説明

活性エネルギー線硬化性コーティング用組成物

【課題】 耐指紋性に優れる活性エネルギー線硬化性コーティング用組成物を提供する。
【解決手段】 ラジカル重合性不飽和基を含有する(メタ)アクリル樹脂と、エポキシ化植物油(メタ)アクリレートとを含有する活性エネルギー線硬化性コーティング用組成物。前記エポキシ化植物油(メタ)アクリレートはエポキシ化大豆油(メタ)アクリレートであることが好ましく、ラジカル重合性不飽和基を含有する(メタ)アクリル樹脂はヒドロキシ基を有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は活性エネルギー線硬化性コーティング用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、各種物品の表面に塗工し、紫外線等の活性エネルギー線の照射により容易に硬化し、高硬度で耐擦傷性、透明性などに優れた硬化被膜(ハードコート被膜)を形成させることができることから、金属やガラス、樹脂等の基材表面を保護するコーティング剤等として広く用いられている。
【0003】
近年、自動車部品、OA機器、家電製品等のこれらの基材表面は、車内、オフィス内、室内等に浮遊するゴミが付着したり、食品、機器用オイル等に混合されている拭き取りが困難な油状物質が付着したり、使用中に人の手により指紋が付着して汚れるため、基材表面に汚れを付着しにくくし、更には、いったん付着した汚れを、表面を傷つけることなく容易に除去できるような耐傷性及び防汚性に(以下耐指紋性と称す)関する種々の工夫がなされている。
【0004】
耐指紋性に対する技術としては、例えばハードコート剤にフッ素系界面活性剤を配合し、得られる硬化膜を撥水化する技術(例えば特許文献1参照)や、長鎖アルキル基を有する重合性モノマーとポリフルオロアルキル基を有する重合性モノマーとの共重合体を使用する技術(例えば特許文献2,3参照)などフッ素基に由来する高い撥水性を利用して、ハードコート剤に指紋汚れ防止性を付与する技術がある。これらのフッ素基を使用した技術は、いずれも塗工後フッ素基が空気界面に偏在する性質を利用する。
しかしながら、近年各業界から環境保護を目的としたハロゲンフリー化が推進されつつあり、フッ素基を使用せずに耐指紋性を得る技術が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−110118号公報
【特許文献2】特開2010−24283号公報
【特許文献3】特開2001−353808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、耐指紋性に優れる活性エネルギー線硬化性コーティング用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、活性エネルギー線硬化性化合物としてエポキシ化植物油(メタ)アクリレートを添加することで、上記課題を解決した。
【0008】
即ち本発明は、ラジカル重合性不飽和基を含有する(メタ)アクリル樹脂と、エポキシ化植物油(メタ)アクリレートとを含有する活性エネルギー線硬化性コーティング用組成物を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、特に耐指紋性に優れる活性エネルギー線硬化性コーティング用組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(エポキシ化植物油(メタ)アクリレート)
本発明で使用するエポキシ化植物油(メタ)アクリレートは、不飽和植物油の二重結合に過酢酸、過安息香酸でエポキシ化したエポキシ化植物油のエポキシ基に、(メタ)アクリル酸を開環付加重合させた化合物である。
本発明において植物油とは、グリセリンと脂肪酸とのトリグリセライドにおいて、少なくとも1つの脂肪酸が炭素−炭素不飽和結合を少なくとも1つ有する脂肪酸であるトリグリセライドのことであり、その様な植物油として代表的な化合物は、アサ実油、アマニ油、エノ油、オイチシカ油、オリーブ油、カカオ油、カポック油、カヤ油、カラシ油、キョウニン油、キリ油、ククイ油、クルミ油、ケシ油、ゴマ油、サフラワー油、ダイコン種油、大豆油、大風子油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、ニガー油、ヌカ油、パーム油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、ヘントウ油、松種子油、綿実油、ヤシ油、落花生油、脱水ヒマシ油などが挙げられる。
エポキシ化植物油(メタ)アクリレートとして、具体的には、エポキシ化大豆油アクリレート(化薬サートマー社製CN111、UCB社製EBECRYL860、コグニス(cognis)社製フォトマー3005F )、エポキシ化アマニ油アクリレート(コグニス社製フォトマー3082)等が挙げられる。
【0011】
前記エポキシ化植物油(メタ)アクリレートは、本発明の活性エネルギー線硬化性コーティング用組成物の全固形分量に対して0.1〜20重量%添加することが好ましく、1〜10重量%の範囲が最も好ましい。ラジカル重合性樹脂組成物の組成にも因るが、0.1重量%未満では耐指紋性能力不足のおそれがあり、20重量%を超える量ではラジカル重合性樹脂組成物が可塑化され、塗膜硬度が低下するおそれがある。
