026】
本発明に係る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物では、(メタ)アクリレート基と酸基とが、炭素数1〜10の有機基、好ましくは(ポリ)アルキレンオキサイド基、を介して結合した酸基含有(メタ)アクリレート系モノマーを含有するため、特に接着性が飛躍的に向上する。かかる効果が発現する理由は明らかではないが、(メタ)アクリレートの重合主鎖と酸基との間に、炭素数1〜10の有機基を介在させることで、かかる有機基がスペーサーとして機能し、その結果、酸基が接着させる2枚の部材、例えば偏光子および保護フィルムに対して相互作用し易いことが推測される。したがって、後述する結果が示すとおり、(メタ)アクリロイル基と酸基との間にスペーサーが介在しないアクリル酸などを使用した場合、本発明と同レベルにまで接着性を向上することができない。
【0027】
酸基含有(メタ)アクリレート系モノマーとしてリン酸基含有(メタ)アクリレート系モノマーを使用した場合、特に好ましくは、下記一般式(2):
(CH=C(R)−COO−Y)−PO−(OH)3−r (2)
(Rは水素原子またはメチル基を示し、Yは−(CHCHR−O)−(ただし、Rは水素原子、メチル基またはクロロメチル基を示し、sは1〜6を示す)で表される(ポリ)アルキレンオキサイド基を示し、rは1,2または3を示す)で表されるリン酸基含有(メタ)アクリレート系モノマーを使用した場合、リン酸基が2枚の部材、例えば偏光子および保護フィルムと水素結合(相互作用)することにより、さらに接着性が向上する。
【0028】
本発明においては、硬化性成分を構成するモノマーの合計量に対する酸基含有(メタ)アクリレート系モノマーの割合が、0.01質量%以上10質量%未満であることが好ましい。このような割合に設定することで、接着剤層の接着性、耐久性および耐水性をバランスよく向上することができる。
【0029】
また、硬化性成分としてN−置換アミド系モノマーおよび酸基含有(メタ)アクリレート系モノマーに加えて、2個以上の炭素−炭素二重結合を有するモノマー、特に好ましくは多官能(メタ)アクリレート系モノマーを含有する場合、接着剤層の耐水性が特に向上する。上述したとおり、酸基含有(メタ)アクリレート系モノマーを含有すると、接着剤層の接着性が向上するが、極性が高まるため吸湿量が多くなる傾向がある。しかしながら、接着剤層を形成する組成物中に2個以上の炭素−炭素二重結合を有するモノマー、特に好ましくは多官能(メタ)アクリレート系モノマーを含有する場合、接着剤層の吸湿量が適度に低下し、接着性を高めつつ耐水性を向上することができる。耐水性をより高めるためには、疎水性の多官能(メタ)アクリレート系モノマーを使用することがより好ましい。
【0030】
本発明に係る接着剤層は、上述した活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物層により形成されたものである。かかる接着剤層は、接着性、耐久性および耐水性に優れる。接着剤層のTgが60℃以上であると、耐久性が特に優れたものとなるため好ましい。
【0031】
また、本発明に係る偏光板は、偏光子と透明保護フィルムとが、接着剤層を介して強固に接着し、接着剤層の耐久性および耐水性に優れる。特に、接着剤層のTgが60℃以上、より好ましくは70℃以上、特に好ましくは90℃以上であると、耐久性が特に優れたものとなり、ヒートショッククラックの発生を防止することができる。ここで、「ヒートショッククラック」とは、偏光子が収縮する際、延伸方向に裂ける現象を意味し、これを防止するためには、ヒートショック温度範囲(−40℃〜60℃)で偏光子の膨張・収縮を抑制することが重要である。上記のとおり、接着剤層のTgが60℃以上であると、ヒートショック温度範囲での接着剤層の急激な弾性率変化を抑制し、偏光子に作用する膨張・収縮力を低減することができるため、ヒートショッククラックの発生を防止することができる。
【0032】
本発明に係る接着剤層を備える場合、寸法変化が小さい偏光板を作製できるため、偏光板の大型化にも容易に対応でき、歩留まり、取り数の観点から生産コストを抑えることができる。また、本発明に係る偏光板は寸法安定性がよいことから、バックライトの外部熱による画像表示装置のムラの発生を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明に係る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、硬化性成分として、下記一般式(1)で表されるN−置換アミド系モノマーと酸基含有(メタ)アクリレート系モノマーとを必須成分として含有する。本発明に係る偏光板は、偏光子の少なくとも一方の面に、接着剤層を介して透明保護フィルムが設けられており、当該接着剤層の形成には、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いる。
【0034】
N−置換アミド系モノマーは、下記一般式(1):
CH=C(R)−CONH2−m−(X−O−R (1)
(Rは水素原子またはメチル基を示し、Xは−CH−基または−CHCH−基を示し、Rは−(CH−H基(ただし、nは0,1または2)、メチル基またはエチル基を示し、mは1または2を示す)で表される。
【0035】
N−置換アミド系モノマーの具体例としては、例えば、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシエチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。これらN−置換アミド系モノマーは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
N−置換アミド系モノマーとしては、市販品も好適に使用可能である。具体的には例えば、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド(商品名「HEAA」、興人社製)、N−メトキシメチルアクリルアミド(商品名「ワスマー2MA」、笠野興産社製)、N−エトキシメチルアクリルアミド(商品名「ワスマーEMA」、笠野興産社製)、N−メトキシメチルメタクリルアミド(商品名「ワスマー2MA」、笠野興産社製)などが挙げられる。
【0037】
上記N−置換アミド系モノマーとしては、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドおよびN−メトキシメチル(メタ)アクリルアミドが好適である。N−置換アミド系モノマーは、低水分率の偏光子や、透湿度の低い材料を用いた透明保護フィルムに対しても、良好な接着性を示すが、上記で例示のモノマーの中でも、N−ヒドロキシエチルアクリルアミドは特に良好な接着性を示す。一方、N−メトキシメチルアクリルアミドは、接着力の向上にそれほど寄与しないが、N−ヒドロキシエチルアクリルアミドと疎水性の多官能(メタ)アクリレート系モノマーとを併用する場合に、これらを相溶させる効果を奏する。したがって、N−ヒドロキシエチルアクリルアミドおよびN−メトキシメチル(メタ)アクリルアミドの併用系は接着性および耐久性を考慮した場合に好ましい。
