説明

活性エネルギー線硬化型樹脂組成物

【課題】結晶化しにくく、活性エネルギー線硬化塗膜の硬化性が大きく、硬度、耐衝撃性及び耐カール性に優れる特徴を有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)(a)脂肪族ジイソシアネート、及び脂環族ジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネート、並びに(b)ポリオール及びε−カプロラクトンから誘導される数平均分子量が250〜2000のポリエステル系ポリオールから得られ、実質的にイソシアヌレート基を含まず、アロファネート基を含有するポリイソシアネート組成物に、(B)水酸基含有(メタ)アクリレート化合物を反応させたアロファネート基含有(メタ)アクリレート樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線、電子線、放射線等で硬化可能な活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は知られている。例えば、特許文献1には、インモールド成形により得られる耐磨耗性、耐候性に優れた表面保護層を有する樹脂成形品が、記載されている。この表面保護層は、ウレタンアクリレート及び光重合開始剤を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に基いて形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−305795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている活性エネルギー線樹脂組成物は、脂環族イソシアネートとエステル系ポリオールと水酸基含有(メタ)アクリレートをウレタン化して得られるウレタンアクリレートを含んでいる。そのため、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が結晶化しやすく、活性エネルギー線硬化塗膜の硬化性が小さく、硬度が低いという欠点があった。
【0005】
そこで、本発明は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が結晶化しにくく、活性エネルギー線硬化塗膜の硬化性が大きく、硬度、耐衝撃性及び耐カール性に優れるという特徴を有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、前記課題を解決するため検討を進め、ジイソシアネート及びポリエステル系ポリオールを用いた、アロファネート基を有するポリイソシアネート組成物に水酸基含有(メタ)アクリレート化合物を反応させた樹脂組成物が、結晶化しにくく、さらに驚くべきことに、活性エネルギー線硬化塗膜の硬化性が大きく、硬度、耐衝撃性及び耐カール性に優れることを見出し、本発明を為すに至った。
【0007】
すなわち、本発明は下記の通りである。
[1](A)(a)脂肪族ジイソシアネート、及び脂環族ジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネート、並びに(b)ポリオール及びε−カプロラクトンから誘導される数平均分子量が250〜2000のポリエステル系ポリオールから得られ、実質的にイソシアヌレート基を含まず、アロファネート基を含有するポリイソシアネート組成物に、(B)水酸基含有(メタ)アクリレート化合物を反応させたアロファネート基含有(メタ)アクリレート樹脂組成物。
[2](a)のジイソシアネートがヘキサメチレンジイソシアネートであり、上記(b)のポリエステル系ポリオールが2〜3価のアルコール及びε−カプロラクトンから誘導されるものである、上記[1]記載のアロファネート基含有(メタ)アクリレート樹脂組成物。
[3]上記[1]又は[2]に記載のアロファネート基含有(メタ)アクリレート樹脂組成物、及び光重合開始剤を含有してなる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
[4]上記[3]記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を含むことを特徴とする、コーティング剤。
[5]上記[3]記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を含むことを特徴とするインキ。
