説明

活性エネルギー線硬化型黒色インクジェットインク組成物

【課題】活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷方式に使用される黒色のインク組成物であって、磁気特性を有し、かつ硬化性に優れたインク組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも磁性粉体、重合性化合物および光ラジカル重合開始剤を含有し、25℃における粘度が6〜100mPa・sであることを特徴とする、活性エネルギー線硬化型黒色インクジェットインク組成物。さらに好ましくは、前記磁性粉体の一次粒子の平均粒径が10〜50nmであることを特徴とする、上記活性エネルギー線硬化型黒色インクジェットインク組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷方式に使用される黒色のインク組成物であって、磁気特性を有し、かつ硬化性に優れたインク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
小切手、証券、請求書、クレジットカードなどの価値が高い印刷物では、近年、セキュリティ性保持のために特殊インクを用いた印刷が行われ、印刷物管理や偽造防止などに利用されている。これら特殊インクの一つに磁性材料を含んだ磁性インクがあり、一般にはMICR(磁性インク文字認識)と呼ばれるシステムが利用されている。MICRは、JISX9002によりフォントや印字仕様が定められているほか、具体的な例が特許文献1に報告されている。
【0003】
従来磁性インクの印刷には、特許文献2に示されるようなオフセット印刷やグラビア印刷などの有版印刷方式が利用されてきた。しかしながら印刷装置の大きさや、近年の印刷物へのオンデマンド性の要求から、近年では無版印刷方式を利用した磁性インクの印刷が検討されている。
【0004】
特許文献3〜4には、無版印刷方式での磁性インクの印刷に関する例が示されている。このうち特許文献3は、磁性粉体インク(トナー)を電子写真印刷方式により印刷する例であるが、電子写真印刷方式では対象基材が紙基材に限定され、例えばプラスチック基材への印刷ができないという問題がある。また特許文献4には水系インクジェット印刷方式での印刷例が示されているが、水系インクジェット印刷方式では印字後にインクを乾燥する工程が必須となるため、印刷物の生産性の点で問題となる。
【0005】
基材汎用性や生産性の向上、さらには溶剤の揮発量を低減させ環境に優しいことなども併せ、近年では無版印刷方式の一つとして、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷方式が注目されている。最近では、この活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷方式を用いて磁性インクを印刷する例も報告されており、例えば特許文献5にはカチオンタイプの光硬化型インクジェット印刷方式での印刷例が示されている。しかしながらその実施例においては、光硬化後の印刷物を100℃下で乾燥する工程が含まれている。このように、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷方式での磁性インク印刷において、現状では期待されている効果が十分には得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−134648号
【特許文献2】特開2004−090611号
【特許文献3】特開平10−020542号
【特許文献4】特開2001−354883号
【特許文献5】特開2004−002668号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷方式に使用される黒色のインク組成物であって、磁気特性を有し、かつ硬化性に優れたインク組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷方式に使用され、硬化性に優れ、かつ磁気特性を有する黒色インク組成物を提供するべく鋭意検討を行った結果、磁性粉体、重合性化合物および光ラジカル重合開始剤を用い、かつ25℃における粘度を6〜100mPa・sに調整することにより前記問題点が解決されることを見出し、本発明を成したものである。
【0009】
すなわち本発明とは、以下の(1)〜(4)の発明に関するものである。
(1)少なくとも磁性粉体、重合性化合物および光ラジカル重合開始剤を含有し、25℃における粘度が6〜100mPa・sであることを特徴とする、活性エネルギー線硬化型黒色インクジェットインク組成物。
(2)前記磁性粉体の一次粒子の平均粒径が10〜50nmであることを特徴とする、(1)記載の活性エネルギー線硬化型黒色インクジェットインク組成物。
(3)前記磁性粉体を、インク組成物全量に対し5〜15%含むことを特徴とする、(1)〜(2)いずれかに記載の活性エネルギー線硬化型黒色インクジェットインク組成物。
(4)前記インク組成物により形成される印字物が、偽造防止用途に使用されることを特徴とする、(1)〜(3)いずれかに記載の活性エネルギー線硬化型黒色インクジェットインク組成物。
【発明の効果】
【0010】