【0038】
本発明においては、接着性および耐水性を考慮した場合、硬化性成分を構成するモノマーの合計量に対する上記一般式(1)で表されるN−置換アミド系モノマーの割合が、50〜99質量%であることが好ましく、60〜90質量%であることがより好ましい。
【0039】
酸基含有(メタ)アクリレート系モノマーは、(メタ)アクリロイル基と酸基とが、炭素数1〜10の有機基、特に好ましくは、−(CHCHR−O)−(ただし、Rは水素原子、メチル基またはクロロメチル基を示し、sは1から6までの整数を示す)で表される(ポリ)アルキレンオキサイド基を介して結合したモノマーである。本発明において「酸基」としては、リン酸基、スルホン酸基、カルボン酸基などが挙げられ、この中でもリン酸基が好ましい。
【0040】
本発明においては、酸基含有(メタ)アクリレート系モノマーとして、特に下記一般式(2):
(CH=C(R)−COO−Y)−PO−(OH)3−r (2)
(Rは水素原子またはメチル基を示し、Yは−(CHCHR−O)−(ただし、Rは水素原子、メチル基またはクロロメチル基を示し、sは1から6までの整数を示す)で表される(ポリ)アルキレンオキサイド基を示し、rは1,2または3を示す)で表されるリン酸基含有(メタ)アクリレート系モノマーが好ましい。
【0041】
リン酸基含有(メタ)アクリレート系モノマーの具体例としては、例えば、
(CH=CH−COO−CHCHO)−PO−(OH)
(CH=CH−COO−CHCHO)−PO−OH、
(CH=CH−COO−CHCHO)−PO、
(CH=CCH−COO−CHCHO)−PO−(OH)
(CH=CCH−COO−(CHCHO))−PO−(OH)(ただし、qは4または5)、
(CH=CCH−COO−(CHCH(CH)O))−PO−(OH)(ただし、qは5または6)、
(CH=CCH−COO−(CHCH(−CHCl)O))−PO−(OH)
あるいはこれらモノマーと、例えばモノエタノールアミンなどとのリン酸塩が挙げられる。
【0042】
リン酸基含有(メタ)アクリレート系モノマーとしては、市販品も好適に使用可能であり、例えば「ライトアクリレートP−1A」(共栄社化学)、「ビスコート3PA」(大阪有機化学工業)、「Phosmer M」(ユニケミカル)、「Phosmer MH」(ユニケミカル)、「Phosmer PE」(ユニケミカル)、「Phosmer PP」(ユニケミカル)、「Phosmer CL」(ユニケミカル)などが挙げられる。
【0043】
本発明においては、硬化性成分を構成するモノマーの合計量に対する酸基含有(メタ)アクリレート系モノマーの割合が、0.01質量%以上10質量%未満であることが好ましく、0.1質量%以上5質量%未満であることがより好ましい。
【0044】
本発明においては、硬化性成分として一般式(1)で表されるN−置換アミド系モノマーおよび酸基含有(メタ)アクリレート系モノマーに加えて、2個以上の炭素−炭素二重結合を有するモノマー、特に好ましくは多官能(メタ)アクリレート系モノマーを含有する場合、接着剤層の耐水性が向上するため好ましい。接着剤層の耐水性を考慮した場合、2個以上の炭素−炭素二重結合を有するモノマーは疎水性であることがより好ましい。疎水性の2個以上の炭素−炭素二重結合を有するモノマー、特に疎水性の多官能(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えばトリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ジビニルベンゼン、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、EO変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、EO変性ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、ビスフェノールA−EO付加物ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコール(メタ)アクリル酸付加物、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス((メタ)アクロキシエチル)イソシアヌレート、1,1−ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと1,6−ジイソシアネートヘキサンとの重合物、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどが挙げられる。
【0045】
本発明においては、硬化性成分を構成するモノマーの合計量に対する2個以上の炭素−炭素二重結合を有するモノマーの割合が、5〜50質量%であることが好ましく、9〜40質量%であることがより好ましい。この割合が5質量%未満である場合にでは、十分な耐水性を得られない場合があり、一方、50質量%を超える場合には、十分な接着性を得られない場合がある。
【0046】
本発明においては、硬化性成分として、接着性、耐久性および耐水性を損なわない範囲内で、一般式(1)で表されるN−置換アミド系モノマー、酸基含有(メタ)アクリレート系モノマー、2個以上の炭素−炭素二重結合を有するモノマー以外の他のモノマーを併用することができる。このようなモノマーとして、例えば、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ヘキシル(メタ)アクリルアミド、アミノメチル(メタ)アクリルアミド、アミノエチル(メタ)アクリルアミド、メルカアプトメチル(メタ)アクリルアミド、メルカプトエチル(メタ)アクリルアミド、N−アクリロイルモルホリン、N−アクリロイルピペリジン、N−メタクリロイルピペリジン、N−アクリロイルピロリジン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−2−カプロラクタムなどの一般式(1)で表される以外のN−置換アミド系モノマーが挙げられる。
【0047】
また、任意成分として、各種の芳香環およびヒドロキシ基を有する単官能の(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートなどを使用してもよい。
【0048】
