説明

活性エネルギー線硬化性組成物および積層体

【課題】優れた密着性、耐摩耗性、耐温水性及び耐侯性を有する硬化膜を形成しうる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】成分(A):(a−1)有機溶剤に分散された平均一次粒子径が500nm以下の無機酸化物微粒子、(a−2)R1n−Si−R24-n[R1は(メタ)アクリロイル基を含む官能基を、R2は加水分解可能な官能基又は水酸基を、nは1〜3の自然数を表す。]で表される化合物及び(a−3)R3m−Si−R44-m[R3は炭素数の合計が2〜7の脂肪族飽和炭化水素基を、R4は加水分解可能な官能基又は水酸基を、mは1〜3の自然数を表す。]で表される化合物を反応させて得られる表面修飾無機酸化物微粒子;成分(B):分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有する分子量10,000以下のモノマー又はオリゴマー;及び成分(C):光重合開始剤を、特定の割合で含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた密着性、耐摩耗性耐温水性、および耐候性を有する硬化物を提供できる活性エネルギー線硬化性組成物に関する。この活性エネルギー線硬化性組成物は、特に高い耐磨耗性と耐候性の両方を必要とする自動車部材に非常に有用である。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂やポリスチレン樹脂からなる成形品は、軽量で成形性に優れているばかりでなく、透明性も良好で、ガラス製品に比べて耐衝撃性に優れている。そのため、ガラス代替の材料として、各種ランプレンズ、窓材、計器類のカバーなどに多用されている。特に、ヘッドランプレンズについては、自動車のデザインの多様化などからプラスチック材料の使用が増加している。また、近年、自動車の軽量化のために窓ガラスやサンルーフに耐衝撃性に優れるポリカーボネート樹脂成形品が用いられることが多くなってきている。しかし、ポリカーボネート樹脂成形品はその表面の耐摩耗性が不足しているため、他の硬い物との接触、摩擦、引っ掻きなどによって表面に損傷を受けやすく、表面に発生した損傷はその商品価値を低下させることになる。
【0003】
また、自動車用部材として使用される場合には、屋外で使用されるためその耐候性も重要な性能となる。ポリカーボネート樹脂の場合は耐候性が低く、太陽光に含まれる紫外線等の活性エネルギー線によって劣化を受け、成形品が著しく黄変したり、表面にクラックが生じたりする。
【0004】
このようなポリカーボネート樹脂成形品の欠点を補うために、耐候性が比較的優れているアクリル系、メラミン系、ウレタン系、シリコン系などの硬化原料に、紫外線吸収剤を添加した被覆材組成物を成形品表面に塗布し、加熱あるいは紫外線、電子線などの活性エネルギー線を照射して硬化し、耐候性を有する塗膜を形成する方法が従来から行われている。中でも活性エネルギー線を用いる硬化法は熱硬化に比べ生産性に優れているなどの利点があることから、これまでに広く利用されてきた。
【0005】
しかしながら、一般的に耐磨耗性を高めると塗膜の柔軟性が低下するため、耐候性に劣る塗膜になりやすく、耐候性に優れる塗膜は耐磨耗性が低位であることが多い。通常このようなトレードオフの関係にある耐候性と耐磨耗性の双方をポリカーボネート樹脂成形品に対して付与する塗膜としては、アクリル系の表面処理されたシリカ微粒子を含む組成物が知られている(特許文献1)。また、非ラジカル重合性のシランカップリング剤で被覆処理したシリカ微粒子と高分子量のアクリル樹脂を主成分とする組成物が知られている(特許文献2)。しかし、これらのシリカ微粒子含有組成物を用いた硬化膜は密着性に乏しく、また、耐温水性および耐候性等の面で充分な効果を付与することができていない。屋外の環境に対し、さらに長期間に渡り硬化膜およびポリカーボネート樹脂基材の劣化を防ぐために、これらの課題についてさらなる改良が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO97/011129号パンフレット
【特許文献2】特開2006−249322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の課題は上述の背景からなされたものであり、その目的とするところは、優れた密着性、耐摩耗性、耐温水性および耐侯性を有する硬化膜を形成しうる活性エネルギー線硬化性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、(メタ)アクリロイル基を側鎖に持つシランカップリング剤と炭素数1〜8炭化水素基を側鎖に持つシランカップリング剤によって表面を混合修飾された無機酸化物微粒子を用いることで、優れた密着性、耐磨耗性、耐温水性および耐候性を有する硬化膜を形成しうる活性エネルギー線硬化性組成物を見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、(A)〜(C)成分を以下の割合で含有する活性エネルギー線硬化性組成物である:
