説明

活性エネルギー線硬化性組成物、及び塗装物品

【課題】酸素雰囲気下の活性エネルギー線照射でも窒素雰囲気下の活性エネルギー線照射の場合と同等の硬度を有する硬化塗膜を得ることができ、さらに硬化塗膜が耐擦傷性に優れる、活性エネルギー線硬化性組成物を提供する。
【解決手段】ケイ素原子に直接に結合した有機基を有し、該ケイ素原子に直接に結合した有機基の少なくとも1つが、2級水酸基、ウレタン結合及びウレア結合よりなる群から選ばれる少なくとも1つと少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基との両者を有する有機基であるシルセスキオキサン化合物(A)及びイソソルバイドジ(メタ)アクリレート(B)を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化性組成物、及び塗装物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂等の合成樹脂は、耐衝撃性、透明性に優れ、軽量であり、加工が容易であることなどから、ガラスに代わる材料として、建物の採光材、車両の窓、ランプレンズ、計器カバー等に用いられている。しかしながら、合成樹脂は、ガラスと比較して耐擦傷性、耐薬品性、耐候性等の表面特性に劣ることから、合成樹脂の表面特性を改良することが行われている。合成樹脂の表面特性を改良する方法としてポリオルガノシロキサン系、メラミン系等の熱硬化性塗料組成物を塗装する方法及び多官能アクリレート系の活性エネルギー線硬化性組成物を塗装する方法が提案されている。
【0003】
これら方法に関連して、特許文献1及び2には、モノ又はポリペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート、1分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレート、及びポリ[(メタ)アクリロイルオキシアルキル](イソ)シアヌレートを特定の割合で配合して得られる塗料組成物に関する発明が開示されている。
【0004】
近年、合成樹脂の屋外での用途が広がるに従い、合成樹脂の表面特性のさらなる向上が要求されており、特に高い耐擦傷性が要求されている。しかし、特許文献1及び2に記載の発明は高い耐擦傷性の要求を満足するものではなかった。
【0005】
また、従来の活性エネルギー線により硬化する成分による組成物は、酸素雰囲気下で活性エネルギー線照射を行った場合、酸素による硬化阻害が起こるのが通常であったため、窒素雰囲気下で活性エネルギー線照射を行った場合に比べて、硬化性、特に硬化塗膜の硬度が低下するという問題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−230397号公報
【特許文献2】特開平6−128502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、酸素雰囲気下の活性エネルギー線照射でも窒素雰囲気下の活性エネルギー線照射の場合と同等の硬度を有する硬化塗膜を得ることができ、さらに硬化塗膜が耐擦傷性に優れる、活性エネルギー線硬化性組成物を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定のシルセスキオキサン化合物及び特定のラジカル重合性不飽和基含有化合物を含有する活性エネルギー線硬化性組成物を用いることにより、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、
1.ケイ素原子に直接に結合した有機基を有し、該ケイ素原子に直接に結合した有機基の少なくとも1つが、2級水酸基、ウレタン結合及びウレア結合よりなる群から選ばれる少なくとも1つと少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基との両者を有する有機基であるシルセスキオキサン化合物(A)及びイソソルバイドジ(メタ)アクリレート(B)を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物、
2.光重合開始剤(C)を含有する1項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物、
3.シリカ微粒子(d−1)と分子内に(メタ)アクリロイルオキシ基を有する加水分解性シラン(d−2)とを反応させて得られる反応性粒子(D)を含有する1又は2項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物、
4.反応性粒子(D)が、シリカ微粒子(d−1)と分子内に(メタ)アクリロイルオキシ基及びイソシアヌレート環構造を有する加水分解性シラン(d−2−3)とを反応させて得られるものである3項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物、
5.前記(A)成分、(B)成分及び(D)成分以外の重合性不飽和化合物(E)を含有する1ないし4のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物、
6.1〜5のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物を被塗物上に塗装して得られる塗装物品、
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、酸素雰囲気下の活性エネルギー線照射でも窒素雰囲気下の活性エネルギー線照射の場合と同等の硬度を有する硬化塗膜を得ることができ、さらに硬化塗膜が耐擦傷性に優れる、活性エネルギー線硬化性組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、ケイ素原子に直接に結合した有機基を有し、該ケイ素原子に直接に結合した有機基の少なくとも1つが、2級水酸基、ウレタン結合及びウレア結合よりなる群から選ばれる少なくとも1つと少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基との両者を有する有機基であるシルセスキオキサン化合物(A)[以下、「(A)成分」又は「(A)成分であるシルセスキオキサン化合物」と略すことがある。]、並びにイソソルバイドジ(メタ)アクリレート(B)[以下、「(B)成分」と略すことがある。]を含有する。
【0012】
(A)成分であるシルセスキオキサン化合物
「シルセスキオキサン化合物」とは、基本構成単位がT単位であるポリシロキサンである。
【0013】
本明細書において「シルセスキオキサン化合物」は、Si−OH基(ヒドロキシシリル基)の全てが加水分解縮合した構造のシルセスキオキサン化合物のみを意味するのではなく、Si−OH基が残存したラダー構造、不完全籠型構造、ランダム縮合体のシルセスキオキサン化合物をも含むことができる。
【0014】
(A)成分であるシルセスキオキサン化合物は、Si−OH基の全てが加水分解縮合した構造のシルセスキオキサン化合物の割合が、(A)成分であるシルセスキオキサン化合物中に80質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは100質量%であることが液安定性の点から好ましい。
【0015】
(A)成分であるシルセスキオキサン化合物は、ケイ素原子に直接に結合した有機基を有し、該ケイ素原子に直接に結合した有機基の少なくとも1つが、2級水酸基、ウレタン結合及びウレア結合よりなる群から選ばれる少なくとも1つと少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基との両者を有する有機基である。(A)成分であるシルセスキオキサン化合物は、該有機基を有することにより、前記イソソルバイドジ(メタ)アクリレート(B)及びさまざまな重合性不飽和化合物との相溶性に優れ、かつ光重合性開始剤の存在下での活性エネルギー線照射により硬化する。そのため、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物により得られる硬化塗膜は透明性及び耐擦傷性に優れる。(A)成分であるシルセスキオキサン化合物が前記イソソルバイドジ(メタ)アクリレート(B)やさまざまな重合性不飽和化合物との相溶性に優れるのは、(A)成分であるシルセスキオキサン化合物が2級水酸基、ウレタン結合及びウレア結合よりなる群から選ばれる少なくとも1つの極性を有する官能基又は結合を有するためと推測される。
【0016】
(A)成分であるシルセスキオキサン化合物としては、例えば、以下の(A1)、(A2)で表されるシルセスキオキサン化合物が挙げられる。
(A1):ケイ素原子に直接に結合した有機基を有するシルセスキオキサン化合物であって、前記ケイ素原子に直接に結合した有機基の少なくとも1つが、少なくとも1つの2級水酸基と少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基との両者を有する有機基であるシルセスキオキサン化合物[以下、「(A1)で表されるシルセスキオキサン化合物」と略すことがある。]。
(A2):ケイ素原子に直接に結合した有機基を有するシルセスキオキサン化合物であって、前記ケイ素原子に直接に結合した有機基の少なくとも1つが、少なくとも1つのウレタン結合及び/又はウレア結合と少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基との両者を有する有機基であるシルセスキオキサン化合物[以下、「(A2)で表されるシルセスキオキサン化合物」と略すことがある。]。
【0017】
(A)成分であるシルセスキオキサン化合物としては、(A2)で表されるシルセスキオキサン化合物が好ましい。(A2)で表されるシルセスキオキサン化合物は前記イソソルバイド(メタ)アクリレート(B)及びさまざまな重合性不飽和化合物との相溶性が特に優れることから、(A2)で表されるシルセスキオキサン化合物を用いた本発明の活性エネルギー線硬化性組成物により得られる硬化塗膜は透明性が特に優れる。
【0018】
(A2)で表されるシルセスキオキサン化合物としては、具体的には、下記(A21)〜(A23)で表されるシルセスキオキサン化合物が挙げられる。
(A21):ケイ素原子に直接に結合した有機基を有するシルセスキオキサン化合物であって、前記ケイ素原子に直接に結合した有機基の少なくとも1つが、少なくとも1つのウレタン結合と1つの(メタ)アクリロイルオキシ基との両者を有する有機基であるシルセスキオキサン化合物[以下、「(A21)で表されるシルセスキオキサン化合物」と略すことがある。]。
(A22):ケイ素原子に直接に結合した有機基を有するシルセスキオキサン化合物であって、前記ケイ素原子に直接に結合した有機基の少なくとも1つが、少なくとも1つのウレア結合と1つの(メタ)アクリロイルオキシ基との両者を有する有機基であるシルセスキオキサン化合物[以下、「(A22)で表されるシルセスキオキサン化合物」と略すことがある。]。
(A23):ケイ素原子に直接に結合した有機基を有するシルセスキオキサン化合物であって、前記ケイ素原子に直接に結合した有機基の少なくとも1つが、少なくとも1つのウレタン結合及び/又はウレア結合と2つ以上の(メタ)アクリロイルオキシ基との両者を有する有機基であるシルセスキオキサン化合物[以下、「(A23)で表されるシルセスキオキサン化合物」と略すことがある。]。
【0019】
続いて、前記(A1)で表されるシルセスキオキサン化合物、(A21)で表されるシルセスキオキサン化合物、(A22)で表されるシルセスキオキサン化合物及び(A23)で表されるシルセスキオキサン化合物について詳細に説明する。
【0020】
まず、(A1)で表されるシルセスキオキサン化合物について説明する。前記(A1)で表されるシルセスキオキサン化合物は、ケイ素原子に直接に結合した有機基を有する。そして、該ケイ素原子に直接に結合した有機基の少なくとも1つは、少なくとも1つの2級水酸基と少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基との両者を有する有機基である。
【0021】
少なくとも1つの2級水酸基と少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基との両者を有する有機基としては、例えば、下記一般式(A1−I)で表される有機基及び下記一般式(A1−II)で表される有機基が挙げられる。
【0022】
【化1】

【0023】
[式(A1−I)中、Rは水素原子又はメチル基を示す。Rは炭素数1〜10の2価の炭化水素基を示す。式(A1−II)中、R及びRは前記と同じである。]。
【0024】
前記Rとしては、炭素数1〜10の2価の炭化水素基であれば特に限定されるものではない。具体的には例えば、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,4−ブチレン基、へキシレン基、デカニレン基等のアルキレン基;シクロヘキシレン基等のシクロアルキレン基;フェニレン基、キシリレン基等のアリーレン基等が挙げられる。なかでも、炭素数1〜6(より好ましくは炭素数1〜3)の2価の炭化水素基、特にエチレン基、1,3−プロピレン基であることが、耐擦傷性及び極性の高い重合性不飽和化合物との相溶性がより優れる点から好ましい。
【0025】
前記一般式(A1−I)で表される有機基としては、耐擦傷性、極性の高い重合性不飽和化合物との相溶性及び光重合開始剤存在下での活性エネルギー線硬化性がより優れる点から、Rが水素原子であり、かつRが1,3−プロピレン基である有機基が好ましい。
【0026】
前記一般式(A1−II)で表される有機基としては、耐擦傷性、極性の高い重合性不飽和化合物との相溶性及び光重合開始剤存在下での活性エネルギー線硬化性がより優れる点から、Rが水素原子であり、かつRがエチレン基である有機基が好ましい。
【0027】
次に、(A21)で表されるシルセスキオキサン化合物について説明する。前記(A21)で表されるシルセスキオキサン化合物は、ケイ素原子に直接に結合した有機基を有する。そして、該ケイ素原子に直接に結合した有機基の少なくとも1つは、少なくとも1つのウレタン結合と1つの(メタ)アクリロイルオキシ基との両者を有する有機基である。
【0028】
少なくとも1つのウレタン結合と1つの(メタ)アクリロイルオキシ基との両者を有する有機基としては、例えば、下記一般式(A21−I)で表される有機基等が挙げられる。
【0029】
【化2】

【0030】
[式(A21−I)中、Rは水素原子又はメチル基を示す。Rは炭素数1〜10の2価の炭化水素基を示す。Rは炭素数1〜10の2価の炭化水素基を示す。X
【0031】
【化3】

