説明

活性エネルギー線硬化型樹脂組成物

【課題】 本発明は、高分子量で且つ貯蔵安定性に優れたアクリルアクリレート化合物であって、活性エネルギー線照射前にタックフリーの塗膜表面を形成し、活性エネルギー線照射後に、優れた硬度や耐擦傷性を有し、低硬化収縮性の硬化膜を得る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供することにある。
【解決手段】分子中にエポキシ基を含有するエチレン性不飽和化合物の重合体(A)にα,β−不飽和カルボン酸(B)を付加させてなる、(メタ)アクリル当量200〜500g/eq、重量平均分子量が50,000〜200,000の反応生成物(C)と飽和有機モノカルボン酸成分(D)を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯蔵安定性に優れ、活性エネルギー線照射前にタックフリーの塗膜を形成し、活性エネルギー線照射後に優れた硬度や耐擦傷性を有し、硬化収縮し難い(以下、低硬化収縮性と略することがある)硬化膜が得られる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。詳しくは、プラスチック、木材、ガラス、金属等向けの塗料材料、各種フィルム基材の保護層、転写材の保護層、フラットパネルディスプレー、フォトレジスト等の電子基板・光学関連材料、活性エネルギー線硬化型インキ用の樹脂等として用いることができる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紫外線や電子線等の活性エネルギー線の照射により成形品表面を被覆し、保護層を形成する方法として、例えば塗装法や転写法があり、保護層として使用される活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の積極的な開発が行われている。しかしながら、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の多くは、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート等のオリゴマーと総称される分子量の低い化合物であるために、活性エネルギー線照射による光硬化前の塗膜は液状もしくはタックを有する未乾燥の状態にあり、活性エネルギー線照射前の塗膜にゴミや粉塵が付着して外観不良を引き起こし、生産効率の悪化を招くことがある。更に、分子量が低いことから、活性エネルギー線硬化の際に体積収縮が起きやすく、硬化膜が硬化収縮して、塗装物の塗膜が割れたり、フィルム基材に塗工した場合には、フィルムがカールする等の問題が生じる。
【0003】
これらの問題を解決するために比較的高分子量の設計が可能で、低硬化収縮性を有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物として、アクリルアクリレートと称される化合物の開発が行われている(例えば、特許文献1、2、3参照)。しかしながら、タックフリー性・低硬化収縮性を得るために、更なる高分子量化が求められているが、貯蔵安定性が悪化する点や合成時にゲル化する問題があるために、高分子量化が困難であり、高分子量化が図れたとしても、貯蔵安定性やゲル化の問題を回避するために、活性エネルギー線の照射により硬化する官能基であるアクリロイル基やメタクリロイル基の導入量に制限があり、活性エネルギー線照射後の塗膜の硬度や耐擦傷性が劣る問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−290491号公報
【特許文献2】WO2004/039856号公報
【特許文献3】特開2008−69303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高分子量で且つ貯蔵安定性に優れ、活性エネルギー線照射前にタックフリーの塗膜表面を形成し、活性エネルギー線照射後に、優れた硬度や耐擦傷性を有し、低硬化収縮性の硬化膜を得る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、分子中にエポキシ基を含有するエチレン性不飽和化合物の重合体にα,β−不飽和カルボン酸を付加させてなる、(メタ)アクリル当量200〜500g/eq、重量平均分子量が50,000〜200,000の反応生成物と飽和有機モノカルボン酸成分を含有させることにより得られる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が、高分子量で且つ貯蔵安定性に優れ、また、活性エネルギー線照射前にタックフリーの塗膜表面を形成し、活性エネルギー線照射後に、優れた硬度や耐擦傷性を有し、低硬化収縮性の硬化膜を得ることを見出し本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)分子中にエポキシ基を含有するエチレン性不飽和化合物の重合体(A)にα,β−不飽和カルボン酸(B)を付加させてなる、(メタ)アクリル当量200〜500g/eq、重量平均分子量が50,000〜200,000の反応生成物(C)と飽和有機モノカルボン酸成分(D)を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(発明1)、
(2)反応生成物(C)の100質量部に対し、飽和有機モノカルボン酸成分(D)を2.5質量部以下含有する前記(1)の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物 (発明2)、
(3)飽和有機モノカルボン酸成分(D)がギ酸、酢酸、及びプロピオン酸から選ばれる少なくとも1種である前記(1)又は(2)の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(発明3)、