(A)成分は、下記(a−1)〜(a−3)成分を反応させて得られる表面修飾された無機酸化物微粒子であって、その含有量が(A)成分と(B)成分の合計に対して10〜50質量%である;
(a−1)平均一次粒子径が500nm以下の無機酸化物微粒子、
(a−2)下記構造式(1)で表される化合物
1n−Si−R24-n (1)
[構造式(1)中、R1は(メタ)アクリロイル基を含む官能基を、R2は加水分解可能な官能基またはヒドロキシル基を、nは1〜3の自然数を表す。]、および
(a−3)下記構造式(2)で表される化合物
3m−Si−R44-m (2)
[構造式(2)中、R3は炭素数が合計で2〜7の脂肪族飽和炭化水素基を、R4は加水分解可能な官能基またはヒドロキシル基を、mは1〜3の自然数を表す。]、
(B)成分は、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有する数平均分子量が10,000以下のモノマーまたはオリゴマーであって、その含有量が、(A)成分と(B)成分の合計に対して50〜90質量%である;および
(C)成分は、光重合開始剤であって、その含有量が、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、0.1〜10質量部である。
【0010】
また、本発明は、前記(B)成分が、下記(b−1)〜(b−3)成分の混合物であることを特徴とする:
(B)成分を100質量部としたとき、
(b−1)分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有するポリ[(メタ)アクリロイルオキシアルキル]イソシアヌレート 30〜90質量部
(b−2)1分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有し、脂環式骨格を有するウレタンポリ(メタ)アクリレート 5〜60質量部、
(b−3)下記構造式(3)で表される化合物 5〜20質量部
Q−O−R5−O−Q (3)
[構造式(3)中、Qは(メタ)アクリロイル基を、R5は炭素数4〜12の分岐または直鎖の炭化水素基を表す。]。
【0011】
本発明の組成物は、さらに紫外線吸収剤(D)および/またはヒンダードアミン系光安定剤(E)を含有することを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明は、ポリカーボネート樹脂成形品上に上記活性エネルギー線硬化性組成物を塗布し、活性エネルギー線照射により形成した硬化膜を有する積層体である。
【0013】
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とはアクリルまたはメタクリルを、「(メタ)アクリロイル」とはアクリロイルまたはメタクリロイルを、「(メタ)アクリレート」とはアクリレートまたはメタクリレートを、また、「(メタ)アクリル酸」とはアクリル酸またはメタクリル酸を意味する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を表面に塗布し、活性エネルギー線を照射して硬化することにより、密着性、耐摩耗性、耐温水性および耐侯性に優れた硬化膜を形成することが可能であり、該優れた硬化膜を有するポリカーボネート樹脂成形品を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物(以下、単に「組成物」ということがある。)は、(A)〜(C)成分を特定の割合で含有する。以下、(A)〜(C)成分について説明する。
【0016】
[(A)成分について]
(A)成分は、表面修飾された無機酸化物微粒子(以下において、「表面修飾無機酸化物微粒子」と略すことがある)であって、(a−1)〜(a−3)成分から製造される。そして、(A)成分は、組成物の硬化膜の耐磨耗性向上に寄与する成分である。
【0017】
<(a−1)成分について>
(a−1)成分は、平均1次粒子径が500nm以下である無機酸化物微粒子である。
【0018】
本発明中で、無機酸化物とは、1種類の無機成分と酸素からなる酸化物、もしくは2種類以上の無機成分と酸素からなる複合酸化物である。また、無機成分とは、1族のアルカリ金属、2族のアルカリ土類金属、3〜12族の遷移金属、13〜15族の典型金属、および、ホウ素、ケイ素、ゲルマニウム等の半金属であり、さらに2種以上の複合酸化物においては、硫黄、リン、塩素等の非金属成分も含む。
【0019】
また、本発明中の微粒子の平均一次粒子径としては、硬化膜の透明性の観点から、500nm以下である。好ましくは100nm以下であり、より好ましくは50nm以下である。