芳香環およびヒドロキシ基を有する単官能の(メタ)アクリレートは、芳香環およびヒドロキシ基を有する、各種の単官能の(メタ)アクリレートを用いることができる。ヒドロキシ基は、芳香環の置換基として存在してもよいが、本発明では、芳香環と(メタ)アクリレートとを結合する有機基(炭化水素基、特に、アルキレン基に結合したもの)として存在するものが好ましい。
【0049】
上記芳香環およびヒドロキシ基を有する単官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、芳香環を有する単官能のエポキシ化合物と、(メタ)アクリル酸との反応物が挙げられる。芳香環を有する単官能のエポキシ化合物としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、t‐ブチルフェニルグリシジルエーテル、フェニルポリエチレングリコールグリシジルエーテルなどが挙げられる。芳香環およびヒドロキシ基を有する単官能の(メタ)アクリレートの、具体例としては、例えば、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルポリエチレングリコールプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0050】
また上記ウレタン(メタ)アクリレートとしては、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレートと、ポリウレタンジオール、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオールやポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコールなどのジオール化合物の片末端のヒドロキシル基との反応物などが挙げられる。
【0051】
また、本発明に係る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物には、本発明の目的、効果を損なわない範囲において、その他の任意成分として各種の添加剤を配合することができる。かかる添加剤としては、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリエーテル、ポリエステル、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、石油樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、セルロース樹脂、フッ素系オリゴマー、シリコーン系オリゴマー、ポリスルフィド系オリゴマーなどのポリマーあるいはオリゴマー;フェノチアジン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールなどの重合禁止剤;重合開始助剤;レベリング剤;濡れ性改良剤;界面活性剤;可塑剤;紫外線吸収剤;シランカップリング剤;無機充填剤;顔料;染料などを挙げることができる。
【0052】
本発明に係る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、電子線硬化型、紫外線硬化型の態様で用いることができる。
【0053】
電子線硬化型において、電子線の照射条件は、上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化しうる条件であれば、任意の適切な条件を採用できる。例えば、電子線照射は、加速電圧が好ましくは5kV〜300kVであり、さらに好ましくは10kV〜250kVである。加速電圧が5kV未満の場合、電子線が接着剤まで届かず硬化不足となるおそれがあり、加速電圧が300kVを超えると、試料を通る浸透力が強すぎて、透明保護フィルムや偏光子にダメージを与えるおそれがある。照射線量としては、5〜100kGy、さらに好ましくは10〜75kGyである。照射線量が5kGy未満の場合は、接着剤が硬化不足となり、100kGyを超えると、透明保護フィルムや偏光子にダメージを与え、機械的強度の低下や黄変を生じ、所定の光学特性を得ることができない。
【0054】
電子線照射は、通常、不活性ガス中で照射を行うが、必要であれば大気中や酸素を少し導入した条件で行ってもよい。透明保護フィルムの材料によるが、酸素を適宜導入することによって、最初に電子線があたる透明保護フィルム面にあえて酸素阻害を生じさせ、透明保護フィルムへのダメージを防ぐことができ、接着剤にのみ効率的に電子線を照射させることができる。
【0055】
一方、紫外線硬化型において、紫外線吸収能を付与した保護フィルムを使用する場合、およそ380nmより短波長の光を吸収するため、380nmより短波長の光は活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に到達しないため、その重合反応に寄与しない。さらに、保護フィルムによって吸収された380nmより短波長の光は熱に変換され、保護フィルム自体が発熱し、偏光板のカール・シワなど不良の原因となる。そのため、本発明において紫外線硬化型を採用する場合、紫外線発生装置として380nmより短波長の光を発光しない装置を使用することが好ましく、より具体的には、波長範囲380〜440nmの積算照度と波長範囲250〜370nmの積算照度との比が100:0〜100:50であることが好ましく、100:0〜100:40であることがより好ましい。このような積算照度の関係を満たす紫外線としては、ガリウム封入メタルハライドランプ、波長範囲380〜440nmを発光するLED光源が好ましい。あるいは、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、白熱電球、キセノンランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、蛍光灯、タングステンランプ、ガリウムランプ、エキシマレーザーまたは太陽光を光源とし、バンドパスフィルターを用いて380nmより短波長の光を遮断して用いることもできる。
【0056】
紫外線硬化型において、紫外線を照射する前に活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を加温すること(照射前加温)が好ましく、その場合40℃以上に加温することが好ましく、50℃以上に加温することがより好ましい。また、紫外線を照射後に活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を加温すること(照射後加温)も好ましく、その場合40℃以上に加温することが好ましく、50℃以上に加温することがより好ましい。
【0057】
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を電子線硬化型で用いる場合、組成物中に光重合開始剤を含有させることは特に必要ではないが、紫外線硬化型で用いる場合には、光ラジカル発生剤を用いることが好ましい。光ラジカル発生剤としては、水素引き抜き型光ラジカル発生剤と開裂型光ラジカル発生剤とが挙げられる。