を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高分子量で且つ貯蔵安定性に優れた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供することが出来る。また、本発明に係る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は従来からある一般的な活性エネルギー線硬化型樹脂と比較して、高分子量かつ活性エネルギー線の照射により硬化する官能基であるアクリロイル基やメタクリロイル基の量が多いことから、活性エネルギー線照射前にタックフリーの塗膜を形成し、活性エネルギー線照射後に、優れた硬度や耐擦傷性を有し、低硬化収縮性の硬化膜を得ることが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の構成をより詳しく説明すれば次のとおりである。
<分子中にエポキシ基を含有するエチレン性不飽和化合物の重合体(A)>
本発明で用いる分子中にエポキシ基を含有するエチレン性不飽和化合物の重合体(A)としては、エポキシ基を含有するエチレン性不飽和化合物の重合体であれば特に限定されず、公知のものを用いることができる。エポキシ基を含有するエチレン性不飽和化合物系の重合体としては、例えば、エポキシ基を含有するエチレン性不飽和化合物の共重合体、又は、エポキシ基を含有するエチレン性不飽和化合物と重合可能なエポキシ基を含有しないエチレン性不飽和化合物からなる共重合体が挙げられる。
【0010】
エポキシ基を含有するエチレン性不飽和化合物としては、グリシジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、一種単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。特に、グリシジルメタクリレートが入手しやすい点から好ましい。
【0011】
重合可能なエポキシ基を含有しないエチレン性不飽和化合物としては、例えば、炭素数1以上18以下の直鎖、分岐、環状のアルキル基とのエステルであるアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、アクリル酸2−ブチル、メタクリル酸2−ブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、メタクリル酸n−オクチル、アクリル酸n−ドデシル、メタクリル酸n−ドデシル、アクリル酸n−オクタデシル、メタクリル酸n−オクタデシル等の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン等のスチレン系モノマー、エチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィン、ブタジエン、イソプレン等のアルカジエン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル、イソブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル等が挙げられる。また、これらのモノマーの他に、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N置換(メタ)アクリルアミド、不飽和二塩基酸のジエステルなども使用することができる。これらは、一種単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。特に、炭素数1〜8の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、スチレン系モノマーが、エポキシ基を含有するエチレン性不飽和化合物との共重合性が良く、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物がタックフリーの塗膜表面を形成するために好ましい。
【0012】
エポキシ基を含有しないエチレン性不飽和化合物の使用量は、本願発明の効果を阻害しないためにはエポキシ基を含有するエチレン性不飽和化合物とエポキシ基を含有しないエチレン性不飽和化合物の合計量を100質量部とした場合に65質量部以下であることが好ましい。65質量部よりも多い使用量の場合には、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の(メタ)アクリル当量が500以上となり、活性エネルギー線照射後の硬度や耐擦傷性が劣る場合がある。
【0013】
本発明に用いられるエポキシ基を含有するエチレン性不飽和化合物の重合体(A)は、ラジカル重合によって得られる。ラジカル重合は、公知の方法で行うことができる。例えば、溶剤中で重合開始剤を用い加熱して重合する方法が挙げられる。溶剤としては、特に限定されず公知のものを使用できる。具体的には、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール等を使用できる。これらの溶剤は1種単独で用いても良いし、2種以上を併用することもできる。なお、溶剤の使用量は、エチレン性不飽和化合物の総量100質量部に対し、50質量部以上150質量部以下であることが活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の分子量を調製しやすい点から好ましい。また、重合反応後に溶剤を留去してもよい。
【0014】
重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の無機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等のアゾ化合物、ジベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物等を使用できる。特に、アゾ化合物が、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の貯蔵安定性を確保するために好ましい。なお、これらの重合開始剤はエチレン性不飽和化合物の総量100質量部に対し、0.05質量部以上5質量部以下であることが活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の分子量を調製しやすい点から好ましい。