【0012】
(ラジカル重合性不飽和基を含有する(メタ)アクリル樹脂)
本発明で使用するラジカル重合性不飽和基を含有する(メタ)アクリル樹脂は、特に限定はなく公知の方法で得た(メタ)アクリル樹脂を使用することができる。具体的には例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸エチルヘキシル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸、アクリル酸、アクリロニトリル、メタクリルニトリル等の( メタ) アクリル系モノマーを単独もしくは共重合して得た(メタ)アクリル樹脂、あるいは前記(メタ)アクリレート類を主成分とし、必要に応じてこれらと共重合可能な重合性二重結合を有するモノマー、例えばエチレン、ブタジエン、イソプレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、スチレン、α − メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、N − シクロヘキシルマレイミド、N − エチルマレイミド、N − フェニルマレイミド等が共重合成分として添加された(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。
前記(メタ)アクリル樹脂は前記(メタ)アクリル系モノマーあるいは共重合可能な重合性二重結合を有するモノマーを常法により重合することで得られる。
【0013】
前記(メタ)アクリル樹脂へ、重合性不飽和基を導入する方法としては、例えば、予め前記共重合成分としてアクリル酸やメタクリル酸等のカルボキシル基含有重合性単量体や、ジメチルアミノエチルメタクリレートやジメチルアミノプロピルアクリルアミド等のアミノ基含有重合性単量体を配合し共重合させ、カルボキシル基やアミノ基を有する前記共重合体を得、次に該カルボキシル基やアミノ基と、グリシジルメタクリレート等のグリシジル基及び重合性不飽和基を有する単量体を反応させる方法、
予め前記共重合成分として2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート等の水酸基含有単量体を配合し共重合させ、水酸基を有する前記共重合体を得、次に該水酸基と、イソシアネートエチルメタクリレートの等のイソシアネート基と重合性不飽和基を有する単量体を反応させる方法、
予め前記共重合成分としてグリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有重合性単量体を配合し共重合させ、グリシジル基を有する前記共重合体を得、次にグリシジル基と、アクリル酸やメタクリル酸のカルボキシル基含有重合性単量体を反応させる方法、
重合の際にチオグリコール酸を連鎖移動剤として使用して共重合体末端にカルボキシル基を導入し、該カルボキシル基に、グリシジルメタクリレートの等のグリシジル基と重合性不飽和基を有する単量体を反応させる方法、
重合開始剤として、アゾビスシアノペンタン酸の等のカルボキシル基含有アゾ開始剤を使用して共重合体にカルボキシル基を導入し、該カルボキシル基にグリシジルメタクリレートの等のグリシジル基と重合性不飽和基を有する単量体を反応させる方法等が挙げられる。
中でも、アクリル酸やメタクリル酸等のカルボキシル基含有単量体あるいはジメチルアミノエチルメタクリレートやジメチルアミノプロピルアクリルアミド等のアミノ基含有単量体を共重合しておき、そのカルボキシル基あるいはアミノ基とグリシジルメタクリレートの等のグリシジル基と重合性不飽和基を有する単量体を反応させる方法、あるいは、予め前記共重合成分としてグリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有重合性単量体を配合し共重合させ、グリシジル基を有する前記共重合体を得、次にグリシジル基と、アクリル酸やメタクリル酸のカルボキシル基含有重合性単量体を反応させる方法が最も簡便であり好ましい。
【0014】
前記ラジカル重合性不飽和基を含有する(メタ)アクリル樹脂は、本発明の活性エネルギー線硬化性コーティング用組成物の全固形分量の10〜99.9重量%含有することが好ましく、40〜99.9重量%の範囲が最も好ましい。10%未満では常温で液状であるエポキシ化植物油(メタ)アクリレートの添加により、表面にタック残存のおそれがある。
【0015】
(光重合開始剤)
