説明

活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物および粘着シート

【課題】 常温で液状であり、光重合開始剤の非存在下で可視光線又は紫外線などの活性エネルギー線の照射により硬化可能であり、得られる硬化塗膜が着色せず、粘着力および耐熱性に優れる粘着剤組成物を提供する。
【解決手段】 ポリエーテル骨格を有し2個以上のマレイミド基を備える化合物(A)およびポリエステル骨格を有し2個以上のマレイミド基を備える化合物(B)を、(A)(B)の合計量を基準としてそれぞれ5〜19質量%および81〜95質量%含有する、25℃において液状である活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定構造のマレイミド基を2個以上有する化合物を含有する活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粘着剤は、粘着加工されて、粘着テープ、粘着ラベル及び両面粘着テープ等の種々の用途に使用されており、近年、その高性能化が要求されている。特に、自動車、電気機器、住宅の内装部品外装部品の接着や、電子部品同士の接着等の用途においては、優れた耐水性と高い粘着性、即ち、室温で低圧着にて貼付けが可能で、かつ高温下に放置しても剥がれ落ちない性能が要求されている。
耐熱性が必要とされる用途には、シリコーン系粘着剤を使用した粘着製品が検討されているが、それに対応した優れた剥離材がないことや、高価な原料を使用するためにコスト高になる問題等を有するため、普及するに至っていない。
【0003】
一方、一般に普及している粘着剤としては、アクリル系重合体やSISやSEBS等のゴム系樹脂を、有機溶剤に溶解させた溶剤系粘着剤が使用されており、耐水性に優れ、粘着性能のバランスにも優れるものであるため、前記性能を満たす様に種々の検討がなされている。
しかしながら、溶剤系粘着剤は、粘着製品に加工する際等に発散する有機溶剤の環境への影響や、さらに粘着剤塗膜中の残留溶剤による安全性が懸念されるため、有機溶剤剤を使用しない粘着剤が近年要求される様になってきている。
【0004】
溶剤系粘着剤の代替品としては、耐水性や耐熱性に優れ、低粘度で扱いやすく、溶剤系の塗工装置が応用しやすい等の理由で、紫外線や可視光線等の活性エネルギー線で硬化する活性エネルギー線硬化型粘着剤が検討されている。
活性エネルギー線硬化型粘着剤をはじめとする活性エネルギー線硬化型組成物は、通常、原料成分単独では架橋・硬化しない為に、光重合開始剤又は光増感剤(以下これらをまとめて光重合開始剤等という)を添加する必要がある。
【0005】
光重開始剤等は、その添加量を増やすと硬化が速く進行するため、添加量が多くなる傾向にある。ところが、光重合開始剤等は光を効率的に吸収する為に芳香環を有する化合物が用いられているため、これを原因として、得られる硬化塗膜が黄変してしまうという問題を有するものである。
又、光重合開始剤等は、重合反応を効率的に開始させるために、通常は低分子量化合物が使用される。しかしながら、当該組成物に活性エネルギー照射する際は重合熱により温度が上昇するが、低分子量の光重合開始剤等は蒸気圧が高いため、硬化時に顕著に悪臭が発生して作業環境の問題が発生したり、得られた製品を汚染する問題を有するものである。又、その硬化塗膜中には、未反応の光重合開始剤等の分解物が残存するので、この硬化塗膜に光又は熱が作用した際に、硬化塗膜が黄変したり、悪臭を発生するという間題点があった。
さらに、硬化塗膜を水中等に放置したり、硬化塗膜に人体が発散する汗等の触れると、未反応の光重合開始剤等が多量にブリードするため、安全衛生面にも問題があった。
【0006】
前記した光重合開始剤等を含む活性工ネルギー線硬化型組成物の欠点を改良するために、光重合開始剤等を含有せず、活性エネルギー線の照射により硬化し得る組成物が検討されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3及び特許文献4等)。
しかし、上記特許文献に開示された組成物は、粘着力と耐熱性を高水準で両立させることが難しく、用途によっては更なる粘着力および活性エネルギー硬化性の向上が求められていた。
【0007】
【特許文献1】国際公開パンフレットWO2004/108850
【特許文献2】特開平2006−070060
【特許文献3】国際公開パンフレットWO2003/072674
【特許文献4】特開2006−232739
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明は、常温で液状であり、可視光線又は紫外線などの活性エネルギー線を照射した場合に、光重合開始剤の非存在下で実用的な架橋性又は硬化性を有し、得られる硬化塗膜が、着色せず、特に粘着力および耐熱性に優れる粘着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明の活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、ポリエーテル骨格を有し2個以上のマレイミド基を備える化合物(A)およびポリエステル骨格を有し2個以上のマレイミド基を備える化合物(B)を、(A)(B)の合計量を基準としてそれぞれ5〜19質量%および81〜95質量%含有する、25℃において液状のものである。
請求項2に記載の発明の活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、請求項1に記載の発明において、化合物(A)および化合物(B)が備えるマレイミド基が特定の構造を有するものである。
請求項3に記載の発明の活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、請求項1に記載の発明において、ポリエーテル骨格はポリテトラメチレングリコール骨格であることを特徴とする。
請求項4に記載の発明の粘着シートは、基材に請求項1〜3のいずれかに記載の粘着剤組成物が塗布され、当該塗膜に活性エネルギー線が照射されて粘着性を発現したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
常温で液状であり、可視光線又は紫外線を照射した場合に、光重合開始剤の非存在下で実用的な架橋性又は硬化性を有し、得られる硬化塗膜が、着色せず、特に粘着力および耐熱性に優れる粘着剤組成物が得られた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
1.マレイミド化合物(化合物(A)および化合物(B))
ポリエーテル骨格を有し2個以上のマレイミド基を備える化合物(A)(単に化合物(A)ともいう。)は、活性エネルギー線硬化性および粘着剤としての基本性能を発揮するための主成分のひとつである。
ポリエステル骨格を有し2個以上のマレイミド基を備える化合物(B)(単に化合物(B)ともいう。)もまた、活性エネルギー線硬化性および粘着剤としての基本性能を発揮するための主成分のひとつである。
【0012】
本明細書において、化合物(A)および化合物(B)を合わせて単にマレイミド化合物ともいう。
【0013】
マレイミド化合物は、マレイミド化合物が備えるマレイミド基の種類により分類すると、以下の化合物(ア)または混合物(イ)が好ましい。その理由は、組成物の硬化性が優れる(より少ない活性エネルギー線照射により硬化する)ためである。混合物である場合も便宜上マレイミド化合物と総称する。
化合物(ア)は、下記式(1)で表されるマレイミド基を2個以上備える化合物である。
【0014】
【化1】

