説明

活性エネルギー線硬化型積層体の製造方法および該製造方法を用いた積層体

【課題】紙基材面または該紙基材面にオフセット印刷インキで印刷した該印刷面に活性エネルギー線硬化性ワニスを塗工し、繰返し使用できる美粧性を有するポリオレフィンフィルムを塗工面に重ね合わせた後、活性エネルギー線にて塗膜を硬化させ、該転写フィルムを剥離させる表面加工方法において、優れた基材・印刷インキ密着性、硬化性、美粧性、脱墨性を有する積層体の製造方法の提供。
【解決手段】活性エネルギー線硬化型ワニスが、スチレン−アクリル樹脂(A1)、光重合性単量体(B)、光重合開始剤(C)、シリコーン系添加剤(D1)および/または高分子系ワックス添加剤(D2)からなることを特徴とする活性エネルギー線硬化型ワニスを用いた積層体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙基材の表面を高光沢化する表面加工方法に適し、かつ厚膜加工時においても脱墨性に優れた活性エネルギー線硬化型積層体の製造方法およびそれを用いた積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
雑誌、コミックス、教科書などの表紙、紙袋、カレンダー、紙器製品は、油性またはUVオフセットインキで印刷した後、印刷面に耐擦過性や耐ブロッキング性の向上、スリップ性、光沢や意匠性の付与を目的としてオーバープリントワニスが塗工されている。
【0003】
このようなオーバープリントワニスとしては、養生期間を必要とする熱硬化型溶剤系または水系等の種々のものが主に利用されてきた。
ところが近年では塗工物が短時間で得られるといった生産性の向上が要求され、塗工後ですぐに乾燥・硬化する活性エネルギー線硬化型オーバープリントワニス組成物が開発され使用されるようになっている。
【0004】
近年、活性エネルギー線硬化型オーバープリントワニスを支持基材に塗工する際、美粧性を付与して塗工する方法が提案されている(特許文献1乃至2)。本方法では、支持基材に活性エネルギー線硬化型オーバープリントワニスを塗工し、繰返し使用できる美粧性転写フィルムを塗工面に重ね合わせた後、活性エネルギー線にて塗膜を硬化させ、美粧性転写フィルムを剥離させることで、転写フィルムと同柄のオーバープリント層を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−036352号公報
【特許文献2】特開平5−232853号公報
【特許文献3】特開2005−314832号公報
【特許文献4】特開2005−344054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
脱墨性に関する活性エネルギー線硬化型オーバープリントワニスとして、特許文献3ではアルキッド樹脂を、特許文献4では脱墨性の高極性の光重合性単量体を用いているが、これらをそのまま本表面加工方法に応用すると、通常の印刷速度では美粧性転写フィルムとの剥離が重くなり、ワニスが転写フィルムに取られて美粧性が不足してしまう。剥離を軽くする為に多官能な光重合性単量体を用いることもあるが、そうすると今度は下地への密着性が劣化してしまう。以上のように、本表面加工方法に適した脱墨用オーバープリントワニスはないのが現状である。
【0007】
そこで、これらの問題を解決する手段として、支持基材にワニスを塗工し、繰返し使用できる美粧性転写フィルムを塗工面に重ね合わせた後、活性エネルギー線にて塗膜を硬化させ、美粧性転写フィルムを剥離させる表面加工方法に適していて、かつ厚膜加工時においても脱墨性に優れた活性エネルギー線硬化型オーバープリントワニスの組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の目的を達成する為に鋭意検討した結果、紙基材面または該紙基材面にオフセット印刷インキで印刷した該印刷面に活性エネルギー線硬化型ワニスを塗工し、繰返し使用できる美粧性転写フィルムを塗工面に重ね合わせた後、活性エネルギー線にて塗膜を硬化させ、美粧性転写フィルムを剥離させる表面加工方法を行う際に、特定の組成からなる脱墨用活性エネルギー線硬化性オーバープリントワニスを使用することにより、上記課題を全て解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、第1の発明は、紙基材面または該紙基材面にオフセット印刷インキで印刷した該印刷面に活性エネルギー線硬化型ワニスを塗布し、該塗布面にポリオレフィンフィルムを貼り合わせ、該ポリオレフィンフィルムを透して活性エネルギー線を照射して前記塗布面のワニスを硬化させ、その後に該ポリオレフィンフィルムを剥離させる積層体の製造方法であって、
該活性エネルギー線硬化型ワニスが、
1)重量平均分子量が5000〜12000のスチレン−アクリル樹脂(A1)を10〜 39重量%
(但し、前記(A1)は、
スチレン系単量体(a1)70〜90重量%、
(a1)と共重合可能でカルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸単量体
(a2)1〜20重量%、
(a1)および(a2)と共重合可能でアミノ基及びカルボキシル基を含まない (メタ)アクリル酸エステル単量体(a3)5〜25重量%、
を共重合させてなり、(a1)と(a2)と(a3)との合計は100重量%とす る)
2)(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個有する光重合性単量体(B)を50〜85 重量%、
3)光重合開始剤(C)を0〜20重量%
ならびに
