説明

活性エネルギー線硬化型組成物、塗膜の形成方法、及び塗膜

【課題】照射光強度が比較的弱い紫外線発光ダイオード光源を用いても充分な硬化速度を有し、かつ良好な硬化性等を有する塗膜が得られる活性エネルギー線硬化型組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも活性エネルギー線重合性化合物(A)、及び光重合開始剤(B)からなる活性エネルギー線硬化型組成物(S)であって、光重合開始剤(B)として、特定のアシルホスフィン化合物(B1)、アミノカルボニル化合物(B2)、及びケトン化合物(B3)が含有され、活性エネルギー線重合性化合物(A)として単官能モノマーが含まれていることを特徴とする活性エネルギー線硬化型組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線重合性化合物、及び少なくとも特定のアシルホスフィン化合物とアミノカルボニル化合物とケトン化合物とからなる光重合開始剤を含む活性エネルギー線硬化型組成物、該組成物を活性エネルギー線の照射により硬化する塗膜の形成方法、並びに該形成方法で形成された塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の印刷方式を採用して印刷物を得る際に、それぞれの印刷方式に適したインクが使用されており、その1つとして活性エネルギー線硬化型インクが知られている。
活性エネルギー線硬化型インクを硬化させる際の活性エネルギー線の光源として紫外線を照射する場合には、水銀ランプ、メタルハライドランプ等が主に使用されており、それらの光源の発光波長に合わせた光重合開始剤が用いられている。
一方、近年、水銀ランプに代わる紫外線の光源として、省エネルギーで波長200nm以下の成分がなくオゾンを発生させないなど環境性を向上させた紫外線発光ダイオードが実用化され、活性エネルギー線硬化型インク用の活性エネルギー線の光源としての使用が期待されている。さらに紫外線発光ダイオードは従来の紫外線光源と比較して小型化できるため、インクジェット印字装置などに組み込み易く、特に好適に用いられている。しかしながら、紫外線発光ダイオードは水銀灯に比べ、LED発光は365、375、385、395、405nmなど350〜420nmの範囲での単一ピークであり、発光波長領域が狭い(10nm〜50nm程度)ために、広域波長の紫外線を発するランプ光源と比較して、同時間の紫外線照射ではエネルギー総量が低くなることから、従来の活性エネルギー線硬化型インクに使用されていた光重合開始剤では水銀ランプやメタルハライドランプなどによる活性エネルギー線硬化型インクの硬化には対応できるが、紫外線発光ダイオードでは、このような硬化に足りる十分な重合活性種を発生させることは困難であった。
【0003】
下記特許文献1には、光ラジカル開始剤、ラジカル連鎖移動剤、ラジカル重合性化合物を含有してなり、紫外線発光ダイオードの照射により硬化する光ラジカル硬化性樹脂組成物が開示され、該光ラジカル開始剤として、ケトン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、チオキサントン化合物、及びメタロセン化合物から選ばれる1種又は2種以上の使用が例示されている。しかし、特許文献1の実施例1〜6においては、いずれもラジカル重合性化合物(アクリル変性シリコーン)100部に対し、光ラジカル開始剤としてケトン化合物1〜4部、アシルホスフィン化合物0.6〜1.5部、及びチオキサントン化合物0.1〜0.15部、並びにラジカル連鎖移動剤1部を配合した光ラジカル硬化性樹脂組成物について表面硬化性と深部硬化性について評価されているが、複数の重合開始剤を使用する場合、これらの各重合開始剤の濃度範囲について具体的な説明はされていない。下記特許文献2には、粉体ワックス等のすべり剤、波長365nmにおける特定のモル吸光係数を有する光開裂型重合開始剤、水素引き抜き型重合開始剤、及び第3級アミン化合物を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型インキが開示されている。しかしながら、使用する開始剤について、例示された開始剤を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよいことが記載されているのみである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−163183号公報
【特許文献2】特開2010−159344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、照射光強度が比較的弱い紫外線発光ダイオード光源を用いても充分な硬化速度を有し、かつ良好な硬化性等を有する塗膜が得られる活性エネルギー線硬化型組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記従来技術の問題点を鑑み、活性エネルギー線硬化型組成物の光重合開始剤として、特定のアシルホスフィン化合物、アミノカルボニル化合物、及びケトン化合物を併せて使用することにより、紫外線発光ダイオード光源を用いても、充分な硬化速度を有し、かつ良好な硬化性等を有する塗膜が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。即ち、本発明は、以下の(1)〜(9)に記載する発明を要旨とする。
