説明

活性エネルギー線硬化型粉体塗料組成物

【課題】貯蔵安定性に優れ、被塗物に塗装した場合、活性エネルギー線による硬化性に優れた硬化塗膜を形成することができる粉体塗料組成物を提供すること。
【解決手段】(A)オキセタン官能基を1分子中に平均2個以上含有し、ガラス転移温度が40〜100℃の範囲内であり、数平均分子量が1,000〜15,000の範囲内である樹脂、(B)ガラス転移温度が40〜100℃の範囲内であるポリエポキシド、及び(C)光カチオン重合開始剤を必須成分として含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型粉体塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な活性エネルギー線硬化型粉体塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粉体塗料組成物は有機溶剤等の揮発成分をほとんど含まないことから公害防止、地球環境の保護の点に優れた塗料として注目されている。
【0003】
エポキシ基含有粉体樹脂を用いた光カチオン重合粉体塗料組成物は、ビニル基含有粉体樹脂を用いた光ラジカル重合粉体塗料組成物に比べ、熱安定性に優れるため、粉体塗料の製造や粉体塗装後の加熱溶融による塗膜形成が良好である。しかしながら、エポキシ基の光カチオン重合を利用した活性エネルギー線硬化樹脂は、硬化時に酸素の影響を受けない等の利点を有するため、近年多くの用途に使用され始めているが、不飽和基の活性エネルギー線ラジカル重合に比べ感光性が悪いという問題点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、活性エネルギー線による硬化性に優れた粉体塗料組成物を開発することを目的としてなされたものである。
【0005】
本発明者等は、前記従来技術の欠点を解消すべく鋭意研究を重ねた。その結果、架橋官能基としてオキセタン官能基とエポキシ基を併用すると、感光性が向上して、その結果、光カチオン重合速度が増大することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
しかして、本発明によると、(A)下記一般式(I)
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、R1は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フッ素原子、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基、アラルキル基、フリル基又はチェニル基を示す)で表わされるオキセタン官能基を1分子中に平均2個以上含有し、ガラス転移温度が40〜100℃の範囲内であり、数平均分子量が1,000〜15,000の範囲内である樹脂、(B)ガラス転移温度が40〜100℃の範囲内であるポリエポキシド、及び(C)光カチオン重合開始剤を必須成分として含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型粉体塗料組成物(以下、このものを「粉体塗料組成物」と呼ぶ)が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の活性エネルギー線硬化型粉体塗料組成物は、貯蔵安定性に優れ、被塗物に塗装した場合、活性エネルギー線による硬化性に優れた硬化塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の粉体塗料組成物について以下に説明する。
【0011】
該粉体塗料組成物は、架橋官能基として前記式(I)で表わされるオキセタン官能基を有する樹脂(A)及びポリエポキシド(B)を、主たる樹脂成分として含んでなる点に特徴を有する。