【0020】
このような無機酸化物微粒子の例として、コロイダルシリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化スズ、異種元素ドープ酸化スズ(ATO等)、酸化インジウム、異種元素ドープ酸化インジウム(ITO等)、酸化カドミウム、酸化アンチモン等が挙げられる。これらを単独で用いても良いし、2種類以上組み合わせて用いても良い。中でも、入手しやすさや価格面、得られる組成物の硬化被膜の透明性や耐磨耗性発現の観点から、特にコロイダルシリカが好ましい。ここでいうコロイダルシリカは、無水ケイ酸の超微粒子を適当な液状溶剤に分散させたものである。
【0021】
コロイダルシリカは、通常の水分散の形態や、有機溶剤に分散させた形態で用いることができるが、シランカップリング剤を均一に分散させるためには、有機溶剤に分散させたコロイダルシリカを用いることが好ましい。
【0022】
有機溶剤としては、メタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、エチレングリコール、ジメチルアセトアミド、エチレングリコール−モノn−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、キシレン/n−ブタノール、トルエン等を用いることができる。なお、蒸留によって表面修飾無機酸化物微粒子溶液の固形分濃度を調整するためには、分散に用いる有機溶剤は沸点が150℃以下であることが好ましい。
【0023】
有機溶剤に分散させた形態のコロイダルシリカとしては、例えば、メタノール分散シリカゾル(MA−ST、MA−ST−M)、イソプロピルアルコール分散シリカゾル(IPA−ST、IPA−ST−L、IPA−ST−ZL、IPA−ST−UP)、エチレングリコール分散シリカゾル(EG−ST、EG−ST−L)、ジメチルアセトアミド分散シリカゾル(DMAC−ST、DMAC−ST−L)、キシレン/ブタノール分散シリカゾル(XBA−ST)、メチルエチルケトン分散シリカゾル(MEK−ST、MEK−ST−L、MEK−ST−ZL、MEK−ST−UP)、メチルイソブチルケトン分散シリカゾル(MIBK−ST)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート分散シリカゾル(PMA−ST)(以上カッコ内は、日産化学工業(株)の製品名)等の市販品を用いることができる。
【0024】
<(a−2)成分について>
(a−2)成分は(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤であり、下記構造式(1)で表される化合物である。
1n−Si−R24-n (1)
[上記構造式(1)中、R1は(メタ)アクリロイル基を含む官能基を、R2は加水分解可能な官能基あるいはヒドロキシル基を、nは1〜3の自然数を表す。]
【0025】
該(a−2)成分は、加水分解してシラノール化合物とし、上記(a−1)成分である無機酸化物微粒子と予め反応させることにより、得られた無機酸化物微粒子と後述する(B)成分との分散均一性を向上させ、組成物中の(B)成分中の(メタ)アクリロイル基と化学結合形成が可能な活性エネルギー線硬化性を有する表面修飾無機酸化物微粒子を形成することができる。これにより、得られる硬化膜に高い耐磨耗性を付与することができる。
【0026】
ここで加水分解可能な官能基とは、水との反応によってヒドロキシル基に置き換わることができる官能基を意味し、例えば、ClやBrなどのハロゲン基、アルコキシ基、アシルオキシ基などである。
【0027】
(a−2)成分の具体例としては、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリヒドロキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリヒドロキシシラン、δ−(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメトキシシラン、δ−(メタ)アクリロイルオキシブチルトリエトキシシラン、δ−(メタ)アクリロイルオキシブチルトリヒドロキシシランなどが挙げられる。
【0028】
なお、(a−2)成分としては、構造式(1)においてn=1のシランカップリング剤を用いることが好ましい。この場合、n=2〜3のシランカップリング剤より加水分解しやすく、かつ、無機酸化物微粒子との結合性に優れている。そのため、本発明の無機酸化物微粒子の表面修飾効果が高く、すなわち、表面修飾無機酸化物微粒子を用いた組成物は安定性に優れ、硬化膜は耐磨耗性、耐候性にも優れたものになる。
【0029】
