説明

活性エネルギー線硬化型被覆材組成物及びこの組成物により被覆された成型物

【課題】ポリスチレン等の樹脂基材に対し付着性,硬化性に優れたハードコートあるいはアンダーコート層を形成できる被覆組成物とこれを用いた成型物を提供する。
【解決手段】(A)下記一般式(1)で示される単量体30〜70質量部、(B)分子中に少なくとも1個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレート(但し前記(A)以外の化合物)69.9〜15質量部、(C)光重合開始剤0.1〜15質量部(但し、上記(A)〜(C)成分の合計量は100質量部とする)からなることを特徴とする活性エネルギー線硬化型被覆材組成物。


(式中、Rは水素原子又はメチル基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆材組成物に関し、より詳しくは活性エネルギー線照射により、ポリスチレン等の樹脂成型品上に付着性、表面平滑性に優れた塗膜を形成せしめるのに使用される活性エネルギー線硬化型被覆材組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレン樹脂は、生産性、成型性、軽量化等の利点を有し、この樹脂成型品基材表面上に、ハードコート層を形成した表面改質成型品として、又はアンダーコート層(プライマー層)を形成し、その上にイオン化蒸着、スパッタリング等の金属化処理を施した成型品として、装飾品や家電製品などの分野においてきわめて広汎に利用されている。このようなハードコート層や金属化処理に用いられるアンダーコート層の形成方法としてはアクリル系、メラミン系、ウレタン系などの樹脂からなる被覆材組成物を、熱あるいは紫外線を用いて硬化させる方法等がある(特許文献1、特許文献2等)
【0003】
【特許文献1】特開2005−272515
【特許文献2】WO95/32250
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来ポリスチレン樹脂に対して、紫外線などの活性エネルギー線硬化型ハードコートもしくは蒸着用アンダーコート塗料は他の基材に比べて付着性が低位であり、その用途は限定されていた。また付着性良好な熱硬化型系の被覆材組成物は、長時間の熱乾燥あるいは熱硬化工程が必要とされるため生産性が低い現状である。
【0005】
本発明の目的は、ポリスチレン等の樹脂成形品のハードコート、もしくは樹脂成形品に金属化処理を施す場合のアンダーコート(プライマ−層)として、付着性,硬化性に優れた活性エネルギー線硬化型被覆材組成物を提供することにある。また、この活性エネルギー線硬化型被覆材組成物を用いた樹脂成型物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の多官能単量体を特定量配合することにより、得られる被覆材組成物の硬化塗膜が、樹脂基材、中でもポリスチレン基材に対する付着性に優れることを見出し本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明の活性エネルギー線硬化型被覆材組成物は具体的には、
(A)下記一般式(1)で示される単量体30〜70質量部、
(B)分子中に少なくとも1個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレート(但し前記(A)以外の化合物)15〜69.9質量部、
(C)光重合開始剤0.1〜15質量部
(但し、上記(A)〜(C)成分の合計量は100質量部とする)
を含んでなる活性エネルギー線硬化型被覆材組成物(以下、被覆材組成物という)に関する。
【0008】
【化1】