【0058】
水素引き抜き型光ラジカル発生剤としては、例えば1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン、1−フルオロナフタレン、1−クロロナフタレン、2−クロロナフタレン、1−ブロモナフタレン、2−ブロモナフタレン、1−ヨードナフタレン、2−ヨードナフタレン、1−ナフトール、2−ナフトール、1−メトキシナフタレン、2−メトキシナフタレン、1,4−ジシアノナフタレンなどのナフタレン誘導体、アントラセン、1,2−ベンズアントラセン、9,10−ジクロロアントラセン、9,10−ジブロモアントラセン、9,10−ジフェニルアントラセン、9−シアノアントラセン、9,10−ジシアノアントラセン、2,6,9,10−テトラシアノアントラセンなどのアントラセン誘導体、ピレン誘導体、カルバゾール、9−メチルカルバゾール、9−フェニルカルバゾール、9−プロペ−2−イニル−9H−カルバゾール、9−プロピル−9H−カルバゾール、9−ビニルカルバゾール、9H−カルバゾール−9−エタノール、9−メチル−3−ニトロ−9H−カルバゾール、9−メチル−3,6−ジニトロ−9H−カルバゾール、9−オクタノイルカルバゾール、9−カルバゾールメタノール、9−カルバゾールプロピオン酸、9−カルバゾールプロピオニトリル、9−エチル−3,6−ジニトロ−9H−カルバゾール、9−エチル−3−ニトロカルバゾール、9−エチルカルバゾール、9−イソプロピルカルバゾール、9−(エトキシカルボニルメチル)カルバゾール、9−(モルホリノメチル)カルバゾール、9−アセチルカルバゾール、9−アリルカルバゾール、9−ベンジル−9H−カルバゾール、9−カルバゾール酢酸、9−(2−ニトロフェニル)カルバゾール、9−(4−メトキシフェニル)カルバゾール、9−(1−エトキシ−2−メチル−プロピル)−9H−カルバゾール、3−ニトロカルバゾール、4−ヒドロキシカルバゾール、3,6−ジニトロ−9H−カルバゾール、3,6−ジフェニル−9H−カルバゾール、2−ヒドロキシカルバゾール、3,6−ジアセチル−9−エチルカルバゾールなどのカルバゾール誘導体、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメトキシ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2−ベンゾイル安息香酸メチルエステル、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノンなどのベンゾフェノン誘導体、芳香族カルボニル化合物、[4−(4−メチルフェニルチオ)フェニル]−フェニルメタノン、キサントン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、4−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントンなどのチオキサントン誘導体やクマリン誘導体などが挙げられる。
【0059】
開裂型光ラジカル発生剤は、活性エネルギー線を照射することにより当該化合物が開裂してラジカルを発生するタイプの光ラジカル発生剤であり、その具体例として、ベンゾインエーテル誘導体、アセトフェノン誘導体などのアリールアルキルケトン類、オキシムケトン類、アシルホスフィンオキシド類、チオ安息香酸S−フェニル類、チタノセン類、およびそれらを高分子量化した誘導体が挙げられるがこれに限定されるものではない。市販されている開裂型光ラジカル発生剤としては、1−(4−ドデシルベンゾイル)−1−ヒドロキシ−1−メチルエタン、1−(4−イソプロピルベンゾイル)−1−ヒドロキシ−1−メチルエタン、1−ベンゾイル−1−ヒドロキシ−1−メチルエタン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−ベンゾイル]−1−ヒドロキシ−1−メチルエタン、1−[4−(アクリロイルオキシエトキシ)−ベンゾイル]−1−ヒドロキシ−1−メチルエタン、ジフェニルケトン、フェニル−1−ヒドロキシ−シクロヘキシルケトン、ベンジルジメチルケタール、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−ピリル−フェニル)チタン、(η6−イソプロピルベンゼン)−(η5−シクロペンタジエニル)−鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート、トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシ−ベンゾイル)−(2,4,4−トリメチル−ペンチル)−ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,4−ジペントキシフェニルホスフィンオキシドまたはビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニル−ホスフィンオキシド、(4−モルホリノベンゾイル)−1−ベンジル−1−ジメチルアミノプロパン、4−(メチルチオベンゾイル)−1−メチル−1−モルホリノエタンなどが挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0060】
本発明で使用される光ラジカル発生剤、すなわち水素引き抜き型または開裂型光ラジカル発生剤は、いずれもそれぞれ単独で用いることができる他、複数を組み合わせて用いても良いが、光ラジカル発生剤単体の安定性や、本発明における組成物の硬化性の面でより好ましいものは開裂型光ラジカル発生剤の1種以上の組み合わせである。開裂型光ラジカル発生剤の中でもアシルホスフィンオキシド類が好ましく、より具体的には、トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(商品名「DAROCURE TPO」;チバ・ジャパン社製)、ビス(2,6−ジメトキシ−ベンゾイル)−(2,4,4−トリメチル−ペンチル)−ホスフィンオキシド(商品名「CGI 403」;チバ・ジャパン社製)、またはビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,4−ジペントキシフェニルホスフィンオキシド(商品名「IRGACURE819」;チバ・ジャパン社製)が好ましい。
【0061】
光ラジカル発生剤を使用する場合、その使用量は活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の合計量に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、0.05〜5質量部であることがより好ましく、0.1〜3質量部であることが特に好ましい。
【0062】
