説明

活性エネルギー線硬化型組成物及び成形品

【課題】優れた耐摩耗性および耐侯性を有する硬化被膜を形成しうる活性エネルギー線硬化型被覆組成物及びこのような硬化被膜を有する成形品を提供する。
【解決手段】(A)イソシアヌレート骨格を含有する特定のウレタン(メタ)アクリレート化合物、(B)イソシアヌレート骨格を有するアクリレート化合物、(C)ラジカル重合性無機微粒子を特定の比率で含有する組成物[1]、更に(D)カプロラクトンにより変性されたモノ又はポリペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート化合物を含有する組成物[2]。または(A)、(B)、(C)及び(E)テトラヒドロフタル酸残基とトリメチロールプロパン残基と(メタ)アクロイル基を有するポリエステル(メタ)アクリレートを含有する組成物[3]。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に耐摩耗性及び耐候性に優れた硬化被膜を基材表面に形成しうる活性エネルギー線硬化型被覆組成物及びこのような硬化被膜を有する成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂などから製造された合成樹脂成形品は、軽量で耐衝撃性に優れているばかりでなく、透明性も良好である。このために、近年、自動車用プラスチック材料として、各種ランプレンズ、グレージング、計器類のカバ−などに多用されている。特にヘッドランプレンズについては自動車の燃費向上のための軽量化、デザインの多様化などからプラスチック材料の使用が増加している。しかし、これらの合成樹脂成形品はその表面の耐摩耗性が不足しているため、他の硬い物との接触、摩擦、引っ掻きなどによって表面に損傷を受けやすく、表面に発生した損傷はその商品価値を低下させることになる。また、前述の自動車用プラスチック材料として使用される場合には、その耐候性も重要な性能となる。特にポリカーボネート樹脂は耐候性が低く、太陽光に含まれる紫外線等の活性エネルギー線によって劣化を受け、成形品が著しく黄変したり、表面にクラックが生じたりする。
【0003】
このような合成樹脂成形品の欠点を改良する方法については、従来種々検討されている。例えばシリコン系、メラミン系の樹脂組成物からなる被覆材を合成樹脂成形品表面に塗布し、加熱縮合させて架橋被膜を形成させ、耐摩耗性を向上させる方法や、ラジカル重合性単量体からなる樹脂組成物を塗布した後、活性エネルギー線を照射させ架橋被膜を形成する方法などが提案されている(特許文献1)。
これらの手法の中で、カプロラクトンにより変性されたモノ又はポリペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート、1分子内に少なくとも2個のラジカル重合性不飽和二重結合を有するウレタンポリ(メタ)アクリレート化合物、及びポリ〔(メタ)アクリロイルオキシアルキル〕(イソ)シアヌレートから成る樹脂組成物が提案されている(特許文献2、特許文献3)。しかし、摩擦、引っ掻きなどに対し、長期間に亘り損傷を防ぐために、さらなる耐摩耗性の向上が求められている。
一方、耐摩耗性に優れた樹脂組成物としては、表面処理されたシリカ微粒子を含む樹脂組成物が知られている(特許文献4)。しかし、太陽光に対し、長期間に渡り硬化被膜および合成樹脂基材の劣化を抑制するために、さらなる耐侯性の向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭56−122840号公報
【特許文献2】特開2007−314769号公報
【特許文献3】特開2007−314770号公報
【特許文献4】特開平5−179157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、優れた耐摩耗性および耐侯性を有する硬化被膜を形成しうる活性エネルギー線硬化型被覆組成物及びこのような硬化被膜を有する成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、イソシアヌレート骨格を含有する特定のウレタン(メタ)アクリレート化合物、イソシアヌレート骨格を有するアクリレート化合物、ラジカル重合性無機微粒子とを、特定の比率で併用することによって、耐摩耗性および耐侯性に優れる硬化被膜を形成しうる下記の被覆組成物〔1〕〜〔7〕を見出した。
【0007】
〔1〕(A)、(B)及び(C)成分の合計100質量%中、
(A)一般式(1)で示される、イソシアヌレート骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物10〜40質量%、
【化1】

[式(1)中、α1、α2及びα3は(メタ)アクリロイル基(CH2=CR−CO−)、X1、X2及びX3は炭素数2〜17のアルキレン基を示す。また、Rは水素原子又はメチル基を示す。]
【0008】
(B)一般式(2)で示されるポリ(メタ)アクリロイルオキシアルキルイソシアヌレート化合物30〜70質量%
【化2】

【0009】
[式(2)中、β1、β2及びβ3のうち2個は(メタ)アクリロイル基(CH2=CR−CO−)またはカプロラクトンにより変性された(メタ)アクリロイル基{CH2=CR−CO(O(CH25C=O)a−}であり、残り1個は(メタ)アクリロイル基、カプロラクトンにより変性された(メタ)アクリロイル基、水素原子又はアルキル基であり、Y1、Y2及びY3はオキシアルキレン基又はポリオキシアルキレン基を示す。また、Rは水素原子又はメチル基を示し、aは1以上の整数である。]
【0010】
(C)ラジカル重合性無機微粒子1〜30質量%
を含んでなる活性エネルギー線硬化型被覆組成物。
【0011】
〔2〕(A)、(B)、(C)及び(D)成分の合計100質量%中、
(A)成分10〜40質量%、(B)成分5〜60質量%、(C)成分1〜30質量%、(D)一般式(3)で示される、カプロラクトンにより変性されたモノ又はポリペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート化合物10〜80質量%、
【0012】
【化3】

