説明

活性エネルギー線硬化型水性樹脂組成物

【課題】高温(70℃)での貯蔵時であっても、保存安定性が良好な活性エネルギー線硬化型水性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】側鎖に、カルボキシル基および(メタ)アクリロイル基を含む構成単位を有する特定のポリマーと塩基性化合物とを含有する組成物が水性媒体中に分散されていることを特徴とする活性エネルギー線硬化型水性樹脂組成物。前記ポリマーが、無水マレイン酸とラジカル重合性モノマーとの共重合体と水酸基含有不飽和化合物とを反応して得られる樹脂である活性エネルギー線硬化型水性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック、フィルム等のコーティング剤に用いられ、貯蔵安定性に優れ、またその硬化塗膜の外観が良好で、且つ、耐摩耗性、耐水性に優れる活性エネルギー線硬化型水性樹脂組成物、該組成物を含有する活性エネルギー線硬化型塗料、該塗料を用いた硬化塗膜の形成方法及び塗料の硬化塗膜が配置している物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に活性エネルギー線硬化型組成物は、塗装基材への熱履歴が少なく、塗膜硬度や擦り傷性に優れるという特徴から、光学フィルムや家電製品等のプラスチック基材用ハードコート剤として使用されている。このような活性エネルギー線硬化型組成物としては、重合性不飽和二重結合を有するポリマー(例えば、アクリルアクリレート等)や重合性不飽和二重結合を実質的に有さないポリマー(例えば、アクリル樹脂等)と、重合性単量体と希釈剤として有機溶剤とを含有する活性エネルギー線硬化型組成物(非水系の活性エネルギー線硬化型組成物)等使用されていた。組成物は、有機溶剤を50〜90重量%と多量に含有し、その為、該樹脂組成物を含有する活性エネルギー線硬化型塗料を用いてプラスチック等の基材表面に硬化塗膜を形成させる際に該塗料中の有機溶剤が揮発する事で作業環境を悪化させる問題がある。
【0003】
このため、各樹脂メーカーはVOC削減のため(1)無溶剤UV硬化型樹脂、(2)活性エネルギー硬化型水性樹脂の開発が行われてきた。うち(1)は樹脂自体の粘度(特に光学用途にした場合)が非常に高く、塗工性に問題がある。一方、(2)についても検討が行われており、各種UVオリゴマーをアクリル樹脂にて水分散されることによって、活性エネルギー線硬化型水性樹脂組成物を得ている(例えば、特許文献1参照。)。前記の技術では、ε−カルボキシポリカプロラクトン(メタ)アクリレート共重合アクリル樹脂にて合性不飽和二重結合を8.6〜10.5mmol/g有する化合物を水中に分散させることにより、水性化を可能にすると同時に、該水性樹脂の決定的な欠点である高温(50℃)貯蔵安定性をある程度レベルアップできた。しかしながら、該樹脂は特にライン塗装などにおいて要求の高いさらに高温時(70℃)の樹脂貯蔵安定性を解決できておらず、実際の使用には問題が残っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4229214号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、高温(70℃)での貯蔵時であっても、保存安定性が良好な活性エネルギー線硬化型水性樹脂組成物することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記の課題を解決するため、鋭意検討の結果、無水マレイン酸共重合体と水酸基含有不飽和化合物を反応させて得られる該共重合体のハーフエステルを必須成分とする組成物が、高温での樹脂貯蔵安定性が良好となることを見出し、発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、
下記一般式(1)、(2)で表される構成単位を有するポリマーとアクリル系単量体と塩基性化合物とを含有する組成物が水性媒体中に分散されていることを特徴とする活性エネルギー線硬化型水性樹脂組成物を提供する。
【0008】
【化1】

【0009】
式中Rは、水素原子又はメチル基を、R2、R3はそれぞれ独立に水素または炭素数1〜5のアルキル基を表す。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高温(70℃)であっても保存安定性に優れる活性エネルギー線硬化型水性樹脂組成物を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に用いる前記一般式(1)、(2)で表される構成単位を有するポリマーとしては、例えば、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物とラジカル重合性モノマーとの共重合体と、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有不飽和化合物との反応物(ハーフエステル体)が挙げられる。
【0012】
前記α,β−不飽和ジカルボン酸無水物としては、例えば、マレイン酸無水物又はシトラコン酸無水物などを挙げることができる。これらの中で、耐熱性、共重合性、およびハーフエステル化の点からマレイン酸無水物が好ましい。マレイン酸無水物の含有量としては、マレイン酸無水物/ラジカル重合性モノマー=10/90〜60/40(重量比)の範囲が、マレイン酸無水物の共重合性、水分散安定性、ハーフエステル化成分の導入の観点からして、好ましい。
【0013】