また、本発明に係る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物では、上記光ラジカル発生剤に加えて、カルボニル化合物などで代表される電子線による硬化速度や感度を上がる増感剤を添加してもよい。
【0063】
増感剤としては、例えば、アントラセン、フェノチアゼン、ぺリレン、チオキサントン、ベンゾフェノンチオキサントンなどが挙げられる。更に、増感色素としては、チオピリリウム塩系色素、メロシアニン系色素、キノリン系色素、スチリルキノリン系色素、ケトクマリン系色素、チオキサンテン系色素、キサンテン系色素、オキソノール系色素、シアニン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム塩系色素などが例示される。
【0064】
具体的なアントラセンの化合物としては、ジブトキシアントラセン、ジプロポキシアントラキノン(川崎化成社製 Anthracure UVS−1331、1221)などが有効である。
【0065】
増感剤を添加する場合、その含有量は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物全量に対して、0.01〜20質量部であることが好ましく、0.01〜10質量部であることがより好ましく、0.1〜3質量部であることが特に好ましい。
【0066】
本発明に係る偏光板は、偏光子の少なくとも一方の面に、接着剤層を介して透明保護フィルムが設けられており、かかる接着剤層は上述した活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物層により形成されたものである。
【0067】
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物により形成された接着剤層は水系接着剤層に比べて、耐久性が高い。本発明においては、接着剤層として、Tgが60℃以上であるものを用い、かつ、接着剤層の厚みが、0.01〜7μmになるように制御することが好ましい。このように、本発明の偏光板では、接着剤層が60℃以上の高Tgになる、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いるとともに、接着剤層の厚さを上記範囲に制御することで、高湿下および高温下の過酷な環境下における耐久性を満足させることができる。偏光板の耐久性を考慮した場合、本発明においては特に、接着剤層のTg(℃)をA、接着剤層の厚み(μm)をBと定義した場合に、数式(1):A−12×B>58、を満足することが好ましい。
【0068】
上記のとおり、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、これにより形成される接着剤層のTgが60℃以上になるように選択されることが好ましく、さらには70℃以上であることが好ましく、さらには75℃以上、さらには100℃以上、さらには120℃以上であることが好ましい。一方、接着剤層のTgが高くなりすぎると偏光板の屈曲性が低下することから、接着剤層のTgは300℃以下、さらには240℃以下、さらには180℃以下にすることが好ましい。
【0069】
また、上記のとおり、接着剤層の厚みは好ましくは0.01〜7μm、より好ましくは0.01〜5μm、さらに好ましくは0.01〜2μm、最も好ましくは0.01〜1μmである。接着剤層の厚みが0.01μmより薄い場合は、接着力自体の凝集力が得られず、接着強度が得られないおそれがある。一方、接着剤層の厚みが7μmを超えると、偏光板が耐久性を満足できない。
【0070】
本発明に係る偏光板は、偏光子の接着剤層を形成する面および/または透明保護フィルムの接着剤層を形成する面に活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を塗工した後、偏光子と透明保護フィルムを貼り合わせる工程、次いで、活性エネルギー線照射によって活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化して接着剤層を形成する工程、を有する。
【0071】
偏光子、透明保護フィルムは、上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を塗工する前に、表面改質処理を行ってもよい。具体的な処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、ケン化処理による処理などが挙げられる。
【0072】
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の塗工方式は、組成物の粘度や目的とする厚みによって適宜に選択される。塗工方式の例として、例えば、リバースコーター、グラビアコーター(ダイレクト,リバースやオフセット)、バーリバースコーター、ロールコーター、ダイコーター、バーコーター、ロッドコーターなどが挙げられる。その他、塗工には、デイッピング方式などの方式を適宜に使用することができる。
【0073】
上記のように塗工した接着剤を介して、偏光子と透明保護フィルムとを貼り合わせる。偏光子と透明保護フィルムの貼り合わせは、ロールラミネーターなどにより行う事ができる。
【0074】
偏光子と透明保護フィルムを貼り合わせた後に、活性エネルギー線(電子線、紫外線など)を照射し、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化して接着剤層を形成する。活性エネルギー線(電子線、紫外線など)の照射方向は、任意の適切な方向から照射することができる。好ましくは、透明保護フィルム側から照射する。偏光子側から照射すると、偏光子が活性エネルギー線(電子線、紫外線など)によって劣化するおそれがある。
【0075】
本発明に係る偏光板を連続ラインで製造する場合、ライン速度は、接着剤の硬化時間によるが、好ましくは1〜500m/min、より好ましくは5〜300m/min、さらに好ましくは10〜100m/minである。ライン速度が小さすぎる場合は、生産性が乏しい、または透明保護フィルムへのダメージが大きすぎ、耐久性試験などに耐えうる偏光板が作製できない。ライン速度が大きすぎる場合は、接着剤の硬化が不十分となり、目的とする接着性が得られない場合がある。
【0076】
なお、本発明の偏光板は、偏光子と透明保護フィルムが、上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物層により形成された接着剤層を介して貼り合されるが、透明保護フィルムと接着剤層の間には、易接着層を設けることができる。易接着層は、例えば、ポリエステル骨格、ポリエーテル骨格、ポリカーボネート骨格、ポリウレタン骨格、シリコーン系、ポリアミド骨格、ポリイミド骨格、ポリビニルアルコール骨格などを有する各種樹脂により形成することができる。これらポリマー樹脂は1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。また易接着層の形成には他の添加剤を加えてもよい。具体的にはさらには粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤などの安定剤などを用いてもよい。