4)シリコーン系添加剤(D1)および/または高分子系ワックス添加剤(D2)の少な くとも1種を0.1〜10重量%
(但し、1)〜4)の合計は100重量%とする)
を含有することを特徴とする積層体の製造方法に関するものである。
【0010】
また、第2の発明は、活性エネルギー線硬化型ワニスが、更に
スチレン系単量体(a1)70〜95重量%、
(a1)と共重合可能なアミノ基を有する(メタ)アクリル酸単量体(a4)5〜
30重量%、
を共重合させてなる重量平均分子量が5000〜12000のスチレン−アクリル樹脂(A2)を含むことを特徴とする請求項1に記載の積層体の製造方法に関するものである。
【0011】
また、第3の発明は、第1の発明および第2の発明の製造方法で製造した積層体に関するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、紙基材面または該紙基材面にオフセット印刷インキで印刷した該印刷面に活性エネルギー線硬化型ワニスを塗工し、繰返し使用できる美粧性を有するポリオレフィンフィルムを塗工面に重ね合わせた後、活性エネルギー線にて塗膜を硬化させ、該転写フィルムを剥離させる表面加工方法において、優れた基材・印刷インキ密着性、硬化性、美粧性を有し、とりわけ脱墨性に効果的な積層体の製造方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
表面加工方法としては、紙基材面または該紙基材面にオフセット印刷インキで印刷した該印刷面に活性エネルギー線硬化型ワニスを塗工し、繰返し使用できる美粧性を有するポリオレフィンフィルムを塗工面に重ね合わせた後、活性エネルギー線にて塗膜を硬化させ、該ポリオレフィンフィルムを剥離させる順序を経る。
【0014】
紙基材の種類としては、特に限定されず、コートボール紙、アート紙、ポリエチレンコート紙、マットコート紙等が用いられる。印刷インキとしては、従来から使用されているオフセット印刷用インキなどが例示できる。
【0015】
繰り返し使用できる美粧性を有するポリオレフィンフィルムとしては、ポリエチレンやポリプロピレンなどが使用できる。ポリオレフィンフィルムの表面形状としては、平面柄やホログラム柄、エンボス柄などが用いられる。
【0016】
本発明におけるスチレン−アクリル樹脂(A1)の、スチレン系単量体(a1)としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルスチレン系のスチレン類などがあり、これらを1種または2種以上を70〜90重量%含有することが望ましく、スチレン系単量体(a1)が70重量%より少ないと塗膜にした際の光沢感が不足してしまい、スチレン系単量体(a1)が90重量%より多いと、印刷基材への密着性が不足してしまう。スチレン系単量体(a1)としては、光沢感、塗膜物性およびコストを考慮するとスチレンが好ましい。
【0017】
本発明におけるスチレン−アクリル樹脂(A1)の、(a1)と共重合可能でカルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸単量体(a2)としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、けい皮酸、またイタコン酸やシトラコン酸およびこれらのアルキルもしくはアルケニルモノエステル、フタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、イソフタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、コハク酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステルなどの他に、脂肪族骨格または芳香族骨格、及び2つ以上のカルボン酸無水物基を有する化合物と、カルボン酸無水物基と反応しうる官能基を有する化合物を反応させてなる、下記一般式(1)で示される(メタ)アクリル酸単量体がある。
【0018】
【化1】

【0019】
(式中、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、R〜Rは、それぞれ独立に非置換もしくは置換の、直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基を示し、Rは、4価の脂肪族基もしくは芳香族基を示す。)
【0020】
脂肪族骨格または芳香族骨格、及び2つ以上のカルボン酸無水物基を有する化合物である下記一般式(2)で示される脂肪族または芳香族テトラカルボン酸二無水物を、下記一般式(3)で示される第1のヒドロキシル基含有アクリレート化合物またはメタクリレート化合物、および下記一般式(4)で示される第2のヒドロキシル基含有アクリレート化合物またはメタクリレート化合物と反応させて、前記一般式(1)で示される化合物を得ることができる。ここで、一般式(3)及び一般式(4)で示される化合物は、カルボン酸無水物基と反応しうる官能基を有する化合物である。ここで、「カルボン酸無水物基と反応しうる官能基」としては、ヒドロキシ基、アミノ基、グリシジル基などが挙げられるが、反応の制御のし易さから、ヒドロキシ基が特に好ましい。
【0021】
【化2】



【0022】
(ここで、Rは、一般式(1)で定義した通り)
CH=C(R)COOROH ・・・ 一般式(3)
(ここで、RおよびRは、一般式(1)で定義した通り)
CH=C(R)COOROH ・・・ 一般式(4)
(ここで、RおよびRは、一般式(1)で定義した通り)
【0023】