(式中、Rは水素原子又はメチル基を示す。)
【0009】
また、本発明は、樹脂基材上に上記被覆材組成物を用いて硬化塗膜が形成された樹脂成型品並びに、前記硬化塗膜上に金属膜を有してなる金属化された樹脂成型品に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の被覆材組成物は、活性エネルギー線を照射することにより短時間で硬化しポリスチレン基材に対して付着性に優れ、かつ生産性の高いハードコート層、又は金属化処理用アンダーコート層を形成することができる。またポリスチレン樹脂以外のABS樹脂、AES樹脂、PC樹脂、アクリル樹脂、PP樹脂等にも金属化処理用アンダーコート層を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明について先ず、被覆材組成物の成分について詳しく説明する。
【0012】
本発明において使用される成分(A)を構成する、一般式(1)で表されるジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレートは、活性エネルギー線の照射により良好な重合活性を示し、樹脂基材、特にポリスチレン基材との優れた付着性を発現する成分である。なお、「(メタ)アクリル」とは「アクリル」と「メタクリル」との総称であり、その他の「(メタ)アクリ・・・」も同様に、「アクリル」と「メタクリル」から派生する基の総称である。
【0013】
一般式(1)で表されるジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレートは、トリシクロデカンジメタノールと(メタ)アクリル酸との縮合反応によって合成可能である。また既に市販されており、例えば、共栄社化学株式会社などから入手可能である。
【0014】
成分(A)の使用割合は、(A)〜(C)成分の合計量100質量部中、30〜70質量部、より好ましくは40〜60質量部であり、30質量部未満では基材との付着性が低下する。また70質量部を超えると硬化性が低下する。
【0015】
成分(B)は、分子中に少なくとも1個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレート(但し前記(A)以外の化合物)であり、活性エネルギー線によって硬化可能であれば特に限定されない。使用可能なモノマーやオリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレートなどの重合性不飽和結合を有する単官能(メタ)アクリレート、又は多官能(メタ)アクリレートなどが挙げられ、硬化塗膜の要求性能に応じて適宜選択すれば良い。
【0016】
単官能(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、モルフォリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカン(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコ−ルモノ(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート等のモノ(メタ)アクリレート、無水フタル酸と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの付加物などのモノ(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0017】
多官能(メタ)アクリレートの具体例としては、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(繰り返し単位数(以下「n」と記載する)=2〜15)ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=2〜15)ジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコール(n=2〜15)ジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、トリメチロ−ルプロパンジアクリレ−ト、ビス(2−(メタ)アクリロキシエチル)−ヒドロキシエチル−イソシアヌレ−ト、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(2−(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレ−ト、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリト−ルテトラ(メタ)アクリレ−ト、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレ−ト、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレ−ト、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレ−ト、ビスフェノールA型ジエポキシと(メタ)アクリル酸とを反応させたエポキシジ(メタ)アクリレート等のエポキシポリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体に2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを反応させたウレタントリ(メタ)アクリレート、イソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとを反応させたウレタンジ(メタ)アクリレート、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとを反応させたウレタンヘキサ(メタ)アクリレート、ジシクロメタンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとを反応させたウレタンジ(メタ)アクリレート、ジシクロメタンジイソシアネートとポリ(n=6〜15)テトラメチレングリコールとのウレタン化反応物に2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとを反応させたウレタンジ(メタ)アクリレート等のウレタンポリ(メタ)アクリレート、トリメチロ−ルエタンとコハク酸及び(メタ)アクリル酸とを反応させたポリエステル(メタ)アクリレート、トリメチロ−ルプロパンとコハク酸、エチレングリコ−ル、及び(メタ)アクリル酸とを反応させたポリエステル(メタ)アクリレート等のポリエステルポリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0018】
これらは、1種又は2種以上を併用して用いることができる。また、単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとを組み合わせて使用することはより好ましい。
【0019】
成分(B)の使用割合は、(A)〜(C)成分の合計量100質量部中に15〜69.9質量部、より好ましくは35〜55質量部である。成分(B)の量が15質量部未満では硬化性が低下する。また69.9質量部を超えると硬化塗膜と基材との付着性が低下する。
【0020】
本発明において使用される成分(C)である光重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインモノメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトイン、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−エチルアントラキノン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド等を挙げることができる。これらは、1種の単独系又は2種以上の混合系で使用される。これらの中でも、ベンゾフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンがより好ましい。
【0021】
成分(C)である光重合開始剤の使用量は、(A)〜(C)成分の合計量100重量部中に0.1〜15重量部、より好ましくは、1〜10重量部である。成分(C)の量が0.1重量部未満では硬化が不十分となり、15重量部を越えると硬化塗膜の付着性が低下する。
【0022】
更に、本発明の被覆材組成物には、必要に応じて、性能を損なわない範囲で、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸アミル、4−ジメチルアミノアセトフェノン等の公知の光増感剤を添加することもできる。
【0023】
また、後述するように樹脂基材と金属膜との間の付着性を改善するため、本発明の被覆材組成物からなるアンダーコートを設ける場合、付着性をより向上させるため、本発明の被覆材組成部に更に(D)ビニル系単量体の重合体またはビニル系単量体混合物の共重合体を添加しても良い。例えばこの成分(D)を用いることにより、低硬度であり、及び/又は、低硬化収縮性を有する塗膜が形成されることにより、ポリスチレン等の樹脂基材及び金属膜との付着性に優れた塗膜が得られる。
【0024】