【0077】
易接着層は、通常、透明保護フィルムに予め設けておき、当該透明保護フィルムの易接着層側と偏光子とを接着剤層により貼り合わせる。易接着層の形成は、易接着層の形成材を透明保護フィルム上に、公知の技術により塗工、乾燥することにより行われる。易接着層の形成材は、乾燥後の厚み、塗工の円滑性などを考慮して適当な濃度に希釈した溶液として、通常調整される。易接着層は乾燥後の厚みは、好ましくは0.01〜5μm、さらに好ましくは0.02〜2μm、さらに好ましくは0.05〜1μmである。なお、易接着層は複数層設けることができるが、この場合にも、易接着層の総厚みは上記範囲になるようにするのが好ましい。
【0078】
本発明の偏光板は、偏光子の少なくとも片面に、上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物層により形成された接着剤層を介して、透明保護フィルムが貼り合わされている。
【0079】
偏光子は、特に制限されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルムなどの親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料などの二色性材料を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物などポリエン系配向フィルムなどが挙げられる。これらのなかでもポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。これら偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に、1〜80μm程度である。
【0080】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸してもよし、また延伸してからヨウ素で染色してもよい。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液中や水浴中でも延伸することができる。
【0081】
上記偏光子の片面または両面に設けられる透明保護フィルムを形成する材料としては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れるものが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロースなどのセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)などのスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマーなどが挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミドなどのアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、または上記ポリマーのブレンド物なども上記透明保護フィルムを形成するポリマーの例として挙げられる。透明保護フィルム中には任意の適切な添加剤が1種類以上含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤などが挙げられる。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは50〜99質量%、さらに好ましくは60〜98質量%、特に好ましくは70〜97質量%である。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量が50質量%以下の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性などが十分に発現できないおそれがある。
【0082】
また、透明保護フィルムとしては、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルム、例えば、(A)側鎖に置換および/または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換および/または非置換フェニルならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が挙げられる。具体例としてはイソブチレンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物のフィルムが挙げられる。フィルムは樹脂組成物の混合押出品などからなるフィルムを用いることができる。これらのフィルムは位相差が小さく、光弾性係数が小さいため偏光板の歪みによるムラなどの不具合を解消することができ、また透湿度が小さいため、加湿耐久性に優れる。
【0083】
透明保護フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性などの作業性、薄層性などの点より1〜500μm程度である。特に1〜300μmが好ましく、5〜200μmがより好ましい。
【0084】
なお、偏光子の両面に透明保護フィルムを設ける場合、その表裏で同じポリマー材料からなる透明保護フィルムを用いてもよく、異なるポリマー材料などからなる透明保護フィルムを用いてもよい。
【0085】
上記透明保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート層、反射防止層、スティッキング防止層、拡散層ないしアンチグレア層などの機能層を設けることができる。なお、上記ハードコート層、反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層などの機能層は、透明保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途、透明保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
【0086】
本発明の偏光板は、実用に際して他の光学層と積層した光学フィルムとして用いることができる。その光学層については特に限定はないが、例えば反射板や半透過板、位相差板(1/2や1/4などの波長板を含む)、視角補償フィルムなどの液晶表示装置などの形成に用いられることのある光学層を1層または2層以上用いることができる。特に、本発明の偏光板に更に反射板または半透過反射板が積層されてなる反射型偏光板または半透過型偏光板、偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板、偏光板に更に視角補償フィルムが積層されてなる広視野角偏光板、あるいは偏光板に更に輝度向上フィルムが積層されてなる偏光板が好ましい。