上記一般式(2)で示される脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、ブタンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。一方、芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニル骨格を有するビフェニルテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルフィドテトラカルボン酸二無水物、ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレン骨格を有するナフタレンテトラカルボン酸二無水物等、フルオレン骨格を有する9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、あるいは、9,9−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン二無水物、テトロヒドロナフタレン骨格を有するテトラヒドロナフタレンカルボン酸二無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセリンビス(アンヒドロトリメリテート)モノアセテート等が挙げられる。市販品としては新日本理化株式会社製「リカシッドTMTA−C」、「リカシッドMTA−10」、「リカシッドMTA−15」、「リカシッドTMEGシリーズ」、「リカシッドTDA」、「リカシッドDSDA」、などが挙げられる。
【0024】
上記脂肪族または芳香族テトラカルボン酸二無水物と、第1および第2のヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート化合物との反応は、脂肪族または芳香族テトラカルボン酸二無水物の有する2つのカルボン酸無水物基と、第1および第2のヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート化合物がそれぞれ有するヒドロキシル基との反応であり、それ自体当該分野においてよく知られている。例えば、芳香族テトラカルボン酸二無水物と第1および第2のヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート化合物とを、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセンのような触媒の存在下、50〜120℃の温度で反応させることができる。この場合、反応系に、メトキノンのような重合禁止剤を添加することができる。
【0025】
本発明におけるスチレン−アクリル樹脂(A1)の、(a1)と共重合可能でカルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸単量体(a2)の1種または2種以上を1〜20重量%含有することが望ましい。20重量%より多いと(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個有する光重合性単量体(B)への溶解が困難となり、また1重量%より少ないと脱墨性の付与が難しい。(a1)と共重合可能で酸価を有する(メタ)アクリル酸単量体(a2)としては、脱墨性およびコストを考慮するとメタクリル酸が好ましい。
【0026】
本発明におけるスチレン−アクリル樹脂(A1)の、(a1)および(a2)と共重合可能でアミノ基及びカルボキシル基を含まない(メタ)アクリル酸エステル単量体(a3)としては、直鎖または分岐のアルキル鎖を有するアルキル(メタ)アクリレート類やヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート類、その他ポリウレタンポリ(メタ)アクリレート類、ポリエステルポリ(メタ)アクリレート類、ポリエポキシポリ(メタ)アクリレート類などがある。
【0027】
アルキル(メタ)アクリレート類として、単官能の(メタ)アクリル系化合物を挙げるることができ、それらの具体例は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、イコシル(メタ)アクリレート、ヘンイコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜22のアルキレン(メタ)アクリレートが挙げられる。メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、n−ペンタキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、n−ペンタキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の、末端にアルコキシ基を有しポリオキシアルキレン鎖を有するモノ(メタ)アクリレート;フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラプロピレンエチレングリコール(メタ)アクリレート等の、末端にフェノキシまたはアリールオキシ基を有するポリオキシアルキレン系(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0028】
ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート類の例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレートなどがある。
【0029】