【0013】
[式(3)中、複数のγのうち少なくとも3個は、(メタ)アクリロイル基{(CH2=CR−CO−)}、またはカプロラクトンにより変性された(メタ)アクリロイル基{CH2=CR−CO(O(CH25C=O)a−}であり、かつ、それらの中の少なくとも1個はカプロラクトンにより変性された(メタ)アクリロイル基を示す。残りのγは水素原子であり、nは0〜4の整数である。またRは水素原子又はメチル基を示し、aは1以上の整数である。]を含んでなる活性エネルギー線硬化型被覆組成物。
【0014】
〔3〕(A)、(B)、(C)及び(E)成分の合計100質量%中、(A)成分10〜40質量%、(B)成分5〜60質量%、(C)成分1〜30質量%、(E)テトラヒドロフタル酸残基とトリメチロールプロパン残基と(メタ)アクロイル基を有するポリエステル(メタ)アクリレート10〜25質量%を含んでなる活性エネルギー線硬化型被覆組成物。
【0015】
〔4〕式(1)中のX1〜X3が炭素数4のアルキレン基である前記〔1〕〜〔3〕のいずれかの態様に記載の活性エネルギー線硬化型被覆組成物。
〔5〕(F)紫外線吸収剤および(G)ヒンダードアミン系光安定剤を含有する前記〔1〕〜〔4〕のいずれかの態様に記載の活性エネルギー線硬化型被覆組成物。
【0016】
〔6〕前記〔1〕〜〔5〕のいずれかの態様に記載の活性エネルギー線硬化型被覆組成物の硬化被膜を有する合成樹脂成形品。
〔7〕合成樹脂成形品が自動車ヘッドランプレンズ用ポリカーボネート樹脂成形品である前記〔6〕に記載の合成樹脂成形品。
【発明の効果】
【0017】
本発明の被覆組成物によれば、耐摩耗性および耐侯性に優れた硬化被膜を有する合成樹脂成形品を得ることができる。この硬化被膜は、表面平滑性、耐熱性、耐薬品性、及び基材との密着性も優れている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を説明する。尚、以下の説明において、(A)、(B)、(C)、(D)または(E)成分を「ラジカル重合性化合物」という場合がある。
(A)成分である、前記式(1)に記載のイソシアヌレート骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、強靭性を有する成分であり、硬化塗膜の耐摩耗性を損なうことなく、耐侯性(耐クラック性)を向上させることが出来る。また、(A)成分以外のウレタン(メタ)アクリレート化合物を無機微粒子と併用した場合、硬化被膜の耐侯性(耐白化性)が著しく低下するのに対し、(A)成分は無機微粒子と併用しても、硬化被膜の耐侯性(耐白化)の低下は起こりにくい。
【0019】
(A)成分の具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型トリマー{商品名「デュラネートTPA−100」、旭化成ケミカルズ(株)製)及びヒドロキシル基を含有するアルキルモノ(メタ)アクリレートをジラウリン酸ジn−ブチル錫等の錫系触媒の存在下、イソシアネート基とヒドロキシル基が等量になるように用いて、60〜70℃で数時間加熱することにより得ることができる。
ヒドロキシル基を含有するアルキルモノ(メタ)アクリレートの具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。耐侯性の観点から、一般式(1)中のX1、X2及びX3が炭素数4のアルキレン基となる、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートおよび4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0020】
組成物[1]、組成物[2]または組成物[3]における(A)成分の使用割合は、ラジカル重合性化合物の合計量100質量%中、10〜40質量%の範囲が好ましい。下限値は20質量%以上がより好ましく、上限値は30質量%以下がより好ましい。(A)成分の量が10質量%以上の場合、硬化被膜の耐候性(耐クラック性)が良くなる。また、40質量%以下の場合、硬化被膜の耐摩耗性、および耐侯性(耐黄変性、耐白化性)が良くなる。
【0021】
(B)成分である前記式(2)で示されるポリ(メタ)アクリロイルオキシアルキルイソシアヌレートは、活性エネルギー線により良好な重合活性を示し、また得られた硬化被膜の耐摩耗性を損なうことなく、硬化被膜の耐熱性を向上させることができる。
なお、硬化被膜の耐摩耗性の観点から一般式(2)のβ1、β2及びβ3におけるaは5以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましく、2以下であることが更に好ましい。
【0022】
具体的には、ビス(2−アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ビス(2−アクリロイルオキシプロピル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシプロピル)イソシアヌレート、1分子あたり1個のカプロラクトンにより変性されたトリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート(商品名「アロニックスM−325」、東亞合成(株)製)、1分子あたり3個のカプロラクトンにより変性されたトリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート(商品名「アロニックスM−327」、東亞合成(株)製)などが挙げられる。これらの中で、耐摩耗性の観点からトリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートが特に好ましい。
【0023】
組成物[2]または組成物[3]における(B)成分の使用割合は、ラジカル重合性化合物の合計量100質量%中、5〜60質量%の範囲内が好ましい。下限値は20質量%以上がより好ましく、上限値は50質量%以下がより好ましい。(B)成分の量が5質量%以上の場合、硬化被膜の耐熱性が良くなる。また、60質量%以下の場合、硬化被膜の耐侯性(耐白化性)が良くなる。