【0015】
〔式(1)において、R1はアルキル基、アリール基、アリールアルキル基又はハロゲン原子を表す。〕
【0016】
化合物(イ)は、下記式(2)で表されるマレイミド基を2個以上備える化合物(a)および下記式(3)および/または式(4)で表されるマレイミド基を2個以上備える化合物(b)を、(a)(b)の合計量を基準としてそれぞれ10〜90質量%および10〜90質量%含有する混合物である。それぞれ20〜80質量%および20〜80質量%が好ましく、それぞれ30〜70質量%および30〜70質量%がより好ましい。
【0017】
【化2】

【0018】
【化3】

【0019】
〔式(3)において、R2およびR3はアルキル基、アリール基、アリールアルキル基又はハロゲン原子を表す。〕
【0020】
【化4】

【0021】
〔式(4)において、R4は置換基を有することもあるプロピレン基又はブチレン基を表す。〕
【0022】
前記式(1)及び式(3)において、R1〜R3のアルキル基としては、炭素数4以下のものが好ましく、特に好ましくはメチル基である。アリール基としてはフェニル基等を挙げることができる。アリールアルキル基としてはベンジル基等を挙げることができる。
1〜R3としては、これらの中でもアルキル基が好ましく、炭素数4以下のアルキル基がより好ましく、特に好ましくはメチル基である。
前記式(4)において、R4の置換基を有することもあるプロピレン基又はブチレン基としては、入手が容易で、各種粘着性能に優れる点で、ブチレン基が好ましい。置換基を有するプロピレン基又はブチレン基の場合、置換基としては、アルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。置換基を有するプロピレン基又はブチレン基の具体例としては、−CH2CH(CH3)CH2CH2−等が挙げられる。
【0023】
マレイミド化合物は、活性エネルギー線の照射によりマレイミド基が2量化するため、化合物の分子同志が結合して高分子量化(硬化)する。該マレイミド基は、紫外線又は可視光線で硬化させる場合においても、光重合開始剤等の配合なしか、又は少量の配合で、紫外線又は可視光線の照射により2量化反応を起こすことができる。
【0024】
マレイミド化合物(化合物(A)および化合物(B)それぞれ)の分子量としては、数平均分子量で1000〜30000が好ましく、より好ましくは2000〜15000であり、さらに好ましくは8000〜12000である。数平均分子量が1000に満たないと、硬化塗膜の粘着力及びタックが低下する場合があり、他方30000を超えると、組成物の粘度が高くなり過ぎ、塗工性が低下することがある。
尚、本発明において、数平均分子量とは、溶媒としてテトラヒドロフランを使用し、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(以下GPCともいう。)により測定した分子量をポリスチレンの分子量を基準にして換算した値である。
又、マレイミド化合物が水溶性の化合物である場合は、数平均分子量とは、溶媒としてリン酸緩衝液を使用し、GPCにより測定した分子量をポリエチレンオキサイドの分子量を基準にして換算した値である。
【0025】
マレイミド化合物は公知の方法によって製造されればよいが、以下の3種のマレイミド化合物は、製造が容易であるため好ましい。
【0026】
末端に2個以上のイソシアネート基を有するプレポリマーと、マレイミド基及び活性水素基を有する化合物の付加反応物(以下化合物[1]という)。
【0027】
末端に2個以上のカルボキシル基を有するプレポリマーと、マレイミド基及び活性水素基を有する化合物のエステル化反応物(以下化合物[2]という)。
【0028】
末端に2個以上の水酸基を有するプレポリマーとマレイミド基を有するカルボン酸のエステル化反応物(以下化合物[3]という)。
以下、化合物[1]〜[3]について説明する。
【0029】
1-1.化合物[1]
化合物[1]は、末端に2個以上のイソシアネート基を有するプレポリマー(以下単にウレタンプレポリマーという)と、マレイミド基及び活性水素基を有する化合物(以下単にマレイミド活性水素化合物という)の付加反応物であり、ウレタンプレポリマー1モルに対してマレイミド活性水素化合物を2モル以上反応させ製造する。
以下、ウレタンプレポリマー及びマレイミド活性水素化合物について説明する。
【0030】
A)ウレタンプレポリマー
ウレタンプレポリマーとしては、分子の末端に2個以上のイソシアネート基を有するものであれば種々の化合物が使用できる。
ウレタンプレポリマーとしては、2個以上の水酸基を有するポリオール(以下単にポリオールという)と、2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(以下単にポリイソシアネートという)との反応物等が挙げられる。
【0031】
a1)ポリオール
ポリオールとしては、化合物(A)を製造する場合には、ポリエーテルポリオールを使用し、化合物(B)を製造する場合には、ポリエステルポリオールを使用する。
ポリオールとしては、必要に応じて2種以上を併用することができる。
【0032】
a1−1)ポリエーテルポリオール
ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール及びポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール;エチレングリコール、プロパンジオール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン及びジペンタエリスリトール等のアルキレングリコールの、エチレンオキシド変性物、プロピレンオキシド変性物、ブチレンオキシド変性物及びテトラヒドロフラン変性物;エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、プロピレングリコールとテトラヒドロフランの共重合体、エチレングリコールとテトラヒドロフランの共重合体等が挙げられる。
【0033】
ポリエーテルポリオールとしては、ポリテトラメチレングリコールが好ましい。これにより、得られる粘着剤は粘着力および耐熱性が優れたものとなりやすい。
【0034】
a1−2)ポリエステルポリオール
ポリエステルポリオールは、多価カルボン酸と多価アルコールとのランダム共縮重合物である。これらの中でも、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとからなる脂肪族ポリエステルポリオールが組成物の活性エネルギー線による硬化性に優れるため好ましい。
【0035】
ここで、多価カルボン酸としては、分子内に2個以上のカルボキシル基を有するものであれば種々のものが使用できる。具体的には、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、アイコ酸二酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸、グルタル酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、マロン酸、フマル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、イタコン酸、マレイン酸、2,5−ノルボルナンジカルボン酸、1,4−テレフタル酸、1,3−テレフタル酸、ダイマー酸及びパラオキシ安息香酸等が挙げられる。
これらの中でも、脂肪族ジカルボン酸が好ましく、より好ましくは、アジピン酸及びセバシン酸である。
多価カルボン酸は、必要に応じて2種以上を併用することができる。
【0036】