ポリウレタンポリ(メタ)アクリレートは、例えば、ジイソシアネートと水酸基を有する(メタ)アクリレート類とを反応させて得られるもの、ポリオールとポリイソシアネートとをイソシアネート基過剰の条件下に反応させてなるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを、水酸基を有する(メタ)アクリレート類と反応させて得られるものがある。あるいは、ポリオールとポリイソシアネートとを水酸基過剰の条件下に反応させてなる水酸基含有ウレタンプレポリマーを、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート類と反応させて得ることもできる。
【0030】
ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサントリオール、トリメリロールプロパン、ポリテトラメチレングリコール、アジピン酸とエチレングリコールとの縮重合物等が挙げられる。
【0031】
ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。水酸基を有する(メタ)アクリレート類としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート,2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート類としては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート等が挙げられる。
【0032】
ポリエポキシポリ(メタ)アクリレートとしては、例えばエポキシ樹脂のエポキシ基に(メタ)アクリル酸のカルボキシル基を反応させて(メタ)アクリロイル基を導入したものであり、ノボラック型エポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸付加物等を挙げることができる。
【0033】
ポリエステルポリ(メタ)アクリレートとしては、例えばポリエステル樹脂の末端水酸基に(メタ)アクリル酸のカルボキシル基を縮合反応させて(メタ)アクリロイル基を導入したもの、もしくはポリエステル樹脂の末端カルボキシル基に(メタ)アクリル酸グリコールエステル末端の水酸基を縮合反応させて(メタ)アクリロイル基を導入したものなどを挙げることができる。
【0034】
本発明におけるスチレン−アクリル樹脂(A1)の、(a1)および(a2)と共重合可能でアミノ基及びカルボキシル基を含まない(メタ)アクリル酸エステル単量体(a3)の1種または2種以上を5〜25重量%含有することが望ましい。25重量%より多いと(a1)および(a2)の含有量が不足してしまい、光沢や密着性、脱墨性の劣化が起こる。5重量%より少ないと、油性オフインキに対する密着性が不足する。(a1)および(a2)と共重合可能でアミノ基及びカルボキシル基を含まない(メタ)アクリル酸エステル単量体(a3)としては、油性オフインキに対する密着性からステアリルメタクリレートが好ましい。
【0035】
本発明におけるスチレン−アクリル樹脂(A1)の重量平均分子量としては、5000〜12000のものを用いる。重量平均分子量が12000より大きいとワニスの粘度が大きくなりすぎてしまい、塗工適性のないものとなってしまう。重量平均分子量が5000より小さいと油性オフインキへの密着性が不足してしまう。
【0036】
スチレン−アクリル樹脂の合成方法は特に限定されず、溶液重合、懸濁重合、乳化重合など公知の方法で製造することができる。分子量は公知の方法、例えば重合開始剤、連鎖移動剤の種類や使用量、分離・精製により調節が可能である。
【0037】
本発明におけるスチレン−アクリル樹脂(A2)の、(a1)については上記と同様であり、(a1)と共重合可能なアミノ基を有する(メタ)アクリル酸単量体(a4)としては、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレートや3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレートなどのアミノ基を有する(メタ)アクリレート類などが挙げられ、特に2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレートが好ましい。これらの1種または2種以上を5〜30重量%共重合させた、重量平均分子量が5000〜12000のものを用いることが好ましい。30重量%より多いと(a1)の含有量が不足してしまい、光沢の劣化が起こる。5重量%より少ないと、オフセットインキへの密着性が不足する。
【0038】
本発明における(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個有する光重合性単量体(B)としては、分子内に(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個有するモノマー、オリゴマーなどが挙げられる。
【0039】
分子内に(メタ)アクリロイル基を2個有するモノマーとしては、例えば、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、などがある。エチレンオキサイド(EO)又はプロピレンオキサイド(PO)で変性されたものとしては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレートなどが例示できる。
【0040】