組成物[1]における(B)成分の使用割合は、ラジカル重合性化合物の合計量100質量%中30〜70質量%の範囲内が好ましい。下限値は40質量%以上がより好ましく、上限値は60質量%以下がより好ましい。(B)成分の量が30質量%以上の場合、硬化被膜の耐熱性が良くなる。また、70質量%以下の場合、硬化被膜の耐侯性(耐白化性)が良くなる。
【0024】
(C)成分であるラジカル重合性無機微粒子は硬化被膜の耐摩耗性を向上させることができる。(C)成分としては、塗料組成物とした際に均一に分散し、硬化被膜の透明性および耐摩耗性が良好になるものであれば特に限定されないが、他のラジカル重合性化合物との相溶性および硬化被膜の耐摩耗性の観点から(メタ)アクリロイルオキシ基を有するシランカップリング剤により表面処理されたシリカ微粒子が特に好ましく、ラジカル重合性無機微粒子は、公知の方法で合成することができる。
【0025】
組成物[1]、組成物[2]または組成物[3]における(C)成分の使用割合は、ラジカル重合性化合物の合計量100質量中、1〜30質量%の範囲内が好ましい。下限値は10質量%以上がより好ましく、上限値は20質量%以下がより好ましい。(C)成分の使用割合が1質量%以上の場合、硬化被膜の耐摩耗性が良くなる。また、30質量%以下の場合、硬化被膜の耐候性が良くなる。
【0026】
(D)成分である、前記式(3)で示されるカプロラクトンにより変性されたモノ又はポリペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレートは、活性エネルギー線の照射により良好な重合活性を示し、また高度な架橋密度を有する耐摩耗性に優れたポリマ−を形成する。したがって、基材表面に耐摩耗性に優れた硬化被膜を形成することができる。
【0027】
(D)成分としては、カプロラクトンにより変性されたペンタエリスリト−ルトリ(メタ)アクリレ−ト、カプロラクトンにより変性されたペンタエリスリト−ルテトラ(メタ)アクリレ−ト、カプロラクトンにより変性されたジペンタエリスリト−ルトリ(メタ)アクリレ−ト、カプロラクトンにより変性されたジペンタエリスリト−ルテトラ(メタ)アクリレ−ト、カプロラクトンにより変性されたジペンタエリスリト−ルペンタ(メタ)アクリレ−ト、カプロラクトンにより変性されたジペンタエリスリト−ルヘキサ(メタ)アクリレ−ト、カプロラクトンにより変性されたトリペンタエリスリト−ルテトラ(メタ)アクリレ−ト、カプロラクトンにより変性されたトリペンタエリスリト−ルペンタ(メタ)アクリレ−ト、カプロラクトンにより変性されたトリペンタエリスリト−ルヘキサ(メタ)アクリレ−ト、カプロラクトンにより変性されたトリペンタエリスリト−ルヘプタ(メタ)アクリレ−ト、カプロラクトンにより変性されたトリペンタエリスリト−ルオクタ(メタ)アクリレ−ト等のカプロラクトン変性化合物が挙げられる。具体的には、1分子あたり2個のカプロラクトンにより変性されたジペンタエリスリトールヘキサアクリレート{商品名「カヤラッドDPCA−20」、日本化薬(株)製}、1分子あたり3個のカプロラクトンにより変性されたジペンタエリスリトールヘキサアクリレート{商品名「カヤラッドDPCA−30」、日本化薬(株)製}、1分子あたり6個のカプロラクトンにより変性されたジペンタエリスリトールヘキサアクリレート{商品名「カヤラッドDPCA−60」、日本化薬(株)製}、1分子あたり12個のカプロラクトンにより変性されたジペンタエリスリトールヘキサアクリレート{商品名「カヤラッドDPCA−120」、日本化薬(株)製}などが挙げられる。
【0028】
得られた硬化被膜における耐摩耗性、耐侯性(耐黄変性、耐白化性)および活性エネルギー線に対する反応性、無機微粒子との親和性の観点から一般式(3)のγにおけるaは6以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましく、2以下であることが更に好ましい。
組成物[2]における(D)成分の使用割合は、ラジカル重合性化合物の合計量100質量%中、10〜80質量%の範囲が好ましい。下限値は20質量%以上がより好ましく、上限値は40質量%以下がより好ましい。(D)成分の量が10質量%以上の場合、硬化被膜の耐摩耗性が良くなる。また、80質量%以下の場合、硬化被膜の耐候性(耐クラック性)および耐熱性が良くなる。
【0029】
(E)成分であるテトラヒドロフタル酸残基とトリメチロールプロパン残基と(メタ)アクロイル基を有するポリエステル(メタ)アクリレートは、例えば特公昭54−30431号公報などに記載の方法により製造することができる。具体的には、無水テトラヒドロフタル酸とトリメチロールプロパンとアクリル酸とを混合し、加熱することにより得ることができる。代表的には、無水テトラヒドロフタル酸とトリメチロールプロパンの重縮合反応による高分子に(メタ)アクリル酸のカルボキシル基が反応して(メタ)アクロイル基を有する構造となったポリエステル(メタ)アクリレートである。
【0030】
組成物[3]における(E)成分の使用割合は、ラジカル重合性化合物の合計量100質量%中、10〜25質量%の範囲が好ましい。下限値は12質量%以上がより好ましく、上限値は18質量%以下がより好ましい。(E)成分の使用割合が10質量%以上の場合、硬化被膜の耐侯性(耐クラック)が良くなる。また、25質量%以下の場合、硬化被膜の耐摩耗性が良くなる。
本発明の活性エネルギー線硬化型被覆組成物が塗布される基材の紫外線による劣化を防ぐには、組成物[1]、組成物[2]または組成物[3]は、さらに紫外線吸収剤{(F)成分}およびヒンダードアミン系光安定剤{(G)成分}を含む活性エネルギー線硬化型被覆組成物であることが好ましい。
【0031】