磁性粉体、重合性化合物および光ラジカル重合開始剤を用い、かつ25℃における粘度を6〜100mPa・sに調整することにより、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷方式に使用される黒色のインク組成物であって、磁気特性を有し、かつ硬化性に優れたインク組成物を得ることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のインク組成物は、少なくとも磁性粉体、重合性化合物、および光ラジカル重合開始剤を含有し、かつ25℃における粘度を6〜100mPa・sに調整するものであり、これにより活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷方式に使用される黒色のインク組成物であって、磁気特性を有し、かつ硬化性に優れたインク組成物を得ることができる。
【0012】
前述のように、これまでにも磁気特性を有するインク組成物は、オフセット印刷やグラビア印刷などの有版印刷方式、電子写真印刷方式、水系インクジェット印刷方式、カチオンタイプの活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷方式で実現されているものである。これらの印刷方式に対し、本発明ではラジカルタイプの活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷方式を採用している。
【0013】
本発明においてラジカルタイプの活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷方式を採用することにより、有版印刷方式ではなしえない印刷のオンデマンド性を達成するだけでなく、電子写真印刷方式ではなしえない基材汎用性を達成することができる。さらに、カチオンタイプの活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷方式の欠点である、硬化性の悪さや水分の影響による印刷の不安定性についても、ラジカルタイプの活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷方式の採用により解消できる。
【0014】
インクジェット印刷方式に対応するため、本発明のインク組成物の25℃における粘度として6〜100mPa・sであることが好ましく、7〜35mPa・sであることがより好ましく、8〜20mPa・sであることが特に好ましい。この粘度幅であれば、特に通常の4〜10KHzの周波数を有するヘッドから、10〜50KHzの高周波数のヘッドまで、ヘッドの種類によらず安定した吐出性を示す。
ここでインク組成物の25℃における粘度が6mPa・s未満の場合、高周波数のヘッドにおいて吐出の追随性が低下するため、連続的に吐出ができなくなる。逆に100mPa・sを越える場合は、加熱による粘度の低下機構をヘッドに組み込んだとしても吐出そのものの低下を生じ、全く吐出できなくなる。
【0015】
本発明に用いられる磁性粉体は、インク組成物の磁気特性の発現のためには不可欠の材料である。磁性粉体に用いられる材料としては、従来既知である強磁性体を使用することができ、例えば鉄、コバルト、ニッケル、マンガンなどの強磁性金属や強磁性金属の合金の粉末、γ−酸化鉄、マグネタイト、フェライトなどの鉄、コバルト、ニッケル、マンガンなどを含む化合物がなどを挙げることができる。本発明においては、画像濃度に優れたインク組成物が得られる点で、鉄を含む化合物を使用することが好ましく、マグネタイトおよびγ−酸化鉄が特に好ましい。またこれらの磁性粉体は、単独の構成物であっても2種以上の混合物であってもよい。
【0016】
本発明の磁性粉体の一次粒子の平均粒径は10〜50nmであることが好ましく、10〜30nmであることがより好ましい。磁性粉体の一次平均粒径が50nmを超えると、インキ組成物に対して外部磁場がかかることで磁性粉体自身に残留磁化が発生し、磁性粉体が凝集し分散が破壊される。一方で磁性粉体の一次平均粒径が10nmに満たない場合は、分散安定化処理を施したとしても分散の安定性が悪くなり、結果としてインク組成物の保存安定性が悪化する。
【0017】
本発明の磁性粉体の一次粒子の形状については特に制限はなく、例えば針状、棒状、板状、粒状、球状など、任意の形状の一次粒子を使用することができる。このうち吐出や分散の安定性の点から、アスペクト比(一次粒子の平均長径と平均短径の比)が3以下である一次粒子を使用することが好ましい。
【0018】
なお、磁性粉体の一次粒子の平均粒径や形状の観察には、透過型電子顕微鏡を使用した。このうち一次粒子の平均粒径とは、透過型電子顕微鏡により観察された一次粒子のうち、任意に選択した30個について計測した直径から算出した平均値である。
【0019】
本発明の磁性粉体の含有量は、インク組成物全量に対し5〜15%であることが好ましく、より好ましくは5〜10%である。ここで含有量が5%に満たない場合は、十分な磁気特性や画像濃度を得ることができず、含有量が15%を越えると、インク組成物の粘度を前記の好適な範囲内に収めることができず、結果として吐出ができなくなる。
【0020】
本発明では、磁性粉体の分散の安定性やインク組成物の保存安定性を向上させるため、分散剤を添加するのが好ましい。分散剤としては、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ステアリルアミンアセテートなどを用いることができる。
【0021】