【0012】
オキセタン官能基含有樹脂(A):前記式(I)中のR1の定義において、「炭素数1〜6のアルキル基」は直鎖状又は分岐状のものであってもよく、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ヘキシル等が挙げられる。「炭素数1〜6のフルオロアルキル基」は上記アルキル基の水素原子の少なくとも1個がフッ素原子で置換された基であり、例えば、フルオロプロピル、フルオロブチル、トリフルオロプロピル等が挙げられる。「アリール基」は単環式又は多環式であることができ、また、芳香環が1個又はそれ以上の炭素数1〜6のアルキル基で置換されていてもよく、例えば、フェニル、トルイル、キシリル、ナフチル等が挙げられる。「アラルキル基」は、アリール部分及びアルキル部分がそれぞれ上記の意味を有するアリール−アルキル基であり、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0013】
1としては中でも炭素数1〜6、殊に炭素数1〜4のアルキル基、例えば、メチル、エチルが好適である。
【0014】
該オキセタン官能基は、エーテル結合、エステル結合、ウレタン結合等の酸素を含有する結合又はこれらの1種以上の結合を含む炭化水素類を介して樹脂(A)の側鎖又は主鎖に結合していることが好ましい。
【0015】
オキセタン官能基は、樹脂(A)中に1分子あたり平均して少なくとも約2個以上、好ましくは平均約3〜約30個の割合で存在することができる。該オキセタン官能基が1分子あたり平均約2個を下回ると活性エネルギー線硬化性が低下するので好ましくない。
【0016】
該オキセタン官能基含有樹脂(A)は、ガラス転移温度40〜100℃の範囲内、好ましくは50〜80℃の範囲内、数平均分子量1,000〜15,000の範囲内、好ましくは3,000〜10,000の範囲内を夫々有するものである。ガラス転移温度が40℃を下回ると塗料の耐ブロッキング性が劣り、一方、100℃を上回ると塗膜の仕上り外観(平滑性等)が劣るので好ましくない。数平均分子量が1,000を下回ると塗料の耐ブロッキング性、塗膜の耐候性が劣り、一方、15,000を上回ると塗膜の仕上り外観が劣るので好ましくない。上記したガラス転移温度(Tg、℃)は、以下のように求める。即ち、示差走査熱量測定装置(DSC)を用い、試料をサンプルパンに約10mg秤量したものを100℃まで加熱し、10分間保持し、その後、−20℃まで急冷する。その後、10℃/分の速度で昇温し、ガラス転移温度を求める。
【0017】
オキセタン官能基含有樹脂(A)は、オキセタン官能基を1分子中に平均2個以上含有し、ガラス転移温度が40〜100℃の範囲内であり、数平均分子量が1,000〜15,000の範囲内である限り、特に制限なしに使用することができる。具体的には、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、及びこれらの変性樹脂等が包含される。
【0018】
上記した樹脂にオキセタン官能基を導入する方法について代表例を以下に例示する。
【0019】
(1)多塩基酸(例えば、(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、(無水)マレイン酸、アジピン酸、アゼライン酸等)と多価アルコール(例えば、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等)、及び必要に応じて1塩基酸の混合物をエステル化触媒の存在下でエステル化反応させてポリカルボン酸ポリエステル樹脂を製造し、次いで得られた樹脂をトリメチロールプロパン等のトリオール成分でエステル化反応させてポリエステル樹脂中にトリオール成分に由来する下記式
【0020】
【化2】