【0032】
(式中、Rは前記と同じである。mは0〜9の整数を示す。)、
【0033】
【化4】

【0034】
(式中、Rは置換又は非置換の炭素数1〜6の1価の炭化水素基を示す。)又は
【0035】
【化5】

【0036】
(式中、Rは前記と同じである。)を示す。]。
【0037】
ここで、(A21)で表されるシルセスキオキサン化合物としては、上記一般式(A21−I)で表される有機基のうち、一種類を有していても、複数種類の有機基を有していてもよい。
【0038】
いいかえると、(A21)で表されるシルセスキオキサン化合物としては、例えば、前記少なくとも1つのウレタン結合と1つの(メタ)アクリロイルオキシ基との両者を有する有機基が、下記一般式(A21−II)〜(A21−IV)で表される有機基からなる群より選択される少なくとも一種であるシルセスキオキサン化合物が挙げられる。
【0039】
【化6】

【0040】
[式(A21−II)中、Rは水素原子又はメチル基を示す。Rは炭素数1〜10の2価の炭化水素基を示す。Rは炭素数1〜10の2価の炭化水素基を示す。mは0〜9の整数を示す。]
【0041】
【化7】

【0042】
[式(A21−III)中、R、R、R及びRは前記と同じである。]
【0043】
【化8】

【0044】
[式(A21−IV)中、R、R、R及びRは前記と同じである。]。
【0045】
前記Rとしては、炭素数1〜10の2価の炭化水素基であれば特に限定されるものではない。具体的には例えば、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,4−ブチレン基、へキシレン基、デカニレン基等のアルキレン基;シクロヘキシレン基等のシクロアルキレン基;フェニレン基、キシリレン基等のアリーレン基等が挙げられる。なかでも、炭素数1〜6の2価の炭化水素基、特にエチレン基、1,2−プロピレン基、1,4−ブチレン基であることが、耐擦傷性及び極性の高い重合性不飽和化合物との相溶性がより優れる点から好ましい。
【0046】
前記Rとしては、炭素数1〜10の2価の炭化水素基であれば特に限定されるものではない。具体的には例えば、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,4−ブチレン基、へキシレン基、デカニレン基等のアルキレン基;シクロヘキシレン基等のシクロアルキレン基;フェニレン基、キシリレン基等のアリーレン基等が挙げられる。なかでも、炭素数1〜6(より好ましくは炭素数1〜3)の2価の炭化水素基、特にエチレン基、1,3−プロピレン基であることが、耐擦傷性及び極性の高い重合性不飽和化合物との相溶性がより優れる点から好ましい。
【0047】
前記mとしては、0〜9の整数であれば特に限定されるものではない。mとしては、好ましくは0〜5の整数、さらに好ましくは0〜3の整数、特に好ましくは0又は1である。
【0048】
前記Rとしては、置換又は非置換の炭素数1〜6の1価の炭化水素基であれば特に限定されるものではない。具体的には例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基等の直鎖状又は分岐状のアルキル基といった非環状脂肪族1価炭化水素基又は環状脂肪族1価炭化水素基;トリフルオロメチル基、3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル基等の含フッ素アルキル基等が挙げられる。特に、極性の高い重合性不飽和化合物との相溶性がより優れる点からメチル基が好ましい。
【0049】
前記一般式(A21−II)で表される有機基としては、耐擦傷性、極性の高い重合性不飽和化合物との相溶性及び光重合開始剤存在下での活性エネルギー線硬化性がより優れる点から、Rが水素原子であり、Rがエチレン基又は1,4−ブチレン基であり、Rがエチレン基又は1,3−プロピレン基であり、かつmが0である有機基が好ましい。
【0050】
前記一般式(A21−III)で表される有機基としては、耐擦傷性、極性の高い重合性不飽和化合物との相溶性及び光重合開始剤存在下での活性エネルギー線硬化性がより優れる点から、Rが水素原子であり、Rがエチレン基であり、Rがエチレン基又は1,3−プロピレン基であり、かつRがメチル基である有機基が好ましい。
【0051】
前記一般式(A21−IV)で表される有機基としては、耐擦傷性、極性の高い重合性不飽和化合物との相溶性及び光重合開始剤存在下での活性エネルギー線硬化性がより優れる点から、Rが水素原子であり、Rがエチレン基であり、Rがエチレン基又は1,3−プロピレン基であり、かつRがメチル基である有機基が好ましい。
【0052】
次に、(A22)で表されるシルセスキオキサン化合物について説明する。前記(A22)で表されるシルセスキオキサン化合物は、ケイ素原子に直接に結合した有機基を有する。そして、該ケイ素原子に直接に結合した有機基の少なくとも1つは、少なくとも1つのウレア結合と1つの(メタ)アクリロイルオキシ基との両者を有する有機基である。
【0053】
少なくとも1つのウレア結合と1つの(メタ)アクリロイルオキシ基との両者を有する有機基としては、例えば、下記一般式(A22−I)
【0054】
【化9】

【0055】
[式(A22−I)中、Rは水素原子又はメチル基を示す。Xはウレア結合を有する2価の有機基を示す。]で表される有機基が挙げられる。
【0056】
前記一般式(A22−I)で表される有機基としては、具体的には例えば、下記一般式(A22−II)で表される有機基が挙げられる。
【0057】
【化10】

【0058】
{式(A22−II)中、Rは前記と同じである。Rは炭素数1〜10の2価の炭化水素基又は下記一般式(A22−III)
【0059】
【化11】

【0060】
[式(A22−III)中、R10は炭素数2〜4の2価の炭化水素基を示す。R11はジイソシアネート残基を示す。]で表される2価の基を示し、Rは炭素数1〜10の2価の炭化水素基を示す。}。
【0061】
前記Rとしては、炭素数1〜10の2価の炭化水素基又は前記一般式(A22−III)で表される2価の基であれば特に限定されるものではない。炭素数1〜10の2価の炭化水素基としては、具体的には例えば、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,4−ブチレン基、へキシレン基、デカニレン基等のアルキレン基;シクロヘキシレン基等のシクロアルキレン基;フェニレン基、キシリレン基等のアリーレン基等が挙げられる。なかでも、炭素数1〜6(より好ましくは炭素数1〜3)の2価の炭化水素基、特にエチレン基、1,3−プロピレン基であることが、耐擦傷性及び極性の高い重合性不飽和化合物との相溶性がより優れる点から好ましい。
【0062】
前記Rとしては、炭素数1〜10の2価の炭化水素基であれば特に限定されるものではない。具体的には例えば、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,4−ブチレン基、へキシレン基、デカニレン基等のアルキレン基;シクロヘキシレン基等のシクロアルキレン基;フェニレン基、キシリレン基等のアリーレン基等が挙げられる。なかでも、炭素数1〜6(より好ましくは炭素数1〜3)の2価の炭化水素基、特にエチレン基、1,3−プロピレン基であることが、耐擦傷性及び極性の高い重合性不飽和化合物との相溶性がより優れる点から好ましい。
【0063】
前記R10としては、炭素数2〜4の2価の炭化水素基であれば特に限定されるものではない。具体的には例えば、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,4−ブチレン基等が挙げられる。
【0064】
前記R11は、ジイソシアネート残基を示す。ジイソシアネ−ト残基とは、ジイソシアネ−ト化合物から2つのイソシアネ−ト基(NCO)を除いた残りの部分である。ジイソシアネート化合物としては、具体的には例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、1−クロロ−2,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアンート、ジフェニルメタン−4,4´−ジイソシアネート、3,3´−ジメチル−4,4´−ビフェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;エタンジイソシアンート、プロパンジイソシアネート、ブタンジイソシアネート、ペンタンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート、ヘプタンジイソシアネート、オクタンジイソシアネート、ノナンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物等が挙げられる。なかでも、脂肪族ジイソシアネート化合物、特にイソホロンジイソシアネートが耐候性に優れる点から好ましい。また、ジイソシアネート化合物としては、耐擦傷性、光重合開始剤存在下での活性エネルギー線硬化性がより優れる点から分子量300以下のジイソシアネート化合物が好ましい。
【0065】
前記一般式(A22−II)で表される有機基としては、耐擦傷性、極性の高い重合性不飽和化合物との相溶性及び光重合開始剤存在下での活性エネルギー線硬化性がより優れる点から、Rが水素原子であり、Rがエチレン基であり、Rがエチレン基若しくは1,3−プロピレン基である有機基が好ましい。また、Rが水素原子であり、Rが前記一般式(A22−III)で表される2価の基であってかつR10がエチレン基でありR11がイソホロンジイソシアネート残基である2価の基であり、Rがエチレン基若しくは1,3−プロピレン基である有機基が好ましい。
【0066】
次に、(A23)で表されるシルセスキオキサン化合物について説明する。前記(A23)で表されるシルセスキオキサン化合物は、ケイ素原子に直接に結合した有機基を有する。そして、該ケイ素原子に直接に結合した有機基の少なくとも1つは、少なくとも1つのウレタン結合及び/又はウレア結合と2つ以上の(メタ)アクリロイルオキシ基との両者を有する有機基である。
【0067】
少なくとも1つのウレタン結合及び/又はウレア結合と2つ以上の(メタ)アクリロイルオキシ基との両者を有する有機基としては、例えば、下記一般式(A23−I)
【0068】
【化12】

【0069】
[式(A23−I)中、R12は水素原子又はメチル基を示す。nは2〜5の整数を示す。Xはウレタン結合及び/又はウレア結合を有する(n+1)価の有機基を示す。]で表される有機基が挙げられる。
【0070】
前記一般式(A23−I)で表される有機基としては、具体的には例えば、下記一般式(A23−II)〜一般式(A23−V)で表される有機基が挙げられる。
【0071】
【化13】

【0072】
{式(A23−II)中、R12は前記と同じであり、R12はそれぞれ同一でも又は異なっていてもよい。R13は炭素数1〜10の2価の炭化水素基を示す。R14は炭素数1〜10の2価の炭化水素基又は下記一般式(A23−VI)
【0073】
【化14】