【0087】
偏光板に上記光学層を積層した光学フィルムは、液晶表示装置などの製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるが、予め積層して光学フィルムとしたものは、品質の安定性や組立作業などに優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着層などの適宜な接着手段を用いうる。上記の偏光板やその他の光学フィルムの接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
【0088】
前述した偏光板や、偏光板を少なくとも1層積層されている光学フィルムには、液晶セルなどの他部材と接着するための粘着層を設けることもできる。粘着層を形成する粘着剤は特に制限されないが、例えばアクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、アクリル系粘着剤の如く光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく用いうる。
【0089】
粘着層は、異なる組成又は種類などのものの重畳層として偏光板や光学フィルムの片面又は両面に設けることもできる。また両面に設ける場合に、偏光板や光学フィルムの表裏において異なる組成や種類や厚さなどの粘着層とすることもできる。粘着層の厚さは、使用目的や接着力などに応じて適宜に決定でき、一般には1〜500μmであり、1〜200μmが好ましく、特に1〜100μmが好ましい。
【0090】
粘着層の露出面に対しては、実用に供するまでの間、その汚染防止などを目的にセパレータが仮着されてカバーされる。これにより、通例の取扱状態で粘着層に接触することを防止できる。セパレータとしては、上記厚さ条件を除き、例えばプラスチックフィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体などの適宜な薄葉体を、必要に応じシリコーン系や長鎖アルキル系、フッ素系や硫化モリブデンなどの適宜な剥離剤でコート処理したものなどの、従来に準じた適宜なものを用いうる。
【0091】
本発明の偏光板または光学フィルムは液晶表示装置などの各種装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと偏光板または光学フィルム、及び必要に応じての照明システムなどの構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による偏光板または光学フィルムを用いる点を除いて特に限定はなく、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型などの任意なタイプのものを用いうる。
【0092】
液晶セルの片側又は両側に偏光板または光学フィルムを配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による偏光板または光学フィルムは液晶セルの片側又は両側に設置することができる。両側に偏光板または光学フィルムを設ける場合、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【実施例】
【0093】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明の実施形態はこれらに限定されない。
【0094】
<Tg:ガラス転移温度>
ガラス転移点温度示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分の昇温速度で測定した。サンプルは試料5mgをアルミニウム押え蓋型容器に入れ、クリンプして用いた。
【0095】
<偏光子>
平均重合度2400、ケン化度99.9モル%の厚み75μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の温水中に60秒間浸漬し膨潤させた。次いで、ヨウ素/ヨウ化カリウム(重量比=0.5/8)の濃度0.3%の水溶液に浸漬し、3.5倍まで延伸させながらフィルムを染色した。その後、65℃のホウ酸エステル水溶液中で、トータルの延伸倍率が6倍となるように延伸を行った。延伸後に、40℃のオーブンにて3分間乾燥を行い、偏光子を得た。
【0096】
<透明保護フィルム>
第1の保護フィルムとして、厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(TAC)を60℃に加温した水酸化ナトリウム10質量%水溶液に30秒間浸漬し、その後熱風乾燥機により乾燥させて用いた。第2の保護フィルムとして、厚さ60μmのゼオノアフィルム(日本ゼオン社製)にコロナ処理をしたものを用いた。23℃における接触角は32°であった。
【0097】
<活性エネルギー線>
活性エネルギー線として、下記(A)、(B)および(C)を使用した。なお、(A)および(B)の照度は、Solatell社製Sola−Checkシステムを使用して測定した。
【0098】
(A)紫外線(ガリウム封入メタルハライドランプ) 照射装置:Fusion UV Systems,Inc社製Light HAMMER10 バルブ:Vバルブ ピーク照度:1600mW/cm、積算照射量1000/mJ/cm(波長380〜440nm)
(B)紫外線(LED光源(385nmにピーク照度を持つLED光源)) 照射装置:パナソニック電工社製Aicure UD80 ピーク照度:3900mW/cm、積算照射量300/mJ/cm(波長380〜440nm)
(C)電子線 照射装置:アイエレクトロンビーム社製電子線照射装置 加速電圧:250kV 照射線量20kGy
【0099】
(活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の調整)
実施例1〜3、比較例1〜2
表1に記載の配合表に従い、各成分を混合して50℃で1時間撹拌し、(a)〜(e)の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(実施例1〜3、比較例1〜2)を得た。使用した各成分は以下のとおりである。
【0100】
HEAA(ヒドロキシエチルアクリルアミド、一般式(1)に記載のN−置換アミド系モノマー)、興人社製
4HBA(4−ヒドロキシブチルアクリレート)、大阪有機化学工業社製
ワスマー2MA(N−メトキシメチルアクリルアミド、一般式(1)に記載のN−置換アミド系モノマー)、笠野興産社製