【0021】
の1,3−ジオール残基を導入し、続いて該残基と炭酸ジエチルとを反応させて環状ポリカーボネートを有するポリエステル樹脂を製造し、続いてこのものを脱炭酸させたもの。
【0022】
(2)トリメチロールプロパン等のトリオールと炭酸ジエチルを反応させて水酸基含有環状カーボネートを製造した後、脱炭酸して片末端に水酸基及びもう一方の末端にオキセタン官能基を有する3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンを製造し、次いで該オキセタンの水酸基と相補的に反応するが、しかしオキセタン基とは実質的に反応しない相補性官能基、例えば、イソシアネート基、低級アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ)、低級アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル)等を有する樹脂(例えば、イソシアネート基を含有するアクリル樹脂、メチルエステル基を含有するポリエステル樹脂等)を反応させたもの。
【0023】
(3)上記3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンと、相補的に反応する上記官能基及びラジカル重合性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基等)を含有する不飽和モノマーとを反応させて分子の片末端にラジカル重合性不飽和基及びもう一方の末端にオキセタン官能基を有する不飽和モノマーを製造し、次いで該不飽和モノマーを、必要ならばその他のラジカル重合性不飽和モノマー(例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のC1〜C24のアルキル又はシクロアルキルエステル類;2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸のC2〜C8ヒドロキシアルキルエステル類;(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有不飽和モノマー類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物類;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロイソノニルエチル(メタ)アクリレート等の含フッ素不飽和モノマー類;(メタ)アクリルアミド等の重合性アミド類;(メタ)アクリロニトリル等の重合性ニトリル類)とラジカル(共)重合させたもの。
【0024】
(4)上記水酸基含有環状カーボネートと上記相補性官能基を有する樹脂を反応させて樹脂中に環状カーボネートを導入した後、該環状カーボネートを脱炭酸してオキセタン官能基に変換したもの。
【0025】
(5)上記水酸基含有環状カーボネートと上記相補的に反応する官能基及びラジカル重合性不飽和基を含有する不飽和モノマーとを反応させて分子の片末端にラジカル重合性不飽和基及びもう一方の末端に環状カーボネートを有する不飽和モノマーを製造し、次いで該不飽和モノマーを、必要ならば上記その他のラジカル重合性不飽和モノマーとラジカル(共)重合させて、(共)重合体中に環状カーボネートを導入した後、該環状カーボネートを脱炭酸してオキセタン官能基に変換したもの。
【0026】
ポリエポキシド(B):本発明に用いるポリエポキシド(B)は、1分子中にエポキシ基を平均約2個以上、好ましくは平均約2〜10個含有し、ガラス転移温度が40〜100℃の範囲内である樹脂である。該エポキシ基の数が1分子中に平均約2個を下回ると活性エネルギー線硬化性が低下するので好ましくない。また、ガラス転移温度が40℃を下回ると塗料の耐ブロッキング性が劣り、一方、100℃を上回ると塗膜の仕上り外観(平滑性等)が劣るので好ましくない。
【0027】
上記したガラス転移温度(Tg、℃)は、前述の示差走査熱量測定装置(DSC)により求める。
【0028】
また、ポリエポキシド(B)の数平均分子量は、約120〜200,000、好ましくは約240〜80,000の範囲内のものが好ましい。数平均分子量が約120を下回ると塗膜の耐久性等が低下し、一方、数平均分子量が約200,000を越えると塗装作業性が劣るといった欠点があるので好ましくない。
【0029】
ポリエポキシド(B)の具体例としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有エチレン性不飽和モノマー、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等の脂環式エポキシ基含有エチレン性不飽和モノマー等の如きエポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーと、必要に応じて、前記その他のラジカル重合性不飽和モノマーをラジカル(共)重合させて得られる(共)重合体;ジグリシジルエーテル、2−グリシジルフェニルグリシジルエーテル、2,6−ジグリシジルフェニルグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル化合物;ビニルシクロヘキセンジオキサイド、レモネンジオキサイド等のグリシジル基及び脂環式エポキシ基含有化合物;ジシクロペンタジエンジオキサイド、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、エポキシシクロヘキセンカルボン酸エチレングリコールジエステル、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート等の脂環式エポキシ基含有化合物;ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂等が包含される。
【0030】
前記オキセタン官能基含有樹脂(A)と上記ポリエポキシド(B)との配合割合は、固形分基準で、オキセタン官能基含有樹脂(A)100重量部に対してポリエポキシド(B)が約0.1〜100重量部、好ましくは約1〜50重量部の範囲内が好適である。
【0031】
光カチオン重合開始剤(C):本発明で使用する光カチオン重合開始剤(C)は、活性エネルギー線によってカチオンを発生して、オキセタン官能基及びエポキシ基のカチオン重合を開始させる化合物であり、例えば、下記式(II)〜(XVI)で表わされるヘキサフルオロアンチモネート塩、ペンタフルオロヒドロキシアンチモネート塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアルゼネート塩及びその他の光カチオン重合開始剤を挙げることができる。
【0032】
Ar2+・X- (II)
[式中、Arはアリール基、例えばフェニル基を表わし、X-はPF6-、SbF6-、又はAsF6-を表わす]
Ar3+・X- (III)
[式中、Ar及びX-は上記と同じ意味を有する]
【0033】
【化3】