【0074】
[式(A23−VI)中、R16は炭素数2〜4の2価の炭化水素基を示し、R17はジイソシアネート残基を示す。]で表される2価の基を示す。式(A23−III)中、R12は前記と同じであり、R12はそれぞれ同一でも又は異なっていてもよい。R13は前記と同じである。R14は前記と同じである。式(A23−IV)中、R12は前記と同じであり、R12はそれぞれ同一でも又は異なっていてもよい。R13は前記と同じである。R14は前記と同じであり、R14はそれぞれ同一でも又は異なっていてもよい。式(A23−V)中、pは1〜3の整数を示す。R12は前記と同じであり、R12はそれぞれ同一でも又は異なっていてもよい。R13は前記と同じである。R14は前記と同じであり、R14はそれぞれ同一でも又は異なっていてもよい。R15は炭素数1〜10の(p+1)価の炭化水素基を示す。}。
【0075】
前記R13は、炭素数1〜10の2価の炭化水素基であれば特に限定されるものではない。具体的には例えば、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,4−ブチレン基、へキシレン基、デカニレン基等のアルキレン基;シクロヘキシレン基等のシクロアルキレン基;フェニレン基、キシリレン基等のアリーレン基等が挙げられる。なかでも、炭素数1〜6(より好ましくは炭素数1〜3)の2価の炭化水素基、特にエチレン基、1,3−プロピレン基であることが、耐擦傷性及び極性の高い重合性不飽和化合物との相溶性がより優れる点から好ましい。
【0076】
前記R14は、炭素数1〜10の2価の炭化水素基又は前記一般式(A23−VI)で表される2価の基であれば特に限定されるものではない。炭素数1〜10の2価の炭化水素基としては、具体的には例えば、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,4−ブチレン基、へキシレン基、デカニレン基等のアルキレン基;シクロヘキシレン基等のシクロアルキレン基;フェニレン基、キシリレン基等のアリーレン基等が挙げられる。なかでも、炭素数1〜6(より好ましくは炭素数1〜3)の2価の炭化水素基、特にエチレン基、1,3−プロピレン基であることが、耐擦傷性及び極性の高い重合性不飽和化合物との相溶性がより優れる点から好ましい。
【0077】
前記R16としては、炭素数2〜4の2価の炭化水素基であれば特に限定されるものではない。具体的には例えば、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,4−ブチレン基等が挙げられる。
【0078】
前記R17は、ジイソシアネート残基を示す。ジイソシアネ−ト残基とは、ジイソシアネ−ト化合物から2つのイソシアネ−ト基(NCO)を除いた残りの部分である。ジイソシアネート化合物としては、具体的には例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、1−クロロ−2,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4´−ジイソシアネート、3,3´−ジメチル−4,4´−ビフェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;エタンジイソシアネート、プロパンジイソシアネート、ブタンジイソシアネート、ペンタンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート、ヘプタンジイソシアネート、オクタンジイソシアネート、ノナンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物等が挙げられる。なかでも、脂肪族ジイソシアネート化合物、特にイソホロンジイソシアネートが耐候性に優れる点から好ましい。また、ジイソシアネート化合物としては、耐擦傷性、活性エネルギー線硬化性がより優れる点から分子量300以下のジイソシアネート化合物が好ましい。
【0079】
前記R15は、炭素数1〜10の(p+1)価の炭化水素基であれば特に限定されるものではない。R15における(p+1)価の炭化水素基は、ヒドロキシモノカルボン酸残基である。ヒドロキシモノカルボン酸残基とは、ヒドロキシモノカルボン酸からヒドロキシル基とカルボキシル基を除いた残りの部分である。具体的には例えば、2価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,4−ブチレン基、へキシレン基、デカニレン基等のアルキレン基;シクロヘキシレン基等のシクロアルキレン基;フェニレン基、キシリレン基等のアリーレン基等が挙げられる。ヒドロキシモノカルボン酸としては、具体的には例えば、ヒドロキシピバリン酸、グリコール酸、乳酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシイソ酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸、3−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、2−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、o−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸等が挙げられる。なかでも、耐擦傷性、活性エネルギー線硬化性がより優れる点からジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸が好ましい。
【0080】
前記一般式(A23−II)で表される有機基としては、耐擦傷性、極性の高い重合性不飽和化合物との相溶性及び光重合開始剤存在下での活性エネルギー線硬化性がより優れる点から、R12が水素原子であり、R13がエチレン基若しくは1,3−プロピレン基であり、R14がエチレン基である有機基が好ましい。また、R12が水素原子であり、R13がエチレン基若しくは1,3−プロピレン基であり、R14が前記一般式(A23−VI)で表される2価の基であってかつR16がエチレン基でありR17がイソホロンジイソシアネート残基である2価の基である有機基が好ましい。
【0081】
前記一般式(A23−III)で表される有機基としては、耐擦傷性、極性の高い重合性不飽和化合物との相溶性及び光重合開始剤存在下での活性エネルギー線硬化性がより優れる点から、R12が水素原子であり、R13がエチレン基若しくは1,3−プロピレン基であり、R14がエチレン基である有機基が好ましい。また、R12が水素原子であり、R13がエチレン基若しくは1,3−プロピレン基であり、R14が前記一般式(A23−VI)で表される2価の基であってかつR16がエチレン基でありR17がイソホロンジイソシアネート残基である2価の基である有機基が好ましい。
【0082】
前記一般式(A23−IV)で表される有機基としては、耐擦傷性、極性の高い重合性不飽和化合物との相溶性及び光重合開始剤存在下での活性エネルギー線硬化性がより優れる点から、R12が水素原子であり、R13がエチレン基若しくは1,3−プロピレン基であり、R14がエチレン基である有機基が好ましい。また、R12が水素原子であり、R13がエチレン基若しくは1,3−プロピレン基であり、R14が前記一般式(A23−VI)で表される2価の基であってかつR16がエチレン基でありR17がイソホロンジイソシアネート残基である2価の基である有機基が好ましい。
【0083】
前記一般式(A23−V)で表される有機基としては、耐擦傷性、極性の高い重合性不飽和化合物との相溶性及び光重合開始剤存在下での活性エネルギー線硬化性がより優れる点から、pが2であり、R12が水素原子であり、R13がエチレン基若しくは1,3−プロピレン基であり、R14がエチレン基であり、R15がジメチロールプロピオン酸残基である有機基が好ましい。また、pが2であり、R12が水素原子であり、R13がエチレン基若しくは1,3−プロピレン基であり、R14が前記一般式(A23−VI)で表される2価の基であってかつR16がエチレン基でありR17がイソホロンジイソシアネート残基である2価の基であり、R15がジメチロールプロピオン酸残基である有機基が好ましい。
【0084】
前記(A)成分であるシルセスキオキサン化合物は、単一の組成の化合物であってもよく、又は組成の異なる化合物の混合物であってもよい。
【0085】
前記(A)成分であるシルセスキオキサン化合物の重量平均分子量は、特に限定されるものではない。好ましくは重量平均分子量が1,000〜100,000、より好ましくは重量平均分子量が1,000〜10,000である。これら範囲は、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の粘度及び塗装性の点で意義がある。
【0086】
本明細書において、重量平均分子量は、光散乱法により測定した重量平均分子量である。光散乱法による重量平均分子量の測定には、Zetasizer Nano Nano−ZS(Malvern Instruments Ltd社製)を用いた。測定に用いた試料は、プロピレングリコールモノメチルエーテルに(A)成分であるシルセスキオキサン化合物を溶解させ、濃度を0.5〜5.0質量%に調整した濃度の異なる10種の試料である。この10種の試料の光散乱強度を測定することにより、重量平均分子量を求めた。
【0087】
(A)成分であるシルセスキオキサン化合物の製造方法
(A)成分であるシルセスキオキサン化合物は、種々の方法により製造されえる。その一例を以下に示す。
【0088】
製造方法a
製造方法aとしては、ケイ素原子に直接に結合した有機基であり、かつ2級水酸基、ウレタン結合及びウレア結合よりなる群から選ばれる少なくとも1つと少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基との両者を有する有機基を有する加水分解性シランを含有する出発物質を用いた製造方法が挙げられる。
【0089】
製造方法b
製造方法bとしては、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基等の官能基を有する加水分解性シランを用いて、官能基を有するシルセスキオキサン化合物を製造する工程、該工程により得られたシルセスキオキサン化合物と、(メタ)アクリロイル基及び官能基を有する化合物とを反応させ、所望の有機基を有するシルセスキオキサン化合物を製造する工程を有する製造方法が挙げられる。
【0090】
また製造方法bの他の一例としては、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基等の官能基を有する加水分解性シランを用いて、官能基を有するシルセスキオキサン化合物を製造する工程、該工程により得られたシルセスキオキサン化合物と、官能基を有する化合物とを反応させ、新たな官能基を生成する工程、該工程により新たに生成した官能基と、(メタ)アクリロイル基及び官能基を有する化合物の官能基とを反応させ、所望の有機基を有するシルセスキオキサン化合物を製造する工程を有する製造方法が挙げられる。
【0091】
これら製造方法について、具体例を示して詳細に説明する。
【0092】
まず、(A)成分であるシルセスキオキサン化合物であって、ケイ素原子に直接に結合した有機基の少なくとも1つが下記一般式(A1−I)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物[以下、「一般式(A1−I)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物」と略すことがある。]の製造方法を例示する。
【0093】
【化15】

【0094】
[式(A1−I)中、R及びRは前記と同じである。]。
【0095】
以下の製造方法は、前記製造方法bに該当する。この製造方法では、出発物質に下記一般式(A1−I−1)
【0096】
【化16】

【0097】
[式(A1−I−1)中、Rは前記と同じである。Yは塩素又は炭素数1〜6のアルコキシ基であり、Yは同一でも又は異なっていてもよい。]で表される加水分解性シランを用いて、触媒の存在下で加水分解縮合を行うことにより下記一般式(A1−I−2)
【0098】
【化17】

【0099】
[式(A1−I−2)中、Rは前記と同じである。]で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物を製造する。
【0100】
前記一般式(A1−I−1)のYとしては、具体的には、塩素、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0101】
前記一般式(A1−I−1)で表される加水分解性シランとしては、具体的には例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0102】
前記一般式(A1−I−2)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物を得るためには、具体的には、
[1]前記一般式(A1−I−1)で表される加水分解性シランを出発物質に用いて触媒の存在下で加水分解縮合する、又は、
[2]前記一般式(A1−I−1)で表される加水分解性シラン、及びエポキシ基を有する加水分解性シラン以外の加水分解性シランを出発物質に用いて触媒の存在下で加水分解縮合する、
ことが挙げられる。
【0103】
前記エポキシ基を有する加水分解性シラン以外の加水分解性シランとしては、前記一般式(A1−I−1)で表される加水分解性シランとともに加水分解縮合することによりシルセスキオキサン化合物を製造できるものであれば特に限定されるものではない。具体的には例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン;3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等の3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリアルコキシシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルトリアルコキシシラン等が挙げられる。
【0104】
前記触媒としては、塩基性触媒が好適に用いられる。塩基性触媒としては、具体的には例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド等の水酸化アンモニウム塩、テトラブチルアンモニウムフルオリド等のフッ化アンモニウム塩などが挙げられる。
【0105】
前記触媒の使用量は特に限定されるものではないが、多すぎるとコスト高、除去が困難等の問題があり、一方、少なすぎると反応が遅くなってしまう。そのため、触媒の使用量は、好ましくは加水分解性シラン1モルに対して0.0001〜1.0モル、より好ましくは0.0005〜0.1モルの範囲である。
【0106】
加水分解縮合する場合(前記[1]又は[2]の場合)は水を使用する。加水分解性シランと水との量比は、特に限定されるものでない。水の使用量は、加水分解性シラン1モルに対し、好ましくは水0.1〜100モル、さらに好ましくは0.5〜3モルの割合である。水の量が少なすぎると、反応が遅くなり、目的とするシルセスキオキサンの収率が低くなるおそれがあり、水の量が多すぎると高分子量化し、所望とする構造の生成物が減少するおそれがある。また、使用する水は塩基性触媒を水溶液として用いる場合はその水で代用してもよいし、別途水を加えてもよい。
【0107】
前記加水分解縮合において、有機溶媒は使用してもよく、又は使用しなくてもよい。有機溶媒を用いることは、ゲル化を防止する点及び製造時の粘度を調節できる点から好ましい。有機溶媒としては、極性有機溶媒、非極性有機溶媒を単独又は混合物として用いることができる。
【0108】
極性有機溶媒としてはメタノール、エタノール、2−プロパノール等の低級アルコール類、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン等のエーテル類が用いられるが、特にアセトン、テトラヒドロフランは沸点が低く系が均一になり反応性が向上することから好ましい。非極性有機溶媒としては、炭化水素系溶媒が好ましく、トルエン、キシレン等の水よりも沸点が高い有機溶媒が好ましく、特にトルエン等の水と共沸する有機溶媒は系内から水を効率よく除去できるため好ましい。特に、極性有機溶媒と非極性有機溶媒とを混合することで、前述したそれぞれの利点が得られるため混合溶媒として用いることが好ましい。
【0109】
加水分解縮合時の反応温度としては0〜200℃、好ましくは10〜200℃、更に好ましくは、10〜120℃である。当該反応は、通常、1〜12時間程度で終了する。
【0110】
加水分解縮合反応では、加水分解と共に縮合反応が進行し、加水分解性シランの加水分解性基[具体的には例えば、前記一般式(A1−I−1)中のY]の大部分、好ましくは100%がヒドロキシル基(OH基)に加水分解され、更にそのOH基の大部分、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは100%を縮合させることが液安定性の点から好ましい。
【0111】
前記一般式(A1−I−2)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物の具体例としては、Glycidyl POSS cage mixture(商品名、Hybrid Plastics社)が挙げられる。
【0112】
続いて、上記で製造された前記一般式(A1−I−2)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物に、下記一般式(A1−I−3)
【0113】
【化18】