前記ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、クロトン酸、α−クロルアクリル酸、けい皮酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、コハク酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、マレイン酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、シクロヘキセン−3,4−ジカルボン酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、ジ(メタ)アクリル酸(ジ)エチレングリコ−ル、ジ(メタ)アクリル酸−1,4−ブタンジオ−ル、ジ(メタ)アクリル酸−1,6−ヘキサンジオ−ル、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロ−ルプロパン、ジ(メタ)アクリル酸グリセリン、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等のアクリル単量体、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、クロルメチルスチレン、イソブチレン等のビニル基含有単量体を挙げることができる。
【0014】
これらの中でも、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物、とくに無水マレイン酸との共重合単量体としては、無水マレイン酸との共重合性、硬化膜の耐熱性等の観点より、(メタ)アクリル酸エチル、又はスチレンが好ましい。特に得られた皮膜の耐久性に優れたスチレンを主体に用いることが好ましい。
【0015】
また、前記無水マレイン酸との共重合ポリマーは、後に水酸基含有不飽和化合物を反応させて上記(1)、(2)のようなハーフエステルを必須成分とする化合物を得る。該水酸基含有不飽和化合物は、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アリルアルコール、及びメタリルアルコールからなる群から選ばれる1種以上の化合物である。
【0016】
また、必要に応じて、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキブチル、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等の前記以外の水酸基含有不飽和化合物を併用してもよい。
【0017】
前記一般式(1)、(2)で表される構成単位を有するポリマーの分子量としては、5000〜200000の重量平均分子量を有するものを使用することが好ましい。なお、前記重量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定された値を指す。
【0018】
本発明の活性エネルギー線硬化型水性樹脂組成物に用いる塩基性化合物としては、前記一般式(1)、(2)で表される構成単位を有するポリマー中のカルボキシル基を中和して、水性媒体中に分散するために用い、例えば、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルルアミン、ジプロピルルアミントリプロピルルアミン等のアルキルアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール、2−(ジメチルアミノ)−2−メチルプロパノール、N−メチルジエタノールアミン等のアルカノールアミン;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の多価アミン等の有機アミンやアンモニア(水)の無機アミンのほか、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、水酸化リチウム等が挙げられる。塩基性化合物の中でも揮発性が高い為、硬化塗膜に残りにくく、耐水性に優れる硬化塗膜が得られることからアンモニア水が好ましい。中和剤(塩基性化合物)は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
前記一般式(1)、(2)で表される構成単位を有するポリマー中のカルボキシル基の中和率としては、活性エネルギー線硬化型水性樹脂組成物が安定に水性媒体中に分散されていれば、特に限定されないが、水性組成物の粘度、水性組成物の被膜形成時の乾燥性の観点から、30〜100%が好ましい。
【0020】
本発明の活性エネルギー線硬化型水性樹脂組成物には、各種の重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、例えば、光(重合)開始剤としては、種々のものを使用できる。例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン誘導体、ミヒラーズケトン、ベンジン、ベンジル誘導体、ベンゾイン誘導体、ベンゾインメチルエーテル類、α−アシロキシムエステル、チオキサントン類、アンスラキノン類およびそれらの各種誘導体などで、例えば4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エステル、アルコキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸アルキル、ビス(4−ジアルキルアミノフェニル)ケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインベンゾエート、ベンゾインアルキルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2−ヒドロキシ−2−プロピルケトン、2−ヒドロキシー2−メチル−1−フェニループロパン−1−オン、チオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェノイルフォスフィンオキシド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1−オン等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、あるいは2種以上を併用して用いてもよい。尚、光(重合)開始剤を添加する場合、単独でも良いし、溶剤に溶解した状態で添加しても良い。