分散剤の具体例としては、BYK Chemie社製「Anti−Terra−U(ポリアミノアマイド燐酸塩)」、「Anti−Terra−203/204(高分子量ポリカルボン酸塩)」、「Disperbyk−101(ポリアミノアマイド燐酸塩と酸エステル)、107(水酸基含有カルボン酸エステル)、110、111(酸基を含む共重合物)、130(ポリアマイド)、145、161、162、163、164、165、166、170(高分子共重合物)」、「400」、「Bykumen」(高分子量不飽和酸エステル)、「BYK−P104、P105(高分子量不飽和酸ポリカルボン酸)」、「P104S、240S(高分子量不飽和酸ポリカルボン酸とシリコン系)」、「Lactimon(長鎖アミンと不飽和酸ポリカルボン酸とシリコン)」が挙げられる。
【0022】
また、Efka CHEMICALS社製「エフカ44、46、47、48、49、54、63、64、65、66、71、701、764、766」、「エフカポリマー100(変性ポリアクリレート)、150(脂肪族系変性ポリマー)、400、401、402、403、450、451、452、453(変性ポリアクリレート)、745(銅フタロシアニン系)」、共栄社化学社製「フローレン TG−710(ウレタンオリゴマー)、「フローノンSH−290、SP−1000」、「ポリフローNo.50E、No.300(アクリル系共重合物)」、楠本化成社製「ディスパロン KS−860、873SN、874(高分子分散剤)、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル型)」も挙げられる。
【0023】
さらに、花王社製「デモールRN、N(ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩)、MS、C、SN−B(芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩)、EP」、「ホモゲノールL−18(ポリカルボン酸型高分子)、「エマルゲン920、930、931、935、950、985(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)、「アセタミン24(ココナッツアミンアセテート)、86(ステアリルアミンアセテート)」、ルーブリゾール社製「ソルスパース5000(フタロシアニンアンモニウム塩系)、13940(ポリエステルアミン系)、17000(脂肪酸アミン系)、24000GR、32000、33000、39000、41000、53000」、日光ケミカル社製「ニッコール T106(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)、MYS−IEX(ポリオキシエチレンモノステアレート)、Hexagline 4−0(ヘキサグリセリルテトラオレート)」、味の素ファインテクノ社製「アジスパーPB821、822、824、827、711」、テゴケミサービス社製「TEGODisper685」なども挙げられる。
以上の分散剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上併用されてもよい。
【0024】
前記分散剤の磁性粉体に対する添加量は、5〜40重量%であることが好ましい。ここで添加量が5%未満の場合、分散剤としての能力を発揮できずに磁性粉体の分散の安定性やインク組成物の保存安定性が悪化する。また40%以上の場合、インク組成物の粘度を前記の好適な範囲内に収めることができず、結果として吐出ができなくなる。
【0025】
なお本発明のインク組成物には、磁性粉体の分散性やインク組成物の保存安定性をより向上させるために、有機顔料の誘導体を分散時に配合することができる。
【0026】
本発明で用いられる重合性化合物としては、従来既知の重合性モノマーやオリゴマー、プレポリマーを必要に応じて使用することができる。
【0027】
重合性モノマーの具体例としては、単官能モノマーとしてベンジル(メタ)アクリレート、(エトキシ(またはプロポキシ)化)2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(オキシエチル) (メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、β-カルボキシルエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミドを挙げることができる。
また多官能モノマーとしては、ジメチロールートリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、(エトキシ(またはプロポキシ)化)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(エトキシ(またはプロポキシ)化) 1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(エトキシ(またはプロポキシ)化)ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ネオペンチルグリコール変性)トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(またはテトラ) (メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(またはテトラ) (メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(またはテトラ) (メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