【0114】
[式(A1−I−3)中、Rは前記と同じである。]で表される化合物を反応させ、前記一般式(A1−I)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物を製造する。
【0115】
前記一般式(A1−I−3)で表される化合物としては、アクリル酸及びメタクリル酸が挙げられる。
【0116】
前記反応は、エポキシ基とカルボキシル基とを反応させる常法に従って行うことができる。反応温度は、例えば、0〜200℃、好ましくは20〜200℃、更に好ましくは、20〜120℃である。当該反応は、通常、10〜24時間程度で終了する。
【0117】
前記反応における前記一般式(A1−I−2)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物と前記一般式(A1−I−3)で表される化合物との使用割合は、シルセスキオキサン化合物が有する一般式(A1−I−2)で表される有機基1モルに対し一般式(A1−I−3)で表される化合物を、通常、0.80〜1.20モル程度、好ましくは0.90〜1.10モル程度とすればよい。
【0118】
前記反応では適宜触媒を使用しても良い。触媒としては、具体的には例えば、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン等の3級アミン;テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド等の4級アンモニウム塩;ジエチルアミン等の酢酸塩、ギ酸塩等の2級アミン塩;水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物;酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属塩;イミダゾ−ル類;ジアザビシクロウンデセン等の環状含窒素化合物、トリフェニルフォスフィン、トリブチルフォスフィンなどのリン化合物等が挙げられる。触媒の使用量は、特に限定されるものではないが、反応原料に対して、0.01〜5質量%である。
【0119】
前記反応では適宜溶媒を使用しても良い。溶媒は特に限定されるものではない。具体的には例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、エチルイソアミルケトン、ジイソブチルケトン、メチルへキシルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のグリコールエーテル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類等が挙げられる。
【0120】
以上の製造方法により一般式(A1−I)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物が製造される。
【0121】
上記各反応により得られる目的とする化合物は、通常の分離手段により反応系内より分離され、さらに精製することができる。この分離及び精製手段としては、例えば、蒸留法、溶媒抽出法、希釈法、再結晶法、カラムクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を用いることができる。
【0122】
ここで、前記加水分解縮合において100%縮合しない場合には、この製造方法により得られる生成物には、Si−OH基(ヒドロキシシリル基)の全てが加水分解縮合した構造のシルセスキオキサン化合物以外に、Si−OH基が残存したラダー構造、不完全籠型構造及び/又はランダム縮合体のシルセスキオキサン化合物が含まれる場合があるが、この製造方法により得られる一般式(A1−I)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物は、それらラダー構造、不完全籠型構造及び/又はランダム縮合体を含んでいてもよい。なお、この製造方法により得られる一般式(A1−I)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物は、Si−OH基の全てが加水分解縮合した構造のシルセスキオキサン化合物の割合が、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であることが液安定性の点から好ましい。
【0123】
次に、(A)成分であるシルセスキオキサン化合物であって、ケイ素原子に直接に結合した有機基の少なくとも1つが下記一般式(A21−II)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物[以下、「一般式(A21−II)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物」と略すことがある。]の製造方法を例示する。
【0124】
【化19】

【0125】
[式(A21−II)中、R、R、R及びmは前記と同じである。]。
【0126】
以下の製造方法は、前記製造方法aに該当する。この製造方法では、出発物質に下記一般式(A21−II−1)
【0127】
【化20】

【0128】
[式(A21−II−1)中、R、R、R、m及びYは前記と同じである。Yは同一でも又は異なっていてもよい。]で表される加水分解性シラン及び必要に応じて前記一般式(A21−II−1)で表される加水分解性シラン以外の加水分解性シランを用いて、触媒の存在下で加水分解縮合を行って前記一般式(A21−II)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物を製造する。
【0129】
前記一般式(A21−II−1)で表される加水分解性シラン以外の加水分解性シランとしては、前記一般式(A21−II−1)で表される加水分解性シランとともに加水分解縮合することによりシルセスキオキサン化合物を製造できるものであれば特に限定されるものではない。具体的には例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン;3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等の3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリアルコキシシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルトリアルコキシシラン等が挙げられる。
【0130】
前記一般式(A21−II−1)で表される加水分解性シランは、例えば、下記一般式(A21−II−2)で表される加水分解性シランと、下記一般式(A21−II−3)で表される化合物とを反応させることにより得ることができる。
【0131】
【化21】

【0132】
[式(A21−II−2)中、R及びYは前記と同じである。Yは同一でも又は異なっていてもよい。]。
【0133】
【化22】

【0134】
[式(A21−II−3)中、R、R及びmは前記と同じである。]。
【0135】
前記一般式(A21−II−2)で表される化合物としては、例えば、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0136】
前記一般式(A21−II−3)で表される化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0137】
前記一般式(A21−II−2)で表される加水分解性シランと前記一般式(A21−II−3)で表される化合物との反応は、イソシアネート基と水酸基とを反応させる常法に従って行うことができる。
【0138】
前記反応における一般式(A21−II−2)で表される加水分解性シランと前記一般式(A21−II−3)で表される化合物との使用割合は、通常前者1モルに対し後者を0.90〜1.10モル程度、好ましくは0.95〜1.05モル程度とすればよい。
【0139】
反応温度は、例えば、0〜200℃、好ましくは20〜200℃、更に好ましくは、20〜120℃である。また、この反応は圧力によらず実施できるが、0.02〜0.2MPa、特に0.08〜0.15MPaの圧力範囲が好ましい。当該反応は、通常、2〜10時間程度で終了する。
【0140】
前記反応では適宜触媒を使用しても良い。触媒としては、トリエチルアミン等の第三級アミン、ジブチル錫ジラウレート等の有機金属化合物等が挙げられる。
【0141】
前記反応では適宜溶媒を使用しても良い。溶媒としては、具体的には例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、エチルイソアミルケトン、ジイソブチルケトン、メチルへキシルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のグリコールエーテル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類等が挙げられる。
【0142】
この製造方法において、前記一般式(A21−II)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物を得るためには、具体的には、
[3]前記一般式(A21−II−1)で表される加水分解性シランを出発物質に用いて触媒の存在下で加水分解縮合する、又は、
[4]前記一般式(A21−II−1)で表される加水分解性シラン及び前記一般式(A21−II−1)で表される加水分解性シラン以外の加水分解性シランを出発物質に用いて触媒の存在下で加水分解縮合する、
ことが挙げられる。
【0143】
この加水分解縮合において、触媒、触媒の使用量、水の使用量、有機溶媒を使用する場合の有機溶媒の種類、加水分解縮合時の反応温度及び反応時間は、前述の一般式(A1−I−2)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物を製造する際の各種条件と同じ条件が適用できる。
【0144】
加水分解縮合反応では、加水分解と共に縮合反応が進行し、加水分解性シランの加水分解性基[具体的には例えば、前記一般式(A21−II−1)中のY]の大部分、好ましくは100%がヒドロキシル基(OH基)に加水分解され、更にそのOH基の大部分、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは100%を縮合させることが液安定性の点から好ましい。
【0145】
以上の製造方法により一般式(A21−II)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物が製造される。
【0146】
上記各反応により得られる目的とする化合物は、通常の分離手段により反応系内より分離され、さらに精製することができる。この分離及び精製手段としては、例えば、蒸留法、溶媒抽出法、希釈法、再結晶法、カラムクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を用いることができる。
【0147】
ここで、前記加水分解縮合において100%縮合しない場合には、この製造方法により得られる生成物には、Si−OH基(ヒドロキシシリル基)の全てが加水分解縮合した構造のシルセスキオキサン化合物以外に、Si−OH基が残存したラダー構造、不完全籠型構造及び/又はランダム縮合体のシルセスキオキサン化合物が含まれる場合があるが、この製造方法により得られる一般式(A21−II)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物は、それらラダー構造、不完全籠型構造及び/又はランダム縮合体を含んでいてもよい。なお、この製造方法により得られる一般式(A21−II)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物は、Si−OH基の全てが加水分解縮合した構造のシルセスキオキサン化合物の割合が、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であることが液安定性の点から好ましい。
【0148】
次に、(A)成分であるシルセスキオキサン化合物であって、ケイ素原子に直接に結合した有機基の少なくとも1つが下記一般式(A22−II)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物[以下、「一般式(A22−II)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物」と略すことがある。]の製造方法を例示する。
【0149】
【化23】

【0150】
[式(A22−II)中、R、R及びRは前記と同じである。]。
【0151】
以下の製造方法は、前記製造方法bに該当する。この製造方法では、出発物質に下記一般式(A22−II−1)
【0152】
【化24】

【0153】
[式(A22−II−1)中、R及びYは前記と同じである。Yは同一でも又は異なっていてもよい。]で表される加水分解性シランを用いて、触媒の存在下で加水分解縮合を行うことにより下記一般式(A22−II−2)
【0154】
【化25】

【0155】
[式(A22−II−2)中、Rは前記と同じである。]で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物を製造する。
【0156】
前記一般式(A22−II−1)で表される加水分解性シランとしては、具体的には例えば、アミノメチルトリメトキシシラン、アミノメチルトリエトキシシラン、2−アミノエチルトリメトキシシラン、2−アミノエチルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0157】
前記一般式(A22−II−2)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物を得るためには、具体的には、
[5]前記一般式(A22−II−1)で表される加水分解性シランを出発物質に用いて触媒の存在下で加水分解縮合する、又は、
[6]前記一般式(A22−II−1)で表される加水分解性シラン、及びアミノ基を有する加水分解性シラン以外の加水分解性シランを出発物質に用いて触媒の存在下で加水分解縮合する、
ことが挙げられる。
【0158】
前記アミノ基を有する加水分解性シラン以外の加水分解性シランとしては、前記アミノ基を有する加水分解性シランとともに加水分解縮合することによりシルセスキオキサン化合物を製造できるものであれば特に限定されるものではない。具体的には例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン;3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等の3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリアルコキシシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルトリアルコキシシラン等が挙げられる。
【0159】
この加水分解縮合において、触媒、触媒の使用量、水の使用量、有機溶媒を使用する場合の有機溶媒の種類、加水分解縮合時の反応温度及び反応時間は、前述の一般式(A1−I−2)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物を製造する際の各種条件と同じ条件が適用できる。
【0160】
加水分解縮合反応では、加水分解と共に縮合反応が進行し、加水分解性シランの加水分解性基[具体的には例えば、前記一般式(A22−II−1)中のY]の大部分、好ましくは100%がヒドロキシル基(OH基)に加水分解され、更にそのOH基の大部分、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは100%を縮合させることが液安定性の点から好ましい。
【0161】
続いて、上記で製造された前記一般式(A22−II−2)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物のアミノ基に、下記一般式(A22−II−3)で表される化合物のイソシアネート基を反応させ、前記一般式(A22−II)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物を製造する。
【0162】
【化26】

【0163】
[式(A22−II−3)中、R及びRは前記と同じである。]。
【0164】
前記一般式(A22−II−3)で表される化合物としては、具体的には例えば、イソシアネートメチル(メタ)アクリレート、2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、3−イソシアネートプロピル(メタ)アクリレート、イソシアネートオクチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとジイソシアネート化合物との付加物が挙げられる。ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとしては、具体的には例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ジイソシアネート化合物としては、具体的には例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、1−クロロ−2,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4´−ジイソシアネート、3,3´−ジメチル−4,4´−ビフェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;エタンジイソシアネート、プロパンジイソシアネート、ブタンジイソシアネート、ペンタンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート、ヘプタンジイソシアネート、オクタンジイソシアネート、ノナンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0165】
前記反応は、通常、前記一般式(A22−II−2)で表される有機基1モルに対して、前記一般式(A22−II−3)で表される化合物を1モル以上用いて行われる。
【0166】
前記反応は、アミノ基とイソシアネート基を反応させる常法に従って行うことができる。反応温度は、例えば、−78℃〜200℃、好ましくは−78℃〜100℃、更に好ましくは、−10℃〜40℃である。また、この反応は圧力によらず実施できるが、0.02〜0.2MPa、特に0.08〜0.15MPaの圧力範囲が好ましい。当該反応は非常に早く、通常、滴下が終了すると反応は終了する。
【0167】
前記反応では適宜溶媒を使用しても良い。溶媒としては、具体的には例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のグリコールエーテル類;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類等が挙げられる。
【0168】
以上の製造方法により一般式(A22−II)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物が製造される。
【0169】
上記各反応により得られる目的とする化合物は、通常の分離手段により反応系内より分離され、さらに精製することができる。この分離及び精製手段としては、例えば、蒸留法、溶媒抽出法、希釈法、再結晶法、カラムクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を用いることができる。
【0170】
ここで、前記加水分解縮合において100%縮合しない場合には、この製造方法により得られる生成物には、Si−OH基(ヒドロキシシリル基)の全てが加水分解縮合した構造のシルセスキオキサン化合物以外に、Si−OH基が残存したラダー構造、不完全籠型構造及び/又はランダム縮合体のシルセスキオキサン化合物が含まれる場合があるが、この製造方法により得られる一般式(A22−II)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物は、それらラダー構造、不完全籠型構造及び/又はランダム縮合体を含んでいてもよい。なお、この製造方法により得られる一般式(A22−II)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物は、Si−OH基の全てが加水分解縮合した構造のシルセスキオキサン化合物の割合が、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であることが液安定性の点から好ましい。
【0171】
次に、(A)成分であるシルセスキオキサン化合物であって、ケイ素原子に直接に結合した有機基の少なくとも1つが下記一般式(A23−II)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物[以下、「一般式(A23−II)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物」と略すことがある。]の製造方法を例示する。
【0172】
【化27】

【0173】
[式(A23−II)中、R12、R13及びR14は前記と同じである。]。
【0174】
以下の製造方法は、前記製造方法bに該当する。この製造方法では、出発物質に下記一般式(A23−II−1)
【0175】
【化28】