(F)成分である紫外線吸収剤は特に限定されず、組成物に均一に溶解し、かつその耐候性が良好なものであれば使用可能であるが、組成物に対する良好な溶解性及び耐候性改善効果という点から、トリアジン系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸フェニル系、安息香酸フェニル系から誘導された化合物で、それらの最大吸収波長が240〜380nmの範囲である紫外線吸収剤が好ましい。更に、組成物に多量に含有させることが可能という点から、ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤が、またポリカーボネート等の基材の黄変を防ぐことができるという点から、トリアジン系及びベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤が好ましい。
【0032】
(F)成分の具体例としては、2−[4−(2−ヒドロキシ−3−ドデシロキシ−プロピル)オキシ−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−[ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン及び2−[4−(2−ヒドロキシ−3−トリデシロキシ−プロピル)オキシ−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−[ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンの混合物(商品名「チヌビン400」、チバ・ジャパン(株)製)、2−[4−(オクチル−2−メチルエタノエート)オキシ−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−[ビス(2,4−ジメチルフェニル)]−1,3,5−トリアジン(商品名「チヌビン479」、チバ・ジャパン(株)製)、トリス[2,4,6−[2−{4−(オクチル−2−メチルエタノエート)オキシ−2−ヒドロキシフェニル}]−1,3,5−トリアジン(商品名「チヌビン777」、チバ・ジャパン(株)製)、2−ヒドロキシベンゾフェノン、5−クロロ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクチロキシベンゾフェノン、4−ドデシロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、フェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート、p−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニルサリシレート、3−ヒドロキシフェニルベンゾエート、フェニレン−1,3−ジベンゾエート、2−(2−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾ−ル物等が挙げられる。
【0033】
組成物[1]、組成物[2]または組成物[3]に対する(F)成分の使用割合は、ラジカル重合性化合物の合計量100質量部に対し、1〜30質量部の範囲が好ましい。下限値は3質量部以上がより好ましく、上限値は15質量部以下がより好ましい。(F)成分の量が1質量部以上の場合、硬化被膜及び基材の耐候性(耐黄変)が良くなる。また30質量部以下の場合、硬化被膜の耐熱性及び耐摩耗性が良くなる。
【0034】
(G)成分であるヒンダードアミン系光安定剤としては、公知のヒンダードアミン系光安定剤が使用でき、具体的には、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−エトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−プロポキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−ブトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−ペンチロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−ヘキシロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−ヘプチロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−ノニロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−デカニロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−ドデシロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(4−メトキシーベンジリデン)マロネート、テトラキス(2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β,β−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5])ウンデカン)ジエタノールとの縮合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β,β−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5])ウンデカン)ジエタノールとの縮合物、1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンとの縮合物(商品名「チヌビン123」、チバ・ジャパン(株)製)、2,4−ビス[N−ブチル−N−(1−シクロヘキシロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ]−6−(2−ヒドロキシエチルアミン)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。また、分子内に(メタ)アクリロイル基を有するヒンダードアミン系光安定剤も使用でき、例えば、{2,4−ビス[N−ブチル−N−(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ]−6−(2−ヒドロキシエチルアミン)−1,3,5−トリアジンと2−アクリロイルオキシエチルイソシアネートとの反応生成物が挙げられ、製造方法は、特開2008−56906号公報に記載されている。
