説明

活性エネルギー線硬化型樹脂組成物

【課題】硬化性が良好で、型(とくに金型)からの離型性に優れ、耐傷性、剛性、基材との密着性に優れた硬化物を与える活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供する。
【解決手段】エポキシド(a1)と(メタ)アクリル酸から形成されてなるエポキシ(メタ)アクリレート(A)、(A)を除く(メタ)アクリレート(B)、光重合開始剤(C)および型離型性付与剤(D)からなり、(D)がリン酸エステル(d1)と3級アミン(d2)の塩からなることを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、型(とくに金型)からの離型性に優れた硬化物を与える活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイに使用されるプリズムシートや、プロジェクションTVに使用されるフレネルレンズ、レンチキュラーレンズといった光学レンズは、熱可塑性樹脂の射出成形、あるいは熱プレス成形により製造されるのが一般的であった。これらの製造方法では、製造時の加熱および冷却に長時間を必要とするため生産性が低く、また、光学レンズの熱収縮により、微細構造の再現性が悪く、反るという問題点があった。これらの問題点を解決するため、金型内面に透明樹脂基材がセットされた型内に紫外線硬化型樹脂組成物を流し込み、紫外線を照射して硬化させる方法が実施されている。
近年、ディスプレイの高精彩化に伴い、光学レンズにも高精彩化が要求されてきており、そのため、プリズム頂角が60〜70°、ピッチが数10μmというような、先端部が鋭く精細なレンズを形成する必要がある。しかしながら、該レンズは傷等により損傷し易いことから、その防止が検討されており、ビスフェノール骨格等の剛直な構造を導入する方法(例えば特許文献1参照)、フッ素化合物等の添加で表面に滑性を付与して傷付きにくくする方法(例えば特許文献2参照)、レンズにさらにハードコート層を設ける方法(例えば特許文献3参照)等が提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−240926号公報
【特許文献2】特開2005−272700号公報
【特許文献3】特開平11−326607号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの方法では、金型からの離型性が悪く、割れや破損が頻発し、歩留まりが低下するという問題があった。
本発明の目的は、硬化性が良好で、型(とくに金型)からの離型性に優れ、耐擦傷性、剛性および基材との密着性に優れた硬化物を与える活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、エポキシド(a1)と(メタ)アクリル酸から形成されてなるエポキシ(メタ)アクリレート(A)、(A)を除く(メタ)アクリレート(B)、光重合開始剤(C)および型離型性付与剤(D)からなり、(D)がリン酸エステル(d1)と3級アミン(d2)の塩からなることを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、下記の効果を奏する。
(1)硬化性に優れ、得られる硬化物は型(とくに金型)からの離型性に優れる。
(2)該硬化物は、基材との密着性に優れ、耐擦傷性、および剛性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明におけるエポキシ(メタ)アクリレート(A)はエポキシド(a1)と(メタ)
アクリル酸から形成されてなるものである。
(a1)には、下記の、多価(2価〜6価またはそれ以上)フェノールもしくはそのアルキレンオキシド[炭素数(以下Cと略記。)2〜4。以下、AOと略記。以下同じ。]付加物のポリ(2価〜6価またはそれ以上)グリシジルエーテル、多価(2価〜6価またはそれ以上)アルコールもしくはそのAO付加物のポリ(2価〜6価またはそれ以上)グリシジルエーテルが含まれる。
【0008】
(1)2価フェノールのジグリシジルエーテル
C6〜30の2価フェノール、例えば単環フェノール(カテコール、レゾルシノール等)および多環フェノール[縮合多環フェノール(ジヒドロキシナフタレン等)、ビスフェノール化合物(ビスフェノールAおよび−F等)、ハロゲン化ビスフェノール化合物(ジクロロ−およびテトラクロロビスフェノールA等)、ビフェニル化合物(テトラメチルビフェニル等)等]のジグリシジルエーテル、ビスフェノールAの2モルとエピクロルヒドリン3モルとの反応から得られるジグリシジルエーテル等
(2)3価〜6価またはそれ以上の多価フェノールのポリグリシジルエーテル
C6以上かつMn5,000以下の3価〜6価またはそれ以上の多価フェノールのポリグリシジルエーテル、例えば3価フェノール[ピロガロール、ジヒドロキシナフチルクレゾール、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン等]のジ−およびトリグリシジルエーテル、4価フェノール[テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等]のテトラ−、トリおよびジグリシジルエーテル、6価またはそれ以上の多価フェノール[フェノールもしくはクレゾールノボラック樹脂(Mn200〜5,000)、レゾルシンとアセトンの縮合反応で得られる多価フェノール(Mn400〜5,000)等]のポリグリシジルエーテル等
【0009】
(3)2価アルコールのジグリシジルエーテル
C2〜30の2価アルコール、例えば脂肪族2価アルコール[エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール(以下、それぞれEG、PG、BD、HDと略記)、デカンジオール等]、脂環含有2価アルコール[シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、ノルボルナンジオール、イソボルニルジオール、アダマンタンジオール、シクロペンタジエニルジオール、シクロヘキサンジメタノール、ジシクロペンタジエンジメタノール等]、芳香環含有2価アルコール[キシリレンジオール、ジエタノールベンゼン等]のジグリシジルエーテル等
(4)3価〜6価またはそれ以上の多価アルコールのポリグリシジルエーテル
C6以上かつMn5,000以下の3価〜6価またはそれ以上の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、例えばトリメチロールプロパン(以下TMPと略記)、グリセリン(以下GRと略記)、ペンタエリスリトール(以下PEと略記)およびジPEのポリグリシジルエーテル等