【0176】
[式(A23−II−1)中、R13及びYは前記と同じである。Yは同一でも又は異なっていてもよい。]で表される加水分解性シラン及び必要に応じて前記一般式(A23−II−1)で表される加水分解性シラン以外の加水分解性シランを用いて、触媒の存在下で加水分解縮合を行って下記一般式(A22−II−2)
【0177】
【化29】

【0178】
[式(A23−II−2)中、R13は前記と同じである。]で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物を製造する。
【0179】
前記一般式(A23−II−1)で表される加水分解性シランとしては、具体的には例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0180】
前記一般式(A23−II−2)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物を得るためには、具体的には、
[7]前記一般式(A23−II−1)で表される加水分解性シランを出発物質に用いて触媒の存在下で加水分解縮合する、又は、
[8]前記一般式(A23−II−1)で表される加水分解性シラン、及びエポキシ基を有する加水分解性シラン以外の加水分解性シランを出発物質に用いて触媒の存在下で加水分解縮合する、
ことが挙げられる。
【0181】
前記エポキシ基を有する加水分解性シラン以外の加水分解性シランとしては、前記一般式(A23−II−1)で表される加水分解性シランとともに加水分解縮合することによりシルセスキオキサン化合物を製造できるものであれば特に限定されるものではない。具体的には例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン;3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等の3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリアルコキシシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルトリアルコキシシラン等が挙げられる。
【0182】
この加水分解縮合において、触媒、触媒の使用量、水の使用量、有機溶媒を使用する場合の有機溶媒の種類、加水分解縮合時の反応温度及び反応時間は、前述の一般式(A1−I−2)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物を製造する際の各種条件と同じ条件が適用できる。
【0183】
加水分解縮合反応では、加水分解と共に縮合反応が進行し、加水分解性シランの加水分解性基[具体的には例えば、前記一般式(A23−II−1)中のY]の大部分、好ましくは100%がヒドロキシル基(OH基)に加水分解され、更にそのOH基の大部分、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは100%を縮合させることが液安定性の点から好ましい。
【0184】
前記一般式(A23−II−2)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物の具体例としては、Glycidyl POSS cage mixture(商品名、Hybrid Plastics社)が挙げられる。
【0185】
続いて、上記で製造された前記一般式(A23−II−2)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物に、下記一般式(A23−II−3)
【0186】
【化30】

【0187】
[式(A23−II−3)中、R12は前記と同じである。]で表される化合物を反応させ、下記一般式(A23−II−4)
【0188】
【化31】

【0189】
[式(A23−II−4)中、R12及びR13は前記と同じである。]で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物を製造する。
【0190】
前記一般式(A23−II−3)で表される化合物としては、アクリル酸及びメタクリル酸が挙げられる。
【0191】
前記反応は、エポキシ基とカルボキシル基とを反応させる常法に従って行うことができる。この反応において、反応温度、使用割合、反応時間、触媒及び溶媒等の各種反応条件は、前述の前記一般式(A1−I−2)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物に、前記一般式(A1−I−3)で表される化合物を反応させる際の各種反応条件と同じ条件が適用できる。
【0192】
続いて、上記で製造された前記(A23−II−4)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物の2級水酸基に、下記一般式(A23−II−5)で表される化合物のイソシアネート基を反応させる。
【0193】
【化32】

【0194】
[式(A23−II−5)中、R12及びR14は前記と同じである。]。
【0195】
前記反応は、水酸基とイソシアネート基を反応させる常法に従って行うことができる。
反応温度としては例えば、0〜200℃、好ましくは10〜200℃、更に好ましくは、10〜120℃である。当該反応は、通常、2〜10時間程度で終了する。
【0196】
上記反応における前記一般式(A23−II−4)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物と前記一般式(A23−II−5)で表される化合物との使用割合は、シルセスキオキサン化合物が有する一般式(A23−II−4)で表される有機基1モルに対し一般式(A23−II−5)で表される化合物を、通常、0.90〜1.10モル程度、好ましくは0.95〜1.05モル程度とすればよい。
【0197】
前記反応では適宜触媒を使用しても良い。触媒としては、トリエチルアミン等の第三級アミン、ジブチル錫ジラウレート等の有機金属化合物等が挙げられる。
【0198】
以上の製造方法により一般式(A23−II)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物が製造される。
【0199】
上記各反応により得られる目的とする化合物は、通常の分離手段により反応系内より分離され、さらに精製することができる。この分離及び精製手段としては、例えば、蒸留法、溶媒抽出法、希釈法、再結晶法、カラムクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を用いることができる。
【0200】
ここで、加水分解縮合において100%縮合しない場合には、この製造方法により得られる生成物には、Si−OH基(ヒドロキシシリル基)の全てが加水分解縮合した構造のシルセスキオキサン化合物以外に、Si−OH基が残存したラダー構造、不完全籠型構造及び/又はランダム縮合体のシルセスキオキサン化合物が含まれる場合があるが、この製造方法により得られる一般式(A23−II)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物は、それらラダー構造、不完全籠型構造及び/又はランダム縮合体を含んでいてもよい。なお、この製造方法により得られる一般式(A23−II)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物は、Si−OH基の全てが加水分解縮合した構造のシルセスキオキサン化合物の割合が、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であることが液安定性の点から好ましい。
【0201】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物における(A)成分であるシルセスキオキサン化合物の配合割合は特に限定されるものではない。得られる硬化塗膜の耐擦傷性、被塗物への付着性及び耐侯性の点から、好ましくは、活性エネルギー線硬化性組成物の不揮発分100質量部に対して、4.5〜95質量部であり、より好ましくは10〜85質量部であり、特に好ましくは15〜50質量部である。
【0202】
イソソルバイドジ(メタ)アクリレート(B)
本発明で用いるイソソルバイドジ(メタ)アクリレート(B)[以下、単に「化合物(B)」と略すことがある。]は、通常、下記一般式
【0203】
【化33】