以上の重合性モノマーは、単独で用いられてもよいし、2種以上併用されてもよい。
【0028】
このうち本発明においては、単官能モノマーとして(エトキシ(またはプロポキシ)化)2−フェノキシエチルアクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、イソボロニルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、N−ビニルカプロラクタム、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミドを、また多官能モノマーとしてジメチロールートリシクロデカンジアクリレート、(エトキシ(またはプロポキシ)化)ビスフェノールAジアクリレート、(エトキシ(またはプロポキシ)化)ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレートをより好適に用いることができる。
上述の通り、本発明では磁性粉体の含有量がインク組成物全量に対し5〜15%であることが好ましいが、この場合インク組成物の粘度も高くなり、好適な粘度範囲に収めることが難しくなるが、前記の好適な重合性モノマーを選択することにより、インク組成物の粘度を好適な範囲に収めることができる。
他にも、高速硬化性や硬化皮膜性能の点で、前記重合性モノマーは好ましく用いられる。
【0029】
本発明においては、硬化性や硬化皮膜の強度をより高めるため、単官能モノマーと多官能モノマーを併用することが望ましく、重合性モノマー全体に対する単官能モノマーの量は30〜99%であることが好ましく、40〜95%がより好ましく、50〜90%が特に好ましい。
【0030】
また、オリゴマー、プレポリマーの具体例としては、ダイセルUCB社製「Ebecryl230、244、245、270、280/15IB、284、285、4830、4835、4858、4883、8402、8803、8800、254、264、265、294/35HD、1259、1264、4866、9260、8210、1290.1290K、5129、2000、2001、2002、2100、KRM7222、KRM7735、4842、210、215、4827、4849、6700、6700−20T、204、205、6602、220、4450、770、IRR567、81、84、83、80、657、800、805、808、810、812、1657、1810、IRR302、450、670、830、835、870、1830、1870、2870、IRR267、813、IRR483、811、436、438、446、505、524、525、554W、584、586、745、767、1701、1755、740/40TP、600、601、604、605、607、608、609、600/25TO、616、645、648、860、1606、1608、1629、1940、2958、2959、3200、3201、3404、3411、3412、3415、3500、3502、3600、3603、3604、3605、3608、3700、3700−20H、3700−20T、3700−25R、3701、3701−20T、3703、3702、RDX63182、6040、IRR419」、サートマー社製「CN104、CN120、CN124、CN136、CN151、CN2270、CN2271E、CN435、CN454、CN970、CN971、CN972、CN9782、CN981、CN9893、CN991」、BASF社製「Laromer EA81、LR8713、LR8765、LR8986、PE56F、PE44F、LR8800、PE46T、LR8907、PO43F、PO77F、PE55F、LR8967、LR8981、LR8982、LR8992、LR9004、LR8956、LR8985、LR8987、UP35D、UA19T、LR9005、PO83F、PO33F、PO84F、PO94F、LR8863、LR8869、LR8889、LR8997、LR8996、LR9013、LR9019、PO9026V、PE9027V」、コグニス社製「フォトマー3005、3015、3016、3072、3982、3215、5010、5429、5430、5432、5662、5806、5930、6008、6010、6019、6184、6210、6217、6230、6891、6892、6893−20R、6363、6572、3660」、根上工業社製「アートレジンUN−9000HP、9000PEP、9200A、7600、5200、1003、1255、3320HA、3320HB、3320HC、3320HS、901T、1200TPK、6060PTM、6060P」、日本合成化学社製「紫光 UV−6630B、7000B、7510B、7461TE、3000B、3200B、3210EA、3310B、3500BA、3520TL、3700B、6100B、6640B、1400B、1700B、6300B、7550B、7605B、7610B、7620EA、7630B、7640B、2000B、2010B、2250EA、2750B」、日本化薬社製「カヤラッドR−280、R−146、R131、R−205、EX2320,R190、R130、R−300,C−0011、TCR−1234、ZFR−1122、UX−2201,UX−2301,UX3204、UX−3301、UX−4101,UX−6101、UX−7101、MAX−5101、MAX−5100,MAX−3510、UX−4101」などを挙げることができる。