[6]上記[3]記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を含むことを特徴とする粘・接着剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、結晶化しにくく、活性エネルギー線硬化塗膜の硬化性が大きく、硬度、耐衝撃性及び耐カール性に優れる特徴を有する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、(A)(a)脂肪族ジイソシアネート、及び脂環族ジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネート、並びに(b)ポリオール及びε−カプロラクトンから誘導される数平均分子量が250〜2000のポリエステル系ポリオールから得られ、実質的にイソシアヌレート基を含まず、アロファネート基を含有するポリイソシアネート組成物に、(B)水酸基含有(メタ)アクリレート化合物を反応させたアロファネート基含有(メタ)アクリレート樹脂組成物である。
【0010】
(a)のジイソシアネートは、脂肪族ジイソシアネート、及び脂環族ジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種類である。脂肪族(脂環族)ジイソシアネートは、芳香族ジイソシアネートと比較して、それを含む硬化物の耐候性、黄変性が著しく優れている。脂肪族ジイソシアネートとは、分子中に飽和脂肪族基を有するジイソシアネート化合物である。一方、脂環族ジイソシアネートとは、分子中に環状脂肪族基を有するジイソシアネート化合物である。脂肪族ジイソシアネートを用いると、得られるポリイソシアネート組成物が低粘度となるのでより好ましい。
【0011】
脂肪族ジイソシアネートとして、例えば、1,4−ジイソシアナトブタン、1,5−ジイソシアナトペンタン、1,6−ジイソシアナトヘキサン(ヘキサメチレンジイソシアネート:以下、HDI)、1,6−ジイソシアナト−2,2,4−トリメチルヘキサン、2,6−ジイソシアナトヘキサン酸メチル(リジンジイソシアネート)等が挙げられる。脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、5−イソシアナト−1−イソシアナトメチル−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート:以下、IPDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(水添キシリレンジイソシアネート)、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン(水添ジフェニルメタンジイソシアネート)、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン等が挙げられる。この中でもHDI、IPDI、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネートは、工業的に入手し易いため好ましい。中でも、HDIは、耐候性と塗膜の柔軟性が非常に優れており最も好ましい。
【0012】
(b)のポリエステル系ポリオールは、ポリオール及びε−カプロラクトンから誘導され、数平均分子量が250〜2000である。ポリエステル系ポリオールの数平均分子量が250〜2000であれば、それを含む硬化物の硬度、耐衝撃性、及び耐カール性が優れる。ポリエステル系ポリオールは、1種類でも2種類以上混合して用いても良い。ポリエステル系ポリオールの原料として用いられるポリオールは、特に限定されないが、最も一般的には2〜3価のアルコールが用いられる。脂肪族又は脂環族アルコールが好ましい。2〜3価のアルコールとしては、例えば、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ネオペンチルグリコールのヒドロキシピバリン酸エステル、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,3,5−トリメチルペンタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−プチレンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,1,7−トリメチロールヘプタン、1,2,7−トリメチロールヘプタン等が挙げられる。これらは1種類でも2種類以上混合して用いても良い。3価のアルコールが、より好ましく用いられる。
【0013】
(A)ポリイソシアネート組成物は、上記(a)のジイソシアネート及び(b)のポリエステル系ポリオールをウレタン化反応させることにより出来るウレタン基含有化合物を、アロファネート化反応することによって得ることができる。(A)ポリイソシアネート組成物の製造方法について、以下に示す(特許第3891934号参照)。
【0014】