【0010】
(5)多価(2価〜6価またはそれ以上)アルコールまたは多価(2価〜6価またはそれ以上)フェノールのAO付加物のポリグリシジルエーテル
上記(1)〜(4)で例示の多価フェノール、多価アルコールおよびこれらの混合物にAOを付加させた化合物のポリグリシジルエーテル等。
AOとしては、エチレンオキシド(以下、EOと略記)、1,2−プロピレンオキシド(以下、POと略記)、1,3−プロピレンオキシド、1,2−、2,3−、1,3−およびイソブチレンオキシド、テトラヒドロフラン(以下、THFと略記)、およびこれらの混合物等が挙げられる。これらのうち後述する、硬化物と基材との密着性の観点から好ましいのはEOである。
多価フェノールまたは多価アルコールに対するAOの付加モル数は、該硬化物と基材との密着性および硬化物の剛性の観点から好ましくは1〜20モル、さらに好ましくは2〜15モル、とくに好ましくは2〜10モルである。AOが異種の場合の付加形式としては
、ランダムおよび/またはブロックのいずれでもよい。
【0011】
(A)の分子量は、硬化物と基材との密着性および硬化物の剛性の観点から好ましくは150以上かつMn3,000以下、さらに好ましくは180以上かつMn1,500以下である。
(A)中の水酸基の数は、通常2〜6またはそれ以上、硬化物と基材との密着性および工業上の観点から好ましくは2〜6、さらに好ましくは2〜4、とくに好ましくは2〜3である。
(A)中の(メタ)アクリロイル基の数は、通常2〜6またはそれ以上、本発明の樹脂組成物の硬化性および工業上の観点から好ましくは2〜6、さらに好ましくは2〜4、とくに好ましくは2〜3である。
【0012】
本発明における(B)は、上記(A)を除く(メタ)アクリレートであり、(B)には下記の(B1)、(B2)およびこれらの混合物が含まれる。
【0013】
(B1)1個の(メタ)アクリロイル基含有モノマー
C4〜18、例えば脂肪族(メタ)アクリレート[メチル−、エチル−、オクチル−および2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等]、脂環含有(メタ)アクリレート[シクロヘキシル(メタ)アクリレート等]、芳香環含有(メタ)アクリレート[ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等]、複素環含有化合物[テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン等]、[アルキル(C1〜20)]フェノール(C6〜30)のAO1〜10モル付加物の(メタ)アクリレート[例えばフェノールのPO8モル付加物の(メタ)アクリレート、ノニルフェノールのEO8モル付加物の(メタ)アクリレート等]、並びに、前記例示した多価(2価〜6価またはそれ以上)アルコール、および該多価アルコールおよび/または多価(2価〜6価またはそれ以上)フェノールのAO付加物のモノ(メタ)アクリレート
【0014】
(B2)2個〜6個またはそれ以上の(メタ)アクリロイル基含有モノマー
(B2−1)2個の(メタ)アクリロイル基含有モノマー
C8〜30、例えば脂肪族ジ(メタ)アクリレート[EGジ(メタ)アクリレート、1,6−HDジ(メタ)アクリレート等]、脂環含有ジ(メタ)アクリレート[ジメチロールシクロトリデカンジアクリレート等]およびビスフェノール(C13以上かつMn400以下)のAO2〜10モル付加物のジ(メタ)アクリレート[ビスフェノールAのEO2モル、ビスフェノールA、−Fおよび−SのPO4モル付加物の各ジ(メタ)アクリレート等]、並びに、前記例示した多価(2価〜6価またはそれ以上)アルコール、および該多価アルコールおよび/または多価(2価〜6価またはそれ以上)フェノールのAO付加物のジ(メタ)アクリレート
【0015】
(B2−2)3個〜6個またはそれ以上の(メタ)アクリロイル基含有モノマー
多価(3価〜6価またはそれ以上)アルコール(C3〜40)のポリ(メタ)アクリレート、例えばTMPトリ(メタ)アクリレート、GRトリ(メタ)アクリレート、TMP−PO3モル付加物のトリ(メタ)アクリレート、TMP−EO3モル付加物のトリ(メタ)アクリレート、PEトリ−およびPE−テトラ(メタ)アクリレート、PEのEO4モル付加物のトリ−およびテトラ(メタ)アクリレート、ジPEのトリ−、テトラ−、ペンタ−およびヘキサ(メタ)アクリレート
【0016】
上記(B1)、(B2)、およびこれらの混合物のうち、硬化物の基材との密着性および型離型性の観点から好ましいのは(B1)と(B2)の混合物である。(B1)と(B2)の混合物の場合、重量比[(B1)/(B2)]は同様の観点から好ましくは25/75〜90/10である。
【0017】
(B)の分子量は、本発明の樹脂組成物の硬化性および硬化物の基材への密着性の観点から好ましくは100(さらに好ましくは150)以上かつMn1,000(さらに好ましくは800)以下である。
【0018】
本発明における光重合開始剤(C)としては、C8以上かつMn1,000以下、例えばヒドロキシベンゾイル(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインアルキルエーテル等)、ベンゾイルホルメート(メチルベンゾイルホルメート等)、チオキサントン(イソプロピルチオキサントン等)、ベンゾフェノン(ベンゾフェノン等)、リン酸エステル(1,3,5−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等)、ケタール(ベンジルジメチルケタール等)が挙げられる。
(C)のうち硬化物の着色抑制の観点から好ましいのは、ヒドロキシベンゾイルおよびリン酸エステル、さらに好ましいのは2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよび1,3,5−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドである。
【0019】
本発明における型離型性付与剤(D)は、リン酸エステル(d1)と3級アミン(d2)からなる塩を含有してなるものである。
【0020】
リン酸エステル(d1)には、下記一般式(1)で示されるもの、およびこれらの異なる種類の混合物が含まれる。

(R1n−P(=O)−(OH)m (1)

式中、R1はC1〜20もしくはそれ以上のアルコキシ基、C1〜20もしくはそれ以