【0021】
光(重合)開始剤は、本発明の活性エネルギー線硬化型水性樹脂組成物の固形分に対して、0.05〜20重量%、好ましくは、0.5〜10重量%の範囲内で添加することが好ましい。
【0022】
また、光(重合)開始剤加えて種々の光増感剤をも併用することができる。光増感剤としては、例えば、アミン類、尿素類、含硫黄化合物、含燐化合物、含塩素化合物またはニトリル類もしくはその他の含窒素化合物などが挙げられる。
【0023】
また、本発明の活性エネルギー線硬化型水性樹脂組成物には必要に応じて、有機溶剤を配合してもよい。該有機溶剤としては、親水性、疎水性に関係なく使用することができる。これら水混和性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロへキサン、シクロヘキサノン等の脂環族系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;などが挙げられる。これら水混和性有機溶剤は、それぞれ単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【実施例】
【0024】
以下に、合成例、実施例および比較例を示して本発明を具体的に説明する。各例中の部および%は断りの無い限り重量基準である。
【0025】
本発明において一般式(1)で表される構成単位を有するポリマー等の樹脂の数平均分子量と重量平均分子量の測定は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフを用いた。
測定装置 ; 東ソー株式会社製 HLC−8220
カラム ; 東ソー株式会社製 ガードカラムHXL−H
+東ソー株式会社製 TSKgel G5000HXL
+東ソー株式会社製 TSKgel G4000HXL
+東ソー株式会社製 TSKgel G3000HXL
+東ソー株式会社製 TSKgel G2000HXL
検出器 ; RI(示差屈折計)
データ処理; 東ソー株式会社製 SC−8010
測定条件 ; カラム温度 40℃
溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 ; ポリスチレン
試料 ; 樹脂固形分換算で0.4重量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)。
【0026】
(実施例1:活性エネルギー線硬化型水性樹脂組成物(A))
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに酢酸ノルマルブチル150重量部、シクロヘキサノン50重量部、無水マレイン酸49重量部を仕込み120℃に昇温、これにスチレン100重量部、アクリル酸エチルエステル100重量部、酢酸ノルマルブチル50重量部、パーブチルZ(ターシャリーブチルパーオキシベンゾエート:日本油脂(株)製)10重量部の溶解混合物を3時間かけて滴下し、115〜125℃にて反応を行った。その後120℃にて10時間ホールドしたのち、アリルアルコール(ダイセル化学工業(株)製)の29重量部、ヒドロキノンを添加し、180分ホールドを行った。その後、温度を90℃に冷却し、25%安水(アンモニア水)34重量部、水900重量部を添加し、水溶化を行った。その後、釜内温度60℃、減圧度0.095MPa下、120分間脱溶剤を行い、冷却後水、及び25%安水を用い、不揮発分24〜26%、pH7.5〜8,5に調整を行った。最終的には不揮発分約24.5重量%、pH8.1、粘度280mPa・s、重量平均分子量2.3万の不飽和二重結合基含有水性樹脂組成物(A)を得た。
【0027】
(実施例2:活性エネルギー線硬化型水性樹脂組成物(B))
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに酢酸ノルマルブチル100重量部、シクロヘキサノン100重量部、無水マレイン酸120重量部を仕込み120℃に昇温、これにスチレン80重量部、酢酸ノルマルブチル50重量部、パーブチルZ(ターシャリーブチルパーオキシベンゾエート:日本油脂(株)製)10重量部の溶解混合物を3時間かけて滴下し、115〜125℃にて反応を行った。その後180℃にて10時間ホールドしたのち、アクリル酸−2−ヒドロキシエチルを140重量部を添加し、120分ホールドを行った。その後、温度を90℃に冷却し、25%安水82重量部、水900重量部を添加し、水溶化を行った。その後、釜内温度60℃、減圧度0.095MPa下、120分間脱溶剤を行い、冷却後水、及び25%安水を用い、不揮発分24〜26%、pH7.5〜8,5に調整を行った。最終的には不揮発分約24.5重量%、pH8.0、粘度180mPa・s、重量平均分子量2.5万の不飽和二重結合基含有水性樹脂組成物(B)を得た。
【0028】
(比較例1:活性エネルギー線硬化型水性樹脂組成物(C))
合成例1〔アクリル樹脂(a−1)の合成〕