分子内に(メタ)アクリロイル基を3個以上有するモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート等の多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物;ポリウレタンポリ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルポリ(メタ)アクリレート、ポリアクリルポリ(メタ)アクリレート、ポリアルキッドポリ(メタ)アクリレート、ポリエポキシポリ(メタ)アクリレート、ポリスピロアセタールポリ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンポリ(メタ)アクリレート、ポリチオールポリエンポリ(メタ)アクリレート、ポリシリコンポリ(メタ)アクリレート等の多官能のポリ(メタ)アクリレート化合物;多価アルコールと多塩基酸および(メタ)アクリル酸とから合成されるエステル化合物、たとえばトリメチロールエタン/コハク酸/アクリル酸=2/1/4(モル比)から合成されるエステル化合物等などがある。これらのエチレンオキサイド(EO)又はプロピレンオキサイド(PO)で変性されたものなども使用でき、トリメチロールプロパン(EO)変性トリ(メタ)アクリレートなどが例示できる。
【0041】
必要に応じて分子内に(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個有するモノマーも使用することができ、例えば、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;ベンジルメタクリレート、ベンジルアクリレートなどのアラルキル(メタ)アクリレート;ブトキシエチルメタクリレート、ブトキシエチルアクリレートなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルの(メタ)アクリル酸エステル;ヘキサエチレングリコールモノフェニルエーテルなどのポリアルキレングリコールモノアリールエーテルの(メタ)アクリル酸エステル;その他イソボニル(メタ)アクリレート;グリセロール(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどがある。エチレンオキサイド(EO)又はプロピレンオキサイド(PO)で変性されたものとしては、2−エチルヘキシル(EO)変性アクリレートなどが例示できる。
【0042】
本発明における光重合性単量体が(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個有する含窒素環状化合物としては、モルフォリンアクリレートやイソシアヌレート型アクリレート、イミドアクリレート、テトラメチルピペリジルメタクリレート、ペンタメチルピペリジルメタクリレート、ビニルカルバゾール、ビニルピロリドン、ジビニルエチレンウレア、1−ビニルイミダゾール、ビニルカプロラクトンなどが挙げられる。ワニス粘度や塗工適性を考慮すると、好ましくはモルフォリンアクリレートを用いる。
【0043】
分子内に(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個有するオリゴマーとしては、上記モノマーの1種または2種以上をイソシアネートやエポキシ基を介して適宜反応させて得られたものを用いることができる。上記光重合性単量体(B)は、1種又は2種以上を用いることができる。光重合性単量体(B)の配合量としてはワニス組成物中に50〜85重量%である。配合量が50%より少ないとワニス粘度を下げることが困難になってしまう。85%より多いとスチレン−アクリル樹脂(A1)の配合量が減ってしまうことで、光沢感が不足してしまう。好ましくはポリオキシアルキレンポリオール誘導体を用いる。
【0044】
光重合開始剤(C)としては、光励起によってビニル重合を開始できる機能を有するものであれば特に限定はなく、例えばモノカルボニル化合物、ジカルボニル化合物、アセトフェノン化合物、ベンゾインエーテル化合物、アシルホスフィンオキシド化合物、アミノカルボニル化合物などが使用できる。具体的には、モノカルボニル化合物としては、ベンゾフェノン、4−メチル−ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、4−(4−メチルフェニルチオ)フェニル−エタノン、3,3´−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、4−(1,3−アクリロイル−1,3,3´−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、4−(1,3−アクリロイル−1,4,7,10,13−ペンタオキソトリデシル)ベンゾフェノン、3,3´,4,4´−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミン塩酸塩、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシエチル)メタアンモニウムシュウ酸塩、2−/4−イソ−プロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−ヒドロキ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9Hチオキサントン−2−イロキシ−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミン塩酸塩、ベンゾイルメチレン−3−メチルナフト(1,2−d)チアゾリン等が挙げられる。
【0045】