上のアルコールのAO1〜30モル付加物の活性水素を除いた残基、または[アルキル(C1〜20)]フェノール(C6〜30)のAO1〜30モル付加物の活性水素を除いた残基;m、nはm+n=3を満足する1または2の整数を示す。
AOとしては、組成物の貯蔵安定性、基材との密着性等の観点から好ましいのはEOである。
【0021】
(d1)の具体例としては、ドデカノールのリン酸モノ−および/またはジエステル、トリデカノールのリン酸モノ−および/またはジエステル、テトラデカノールのリン酸モノ−および/またはジエステル、ステアリルアルコールのリン酸モノ−および/またはジエステル、ドデカノールEO2モルまたはPO2モル付加物のリン酸モノ−および/またはジエステル、トリデカノールEO2モルまたはPO2モル付加物のリン酸モノ−および/またはジエステル、テトラデカノールEO2モルまたはPO2モル付加物のリン酸モノ−および/またはジエステル、ステアリルアルコールEO10モル付加物のリン酸モノ−および/またはジエステル、ドデカノールEO10モル付加物のリン酸モノ−および/またはジエステル、トリデカノールEO10モル付加物のリン酸モノ−および/またはジエステル、テトラデカノールEO10モル付加物のリン酸モノ−および/またはジエステル、およびステアリルアルコールEO10モル付加物のリン酸モノ−および/またはジエステル等が挙げられる。
【0022】
これらのうち、(D)の型離型性付与および工業上の観点から好ましいのはドデカノールのリン酸モノ−および/またはジエステル、ステアリルアルコールのリン酸モノ−および/またはジエステル、ステアリルアルコールEO10モル付加物のリン酸モノ−および/またはジエステル、およびトリデカノールEO10モル付加物のリン酸モノ−および/またはジエステル、さらに好ましいのはモノエステル/ジエステルのモル比が1/1のモ
ノエステル/ジエステルの混合物である。
【0023】
3級アミン(d2)としては、C3以上かつMn1,500以下、例えばC3〜30の脂肪族3級アミン、脂肪族1級アミン(C1〜30)のAO2〜30モル付加物および、脂肪族2級アミン(C2〜30)のAO1〜30モル付加物、3級アルカノールアミン(C6〜12)、および1〜3級アルカノールアミン(C2〜12)のAO1〜30モル付加物、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0024】
上記脂肪族3級アミンとしては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ラウリルジメチルアミンおよびジメチルステアリルアミン等が挙げられる。
脂肪族1級アミンのAO付加物としては、ブチルアミンのEO4モル付加物およびPO10モル付加物、ラウリルアミンのEO10モル付加物、ステアリルアミンのEO10モル付加物およびPO15モル付加物等が挙げられる。
脂肪族2級アミンのAO付加物としては、ジエチルアミンのEO4モル付加物およびPO10モル付加物、ジブチルアミンのEO4モル付加物およびPO10モル付加物、ラウリルメチルアミンのEO10モル付加物、メチルステアリルアミンのEO10モル付加物およびPO10モル付加物等が挙げられる。
3級アルカノールアミンとしては、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン等が挙げられる。
1〜3級アルカノールアミンのAO付加物としては、エタノールアミンEO4モル付加物、ブタノールアミンPO4モル付加物、ヘキサノールアミンEO4モル付加物、ドデカノールアミンEO4モル付加物、ドデカノールアミンPO10モル付加物、ジエタノールアミンEO2モル付加物、ジブタノールアミンPO2モル付加物、ジヘキサノールアミンEO2モル付加物、ジブタノールアミンPO10モル付加物、トリエタノールアミンEO3モル付加物、トリエタノールアミンPO12モル付加物等が挙げられる。
上記(d2)のうち、(D)の型離型性付与の観点から好ましいのは脂肪族3級アミン、および脂肪族1級アミンのAO付加物、さらに好ましいのはジメチルステアリルアミン、およびステアリルアミンのEO10モル付加物である。
【0025】
(d1)と(d2)との中和反応における(d1)と(d2)の当量比(d1/d2)は、特に限定はないが、組成物の貯蔵安定性および硬化物の型離型性の観点から好ましくは0.5/1〜3/1、さらに好ましくは0.8/1〜2/1である。
(D)には、(d1)と(d2)との中和反応により生成した塩、および未反応の(d1)および/または(d2)が含まれる。(D)中の該塩の含有量は、組成物の貯蔵安定性、型離型性の観点から好ましくは65〜100%、さらに好ましくは80〜100%である。
本発明の組成物に(D)を含有させる方法には、(1)(d1)と(d2)を予め反応させた後に、他の成分と混合する方法、および(2)(d1)と(d2)を別々に他の成分と混合する方法が含まれる。これらの方法のうち、組成物の貯蔵安定性の観点から好ましいのは(1)の方法である。
【0026】
(d1)と(d2)からなる塩の具体例としては、ドデカノールのリン酸モノ−および/またはジエステル−ジメチルステアリルアミンの塩、トリデカノールのリン酸モノ−および/またはジエステル−ジメチルステアリルアミンの塩、テトラデカノールのリン酸モノ−および/またはジエステル−ジメチルステアリルアミンの塩、ステアリルアルコールのリン酸モノ−および/またはジエステル−ジメチルステアリルアミンの塩、テトラデカノールEO10モルまたはPO4モル付加物のリン酸モノ−および/またはジエステル−ラウリルジメチルアミンの塩、テトラデカノールEO10モルまたはPO5モル付加物のリン酸モノ−および/またはジエステル−ジメチルステアリルアミンの塩、ラウリルアルコールEO2モルまたはPO2モル付加物のリン酸モノ−および/またはジエステル−ラ
ウリルアミンのEO10モルまたはPO5モル付加物の塩、テトラデカノールEO2モルまたはPO2モル付加物のリン酸モノ−および/またはジエステル−ステアリルアミンのEO10モルまたはPO5モル付加物の塩およびステアリルアルコールEO10モルまたはPO5モル付加物のリン酸モノ−および/またはジエステル−ステアリルアミンのEO10モルまたはPO4モル付加物の塩等が挙げられる。
【0027】
これらのうち、型離型性付与および工業上の観点から好ましいのはドデカノールのリン酸モノ−および/またはジエステル−ジメチルステアリルアミンの塩、ステアリルアルコールのリン酸モノ−および/またはジエステル−ジメチルステアリルアミンの塩、およびステアリルアルコールEO10モル付加物のリン酸モノ−および/またはジエステル−ステアリルアミンのEO10モル付加物の塩、さらに好ましいのはリン酸エステル(d1)がモル比1/1のモノエステル/ジエステルの混合物であるそれぞれの塩である。