(1)少なくとも活性エネルギー線重合性化合物(A)、及び光重合開始剤(B)からなる活性エネルギー線硬化型組成物(S)であって、
光重合開始剤(B)として
(i)アシルホスフィン化合物(B1)であるビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、
(ii)アミノカルボニル化合物(B2)である4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、及びイソアミルp−(ジメチルアミノ)ベンゾエートから選択される1種又は2種以上、
並びに、(iii)ケトン化合物(B3)である2,4−ジエチルチオキサンテン−9−オン、及び/又は2−イソプロピルチオキサントンが含まれ、
活性エネルギー線重合性化合物(A)として単官能モノマーが含まれていることを特徴とする活性エネルギー線硬化型組成物(以下、第1の態様ということがある)。
(2)前記活性エネルギー線硬化型組成物(S)として活性エネルギー線重合性化合物(A)、光重合開始剤(B)、及び着色剤(C)が含まれることを特徴とする請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
(3)前記活性エネルギー線硬化型組成物(S)中に、光重合開始剤(B)として(i)アシルホスフィン化合物(B1)が0.5〜5質量%、(ii)アミノカルボニル化合物(B2)が0.5〜5質量%、及び、(iii)ケトン化合物(B3)が0.5〜5質量%、かつこれらの光重合開始剤(B1〜B3)が併せて10質量%以下、含まれていることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
(4)前記活性エネルギー線硬化型組成物(S)中に、活性エネルギー線重合性化合物(A)として単官能モノマーが60〜95質量%含まれていることを特徴とする前記(1)から(3)のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【0007】
(5)活性エネルギー線重合性化合物(A)として単官能モノマー、
並びに光重合開始剤(B)として
(i)アシルホスフィン化合物(B1)であるビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、
(ii)アミノカルボニル化合物(B2)である4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、及びイソアミルp−(ジメチルアミノ)ベンゾエートから選択される1種又は2種以上、
及び、(iii)ケトン化合物(B3)である2,4−ジエチルチオキサンテン−9−オン、及び/又は2−イソプロピルチオキサントン、
が少なくとも含まれる、活性エネルギー線硬化型組成物(S)を、
基材に塗布又は付着後、該活性エネルギー線硬化型組成物(S)に紫外線発光ダイオードを光源とする活性エネルギー線を照射して硬化することを特徴とする塗膜の形成方法(以下、第2の態様ということがある)。
(6)前記活性エネルギー線硬化型組成物(S)として活性エネルギー線重合性化合物(A)、光重合開始剤(B)、及び着色剤(C)が含まれることを特徴とする前記(5)に記載の塗膜の形成方法。
(7)前記活性エネルギー線硬化型組成物(S)の基材への塗布又は付着がインクジェット法、スプレー法、コーター法、グラビア法、およびフレキソ法から選択された1種又は2種以上であることを特徴とする前記(5)又は(6)に記載の塗膜の形成方法。
【0008】
(8)活性エネルギー線重合性化合物(A)として単官能モノマー、
並びに光重合開始剤(B)として少なくとも(i)アシルホスフィン化合物(B1)であるビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、
(ii)アミノカルボニル化合物(B2)である4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、及びイソアミルp−(ジメチルアミノ)ベンゾエートから選択される1種又は2種以上、
及び、(iii)ケトン化合物(B3)である2,4−ジエチルチオキサンテン−9−オン、及び/又は2−イソプロピルチオキサントン、
が少なくとも含まれる活性エネルギー線硬化型組成物(S)を、
基材に塗布又は付着後、該活性エネルギー線硬化型組成物(S)に紫外線発光ダイオードを光源とする活性エネルギー線を照射して硬化、形成された塗膜(以下、第3の態様ということがある)。
(9)前記活性エネルギー線硬化型組成物(S)として活性エネルギー線重合性化合物(A)、光重合開始剤(B)、及び着色剤(C)が含まれることを特徴とする前記(8)に記載の塗膜。
【発明の効果】
【0009】
(イ)本発明の第1の態様である、光重合開始剤(B)として特定のアシルホスフィン化合物(B1)、アミノカルボニル化合物(B2)、及びケトン化合物(B3)、並びに活性エネルギー線重合性化合物(A)として単官能モノマーを含む活性エネルギー線硬化型組成物を照射光強度が弱い紫外線発光ダイオード光源を用いても短時間で硬化し、良好な硬化性を有する塗膜が得られる。
(ロ)本発明の第2の態様である、塗膜の形成方法により得られる塗膜は、上記(イ)に記載したと同様の効果を有する。
(ハ)本発明の第3の態様である塗膜も上記(イ)に記載したと同様の効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、〔1〕活性エネルギー線硬化型組成物(第1の態様)、〔2〕塗膜の形成方法(第2の態様)、及び〔3〕塗膜(第3の態様)について説明する。〔1〕下塗り液(第1の態様)