この成分(D)としてはビニル系単量体の重合体またはビニル系単量体混合物の共重合体であり、ラジカル重合開始剤の存在下に溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法等の採用により得ることができる。具体的な共重合可能なビニル系単量体の例としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、2−ジシクロペンテノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等のアクリル酸エステル類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとエチレンオキシドの付加物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとプロピレンオキシドの付加物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとε−カプロラクトンの付加物などの2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと有機ラクトン類の付加物等の水酸基含有ビニルモノマー;スチレン、α−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、ビニルトルエンなどのスチレン又はスチレン誘導体;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド化合物;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸類;(メタ)アクリロニトリルのような重合性不飽和ニトリル類;マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジブチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル等不飽和カルボン酸エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類等が挙げられる。これら共重合可能な単量体は、1種又は2種以上を併用することができる。
【0025】
成分(D)の使用割合は、(A)から(C)成分の合計100質量部に対して 0.1〜80質量部、より好ましくは0.1〜60質量部である。成分(D)の量が80質量部以下の場合、得られた硬化塗膜のポリスチレン基材及び金属蒸着膜との付着性が向上し、平滑性も向上する。
【0026】
本発明の被覆材組成物には、必要に応じて望ましい粘度に調整するために有機溶剤を使用することができる。有機溶剤の例として、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、酢酸メトキシエチル等のエステル系化合物;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジオキサン等のエーテル系化合物;トルエン、キシレン等の芳香族化合物;ペンタン、ヘキサン、石油ナフサ等の脂肪族化合物;イソプロピルアルコール、イソブタノール、n−ブタノール等のアルコール系化合物;1−メトキシプロパノール、1−メトキシプロパノールアセテート等のプロピレングリコール系化合物を挙げることができる。
【0027】
また、本発明の被覆材組成物には、レベリング剤、消泡剤、沈降防止剤、潤滑剤、研磨剤、防錆剤、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤などの添加剤を加えてもよい。
【0028】
更に、本発明の効果を妨げない範囲内であれば、付着性向上のためにアクリルポリマー、アルキッド樹脂などのポリマーを加えてもよい。
【0029】
本発明の被覆材組成物は、樹脂基材の表面改質等を目的としたハードコート層として、あるいは樹脂基材上に金属膜を形成する金属化処理において、樹脂基材と金属膜との付着性を改良するアンダーコート層として使用することができる。樹脂基材としてポリスチレン樹脂の他、ABS樹脂、AES樹脂、PC樹脂、アクリル樹脂等の樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、PET樹脂、PBT樹脂等のポリエステル樹脂などの成型品が挙げられ、特に化粧品容器や家電製品の筐体に用いられる、ABS樹脂、PC樹脂、アクリル樹脂などについても有用である。
【0030】
これら樹脂基材へのハードコート層あるいは金属化処理用アンダーコート層の形成は、本発明の被覆材組成物を樹脂基材となる樹脂成型品の表面に塗付し、活性エネルギー線を照射することにより達成される。ハードコート層の膜厚は、硬化塗膜の厚さで10〜20μmの範囲であることが好ましく、アンダーコート層の膜厚は、硬化塗膜の厚さで3〜40μmの範囲であることが好ましい。
【0031】
被覆材組成物の塗布方法としては、ハケ塗り、スプレーコート、ディップコート、スピンコート、フローコート等の方法が用いられるが、塗布作業性、被膜の平滑性、均一性の点から、スプレーコート法、フローコート法が好ましい。
【0032】
被覆材組成物を塗布する際に、前述した有機溶剤を配合した場合には、被覆材組成物を硬化させる前に溶剤を揮発させておくことが好ましい。その際には、IRヒーター及び、又は温風で加温し、30〜70℃、2〜8分の条件下で有機溶剤を揮発させることが好ましい。
【0033】
また、本発明の被覆材組成物を硬化するために用いられる活性エネルギー線としては、紫外線、電子線等が挙げられる。例えば高圧水銀灯を用いた場合には、照射される紫外線エネルギー量が500〜2000mJ/cm2程度の条件が好ましい。
【0034】
アンダーコート層を設けた樹脂成型品への金属化処理は、金属膜を形成する公知の方法、例えば、真空蒸着法、イオン化蒸着法、スパッタリング法等により行われる。更に金属膜の腐食防止を目的として、形成された金属膜表面に熱硬化型トップコート、紫外線硬化型トップコートを形成したり、又はプラズマ重合膜等で処理されても良い。
【実施例】
【0035】
以下に、実施例及び比較例を挙げ、本発明を詳しく説明する。以下において『部』はすべて『質量部』を、『%』はすべて『質量%』を意味する。また、実施例及び比較例における各種の測定評価は次のような方法で行った。
【0036】
1.塗膜の硬化性
表1,2に示した組成の硬化液をスプレーにより、ポリスチレン製テストピースに硬化後の膜厚が約15μmになるように塗布し、硬化後の塗膜の指触乾燥性で評価した。
◎…タックなし、光沢も良好。
〇…タックなし、光沢は通常。
△…ややタック有り。
×…タック有り(未硬化)。
【0037】
2.付着性
組成物をスプレーにより、ポリスチレン製テストピースに硬化後の膜厚が約15μmとなるように塗布した。
【0038】
実施例1〜5、比較例1、2、4、5については、続いて付着性試験を行い、実施例6〜8及び比較例3については真空蒸着装置を用いて膜厚約100nmのアルミ膜を形成した後に以下付着性試験を行った。
【0039】
1)Xカット試験
試験方法は旧JIS K5400 8.5のXカットテープ法に準拠し、カッターナイフにて互いに30度の角度で交わり基材まで達する長さ約40mmの2本の切り傷をつけた。交叉する2本の切り傷の上から接着部分の長さが約50mmになるようにセロハンテープを貼り付け、消しゴムでこすってテープを完全に付着させてから、瞬間的にはがし、Xカット部のはがれの状態を観察した。
【0040】
2)碁盤目カット剥離試験
試験方法はJIS K5600−5−6のクロスカット法に準拠し、カッターナイフにて1mm間隔で基材まで達するカットを入れ1mm2の碁盤目を25個作り、その上にセロハンテープを貼りつけ急激にはがし、剥離した碁盤目の状態を観察した。
【0041】
◎…Xカット試験及び碁盤目カット剥離試験で剥離なし。
〇…Xカット試験で剥離なし。(碁盤目カット剥離試験では剥離有り)
△…Xカット試験でやや剥離。
×…Xカット試験で全面剥離。
−…硬化状態が不良であるため未評価。
【0042】
3.平滑性
被覆材組成物をスプレーにより、ポリスチレン製テストピースに硬化後の膜厚が約15μmとなるように塗布し、硬化後塗膜の外観を目視評価した。目視評価の判定は以下の基準で行った。
〇…表面が平滑である。
△…表面にやや凹凸が有り、平滑ではない。
×…表面の凹凸が酷く平滑ではない。
【0043】
なお、実施例及び比較例に用いた略号は、以下の化合物を表わす。
DCP−A:ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学(株)製)
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製)
GX−8488D:多官能ポリエステルアクリレート(第一工業製薬(株)製)
2−HPA:2−ヒドロキシプロピルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製)
Ir−184:「イルガーキュアー184」(商品名、チバスペシャリティーケミカル社製)
BNP:ベンゾフェノン
PA:メチルメタアクリレート/スチレン/ブチルメタクリレートの共重合体
80℃で10時間かけて溶液重合された質量比30/40/30の共重合体であって、GPCによる重量平均分子量 2.5×10
【0044】
実施例1〜8
表1に示す成分をステンレス容器に計量し、約30分間、全体が均一になるまで攪拌して被覆材組成物を調製した。次にポリスチレン樹脂で成型された縦9cm、横5cm、厚さ3mmの長方形のテストピースに硬化後の塗膜の膜厚が約15μmになるようにスプレー塗装した。
【0045】
次に加熱により有機溶剤を揮発させた後、空気中で高圧水銀灯を用い、波長340〜380nmの積算光量が1000mJ/cm2のエネルギーを照射し、硬化塗膜を形成させた。実施例6〜8については、引き続きアルミを真空蒸着法により蒸着させて金属化樹脂成型品を得た。この得られた塗装済み成型品及び金属化樹脂成型品についての評価結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
比較例1〜5
実施例1と同様に、表2に示す配合比で被覆材組成物を調製し同様の作業及び評価を行った。比較例3については実施例6と同様に金属化処理の後に評価を行った。
その結果は表2に示す。
【0048】
【表2】