【0034】
[式中、R2は炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表わし、nは0〜3の整数を表わし、X-は上記と同じ意味を有する]
【0035】
【化4】

【0036】
[式中、Y-はPF6-、SbF6-、AsF6-又はSbF5(OH)-を表わす]
【0037】
【化5】

【0038】
[式中、X-は上記と同じ意味を有する]
【0039】
【化6】

【0040】
[式中、X-は上記と同じ意味を有する]
【0041】
【化7】

【0042】
[式中、X-は上記と同じ意味を有する]
【0043】
【化8】

【0044】
[式中、R3は炭素原子数7〜15のアラルキル基又は炭素原子数3〜9のアルケニル基、R4は炭素原子数1〜7の炭化水素基又はヒドロキシフェニル基、R5は酸素原子又は硫黄原子を含有していてもよい炭素原子数1〜5のアルキル基を示し、X-は上記と同じ意味を有する]
【0045】
【化9】

【0046】
[式中、R6及びR7はそれぞれ独立に炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表わす]
【0047】
【化10】

【0048】
[式中、R6及びR7は上記と同じ意味を有する]
【0049】
【化11】

【0050】
光カチオン重合開始剤(C)の市販品としては、例えば、サイラキュアUVI−6970、同UVI−6990(以上、いずれも米国ユニオンカーバイド社製)、イルガキュア264(チバガイギー社製)、CIT−1682(日本曹達(株)製)等を挙げることができる。上記化合物中、毒性、汎用性の点からPF6-をアニオンとする塩が好ましい。
【0051】
上記の光カチオン重合開始剤(C)の配合割合は、一般に、前記樹脂(A)と前記ポリエポキシド(B)の合計量100重量部(固形分基準)に対して、0.01〜20重量部、好ましくは0.05〜15重量部、さらに好ましくは0.1〜10重量部の範囲内が好適である。配合割合が0.01重量部を下回ると硬化性、加工性等が低下し、逆に20重量部を上回ると貯蔵安定性、硬化物の仕上り外観、黄変性等が低下するのでいずれも好ましくない。
【0052】
粉体塗料組成物:本発明の粉体塗料組成物は、例えば、樹脂(A)の有機溶剤溶液及びポリエポキシド(B)の有機溶剤溶液に開始剤(C)及び必要に応じてその他の添加物の配合物を配合した場合には脱溶剤して固形粉体塗料組成物を得た後、粉砕機により微粉砕して粉体塗料を製造することができ、また、樹脂(A)及びポリエポキシド(B)が固形粉体樹脂の場合には樹脂(A)、ポリエポキシド(B)、開始剤(C)及び必要に応じてその他の添加物の配合物を配合した後、ミキサーでドライブレンドを行ない、次いで加熱溶融混練し、冷却、微粉砕して粉体塗料を製造することができる。粉体塗料組成物の平均粒子径は約1〜100ミクロン、好ましくは約5〜60ミクロンの範囲内が好適である。
【0053】
その他の添加物としては、例えば、着色顔料、充填剤、流動性調整剤、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、表面調整剤、ワキ防止剤、酸化防止剤、帯電制御剤、硬化促進剤、その他樹脂等を挙げることができる。
【0054】
本発明の活性エネルギー線硬化型粉体塗料組成物は、被塗物に静電粉体塗装(例えば、コロナ帯電式、摩擦帯電式等)、流動浸漬塗装等の方法で粉体塗装し、100〜160℃の温度に1〜10分間加熱溶融して塗膜を形成する。この塗膜に紫外線を照射することによって、カチオン重合により硬化塗膜を形成することができる。
【0055】
紫外線照射源としては、水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアーク、メタルハイトランプ、太陽光などを用いることができる。紫外線の照射条件は特に制限されないが、150〜450nmの範囲内の紫外線を含む光線を空気中もしくは不活性ガス雰囲気下で、数秒間以上照射することが好ましい。特に、空気中で照射する場合は、高圧水銀灯を用いることが好ましい。
【実施例】
【0056】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。「部」及び「%」はそれぞれ重量基準である。
【0057】
製造例1〜3
温度計、サーモスタット、撹拌機、還流冷却器及び滴下装置を備え付けた反応容器に、トルエン85部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら、110℃に加熱した後、滴下装置から表1に示すモノマー混合液に2,2´−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)4部を溶解させた溶液を約3時間かけて滴下した。滴下終了後、110℃で2時間放置し、反応を終了した。その後、減圧蒸留によりトルエンを除去し、冷却してアクリル系樹脂(a)〜(c)を得た。得られた樹脂のDSC測定によるガラス転移温度、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)測定による数平均分子量及び1分子中の官能基の個数を併せて表1に示す。
製造例4