多価アルコールとしては、分子内に2個以上の水酸基を有するものであれば種々のものが使用できる。具体的には、ブチルエチルプロパンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール及びポリエチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−へプタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,2デカンジオール、1,10−デカンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール及び1,4−シクロヘキサンジメタノール、ダイマー酸ジオール及び2−メチル−1,8−オクタンジオール等が挙げられる。
これらの中でも、脂肪族ジオールが好ましく、さらに2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ダイマー酸ジオール及び2−メチル−1,8−オクタンジオールが、得られる組成物が、低粘度で、粘着性及び耐水性に優れるものとなるためより好ましい。
多価アルコールは、必要に応じて2種以上を併用することができる。
【0037】
ポリエステルポリオールの製造方法としては、一般的なエステル化反応に従えば良く、触媒の存在下に、多価カルボン酸と多価アルコールを攪拌下に加熱する方法等が挙げられる。
【0038】
前記触媒としては、エステル化反応で通常使用される触媒が使用でき、塩基触媒、酸触媒及び金属アルコキシド等が挙げられる。塩基触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等の金属水酸化物、並びにトリエチルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン及びトリフェニルアミン等のアミン類等が挙げられる。酸触媒としては、硫酸及びパラトルエンスルホン酸等が挙げられる。金属アルコキシドとしては、チタン、錫又はジルコニウムのアルコキサイドが好ましい。これら金属アルコキシドの具体例としては、テトラブチルチタネート等のテトラアルキルチタネート;ジブチルスズオキサイド及びモノブチルスズオキサイド等の錫のアルコキサイド;並びにジルコニウムテトラブトキサイド及びジルコニウムイソプロポキサイド等のジルコニウムのアルコキサイド等が挙げられる。
【0039】
エステル化反応における反応温度及び時間としては、目的に応じて適宜設定すれば良い。反応温度としては、80〜220℃が好ましい。
【0040】
脂肪族ポリエステルポリオールとしては、市販されているものを使用することができ、例えば、(株)クラレ製の“クラレポリオールP−5010”や“クラレポリオールP−5050”、協和発酵工業(株)製の“キョウワポール5000PA”や“キョウワポール3000PA”、デグサ ジャパン(株)製の“Dynacoll7250”等が挙げられる。
【0041】
a2)ポリイソシアネート
ポリイソシアネートは、分子内に2個以上のイソシアネート基を有するものであれば種々のものが使用可能であり、ジイソシアネートが好ましい。具体的には、p−フェニレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニレンジイソシアネート、1,5−オクチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイネシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート及びカルボジイミド変性4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
これらの中でも、脂環族又は脂肪族のイソシアネートが、組成物の活性エネルギー線による硬化性及び硬化物の耐候性に優れる点で好ましい。脂環族又は脂肪族のイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートが好ましい。
ポリイソシアネートは、必要に応じて2種以上を併用することができる。
本発明において、ウレタンプレポリマーを製造する際のポリオールに対するポリイソシアネートの量は、基−NCO/基−OHの当量比が1〜3となる範囲が好ましく、より好ましくは1.5〜2.5であり、特に好ましくは1.8〜2.2である。
【0042】
a3)ウレタンプレポリマーの製造方法
ウレタンプレポリマーの製造は常法に従えば良い。例えば、ポリオールとポリイソシアネートを、触媒の存在下に加熱する方法等が挙げられる。ウレタン化反応における反応温度及び時間としては、目的に応じて適宜設定すれば良い。反応温度としては、20〜140℃が好ましい。
触媒としては、一般的なウレタン化反応で使用される触媒が使用でき、例えば金属化合物及びアミン等が挙げられる。金属化合物としては、ジブチルスズジラウレート及びジオクチルスズジラウレート等のスズ系触媒;ジオクチル酸鉛等の鉛系触媒;K−KAT XC−4025、K−KAT XC−6212(KING INDUSTRIES, INC製)等のジルコニウム系触媒;K−KAT XC−5217(KING INDUSTRIES, INC製)等のアルミニウム系触媒;並びにテトラ2−エチルヘキシルチタネート等のチタネート系触媒が挙げられる。アミンとしては、トリエチルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン及びトリエチレンジアミン等が挙げられる。
ウレタン化反応触媒の使用割合としては、皮膚への悪影響がない様に、極力少量使用することが好ましい。
又、ウレタンプレポリマー製造の際には、反応中のゲル化を防止する目的で、必要に応じてハイドロキノン及びトリエチルアミン等の一般的なラジカル重合禁止剤を用いることもできる。
【0043】
さらに、ウレタンプレポリマー製造の際には、リン化合物を配合することができる。リン化合物を配合することにより、エステル化並びに開環重付加の際に使用した触媒の作用を停止させることができる。触媒の活性を失活させないと、得られたウレタンプレポリマーを水分の存在下で保管したり次の反応において水分の存在下に加熱した際、又は得られるマレイミド化合物及び組成物の硬化膜を、水分の存在下で保管した際に、エステル交換反応が起って、組成物の物性を著しく低下させてしまうことがある。
【0044】
リン化合物としては、次の(D)〜(H)で挙げる、無機又は有機リン化合物等が挙げられる。
【0045】
(D)リン酸及びそのアルキルエステル類
リン酸アルキルエステルとしては、トリアルキルエステルであるトリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリノニルホスフェート及びトリフェニルホスヘート等が挙げられる。
【0046】
(E)ホスホン酸有機エステル類
ジブチルブチルホスホネート等が挙げられる。
【0047】
(F)亜リン酸
単独で使用するか、又は他のリン化合物と併用し、最も強力な色相安定効果、及び酸化分解防止効果を有する。
【0048】
(G)亜リン酸の有機エステル類
ジブチル水素ホスファイト及びトリフェニルホスファイト等が挙げられる。但し、トリフェニルホスファイトは、マレイミド化合物中のポリエステル骨格の特性を低下させる場合もあり、その添加量に注意する必要がある。
【0049】
(H)その他の無機リン化合物
ポリリン酸等が挙げられる。
【0050】
リン化合物の使用量は、リン化合物の分子量(リン原子の含有率)に応じて適宜設定すれば良く、一般的にはポリエステルポリオール100質量部に対して、0.001〜3質量部が好ましく、より好ましくは0.01〜1質量部である。リン化合物の使用量が0.001質量部未満では、添加の効果が認められず、3質量部より多い場合は効果が増すことがない。
【0051】
B)マレイミド活性水素化合物
マレイミド活性水素化合物としては、マレイミド基を有するアルコール(以下マレイミドアルコールという)が好ましい。マレイミドアルコールとしては、下記式(5-1)〜式(5-4)のマレイミドアルキルアルコール等が挙げられる。
【0052】
【化5】