本発明の活性エネルギー線硬化性コーティング用組成物を紫外線等で硬化させる場合には、光重合開始剤を使用してもよく好ましい。光重合開始剤の例としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン等のアセトフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン系化合物;2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド系化合物;ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル−4−フェニルベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;2,4−ジメチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;4,4′−ジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系化合物;ポリエーテル系マレイミドカルボン酸エステル化合物などが挙げられ、これらは併用して使用することもできる。光重合開始剤の使用量は、ラジカル重合性樹脂組成物の全固形分量に対して、0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜15重量%である。光増感剤としては、例えば、トリエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル等のアミン類が挙げられる。さらに、ベンジルスルホニウム塩やベンジルピリジニウム塩、アリールスルホニウム塩などのオニウム塩は、光カチオン開始剤として知られており、これらの開始剤を用いることも可能であり、上記の光重合開始剤と併用することもできる。
【0016】
((メタ)アクリレート)
また、紫外線硬化させる場合は、必要に応じて多官能(メタ)アクリレートを含有するのが好ましい。多官能(メタ)アクリレートは特に限定はなく公知のものを使用することができる。例えば、1,2−エタンジオールジアクリレート、1,2−プロパンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(2−アクリロイルオキシ)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート、ジ(ペンタエリスリトール)ペンタアクリレート、ジ(ペンタエリスリトール)ヘキサアクリレート等の1分子中に2個以上の重合性2重結合を有する多官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート等も多官能アクリレートとして例示することができる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上併用しても良い。
【0017】
また、前記多官能(メタ)アクリレートに併用して、単官能(メタ)アクリレートを併用することもできる。例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート(例えばダイセル化学工業(株)製商品名「プラクセル」)、フタル酸とプロピレングリコールとから得られるポリエステルジオールのモノ(メタ)アクリレート、コハク酸とプロピレングリコールとから得られるポリエステルジオールのモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、各種エポキシエステルの(メタ)アクリル酸付加物、等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、などのカルボキシル基含有ビニル単量体;ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレートなどのスルホン酸基含有ビニル単量体;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−3−クロロ−プロピルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルフェニルりん酸などの酸性りん酸エステル系ビニル単量体;N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどのメチロール基を有するビニル単量体等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0018】
前記(メタ)アクリレートを用いる場合の使用量としては、本発明の活性エネルギー線硬化性コーティング用組成物の全固形分量に対して1〜85重量%が好ましく、5〜80重量%がより好ましい。前記多官能アクリレートを前記範囲内で使用することによって、得られる塗膜の硬度等の塗膜物性を改善することができる。
【0019】
紫外線硬化させる際に使用する光は、例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、アルゴンレーザー、ヘリウム・カドミウムレーザー等を使用することができる。これらを用いて、約180〜400nmの波長の紫外線を、紫外線硬化性樹脂組成物の塗布面に照射することによって、塗膜を硬化させることが可能である。紫外線の照射量としては、使用される光重合開始剤の種類及び量によって適宜選択される。
【0020】
(イソシアネート化合物)
また、前記ラジカル重合性不飽和基を含有する(メタ)アクリル樹脂として水酸基を有する樹脂を選択し、あるいは、前記(メタ)アクリレートとして水酸基を有する(メタ)アクリレートを選択し、且つイソシアネート化合物を添加し、熱硬化させることで、ラジカル重合性不飽和基由来の架橋構造とは異なるウレタン架橋構造を導入することもでき好ましい。