その中でも好ましい(a−2)成分は、入手の容易さの観点から、β−アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、β−アクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、β−メタクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、β−メタクリロイルオキシエチルトリエトキシシランである。
【0030】
<(a−3)成分について>
本発明に用いられる(a−3)成分は、脂肪族飽和炭化水素基を有するシランカップリング剤であり、下記構造式(2)で表される化合物である。
3m−Si−R44-m (2)
[上記構造式(2)中、R3は炭素数が合計で2〜7の飽和脂肪族炭化水素基を、R4は加水分解可能な官能基あるいはヒドロキシル基を、mは1〜3の自然数を表す。]
【0031】
該(a−3)成分は、分子内に前述の(メタ)アクリロイル基を含まない化合物であり、(a−1)成分である無機酸化物微粒子を化学修飾することで、無機酸化物微粒子を疎水化し、後述の組成物中への溶解性(分散性)を高める効果がある。また、組成物中の(メタ)アクリロイル基との間で共有結合を形成しないため、本発明の表面修飾無機酸化物微粒子を用いた硬化膜の耐候性を向上させることに寄与する。
【0032】
ここで加水分解可能な官能基とは、水との反応によってヒドロキシル基に置き換わることができる官能基を意味し、例えば、ClやBrなどのハロゲン基、アルコキシ基、アシルオキシ基などである。
【0033】
(a−3)成分として、具体的には、例えば、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n−ペンチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−ヘプチルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサンが挙げられる。
【0034】
なお、(a−3)成分としては、構造式(2)においてm=1のシランカップリング剤を用いることが好ましい。この場合、mが2〜3のシランカップリング剤より加水分解し易く、かつ、無機酸化物微粒子との結合性に優れている。そのため本発明の無機酸化物微粒子の表面修飾効果がさらに高く、すなわち、表面修飾酸化物微粒子を用いた活性エネルギー線硬化性組成物はさらに安定性に優れ、硬化膜はさらに耐候性にも優れたものになる。
【0035】
その中でも好ましい(a−3)成分は、入手の容易さから、プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n−ペンチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサンである。
【0036】
全てのR3の炭素数は合計で2〜7であり、より好ましくは3〜5である。炭素数を合計で2〜7にすることで、(A)成分である表面修飾無機酸化物微粒子の組成物中での分散安定性と硬化膜の外観が良好となる。なお、R3基が単数である時は、その炭素数は2〜7、好ましくは3〜5とする。
【0037】
(A)成分である表面修飾無機酸化物微粒子の製造方法として、例えば、溶剤に分散した無機酸化物微粒子((a−1)成分)に前記シランカップリング剤((a−2)成分および(a−3)成分)の両方を加えて混合し、この混合物に純水を加えて加水分解と脱水縮合反応を行う方法、並びに、溶剤に分散した無機酸化物微粒子((a−1)成分)に一方のシランカップリング剤を加えて混合し、この混合物に純水を加えて加水分解と脱水縮合を行い、次いでもう一方のシランカップリング剤を加えて混合し、さらに純粋を加えて加水分解と脱水縮合反応を行う方法が挙げられる。
【0038】
(a−1)成分である無機酸化物微粒子を溶剤に分散した分散液の固形分濃度は、10〜60質量%であることが好ましく、さらに無機酸化物微粒子の分散安定性が向上する傾向にあることから、15〜40質量%であることが好ましい。また、混合するシランカップリング剤の順序は特に規定されない。また、純水の含有量は、シランカップリング剤の合計モル数に対して0.1〜5倍モルであることが好ましい。
【0039】
該加水分解反応は、シランカップリング剤1モルに対し、必要に応じて0.5〜0.6モルの0.001〜0.1規定の塩酸または酢酸水溶液等の加水分解触媒を加え、常温、若しくは加熱下で攪拌することも好ましい。
【0040】
脱水縮合反応は、例えば(a−1)成分の分散溶剤、加水分解反応するために添加した純水(過剰分)、加水分解反応によって生じた低級アルコールを、常圧若しくは減圧下で、トルエン等の非極性溶剤と共に共沸留出させ、分散媒を非極性溶剤に置換した後、加熱下で攪拌するという方法が適当である。
【0041】