(a)脂肪族ジイソシアネート、及び脂環族ジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネートが有するイソシアネート基と、(b)ポリオール及びε−カプロラクトンから誘導される数平均分子量が250〜2000のポリエステル系ポリオールが有する水酸基のモル比は、2:1〜100:1、好ましくは3:1〜60:1、より好ましくは5:1〜40:1である。このようなイソシアネート基と水酸基のモル比の場合に、生産効率が良好であり、かつ原料のジイソシアネートやポリエステル系ポリオール、ウレタン基含有化合物が残存することなく、さらにゲル化などを起こすことなく反応させることができる。
【0015】
アロファネート化反応を行なう場合は、触媒を用いた方が好ましく、特に生成するポリイソシアネート組成物のアロファネート基/イソシアヌレート基のモル比が95/5〜100/0となる触媒を選択するのが好ましい。このようなアロファネート化触媒としては、例えば、亜鉛、錫、ジルコニウム、ジルコニル等のカルボン酸塩等、あるいは、これらの混合物が挙げられる。アロファネート化触媒量は、反応液総重量を基準として、通常0.001〜2.0wt%、好ましくは0.01〜0.5wt%にて用いられる。0.001wt%以上で、触媒の効果が十分に発揮できる。2wt%以下で、アロファネート化反応の制御が容易である。
【0016】
アロファネート化触媒の添加方法は、限定されない。例えば、アロファネート化触媒は、ウレタン基含有化合物の製造前、すなわち、ジイソシアネートとポリオール及びε−カプロラクトンから誘導される数平均分子量が250〜2000のポリエステル系ポリオールのウレタン化反応に先立って添加してもよいし、ジイソシアネートとポリオール及びε−カプロラクトンから誘導される数平均分子量が250〜2000のポリエステル系ポリオールのウレタン化反応中に添加してもよく、ウレタン基含有化合物の製造後に添加してもよい。また、添加方法として、所定量のアロファネート化触媒を一括して添加してもよいし、何回かに分割してもよい。または、一定の添加速度で連続的に添加する方法も採用できる。
【0017】
(A)ポリイソシアネート組成物の製造時の反応温度は、必ずしも限定されないが、ウレタン化反応温度及びアロファネート化反応温度は、通常20〜200℃、好ましくは40〜160℃、より好ましくは50〜140℃である。
【0018】
上記のウレタン化反応、アロファネート化反応等は、無溶剤中で行なうことができる。必要に応じて、酢酸エチルや酢酸ブチル等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、トルエンやキシレンやジエチルベンゼン等の芳香族系溶剤、ジアルキルポリアルキレングリコールエーテル等のNCO基との反応性を有していない有機溶剤、又はそれらの混合物を溶剤として使用することができる。反応終了後、溶剤は、薄膜蒸発缶、抽出などにより除去できる。
【0019】
ウレタン化反応、アロファネート化反応の過程は、反応液のNCO含有量を測定するか、屈折率を測定することにより追跡できる。NCO含有量は、例えば、NCO基を過剰のアミンで中和した後、塩酸で逆滴定することによって測定できる。
【0020】
アロファネート化反応は、室温に冷却するか、反応停止剤を添加することにより停止できる。触媒を用いる場合、反応停止剤を添加するほうが、副反応を抑制することができるために好ましい。反応停止剤を添加する量は、触媒に対して、通常0.25〜20倍のモル量、好ましくは0.5〜16倍のモル量、より好ましくは1〜14倍のモル量である。0.25倍以上のモル量の反応停止剤で、完全に失活することが可能となる。20倍以下のモル量の反応停止剤で、ポリイソシアネート組成物の保存安定性が良好となる。反応停止剤としては、触媒を失活させるものであれば、何を使ってもよい。例えば、リン酸やピロリン酸等のリン酸酸性を示す化合物、リン酸やピロリン酸等のモノアルキルあるいはジアルキルエステル、モノクロロ酢酸物などのハロゲン化酢酸、塩化ベンゾイル、スルホン酸エステル、硫酸、硫酸エステル、イオン交換樹脂、キレート剤等が挙げられる。
【0021】
アロファネート化反応終了後、未反応ジイソシアネートモノマーは、薄膜蒸発缶、抽出などにより除去できる。残留ジイソシアネートモノマー濃度は、3wt%以下、好ましくは1wt%以下、より好ましくは0.5wt%以下であってよい。残留ジイソシアネートモノマー濃度が3wt%以下であれば、アロファネート基含有(メタ)アクリレート樹脂組成物が結晶化しにくい。
【0022】
(A)ポリイソシアネート組成物は、実質的にイソシアヌレート基を含まず、アロファネート基を含有する。ここでの「実質的に」とは、アロファネート基とイソシアヌレート基のモル比が91/9〜100/0である事を指す。好ましくは93/7〜100/0であり、より好ましくは95/5〜100/0であり、更に一層好ましくは97/3〜100/0である。アロファネート基とイソシアヌレート基のモル比が91/9〜100/0の範囲であれば、ポリイソシアネート組成物の粘度が高くならず、アロファネート基含有(メタ)アクリレート樹脂組成物が結晶化しにくい。