前記ラジカル重合性不飽和基を含有し、且つ水酸基を有する(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、アクリル酸やメタクリル酸等のカルボキシル基含有単量体を共重合しておき、そのカルボキシル基とグリシジルメタクリレートの等のグリシジル基と重合性不飽和基を有する単量体を反応させる方法、あるいは、予め前記共重合成分としてグリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有重合性単量体を配合し共重合させ、グリシジル基を有する前記共重合体を得、次にグリシジル基と、アクリル酸やメタクリル酸のカルボキシル基含有重合性単量体を反応させる方法により得た(メタ)アクリル樹脂、あるいは、アクリル酸ヒドロキシエチル等の水酸基を有する(メタ)アクリレートを共重合させた(メタ)アクリル樹脂等が挙げられる。
【0021】
イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、メタ−キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチル−メタ−キシリレンジイソシアネート等のアラルキルジイソシアネート類を主原料とするポリイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−(又は、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソイシアネート、リジンイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4−ジイソシアネートシクロヘキサン、1,3−ビス(ジイソシアネートメチル)シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネートから得られる脂肪族ポリイソシアネートであるアロファネート型ポリイソシアネート、ビウレット型ポリイソシアネート、アダクト型ポリイソシアネート及びイソシアヌレート型ポリイソシアネートが挙げられ、いずれも好適に使用することができる。
【0022】
なお、前記したポリイソシアネートとしては、種々のブロック剤でブロック化された、いわゆるブロックポリイソシアネート化合物を使用することもできる。ブロック剤としては、例えばメタノール、エタノール、乳酸エステル等のアルコール類;フェノール、サリチル酸エステル等のフェノール性水酸基含有化合物類;ε−カプロラクタム、2−ピロリドン等のアマイド類;アセトンオキシム、メチルエチルケトオキシム等のオキシム類;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等の活性メチレン化合物類等を使用することができる。ブロックポリイソシアネート化合物を使用することにより、後述するラジカル重合性樹脂組成物層を形成する際の塗料に対して、アルコールのような水酸基含有の溶剤を使用することも可能になる。
【0023】
前述の通り熱硬化させる場合には、組成物中の重合性二重結合反応と、アルコール性水酸基とイソシアネートとのウレタン化反応との反応温度、反応時間等を考慮して、各々の触媒を選択することが好ましい。
また、熱硬化性樹脂を併用することも可能である。熱硬化性樹脂としては、ビニル系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、エポキシエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、石油樹脂、ケトン樹脂、シリコン樹脂あるいはこれらの変性樹脂等が挙げられる。
【0024】
また、塗工時の粘度を調整するために、有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤としては、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂肪族系又は脂環族系の炭化水素類;トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、n−プロパノコール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチレングルコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸n−ブチル、酢酸n−アミル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングルコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn−アミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のポリアルキレングリコールジアルキルエーテル類;1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド又はエチレンカーボネートを単独で使用又は2種以上を併用して使用することができる。
【0025】
(その他の成分)