ジカルボニル化合物としては、1,2,2−トリメチル−ビシクロ[2.1.1]ヘプタン−2,3−ジオン、ベンザイル、2−エチルアントラキノン、9,10−フェナントレンキノン、メチル−α−オキソベンゼンアセテート、4−フェニルベンザイル等が挙げられる。アセトフェノン化合物としては、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−ジ-2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−スチリルプロパン−1−オン重合物、ジエトキシアセトフェノン、ジブトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2,2−ジエトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノ−プロパノニル)−9−ブチルカルバゾール等が挙げられる。
【0046】
ベンゾインエーテル化合物としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイゾブチルエーテル、ベンゾインノルマルブチルエーテル等が挙げられる。アシルホスフィンオキシド化合物としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、4−n−プロピルフェニル−ジ(2,6−ジクロロベンゾイル)ホスフィンオキシド等が挙げられる。アミノカルボニル化合物としては、メチル−4−(ジメトキシアミノ)ベンゾエート、エチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、イソアミル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2−(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、4,4´−ビス−4−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4´−ビス−4−ジエチルアミノベンゾフェノン、2,5´−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン等が挙げられる。光重合開始剤の市販品としてはチバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製イルガキュア184、651、500、907、127、369、784、2959、BASF社製ルシリンTPO、日本シイベルヘグナー(株)製エサキュアワン等が挙げられる。
【0047】
光重合開始剤(C)は、上記化合物に限定されず、紫外線により重合を開始させる能力があれば、どのようなものでも構わない。これらの光重合開始剤は、一種類で用いられるほか、二種類以上を混合して用いてもよい。増感剤として、公知の有機アミン等を加えることもできる。さらに、上記ラジカル重合用開始剤のほかに、カチオン重合用の開始剤を併用することもできる。
【0048】
本発明で言う活性エネルギー線とは、電子線、紫外線あるいはγ線の如き、電離性放射線や電磁波などを総称するものである。
【0049】
上記光重合開始剤(C)は、1種又は2種以上を用いることができる。光重合開始剤(C)はワニス組成中に0〜20重量%用いる。光重合開始剤(C)は電子線で硬化させる際には不要であり、またLED光源の紫外線により硬化させる場合には10〜20重量%必要とする。20重量%より多いと塗膜中の開始剤の量が多すぎてしまい、耐擦性などの塗膜強度が不足してしまう。一般光源の紫外線により硬化させる場合には1〜10重量%必要とする。
【0050】
シリコーン系添加剤(D1)としては、慣用公知の添加剤を用い、シリコーン系添加剤であれば、例えばポリシロキサン、変性シリコーンオイル、トリメチルシロキシケイ酸を含有するポリシロキサン、シリコーン系アクリル樹脂等である。高分子系ワックス添加剤(D2)としては、例えばポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンやアマイド、カルナバなどが用いられる。これらの中でいずれも単独あるいは複数のものを組み合わせて使用することができる。シリコーン系添加剤(D1)および/または高分子系ワックス添加剤(D2)はワニス組成物中0.1〜10重量%用いる。0.1重量%より少ないと、塗膜の耐擦過性やスリップ性が不足してしまい、反対に10重量%より多いと塗工直後に泳ぎが発生したり、塗膜に曇が見られる場合がある。
【0051】
本発明の塗工方法としては、グラビアコート、グラビアリバースコート、マイクログラビアコート、グラビアオフセットコート、スピンコート、ロールコート、リバースロールコート、ダイコート、キスコート、ディップコート、シルクスクリーンコート、ワイヤーバーコート、フローコート、コンマコート、かけ流しコート、スプレーコート等の公知の手段が適用できる。好ましくは、溶剤希釈を必要としない手段である。溶剤希釈すると表面加工時に使用するポリオレフィンフィルムの柄層が徐々に溶解してしまい、該ポリオレフィンフィルムの繰返し使用回数が少なくなり、結果として加工費の上昇に繋がってしまう。
【0052】
本発明に用いる活性エネルギー線硬化型ワニスには、必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、防菌防かび剤、帯電防止剤等を配合することができる。
紫外線吸収剤としては、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤等の有機系紫外線吸収剤、或いは酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウムの微粒子からなる無機系紫外線吸収剤が挙げられる。