【0023】
なお、アロファネート基とイソシアヌレート基のモル比は、H−NMRにより求めることができる。一例として、HDI及びそれから得られるイソシアネートプレポリマーを原料として用いたポリイソシアネート組成物をH−NMRで測定する方法を以下に示す。
【0024】
H−NMRの測定方法例:ポリイソシアネート組成物を重水素クロロホルムに10質量%の濃度で溶解する(ポリイソシアネート組成物に対して0.03質量%テトラメチルシランを添加)。化学シフト基準は、テトラメチルシランの水素のシグナルを0ppmとした。H−NMRにて測定し、8.5ppm付近のアロファネート基の窒素に結合した水素原子(アロファネート基1molに対して、1molの水素原子)のシグナルと、3.85ppm付近のイソシアヌレート基に隣接したメチレン基の水素原子(イソシアヌレート基1モルに対して、6molの水素原子)のシグナルの面積比を測定する。計算式:アロファネート基/イソシアヌレート基=(8.5ppm付近のシグナル面積)/(3.85ppm付近のシグナル面積/6)により、アロファネート基とイソシアヌレート基のモル比が算出される。
【0025】
(B)成分の水酸基含有(メタ)アクリレート化合物の水酸基と、(A)成分のイソシアネート基とを反応させることで、アロファネート基含有(メタ)アクリレート樹脂組成物を製造できる。このような水酸基含有(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2−HEA)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート(2−HPA)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2−HEMA)、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(2−HPMA)、4−ヒドロキシブチルアクリレート(2−HBA)、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルメタアクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタアクリレートなどの分子内に1個の(メタ)アクリレート基を有する化合物や、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジアクリレート、グリセリンジメタアクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルメタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートなどの分子内に2個以上の(メタ)アクリレート基を有する化合物や、上記の水酸基及び(メタ)アクリレート基を有する化合物とε−カプロラクトンとの付加物等が挙げられ、これらから選ばれる少なくとも1種が用いられる。
【0026】
本発明のアロファネート基含有(メタ)アクリレート樹脂組成物は、特に限定はされないが、(A)と(B)との配合比(NCO/OH当量比)は1以下である。
【0027】
本発明のアロファネート基含有(メタ)アクリレート樹脂組成物を製造する際には、ウレタン化反応促進触媒を用いてよい。このようなウレタン化反応促進触媒としては、例えば、ジメチルスズジクロライド、ジブチルスズジクロライド、ジオクチルスズジクロライド、モノブチルスズトリクロライド、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウリレート、ジオクチルスズジラウリレート、ジブチルスズマレート、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド等のスズ化合物や、トリブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルプロパンジアミン、テトラメチルヘキサンジアミン、メチルモルホリン、ジモルホリンエチルエーテル、ジメチルピペラジン、トリメチルアミノメチルエタノールアミン等の3級アミンが挙げられる。その添加量は、(A)及び(B)の合計100重量部に対して、0.005〜0.1重量部、好ましくは0.01〜0.05重量部である。
【0028】
本発明のアロファネート基含有(メタ)アクリレート樹脂組成物を製造する際には、重合禁止剤を用いてよい。このような重合禁止剤としては、例えば、メトキシフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(以下、BHT)等が挙げられる。その添加量は、(A)及び(B)の合計100重量部に対して、0.01〜1重量部、好ましくは0.05〜0.5重量部である。