本発明の第1の態様の「活性エネルギー線硬化型組成物」は、少なくとも活性エネルギー線重合性化合物(A)、及び光重合開始剤(B)からなる活性エネルギー線硬化型組成物(S)であって、
光重合開始剤(B)として
(i)アシルホスフィン化合物(B1)であるビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、
(ii)アミノカルボニル化合物(B2)である4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、及びイソアミルp−(ジメチルアミノ)ベンゾエートから選択される1種又は2種以上、
並びに、(iii)ケトン化合物(B3)である2,4−ジエチルチオキサンテン−9−オン、及び/又は2−イソプロピルチオキサントンが含まれ、
活性エネルギー線重合性化合物(A)として単官能モノマーが含まれていることを特徴とする。
【0011】
(1)光重合開始剤(B)
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物(S)中の光重合開始剤(B)には、少なくともアシルホスフィン化合物(B1)であるビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、アミノカルボニル化合物(B2)である4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、並びにイソアミルp−(ジメチルアミノ)ベンゾエートから選択される1種又は2種以上、及びケトン化合物(B3)である2,4−ジエチルチオキサンテン−9−オン、及び/又は2−イソプロピルチオキサントンが含まれる。
一般に、活性エネルギー線硬化型材料を硬化させる際の活性エネルギー線の光源として紫外線を照射する場合には、低圧水銀ランプ(例えば、紫外線波長:185〜254nm用)、高圧水銀ランプ(例えば、紫外線波長:254〜436nm用)、超高圧水銀灯(紫外線波長:254〜436nm用)、メタルハライドランプ(紫外線波長:200〜400nm用)、紫外線レーザーが使用されており、それらの光源の発光波長に合わせた光重合開始剤が用いられている。しかし、水銀ランプやメタルハライドランプでは充分な硬化に足りる十分な重合活性種を発生させることができても、活性エネルギー線の光源として照射光強度が弱い紫外線発光ダイオード光源(紫外線波長:350〜420nmの間で1つの発光波長を持つ準単色の光源)を用いると、照射強度が弱く、準単色光であることから硬化に足りる十分な重合活性種を発生させることが困難になる場合がある。
【0012】
本発明においては、活性エネルギー線の光源として紫外線発光ダイオード光源を用いても、上記特定のアシルホスフィン化合物(B1)であるビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、アミノカルボニル化合物(B2)である4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、並びにイソアミルp−(ジメチルアミノ)ベンゾエートから選択される1種又は2種以上、及びケトン化合物(B3)である2,4−ジエチルチオキサンテン−9−オン、及び/又は2−イソプロピルチオキサントンからなる3種類の光重合開始剤(B)を併せて使用すると、硬化に足りる十分な重合活性種を発生できること、特に主波長が385〜410nmの範囲の紫外線波長の紫外線発光ダイオード光源に対して良好に重合活性種を発生できることを見出した。
活性エネルギー線硬化型組成物(S)中の光重合開始剤(B)の好ましい配合量は、前記活性エネルギー線硬化型組成物(S)中に、(i)アシルホスフィン化合物(B1)が0.5〜5質量%、(ii)アミノカルボニル化合物(B2)が0.5〜5質量%、及び、(iii)ケトン化合物(B3)が0.5〜5質量%、かつこれらの光重合開始剤(B1〜B3)が併せて10質量%以下である。
上記光重合開始剤(B1〜B3)の配合割合で、照射光強度が弱い紫外線発光ダイオード光源を用いても比較的短時間で硬化し、かつ、良好な硬化性を有する塗膜が得られる。
上記各光重合開始剤(B1〜B3)のそれぞれの配合割合が下限未満であると十分な重合活性種を発生できないおそれがあり、一方、上限を超えると活性エネルギー線硬化型組成物の保存安定性が低下し、保管中に重合反応が起こり増粘やゲル化を招くおそれがある。尚、本発明の目的と効果を損なわない範囲で他の光重合開始剤を配合することもできる。
【0013】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物(S)中に、公知のラジカル連鎖移動剤を配合することができる。連鎖移動剤は成長ポリマー鎖からラジカルを受け取り、ポリマーの伸長を止めるが、ラジカルを受け取った連鎖移動剤はモノマーを攻撃して再び重合を開始させるので、ポリマーの重合度を下げることになり、ポリマーの重合度(平均分子量)を調節するために使われている。
【0014】
(2)活性エネルギー線重合性化合物(A)