【0053】
光安定剤としては、HALS(ヒンダードアミン系光安定剤)が挙げられる。具体的な例としては、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、1−(メチル)−8−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)−[[3,5−ビス1,1−ジメチルエチル]−4−ヒドロキシフェニル]メチル−ブチルマロネート、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物等が挙げられる。
【0054】
これらの紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤(HALS)は、組成物中に任意の量で添加されても良いが、コスト面から組成物の全量を基準として0.5〜5重量%の範囲で添加されることが好ましい。
【0055】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤が挙げられる。
【0056】
防菌防かび剤としては、銀系無機化合物、バイナジン、プリベントール、チエベンダドール、ベンズイミダゾール、チアゾリルスルファミド化合物等が挙げられる。
【0057】
帯電防止剤としては、アルキルアミンサルフェート型、第4級アンモニウム塩型、ピリジニウム塩型等の陽性イオン型、アルキルベタイン型、アルキルイミダゾリン型等の両性イオン型がある。特に第4級アンモニウム塩型が好ましく、その例として低分子の界面活性剤、第4級アンモニウム塩基含有のアクリレート共重合体がある。
【0058】
その他、着色剤、滑剤、充填剤、潜在性硬化剤、難燃剤、赤外線吸収剤、触媒、重合促進剤、チキソトロピー剤、可塑剤等を配合することもできる。
【実施例】
【0059】
以下に実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施に限定されるものではない。なお、実施例中、「部」、「%」はそれぞれ、「重量部」、「重量%」を意味する。
【0060】
本発明に用いた活性エネルギー線硬化型ワニス中のスチレン−アクリル樹脂の合成方法を下記に示す。
【0061】
(合成例)
溶剤に酢酸エチル、重合開始剤に2、2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)を用い、以下の単量体の配合で公知の溶液重合を行い、酢酸エチルを蒸発、乾固させて、固形のスチレン−アクリル樹脂(A1−1〜12、A2、A3)を得た。重量平均分子量は重合開始剤の配合量により調節を行った。
スチレン−アクリル樹脂(A1)
A1−1:スチレン/メタクリル酸/ステアリルメタクリレート=85/5/10の 共重合体、重量平均分子量8000
A1−2:スチレン/メタクリル酸/ステアリルメタクリレート=70/5/25の 共重合体、重量平均分子量8000
A1−3:スチレン/メタクリル酸/ステアリルメタクリレート=70/20/10 の共重合体、重量平均分子量8000
A1−4:スチレン/メタクリル酸/ステアリルメタクリレート=90/5/5の共 重合体、重量平均分子量8000
A1−5:スチレン/メタクリル酸/ステアリルメタクリレート=85/5/10の 共重合体、重量平均分子量5000
A1−6:スチレン/メタクリル酸/ステアリルメタクリレート=85/5/10の 共重合体、重量平均分子量12000
A1−7:スチレン/メタクリル酸/ステアリルメタクリレート=60/30/10 の共重合体、重量平均分子量8000
A1−8:スチレン/メタクリル酸/ステアリルメタクリレート=95/0/5の共 重合体、重量平均分子量8000
A1−9:スチレン/メタクリル酸/ステアリルメタクリレート=60/10/30 の共重合体、重量平均分子量8000
A1−10:スチレン/メタクリル酸/ステアリルメタクリレート=78/20/2 の共重合体、重量平均分子量8000
A1−11:スチレン/メタクリル酸/ステアリルメタクリレート=85/5/10 の共重合体、重量平均分子量3000
A1−12:スチレン/メタクリル酸/ステアリルメタクリレート=85/5/10 の共重合体、重量平均分子量14000
スチレン−アクリル樹脂(A2)
A2:スチレン/2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート=90/10 の共重合体、重量平均分子量11000
カルボキシル基およびアミノ基を含まないスチレン−アクリル樹脂(A3)
A3:スチレン/メタクリル酸/ステアリルメタクリレート=90/0/10の共重 合体、重量平均分子量11000
【0062】
(実施例1)
合成したスチレン−アクリル樹脂(A1−1)20重量%を、トリメチロールプロパン(EO)変性トリアクリレート(B1)40重量%およびトリプロピレングリコールジアクリレート(B2)33重量%で加熱溶解する。その後室温に冷却し、α−ヒドロキシシクロヘキシルアセトフェノン(C1)5重量%を配合して溶解を確認した後、BYK−322(D1)2重量%を添加して攪拌し、ワニス1を得た。
【0063】
次に、紙基材面に上記ワニス1を5g/cmの塗布量となるように塗布し、該塗工面にホログラム柄ポリオレフィンフィルムを貼り合わせた。紫外線(高圧水銀ランプ、120W/cm、コンベアースピード20m/min、露光量60mJ/cmに設定)を該ポリオレフィンフィルムを透して塗布面のワニスに照射して硬化させた。その後に該ポリオレフィンフィルムを剥離させてホログラム柄塗工物を得た。