【0031】
本発明のインク組成物には、低粘度化および基材への濡れ広がり性を向上させるために、インク組成物中に有機溶剤を含有させてもよい。
【0032】
有機溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノブチルエーテルプロピオネート、ジエチルジグリコール、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノメチルエーテルブチレート、エチレングリコールモノエチルエーテルブチレート、エチレングリコールモノブチルエーテルブチレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルブチレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルブチレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルブチレート、プロピレングリコールモノメチルエーテルブチレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルブチレートなどのグリコールモノアセテート類、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、エチレングリコールアセテートプロピオネート、エチレングリコールアセテートブチレート、エチレングリコールプロピオネートブチレート、エチレングリコールジプロピオネート、エチレングリコールアセテートジブチレート、ジエチレングリコールアセテートプロピオネート、ジエチレングリコールアセテートブチレート、ジエチレングリコールプロピオネートブチレート、ジエチレングリコールジプロピオネート、ジエチレングリコールアセテートジブチレート、プロピレングリコールアセテートプロピオネート、プロピレングリコールアセテートブチレート、プロピレングリコールプロピオネートブチレート、プロピレングリコールジプロピオネート、プロピレングリコールアセテートジブチレート、ジプロピレングリコールアセテートプロピオネート、ジプロピレングリコールアセテートブチレート、ジプロピレングリコールプロピオネートブチレート、ジプロピレングリコールジプロピオネート、ジプロピレングリコールアセテートジブチレートなどのグリコールジアセテート類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどのグリコール類、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチルなどの乳酸エステル類があげられる。この中でも、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチルジグリコールが好ましい。
【0033】
本発明のインク組成物中に含まれる光ラジカル重合開始剤としては、硬化速度、硬化塗膜物性、着色材料により自由に選択することができる。中でも、分子開裂型または水素引き抜き型のものが本発明に好適であり、具体的にはベンゾインイソブチルエーテル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,4,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)、4−ベンゾイル−4'−メチル−ジフェニルスルフィド、1,2−オクタンジオン、1−(4−(フェニルチオ)−2,2−(O−ベンゾイルオキシム))などが好適に用いられる。これらの光ラジカル重合開始剤は、磁性粉体や重合性化合物の光吸収によってのラジカル生成反応が阻害されない点、またラジカル発生効率が高くインク組成物の硬化性を高めることができる点で好ましい。
また上記以外の光ラジカル重合開始剤として、分子開裂型では1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、および1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、また水素引き抜き型重合開始剤としてはベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノンなどを挙げることができる。
前記光ラジカル重合開始剤は、活性エネルギー線の波長スペクトルや光ラジカル重合開始剤の光吸収スペクトルを考慮したうえで1種、または2種以上併用することができる。
【0034】
また上記光ラジカル重合開始剤に対し、増感剤としてトリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p−ジエチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N,N−ジメチルベンジルアミンおよび4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどの、前記重合性化合物と付加反応を起こさないアミン類を併用することもできる。もちろん、上記光ラジカル重合開始剤や増感剤は、インク組成物への溶解性に優れ、紫外線透過性を阻害しないものを選択して用いることが好ましい。
【0035】