本発明の活性エネルギー線硬化性コーティング用組成物は、無機あるいは金属化合物、有機微粒子等を添加することもできる。無機あるいは金属化合物としては、シリカ、シリガゲル、シリカゾル、シリコーン、モンモリロナイト、マイカ、アルミナ、酸化チタン、タルク、硫酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、炭酸マグネシウム、ガラスビーズ等があげられる。また該無機あるいは金属化合物を有機処理した、オルガノシリカゾル、アクリル変性シリカ、クロイサイト等を使用してもよい。有機微粒子としては、例えば、ポリエチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、フッ素樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂およびフェノール樹脂等の微粒子があげられる。これらは、単独で使用しても、複数を併用してもよい。
【0026】
その他必要に応じて、熱可塑性樹脂、無機顔料、有機顔料、体質顔料、粘土鉱物、ワックス、界面活性剤、安定剤、流動調整剤、染料、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、又は可塑剤等の種々の添加剤等を使用することもできる。
【0027】
本発明の活性エネルギー線硬化性コーティング用組成物は種々の形状にて使用することができる。具体的には、例えば、有機溶剤に溶解した溶液、有機溶剤に分散した分散体、水に分散した分散体、溶剤等を用いない溶液、粉体等が挙げられる。
【0028】
本発明の活性エネルギー線硬化性コーティング用組成物はこのままで、紫外線等の硬化性塗料として用いることができる。また、前記した有機顔料、無機顔料等の添加剤を加えてもよい。
【0029】
本発明の活性エネルギー線硬化性コーティング用組成物を用いて形成される塗膜の膜厚は特に制限はないが、一般的には1〜100μmであることが好ましい。
【0030】
(活性エネルギー線照射)
本発明の活性エネルギー線硬化性コーティング用組成物を基材上に塗布し、活性エネルギー線等で硬化させる。活性エネルギー線は、通常は可視光や紫外線を使用するのが好ましい。特に紫外線が好適である。紫外線を使用する場合には、前記活性エネルギー線硬化性コーティング用組成物は光重合開始剤を含むことが好ましい。
【0031】
紫外線源としては、太陽光線、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等が用いられる。また、熱を併用する場合の加熱源としては、熱風、近赤外線など公知の熱源が適用可能である。
この時の照射量としては、硬化性樹脂層が完全に硬化するような照射量であることが好ましく、具体的には250mJ/cm〜3000mJ/cmの範囲が好ましい。特に、加飾層との界面に移動したラジカル反応性希釈剤やラジカル重合性オリゴマーなどを充分に硬化させ、被転写基材との密着性を向上させるために、1000mJ/cm〜3000mJ/cmの範囲がより好ましい。
前記基材フィルムを剥離するタイミングは、前記活性エネルギー線を照射する前でも後でもよい。
また電子線などの強いエネルギー線を使用する場合には、光重合開始剤を使用しなくてもよい。
【0032】
前記基材としては、種々のものが使用できるが、例えば金属基材、無機質基材、プラスチック基材、紙、木質系基材等を使用することができる。基材の形状は特に限定はなく、シート状、3次元形状等の基材に適用できる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例により説明する。特に断わりのない限り「部」、「%」は重量基準である。
【0034】
(評価方法)
<密着性>
JIS K−5400の碁盤目セロテープ(セロテープは登録商標である)剥離試験により、密着性を評価した。素地としてPC/ABS樹脂を用いているので、2mm角、100マスで評価した。残存したマスが100個であるものを○、100マス残存しているが欠けがあるものが10個以下の場合を△、その他を×として判定した。
【0035】
<指紋視認性>
テフロンシート(テフロンは登録商標である)上にオレイン酸10μLを滴下し、3cm角にカットしたウレタンスポンジ(3M製スコッチブライト)で塗り広げながら拭き取った後、そのスポンジのオレイン酸が付着した面を被評価品表面に10秒間押し付け、オレイン酸を付着させた。
色差計を用い、オレイン酸付着前後のdL*を算出することにより、指紋が付着した際の視認性の代用特性値とし、dL*≦1.5を○、1.5<dL*≦3を△、dL*<3を×として評価した。
【0036】
<指紋拭き取り性>
指紋視認性の評価と同様にして、オレイン酸を付着させた後、脱脂綿で2往復(それぞれ新しい面を使用)拭き上げたものに対し、色差計を用い、オレイン酸付着前後のdL*から回復率を算出することにより、指紋拭き取り性の代用特性値とした。dL*≦80%を○、50%≦dL*<80%を△、dL*<50%を×として評価した。
【0037】
(ラジカル重合性不飽和基を含有する(メタ)アクリル樹脂の製造方法)
<参考例1>