【0064】
(実施例2〜14、比較例1〜10)
実施例2〜14、比較例1〜10で用いた活性エネルギー線硬化型ワニス2〜24の配合を表1、表2に示す。上記のスチレン−アクリル樹脂(A1−2〜12、A2、A3)、上記または下記の光重合性単量体(B)、光重合開始剤(C)を用いてワニス2〜24を得た。
2)光重合性単量体(B)
B3:1,6−ヘキサンジオール(EO)変性ジアクリレート
3)光重合開始剤(C)
C2:ジフェニル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフォスフィンオキサイド
4)増感剤
E1:ジエタノールメチルアミン
【0065】
ワニス2〜24を用い、実施例1と同一条件でホログラム柄塗工物を得た。尚、実施例13の硬化方法は、電子線照射装置で125kV、3Mrad、酸素濃度100ppm以下の条件で電子線を照射し硬化させた。また、実施例14および比較例10の硬化方法は、実施例1と同じく紫外線硬化であるが、紫外線の光源がLED(松下電工株式会社製LED方式SPOT型紫外線照射装置AICURE、ランプヘッドANUJ61524)のものを用いた。
【0066】
得られた塗工物について基材密着性、硬化性、光沢、耐擦過性、脱墨性の評価を行った。
【0067】
評価方法、及び測定方法を下記に示す。評価結果を表1に示す。尚、評価の実用レベルはいずれも4以上である
【0068】
<基材密着性>
塗工1日後、塗工面に刃物で支持紙基材に達するまでの深さまで傷を付け、その上にセロハンテープを貼り合わせ、基材の垂直方向に勢いよく剥がした。塗工面の剥がれ具合を評価した。
判定基準
5:剥がれ無し
4:ほとんど剥がれ無し
3:若干剥がれ有り
2:剥がれ有り
1:全て剥がれる
【0069】
<硬化性>
塗工1日後にMEKを浸み込ませた綿棒で塗工面を10回擦り、塗膜の侵食具合を目視で評価した。
判定基準
5:取られ無し
4:ほとんど取られ無し
3:若干取られ有り
2:取られ有り
1:全て取られる
【0070】
<光沢>
光沢計(ヒ゛ック゛・ケミー社製micro-TRI-gloss)にて塗工直後と1日後の光沢値を60°反射角で測定した。実用範囲は90以上とした。
【0071】
<耐擦過性>
塗工1日後に、塗工面/塗工面を重ね合わせ、学振型摩擦試験機を用い500g荷重にて300回の摩擦を行い、塗工面の傷や取られ具合を評価した。
判定基準
5:取られ無し
4:ほとんど取られ無し
3:若干取られ有り
2:取られ有り
1:全て取られる
【0072】
<脱墨性>
RIテスターを用いて油性オフセットプロセス4色を印刷した基材に上記ワニスを塗工し、乾燥を行う。その後60℃1週間強制乾燥(エージング)させた試料を30×30mmに断裁し、専用の脱墨溶液に投入後20分間攪拌し、その際の紙基材の溶解具合を目視にて評価した。尚、専用の脱墨溶液は、150gの水に対し、3.75%のNaOH液を0.7g、1.5%に希釈した脱墨剤(花王株式会社製DI7020 相当品)を0.7g加えたものである。
判定基準
5:溶け残り無し
4:ほとんど溶け残り無し
3:若干溶け残り有り
2:溶け残り有り
1:全て残る
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材面または該紙基材面にオフセット印刷インキで印刷した該印刷面に活性エネルギー線硬化型ワニスを塗布し、該塗布面にポリオレフィンフィルムを貼り合わせ、該ポリオレフィンフィルムを透して活性エネルギー線を照射して前記塗布面のワニスを硬化させ、その後に該ポリオレフィンフィルムを剥離させる積層体の製造方法であって、
該活性エネルギー線硬化型ワニスが、
1)重量平均分子量が5000〜12000のスチレン−アクリル樹脂(A1)を10〜 39重量%
(但し、前記(A1)は、
スチレン系単量体(a1)70〜90重量%、
(a1)と共重合可能でカルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸単量体
(a2)1〜20重量%、
(a1)および(a2)と共重合可能でアミノ基及びカルボキシル基を含まない (メタ)アクリル酸エステル単量体(a3)5〜25重量%、
を共重合させてなり、(a1)と(a2)と(a3)との合計は100重量%とす る)
2)(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個有する光重合性単量体(B)を50〜85 重量%、
3)光重合開始剤(C)を0〜20重量%
ならびに
4)シリコーン系添加剤(D1)および/または高分子系ワックス添加剤(D2)の少な くとも1種を0.1〜10重量%
(但し、1)〜4)の合計は100重量%とする)
を含有することを特徴とする積層体の製造方法。
【請求項2】
活性エネルギー線硬化型ワニスが、更に
スチレン系単量体(a1)70〜95重量%、
(a1)と共重合可能なアミノ基を有する(メタ)アクリル酸単量体(a4)5〜
30重量%、
を共重合させてなる重量平均分子量が5000〜12000のスチレン−アクリル樹脂(A2)を含むことを特徴とする請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の製造方法で製造した積層体。

【公開番号】特開2013−103449(P2013−103449A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249926(P2011−249926)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】