【0028】
(A)〜(D)の合計重量に基づく各成分の割合(%)は、(A)は硬化物の剛性および基材への密着性の観点から好ましくは5〜70、さらに好ましくは20〜55、特に好ましくは25〜45;
(B)は硬化物の耐擦傷性および基材への密着性の観点から好ましくは25〜90、さらに好ましくは45〜80、特に好ましくは55〜75;
(C)は硬化性および着色抑制の観点から好ましくは0.1〜20、さらに好ましくは0.3〜10、特に好ましくは0.5〜5;
(D)は型離型性付与と基材との密着性および硬化物の高屈折率化の観点から好ましくは0.01〜5、さらに好ましくは0.03〜3、特に好ましくは0.05〜1である。
【0029】
本発明の組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で必要によりさらに塗料、インキに使用される種々の添加剤(E)を含有させてもよい。(E)には、無機微粒子(E1)、有機顔料(E2)、分散剤(E3)、消泡剤(E4)、レベリング剤(E5)、シランカップリング剤(E6)、チクソトロピー性付与剤(増粘剤)(E7)、スリップ剤(E8)、酸化防止剤(E9)および紫外線吸収剤(E10)が含まれる。
(E)の合計の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常60%以下、好ましくは0.005〜50%である。
【0030】
無機微粒子(E1)としては、アルミナ[酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミナホワイト(アルミナ水和物)、シリカアルミナ(アルミナとシリカの融着物、アルミナの表面にシリカをコーティングしたもの等)]、ジルコニア、金属炭化物(炭化タングステン、炭化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素等)、ダイヤモンド、カーボンブラック(チャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック等)、シリカ(微粉ケイ酸、含水ケイ酸、ケイ藻、コロイダルシリカ等)、ケイ酸塩(微粉ケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸ソーダ、ケイ酸カルシウム、タルク、ソープストーン、ステアライト等)、炭酸塩[沈降性(活性、乾式、重質または軽質)炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等]、クレー(カオリン質クレー、セリサイト質クレー、バイロフィライト質クレー、モンモリロナイト質クレー、ベントナイト、酸性白土等)、硫酸塩[硫酸アルミニウム(硫酸バンド、サチンホワイト等)、硫酸バリウム(バライト粉、沈降性硫酸バリウム、リトポン等)、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム(石コウ)(無水石コウ、半水石コウ等)等]、鉛白、雲母粉、亜鉛華、酸化チタン、活性フッ化カルシウム、セメント、石灰、亜硫酸カルシウム、二硫化モリブデン、アスベスト、ガラスファイバー、ロックファイバーおよびマイクロバルーン等が挙げられる。
【0031】
これらのうち硬化物の耐擦傷性および組成物、硬化物の着色抑制の観点から好ましいのはアルミナ、シリカ、ケイ酸塩、炭酸塩、硫酸塩および酸化チタン、さらに好ましいのは
シリカ、沈降性炭酸カルシウム、硫酸バリウムおよび酸化チタンである。
(E1)は、2種以上併用してもよく、また2種以上が複合化されたもの(例えばシリカに酸化チタンが融着)でもよい。(E1)の形状は、特に限定されず、例えば不定形状、球状、中空状、多孔質状、花弁状、凝集状および粒状のいずれでもよい。
(E1)の体積平均粒径は通常0.01〜1μmである。
(E1)の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常50%以下、添加効果および硬化物の可撓性の観点から好ましくは1〜30%、さらに好ましくは3〜25%である。
【0032】
有機顔料(E2)としては、下記のものが挙げられる。
(1)アゾ系顔料
不溶性モノアゾ顔料(トルイジンレッド、パーマネントカーミンFB、ファストイエローG等)、不溶性ジスアゾ顔料(ジスアゾイエローAAA、ジスアゾオレンジPMP等)、アゾレーキ(溶性アゾ顔料)(レーキレッドC、ブリリアントカーミン6B等)、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等
(2)多環式顔料
フタロシアニンブルー、インダントロンブルー、キナクリドンレッド、ジオキサジンバイオレット等
(3)染つけレーキ
塩基性染料(ビクトリアピュアブルーBOレーキ等)、酸性染料(アルカリブルートーナー等)等
(4)その他
アジン系顔料(アニリンブラック等)、昼光けい光顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料等
(E2)の使用量は、組成物の全重量に基づいて、通常50%以下、添加効果および硬化物の可撓性の観点から好ましくは5〜40%、さらに好ましく10〜30%である。
【0033】
分散剤(E3)としては、有機分散剤[高分子分散剤(Mn2,000〜500,000)および低分子分散剤(分子量100以上かつMn2,000未満)]および無機分散剤が挙げられる。
【0034】
高分子分散剤としては、ナフタレンスルホン酸塩[アルカリ金属(NaおよびK等)塩、アンモニウム塩等]のホルマリン縮合物、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリアクリル酸塩、ポリ(2〜4)カルボン酸共重合体(マレイン酸/グリセリン/モノアリルエーテル共重合体等)塩、カルボキシメチルセルロース(Mn1,000〜10,000)、ポリビニルアルコール(Mn1,000〜100,000)等が挙げられる。
【0035】
低分子分散剤としては、下記のものが挙げられる。
(1)ポリオキシアルキレン型
脂肪族アルコール(C4〜30)、[アルキル(C1〜30)]フェノール、脂肪族(C4〜30)アミンおよび脂肪族(C4〜30)アミドのAO1〜30モル付加物
脂肪族アルコールとしては、n−、i−、sec−およびt−ブタノール、オクタノール、ドデカノール等;(アルキル)フェノールとしては、フェノール、メチルフェノールおよびノニルフェノール等;脂肪族アミンとしては、ラウリルアミンおよびメチルステアリルアミン等;および脂肪族アミドとしては、ステアリン酸アミド等が挙げられる。