ライトアクリレートDCP−A(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、疎水性の多官能(メタ)アクリレート系モノマー)、共栄社化学社製
ライトアクリレートP−1A(2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、一般式(2)に記載のリン酸基含有(メタ)アクリレート系モノマー)、共栄社化学社製
β−CEA(β−カルボキシエチルアクリレート、酸基含有(メタ)アクリレート系モノマー)、ダイセル・サイテック社製
アクリル酸、東亞合成社製
IRGACURE819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィノキサイド(光ラジカル発生剤)チバ・ジャパン社製
【0101】
【表1】

【0102】
偏光板の製造例1〜5
上記透明保護フィルム上に、実施例1〜3、比較例1〜2に係る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(a)(以下、単に「組成物(a)という」)〜(e)を、MCDコーター(富士機械社製)(セル形状:ハニカム、グラビアロール線数:1000本/inch、回転速度140%/対ライン速)を用いて、厚さ0.5μmになるように塗工し、上記偏光子の両面にロール機で貼り合わせた。その後、貼り合わせた透明保護フィルム側(両側)から、IRヒーターを用いて50℃に加温し(但し、実施例3では加熱なし)、上記活性エネルギー線(A)〜(C)を両面に照射して組成物(a)〜(e)を硬化させた後、70℃で3分間熱風乾燥して(但し、実施例2では熱風乾燥なし)、偏光子の両側に透明保護フィルムを有する偏光板を得た。貼り合わせのライン速度は25m/minで行った。
【0103】
[評価]
実施例および比較例で得られた、偏光板について下記評価を行った。結果を表2に示す。
【0104】
<透明保護フィルムの接着試験>
偏光板を偏光子の延伸方向と平行に200mm、直行方向に20mmの大きさに切り出し、透明保護フィルム(トリアセチルセルロースフィルム、ゼオノアフィルム)と偏光子との間にカッターナイフで切り込みを入れ、偏光板をガラス板に貼り合わせた。テンシロンにより、90度方向に保護フィルムと偏光子とを剥離速度500mm/minで剥離し、その剥離強度を測定した。また、剥離後の剥離面の赤外吸収スペクトルをATR法によって測定し、剥離面の両面が透明保護フィルムに由来するスペクトルであれば○(透明保護フィルムの凝集破壊)、剥離面の両面が接着剤層に由来するスペクトルであれば△(接着剤層の凝集破壊)、剥離面の片面が接着剤層のスペクトル、もう片面が偏光子または透明保護フィルムに由来するスペクトルであれば×(保護フィルムと接着剤層との間の界面剥離)として評価した。
【0105】
<温水浸漬試験>
偏光板を50mm角の大きさに切り出し、60℃の温水に6時間浸漬し、偏光子の透過率が50%以下の面積残存率を測定した。なお、各偏光板の評価は以下の基準に準じて行った。
○;90%以上
△;50〜90%
×;50%未満
【0106】
<ヒートショッククラック試験>
15インチの大きさに切り出した偏光板をガラス板に貼り付け、−40℃から80℃のヒートサイクル試験を行い、100サイクル後の偏光子の延伸方向にクラックが発生しているか否かを、下記の基準にて目視で評価した。
○;偏光子のクラック発生なし
△;偏光板の1辺からクラックが発生しているが、対向辺に到達していない
×;偏光板の両対向辺に到達するクラックが発生した
【0107】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性成分として、下記一般式(1):
CH=C(R)−CONH2−m−(X−O−R (1)
(Rは水素原子またはメチル基を示し、Xは−CH−基または−CHCH−基を示し、Rは−(CH−H基(ただし、nは0,1または2)を示し、mは1または2を示す)で表されるN−置換アミド系モノマー、および
(メタ)アクリロイル基と酸基とが炭素数1〜10の有機基を介して結合した酸基含有(メタ)アクリレート系モノマーを含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
前記有機基が(ポリ)アルキレンオキサイド基である請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
前記酸基がリン酸基である請求項1または2に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
前記酸基含有(メタ)アクリレート系モノマーが、下記一般式(2):
(CH=C(R)−COO−Y)−PO−(OH)3−r (2)
(Rは水素原子またはメチル基を示し、Yは−(CHCHR−O)−(ただし、Rは水素原子、メチル基またはクロロメチル基を示し、sは1〜6を示す)で表される(ポリ)アルキレンオキサイド基を示し、rは1,2または3を示す)で表されるリン酸基含有(メタ)アクリレート系モノマーである請求項1〜3のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
硬化性成分を構成するモノマーの合計量に対する前記酸基含有(メタ)アクリレート系モノマーの割合が、0.01質量%以上10質量%未満である請求項1〜4のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、2個以上の炭素−炭素二重結合を有するモノマーを含有する請求項1〜5のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物層により形成された接着剤層。
【請求項8】
ガラス転移温度(Tg)が60℃以上である請求項7に記載の接着剤層。
【請求項9】
偏光子の少なくとも一方の面に、接着剤層を介して透明保護フィルムが設けられている偏光板であって、
前記接着剤層が請求項1〜6のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物層により形成されたものであることを特徴とする偏光板。
【請求項10】
前記接着剤層のガラス転移温度(Tg)が60℃以上である請求項9に記載の偏光板。
【請求項11】
請求項9または10に記載の偏光板が、少なくとも1枚積層されていることを特徴とする光学フィルム。
【請求項12】
請求項9もしくは10に記載の偏光板、および/または請求項11に記載の光学フィルムが用いられていることを特徴とする画像表示装置。

【公開番号】特開2012−52000(P2012−52000A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194616(P2010−194616)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】