【0035】
これらの中で、長期に亘り耐候性を付与できるという観点から、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β,β−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5])ウンデカン)ジエタノールとの縮合物、1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンとの縮合物(商品名「チヌビン123」、チバ・ジャパン(株)製)、2,4−ビス[N−ブチル−N−(1−シクロヘキシロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ]−6−(2−ヒドロキシエチルアミン)−1,3,5−トリアジン、分子内に(メタ)アクリロイル基を有するヒンダードアミン系光安定剤が特に好ましい。
【0036】
組成物[1]、組成物[2]または組成物[3]に対する(G)成分の使用割合は、ラジカル重合性化合物の合計量100質量部に対して、0.1〜5質量部の範囲が好ましい。下限値は0.5質量部以上がより好ましく、上限値は2質部以下がより好ましい。(G)成分の量が0.1質量部以上の場合、硬化被膜の耐候性(耐クラック)が良くなる。また5質量部以下の場合、硬化被膜の耐熱性及び耐摩耗性が良くなる。
【0037】
本発明の被覆組成物は、上記(A)〜(C)成分を含み、場合によっては、(D)〜(G)成分を含むが、必要に応じて、(A)〜(E)成分以外のラジカル重合性化合物、有機溶剤、光重合開始剤、酸化防止剤、黄変防止剤、ブル−イング剤、顔料、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、沈降防止剤、帯電防止剤、防曇剤等の各種の添加剤が含まれていてもよい。有機溶剤は、基材の種類により選択して用いるのが良い。例えば、基材としてポリカーボネートを使用する場合には、イソブタノールなどのアルコール系溶剤、酢酸n−ブチルなどのエステル系溶剤の1種もしくは2種以上を組み合わせて用いるのが良い。
【0038】
硬化被膜の耐摩耗性および耐侯性などの各種物性を低下させない範囲であれば、(A)〜(E)成分以外のラジカル重合性化合物を使用しても良い。他のラジカル重合性化合物としては、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単官能もしくは多官能モノマーまたはオリゴマーなどが挙げられる。これらは、周知の方法で製造されるものであり、例えば、高分子刊行会発行「UV・EB硬化ハンドブック−原料編」などに記載されている。
【0039】
具体的には、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシドにより変性されたグリセロールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシドにより変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシドにより変性されたトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシドにより変性されたトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシドにより変性されたリン酸トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイドにより変性されたジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイドにより変性されたジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、(A)成分以外のウレタン(メタ)アクリレート化合物、多価アルコールと(メタ)アクリル酸および多官能性カルボン酸との縮合反応により合成される(E)成分以外のポリエステル(メタ)アクリレート化合物、ビスフェノール型エポキシ樹脂あるいはノボラック型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との付加反応により合成されるエポキシ(メタ)アクリレート化合物などが挙げられる。
【0040】
活性エネルギー線として、紫外線を使用する場合には、光重合開始剤を添加することが好ましい。光重合開始剤としては、活性エネルギー線照射によりアクリル系モノマー又はオリゴマーの重合を開始させうるものであれば、いずれのものも使用できる。具体的には、ベンゾイン、ベンゾインモノメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アセトイン、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン等のカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィドなどの硫黄化合物、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドなどのアシルフォスフィンオキサイド等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上の混合系で使用される。これらの中でも、ベンゾフェノン、ベンゾインイソプロピルエーテル、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジルジメチルケタール、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドがより好ましい。