【0029】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、上記アロファネート基含有(メタ)アクリレート樹脂組成物、及び光重合開始剤を含有する。このような光重合開始剤としては、ベンゾイン、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、アセトフェノンジエチルケタール、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられ、これらから選ばれる少なくとも1種が用いられる。好ましくは、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンが用いられる。その添加量は、アロファネート基含有(メタ)アクリレート樹脂組成物100重量部に対して、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部であってよい。
【0030】
活性エネルギー線照射を行なう時の光源としては、高圧水銀灯、超高圧水銀灯カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライドランプ、ケミカルランプ、ブラックライト等が用いられる。高圧水銀灯の場合は、例えば5〜3000mJ/cm、好ましくは、10〜1500mJ/cmの条件で行なわれる。照射時間は、光源の種類、光源と塗布面との距離、塗工厚、その他の条件によっても異なるが、通常は数秒〜数十秒、場合によっては数分の1秒でも良い。
【0031】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物には、目的及び用途に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、顔料、レべリング剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、表面活性剤、カップリング剤等の当該技術分野で使用されている各種添加剤を混合することも出来る。光安定剤又は紫外線吸収剤の添加により、耐候性を向上させることができる。光安定剤の例として、サノールLS765(チバ・ジャパン製)等のHALS、紫外線吸収剤の例として、TINUVIN571(チバ・ジャパン製)等が挙げられる。
【0032】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、実質的に揮発溶剤を含まなくても取り扱いやすいが、場合によっては揮発溶剤で希釈しても良い。有機溶剤は、OH基及びNCO基と反応する官能基を有していない方が好ましい。また、有機溶剤は、アロファネート基含有(メタ)アクリレート樹脂組成物と相溶する方が好ましい。このような有機溶剤として、エステル化合物、エーテル化合物、ケトン化合物、芳香族化合物、エチレングリコールジアルキルエーテル系の化合物、ポリエチレングリコールジカルボキシレート系の化合物、炭化水素系溶剤、芳香族系溶剤などが挙げられる。
【0033】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、コーティング剤、インキ、粘・接着剤等に使用することができる。
【実施例】
【0034】
次に、本発明を実施例に基づいて説明する。各種物性の測定方法は、以下のとおりである。
〔NCO含有量〕
ポリイソシアネート組成物P1〜P5について、NCO基を過剰の2Nアミンで中和した後、1N塩酸による逆滴定によって測定した。
【0035】
〔粘度〕
ポリイソシアネート組成物P1〜P5について、E型粘度計(東機産業株式会社製 RE−85R)で、標準ローター(1°34’×R24)を用いて、25℃で測定した。回転数は、以下の通りである。
100r.p.m.(128mPa・s未満の場合)
50 r.p.m.(128mPa・s〜256mPa・sの場合)
20 r.p.m.(256mPa・s〜640mPa・sの場合)
10 r.p.m.(640mPa・s〜1280mPa・sの場合)
5 r.p.m.(1280mPa・s〜2560mPa・sの場合)
2.5r.p.m.(2560mPa・s〜5184mPa・sの場合)
1.0r.p.m.(5184mPa・s〜12960mPa・sの場合)
0.5r.p.m.(12960mPa・s〜25920mPa・sの場合)
【0036】
〔アロファネート基/イソシアヌレート基のモル比〕
ポリイソシアネート組成物P1〜P5について、H−NMR(Bruker社製FT−NMR DPX−400)を用いて、8.5ppm付近のアロファネート基の窒素原子上の水素のシグナルと、3.85ppm付近のイソシアヌレート基のイソシアヌレート環の窒素原子の隣のメチレン基の水素のシグナルの面積比から、以下の計算式に従って求めた。計算式:アロファネート基/イソシアヌレート基=(8.5ppm付近のシグナル面積)/(3.85ppm付近のシグナル面積/6)