(2)多価アルコール型
C4〜30の脂肪酸(ラウリン酸、ステアリン酸等)と多価(2価〜6価またはそれ以上)アルコール(例えばGR、PE、ソルビトールおよびソルビタン)のモノエステル化合物
(3)カルボン酸塩型
C4〜30の脂肪酸(前記に同じ)のアルカリ金属(前記に同じ)塩
(4)硫酸エステル型
C4〜30の脂肪族アルコール(前記に同じ)および脂肪族アルコールのAO1〜30モル付加物の硫酸エステルアルカリ金属(前記に同じ)塩等
【0036】
(5)スルホン酸塩型
[アルキル(C1〜30)]フェノール(前記に同じ)のスルホン酸アルカリ金属(前記に同じ)塩
(6)リン酸エステル型
C4〜30の脂肪族アルコール(前記に同じ)および脂肪族アルコールのAO1〜30モル付加物のモノまたはジリン酸エステルの塩[アルカリ金属(前記に同じ)塩、4級アンモニウム塩等]
(7)1〜3級アミン塩型
C4〜30の脂肪族アミン[1級(ラウリルアミン等)、2級(ジブチルアミン等)および3級アミン(ジメチルステアリルアミン等)]塩酸塩、トリエタノールアミンとC4〜30の脂肪酸(前記に同じ)のモノエステルの無機酸(塩酸、硫酸、硝酸およびリン酸等)塩
(8)4級アンモニウム塩型
C4〜30の4級アンモニウム(ブチルトリメチルアンモニウム、ジエチルラウリルメチルアンモニウム、ジメチルジステアリルアンモニウム等)の無機酸(上記に同じ)塩等が挙げられる。
【0037】
無機分散剤としては、ポリリン酸のアルカリ金属(前記に同じ)塩およびリン酸系分散剤(リン酸、モノアルキルリン酸エステル、ジアルキルリン酸エステル等)等が挙げられる。
(E3)の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常10%以下、添加効果および硬化物の耐擦傷性の観点から好ましくは0.05〜5%である。
【0038】
消泡剤(E4)としては、低級アルコール(C1〜6)(メタノール、ブタノール等)、高級アルコール(C8〜18)(オクチルアルコール、ヘキサデシルアルコール等)、高級脂肪酸(C10〜20)(オレイン酸、ステアリン酸等)、高級脂肪酸エステル(C11〜30)(グリセリンモノラウリレート)、リン酸エステル(トリブチルホスフェート、テトラデカノールEO2モル付加物リン酸エステル、等)、金属石けん(ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム等)、ポリエーテル[ポリエチレングリコール(以下、PEGと略記)(Mn200〜10,000)、ポリプロピレングリコール(以下、PPGと略記)(Mn200〜10,000)等]、シリコーン(ジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フルオロシリコーンオイル等)および鉱物油系(シリカ粉末を鉱物油に分散させたもの)等が挙げられる。
(E4)の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常3%以下、添加効果および硬化物の耐擦傷性の観点から好ましくは0.01〜2%である。
【0039】
レベリング剤(E5)としては、PEG型非イオン界面活性剤(ノニルフェノールEO1〜40モル付加物、ステアリン酸EO1〜40モル付加物等)、多価アルコール型非イオン界面活性剤(ソルビタンパルミチン酸モノエステル、ソルビタンステアリン酸モノエステル、ソルビタンステアリン酸トリエステル等)、フッ素系界面活性剤(パーフルオロアルキルEO1〜50モル付加物、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルベタイン等)、変性シリコーンオイル[ポリエーテル変性シリコーンオイル、(メタ)アクリレート変性シリコーンオイル等]等が挙げられる。
(E5)の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常3%以下、添加効果および硬化物の耐擦傷性の観点から好ましくは0.1〜2%である。
【0040】
シランカップリング剤(E6)としては、アミノ基含有シランカップリング剤(γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−フェニルアミノフロピルトリメトキシシラン等)、ウレイド基含有シランカップリング剤(ウレイドプロピルトリエトキシシラン等)、ビニル基含有シランカップリング剤[ビニルエトキシシラン、ビニルメトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン等]、メタクリレート基含有シランカップリング剤(γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等)、エポキシ基含有シランカップリング剤(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等)、イソシアネート基含有シランカップリング剤(γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等)、ポリマー型シランカップリング剤(ポリエトキシジメチルシロキサン、ポリエトキシジメチルシロキサン等)、カチオン型シランカップリング剤[N−(N−ベンジル−β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩等]等が挙げられる。
(E6)の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常10%以下、添加効果および硬化物の耐擦傷性の観点から好ましくは0.5〜7%である。
【0041】
チクソトロピー性付与剤(増粘剤)(E7)としては、無機チクソトロピー性付与剤[ベントナイト、有機処理ベントナイト(表面ワックスコーティング処理ベントナイト等)および極微細表面処理炭酸カルシウム(コロイダル炭酸カルシウム等)等]および有機チクソトロピー性付与剤(水添ヒマシ油ワックス、ステアリン酸カルシウム、オレイン酸アルミニウム、重合アマニ油等)が挙げられる。
(E7)の使用量は本発明の組成物の全重量に基づいて、通常20%以下、添加効果および硬化物の可撓性の観点から好ましくは0.5〜10%である。
【0042】
スリップ剤(E8)としては、高級脂肪酸エステル(ステアリン酸ブチル等)、高級脂肪酸アミド(エチレンビスステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等)、金属石けん(ステアリン酸カルシウム、オレイン酸アルミニウム等)、ワックス[パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、カルボキシル基含有ポリエチレンワックス等)等]およびシリコーン(例えばジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイルおよびフルオロシリコーンオイル)等が挙げられる。