【0053】
【化6】

【0054】
【化7】

【0055】
【化8】

【0056】
式(5-1)〜(5-4)において、R5はアルキレン基を表し、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状アルキレン基が好ましい。式(5-1)、(5-3)及び(5-4)において、R1〜R4は前記と同様の基である。
【0057】
C)マレイミド化合物すなわち化合物(A)および化合物(B)の製造方法
マレイミド化合物すなわち化合物(A)および化合物(B)の製造方法としては、ウレタンプレポリマーとマレイミド活性水素化合物を、一般的なウレタン化反応に従い製造すれば良い。具体的なウレタン化反応としては、前記と同様の方法が挙げられる。
マレイミド化合物の製造においては、得られるマレイミド化合物の変色を防止するため、酸化防止剤の存在下に反応させることが好ましい。
酸化防止剤としては、一般に使用されるにフェノール系、亜リン酸トリエステル系及びアミン系酸化防止剤等が挙げられ、例えば特公昭36−13738号公報、特公昭36−20041号公報、特公昭36−20042号公報及び特公昭36−20043号公報に記載されている様な化合物を挙げることができる。
フェノール系酸化防止剤としては、種々のものが使用でき、ブチルヒドロキシトルエン、ペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等が特に好ましい。
フェノール系酸化防止剤には、その効果を高めるため、酸価亜鉛を併用することも出来る。
酸化防止剤の配合割合としては、ウレタンプレポリマー100質量部当り0.01〜2質量部が好ましい。この割合が0.01質量部より少ないと酸化防止剤の配合による十分な効果が発揮されない場合があり、又2質量部より多く配合しても、それ以上の効果が期待されず、コスト的に不利となる。
又、マレイミド化合物製造時には、前記したリン化合物を配合しても良い。
(A)成分の製造においては、得られるマレイミド化合物中に含有する微量の不純物を除去して更に安全性を高めるため、精製することができる。精製方法に関して特に制限はなく、公知の方法に従えば良い。例えば、得られたマレイミド化合物に洗浄用の溶媒を加え、マレイミド化合物と除去したい不純物の溶解度の違いを利用して不純物を抽出後に分離し、その後、脱溶媒する方法等が挙げられる。
【0058】
1-2.化合物[2]
化合物[2]は、末端に2個以上のカルボキシル基を有するプレポリマー(以下単にカルボン酸プレポリマーという)とマレイミド活性水素化合物のエステル化反応物である。
カルボン酸プレポリマーとしては、前記した多価カルボン酸とポリオール又は多価アルコールと同様のものを使用して製造されたもの等が挙げられる。この場合、化合物(A)を製造する場合には、ポリエーテルポリオールを使用し、化合物(B)を製造する場合には、ポリエステルポリオールを使用する。
マレイミド活性水素化合物としては、前記と同様のものが挙げられる。
カルボン酸プレポリマーとマレイミド活性水素化合物のエステル化反応方法は、前記と同様の方法に従えば良い。
化合物[2]は、マレイミド化合物として、より低粘度のものが要求される場合に、好ましく使用できる。
【0059】
1-3.化合物[3]
化合物[3]は、末端に2個以上の水酸基を有するプレポリマー(以下単にポリオールプレポリマーという)とマレイミド基を有するカルボン酸(以下マレイミドカルボン酸という)のエステル化反応物である。
ポリオールプレポリマーとしては、前記ポリオールと同様のものが挙げられる。この場合、化合物(A)を製造する場合には、ポリエーテルポリオールを使用し、化合物(B)を製造する場合には、ポリエステルポリオールを使用する。
マレイミドカルボン酸としては、種々の化合物が使用でき、下記式(6-1)〜(6-4)で表される化合物が好ましい。
【0060】
【化9】