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物(S)中の活性エネルギー線重合性化合物(A)は、少なくとも単官能モノマーが含有されている。活性エネルギー線重合性化合物(A)として、少なくとも単官能モノマーを使用することにより、前記活性エネルギー線の光源として紫外線発光ダイオード光源を用い、かつ光重合開始剤(B)として特定のアシルホスフィン化合物(B1)、アミノカルボニル化合物(B2)、及びケトン化合物(B3)を併せて使用した場合において、適切な粘度に調整でき、基材への密着性が良好な塗膜が得られる。
前記活性エネルギー線硬化型組成物(S)中の好ましい単官能モノマーの割合は、60〜95質量%が好ましい。単官能モノマーの割合が60質量%未満では紫外線発光ダイオード光源を用いて硬化する際に硬化性が低下するおそれがある。一方、95質量%を超えると光重合開始剤(B)の配合量が減少して硬化性が低下するおそれがある。
【0015】
活性エネルギー線重合性化合物(A)の主成分としての単官能モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ステアリルカルビトール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
また、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカブロラクトン、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、スチレン等のビニルモノマー、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、バラクミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシボリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、オルトフェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン等の(メタ)アクリル酸エステルモノマー、および(メタ)アクリルアミド誘導体が挙げられる。
【0016】
本発明の活性エネルギー線重合性化合物(A)を紫外線発光ダイオードを光源とする活性エネルギー線を照射して硬化させることを考慮すると、活性エネルギー線重合性化合物(A)中に上記単官能モノマーが60〜95質量%の割合で含まれていることが好ましく、また、単官能モノマーとしては上記(メタ)アクリレート系モノマーが好ましい。
【0017】
活性エネルギー線重合性化合物(A)の成分としては上記単官能モノマー以外に、以下に記載する2官能モノマー以上の多官能モノマーを配合することもできる。
多官能モノマー成分としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオベンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールートリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオベンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリプロポキシジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールブロバントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリルトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、およびジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0018】
(3)着色剤(C)
着色剤(C)としては、従来の油性インク組成物に通常用いられている無機顔料又は有機顔料を用いることができる。これらの無機顔料又は有機顔料は、顔料の異なる複数、例えば4種、5種、6種、7種などのインキのセットとして用いることができる。例えば、4種であれば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、あるいは、イエロー、マゼンタ、シアン、ホワイトなどが挙げられる。
顔料の具体例としてはカーボンブラック、カドミウムレッド、モリブデンレッド、クロムイエロー、カドミウムイエロー、チタンイエロー、酸化クロム、ビリジアン、チタンコバルトグリーン、ウルトラマリンブルー、プルシアンブルー、コバルトブルー、ジケトピロロピロール、アンスラキノン、ベンズイミダゾロン、アンスラピリミジン、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料等を用いることができる。
【0019】
着色される塗膜を形成する場合には、必要によりイエロー着色剤、シアン着色剤、マゼンタ着色剤、ブラック着色剤等から選択される1〜4種類の着色剤(C)を調製することができるが、更にホワイト着色剤を使用することもできる。吐出する着色剤(C)の順番は特に限定されるわけではないが、明度の低い着色剤(C)から被記録媒体に付与することが好ましく、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4色を使用する場合には、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの順で基材上に付与することが好ましい。また、これにホワイトを加えた5色の着色剤(C)を使用する場合にはホワイト、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの順で基材上に付与することが好ましい。