温度計、サーモスタット、撹拌機、還流冷却器及び滴下装置を備え付けた反応容器に、トルエン85部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら、110℃に加熱した後、滴下装置から表1に示すモノマー混合液に2,2´−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)4部を溶解させた溶液を約3時間かけて滴下した。滴下終了後、110℃で5時間放置した後、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.05部及びテトラエチルアンモニウムブロマイド0.3部を添加し、窒素ガスを空気に切り換えて吹き込みながらアクリル酸14.7部を約1時間かけて滴下した後、5時間放置して、酸価が1以下になったことを確認して反応を終了した。この樹脂溶液を5リットルのn−ヘキサン中に注ぎ、絹布で濾過後、大きなステンレスバット中に広げ、暗室にて常温で7日間乾燥して白色の光ラジカル重合性不飽和ポリマー粉末(d)を得た。得られたポリマー(d)のDSC測定によるガラス転移温度、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)測定による数平均分子量及び1分子中の官能基の個数を併せて表1に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
実施例1,2及び比較例1〜4
表2に記載のアクリル系樹脂100部及び光重合開始剤1部を室温でヘンシェルミキサーでドライブレンドした後、エクストルーダーで溶融混練した。次に冷却した後、ピンディスクミルで粉砕し、150メッシュのフルイで濾過して粉体塗料組成物を得た。得られた粉体塗料組成物の耐ブロッキング性を評価した。結果を表2に示す。
【0060】
また、厚さ0.3mmのアルミ板上に、実施例1,2及び比較例1〜3で得た粉体塗料組成物を膜厚が約30μmとなるようにそれぞれ静電塗装し、乾燥機で140℃で5分間加熱溶融して塗膜を形成後、120W/cm2の高圧水銀灯で紫外線照射し、塗膜を硬化させた。なお、比較例4においては、加熱溶融中での塗膜の硬化を抑制するため、100℃で5分間加熱溶融した。得られた塗板について各種試験を行なった。結果を表2に示す。
【0061】
表2における試験方法は以下のとうりである。
【0062】
塗料の耐ブロッキング性:粉体塗料を、底面積が約20cm2の円筒容器に高さが6cmになるように入れ、30℃で7日間静置した。その後、粉体塗料を取り出して次の基準で状態を観察した。
【0063】
◎:全く固まりがなく良好なもの、
○:若干固まるが指で簡単にほぐれるもの、
△:固まりが発生し指で強く押さないとほぐれないもの、
×:固まりが発生し指で強く押してもほぐれないもの。
【0064】
塗膜外観:塗膜の仕上がり外観をツヤ感、平滑感から次の基準で評価した。
【0065】
◎:良好、
○:若干平滑性が劣るがツヤ感は良好、
△:平滑性及びツヤ感が若干劣る、
×:平滑性及びツヤ感が劣る。
【0066】
光硬化最少照射量:紫外線照射した塗膜を、メチルエチルケトンを含浸させたガーゼで5回ラビングし、膨潤または溶解しない最少紫外線照射量(mJ/cm2)を測定した。
【0067】
光表面硬化性:最少紫外線照射量の2倍量紫外線照射した塗膜をメチルエチルケトンを含浸させたガーゼでラビングし、ラビング後の表面のツヤ感を次の基準で評価した。
【0068】
◎:5回以上のラビングでも良好、
○:2〜4回のラビングまで良好、
×:1回のラビングでツヤが引ける。
【0069】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(I)
【化1】

(式中、R1は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フッ素原子、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基、アラルキル基、フリル基又はチェニル基を示す)で表わされるオキセタン官能基を1分子中に平均2個以上含有し、ガラス転移温度が40〜100℃の範囲内であり、数平均分子量が1,000〜15,000の範囲内である樹脂、(B)ガラス転移温度が40〜100℃の範囲内であるポリエポキシド、及び
(C)光カチオン重合開始剤を必須成分として含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型粉体塗料組成物。
【請求項2】
樹脂(A)が、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂及びこれらの変性樹脂から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の活性エネルギー線硬化型粉体塗料組成物。

【公開番号】特開2006−328417(P2006−328417A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−200297(P2006−200297)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【分割の表示】特願平9−144390の分割
【原出願日】平成9年6月3日(1997.6.3)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】