【0015】
このようにして得られた分子中にエポキシ基を含有するエチレン性不飽和化合物の重合体(A)の重量平均分子量は40,000〜150,000であることが、α,β−不飽和カルボン酸(B)を付加させてなる反応生成物(C)の分子量を50,000〜200,000に調製するために好ましい。
【0016】
<α,β−不飽和カルボン酸(B)>
本発明で用いるα,β−不飽和カルボン酸(B)としては、不飽和二重結合を有するカルボン酸であればよく、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等が挙げられる。特に、アクリル酸を使用した場合に活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化性が優れるために好ましい。
【0017】
<反応生成物(C)>
本発明で用いる反応生成物(C)は、分子中にエポキシ基を含有するエチレン性不飽和化合物の重合体(A)にα,β−不飽和カルボン酸(B)を付加させることにより得られる。α,β−不飽和カルボン酸(B)の使用量は特に限定されないが、分子中のエポキシ基に対しカルボキシル基の当量比が0.95〜1.1になるような使用量であることが合成時のゲル化抑制や貯蔵安定性を確保するために好ましい。
【0018】
分子中にエポキシ基を含有するエチレン性不飽和化合物の重合体(A)へのα,β−不飽和カルボン酸(B)の付加反応は公知の方法で行うことができる。例えば、触媒の存在下、加熱して得ることができる。
【0019】
付加反応時に使用する触媒としては、例えば、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド等の4級アンモニウム塩、テトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド等の4級ホスホニウム塩、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のアミン類が挙げられる。これらは、一種単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。特に、4級ホスホニウム塩が触媒活性および副反応抑制の点から好ましい。触媒の使用量は特に限定されないが、α,β−不飽和カルボン酸(B)の使用量100質量部に対し、5質量部以上25質量部以下であることが好ましい。使用量が5質量部よりも少ない場合、付加反応が十分進行しない場合がある。使用量が25質量部よりも多い場合、副反応が生じ反応途中でゲル化したり、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の貯蔵安定性が悪化する場合がある。
【0020】
付加反応時に溶剤や重合禁止剤を用いることもできる。溶剤としては、エポキシ基およびカルボキシル基と反応しない溶剤であればよく、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン、t−ブチルアルコール、ダイアセトンアルコール等の3級アルコールが挙げられる。これらは、一種単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
溶剤の使用量は特に限定されないが、分子中にエポキシ基を含有するエチレン性不飽和化合物の重合体(A)とα,β−不飽和カルボン酸(B)の総量100質量部に対し、100質量部以上であることが、付加反応時のゲル化抑制のために好ましい。
【0022】
重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、t−ブチルハイドロキノン、フェノチアジン等が挙げられる。
【0023】
重合禁止剤の使用量は特に限定されないが、分子中にエポキシ基を含有するエチレン性不飽和化合物の重合体(A)とα,β−不飽和カルボン酸(B)の総量100質量部に対し、1質量部以下であることが活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化性を阻害しにくいために好ましい。
【0024】
反応温度に特に制限はないが、80℃以上110℃以下が好ましい。反応温度が80℃よりも低い場合、付加反応が十分進行しない場合がある。反応温度が110℃よりも高い場合、副反応が生じ反応途中でゲル化したり、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の貯蔵安定性が悪化する場合がある。
【0025】
付加反応時にα,β−不飽和カルボン酸(B)や反応生成物(C)の重合防止のために、反応系内に空気を導入する等の手段を講じることもできる。
【0026】
このようにして得られた反応生成物(C)は、(メタ)アクリル当量200〜500g/eq、重量平均分子量が50,000〜200,000とすることが、活性エネルギー線照射前にタックフリーの塗膜表面を形成し、活性エネルギー線照射後に、硬度や耐擦傷性を低下させることなく、低硬化収縮性の硬化膜を得ることができる点から好ましい。
【0027】
<飽和有機モノカルボン酸成分(D)>
本発明で用いる飽和有機モノカルボン酸成分(D)としては、不飽和結合を有しないカルボキシル基を有する有機モノカルボン酸であればよく、具体的には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸等が挙げられる。特に、ギ酸、酢酸、プロピオン酸は沸点が低く、揮発しやすいために、活性エネルギー線硬化後の塗膜に残り難いために好ましい。これらは、一種単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせてもよい。
【0028】