着色剤(C)を使用する場合には少なくとも1種を使用すればよいが、フルカラー画像を得るためには、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4つの着色剤(C)、又はイエロー、シアン、マゼンタ、ブラック、ホワイトの5つの着色剤を使用することが好ましい。更に、本発明はこれに限定されず、シアン、ライトシアン、マゼンタ、ライトマゼンタ、グレー、ブラック、ホワイト、イエローの8つの着色剤(C)を使用することもできる。
【0020】
使用する顔料の一次粒子の体積平均粒径は、レーザー散乱による測定値で平均粒径50〜200nmの微細顔料であることが好ましい。顔料の平均粒径が50nm未満の場合は、粒径が小さくなることによる耐光性の低下が生じ、一方、200nmを超える場合は、分散の安定維持が困難になり、顔料の沈澱が生じやすくなる。また、顔料の着色剤(C)に対する配合割合は、着色剤(C)中、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックなどの有機顔料は、それぞれ0.2質量部〜15質量部の割合、また白の酸化チタンの場合は5質量部〜40質量部程度の割合で配合することができる。
【0021】
(4)添加剤
また本発明の活性エネルギー線硬化型組成物(S)には、フィラーや顔料を分散安定化するための分散剤、分散補助剤、その他各機能を持たせるための添加剤等を使用することができる。
分散剤としては、高分子型分散剤、低分子型分散剤など多種の分散剤が存在するが、分散性に応じて選択することができる。分散補助剤としては、顔料誘導体を用いることができる。また、添加剤としては、従来使用されている、ぬれ性調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、スリッピング剤、アンチブロッキング剤などを用いることができる。いずれの分散剤、分散補助剤、添加剤も目的とする用途に応じ選択可能であり、本発明においてはいずれも限定されるものではない。
【0022】
(5)活性エネルギー線硬化型組成物(S)の調製
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物(S)は、活性エネルギー線重合性化合物(A)、光重合開始剤(B)、及び必要に応じて着色剤(C)を共にサンドミル等の通常の分散機を用いてよく分散することにより製造される。あらかじめ着色剤(C)高濃度の濃縮液を作成しておいて活性エネルギー線重合性化合物(A)で希釈することが好ましく、通常の分散機による分散においても充分な分散が可能であり、安定性に優れた活性エネルギー線硬化型組成物(S)が調製される。活性エネルギー線硬化型組成物(S)は、孔径3μm以下、更には1μm以下のフィルターにて濾過することが好ましい。
(6)活性エネルギー線硬化型組成物(S)の粘度
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物(S)は、40℃での粘度が5〜20mPa・sであることが好ましい。粘度が5mPa・s未満の場合は、高周波数のヘッドにおいて、吐出の追随性の低下が認められ、20mPa・sを超える場合は、加熱による粘度の低下機構をヘッドに組み込んだとしても吐出そのものの低下を生じ、吐出の安定性が不良となるおそれがある。
【0023】
〔2〕塗膜の形成方法(第2の態様)
本発明の第2の態様の「塗膜の形成方法」は、
活性エネルギー線重合性化合物(A)として単官能モノマー、
並びに光重合開始剤(B)として
(i)アシルホスフィン化合物(B1)であるビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、
(ii)アミノカルボニル化合物(B2)である4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、及びイソアミルp−(ジメチルアミノ)ベンゾエートから選択される1種又は2種以上、
及び、(iii)ケトン化合物(B3)である2,4−ジエチルチオキサンテン−9−オン、及び/又は2−イソプロピルチオキサントン、
が少なくとも含まれる、活性エネルギー線硬化型組成物(S)を、
基材に塗布又は付着後、該活性エネルギー線硬化型組成物(S)に紫外線発光ダイオードを光源とする活性エネルギー線を照射して硬化することを特徴とする。
【0024】
(1)活性エネルギー線重合性化合物(A)、光重合開始剤(B)
本発明の第2の態様における、活性エネルギー線重合性化合物(A)と、光重合開始剤(B)は前記第1の態様において記載した内容と同様である。
【0025】
(2)基材
本発明の塗膜を形成する際に使用する基材は特に制限されるものではなく、インクジェットインクを用いて印刷される基材としては特に制限がなく、インク吸収体、及びインク非吸収体のいずれも使用することができる。インク吸収体としては、更紙、中質紙、上質紙、非塗工紙、コート紙、アート紙などが例示でき、インク非吸収体としてはポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系合成紙、塩化ビニル樹脂、ポリイミド樹脂、金属、金属箔コート紙などが例示できるがこれらに限定されるものはない。
【0026】
(3)塗布