【0041】
光重合開始剤の添加量は、ラジカル重合性化合物の合計量100質量部に対し、0.1〜10質量部の範囲が好ましい。下限値は1質量部以上がより好ましく、上限値は5質量部以下がより好ましい。光重合開始剤の量が0.1質量部以上の場合、硬化性が良くなる。また、10質量部以下の場合、硬化被膜の透明性及び耐候性が良くなる。
【0042】
本発明の被覆組成物を基材に塗布するには、ハケ塗り、スプレーコート、ディップコート、スピンコート、カーテンコートなどの方法が用いられる。被覆組成物の塗布作業性、被覆の平滑性、均一性、硬化被膜の基材に対する密着性向上の点から、適当な有機溶剤を添加して塗布するのが好ましい。また、粘度を調整するために被覆組成物を加温してから塗装しても良い。
【0043】
本発明の被覆組成物は、基材に塗布した後の活性エネルギー線照射により、架橋し、硬化被膜を形成する。活性エネルギー線照射により硬化する際には被覆組成物を基材上に、硬化後の被膜の厚みが好ましくは1〜50μm、より好ましくは3〜20μmになるように塗布し、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等を用いて、波長340nm〜380nmの紫外線を1000〜5000mJ/cm2となるように照射する。照射する雰囲気は、空気中でもよいし、窒素、アルゴン等の不活性ガス中でもよい。
【0044】
本発明の被覆組成物は、基材たる各種合成樹脂成形品の表面の改質に使用できる。合成樹脂成形品としては、従来から耐摩耗性や耐侯性等に関する改善要望のある各種の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂からなるシート状成形品、フィルム状成形品、各種射出成形品等が挙げられる。合成樹脂としては、ポリメチルメタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂、ポリアリルジグリコールカーボネート樹脂などが挙げられる。特に、ポリメチルメタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂は、透明性に優れかつ耐摩耗性改良要求も強いため、本発明の被覆組成物を適用するのが特に有効である。合成樹脂成形品の具体例として、自動車ヘッドランプレンズ用ポリカーボネート樹脂成形品が挙げられる。
【0045】
本発明の被覆組成物の硬化被膜は、耐摩耗性、耐候性に優れる。(F)及び(G)成分を含む本発明の被覆組成物を厚さ3mmのポリカーボネート樹脂板に厚さ8μmの硬化被膜として設けた成形品の、JIS K7204に準拠し、摩耗輪CS−10Fを用いた4.9N荷重での500回転摩耗試験前後の増加ヘイズ値が30.0未満となり、サンシャインウェザーメーターを用いた促進耐候性試験における3000時間曝露前後の増加ヘイズ値は5.0未満、曝露後の増加イエローインデックス値(黄変度)は5.0未満となる。なお、摩耗前や曝露前のヘイズ値がHzb%であって、摩耗後や曝露後のヘイズ値がHza%の場合、それぞれの増加ヘイズ値ΔHzは、Hza−Hzbで表わされる値である。
【実施例】
【0046】
以下に実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明する。実施例中のポリカーボネート樹脂板の表面に硬化被膜を形成した試料の測定評価は以下の方法で行った。
(1)耐摩耗性
JIS K7204「摩耗輪によるプラスチック摩耗試験」に準拠し、ROTARY ABRASION TESTER((株)東洋精機製)を使用し摩耗輪CS−10F、4.9N(500gf)荷重にて、試料の表面を500回転摩耗した後、ヘイズメーター(HM−65W、(株)村上色彩技術研究所製)にてヘイズ値を測定し、耐摩耗性の判定を行った。耐摩耗性の判定基準は次の通りである。
◎ 増加ヘイズ値=0以上25.0未満
○ 増加ヘイズ値=25.0以上30.0未満
× 増加ヘイズ値=30.0以上。
【0047】
(2)耐熱性
120℃および130℃のオーブン中に、試料を240時間静置した。取り出し後、硬化塗膜の外観を目視評価した。耐熱性の判定基準は次の通りである。
◎ 120℃および130℃のいずれの試験後もクラックの発生がない。
○ 120℃の試験後にクラックの発生がない。
× 120℃の試験後にクラックを生じた。
【0048】
(3)耐侯性
サンシャインウェザーメーター(スガ試験機(株)製、WEL−SUN−HC−B型)耐候試験機を用いて、ブラックパネル温度63±3℃、降雨12分間、照射48分間のサイクルで試料の耐侯性試験を実施した。試験時間2000および3000時間後に、以下の(a)、(b)及び(c)の評価を行った。
(a)外観
クラック、白化の発生及び硬化被膜の剥離については、発生しなかったものを○とし、発生したものを×とした。
(b)透明度
ヘイズメーター(HM−65W、(株)村上色彩技術研究所製)を用いて試験前後のヘイズ値を測定した。
◎ 増加ヘイズ値=0以上2.0未満
○ 増加ヘイズ値=2.0以上5.0未満
× 増加ヘイズ値=5.0以上
【0049】
(c)黄変度
瞬間マルチ測光システム(MCPD−3000、大塚電子(株)製)を用いて三刺激値(X、Y、Z)を測定し、下記式を用いてイエローインデックス(YI)値を算出した。
イエローインデックス(YI)値=100×(1.28×X−1.06×Z)/Y
◎ 増加イエローインデックス(YI)値=0以上2.0未満
○ 増加イエローインデックス(YI)値=2.0以上5.0未満
× 増加イエローインデックス(YI)値=5.0以上。
【0050】
合成例1(UA1)