上記光ラジカル重合開始剤は、重合性化合物に対し、2〜25重量%含有することが好ましい。2重量%未満であると硬化速度が著しく悪化し、25重量%より多いと、含有量が25重量%のものと硬化速度が変わらないばかりか、溶解残りが発生する場合があり、熱をかけて溶け残りを溶かしたとしても、インク組成物の粘度が上昇し、結果としてインク組成物の粘度を前記の好適な範囲内に収めることができず、吐出できなくなるといった問題が生じる。
【0036】
本発明のインク組成物は、画像濃度を向上させる目的でさらに染料、顔料を用いることができる。このうち、印刷物の耐性の面から顔料をより好適に用いることができる。顔料としては一般的に印刷用途、塗料用途のインク組成物に使用される顔料を用いることができ、発色性、耐光性などの必要用途に応じて選択することができる。顔料成分としては、カーボンブラックなどの無彩色の顔料または有彩色の有機顔料が使用できる。有機顔料としては、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザエロー、ベンジジンエロー、ピラゾロンレッドなどの不溶性アゾ顔料、リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2Bなどの溶性アゾ顔料、アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーンなどの建染染料からの誘導体、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系有機顔料、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタなどのキナクリドン系有機顔料、ペリレンレッド、ペリレンスカーレットなどのペリレン系有機顔料、イソインドリノンエロー、イソインドリノンオレンジなどのイソインドリノン系有機顔料、ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジなどのピランスロン系有機顔料、チオインジゴ系有機顔料、縮合アゾ系有機顔料、ベンズイミダゾロン系有機顔料、キノフタロンエローなどのキノフタロン系有機顔料、イソインドリンエローなどのイソインドリン系有機顔料、その他の顔料として、フラバンスロンエロー、アシルアミドエロー、ニッケルアゾエロー、銅アゾメチンエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレットなどが挙げられる。
上記顔料は、レーザー散乱による測定値で平均粒径10〜150nmの微細顔料であることが好ましい。
【0037】
有機顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーで例示すると、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86 93、109、110、117、120、125、128、129、137、138、139、147、148、150、151、153、154、155、166、168、180、185、C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、C.I.ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、177、180、192、202、206、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64、C.I.ピグメントグリーン7、36、C.I.ピグメントブラウン23、25、26などが挙げられる。
【0038】
カーボンブラックの具体例としては、デグサ社製「Special Black350、250、100、550、5、4、4A、6」「PrintexU、V、140U、140V、95、90、85、80、75、55、45、40、P、60、L6、L、300、30、3、35、25、A、G」、キャボット社製「REGAL400R、660R、330R、250R」「MOGUL E、L」、三菱化学社製「MA7、8、11、77、100、100R、100S、220、230」「#2700、#2650、#2600、#200、#2350、#2300、#2200、#1000、#990、#980、#970、#960、#950、#900、#850、#750、#650、#52、#50、#47、#45、#45L、#44、#40、#33、#332、#30、#25、#20、#10、#5、CF9、#95、#260」などが挙げられる。
【0039】
上記顔料を使用する場合、本発明のインク組成物の画像濃度を向上させる点で、カーボンブラックおよびフタロシアニン系有機顔料が好ましい。
【0040】
なお、有機顔料の微細化は下記の方法で行うことができる。すなわち有機顔料、有機顔料の3重量倍以上の水溶性の無機塩および水溶性の溶剤の少なくとも3つの成分からなる混合物を粘土状の混合物とし、ニーダーなどで強く練りこんで微細化したのち水中に投入し、ハイスピードミキサーなどで攪拌してスラリー状とする。次いで、スラリーの濾過と水洗を繰り返して、水溶性の無機塩および水溶性の溶剤を除去する。微細化工程において、樹脂、分散剤などを添加してもよい。
水溶性の無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどが挙げられる。これらの無機塩は、有機顔料の3重量倍以上、好ましくは20重量倍以下の範囲で用いる。無機塩の量が3重量倍よりも少ないと、所望の大きさの処理顔料が得られない。また、20重量倍よりも多いと、後の工程における洗浄処理が多大であり、有機顔料の実質的な処理量が少なくなる。