基材への活性エネルギー線硬化型組成物(S)の塗布(又は付着)方法は特に限定されないが、実用上、スプレー法、コーター法、インクジェット法、グラビア法、フレキソ法等から選択された1種または2種以上であることが好ましい。活性エネルギー線光源に紫外線発光ダイオードを使用した場合、紫外線照射装置が小型化できるため、特にインクジェット法が小型化のメリットが大きいため好ましい。また、活性エネルギー線硬化型組成物(S)を基材に塗布する際には、硬化後の塗膜の厚みが1〜20μmとなるように塗布することが好ましい。
【0027】
(4)活性エネルギー線照射による活性エネルギー線硬化型組成物(S)の硬化
活性エネルギー線硬化型組成物(S)を硬化する際に使用する活性エネルギー線の光源として、紫外線を照射する場合には、例えば高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、紫外線レーザー、紫外線発光ダイオード等が挙げられる。
本発明の第2の態様の「塗膜の形成方法」において、水銀ランプに代わる紫外線の光源として低環境負荷の紫外線発光ダイオードの使用が好ましい。本発明の活性エネルギー線硬化型組成物(S)に光重合開始剤(B)が含まれることにより、活性エネルギー線の光源として紫外線発光ダイオードを使用した場合であっても、比較的短時間で硬化し、良好な硬化性を有する塗膜が得られる。
【0028】
〔3〕塗膜(第3の態様)
本発明の第3の態様の「塗膜」は、活性エネルギー線重合性化合物(A)として単官能モノマー、
並びに光重合開始剤(B)として少なくとも(i)アシルホスフィン化合物(B1)であるビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、
(ii)アミノカルボニル化合物(B2)である4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、及びイソアミルp−(ジメチルアミノ)ベンゾエートから選択される1種又は2種以上、
及び、(iii)ケトン化合物(B3)である2,4−ジエチルチオキサンテン−9−オン、及び/又は2−イソプロピルチオキサントン、
が少なくとも含まれる活性エネルギー線硬化型組成物(S)を、
基材に塗布又は付着後、該活性エネルギー線硬化型組成物(S)に紫外線発光ダイオードを光源とする活性エネルギー線を照射して硬化、形成されることを特徴とする。
【0029】
本発明の第3の態様における、活性エネルギー線硬化型組成物(S)中の成分である活性エネルギー線重合性化合物(A)と、光重合開始剤(B)は第1の態様において記載した内容と同様であり、着色剤(C)も第1の態様において記載した内容と同様である。
また、第3の態様における、基材、塗布又は付着、及び紫外線発光ダイオード光源は第2の態様において記載した内容と同様である。第3の態様である塗膜は、オフセット、シルクスクリーン印刷物等の代替として使用することができ、その用途の例としては、サイン、ラベル、包装材などが上げられるが、これに限らず様々な印刷物への使用が可能である。
【実施例】
【0030】
以下、本発明について実施例、比較例を用いて本発明を具体的に説明する。
先ず、本実施例、比較例で使用した、基材、活性エネルギー線硬化型組成物の成分(原材料)、及び評価方法について記載する。
(I)原材料
(1)基材
易接着PETフィルム(厚さ100μm、東洋紡績(株)製、商品名:A4300)を用いた。
【0031】
(2)活性エネルギー線硬化型組成物の調製に使用した成分
(2−1)活性エネルギー線重合性化合物
(i)単官能モノマー(1):4−t−ブチルシクロヘキシルアクリレート(BASFコーポレーション社製、商品名:Laromer(登録商標)TBCH)
(ii)単官能モノマー(2):N−ビニルカプロラクタム(アイエスピー・ジャパン社製、商品名:V-CAP/RC)
(iii)単官能モノマー(3):2−フェノキシエチルアクリレート(米国サートマー社製、商品名:SR339A)
(iv)6官能オリゴマー(4):ポリエステルベース・ウレタン6官能アクリレート・オリゴマー(米国サートマー社製、商品名:CN968)
(v)2官能オリゴマー(5):ウレタンアクリレートオリゴマー(米国サートマー社製、商品名:CN966)
【0032】
(2−2)重合開始剤
(i)(B1)成分
(B1)成分(1):ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製、商品名:Irgacure 819)
(ii)(B2)成分
(ii−1)(B2)成分(1):4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(大同化成(株)製、商品名:EAB-SS)
(ii−2)(B2)成分(2):エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート(日本シイベルヘグナー(株)製、商品名:Speedcure EDB)
(ii−3)(B2)成分(3):イソアミルp−(ジメチルアミノ)ベンゾエート(日本化薬(株)製、商品名:KAYACURE DMBI)
【0033】
(iii)(B3)成分
(iii−1)(B3)成分(1):2,4−ジエチルチオキサンテン−9−オン(日本化薬(株)製、商品名:KAYACURE DETX)
(iii−2)(B3)成分(2):2−イソプロピルチオキサントン(日本シイベルヘグナー(株)製、商品名:SpeedcureITX)
(iv)他の重合開始剤(B1〜B3以外)