温度計、攪拌機、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、酢酸ブチルの950部を仕込んで80℃に昇温し、同温度に達したところで、アクリル酸ブチルの970部、メタクリル酸30部、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)の7部からなる混合物を4時間かけて滴下し、滴下終了後90℃に昇温し、10時間保持して反応を続行した。
反応液の温度を50℃に下げ、t−ブチルピロカテコールの0.2部を酢酸ブチルの20部に溶解した溶液を加え、さらにグリシジルメタクリレートの20部、ジメチルアミノエタノール3部を加えた後に、80℃まで昇温し、同温度で10時間反応を行う事で、ラジカル重合性不飽和基を含有する(メタ)アクリル樹脂(A1)の溶液を得た。
【0038】
<実施例1>
参考例1で得た重合性不飽和基を含有する(メタ)アクリル樹脂(A1)の溶液の不揮発分に対して、5重量%のエポキシ化大豆油アクリレート(コグニス製フォトマー3005F)及び10重量%の光重合開始剤イルガキュア184(チバスペシャリティ製)を添加し、活性エネルギー線硬化性コーティング用組成物(B1)を調製した。
組成物(B1)を、PC/ABS立体成形物上に、乾燥膜厚が20μmになるようにスプレー塗装し、80℃、10分間乾燥させた後、総照射量1000mJ/cm(ピーク強度180mW/cm)の紫外線照射を行なった。得られたコーティング塗膜は指紋が見え難く、ふき取り易い性能を示した。結果を表1に示す。
【0039】
<実施例2>
実施例1で得た組成物(B1)を、バーコーター#40を用い、PC/ABS樹脂板状成型品に塗布し、80℃、10分間乾燥させた後、総照射量1000mJ/cm(ピーク強度180mW/cm)の紫外線照射を行なった。得られたコーティング塗膜は指紋が見え難く、ふき取り易い性能を示した。結果を表1に示す。
【0040】
<実施例3>
参考例1で得た重合性不飽和基を含有する(メタ)アクリル樹脂(A1)の溶液の不揮発分に対して、5重量%のエポキシ化大豆油アクリレート(コグニス製フォトマー3005F)及び10重量%の光重合開始剤イルガキュア184(チバスペシャリティ製)を添加した後、A1の水酸基に対し36%当量になるようにポリイソシアネートであるバーノックDN−981(DIC製)を添加し、活性エネルギー線硬化性コーティング用組成物(B2)を調製した。
組成物(B2)を、PC/ABS立体成形物上に、乾燥膜厚が20μmになるようにスプレー塗装し、80℃、10分間乾燥させた後、総照射量1000mJ/cm(ピーク強度180mW/cm)の紫外線照射を行なった。得られたコーティング塗膜は指紋が見え難く、ふき取り易い性能を示した。結果を表1に示す。
【0041】
<実施例4>
参考例1で得た重合性不飽和基を含有する(メタ)アクリル樹脂(A1)の溶液の不揮発分に対して、5重量%のエポキシ化アマニ油アクリレート(コグニス製フォトマー3082)及び10重量%の光重合開始剤イルガキュア184(チバスペシャリティ製)を添加した後、A1の水酸基に対し36%当量になるようにポリイソシアネートであるバーノックDN−981(DIC製)を添加し、活性エネルギー線硬化性コーティング用組成物(B3)を調製した。
組成物(B3)をPC/ABS立体成形物上に、乾燥膜厚が20μmになるようにスプレー塗装し、80℃、10分間乾燥させた後、総照射量1000mJ/cm(ピーク強度180mW/cm)の紫外線照射を行なった。得られたコーティング塗膜は指紋が見え難く、ふき取り易い性能を示した。結果を表1に示す。
【0042】
<比較例1>
参考例1で得た重合性不飽和基を含有する(メタ)アクリル樹脂(A1)の溶液の不揮発分に対して、10重量%の光重合開始剤イルガキュア184(チバスペシャリティ製)を添加し、活性エネルギー線硬化性コーティング用組成物(HB1)を調製した。
の塗料を調製した。
組成物(HB1)をPC/ABS立体成形物上に、乾燥膜厚が20μmになるようにスプレー塗装し、80℃、10分間乾燥させた後、総照射量1000mJ/cm(ピーク強度180mW/cm)の紫外線照射を行なった。得られたコーティング塗膜は指紋が見え易く、ふき取り難くかった。結果を表1に示す。
【0043】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル重合性不飽和基を含有する(メタ)アクリル樹脂と、エポキシ化植物油(メタ)アクリレートとを含有することを特徴とする、活性エネルギー線硬化性コーティング用組成物。
【請求項2】
前記エポキシ化植物油(メタ)アクリレートがエポキシ化大豆油(メタ)アクリレートである請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性コーティング用組成物。
【請求項3】
前記ラジカル重合性不飽和基を含有する(メタ)アクリル樹脂がヒドロキシ基を有する請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化性コーティング用組成物。

【公開番号】特開2011−231172(P2011−231172A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100825(P2010−100825)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】