飽和有機モノカルボン酸成分(D)の使用量は、反応生成物(C)の100質量部に対し、2.5質量部以下であることが好ましい。さらに好ましくは、0.5質量部以上2質量部以下である。0.5質量部よりも少ない使用量の場合には、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の貯蔵安定性の改善への寄与が小さく、2質量部よりも多い使用量の場合には塗膜に飽和有機モノカルボン酸成分(D)が残り易くなり、臭気が塗膜から発生する場合がある。また、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化性を阻害する場合がある。
【0029】
飽和有機モノカルボン酸成分(D)は任意のタイミングで添加することができる。例えば、分子中にエポキシ基を含有するエチレン性不飽和化合物の重合体(A)にα,β−不飽和カルボン酸(B)を付加反応させるときにあらかじめ添加もしくは分割添加しても良いし、付加反応後の反応生成物(C)に添加しても良い。
【0030】
かくして得られた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、例えばプラスチック、木材、ガラス、金属等向けの塗料材料、各種フィルム基材の保護層、転写材の保護層、フラットパネルディスプレー、フォトレジスト等の電子基板・光学関連材料、活性エネルギー線硬化型インキ用の樹脂等として用いることができる。
【0031】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物には、必要に応じて光重合開始剤、活性エネルギー線硬化型オリゴマー、不飽和結合を有する反応性モノマー、溶剤、着色剤、硬化剤および反応促進剤等を配合して使用することができる。これらの配合する物質は、必要に応じて一種単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせてもよい。
【0032】
硬化被膜に機能性を持たせることを目的に、滑剤、有機フィラー、無機フィラー、帯電防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤等を配合して使用することができる。これらの配合する物質は、機能性を付与するために一種単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせてもよい。
【0033】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いて硬化被膜(保護層)を形成する手段としては特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、被塗装物に対して活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を塗布して活性エネルギー線を照射することにより硬化させる方法がある。塗布する手段としては特に制限されず、例えば、刷毛塗り、ローラー塗布、エアースプレー塗装、グラビアコート、ロールコート、リップコート等のコート法、グラビア印刷、スクリーン印刷等の印刷法等を挙げることができる。
【0034】
硬化被膜の膜厚は0.5〜30μmであることが好ましく、更に好ましくは2〜10μmの厚さに形成することが好ましい。
【0035】
照射する活性エネルギー線としては、例えば、電子線、紫外線等が挙げられる。照射する手段としては特に制限されず、公知の方法を用いることができる。活性エネルギー線の照射量は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の種類、膜厚等により適宜調整することができ、例えば、50〜1000mJ/cm程度である。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を、実施例および比較例を挙げて、具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、各表中、部は特記しない限りすべて質量部である。
【0037】
(合成例1)
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた5000mLセパラフラスコに、メチルエチルケトン(以下、MEKと略することがある。)1000質量部を入れ、窒素雰囲気下、攪拌を行いながらフラスコ内が80℃になるように昇温させた後、グリシジルメタクリレート(以下、GMAと略することがある。)900質量部、メタクリル酸メチル(以下、MMAと略することがある。)100質量部と2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(以下、ABN−Eと略することがある。)4質量部を3時間にわたり滴下した。滴下終了後2時間反応させた。その後ABN−E 2質量部添加して2時間反応させ、さらにABN−E 2質量部を添加した後、80℃で5時間反応させた。得られた樹脂の重量平均分子量は57,000であった。その後、40℃まで冷却して窒素ガス導入管をエアー導入管に切り替え、エアーバブリングを実施しながら、アクリル酸(以下、AAと略することがある。)479質量部、MEK 1895質量部、テトラフェニルホスホニウムブロマイド(以下、PPh4・Brと略することがある。)83.6質量部と2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール((以下、BHTと略することがある。)7.4質量部を加えて、攪拌しながら80℃になるように昇温させた後、12時間反応を行った。反応終了後、室温まで冷却した。その後、ギ酸21質量部を添加して室温で30分間攪拌した。得られた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(A1)のアクリル当量は230g/eq、重量平均分子量は86,500であった。なお、重量平均分子量はゲルパーミネーションクロマトグラフィー(東ソー株式会社製:HPL−8120GPC、標準物質ポリスチレン)を用いて測定して得た値である(以下、同様)。また、得られた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(A1)の固形分、製品粘度を表2に記載する。