【0037】
〔低温結晶性〕
ウレタンアクリレートオリゴマー(アロファネート基含有アクリレート樹脂組成物)U1〜U5を、−5℃で1日以上保管し、外観をチェックした。液状のまま:○、結晶化:×で評価した。
〔UV照射〕
ウレタンアクリレートオリゴマーU1〜U5を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に対するUV照射は、小型UV照射装置(オーク製造社のハンディUV−300)を用いた。積算光量は、紫外線光量計付照度計(オーク製造社のUV−M03A)で測定した。
【0038】
〔硬化性〕
各々の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物について、UV照射(1分)でのタック感を確認した。タックなし:○、タックあり:×で評価した。
〔ケーニッヒ硬度〕
各々のUV硬化塗膜について、ケーニッヒ硬度計(BYK Gardner社のPendulum hardness tester(商品名))を用いて、測定温度23℃で測定した。100以上:◎、80以上:○、80未満:×で評価した。
【0039】
〔耐衝撃性〕
各々のUV硬化塗膜について、JIS−K−5600−5−3(デュポン式)に準じて測定した。1/4インチ*500g*45cm以上:◎、1/2インチ*300g*35cm以上:○、1/2インチ*300g*30cm以下:×で評価した。
〔耐カール性〕
UV硬化塗膜が塗工されたPETフィルム(フィルム厚:25μm)を5cm四方に切り出し、その四隅の浮き高さの平均値を計測した。なお、浮き高さの平均値が2mm以下:○、2mm以上:×で評価した。
【0040】
[合成例1]
攪拌機、温度計、冷却管を取り付けた4口フラスコに、HDI1500g、ポリオール(3価アルコール)とε−カプロラクトンとから誘導されるポリエステルポリオール「ポリライトOD−X−2733」(数平均分子量:300、DIC製)94.17gを仕込み、130℃で1時間ウレタン化反応を行なった。その後、アロファネート化触媒として、2−エチルヘキサン酸ジルコニウムの固形分20wt%2−エチル−1−ヘキサノール溶液を0.56g加えた。反応液の屈折率上昇が0.0052となった時点で、リン酸の固形分10wt%2−エチル−1−ヘキサノール溶液を5.18g(触媒に対して、14倍モル)を加えて、反応を停止した。さらに、反応液に対して130℃で1時間加熱を続けた後、常温に冷却した。
【0041】
反応液を濾過後、流下式薄膜蒸留装置を用いて、1回目0.3Tor.(150℃)、2回目0.2Tor.(150℃)で、未反応のHDIを除去することによって、ポリイソシアネート組成物を得た。得られたポリイソシアネート組成物は、透明な液体であり、NCO含有量:17.7wt%、粘度:9310mPa・s、アロファネート基/イソシアヌレート基のモル比:97/3であった。以下、この組成物をP1とする(表1)。
【0042】
[合成例2]
HDI配合量を1400gとし、「ポリライトOD−X−2733」94.17gを、ポリオール(3価アルコール)とε−カプロラクトンとから誘導されるポリエステルポリオール「ポリライトOD−X−2735」(数平均分子量:550、DIC製)152.81gとした以外は、合成例1と同様に行なった。得られたポリイソシアネート組成物は、透明な液体であり、NCO含有量:15.2wt%、粘度:7310mPa・s、アロファネート基/イソシアヌレート基のモル比:97/3であった。以下、この組成物をP2とする(表1)。
【0043】
[合成例3]
HDI配合量を1300gとし、「ポリライトOD−X−2733」94.17gを、ポリオール(3価アルコール)とε−カプロラクトンとから誘導されるポリエステルポリオール「ポリライトOD−X−2542C」(数平均分子量:850、DIC製)221.52gとした以外は、合成例1と同様に行なった。得られたポリイソシアネート組成物は、透明な液体であり、NCO含有量:13.2wt%、粘度:8010mPa・s、アロファネート基/イソシアヌレート基のモル比:97/3であった。以下、この組成物をP3とする(表1)。
【0044】
[合成例4]
HDI配合量を800gとし、「ポリライトOD−X−2733」94.17gを、トリメチロールプロパン(以下、TMP。数平均分子量:134)21.27gとした以外は、合成例1と同様に行なった。得られたポリイソシアネート組成物は、透明な液体であり、NCO含有量:20.3wt%、粘度:9320mPa・s、アロファネート基/イソシアヌレート基のモル比:97/3であった。以下、この組成物をP4とする(表1)。
【0045】
[合成例5]