その他成分(1):2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(大同化成(株)製、商品名:DAIDO UV-CURE APO)
その他成分(2):2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(大同化成(株)製、商品名:DAIDO UV-CURE 369)
その他成分(3):2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製、商品名:Irgacure 379)
その他成分(4):2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製、商品名:Irgacure 907)
その他成分(5):3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン(双幅化学(株)製、商品名:ナルキュアーMBP)
【0034】
(2−3)着色剤
青顔料(東洋インキ(株)製、商品名:LIONOL BLUE FG7400G)
(2−4)その他
(i)添加剤
ジアリルフタレートプレポリマー(ダイソー(株)製、商品名:ダイソーダップ−K)
(ii)分散剤
アミノ基含有高分子化合物(ビックケミー社製、商品名:DisperBYK168)
(iii)レベリング剤
エチレン性不飽和基及びシリコーン鎖を有する化合物(Gelest社製、商品名:Tegorad2300)
(iv)重合禁止剤
メチルハイドロキノン
【0035】
(II)評価方法
(i)表面硬化性
前記易接着PETフィルムにバーコーター#6で活性エネルギー線硬化型組成物を展色、UVライトボックス(京セラ(株)製UV−LEDランプ、型式:KVL-S04G-G2-DN1、主波長:395nm)を1.0mmの距離で照射して、展色物の硬化膜を得た。尚、1パス当りの照射条件は、照度40.9mW/cm、積算光量4.0mJ/cm、コンベア搬送速度30m/minとした。評価基準は下記の通りである。
1パスで指触によりタックの有無について判断し、タックの無いものを○、タックのあるものを×とした。
(ii)深部硬化性
塗膜が表面と深部が均一に硬化せずにモノマーの一部が残存し、表面のみ硬化した場合、硬化収縮によるシワが発生するので、上記「(i)表面硬化性」の評価で作製した硬化膜を目視及び指触して評価した。評価基準は下記の通りである。
○:塗膜表面が平滑
×:塗膜表面にシワが出ている
【0036】
(iii)塗膜黄変
上記「(i)表面硬化性」の評価で作製した塗膜を3日間保管し、保管後の塗膜黄変を目視で評価した。評価基準は下記の通りである。
○:目視で塗膜が白い
×:目視にて塗膜が黄色い
(iv)経時安定性
活性エネルギー線硬化型組成物を60℃のオーブンに4週間保管し、初期粘度と比較したときの保管後の粘度の変化率を算出した。
評価基準は下記の通りである。
○:増粘幅が10%以内
×:増粘幅が10%より大きい
【0037】
[実施例1〜14]
実施例1〜14において、以下に示す通り、活性エネルギー線硬化型組成物を調製し、得られた該組成物を基材上に塗布した。その後、塗布した該組成物に活性エネルギー線を照射して、塗膜を形成し評価を行った。
尚、表1に示す通り、実施例1〜13の活性エネルギー線硬化型組成物には着色剤が配合されているが、実施例14の活性エネルギー線硬化型組成物には着色剤は配合されていない。
また、実施例1〜14と、後述する比較例1〜9では、密着性、塗膜強度向上のために、活性エネルギー線硬化型組成物に添加剤としてジアリルフタレートプレポリマーを配合した。
(1)活性エネルギー線硬化型組成物の調製
表1に示す、活性エネルギー線重合性化合物、光重合開始剤、着色剤、添加剤、分散剤、レベリング剤、及び重合禁止剤をそれぞれ表1に示す割合になるように配合後、ディゾルバーにより混合して、活性エネルギー線硬化型組成物を調製した。
(2)塗膜の形成
次に、上記活性エネルギー線硬化型組成物をバーコーター#6を用いて基材上に硬化後の厚みが7μmとなるように塗布した後、UVライトボックス(京セラ(株)製、型式:KVL-S04G-G2-DN1)を1.0mmの距離で照射して、塗布した活性エネルギー線硬化型組成物を硬化させて塗膜を形成した。尚、1パス当りの照射条件は、照度40.9mW/cm、積算光量4.0mJ/cmとした。
(3)塗膜の評価
得られた塗膜について、表面硬化性、深部硬化性、塗膜黄変、及び経時安定性の評価を行った。
評価結果をまとめて表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
[比較例1〜9]
比較例1〜9において、以下に示す通り、活性エネルギー線硬化型組成物を調製し、得られた該組成物を基材上に塗布した。その後、塗布した該組成物に活性エネルギー線を照射して、塗膜を形成し、実施例1〜14に記載したと同様の評価を行った。
(1)活性エネルギー線硬化型組成物の調製
表2に示す、活性エネルギー線重合性化合物、光重合開始剤、着色剤、添加剤、分散剤、レベリング剤、及び重合禁止剤をそれぞれ表2に示す割合になるように配合後、ディゾルバーにより混合して、活性エネルギー線硬化型組成物を調製した。
(2)塗膜の形成
次に、前記活性エネルギー線硬化型組成物をバーコーター#6を用いて基材上に硬化後の厚みが7μmとなるように塗布した後、UVライトボックス(京セラ(株)製、型式:KVL-S04G-G2-DN1)を1.0mmの距離で照射して、を照射して塗布した活性エネルギー線硬化型組成物を硬化させて塗膜を形成した。尚、1パス当りの照射条件は、照度40.9mW/cm、積算光量4.0mJ/cmとした。