保温機能付き滴下ロート、還流冷却器、攪拌羽根及び温度センサーを装備したフラスコ中に、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型トリマー{商品名「デュラネートTPA−100」、旭化成ケミカルズ(株)製}504g(1mol)、及びジラウリン酸ジn−ブチル錫300ppmを仕込み、60℃に加温した。ヒドロキシル基を有するアルキルモノ(メタ)アクリレート化合物として4−ヒドロキシブチルアクリレート433g(3mol)を3時間かけて滴下した。さらに60℃にて3時間攪拌し、UA1を得た。
【0051】
合成例2(UA2)
ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート化合物として2−ヒドロキシエチルアクリレート348g(3mol)を用いる以外は合成例1と同様に合成し、UA2を得た。
合成例3(UA3)
ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート化合物として不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルエステル修飾ε−カプロラクトン{商品名「プラクセルFA−5」、ダイセル化学工業(株)製}2058g(3mol)を用いる以外は合成例1と同様に合成し、UA3を得た。
【0052】
合成例4(UA4)
保温機能付き滴下ロート、還流冷却器、攪拌羽根及び温度センサーを装備したフラスコ中にジシクロヘキシルメタンジイソシアネート530g(2mol)、ジラウリン酸ジn−ブチル錫300ppmを仕込み、40℃に加温した。その後、グリコール化合物としてノナブチレングリコール(重量平均分子量650)650g(1mol)を4時間かけて滴下した。40℃にて2時間攪拌した後、1時間かけて70℃まで昇温させた。その後ヒドロキシルエチルアクリレート232g(2mol)を2時間かけて滴下し、さらに2時間攪拌し、UA4を得た。
【0053】
合成例5(UA5)
グリコール化合物としてポリカプロラクトングリコール{重量平均分子量530、商品名「プラクセル205」、ダイセル化学工業(株)製}530g(1mol)を用いる以外は、合成例4と同様に合成し、UA5を得た。
合成例6(UA6)
グリコール化合物としてポリカーボネートグリコール{重量平均分子量800、商品名「クラレポリオールC−770」、(株)クラレ製}800g(1mol)を用いる以外は、合成例4と同様に合成し、UA6を得た。
【0054】
合成例7(MCS分散体)(C)成分
還流冷却器、攪拌羽および温度センサー及びを備えたフラスコに、メタノールシリカゾル(分散媒;メタノール、SiO2濃度;30質量%、一次粒子径;12nm、商品名;MT−ST、日産化学工業(株))(以下、「MT−ST」と略記)1200g(SiO2分として360g)と、有機シラン化合物としてγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:SZ6030、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)230gを入れ、攪拌しながら昇温させ、揮発成分の還流が始まると同時に純水100gを徐々に滴下させ、滴下終了後、還流下で2時間攪拌しながら加水分解を行った。
【0055】
加水分解終了後、常圧状態でアルコール、水等の揮発成分を留出させ、固形分濃度が60質量%になった時点でトルエン720gを追加し、アルコール、水等をトルエンと一緒に共沸留出させた。
次に、トルエン1000gを追加し、完全に溶媒置換を行い、トルエン分散系とした。このときの固形分濃度は約40質量%であった。
更に、トルエンを留出させながら110℃で4時間反応を行い、固形分濃度を約60質量%とした。この後、更に1−メトキシ−2−プロパノール1000gを追加し、トルエンを蒸発留出させ溶媒置換を行い、1−メトキシ−2−プロパノール分散系とし、ラジカル重合性無機微粒子分散体(MCS分散体)を合成した。このMCS分散体は、黄色状で透明な液体であり、固形分濃度は加熱残分で50質量%であった。またMCS分散体の酸価は8mgKOH/gであり、ラジカル重合性微粒子単体の酸価に換算すると16mgKOH/gであった。
【0056】
合成例8(PES−1)(E)成分
還流冷却器、攪拌羽根及び温度センサーを装備したフラスコ中に、無水テトラヒドロフタル酸76g(0.5mol)、トリメチロールプロパン134g(1mol)、アクリル酸144g(2mol)、トルエン1000ml、98%硫酸8.9g、およびフェノチアジン0.12gを仕込み、混合した後、110℃で攪拌しながらエステル化反応させた。その際の反応によって生成する水は、トルエンとの共沸により系外へ流出させた。そして、反応開始から8時間後にほぼ理論値の水が流出したので、反応を止め冷却した。次いで、3質量%のアンモニアと20質量%の硫安を含む水溶液で反応液を洗浄し、トルエン層に0.05gのハイドロキノンを入れ、6mmHgの減圧下、約50℃でトルエンを除去し、PES−1を得た。
【0057】
実施例1
表1に示す配合比で被覆組成物を調製し、厚さ3mmのポリカーボネート樹脂板(SABICポリマーランドジャパン(株)製、商品名:「レキサンLS−2」)に、硬化後の被膜が8μmになるようにスプレー塗装した。オーブン中で80℃、3分間加熱処理することにより有機溶剤分を揮発させた後、空気中で高圧水銀ランプを用い、波長340nm〜380nmの積算光量が3000mJ/cm2{(株)オーク製作所製紫外線光量計UV−351(SN型)での測定値}のエネルギーを照射し、硬化被膜を得た。得られた硬化被膜の評価結果を表1に示した。
【0058】
実施例2〜12及び比較例1〜17
表1〜5に示す配合比で被覆組成物を調製し、実施例1と同様の条件で硬化被膜を得た。得られた硬化被膜の評価結果を表1〜5に示した。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【0062】
【表4】