【0061】
【化10】

【0062】
【化11】

【0063】
【化12】

【0064】
式(6-1)〜(6-4)において、いずれもR6はアルキレン基を表し、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状アルキレン基が好ましい。式(6-1)、(6-3)及び(6-4)において、R1〜R4は前記と同様の基である。
ポリオールプレポリマーとマレイミドカルボン酸のエステル化反応方法は、前記と同様の方法に従えば良い。
化合物[3]は、マレイミド化合物として、より低粘度のものが要求される場合に、好ましく使用できる。
【0065】
1-4.好ましいマレイミド化合物
前記した化合物[1]〜[3]としては、化合物[1]が、化合物[2]及び[3]よりも反応速度が早く、収率が高く、簡便に製造でき、且つ硬化塗膜の粘着力が優れる点で最も好ましい。これは柔軟なポリオール部位と硬いポリイソシアネート部位がミクロ相分離構造をとり、それぞれのミクロドメインでのファンデルワールス力や水素結合力に伴う凝集力の差異により粘着性を向上させていると考えられる。又、低粘度のマレイミド化合物が要求される用途の場合には、化合物[2]及び[3]が好ましい。
マレイミド化合物は、共重合組成を目的に応じて変化させることにより、組成物の粘度及び流動性、硬化塗膜の粘着力、保持力及びタックを調整することができる。
マレイミド化合物としては、マレイミド基を2個有する化合物が、組成物の硬化塗膜の粘着力及びタックに優れるため好ましい。
【0066】
マレイミド化合物は常温(25℃)で液状のものが好ましい。本発明の組成物は25℃において液状であるが、組成物の主成分である化合物(A)および化合物(B)がいずれも25℃において液状であるものは、組成物を調製する配合作業が容易であるため好ましい。
【0067】
2.活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物
本発明の組成物は、マレイミド化合物すなわち化合物(A)および化合物(B)を必須成分として含有する。化合物(A)および化合物(B)の合計量を基準として、化合物(A)および化合物(B)の割合は、それぞれ5〜19質量%および81〜95質量%である。それぞれ5〜17質量%および83〜95質量%が好ましい。化合物(A)の割合が少なすぎると組成物の硬化性が不十分となるため、活性エネルギー線照射を多くしないと粘着剤の耐熱性が不十分となりやすい。化合物(A)の割合が多すぎると粘着剤の粘着力が不十分となる。
【0068】
本発明の組成物は、常温(25℃)で液状である。これにより、塗工作業等の取り扱いが容易になる。一方、常温で固体のものは、取り扱い難いうえ、硬化塗膜の弾性率が高くて粘着性能が不十分なものとなる。
【0069】
本発明の組成物は、化合物(A)および化合物(B)以外の成分が配合されたものであってもよい。
【0070】
3-1.光重合開始剤等
本発明の組成物は、前記した通り、活性エネルギー線により容易に硬化し、さらに紫外線又は可視光により硬化させる場合でも、光重合開始剤を全く配合しないか又は少量の光重合開始剤等の配合で、優れた硬化性を有するものであるが、必要に応じて光重合開始剤等を配合することができる。
光重合開始剤を配合する場合において、光重合開始剤としては、ベンゾインとそのアルキルエーテル類、アセトフェノン類、アントラキノン類、チオキサントン類、ケタール類、ベンゾフェノン類及、キサントン類、アシルホスフィンオキシド類、α−ジケトン類等が挙げられる。
又、活性エネルギー線による感度を向上させるため、光増感剤を併用することもできる。
光増感剤としては、安息香酸系及びアミン系光増感剤等が挙げられる。これらは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。これらの配合割合としては、マレイミド化合物100質量部に対して0.01〜10質量部が好ましい。
光重合開始剤としては、ベンゾフェノン類及びチオキサントン類のものが、組成物の硬化速度を向上させる効果が高く、好ましい。
【0071】
3-2.反応性不飽和基を有する化合物
本発明の組成物には、硬化塗膜の粘着性能を高めるため、又は組成物の感度を調整するため、(メタ)アクリル系モノマー及び(メタ)アクリル系オリゴマー等の反応性不飽和基を有する化合物を配合しても良い。
(メタ)アクリル系モノマーとしては、アルキルアクリレート又はアルキルメタクリレート〔以下アクリレート又はメタクリレートを(メタ)アクリレートと表す〕、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、フェノールアルキレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート、グリコールのモノ又はジ(メタ)アクリレート、ポリオールポリ(メタ)アクリレート及びポリオールアルキレンオキシド付加物のポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリル系オリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー及びエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー等を挙げることができる。
反応性不飽和基を有する化合物の配合割合としては、マレイミド化合物100質量部に対して50質量部以下が好ましく、より好ましくは20質量部以下である。
【0072】
3-3.重合体
本発明の組成物には、硬化前の粘度調整や硬化後の粘着性能を調整するために重合体を添加しても良い。当該重合体としては、特に限定しないが(メタ)アクリレート系重合体、ポリスチレン、ポリオレフィン等が挙げられる。これらの中でも、マレイミド基を有する(メタ)アクリレート系重合体が、硬化において本発明のマレイミド化合物と架橋するため好ましい。
【0073】
3-4.その他マレイミド化合物
本発明の組成物には、活性エネルギー照射による硬化性や、硬化塗膜の性能を阻害しない範囲で、マレイミド基を1個有する化合物を併用することができる。
当該化合物としては、上記と同様の骨格にマレイミド基を1個有する化合物及びマレイミド基とエチレン性不飽和基を有する化合物等を挙げることができる。
本発明のマレイミド化合物が、前記したラジカル重合性単量体から製造されたポリマーポリオールを原料とした場合、当該ポリマーポリオールは、1分子中に2個以上の水酸基を有するものと1分子中に1個の水酸基を有するものとの混合物を使用することがある。この場合、得られる化合物は、マレイミド基を2個以上有する化合物とマレイミド基を1個有する化合物の混合物となるが、これをそのまま使用することができる。
マレイミド基を1個有する化合物の配合割合としては、マレイミド化合物100質量部に対して80質量部以下が好ましく、より好ましくは50質量部以下である。
【0074】
3-5.粘着性付与剤
本発明の組成物には、硬化塗膜のガラス転移温度(以下Tgと略す)を低下させたり、粘着性能を高めるために、粘着性付与剤を配合しても良い。
粘着性付与剤としては、種々のものが使用でき、例えば、ロジン系樹脂やテルペン系樹脂等の天然樹脂及びその誘導体、石油樹脂等の合成樹脂を挙げることができる。これらの中でも、2重結合を有しないか、又は2重結合の比率の少ないものが、組成物の活性エネルギー線による硬化阻害が少ないため好ましい。
粘着性付与剤の配合割合としては、マレイミド化合物と粘着性付与剤の合計量100質量部に対して、粘着性付与剤の割合が50質量部以下が好ましく、より好ましくは10〜30質量部である。粘着性付与剤の配合量が50部を超えると、組成物の粘度が高くなり過ぎて塗工性が低下する。
【0075】
3-6.架橋剤
本発明の組成物には、凝集力を高めるために、高分子の分子間を架橋させる目的で、常温ですみやかに反応する架橋剤を添加して用いても良い。架橋剤としては、多価イソシアネート化合物、ポリオキサゾリン化合物、エポキシ樹脂、アジリジン化合物、ポリカルボジイミド樹脂及びカップリング剤等が挙げられる。