(E8)の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常5%以下、添加効果および硬化物の耐擦傷性の観点から好ましくは0.01〜2%である。
【0043】
酸化防止剤(E9)としては、ヒンダードフェノール化合物〔トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル〕およびアミン化合物(n−ブチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミノメチルメタクリレート等)が挙げられる。
(E9)の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常3%以下、添加効果および硬化物の耐擦傷性の観点から好ましくは0.005〜2%である。
【0044】
紫外線吸収剤(E10)としては、ベンゾトリアゾール化合物[2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等]、トリアジン化合物〔2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール〕
、ベンゾフェノン(2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン等)、シュウ酸アニリド化合物(2−エトキシ−2’−エチルオキサリック酸ビスアニリド等)が挙げられる。
(E10)の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常3%以下、添加効果および硬化性、硬化物の耐擦傷性の観点から好ましくは0.005〜2%である。
【0045】
上記(E1)〜(E10)の間で添加剤が同一で重複する場合は、それぞれの添加剤が該当する添加効果を奏する量を他の添加剤としての効果に関わりなく使用するのではなく、他の添加剤としての効果も同時に得られることをも考慮し、使用目的に応じて使用量を調整するものとする。
【0046】
本発明の組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で必要により、さらに熱硬化触媒(F1)および光酸発生剤(F2)を含有させることができる。
(F1)としては、過酸化物(t−ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド等)およびアゾ化合物(アゾビスイソブチロニトリルおよびアゾビスイソバレロニトリル等)等が挙げられる。これらのうち組成物の安定性および反応性の観点から好ましいのは過酸化物、さらに好ましいのはt−ブチルパーオキシベンゾエートおよびメチルエチルケトンパーオキシドである。
【0047】
本発明の組成物が(F1)を含有する場合は、後述の活性エネルギー線以外に熱でも硬化させることができ、耐薬品性および耐擦傷性に優れた硬化物を得ることができる。熱による硬化は、通常オーブンで50〜200℃で1分〜20時間、好ましくは80〜150℃で10分〜10時間加熱処理される。
【0048】
(F1)の使用量は、本発明の組成物の(A)と(B)の合計重量に基づいて、通常20%以下、好ましくは0.1〜10%である。
【0049】
(F2)としては、C8以上かつMn1,000以下、例えば、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、ピリジニウム塩、鉄−アレーン錯体が挙げられる。
スルホニウム塩としては、例えば、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)−フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)−フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、4−ジ(p−トルイル)スルホニオ−4−t−ブチルフェニルカルボニル−ジフェニルスルフィドヘキサフルオロホスフェート、4−ジ(p−トルイル)スルホニオ−4−t−ブチルフェニルカルボニル−ジフェニルスルフィドヘキサフルオロアンチモネート、7−ジ(p−トルイル)スルホニオ−2−イソプロピル−チオキサントンヘキサフルオロホスフェート、7−ジ(p−トルイル)スルホニオ−2−イソプロピル−チオキサントンヘキサフルオロアンチモネート、および特開平7−61964号公報、特開平8−165290号公報、米国特許第4231951号明細書、米国特許第4256828号明細書等に記載の芳香族スルホニウム塩が挙げられる。
ヨードニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、および特開平6−184170号公報、米国特許第4256828号明細書等に記載の芳香族ヨードニウム塩が挙げられる。
ホスホニウム塩としては、例えば、テトラフェニルホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート、および特開平6−157624号公報等に記載の芳香族ホスホニウム塩が挙げられる。
また、カチオン重合開始剤であるピリジニウム塩としては、例えば、特許公報第2519480号公報、特開平5−222112号公報等に記載のピリジニウム塩が挙げられる

これらの(F2)のうち貯蔵安定性の観点から好ましいのは、スルホニウム塩である。
【0050】
(F2)の使用量は、本発明の組成物の(A)と(B)の合計重量に基づいて、通常20%以下、好ましくは0.1〜10%である。
【0051】
本発明の組成物は、(1)(A)〜(D)および必要により(E)、(F)を一括して混合する方法か、(2)(A)〜(D)を予め一括混合し、該混合物に必要により(E)、(F)を添加して混合する方法により製造することができる。これらのうち製造上の観点から好ましいのは(1)の方法である。
【0052】
本発明の組成物は、成形体製造の場合、型(金型、樹脂型等)への塗工の際に、塗工に適した粘度に調整するために、必要に応じて溶剤で希釈した塗料とすることができる。溶剤の使用量は、該組成物の重量に基づいて通常2,000%以下、生産性および塗工性の観点から好ましくは10〜500%である。また、塗料の粘度は、使用時の温度(通常5〜60℃)で、通常5〜500,000mPa・s、塗工性の観点から好ましくは50〜10,000mPa・sである。