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、プロピレングリコールモノプロピルエーテル28重量部を仕込んで攪拌を開始し、120℃まで昇温した。ここに窒素気流下で、メチルメタアクリレート43.4重量部、ブチルメタアクリレート2.1重量部、アクリル酸8.4重量部、ヒドロキシエチルメタアクリレート10.5重量部、アロニックスM−5300〔東亜合成株式会社製、ω−カルボキシポリカプロラクトンアクリレート〕 3.5重量部からなる単量体混合物と、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート1.3重量部をプロピレングリコールモノプロピルエーテル2重量部で溶解した開始剤溶液とを4時間かけて併行滴下した。同温度で更に重合反応を続け8時間後に反応を終了しアクリル樹脂の溶液を得た。次いで、この溶液にトリエチルアミン38.9g、25%アンモニア水61.1gを加えて中和を行い、プロピレングリコールモノプロピルエーテルで調整を行いアクリル樹脂(b−1)の溶液を得た。このアクリル樹脂(a−1)の溶液の不揮発分は70%、中和されたカルボキシル基の量は1.83mmol/gであった。
【0029】
合成例2〔化合物(a−2)の合成〕
攪拌機を具備した1リットルの反応容器に、ヘキサメチレンジイソシアネート104g、メトキノン0.2g、ジブチル錫ジラウリレート0.2gを仕込み攪拌を開始し60℃に昇温した。同温度で、アロニックスM305(東亜合成株式会社製、ペンタエリスリトールトリアクリレート/ペンタエリスリトールテトラアクリレート、水酸基価110mgKOH/g)645gを10回に分けて10分毎に仕込んだ。更に10時間反応を継続して赤外線スペクトルで2250cm−1のイソシアネート基の吸収が消失したことを確認して反応を終了しウレタンアクリレート(重合性不飽和二重結合の含有量:7.8mmol/g)とペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物である化合物(a−2)を得た。化合物(a−2)の重合性不飽和二重結合の濃度は9.0mmol/gであった。
【0030】
合成例3〔オリゴマー(a−3)の合成〕
攪拌機を具備した1リットルの反応容器に、ルミキュアDPA600(大日本インキ化学工業株式会社製、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート/ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、水酸基価50mgKOH/g)250g、ルミキュアDTA400(大日本インキ化学工業株式会社製のジトリメチロールプロパンテトラアクリレート)50g及び化合物(a−2)200gを仕込み、40℃で攪拌を行い化合物(a−3)を得た。化合物(a−3)の重合性不飽和二重結合の濃度は9.5mmol/gであった。
【0031】
攪拌機を具備した1リットルの反応容器に合成例1で得られたアクリル樹脂(a−1)の溶液97部、合成例3で得られたUVオリゴマー(a−3)147gを仕込んで攪拌を開始し70℃に昇温して攪拌混合した。次いで40℃にて攪拌を行いながらイオン交換水340gを10回に分割して投入した。次いで、シリコーン系レベリング剤(BYK製、BYK−333)2.1g添加混合し、イオン交換水で調整を行い不揮発分35%、PH7.8の活性エネルギー線硬化型水性樹脂組成物(C)を調整した。活性エネルギー線硬化型水性樹脂組成物(C)の平均粒子径は320nmであった。
【0032】
評価例
得られた活性エネルギー線硬化型水性樹脂組成物A〜Cの貯蔵安定性と、硬化塗膜の外観評価、耐摩耗性、鉛筆硬度を評価した。硬化塗膜の作成方法と各試験の評価方法を下記に示す。
【0033】
硬化塗膜(試験塗装板)の作成方法。
ガラス板上に乾燥後膜厚が10μmになるようにアプリケーターにて塗装を行い、乾燥機中で80℃10分間の予備乾燥後に80W/cmの高圧水銀ランプを用いて1000mJ/cmの紫外線照射を行い、試験塗装板を作製した。
【0034】
貯蔵安定性試験:200mlのガラス容器に密封した活性エネルギー線硬化型水性樹脂組成物A〜Cを70℃で静置して、外観評価を目視により判定した。
【0035】
◎:1ヶ月間以上分離沈降凝集なし
○:2週間以上分離沈降凝集なし
△:2週間未満で分離沈降あるいは凝集あり
×:1週間未満に分離沈降あるいは凝集あり
【0036】
外観評価:試験塗装板の外観を目視評価した。
◎:平滑でハジキも見られない
○:平滑だが、ハジキがわずかに確認できる
△:わずかに凹凸がみられる
×:大きな凹凸がみられる
【0037】
実施例1、2、比較例1の評価結果を第1表に示す。
【0038】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)、(2)で表される構成単位を有するポリマーと塩基性化合物とを含有する組成物が水性媒体中に分散されていることを特徴とする活性エネルギー線硬化型水性樹脂組成物。
【化1】

(式(1)、(2)中のRは、水素原子又はメチル基を、R2、R3はそれぞれ独立に水素または炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
【請求項2】
前記ポリマーが、無水マレイン酸とラジカル重合性モノマーとの共重合体と水酸基含有不飽和化合物とを反応して得られる樹脂である請求項1記載の活性エネルギー線硬化型水性樹脂組成物。
【請求項3】
無水マレイン酸の含有量が〔マレイン酸無水物/ラジカル重合性モノマー〕=10/90〜60/40(重量比)である請求項2記載の活性エネルギー線硬化型水性樹脂組成物。
【請求項4】
ラジカル重合性モノマーが(メタ)アクリル酸エチル及び/又はスチレンである請求項3記載の活性エネルギー線硬化型水性樹脂組成物。

【公開番号】特開2011−184622(P2011−184622A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53063(P2010−53063)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】