【0076】
3-7.酸マスク剤
本発明の組成物に酸マスク剤を配合しても良い。
組成物中に数多く存在しているエステル結合は、高温や多湿等の過酷な条件下での長期にわたり使用される場合は、エステル結合が湿気による加水分解して分子量が低下するばかりか、加水分解で生じた酸性のカルボキシル基が更にエステル結合の加水分解を促進するため、粘着強度が低下したり、更に、粘着強度が低下することにより、粘着剤製品を剥がした際に、粘着剤層が凝集破壊となり剥がした後の物品に糊残りが生ずる問題のあることが知られている。
酸マスク剤を配合すれば、加水分解で生じたカルボキシル基をトラップし、更なる加水分解の進行を防止することができる。酸マスク剤としては、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物及びエポキシ化合物等が挙げられる。酸マスク剤の配合割合としては、化合物(B)100質量部当り0.01〜2質量部が好ましい。
【0077】
3-8.紫外線吸収剤及び光安定剤
本発明の組成物には、耐光性向上のため、紫外線吸収剤及び光安定剤を配合しても良い。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等が挙げられ、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール及び2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等を挙げることができる。
光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤及びベンゾエート系光安定剤等が挙げられる。ヒンダードアミン系光安定剤としては、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート及び2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)等が挙げられる。ベンゾエート系光安定剤としては、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。
【0078】
3-9.その他
本発明の組成物には、着色や接着性能を高めるために充てん剤を添加しても良い。充填剤の具体的としては、各種シリカ類、染料、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、酸化鉄及びガラス繊維等が挙げられる。
又、用途に応じて、ハイドロキノン及びハイドロキノンモノメチルエーテル等のラジカル重合禁止剤を配合しても良い。
これら以外にも、消泡剤、染料及び顔料、増粘剤、潤滑剤、成膜助剤、充填剤、可塑剤、帯電防止剤、繊維助剤、洗浄剤、帯電防止剤、均染剤、分散安定剤、親水性樹脂、ラテックス、湿潤剤及びレベリング改良剤等の接着剤や粘着剤で使用される一般的な添加剤を、通常使用される割合で併用することができる。又、ジブチルヒドロキシトルエン及びブチルヒドロキシアニソール等の酸化防止剤;パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル等の防腐剤;並びに乳化剤等の皮膚貼付剤で使用される一般的な添加剤を、通常使用される割合で併用することができる。
又、粘度を調整するため、必要に応じて有機溶剤を配合することもできる。
さらに、前記したリン化合物及び酸化防止剤を配合することもできる。
【0079】
4.粘着シートの製造方法
本発明の組成物は、種々の用途に使用可能であり、通常は粘着シートの形態で使用する。
粘着シートは常法に従い製造すれば良い。好ましい方法としては、例えば、基材に本発明の組成物を塗工し、当該塗膜上に活性エネルギー線を照射して硬化させる等の方法が挙げられる。
【0080】
基材としては、金属、プラスチック、ガラス、セラミックス、木材、紙、印刷紙及び繊維等が挙げられる。金属としては、アルミニウム、鉄及び銅等が挙げられ、プラスチックとしては、塩化ビニル重合体、アクリレート系重合体、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、ポリエチレン及びポリプロピレン等が挙げられる。
【0081】
組成物の塗工方法としては、ロールコーティング、グラビヤ印刷、スクリーン印刷、ダイコーティング及びナイフコーティング等が挙げられる。
基材に対する組成物の塗工量は、使用する用途に応じて適宜選択すればよいが、好ましい塗工量は5〜200g/m2であり、より好ましくは10〜100g/m2である。5g/m2に満たないと粘着力が不足する場合があり、200g以上では、活性エネルギー線が深部まで到達し難いことにより目的とする性能が得られないことがある。
【0082】
塗工処理の終了後に、活性エネルギー線を照射して、マレイミド化合物のマレイミド基同士を架橋させて分子量を増大させ、得られる硬化塗膜の凝集力及び粘着力を向上させる。
この場合の活性エネルギー線の照射方法は、従来活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物で行われている方法に従えば良い。活性エネルギー線としては、可視光線、紫外線、X線及び電子線等が挙げられ、安価な装置を使用できることから、紫外線を使用することが好ましい。紫外線を使用する場合の光源としては、超高圧、高圧、中圧又は低圧水銀灯、メタルハライド灯、キセノンランプ、無電極放電ランプ及びカーボンアーク灯等が挙げられ、数秒乃至数分間照射すれば良い。
【0083】
又、本発明の組成物の硬化塗膜のTgとしては、−10℃以下が好ましく、より好ましくは−30℃以下である。尚、本発明においてTgとは、動的粘弾性測定装置を使用し、温度依存性を測定して得られたtanδのピーク温度を意味する。
【0084】
5.用途
本発明の粘着剤組成物は種々の用途に使用可能である。
例えば、粘着テープ、粘着ラベル及び粘着シート等の粘着製品であり、これら粘着製品としては、親展葉書用粘着シート、壁紙用粘着シート、両面テープ、シール、ステッカー及びマスキングフィルム等が挙げられる。
特に、本発明の粘着形の硬化塗膜は耐熱性に優れるため、特に耐熱性の要求される用途に有用である。
本発明の効果を要約すれば、次の通りである。即ち、本発明の活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物によれば、常温で液状であるため取り扱いが容易で塗工性に優れる。又、可視光線又は紫外線を照射した場合においても、光重合開始剤の非存在下で実用的な架橋性又は硬化性を有するため、臭気や毒性が少なく安全なものとなる。さらに得られる硬化塗膜は、粘着力が大きく耐熱性にも優れる。
【実施例】
【0085】
以下に、実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。
尚、以下において、「%」とは、質量%を意味する。
【0086】
○製造例1
攪拌機、温度計及び冷却器を備えたフラスコに、ポリエーテルポリオールのPTMG−2000〔ポリテトラメチレングリコールエーテル平均重合度2000の化合物、三菱化学(株)製、以下PTMG2000という〕を100g仕込み、撹拌しながら温度を120℃まで上げ、減圧下で1時間脱水した。
脱水後、80℃まで冷却し、これにイソフォロンジイソシアネート(以下IPDIという)22.59g、及び、ジラウリン酸ジ−n−ブチル錫(以下DBTLという)14mgを仕込み2時間反応させた。その後、100℃に昇温して更に30分間反応を継続した後、酸化防止剤のIrganox1010を70mgと2−ヒドロキシエチルシトラコイミド〔下記式(7)の化合物。以下CM−ETAという。〕15.78gを仕込み4時間反応させてマレイミド化合物を得た。
【0087】
【化13】