【0053】
該希釈溶剤としては、本発明の組成物中の樹脂分を溶解するものであれば特に限定されない。具体的には、芳香環含有炭化水素(C7〜10、例えばトルエン、キシレンおよびエチルベンゼン)、エステルまたはエーテルエステル(C4〜10、例えば酢酸エチル、酢酸ブチルおよびメトキシブチルアセテート)、エーテル(C4〜10、例えばジエチルエーテル、THF、EGのモノエチルエーテル、EGのモノブチルエーテル、PGのモノメチルエーテルおよびDEGのモノエチルエーテル)、ケトン(C3〜10、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ−n−ブチルケトンおよびシクロヘキサノン)、アルコール(C1〜10、例えばメタノール、エタノール、n−およびi−プロパノール、n−、i−、sec−およびt−ブタノール、2−エチルヘキシルアルコールおよびベンジルアルコール)、アミド(C3〜6、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等)、スルホキシド(C2〜4、例えばジメチルスルホキシド)、水、およびこれらの2種以上の混合溶剤が挙げられる。
これらの溶剤のうち取扱い性の観点から好ましいのは沸点が70〜100℃のエステル、ケトンおよびアルコール、さらに好ましいのは酢酸エチル、メチルエチルケトン、i−プロパノールおよびこれらの混合物である。
【0054】
本発明の組成物は、必要により溶剤で希釈して、基材の少なくとも片面の少なくとも一部に塗布し、必要により乾燥させた後、後述する活性エネルギー線を照射して硬化させることにより基材の表面および/または裏面の少なくとも一部に硬化物(コーティング膜)を有する被覆物を得ることもできる。
該塗工に際しては、通常用いられる装置、例えば塗工機[バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター(サイズプレスロールコーター、ゲートロールコーター等)、エアナイフコーター、スピンコーター、ブレードコーター等]が使用できる。塗工膜厚は、乾燥硬化後の膜厚として、通常0.5〜300μm、乾燥性、硬化性の観点から好ましい上限は250μm、耐擦傷性、耐溶剤性、耐汚染性の観点から好ましい下限は1μmである。
【0055】
本発明の組成物を溶剤で希釈して使用する場合は、塗工後に乾燥するのが好ましい。乾燥方法としては、例えば熱風乾燥(ドライヤー等)が挙げられる。乾燥温度は、通常10〜200℃、塗膜の平滑性および外観の観点から好ましい上限は150℃、乾燥速度の観点から好ましい下限は30℃である。
【0056】
本発明における活性エネルギー線には、紫外線、電子線、X線、赤外線および可視光線が含まれる。これらのうち硬化性と樹脂劣化防止の観点から好ましいのは紫外線と電子線である。
【0057】
本発明の組成物を紫外線照射で硬化させるに際しては、種々の紫外線照射装置〔アイグランデージ[商品名、アイグラフィック(株)製]、メタルハライドランプ等〕を使用することができる。紫外線の照射量(mJ/cm2)は、通常10〜10,000、組成物
の硬化性の観点から好ましい下限は、100、硬化物の可撓性の観点から好ましい上限は5,000である。
【0058】
本発明の組成物を電子線照射で硬化させるに際しては、種々の電子線照射装置〔例えばエレクトロンビーム[岩崎電気(株)製]〕を使用することができる。電子線の照射量(Mrad)は、通常0.5〜20、組成物の硬化性の観点から好ましい下限は1、硬化物の可撓性、並びに硬化物(コーティング膜)または基材の損傷を避けるとの観点から、好ましい上限は15である。
【0059】
本発明の組成物は、通常、活性エネルギー線(紫外線、電子線、X線、赤外線、可視光線等)により硬化させるが、必要により前記熱硬化触媒(F1)を含有させた場合は熱で硬化させることもできる。例えば、成形体の製造において、生産性の観点から、型面に本発明の組成物を塗工し、まず活性エネルギー線で型から離型できる程度に硬化させた後、熱で完全硬化させる方法を採用することができる。
【0060】
本発明の硬化物の剛性は、引張弾性率(引張速度50mm/分、単位はMPa)で表され、耐擦傷性および基材への密着性の観点から好ましくは1,500〜4,500、さらに好ましくは2,000〜4,000である。該剛性は、組成物中の(A)の含有量を増減することで上記好ましい範囲に調整することができる。
【0061】
本発明の硬化物の屈折率は、光学部材への適用および合成のしやすさの観点から好ましくは1.500〜1.580、さらに好ましくは1.530〜1.570である。屈折率は、硬化物中の(A)および(B)に由来するベンゼン骨格含量を増減することにより調整することができる。該ベンゼン骨格含量は、(A)と(B)の合計重量に基づくベンゼン骨格構成炭素の割合BZ(%)で表され、硬化物が上記好ましい範囲の屈折率を有するためのBZ(%)は、好ましくは15〜50、さらに好ましくは18〜45である。
【0062】
本発明の組成物は、基材のコーティング剤等としても用いられ、得られる被覆物は光学部材、電気・電子部材等として使用することができる。適用される基材としては、特に限定はされないが、例えば紙、プラスチック、ガラスおよび金属が挙げられる。具体的には、紙(例えば薄葉紙、紙間強化紙、チタン紙、ラテックス含浸紙および石膏ボード用原紙)、プラスチック[プラスチック(塩化ビニル、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート等)フィルム、プラスチック(ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、メチルメタクリレート/スチレン共重合物等)板等]、ガラス板、銅板、鉄板等が挙げられる。
【0063】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下において部は重量部、%は重量%を示す。
【0064】
実施例1〜11、比較例1〜2
表1の組成に従って配合し、樹脂組成物(実施例1〜11、比較例1〜2)を得た。表中の配合成分は下記のとおりである。なお、型離型性付与剤用の各成分は予め所定量配合して塩を形成させた後に他の成分に混合した。
モノマー(A−1):ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジアクリレート
モノマー(A−2):プロピレングリコールジグリシジルエーテルのジアクリレート
モノマー(A−3):ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルのジアクリレート
(Mn1,500)
モノマー(A−4):ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジメタクリレート
モノマー(B−1):イソボルニルアクリレート
モノマー(B−2):フェノキシエチルアクリレート
モノマー(B−3):ビスフェノールAのEO4モル付加物ジアクリレート
モノマー(B−4):DPEのペンタアクリレート/ヘキサアクリレート=重量比60/
40の混合物
モノマー(B−5):EGジメタクリレート
光重合開始剤(C−1):1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[商品名「イ
ルガ184」、チバ・スペシャリティケミカルズ(株)製]
型離型性付与剤用成分(d1−1):ドデカノールのリン酸エステル(モノエステル
/ジエステル=モル比1/1)
型離型性付与剤用成分(d1−2):ステアリルアルコールのリン酸エステル(モノ
エステル/ジエステル=モル比1/1)
型離型性付与剤用成分(d1−3):ステアリルアルコールEO10モル付加物のリ
ン酸エステル(モノエステル/ジエステル=モル比1/1)
型離型性付与剤用成分(d2−1):ジメチルステアリルアミン
型離型性付与剤用成分(d2−2):ステアリルアミンEO10モル付加物
【0065】
【表1】

【0066】
上記樹脂組成物およびその硬化物について、下記項目を評価した。結果を表2に示す。1.粘度
該組成物を、高さ7cm、口径30mmのガラス容器(50ml)に入れ、25℃での粘度をBL型粘度計[東京計器(株)製]を用いて測定した。
【0067】
2.弾性率
(i)硬化物作成法
ガラス板[商品名「GLASS PLATE」、アズワン(株)製、タテ200mm×ヨコ200mm×厚さ5mm、以下同じ。]の周辺部にセットしたスペーサー枠(厚さ10μm、幅50mm)の枠内に試料を充填し、さらにその上にガラス板を重ね、ニップローラーで挟んで空気を押し出した。その後紫外線照射装置を用いて、1,000mJ/cm2の紫外線を照射した。その後、ガラス板を取り外し、硬化物を得た。これをダンベル
状に切り出し、試験片とした。
(ii)弾性率評価
オートグラフ[(株)島津製作所製]を用いて、試験速度50mm/分で引張弾性率を測定した(単位はMPa)。
【0068】
3.耐擦傷性
(i)硬化物作成法
ガラス板の周辺部にセットしたスペーサー枠(厚さ10μm、幅10mm)の枠内に試料を充填し、さらにその上にPETフィルム基材[商品名「A−4300」、東洋紡(株)製、タテ200mm×ヨコ200mm×厚さ0.1mm]を重ね、ニップローラーで挟んで空気を押し出した。その後紫外線照射装置を用いて、PETフィルム側から、1,000mJ/cm2の紫外線を照射した。その後、ガラス板を取り外し、片面に硬化物(膜
)を有するPETフィルム付き成形体を得た。
(ii)耐擦傷性評価
面ファスナー[商品名「マジクロス」、型番1K2L、伸和(株)製]を用いて硬化膜上を10往復擦り、JIS K−7361−1に準じ、全光線透過率測定装置を用いてヘーズを測定した(単位は%)。ヘーズ値が小さいほど耐擦傷性に優れることを示す。
【0069】
4.型離型性および基材との密着性
該組成物を35℃に温度調整し、予めクロムメッキを内面に施した金型(タテ50cm、ヨコ50cm、金型温度35℃)にディスペンサーを用いて厚さ50〜150μmとなるように塗工した。次にメチルメタクリレート系共重合物からなる厚さ2mm(タテ50cm×ヨコ50cm)の透明基材[商品名「スミペックスHT」、住友化学(株)製]を、上記金型に塗工した樹脂の上から空気が入らないように加圧積層した。さらに、該基材の上の方向から紫外線照射装置を用いて1,000mJ/cm2の紫外線を照射して該組
成物を硬化させた。基材付き成形体(膜)の金型からの離型性と、基材との密着性を次の方法で評価した。
【0070】
(1)型離型性(型からの離型の難易度)
基材つき硬化物(膜)(基材被覆物)を、金型からゆっくり引き剥がした際の型離型性を下記の観点で評価した。

○ 離型が容易
× 離型が困難で、離型時に膜の変形あり

(2)基材との密着性[硬化物(膜)と基材との密着性]
基材付き硬化物(膜)の硬化物(膜)の表面にナイフで1mm幅に切れ目を入れて碁盤目(10×10個)を作成し、該碁盤目上にセロハン粘着テープを貼り付け90度剥離を行い、基材から剥離した硬化物(膜)の個数を評価した。
【0071】
【表2】

表2中、比較例1の、型離型性を除く項目の評価用試験片の作成に当っては金型に予め外部離型剤[商品名「ダイフリー」、ダイキン工業(株)製]を塗布した。それ以外の試験片作成時は、型に外部離型剤は塗布しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の組成物を硬化させてなる硬化物は、耐傷性、剛性、基材との密着性に優れ、型(とくに金型)からの離型性が良好であることから、微細加工による高精彩化が要求される光学レンズ等に幅広く用いられ極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシド(a1)と(メタ)アクリル酸から形成されてなるエポキシ(メタ)アクリレート(A)、(A)を除く(メタ)アクリレート(B)、光重合開始剤(C)および型離型性付与剤(D)からなり、(D)がリン酸エステル(d1)と3級アミン(d2)の塩からなることを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
(A)〜(D)の合計重量に基づいて、(A)が5〜70%、(B)が25〜90%、(C)が0.1〜20%、(D)が0.01〜5%である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
請求項1または2記載の組成物からなるコーティング剤。
【請求項4】
請求項1または2記載の組成物を硬化させてなる硬化物。
【請求項5】
請求項4記載の硬化物からなる光学部材または電気・電子部材。
【請求項6】
請求項1または2記載の組成物を、型面に塗工し、該塗工物に透明基材を加圧積層して、該基材上から活性エネルギー線を照射して硬化させ、型から離型することを特徴とする成形体の製造方法。

【公開番号】特開2009−7568(P2009−7568A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−141649(P2008−141649)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】