【0049】
表1,2の結果から明らかなとおり、本発明の被覆材組成物は、活性エネルギー線照射により、ポリスチレン等の樹脂成型品上に付着性、表面平滑性に優れた塗膜を形成せしめることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で示される単量体30〜70質量部、
(B)分子中に少なくとも1個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレート(但し前記(A)以外の化合物)15〜69.9質量部、
(C)光重合開始剤0.1〜15質量部
(但し、上記(A)〜(C)成分の合計量は100質量部とする)
を含有してなる活性エネルギー線硬化型被覆材組成物。
【化1】

(式中、Rは水素原子又はメチル基を示す。)
【請求項2】
前記(A)〜(C)成分の合計100質量部に対して、さらに(D)ビニル系単量体の重合体又はビニル系単量体混合物の共重合体0.1〜80質量部を含有してなる請求項1記載の活性エネルギー線硬化型被覆材組成物。
【請求項3】
金属蒸着のアンダーコート用の材料として用いられる請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型被覆材組成物。
【請求項4】
樹脂基材上に、請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型被覆材組成物の硬化塗膜が形成されてなる樹脂成型物。
【請求項5】
硬化塗膜上に、更に金属膜を有してなる請求項4に記載の樹脂成型物。
【請求項6】
樹脂基材が、ポリスチレン樹脂基材である請求項4又は5に記載の樹脂成形物。

【公開番号】特開2008−179693(P2008−179693A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−13760(P2007−13760)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】