【0088】
○製造例2〜6
製造例1において、下記表に示す成分及び量で使用する以外は、製造例1と同様の条件でマレイミド化合物を製造した。
【0089】
【表1】

【0090】
表1における略号は、以下を意味する。
5000PA:2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸から成るポリエステルポリオール、協和発酵工業(株)製キョーワポール5000PA
P−5010:3−メチル−1,5−ペンタンジオール、とアジピン酸から成るポリエステルポリオール、(株)クラレ製クラレポリオールP−5010
P−2000:ポリプロピレングリコール平均重合度2000の化合物、旭電化工業(株)製P−2000
PEG2000:ポリエチレングリコールの平均重合度2000の化合物
PTMG1000:ポリテトラメチレングリコールエーテル平均重合度1000の化合物、三菱化学(株)製
【0091】
○製造例7
製造例1において、ポリエーテル成分としてPTMG−2000を5gとポリエステル成分としてP−5010を95g、IPDIの量を9.52g、DBTLの12mg及びCM−ETAの6.65gに変更し、酸化防止剤のIrganox1010を60mgを添加した後、CM−ETA添加したこと以外は実施例1と同様の方法により、マレイミド化合物を製造した。
【0092】
○製造例8
実施例1において、ポリエーテル成分としてPTMG−2000を10gとポリエステル成分としてP−5010を90g、IPDIを10.21g、DBTLを12mg及びCM−ETAの7.13gに変更し、酸化防止剤のIrganox1010を60mg添加した後、CM−ETA添加したこと以外は実施例1と同様の方法により、マレイミド化合物を製造した。
【0093】
○実施例1〜6、比較例1〜4
製造例1〜6で得られた化合物(A)および化合物(B)を表2に示す質量割合で混合して組成物を調製し、後述の評価を行った。
【0094】
【表2】