攪拌機、温度計、冷却管を取り付けた4口フラスコに、HDI1000g、ポリオール(3価アルコール)とε−カプロラクトンとから誘導されるポリエステルポリオール「ポリライトOD−X−2542C」(数平均分子量:850、DIC製)200.00gを仕込み、100℃で1時間ウレタン化反応を行なった後、常温に冷却した。反応液を濾過後、合成例1と同様の方法で、未反応のHDIを除去することによって、ポリイソシアネート組成物を得た。得られたポリイソシアネート組成物は、透明な液体であり、NCO含有量:9.0wt%、粘度:4980mPa・sであった。また、IR測定により確認するとウレタン基のみを有していた。以下、この組成物をP5とする(表1)。
【0046】
[実施例1]
攪拌機、温度計、冷却管を取り付けた4口フラスコに、NCO/OH当量比=1となるように、P1を10.0重量部、2―ヒドロキシエチルアクリレート(2−HEA、東亞合成製)を4.90重量部、酢酸n−ブチルを3.73重量部、BHTを0.030重量部で仕込み、40℃へ昇温する。反応熱に注意しながら、オクチルスズ系触媒(商品名:U−810、日東化成製)を添加していき、発熱がなくなった時点で60℃へ昇温した。IR測定によりNCOピーク(2270cm−1)が消失したところで、反応を終了し、ウレタンアクリレートオリゴマー(アロファネート基含有アクリレート樹脂組成物)を合成した。以下、このウレタンアクリレートオリゴマーをU1とする。U1の低温結晶性を評価した(表2)。
【0047】
U1に対して、固形分が50wt%となるように酢酸n−ブチルで希釈、光開始剤(IRGACURE 184;BASF社製)を4wt%/固形分となるように配合し、ガラス板・軟鋼板・PETフィルムにそれぞれに塗工した(乾燥膜厚:約40μm)。100℃のオーブンで5分間、酢酸n−ブチルを揮発した後、5分間UV照射して(積算光量:900mJ/cm)、UV硬化塗膜を得た。UV硬化塗膜の硬化性とケーニッヒ硬度(ガラス板)、耐衝撃性(軟鋼板)、耐カール性(PETフィルム)を評価した(表3)。
【0048】
[実施例2、3及び比較例1、2]
P1をP2〜P5とした以外は、実施例1と同様に行ない、ウレタンアクリレートオリゴマー(アロファネート基含有アクリレート樹脂組成物)を得た。以下、このウレタンアクリレートオリゴマーをU2〜U5とする。U2〜U5の低温結晶性を評価した(表2)。U2〜U5のUV硬化塗膜の物性を評価した(表3)。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、結晶化しにくく、活性エネルギー線硬化塗膜の硬化性が大きく、硬度、耐衝撃性及び耐カール性に優れる特徴を有する。従って、この活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、コーティング剤、インキ、粘・接着剤等に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(a)脂肪族ジイソシアネート、及び脂環族ジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネート、並びに(b)ポリオール及びε−カプロラクトンから誘導される数平均分子量が250〜2000のポリエステル系ポリオールから得られ、実質的にイソシアヌレート基を含まず、アロファネート基を含有するポリイソシアネート組成物に、(B)水酸基含有(メタ)アクリレート化合物を反応させたアロファネート基含有(メタ)アクリレート樹脂組成物。
【請求項2】
上記(a)のジイソシアネートがヘキサメチレンジイソシアネートであり、上記(b)のポリエステル系ポリオールが2〜3価のアルコール及びε−カプロラクトンから誘導されるものである、請求項1記載のアロファネート基含有(メタ)アクリレート樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアロファネート基含有(メタ)アクリレート樹脂組成物、及び光重合開始剤を含有してなる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
請求項3記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を含むことを特徴とするコーティング剤。
【請求項5】
請求項3記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を含むことを特徴とするインキ。
【請求項6】
請求項3記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を含むことを特徴とする粘・接着剤。

【公開番号】特開2012−107118(P2012−107118A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256764(P2010−256764)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】