【0038】
(合成例2〜11)
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた5000mLセパラフラスコに、表2に示す割合になるように有機溶剤1を入れ、窒素雰囲気下、攪拌を行いながらフラスコ内が80℃になるように昇温させた後、表1に示すエポキシ基を含有するエチレン性不飽和化合物とエポキシ基を含有しないエチレン性不飽和化合物とABN−E(表2に記載したABN−Eの合計使用量から4質量部差し引いた量)を3時間にわたり滴下した。滴下終了後2時間反応させた。その後ABN−E 2質量部添加して2時間反応させ、さらにABN−E 2質量部を添加した後、溶剤還流下で5時間反応させた。得られた樹脂の重量平均分子量を表2に示す。その後、40℃まで冷却して窒素ガス導入管をエアー導入管に切り替え、エアーバブリングを実施しながら、表1に示すα,β−不飽和カルボン酸、表2に示す有機溶剤2、付加反応触媒と重合禁止剤を加えて、攪拌しながら有機溶剤還流下になるように昇温させた後、12時間反応を行った。反応終了後、室温まで冷却し、表1に示す飽和有機モノカルボン酸を添加して30分間攪拌することで活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得た。得られた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(A2)〜(A11)の(メタ)アクリル当量、重量平均分子量を表1に、固形分、製品粘度を表2に記載する。
【0039】
(比較合成例1)
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた5000mLセパラフラスコに、MEK 1500質量部を入れ、窒素雰囲気下、攪拌を行いながらフラスコ内が80℃になるように昇温させた後、GMA 600質量部、MMA 350質量部、アクリル酸n−ブチル 50質量部とABN−E 8質量部を3時間にわたり滴下した。滴下終了後2時間反応させた。その後ABN−E 2質量部添加して2時間反応させ、さらにABN−E 2質量部を添加した後、80℃で5時間反応させた。得られた樹脂の重量平均分子量は22,800であった。その後、40℃まで冷却して窒素ガス導入管をエアー導入管に切り替え、エアーバブリングを実施しながら、AA 304質量部、MEK 1020質量部、PPh4・Br 53.1質量部とBHT 6.5質量部を加えて、攪拌しながら80℃になるように昇温させた後、12時間反応を行った。反応終了後、室温まで冷却した。その後、酢酸12.7質量部を添加して室温で30分間攪拌した。得られた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(B1)のアクリル当量は309g/eq、重量平均分子量は31,400であった。なお、得られた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(B1)の固形分、製品粘度を表2に記載する。
【0040】
(比較合成例2〜4)
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた5000mLセパラフラスコに、表2に示す割合になるように有機溶剤1を入れ、窒素雰囲気下、攪拌を行いながらフラスコ内が80℃になるように昇温させた後、表1に示すエポキシ基を含有するエチレン性不飽和化合物とエポキシ基を含有しないエチレン性不飽和化合物とABN−E(表2に記載したABN−Eの合計使用量から4質量部差し引いた量)を3時間にわたり滴下した。滴下終了後2時間反応させた。その後ABN−E 2質量部添加して2時間反応させ、さらにABN−E 2質量部を添加した後、溶剤還流下で5時間反応させた。得られた樹脂の重量平均分子量を表2に示す。その後、40℃まで冷却して窒素ガス導入管をエアー導入管に切り替え、エアーバブリングを実施しながら、表1に示すα,β−不飽和カルボン酸、表2に示す有機溶剤2、付加反応触媒と重合禁止剤を加えて、攪拌しながら有機溶剤還流下になるように昇温させた後、12時間反応を行った。反応終了後、室温まで冷却し、表1に示す飽和有機モノカルボン酸を添加して30分間攪拌することで活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得た。得られた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(B2)〜(B4)のアクリル当量、重量平均分子量を表1に、固形分、製品粘度を表2に記載する。
【0041】
(保存安定性の確認)
合成例1〜11、比較合成例1〜4で得られた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(A1〜A11、B1〜B4)を密閉容器に入れ、60℃の条件下で静置してゲル化するまでの日数を確認した。30日経過時点でゲル化していないものを○、30日未満でゲル化した場合は、ゲル化までの日数を記載する。すなわち、数値がある場合は保存安定性が悪いことを示す。保存安定性の確認結果を表1に示す。
<活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いたハードコート塗料の調製>
上記、合成例および比較合成例により得られた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(A1)〜(A11)、(B1)、(B4)を用いて、ハードコート塗料の調製を行った。
なお、比較合成例2,3は保存安定性が悪かったため、ハードコート塗料を調製しなかった。
【0042】
(実施例1)
合成例1で得られた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(A1)100質量部に対し、光重合開始剤のイルガキュア184(チバスペシャリティーケミカルズ株式会社製)を2.5部配合し、MEKを用いて不揮発分が30%になるように調製した。
【0043】
(実施例2〜11)