【0204】
(上記式中、Rは(メタ)アクリロイル基を表わす。)で示されるものであり、特に限定されないが、イソソルバイドから以下のような(メタ)アクリレート化反応を用いて製造することができる。イソソルバイドは公知の製造方法で製造することができる。即ち、各種脱水触媒、特に強酸触媒の作用でソルビトールを脱水反応することにより生成することができる。上記触媒の例としては、例えば硫酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、塩酸、燐酸などが挙げられる。これらの脱水反応は、一般的に水、その他トルエンやキシレンのような有機溶媒中において効率的に行われる。(メタ)アクリレート化反応としては、(メタ)アクリル酸ハライドや(メタ)アクリル酸無水物を使用して水酸基をエステル化する方法、MMA等の(メタ)アクリル酸の低級アルコールのエステルを使用するエステル交換反応、DCC(N,N´−ジシクロヘキシルカルボジイミド)、WSCD(水溶性カルボジイミド)などのカルボジイミド系脱水縮合剤を使用して(メタ)アクリル酸と脱水縮合させる方法、若しくは酸触媒を使用して脱水縮合させる方法等である。なお、必要に応じて、製造時や製品保管中に重合が進行しないよう公知の重合禁止剤を使用してもよい。
【0205】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物における(B)成分の配合割合は特に限定されるものではない。得られる硬化塗膜の硬度、耐擦傷性の点から、好ましくは、活性エネルギー線硬化性組成物の不揮発分100質量部に対して、4.5〜95質量部であり、より好ましくは10〜85質量部であり、特に好ましくは10〜50質量部である。
【0206】
光重合開始剤(C)
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物はさらに光重合開始剤(C)を含有していてもよい。光重合開始剤(C)としては、活性エネルギー線を吸収してラジカルを発生する開始剤であれば特に限定されることなく使用できる。
【0207】
前記光重合開始剤(C)としては、例えばベンジル、ジアセチル等のα−ジケトン類;ベンゾイン等のアシロイン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のアシロインエーテル類;チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、チオキサントン−4−スルホン酸等のチオキサントン類;ベンゾフェノン、4,4´−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4´−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;ミヒラーケトン類;アセトフェノン、2−(4−トルエンスルホニルオキシ)−2−フェニルアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、α,α´−ジメトキシアセトキシベンゾフェノン、2,2´−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、p−メトキシアセトフェノン、2−メチル〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、α−イソヒドロキシイソブチルフェノン、α,α´−ジクロル−4−フェノキシアセトフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン等のアセトフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(アシル)フォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド類;アントラキノン、1,4−ナフトキノン等のキノン類;フェナシルクロライド、トリハロメチルフェニルスルホン、トリス(トリハロメチル)−s−トリアジン等のハロゲン化合物;ジ−t−ブチルパーオキサイド等の過酸化物等が挙げられる。これらは1種又は2種以上の混合物として使用できる。
【0208】
前記光重合開始剤(C)の市販品としては、例えば、イルガキュア(IRGACURE)−184、イルガキュア−261、イルガキュア−500、イルガキュア−651、イルガキュア−819、イルガキュア−907、イルガキュア−CGI−1700(チバ スペシャルティ ケミカルズ社製、商品名、英語表記 IRGACURE)、ダロキュア(Darocur)−1173、ダロキュア−1116、ダロキュア−2959、ダロキュア−1664、ダロキュア−4043(メルクジャパン社製、商品名、英語表記Darocur)、カヤキュア(KAYACURE)−MBP、カヤキュア−DETX−S、カヤキュア−DMBI、カヤキュア−EPA、カヤキュア−OA(日本化薬社製、商品名英語表記KAYACURE)、ビキュア(VICURE)−10、ビキュア−55〔ストウファー社(STAUFFER Co., LTD.)製、商品名〕、トリゴナル(TRIGONAL)P1〔アクゾ社(AKZO Co., LTD.)製、商品名〕、サンドレイ(SANDORAY)1000〔サンドズ社(SANDOZ Co., LTD.)製、商品名〕、ディープ(DEAP)〔アプジョン社(APJOHN Co., LTD.)製、商品名〕、カンタキュア(QUANTACURE)−PDO、カンタキュア−ITX、カンタキュア−EPD〔ウォードブレキンソプ社(WARD BLEKINSOP Co., LTD.)製、商品名〕等を挙げることができる。
【0209】
前記光重合開始剤(C)としては、光硬化性の点からチオキサントン類、アセトフェノン類及びアシルフォスフィンオキシド類の1種又は2種以上の混合物であることが好ましく、なかでもアセトフェノン類とアシルフォスフィンオキシド類との混合物であることが特に好適である。
【0210】
光重合開始剤(C)の使用量は、特に限定されるものではないが、活性エネルギー線硬化性組成物の不揮発分100質量部に対して、0.5〜10質量部が好ましく、さらに好ましくは1〜5質量部の範囲である。この範囲の下限値は、活性エネルギー線硬化性向上の点で意義があり、上限値はコスト及び深部硬化性の点で意義がある。
【0211】
反応性粒子(D)
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物はさらに、シリカ微粒子(d−1)と、分子内に(メタ)アクリロイルオキシ基を有する加水分解性シラン(d−2)とを反応させて得られる反応性粒子(D)を含有することができる。
【0212】
シリカ微粒子(d−1)としては、コロイダルシリカ微粒子、粉末状微粒子シリカ等が挙げられる。
【0213】
コロイダルシリカ微粒子は、シリカの超微粒子を分散媒に分散させたものである。分散媒としては、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、イソブタノール、n−ブタノール等のアルコール系溶剤;エチレングリコール等の多価アルコール系溶剤;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコール誘導体;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール等のケトン系溶剤;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等のモノマー化合物がある。なかでも、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等が製造の容易さの点から好ましい。
【0214】
コロイダルシリカ微粒子としては、メタノールシリカゾル、IPA−ST、MEK−ST、NBA−ST、XBA−ST、DMAC−ST、PGM−ST、ST−UP、ST−OUP、ST−20、ST−40、ST−C、ST−N、ST−O、ST−50、ST−OL(いずれも日産化学工業社製)等が挙げられる。
【0215】
粉末状微粒子シリカとしては、アエロジル130、アエロジル300、アエロジル380、アエロジルTT600、アエロジルOX50(いずれも日本アエロジル社製)、シルデックスH31、H32、H51、H52、H121、H122(いずれも旭硝子社製)、E220A、E220(いずれも日本シリカ工業社製)、SYLYSIA470(富士シリシア化学社製)等が挙げられる。
【0216】
シリカ微粒子(d−1)の平均一次粒子径は、1〜200nmが好ましく、5〜80nmがより好ましい。これら範囲の下限値は、化合物(d−2)と反応させる際にゲル化を抑制する点で意義がある。これら範囲の上限値は、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物により得られる硬化塗膜の透明性の点で意義がある。
【0217】
本発明における平均一次粒子径は、動的光散乱法によって測定される体積基準粒度分布のメジアン径(d50)であって、例えば日機装社製のナノトラック粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
【0218】
分子内に(メタ)アクリロイルオキシ基を有する加水分解性シラン(d−2)[以下、「化合物(d−2)」と略すことがある。]は、加水分解性シリル基を有する。該加水分解性シリル基とは、シラノール基又は加水分解によってシラノール基を生成する基である。シラノール基を生成する基としては、ケイ素原子にアルコキシ基、アリールオキシ基、アセトキシ基、ハロゲン原子等が結合した基が挙げられる。ここでアルコキシ基としては炭素数1〜8のアルコキシ基が好ましく、アリールオキシ基としては、炭素数6〜18のアリールオキシ基が好ましい。ハロゲン原子としては、塩素が挙げられる。
【0219】
化合物(d−2)は、分子内に(メタ)アクリロイルオキシ基及び加水分解性シリル基を有する化合物であれば特に限定されない。
【0220】
化合物(d−2)としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリアルコキシシラン又は(メタ)アクリロイルオキシアルキルジアルコキシシラン(d−2−1)が使用でき、該(d−2−1)としては例えば、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、2−メタクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、2−アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、2−メタクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、2−アクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等から選択される少なくとも1種の化合物が挙げられる。
【0221】
また化合物(d−2)としては、例えば、分子内に(メタ)アクリロイルオキシ基とウレタン結合との両者を有する加水分解性シラン(d−2−2)が使用できる。
【0222】
分子内に(メタ)アクリロイルオキシ基とウレタン結合との両者を有する加水分解性シラン(d−2−2)は、例えばイソシアネート基を有する加水分解性シランと水酸基含有重合性不飽和化合物とを反応させることにより得ることができる。
【0223】
イソシアネート基を有する加水分解性シランとしては、例えば、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0224】
水酸基含有重合性不飽和化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0225】
前記イソシアネート基を有する加水分解性シランと水酸基含有重合性不飽和化合物との反応は、イソシアネート基と水酸基とを反応させる常法に従って行うことができる。これらの使用割合は、通常前者1モルに対し後者を0.90〜1.10モル程度、好ましくは0.95〜1.05モル程度とすればよい。反応温度は、例えば、0〜200℃、好ましくは20〜200℃、更に好ましくは、20〜120℃である。また、この反応は圧力によらず実施できるが、0.02〜0.2MPa、特に0.08〜0.15MPaの圧力範囲が好ましい。当該反応は、通常、2〜10時間程度で終了する。
【0226】
前記反応では適宜触媒を使用しても良い。触媒としては、トリエチルアミン等の第三級アミン、ジブチル錫ジラウレート等の有機金属化合物等が挙げられる。
【0227】
前記反応では適宜溶媒を使用しても良い。溶媒としては、具体的には例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、エチルイソアミルケトン、ジイソブチルケトン、メチルへキシルケトン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、プロピオン酸メチル等のエステル系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のグリコールエーテル系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0228】
化合物(d−2)としては、さらに例えば、分子内に(メタ)アクリロイルオキシ基とイソシアヌレート環構造との両者を有する加水分解性シラン(d−2−3)が使用できる。
【0229】
分子内に(メタ)アクリロイルオキシ基とイソシアヌレート環構造との両者を有する加水分解性シラン(d−2−3)は、例えば、ビス(2−アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス(2−アクリロイルオキシプロピル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート等の分子内に水酸基と(メタ)アクリロイルオキシ基とイソシアヌレート環構造とを有する化合物に、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基を有する加水分解性シランを反応させることにより得ることができる。上記の反応は、前述の通りイソシアネート基と水酸基とを反応させる常法に従って行うことができる。
【0230】
また(d−2−3)は、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート環付加物中のイソシアネート基に、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性不飽和化合物を反応させて分子内にイソシアネート基と(メタ)アクリロイルオキシ基とイソシアヌレート環構造とを有する化合物を得た後、このイソアネート基に3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基を有する加水分解性シランを反応させることにより得ることもできる。
【0231】
上記の反応は、アミノ基とイソシアネート基とを反応させる常法に従って行うことができる。反応温度は、例えば、−78℃〜200℃、好ましくは−78℃〜100℃、更に好ましくは、−10℃〜40℃である。また、この反応は圧力によらず実施できるが、0.02〜0.2MPa、特に0.08〜0.15MPaの圧力範囲が好ましい。またこの反応では適宜溶媒を使用しても良い。溶媒としては、具体的には例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、プロピオン酸メチル等のエステル系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のグリコールエーテル系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0232】
化合物(d−2)は、上記で例示された化合物を単独で又は2種以上を組合せて用いてもよい。光重合開始剤存在下での活性エネルギー線硬化性の点から、化合物(d−2−1)及び/又は化合物(d−2−2)と、化合物(d−2−3)とを併用することが好ましく、化合物(d−2−1)と化合物(d−2−3)とを併用することがより好ましい。化合物(d−2−1)及び/又は化合物(d−2−2)と化合物(d−2−3)とを併用する際の配合割合は、化合物(d−2−1)及び化合物(d−2−2)の合計量/化合物(d−2−3)=10/90〜90/10(質量比)であることが好ましく、20/80〜50/50(質量比)であることがより好ましい。
【0233】
上記化合物(d−2)に加えて、反応性粒子(D)を得る際に、必要に応じて炭素数1以上のアルキル基を有するアルコキシシランを化合物(d−2)とともにシリカ微粒子(d−1)と反応させても良い。炭素数1以上のアルキル基を有するアルコキシシランを反応させることで、得られる反応性粒子(D)を用いて得られる塗膜の耐水性を向上させる場合がある。かかる炭素数1以上のアルキル基を有するアルコキシシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン等が挙げられ、これら例示した化合物中のメトキシ基をエトキシ基に置換した化合物(例えばメチルトリエトキシシラン等)も挙げられる。
【0234】
反応性粒子(D)は、シリカ微粒子(d−1)と化合物(d−2)とを反応させて得られる。シリカ微粒子(d−1)と化合物(d−2)とを反応させる方法としては、特に限定されない。例えば、[i]水を含む有機溶剤の存在下にシリカ微粒子(d−1)と化合物(d−2)を混合し、加水分解縮合を行う方法、[ii]水を含む有機溶剤の存在下で化合物(d−2)を加水分解した後、化合物(d−2)の加水分解物とシリカ微粒子(d−1)とを縮合させる方法、[iii]シリカ微粒子(d−1)と化合物(d−2)とを、水、有機溶剤及び重合性不飽和化合物等のその他の成分の存在下で混合し、加水分解縮合を一度に行う方法が挙げられる。ここで、これら製造方法において使用する水は、原材料に含まれる水、例えば、コロイダルシリカ微粒子の分散媒である水であってもよい。
【0235】
反応性粒子(D)を製造する方法についてより具体的に説明する。反応性粒子(D)は、例えば、シリカ微粒子(d−1)であるコロイダルシリカ微粒子と、化合物(d−2)と、任意で低級アルコールと、任意で重合性不飽和化合物との存在下で、コロイダルシリカ微粒子中の分散媒、及び低級アルコール[化合物(d−2)を加水分解して生じた低級アルコールを含む。]を常圧又は減圧下で低級アルコールよりも高沸点の溶剤とともに共沸留出させ、分散媒を該溶剤に置換した後、加熱下で脱水縮合反応させることにより製造することができる。
【0236】
この製造方法においては、シリカ微粒子(d−1)であるコロイダルシリカ微粒子と、化合物(d−2)と、任意で低級アルコールと、任意で重合性不飽和化合物との混合物に必要により加水分解触媒を加え、常温又は加熱下で攪拌する等の常法によって、化合物(d−2)の加水分解を行う。続いて、コロイダルシリカ微粒子中の分散媒、及び低級アルコールを常圧又は減圧下で低級アルコールよりも高沸点の溶剤とともに共沸留出させ、分散媒を該溶剤に置換した後、60〜150℃、好ましくは80〜130℃の温度で、通常不揮発分濃度を30〜90質量%の範囲、好ましくは50〜80質量%の範囲に保ちながら、0.5〜10時間攪拌下で反応させる。反応後には、縮合反応又は加水分解で生ずる水及び低級アルコールを、低級アルコールよりも高沸点の溶剤とともに共沸留去することが好ましい。
【0237】
上記反応に用いられる溶媒とは、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒;トリクロルエチレン、テトラクロルエチレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;1,4−ジオキサン、ジブチルエーテル等のエーテル系溶媒;メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル等のエステル系溶媒;エチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコール誘導体等が挙げられる。
【0238】
反応中の不揮発分濃度は5〜50質量%の範囲が好ましい。不揮発分濃度が5質量%未満、すなわち溶剤が95質量%を超える場合、シリカ微粒子(d−1)と化合物(d−2)との反応が不十分であり、反応性粒子を含む活性エネルギー硬化性組成物により得られる硬化被膜は透明性に劣る場合がある。一方、不揮発分濃度が50質量%を超えると、生成物がゲル化する恐れがある。
【0239】
これらの製造方法によりシリカ微粒子(d−1)表面のケイ素原子と、化合物(d−2)分子中のケイ素原子が酸素原子を介して結合することにより、シリカ微粒子(d−1)と化合物(d−2)とが化学的に結合した反応性粒子(D)が得られる。
【0240】
反応性粒子(D)を得る際の化合物(d−2)の配合割合は、シリカ微粒子(d−1)100質量部に対して、好ましくは1質量部以上であり、より好ましくは2質量部以上、特に好ましくは5質量部以上である。シリカ微粒子(d−1)に結合した化合物(d−2)の量が5質量部未満であると、活性エネルギー線硬化性組成物中における反応性粒子(D)の分散性が十分ではなく、得られる硬化被膜の透明性が十分でなくなる場合がある。また、反応性粒子(D)製造時の原料中のシリカ微粒子(d−1)の配合割合は、得られる反応性粒子(D)100質量部に対して、好ましくは5〜99質量部であり、さらに好ましくは10〜98質量部である。
【0241】
また炭素数1以上のアルキル基を有するアルコキシシランを用いる場合には、その配合割合が化合物(d−2)に対して2.5〜100質量%、好ましくは25〜50質量%であることが得られる塗膜の耐水性向上の点から好ましい。
【0242】
活性エネルギー線硬化性組成物における反応性粒子(D)の含有量は、特に限定されるものではない。硬化被膜の耐擦傷性及び透明性の点から、好ましくは活性エネルギー線硬化性組成物の不揮発分100質量部に対して、1〜70質量部であり、より好ましくは10〜50質量部である。
【0243】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物はさらに前記(A)成分、(B)成分及び(D)成分以外の重合性不飽和化合物(E)を含有していてもよい。重合性不飽和化合物(E)としては、その化学構造中に重合性不飽和二重結合を少なくとも1つ有する化合物であれば特に限定されない。
【0244】
前記重合性不飽和化合物としては、単官能重合性不飽和化合物、多官能重合性不飽和化合物が挙げられる。
【0245】
単官能重合性不飽和化合物としては、例えば、一価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物等が挙げられる。具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等が挙げられる。また、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、5−カルボキシペンチル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基含有(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有重合性不飽和化合物;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、α−クロルスチレン等のビニル芳香族化合物;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の含窒素アルキル(メタ)アクリレート;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等の重合性アミド化合物等が挙げられる。
【0246】
多官能重合性不飽和化合物としては、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物等が挙げられる。具体的には、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデンカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、水素化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、水素化ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、水素化ヘキサフルオロビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシ)ヘキサヒドロフタル酸、5−エチル−2−(2−ヒドロキシ−1,1ジメチルエチル)−5−(ヒドロキシメチル)−1,3−ジオキサンジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート化合物;グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等のトリ(メタ)アクリレート化合物;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のテトラ(メタ)アクリレート化合物;その他、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。さらに、重合性不飽和基含有アクリル樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられる。重合性不飽和基含有アクリル樹脂としては、例えば、カルボキシル基含有アクリル樹脂にグリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有重合性不飽和化合物を付加して得られる重合性不飽和基含有アクリル樹脂、ヒドロキシル基含有アクリル樹脂に2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基と重合性不飽和基とを有する化合物を付加して得られる重合性不飽和基含有アクリル樹脂等が挙げられる。これら重合性不飽和化合物は単独で又は2種以上組合せて使用することができる。
【0247】
さらに多官能重合性不飽和化合物としては、例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート環付加物、及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート又はカプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを、ジラウリン酸ジn−ブチル錫等の錫系触媒の存在下、イソシアネート基とヒドロキシル基がほぼ等量になるように用いて、60〜70℃で数時間加熱することにより得られるウレタン(メタ)アクリレートを使用することができ、またトリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシプロピル)イソシアヌレート等を使用することができる。
【0248】
さらに多官能重合性不飽和化合物としては、例えばイミノオキサジアジンジオン基を有するヘキサメチレンジシソシアネートトリマーとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとを触媒の存在下、イソシアネート基とヒドロキシル基がほぼ等量になるように用いて反応させることにより得られるウレタン(メタ)アクリレートも使用することができる。イミノオキサジアジンジオン基を有するヘキサメチレンジシソシアネートトリマーの市販品としては、例えば、デスモジュールXP2410(バイエルマテリアルサイエンス社製)等が挙げられる。
【0249】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物における重合性不飽和化合物(E)の配合割合は特に限定されるものではない。耐擦り傷性、塗膜の透明性及び付着性の点から、好ましくは、活性エネルギー線硬化性組成物の不揮発分100質量部に対して、1〜50質量部であり、より好ましくは5〜40質量部である。
【0250】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、必要に応じて各種添加剤、飽和樹脂等を配合してもよく、所望により溶剤で希釈しても良い。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤、増感剤、酸化防止剤、消泡剤、表面調整剤、可塑剤、着色剤、有機溶剤等が挙げられる。飽和樹脂としては、例えば、飽和アクリル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、飽和ウレタン樹脂等が挙げられる。
【0251】
紫外線吸収剤としては、従来から公知のものが使用でき、例えば、ベンゾトリアゾール系吸収剤、トリアジン系吸収剤、サリチル酸誘導体系吸収剤、ベンゾフェノン系吸収剤等を使用できる。紫外線吸収剤としては、また、公知の重合性紫外線吸収剤、例えば2−(2´−ヒドロキシ−5´−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2,2´−ジヒドロキシ−4(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノンなども使用することが可能である。紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、TINUVIN900、TINUVIN928、TINUVIN348−2、TINUVIN479、TINUVIN405(チバ スペシャルティ ケミカルズ社製、商品名)、RUVA93(大塚化学社製、商品名)等が挙げられる。
【0252】
上記紫外線吸収剤を配合する場合、その含有量は、好ましくは、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の不揮発分100質量部に対して0.1〜10質量部の範囲内が適当である。
【0253】
光安定剤は、被膜の劣化過程で生成する活性なラジカル種を捕捉するラジカル連鎖禁止剤として用いられるもので、例えば、ヒンダードアミン系の光安定剤等が挙げられる。
【0254】
光安定剤のなかで優れた光安定化作用を示す光安定剤としてヒンダードピペリジン類が挙げられる。また、公知の重合性光安定剤も使用することが可能である。光安定剤の市販品としては、例えば、TINUVIN123、TINUVIN152、TINUVIN292(チバ スペシャルティ ケミカルズ社製、商品名)、HOSTAVIN3058(クラリアント社製、商品名)、アデカスタブLA−82(株式会社ADEKA製、商品名)等が挙げられる。
【0255】
上記光安定剤を配合する場合、その含有量は、好ましくは、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の不揮発分100質量部に対して0.1〜5質量部の範囲内が適当である。
【0256】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の不揮発分は特に限定されるものではない。例えば、好ましくは20〜100質量%であり、さらに好ましくは25〜70質量%である。これら範囲は、塗膜の平滑性及び乾燥時間の短縮化の点で意義がある。
【0257】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を被塗物表面へ塗布する方法は特に限定されるものではなく、例えば、ローラー塗装、ロールコーター塗装、スピンコーター塗装、カーテンロールコーター塗装、スリットコーター塗装、スプレー塗装、静電塗装、浸漬塗装、シルク印刷、スピン塗装等が挙げられる。
【0258】
被塗物としては、特に限定されるものではない。具体的には例えば、鉄、アルミニウム、真鍮、銅、ステンレス鋼、ブリキ、亜鉛メッキ鋼、合金化亜鉛(Zn−Al、Zn−Ni、Zn−Fe等)メッキ鋼等の金属材料;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂や各種のFRP等のプラスチック材料;ガラス、セメント、コンクリート等の無機材料;木材;繊維材料(紙、布等)等が挙げられる。また、被塗物には、例えば、プライマー塗料、カチオン電着塗料、中塗り塗料、上塗り塗料等を塗装することにより、予めプライマー層、電着塗膜層、中塗り層、上塗り層等が形成されていてもよい。
【0259】
前記活性エネルギー線硬化性組成物から塗膜を形成する際、必要に応じて乾燥を行うことができる。乾燥は、添加している溶剤を除去できる条件であれば特に限定されるものではない。例えば、20〜100℃の乾燥温度において3〜20分間の乾燥時間で行うことができる。
【0260】
塗膜の膜厚は目的に応じて適宜設定される。例えば膜厚は1〜100μmが好ましく、1〜20μmがさらに好ましい。膜厚がこれら範囲の下限値以上の場合には、塗膜の平滑性及び外観に優れる。またこれら範囲の上限値以下の場合には塗膜の硬化性、耐割れ性に優れる。
【0261】
活性エネルギー線硬化性組成物を被塗物表面に塗布し、必要に応じて乾燥させた後に、活性エネルギー線照射を行い硬化塗膜を形成することができる。活性エネルギー線照射の照射源及び照射量は特に限定されるものではない。例えば活性エネルギー線の照射源としては、超高圧、高圧、中圧、低圧の水銀灯、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯、蛍光灯、タングステン灯、太陽光等が挙げられる。照射量は、例えば好ましくは5〜20,000J/m、さらに好ましくは100〜10,000J/mの範囲が挙げられる。
【0262】
活性エネルギー線照射後、必要に応じて塗膜を加熱してもよい。加熱をすることによって、活性エネルギー線照射による塗膜の硬化により発生した塗膜の歪みを緩和することができる。さらにこの加熱によって塗膜の硬度、又は付着性の向上を行なうことができる場合がある。加熱は、通常、150〜250℃の雰囲気温度で1〜30分間の条件で行なうことができる。
【実施例】
【0263】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。尚、「部」及び「%」は、別記しない限り「質量部」及び「質量%」を示す。なお、本実施例における構造解析及び測定は、本明細書に記載の前記分析装置に加え、以下の分析装置及び測定方法により行った。
【0264】
(29Si−NMR、1H−NMR分析)
装置:JEOL社製 FT−NMR EX−400
溶媒:CDCl3
内部標準物質:テトラメチルシラン
(FT−IR分析)
装置:日本分光社製 FT/IR−610。
【0265】
製造例1
還流冷却器、温度計、空気導入管及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、Glycidyl POSS cage mixture (商品名、Hybrid Plastics社製)400部及び酢酸ブチル600部を仕込み、60℃で攪拌しながら溶解させた。ここにアクリル酸190部、メトキノン1.5部、及びテトラブチルアンモニウムブロミド10部を仕込み、乾燥空気を吹き込みながら100℃で4時間反応させ、生成物(A1)の不揮発分50%溶液を得た。
【0266】
原材料として用いたGlycidyl POSS cage mixtureは、3−グリシドキシプロピル基含有籠型ポリシルセスキオキサンであり、重量平均分子量は1,800、エポキシ当量は168g/eqであった。
【0267】
生成物(A1)について29Si−NMR分析を行った結果、Siに結合した3つの酸素原子が全て他のSiと結合したT3構造に由来する−70ppm付近のピークのみが確認され、ヒドロキシシリル基の存在を示すT1及びT2構造は確認されなかった。
【0268】
また、生成物(A1)についてH−NMR分析を行った結果、Siに結合したメチレン基に由来する0.6ppmのピークが確認された。また、アクリロイルオキシ基の炭素−炭素不飽和結合に由来する5.9ppm、6.1ppm、6.4ppmのピークが確認された。これらのピーク強度比より計算したアクリロイルオキシ基の炭素−炭素不飽和結合とSiに結合したメチレン基とのモル比率は1.07であった。(モル比率が1.00を超えているのは、アクリル酸の付加反応を促進するため、アクリル酸を過剰に配合したためである。)また、エポキシ基に帰属されるピークは確認されなかった。また、エポキシ当量は10,000g/eq以上であった。
【0269】
また、生成物(A1)についてFT−IR分析を行った結果、原材料であるGlycidyl POSS cage mixtureにおいて確認されなかった水酸基に帰属される3500cm-1付近の幅広いピークが確認された。また、生成物(A1)の重量平均分子量は2,700であった。
【0270】
生成物(A1)についての前記29Si−NMR、H−NMR、FT−IR、重量平均分子量等の結果から、生成物(A1)が、ケイ素原子に直接に結合した有機基の全てが下記式(P−I)で表される有機基
【0271】
【化34】