【0063】
【表5】

【0064】
なお、表1〜5中の化合物の記号は次の通りである。
UA1:合成例1で得たウレタンアクリレート化合物
UA2:合成例2で得たウレタンアクリレート化合物
TAIC:トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート
TAIC−3C:1分子あたり3個のカプロラクトンにより変性されたトリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート(商品名「アロニックスM−327」、東亞合成(株)製)
BAIC:ビス(2−アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート
MCS分散体:合成例7で得たラジカル重合性無機微粒子分散体{固形分50質量%であり、MCS分散体100g中には、ラジカル重合性無機微粒子(固形分)は50g含有される。}
DPCA20:1分子中あたり2個のカプロラクトンにより変性されたジペンタエリスリトールヘキサアクリレート{商品名「カヤラッドDPCA−20」、日本化薬(株)製}
【0065】
PES−1:合成例8で得たポリエステルアクリレート化合物
UA3:合成例3で得たウレタンアクリレート化合物
UA4:合成例4で得たウレタンアクリレート化合物
UA5:合成例5で得たウレタンアクリレート化合物
UA6:合成例6で得たウレタンアクリレート化合物
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート
HDDA:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート
TMP3P:1分子あたり3個のプロピレンオキサイドにより変性されたトリメチロールプロパントリアクリレート
【0066】
HHBT:2−[4−(2−ヒドロキシ−3−ドデシロキシ−プロピル)オキシ−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−[ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン{商品名「チヌビン400」、チバ・スペシャリティーケミカルズ(株)製}
BTPS:ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート
BNP:ベンゾフェノン
MPG:メチルフェニルグリオキシレート
TPO:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド
BYK340:フッ素系レベリング剤{商品名「BYK−340」、ビックケミー・ジャパン(株)製}
PGM:プロピレングリコールモノメチルエーテル
MIBK:メチルイソブチルケトン
ECA:エチルカルビトールアセテート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)、(B)及び(C)成分の合計100質量%中、
(A)一般式(1)で示される、イソシアヌレート骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物10〜40質量%、
【化1】

[式(1)中、α1、α2及びα3は(メタ)アクリロイル基(CH2=CR−CO−)、X1、X2及びX3は炭素数2〜17のアルキレン基を示す。また、Rは水素原子又はメチル基を示す。]
(B)一般式(2)で示されるポリ(メタ)アクリロイルオキシアルキルイソシアヌレート化合物30〜70質量%
【化2】

[式(2)中、β1、β2及びβ3のうち2個は(メタ)アクリロイル基(CH2=CR−CO−)またはカプロラクトンにより変性された(メタ)アクリロイル基{CH2=CR−CO(O(CH25C=O)a−}であり、残り1個は(メタ)アクリロイル基、カプロラクトンにより変性された(メタ)アクリロイル基、水素原子又はアルキル基であり、Y1、Y2及びY3はオキシアルキレン基又はポリオキシアルキレン基を示す。また、Rは水素原子又はメチル基を示し、aは1以上の整数である。]
(C)ラジカル重合性無機微粒子1〜30質量%
を含んでなる活性エネルギー線硬化型被覆組成物。
【請求項2】
(A)、(B)、(C)及び(D)成分の合計100質量%中、
(A)一般式(1)で示される、イソシアヌレート骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物10〜40質量%、
【化3】

[式(1)中、α1、α2、α3、X1、X2及びX3は請求項1の場合と同じである。]
(B)一般式(2)で示されるポリ(メタ)アクリロイルオキシアルキルイソシアヌレート化合物5〜60質量%
【化4】

[式(2)中、β1、β2、β3、Y1、Y2及びY3は請求項1の場合と同じである。]
(C)ラジカル重合性無機微粒子1〜30質量%
(D)一般式(3)で示される、カプロラクトンにより変性されたモノ又はポリペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート化合物10〜80質量%、
【化5】

[式(3)中、複数のγのうち少なくとも3個は、(メタ)アクリロイル基{(CH2=CR−CO−)}、またはカプロラクトンにより変性された(メタ)アクリロイル基{CH2=CR−CO(O(CH25C=O)a−}であり、かつ、それらの中の少なくとも1個はカプロラクトンにより変性された(メタ)アクリロイル基を示す。残りのγは水素原子であり、nは0〜4の整数である。またRは水素原子又はメチル基を示し、aは1以上の整数である。]
を含んでなる活性エネルギー線硬化型被覆組成物。
【請求項3】
(A)、(B)、(C)及び(E)成分の合計100質量%中、
(A)一般式(1)で示される、イソシアヌレート骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物10〜40質量%、
【化6】

[式(1)中、α1、α2、α3、X1、X2及びX3は請求項1の場合と同じである。]
(B)一般式(2)で示されるポリ(メタ)アクリロイルオキシアルキルイソシアヌレート化合物5〜60質量%
【化7】

[式(2)中、β1、β2、β3、Y1、Y2及びY3は請求項1の場合と同じである。]
(C)ラジカル重合性無機微粒子1〜30質量%
(E)テトラヒドロフタル酸残基とトリメチロールプロパン残基と(メタ)アクロイル基を有するポリエステル(メタ)アクリレート10〜25質量%、
を含んでなる活性エネルギー線硬化型被覆組成物。
【請求項4】
一般式(1)中のX1、X2及びX3が炭素数4のアルキレン基である請求項1〜3のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型被覆組成物。
【請求項5】
さらに、(F)紫外線吸収剤および(G)ヒンダードアミン系光安定剤を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型被覆組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型被覆組成物の硬化被膜を有する合成樹脂成形品。
【請求項7】
合成樹脂成形品が自動車ヘッドランプレンズ用ポリカーボネート樹脂成形品である請求項6に記載の合成樹脂成形品。

【公開番号】特開2010−254840(P2010−254840A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107808(P2009−107808)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】