(3)塗膜の評価
得られた塗膜について、表面硬化性、深部硬化性、塗膜黄変、及び経時安定性の評価を行った。
評価結果をまとめて表2に示す。
【0040】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも活性エネルギー線重合性化合物(A)、及び光重合開始剤(B)からなる活性エネルギー線硬化型組成物(S)であって、
光重合開始剤(B)として
(i)アシルホスフィン化合物(B1)であるビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、
(ii)アミノカルボニル化合物(B2)である4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、及びイソアミルp−(ジメチルアミノ)ベンゾエートから選択される1種又は2種以上、
並びに、(iii)ケトン化合物(B3)である2,4−ジエチルチオキサンテン−9−オン、及び/又は2−イソプロピルチオキサントンが含まれ、
活性エネルギー線重合性化合物(A)として単官能モノマーが含まれていることを特徴とする活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項2】
前記活性エネルギー線硬化型組成物(S)として活性エネルギー線重合性化合物(A)、光重合開始剤(B)、及び着色剤(C)が含まれることを特徴とする請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項3】
前記活性エネルギー線硬化型組成物(S)中に、光重合開始剤(B)として(i)アシルホスフィン化合物(B1)が0.5〜5質量%、(ii)アミノカルボニル化合物(B2)が0.5〜5質量%、及び、(iii)ケトン化合物(B3)が0.5〜5質量%、かつこれらの光重合開始剤(B1〜B3)が併せて10質量%以下、含まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項4】
前記活性エネルギー線硬化型組成物(S)中に、活性エネルギー線重合性化合物(A)として単官能モノマーが60〜95質量%含まれていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項5】
活性エネルギー線重合性化合物(A)として単官能モノマー、
並びに光重合開始剤(B)として
(i)アシルホスフィン化合物(B1)であるビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、
(ii)アミノカルボニル化合物(B2)である4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、及びイソアミルp−(ジメチルアミノ)ベンゾエートから選択される1種又は2種以上、
並びに、(iii)ケトン化合物(B3)である2,4−ジエチルチオキサンテン−9−オン、及び/又は2−イソプロピルチオキサントン、
が少なくとも含まれる、活性エネルギー線硬化型組成物(S)を、
基材に塗布又は付着後、該活性エネルギー線硬化型組成物(S)に紫外線発光ダイオードを光源とする活性エネルギー線を照射して硬化することを特徴とする塗膜の形成方法。
【請求項6】
前記活性エネルギー線硬化型組成物(S)として活性エネルギー線重合性化合物(A)、光重合開始剤(B)、及び着色剤(C)が含まれることを特徴とする請求項5に記載の塗膜の形成方法。
【請求項7】
前記活性エネルギー線硬化型組成物(S)の基材への塗布又は付着がインクジェット法、スプレー法、コーター法、グラビア法、およびフレキソ法から選択された1種又は2種以上であることを特徴とする請求項5又は6に記載の塗膜の形成方法。
【請求項8】
活性エネルギー線重合性化合物(A)として単官能モノマー、
並びに光重合開始剤(B)として少なくとも(i)アシルホスフィン化合物(B1)であるビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、
(ii)アミノカルボニル化合物(B2)である4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、及びイソアミルp−(ジメチルアミノ)ベンゾエートから選択される1種又は2種以上、
及び、(iii)ケトン化合物(B3)である2,4−ジエチルチオキサンテン−9−オン、及び/又は2−イソプロピルチオキサントン、
が少なくとも含まれる活性エネルギー線硬化型組成物(S)を、
基材に塗布又は付着後、該活性エネルギー線硬化型組成物(S)に紫外線発光ダイオードを光源とする活性エネルギー線を照射して硬化、形成された塗膜。
【請求項9】
前記活性エネルギー線硬化型組成物(S)として活性エネルギー線重合性化合物(A)、光重合開始剤(B)、及び着色剤(C)が含まれることを特徴とする請求項8に記載の塗膜。

【公開番号】特開2012−241116(P2012−241116A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113015(P2011−113015)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000183923)株式会社DNPファインケミカル (268)
【Fターム(参考)】