【0095】
○比較例5
製造例5で得られた化合物(B)および化合物L(ポリエーテル骨格ビスマレイミド(大日本インキ製造工業(株)製LUMICURE MIA−200、2個のマレイミド基はいずれも前記式(2)で表される構造である。)を表2に示す質量割合で混合して組成物を調製し、後述の評価を行った。
【0096】
○実施例7および8
製造例7および製造例8で得られたマレイミド化合物をそのまま使用し、それぞれ実施例7および実施例8として後述の評価を行った。
【0097】
○組成物の評価
支持体シートである厚さ50μmのポリエステルフィルムの表面に、膜厚が25μmになるように得られた組成物を塗布し、ベルトコンベアを有する紫外線照射装置を用いて、80W/cm集光型高圧水銀灯(1灯、高さ10cm)下を22m/minのコンベアスピードで4パス通過して塗布面側から紫外線を照射(積算光量=400mJ/cm2)し、組成物を硬化させ粘着シートを製造した。
得られた粘着シートを長さ方向200mm、幅方向25mmに切断し試験体とした。
【0098】
得られた試験体について、以下の評価を行った。その結果を表3に示す。
1)粘着力
試験体の180度剥離強度を測定した。23℃65%RHの条件において、上記試験体を使用し、ステンレス板に長さ100mm分を貼付けて荷重2kgのローラーで圧着し、24時間放置後の剥離強度を測定した。その他はJIS Z−0237に準じて行った。
表3における数値の単位はN/インチである。
2)保持力
23℃65%RHの条件において、上記試験体を使用し、長さ25mm試験体をステンレス板に貼付けて荷重2kgのローラーで圧着し、30分放置後に80℃雰囲気下で試験片の端に1000g荷重のおもりをかけて、24時間後迄の落下時間を測定し耐熱性の評価とした。その他はJIS Z−0237に準じて行った。
表3において、NCはずれがなかったことを意味し、数値は落下時間(分)を意味する。
3)SAFT(Shear Adhesion Failure Temperature)
23℃65%RHの条件において、上記試験体を使用し、ステンレス板に長さ100mm分を貼付けて荷重2kgのローラーで圧着し、24時間放置した。試験体の端に500gのおもりをかけて、0.4℃/分の昇温速度で40℃から200℃まで温度を上げながら、落下したときの温度を評価した。
表3において、○は落下しなかったことを意味し、数値は落下温度(℃)を意味する。
4)タック
JIS Z−0237の球転法に準じて、23℃、65%RH雰囲気下で測定した。
【0099】
【表3】

【0100】
○活性エネルギー線を大量に照射したときの評価
支持体シートである厚さ50μmのポリエステルフィルムの表面に、膜厚が25μmになるように得られた組成物を塗布し、ベルトコンベアを有する紫外線照射装置を用いて、80W/cm集光型高圧水銀灯(1灯、高さ10cm)下を22m/minのコンベアスピードで10パス通過して塗布面側から紫外線を照射(積算光量=1000mJ/cm2)し、組成物を硬化させ粘着シートを製造した。
得られた貼付剤を長さ方向200mm、幅方向25mmに切断し試験体とした。
得られた試験体について上記と同様の評価を行った。その結果を表4に示す。硬化性が悪いために、400mJ/cm2の紫外線照射では耐熱性(保持力およびSAFT)の結果が劣っていた比較例2、3および5についても、1000mJ/cm2という大量の紫外線を照射した場合は、十分硬化し、実施例並みに耐熱性が改善された。
【0101】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の組成物は、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物として、活性エネルギー硬化性及び粘着力と耐熱性に優れ、種々の粘着用途に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエーテル骨格を有し2個以上のマレイミド基を備える化合物(A)およびポリエステル骨格を有し2個以上のマレイミド基を備える化合物(B)を、(A)(B)の合計量を基準としてそれぞれ5〜19質量%および81〜95質量%含有する、25℃において液状である活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物。
【請求項2】
化合物(A)および化合物(B)は、それぞれ独立に下記化合物(ア)または混合物(イ)であることを特徴とする請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物。
(ア):下記式(1)で表されるマレイミド基を2個以上備える化合物。
【化1】

〔式(1)において、R1はアルキル基、アリール基、アリールアルキル基又はハロゲン原子を表す。〕
(イ):下記式(2)で表されるマレイミド基を2個以上備える化合物(a)および下記式(3)および/または式(4)で表されるマレイミド基を2個以上備える化合物(b)を、(a)(b)の合計量を基準としてそれぞれ10〜90質量%および10〜90質量%含有する混合物。
【化2】

【化3】

〔式(3)において、R2およびR3はアルキル基、アリール基、アリールアルキル基又はハロゲン原子を表す。〕
【化4】

〔式(4)において、R4は置換基を有することもあるプロピレン基又はブチレン基を表す。〕
【請求項3】
ポリエーテル骨格は、ポリテトラメチレングリコール骨格であることを特徴とする請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物。
【請求項4】
基材に請求項1〜3のいずれかに記載の粘着剤組成物が塗布され、当該塗膜に活性エネルギー線が照射されて粘着性を発現した粘着シート。

【公開番号】特開2008−214534(P2008−214534A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−55512(P2007−55512)
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】