【0041】
水溶性の溶剤は、有機顔料と破砕助剤として用いられる水溶性の無機塩との適度な粘土状態をつくり、充分な破砕を効率よく行うために用いられ、水に溶解する溶剤であれば特に限定されないが、混練時に温度が上昇して溶剤が蒸発し易い状態になるため、安全性の点から沸点120〜250℃の高沸点の溶剤が好ましい。水溶性溶剤としては、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2−(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、液体ポリエチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、低分子量ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。
【0042】
本発明では、インク組成物の保存安定性や、記録装置内での安定性を高めるため、4−メトキシフェノール、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、2,5−t−ブチル−4−メチルフェノール、フェノチアジンなどの重合禁止剤を用いることが好ましい。硬化性を維持しつつ安定性を高める点から、インク組成物全体に対して0.01〜5重量部の割合で配合することが好ましい。
【0043】
本発明のインク組成物については、印刷適性や印刷物耐性を高めるため、表面調整剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などの添加剤を必要に応じて使用することができる。
【0044】
本発明のインク組成物は、重合性化合物、分散剤、磁性粉体をサンドミルなどの通常の分散機を用いてよく分散することにより製造される。本発明においては、あらかじめ磁性粉体が高濃度に含有された濃縮液を作成しておいてモノマーで希釈することが好ましい。この方法により通常の分散機による分散においても十分な分散が可能となり、過剰な分散エネルギーを必要とせず、また多大な分散時間を必要としないため、分散時の材料の変質を招きにくく、結果として安定性に優れたインクを作成することができる。
【0045】
本発明のインク組成物は、ヘッドでの詰まりを防止するため、分散後および/または光ラジカル重合開始剤の溶解後に、孔径3μm以下、好ましくは孔径1μ以下のフィルターにて濾過することが好ましい。
【0046】
本発明のインク組成物を使用するには、まずこのインク組成物をインクジェット記録方式用プリンタのプリンタヘッドに供給し、このプリンタヘッドから基材上に吐出し、その後紫外線又は電子線などの活性エネルギー線を照射する。これにより印刷媒体上の組成物は速やかに硬化する。
【0047】
なお、活性エネルギー線の光源として紫外線を照射する場合、例えば高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、紫外線レーザーやLED、および太陽光を使用することができる。
【0048】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキは、文字、数字、記号、グラフィックなどを表示する材料として用いることができる。特に、本発明のインキ組成物で印字した印字物は、印字後も優れた磁気特性を有しており、その磁気特性は検出器により容易に検出されることから、小切手やクレジットカードなどの偽造防止用途に特に好適に用いられる。
【0049】
本発明で用いられる印刷基材については特に限定はないが、ポリカーボネート、硬質塩ビ、軟質塩ビ、ポリスチレン、発砲スチロール、PMMA、ポリプロピレン、ポリエチレン、PETなどのプラスチック基材やこれら混合または変性品、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙などの紙基材、ガラス、ステンレスなどの金属基材などが挙げられる。
【0050】
[実施例]
以下実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の態様がこれらの例に限定されるものではない。なお以下については、部数は全て重量部を表す。また下記の実施例、比較例の詳細な条件を以下の表1〜2に、また結果を表3に示す。
【0051】
また以下の実施例中では、磁性粉体として以下の6種類を使用した。
磁性粉体1
マグネタイト粉
粒状(アスペクト比1.4)、一次平均粒径19nm
磁性粉体2
マグネタイト粉
粒状(アスペクト比1.8)、一次平均粒径28nm
磁性粉体3
マグネタイトとγ−酸化鉄の混合物
球状(アスペクト比1.1)、一次平均粒径48nm
磁性粉体4
マグネタイト粉
粒状(アスペクト比2.4)、一次平均粒径9nm
磁性粉体5
γ−酸化鉄粉
粒状(アスペクト比1.3)、一次平均粒径60nm
磁性粉体6
γ−酸化鉄粉
粒状(アスペクト比2.8)、一次平均粒径80nm
【0052】
[実施例1]
(磁性粉分散体1の作成)
表1に記載した材料をハイスピードミキサーなどで均一になるまで撹拌後、得られたミルベースを横型サンドミルで約30分間分散して作成した。
【0053】
(インキ組成物の作成)
表2に記載した材料を順次撹拌しながら添加、混合し、光ラジカル重合開始剤が溶解するまで穏やかに混合させた後、孔径1μmのメンブランフィルターで濾過を行い、粗大粒子を除去することでインクジェットインク組成物を得た。