合成例2〜11で得られた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(A2)〜(A11)のそれぞれ100質量部に対し、光重合開始剤のイルガキュア184(チバスペシャリティーケミカルズ株式会社製)を2.5部配合し、MEKを用いて不揮発分が30%になるように調製した。
【0044】
(比較例1)
比較合成例1で得られた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(B1)100質量部に対し、光重合開始剤のイルガキュア184(チバスペシャリティーケミカルズ株式会社製)を2.5部配合し、MEKを用いて不揮発分が30%になるように調製した。
【0045】
(比較例2)
比較合成例4で得られた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(B4)100質量部に対し、光重合開始剤のイルガキュア184(チバスペシャリティーケミカルズ株式会社製)を2.5部配合し、MEKを用いて不揮発分が30%になるように調製した。
【0046】
<ハードコート塗料被膜フィルムの作製>
実施例1〜11、比較例1、2で調製したハードコート塗料を♯12のバーコーターを用いて膜厚が約8μmになるように、38μmのPETフィルム(商品名AT−38、ユニチカ製)に塗布したのち、140℃で30秒間乾燥させた。得られたハードコート塗料被膜フィルムはタックフリー性試験に用いた。
【0047】
<ハードコート塗料硬化被膜フィルムの作製>
前述の方法で得られたハードコート塗料被膜を大気中でメタルハライドランプ(ランプ出力1.5Kw )、照射距離15cm、ベルトスピード4m/分、トータル照射量600mJ/cmの条件で硬化させた。得られたハードコート塗料硬化被膜フィルムは耐擦傷性試験、被膜硬度試験および低硬化収縮性試験に用いた。
【0048】
(タックフリー性試験)
各ハードコート塗料被膜フィルムを5cm×5cmにカットして、同じ大きさのPETフィルムを重ね合わせて2Kgの荷重を掛け、60℃の条件下で24時間保管し、取り出して付着および膜面の荒れ具合を確認した。全く抵抗なく剥がれ、膜面に荒れがないものを○、抵抗なく剥がれるが、膜面に一部荒れがあるものを△、剥がすのに抵抗があり、膜面に荒れがあるものを×とした。その結果を表3に示す。
【0049】
(耐擦傷性試験)
各ハードコート塗料硬化被膜フィルムを用い、硬化被膜面を10mm×10mmの♯0000番のスチールウールに500gの荷重を掛けて20回擦り、硬化被膜面の傷の付き具合を目視評価した。全く傷がつかなかったものを◎、傷が10本以内のものを○、傷が11〜20本のものを△、傷が20本以上のものを×とした。その結果を表3に示す。
【0050】
(被膜硬度試験)
各ハードコート塗料硬化被膜フィルムを用い、JIS−K5600に従い、荷重750gの引っかき強度試験(鉛筆法)によってハードコート塗料硬化被膜フィルムの被膜硬度を評価した。Hの前の数値が大きいほど好ましいことを示している。その結果を表3に示す。
【0051】
(低硬化収縮性試験)
各ハードコート塗料硬化被膜フィルムを10cm×10cmの大きさに切り取り、平面なテーブルの上に載せ、テーブル面からのフィルム4隅のそり高さ(mm)を測定した。数値が低いほど好ましく、0であることが実用的には必要である。4隅のそり高さの平均値を表3に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
表1中の略号として、GMAはグリシジルメタクリレート、MMAはメタクリル酸メチル、BAはアクリル酸n−ブチル、AAはアクリル酸、MAAはメタクリル酸を示している。
【0054】
【表2】

【0055】
表2中の略号として、MEKはメチルエチルケトン、PPh4・Brはテトラフェニルホスホニウムブロマイド、PPh3はトリフェニルホスフィン、TBABはテトラブチルアンモニウムブロマイド、PBu4・Brはテトラブチルホスホニウムブロマイド、ABN−Eは2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、BHTは2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを示している。なお、ABN−Eに記載されている使用量は合成例に用いられる合計量を示している。
【0056】
【表3】

【0057】
表1〜3からわかるように、実施例のほうが、比較例よりも貯蔵安定性に優れ、また、活性エネルギー線照射前にタックフリーの塗膜表面を形成し、活性エネルギー線照射後に、優れた硬度や耐擦傷性を有し、低硬化収縮性の硬化膜を得られることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中にエポキシ基を含有するエチレン性不飽和化合物の重合体(A)にα,β−不飽和カルボン酸(B)を付加させてなる、(メタ)アクリル当量200〜500g/eq、重量平均分子量が50,000〜200,000の反応生成物(C)と飽和有機モノカルボン酸成分(D)を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
反応生成物(C)の100質量部に対し、飽和有機モノカルボン酸成分(D)を2.5質量部以下含有することを特徴とする請求項1記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
飽和有機モノカルボン酸成分(D)が蟻酸、酢酸、及びプロピオン酸から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。

【公開番号】特開2011−57905(P2011−57905A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211010(P2009−211010)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000109635)星光PMC株式会社 (102)
【Fターム(参考)】