【0272】
を有する重量平均分子量2,700のシルセスキオキサン化合物であることが確認された。
【0273】
製造例2
還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン100部、2−ヒドロキシエチルアクリレート47部、メトキノン0.1部を仕込み、乾燥空気を吹き込みながら100℃で12時間反応させ、生成物(A2)を得た。次に、還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、トルエン300部、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド40%のメタノール溶液30部及び脱イオン水12部を入れ、混合物を氷浴で2℃まで冷却した。ここに、テトラヒドロフラン300部と生成物(A2)147部を混合した溶液を投入し、20℃にて24時間反応させた。減圧蒸留にて揮発分を除去した後、これをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100部に溶解し、生成物(A3)の不揮発分50%溶液を得た。
【0274】
生成物(A3)について29Si−NMR分析を行った結果、Siに結合した3つの酸素原子が全て他のSiと結合したT3構造に由来する−70ppm付近のピークと、一つのヒドロキシシリル基を有するT2構造に由来する−59ppmのピークが確認された。これらのピークの積分強度比は、T3構造に由来するピーク/T2構造に由来するピーク=90/10であった。
【0275】
また、生成物(A3)についてH−NMR分析を行った結果、Siに結合したメチレン基に由来する0.6ppmのピークが確認された。また、アクリロイルオキシ基の炭素−炭素不飽和結合に由来する5.9ppm、6.1ppm、6.4ppmのピークが確認された。これらのピーク強度比より計算したSiに結合したメチレン基に対するアクリロイルオキシ基の炭素−炭素不飽和結合のモル比率は、1.01であった。
【0276】
また、生成物(A3)についてFT−IR分析を行った結果、ウレタン結合に帰属する1540cm−1付近のピークが確認された。また、生成物(A3)の重量平均分子量は2,500であった。
【0277】
生成物(A3)についての前記29Si−NMR、H−NMR、FT−IR、重量平均分子量等の結果から、生成物(A3)が、ケイ素原子に直接に結合した有機基の全てが下記式(P−II)で表される有機基
【0278】
【化35】

【0279】
を有する重量平均分子量2,500のシルセスキオキサン化合物であることが確認された。
【0280】
製造例3
還流冷却器、温度計、空気導入管及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、3−アミノプロピルトリメトキシシラン400部、2−プロピルアルコール1,600部、テトラブチルアンモニウムフルオリド2部、及び脱イオン水60部を仕込み、60℃で8時間反応させた。減圧蒸留にて不揮発分60%となるまで濃縮した後、酢酸ブチル160部を配合し、減圧蒸留を継続し、生成物(A4)の不揮発分60%溶液を得た。
【0281】
還流冷却器、温度計、空気導入管及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、酢酸ブチル400部、及び2−イソシアネートエチルアクリレート310部を配合し、氷浴で攪拌しながら10℃まで冷却した。ここに生成物(A4)の不揮発分60%溶液400部を、反応温度を20℃以下に維持しながら滴下した。60℃で1時間攪拌した後、300メッシュのフィルターにてろ過し、生成物(A5)の不揮発分50%溶液を得た。
【0282】
生成物(A4)について29Si−NMR分析を行った結果、Siに結合した3つの酸素原子が全て他のSiと結合したT3構造に由来する−70ppm付近のピークと、一つのヒドロキシシリル基を有するT2構造に由来する−59ppmのピークが確認された。これらのピークの積分強度比は、T3構造に由来するピーク/T2構造に由来するピーク=90/10であった。また、全アミン価は508mgKOH/gであった。生成物(A4)の重量平均分子量は1,500であった。
【0283】
生成物(A5)について29Si−NMR分析を行った結果、Siに結合した3つの酸素原子が全て他のSiと結合したT3構造に由来する−70ppm付近のピークと、一つのヒドロキシシリル基を有するT2構造に由来する−59ppmのピークが確認された。これらのピークの積分強度比は、T3構造に由来するピーク/T2構造に由来するピーク=90/10であった。全アミン価は0mgKOH/g、NCO価は0mgNCO/gであった。
【0284】
生成物(A5)についてH−NMR分析を行った結果、Siに結合したメチレン基に由来する0.6ppmのピークが確認された。また、アクリロイルオキシ基の炭素−炭素不飽和結合に由来する5.9ppm、6.1ppm、6.4ppmのピークが確認された。これらのピーク強度比より計算したSiに結合したメチレン基に対するアクリロイルオキシ基の炭素−炭素不飽和結合のモル比率は1.01であった。生成物(A5)の重量平均分子量は3,000であった。
【0285】
生成物(A5)についての前記29Si−NMR、H−NMR、重量平均分子量等の結果から、生成物(A5)が、ケイ素原子に直接に結合した有機基のほとんど全てが下記式(P−III)で表される有機基
【0286】
【化36】