【0054】
[実施例2〜実施例16]
実施例1と同様に、表1記載の通りに磁性粉分散体2〜16を作成したのち、表2記載の通りにインク組成物を作成した。
【0055】
[比較例1〜比較例2]
実施例1と同様に、表1記載の通りに磁性粉分散体17〜18を作成したのち、表2記載の通りにインク組成物を作成した。
【0056】
(インク粘度)
各インク組成物について、E型粘度計を使用し25℃におけるインク粘度を測定した。
【0057】
(吐出性試験)
ザール社製のピエゾ方式ヘッドをインクジェット吐出装置に搭載し、ヘッド温度をヘッド対応温度範囲内で調整したときに、吐出つまりが発生することなく30秒間連続で吐出できるかについて試験を行った。このときの評価基準は以下の通りである。
○:吐出つまりが発生することなく30秒間連続吐出できる
×:30秒間連続吐出すると、吐出つまりが発生する
【0058】
(硬化性試験)
上記インクジェット吐出装置に上記ザール社製のピエゾ方式ヘッドを搭載し、インク組成物を膜厚10μmになるようにコート紙上に吐出した。吐出の直後、ハリソン東芝ライティング社製メタルハライドランプ、出力120W/cm、1Passで紫外線硬化させるときの最大コンベヤスピードを調査することで、硬化性の試験を行った。このときの評価基準は以下の通りであり、△以上を硬化性良好とする。
○:コンベヤスピードが20m/minより速くても硬化する
△:コンベヤスピードが5〜20m/minで硬化する
×:コンベヤスピードが5m/minでも硬化しない
【0059】
(画像濃度)
上記硬化性試験で作成した塗膜について、X−Rite社製528分光濃度計を用い、ステータスフィルターTで測色することで、画像濃度の試験を行った。このときの評価基準は以下の通りであり、△以上を画像濃度良好とする。
○:画像濃度が1.0以上
△:画像濃度が0.5以上1.0未満
×:画像濃度が0.5未満
【0060】
(MICR読み取り特性)
ザール社製のピエゾ方式ヘッドを搭載したインクジェットプリンターを用い、MICR文字の印字を100枚行った。印字は解像度720dpi×720dpi、8Pass条件で行い、紫外線ランプとしてインテグレーションテクノロジー社製メタルハライドランプ、出力100W/cmを使用した。
このうち100枚すべて印字できたものについて、印字物をMICR用読取機に通し誤読枚数を調査することで、MICR読み取り特性の試験を行った。このときの評価基準は以下の通りであり、△以上をMICR読み取り特性良好とする。
◎:誤読が起こらなかった
○:誤読枚数が5枚以下
△:誤読枚数が6〜10枚
×:誤読枚数が11枚以上
【0061】
実施例1〜16、および比較例1〜2で作成した各インク組成物についての評価結果を表3に示す。磁性粉体、重合性化合物および光ラジカル重合開始剤を含み、25℃における粘度が6〜100mPa・sであった実施例1〜16では、吐出性試験において吐出つまりなく連続吐出できることが確認された。また、これらのインク組成物の硬化性、印字物の画像濃度、MICR読み取り特性のいずれについても良好な結果を得ることができた。
【0062】
一方、インク粘度が100mPa・sより大きい比較例1では、吐出性試験において吐出つまりが発生した。これから、インクジェットインク組成物として使用するためには100mPa・s以下のインク粘度が必須条件であることが確認できる。
また、比較例2はカチオンタイプのインク組成物の例であり、吐出性試験の結果は良好であったものの、硬化性が不十分なレベルであり、本発明のインク組成物に対して生産性が劣ることが予想される。
【表1】

【表2】

【表3】

【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物は、例えば工業用途や産業用途でのインクジェット印刷に利用することができるが、印字後も優れた磁気特性を有しており、その磁気特性は検出器により容易に検出されることから、小切手やクレジットカードなどの偽造防止が必要となるような印刷物をインクジェット印刷方式で印刷する場合、特に好適に用いることができる。









【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも磁性粉体、重合性化合物および光ラジカル重合開始剤を含有し、25℃における粘度が6〜100mPa・sであることを特徴とする、活性エネルギー線硬化型黒色インクジェットインク組成物。
【請求項2】
前記磁性粉体の一次粒子の平均粒径が10〜50nmであることを特徴とする、請求項1記載の活性エネルギー線硬化型黒色インクジェットインク組成物。
【請求項3】
前記磁性粉体を、インク組成物全量に対し5〜15%含むことを特徴とする、請求項1〜2いずれかに記載の活性エネルギー線硬化型黒色インクジェットインク組成物。
【請求項4】
前記インク組成物により形成される印字物が、偽造防止用途に使用されることを特徴とする、請求項1〜3いずれかに記載の活性エネルギー線硬化型黒色インクジェットインク組成物。







【公開番号】特開2011−162661(P2011−162661A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27057(P2010−27057)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】