【0287】
を有する重量平均分子量3,000のシルセスキオキサン化合物であることが確認された。
【0288】
製造例4
還流冷却器、温度計、空気導入管及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、Glycidyl POSS cage mixture (商品名、Hybrid Plastics社製)400部及び酢酸ブチル600部を仕込み、60℃で攪拌しながら溶解させた。ここにアクリル酸172部、メトキノン1.5部、及びテトラブチルアンモニウムブロミド10部を仕込み、乾燥空気を吹き込みながら100℃で24時間反応させた。さらに2−イソシアネートエチルアクリレート338部、及び酢酸ブチル306部を配合して、80℃で12時間反応させ、生成物(A6)の不揮発分50%溶液を得た。
【0289】
原材料として用いたGlycidyl POSS cage mixtureは、3−グリシドキシプロピル基含有籠型ポリシルセスキオキサンであり、重量平均分子量は1,800、エポキシ当量は168g/eqであった。
【0290】
生成物(A6)について29Si−NMR分析を行った結果、Siに結合した3つの酸素原子が全て他のSiと結合したT3構造に由来する−70ppm付近のピークのみが確認され、ヒドロキシシリル基の存在を示すT1及びT2構造は確認されなかった。
【0291】
また、生成物(A6)についてH−NMR分析を行った結果、Siに結合したメチレン基に由来する0.6ppmのピークが確認された。また、アクリロイルオキシ基の炭素−炭素不飽和結合に由来する5.9ppm、6.1ppm、6.4ppmのピークが確認された。これらのピーク強度比より計算したSiに結合したメチレン基に対するアクリロイルオキシ基の炭素−炭素不飽和結合のモル比率は2.03であった。また、エポキシ基に帰属されるピークは確認されなかった。また、エポキシ当量は10,000g/eq以上であった。
【0292】
また、生成物(A6)についてFT−IR分析を行った結果、原材料であるGlycidyl POSS cage mixtureにおいて確認されなかったウレタン結合に帰属される1540cm−1付近のピークが確認された。また、生成物(A6)のNCO価は0mgNCO/gであった。また、生成物(A6)の重量平均分子量は5,000であった。
【0293】
生成物(A6)についての前記29Si−NMR、H−NMR、FT−IR、重量平均分子量等の結果から、生成物(A6)が、ケイ素原子に直接に結合した有機基のほとんど全てが下記式(P−IV)で表される有機基
【0294】
【化37】

【0295】
を有する重量平均分子量5,000のシルセスキオキサン化合物であることが確認された。
【0296】
イソソルバイドジアクリレートの製造
製造例5
1L四ツ口フラスコにイソソルバイド146g(1mol)、アクリル酸144g(2mol)、p−ベンゾキノン0.15g(0.0014mol)、メタンスルホン酸1.5g(0.015mol)、トルエン700gを仕込み、空気導入しながらオイルバス中で120℃に加熱、10時間攪拌した。反応の進行に伴って出てくる水を留去しつつ反応を行った。反応終了後に室温まで冷却し、蒸留水100mlにて水洗を行う事で触媒を除去した。その後、ハイドロキノン0.025gを添加し、減圧下で脱溶剤を行う事で淡黄色粘凋液体を得た。
【0297】
このものを1H−NMR、液体クロマトグラフィー(HPLC)、GC−マススペクトルで解析し、イソソルバイドジアクリレートであることを確認した。
【0298】
反応性粒子の製造
製造例6
還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、コロイダルシリカ微粒子(分散媒;イソプロパノール、シリカ濃度;30質量%、平均一次粒子径;12nm、商品名;IPA−ST、日産化学工業社製) 333部(シリカ微粒子は100部)、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン 10部、p−メトキシフェノール 0.20部及びイソプロパノール233部を配合した後、攪拌しながら昇温した。揮発成分の還流が始まったところで、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させ、反応系内の溶剤を置換した。続いて、95℃で2時間攪拌しながら脱水縮合反応を行った後、60℃に温度を下げてテトラブチルアンモニウムフルオリド 0.03部を加えて更に1時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、減圧状態で揮発成分を留出させ、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させた。プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出する操作を数回行うことで溶剤を置換し、反応性粒子の不揮発分40%分散液を得た。なお、本製造例で得られた反応性粒子を生成物(S−1)と称する。
【0299】
製造例7
還流冷却器、温度計、空気導入管及び攪拌機を備えた4つ口フラスコにスミジュールN3300 179部、2−ヒドロキシエチルアクリレート 87部、酢酸イソブチル 205部及びp−メトキシフェノール 1部を配合し、攪拌した。空気を吹き込みながら100℃まで昇温させ、100℃で8時間反応させた。反応後、5℃まで冷却し、3−アミノプロピルトリエトキシシラン 41部を1時間かけて滴下した。この際、フラスコ内の反応物の温度が20℃を超えないように制御した。続いて、エチレングリコールモノブチルエーテル 205部を配合して80℃まで昇温させ、80℃で1時間攪拌した後、減圧蒸留にて酢酸イソブチルを除去し、生成物(S−2)の不揮発分60%溶液を得た。
【0300】
得られた生成物(S−2)はNCO価=0mgNCO/g、アミン価=0mgKOH/gであった。また、生成物(S−2)についてH−NMR分析を行った結果、生成物(S−2)のSiに結合したメチレン基に対するアクリロイルオキシ基の炭素−炭素不飽和結合のモル比率は4.0であった。また、生成物(S−2)について29Si−NMR分析を行った結果、生成物(S−2)中のエトキシシリル基の加水分解は確認されなかった。
【0301】
上記の結果から、生成物(S−2)は、下記式(A−I)で表される化合物と下記式(A−II)で表される化合物との混合物であり、
【0302】
【化38】

【0303】
その比率は、前記式(A−I)で表される化合物/前記式(A−II)で表される化合物=60/40(モル比)であった。
【0304】
次いで、還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、コロイダルシリカ微粒子(分散媒;イソプロパノール、シリカ濃度;30質量%、平均一次粒子径;12nm、商品名;IPA−ST、日産化学工業社製) 333部(シリカ微粒子は100部)、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン 10部、p−メトキシフェノール 0.20部及びイソプロパノール 227部を配合した後、攪拌しながら昇温した。揮発成分の還流が始まったところで、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させ、反応系内の溶剤を置換した。続いて、製造例1で得られた生成物(S−2)の不揮発分60%溶液 17部[前記式(A−I)で表される化合物が6.0部]を添加し、95℃で2時間攪拌しながら脱水縮合反応を行った後、60℃に温度を下げてテトラブチルアンモニウムフルオリド 0.03部を加えて更に1時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、減圧状態で揮発成分を留出させ、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させた。プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出する操作を数回行うことで溶剤を置換し、反応性粒子及び前記式(A−II)で表される化合物の不揮発分40%の混合液を得た。配合量から計算される反応性粒子と前記式(A−II)で表される化合物との比率は、反応性粒子/前記式(A−II)で表される化合物=100/3(質量比)であった。なお、本製造例で得られた反応性粒子及び前記式(A−II)で表される化合物の混合物を生成物(S−3)と称する。
【0305】
生成物(E1)の製造
製造例8
還流冷却器、温度計、空気導入管及び攪拌機を備えた4つ口フラスコにスミジュールN3300(住化バイエルウレタン社製)179部、2−ヒドロキシエチルアクリレート109部、酢酸イソブチル192部及びp−メトキシフェノール 1部を配合し、攪拌した。空気を吹き込みながら100℃まで昇温し、100℃で8時間反応させた。反応後、エチレングリコールモノブチルエーテル192部を配合して80℃まで昇温し、80℃で1時間攪拌した後、減圧蒸留にて酢酸イソブチルを除去し、生成物(E1)の不揮発分60%溶液を得た。
【0306】
得られた生成物(E1)はNCO価=0mgNCO/gであった。上記の結果から、生成物(E1)は、下記式(P−XIII)で表される化合物であった。
【0307】
【化39】

製造例1で得られた生成物(A1)の不揮発分50%溶液 60部、製造例5で得たイソソルバイドジアクリレート 20部、製造例6で得られた生成物(S1)の不揮発分40%溶液 75部、アロニックスM−315(商品名、東亞合成社製、イソシアヌル酸EO変性ジ及びトリアクリレート) 20部、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(光重合開始剤)3.0部、及び2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(光重合開始剤)0.5部、TINUVIN 400(BASF社製、商品名、光安定剤)1.0部、TINUVIN 292(BASF社製、商品名、紫外線吸収剤)0.5部を配合し、酢酸エチルで不揮発分30%に希釈した後に攪拌し、活性エネルギー線硬化性組成物No.1を製造した。なお、表1に記載の配合量は不揮発分の質量部を示す。
【0308】
次いでイソプロパノールにて脱脂したABS基板(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン3元共重合樹脂基板)上に、前記活性エネルギー線硬化性組成物をアプリケーターで乾燥膜厚が10μmとなる条件で塗装し、80℃で10分間乾燥して溶剤を除去した後、高圧水銀灯(80W/cm)で、紫外線(ピークトップ波長365nm)を空気雰囲気下(試験板I)、窒素雰囲気下(試験板II)のそれぞれについて、照射量20,000J/mで照射して、硬化塗膜を形成し、各試験板を得た。得られた試験板について、下記評価試験に供した。評価結果を表1に示す。
【0309】
(実施例2〜10、比較例1〜2)
実施例1において、各成分及び配合量を表1に記載した各成分及び配合量に代えた以外は、実施例1と同様にして実施例2〜10及び比較例1〜2の活性エネルギー線硬化性組成物No.2〜12を製造した。
【0310】
次いで、実施例1に記載の方法と同様の方法にて硬化塗膜を形成し、各試験板を得た。得られた試験板について、下記評価試験に供した。評価結果を表1に示す。
【0311】
(注1)KAYARAD R−604:商品名、日本化薬株式会社製、5−エチル−2−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−5−(ヒドロキシメチル)−1,3−ジオキサンジアクリレート。
【0312】
【表1】

【0313】
(塗膜面の硬化性)
試験板I及び試験板IIの塗膜面の硬化性を塗膜面のタック性と爪による傷つき有無で評価した。
A:タック無かつ爪による傷つき無
B:タック無だが爪で傷付き有
C:タック有。
【0314】
(耐擦傷性)
ASTM D−1044に準拠し、摩耗輪CS−10F、荷重500g、回転数500サイクルの条件で摩耗試験を行った。試験後、中性洗剤を用いて試料を洗浄し、ヘーズメータで曇価を測定した。[試験後の曇価−試験前の曇価]を計算し評価した。なお、値が小さい方が耐擦傷性に優れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素原子に直接に結合した有機基を有し、該ケイ素原子に直接に結合した有機基の少なくとも1つが、2級水酸基、ウレタン結合及びウレア結合よりなる群から選ばれる少なくとも1つと少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基との両者を有する有機基であるシルセスキオキサン化合物(A)及びイソソルバイドジ(メタ)アクリレート(B)を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項2】
光重合開始剤(C)を含有する請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項3】
シリカ微粒子(d−1)と分子内に(メタ)アクリロイルオキシ基を有する加水分解性シラン(d−2)とを反応させて得られる反応性粒子(D)を含有する請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項4】
反応性粒子(D)が、シリカ微粒子(d−1)と分子内に(メタ)アクリロイルオキシ基及びイソシアヌレート環構造を有する加水分解性シラン(d−2−3)とを反応させて得られるものである請求項3に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項5】
前記(A)成分、(B)成分及び(D)成分以外の重合性不飽和化合物(E)を含有する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物を被塗物上に塗装して得られる塗装物品。

【公開番号】特開2013−18848(P2013−18848A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152401(P2011−152401)
【出願日】平成23年7月9日(2011.7.9)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】