(a−2)成分と(a−3)成分の使用量は、(a−1)成分の無機酸化物微粒子100質量部に対し、(a−2)成分は5〜60質量部であることが好ましく、(a−3)成分は10〜40質量部であることが好ましい。さらに得られる(A)成分の溶液の保存安定性が向上する傾向にあるため、(a−2)成分と(a−3)成分は、(a−1)成分である無機酸化物微粒子100質量部に対して、合計で30〜70質量部使用することが好ましい。
【0042】
上記(a−1)成分〜(a−3)成分を反応して得られた(A)成分は、硬化膜形成に用いる組成物の成分として、(B)成分および(C)成分と共に用いられる。該組成物中で(A)成分は、(A)成分と(B)成分の合計に対して、10〜50質量%であり、好ましくは15〜45質量%であり、より好ましくは20〜40質量%である。10〜50質量%にすることで、硬化膜にした時の耐磨耗性と耐候性の両立が可能となる。なお、本発明では、(A)成分の量関係をいうときの(A)成分の量は、(A)成分を含む分散液中の固形分量を意味する。
【0043】
<(B)成分について>
(B)成分は、本発明の組成物に含まれる分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有する数平均分子量が10,000以下のモノマーまたはオリゴマーである。(B)成分は、活性エネルギー線によって硬化可能なモノマーやオリゴマーであれば特に限定されない。使用可能なモノマーやオリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートなどの重合性不飽和結合を有する多官能(メタ)アクリレートなどが挙げられ、硬化膜の要求性能に応じて選択すれば良い。(B)成分のモノマーまたはオリゴマーの数平均分子量は10,000以下であり、5,000以下が好ましく、1,000以下がより好ましく、500以下が特に好ましい。数平均分子量は小さくなるほど耐摩耗性が高くなる傾向がある。なお、数平均分子量が10,000超のポリマー成分は(B)成分に含まれない。
【0044】
多官能(メタ)アクリレートの具体例としては、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=2〜15)ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=2〜15)ジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコール(n=2〜15)ジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、トリメチロールプロパンジアクリレート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)−ヒドロキシエチル−イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレ−ト、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型ジエポキシと(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシジ(メタ)アクリレート等のエポキシポリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体に2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを反応させたウレタントリ(メタ)アクリレート、イソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートを反応させたウレタンジ(メタ)アクリレート、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートを反応させたウレタンヘキサ(メタ)アクリレート、ジシクロメタンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを反応させたウレタンジ(メタ)アクリレート、ジシクロメタンジイソシアネートとポリテトラメチレングリコール(n=6〜15)のウレタン化反応物に2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを反応させたウレタンジ(メタ)アクリレート等のウレタンポリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンとコハク酸と(メタ)アクリル酸を反応させたポリエステルポリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンとコハク酸とエチレングリコールと(メタ)アクリル酸を反応させたポリエステルポリ(メタ)アクリレート等のポリエステルポリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0045】
組成物中で(B)成分は、(A)成分と(B)成分の合計に対して、50〜90質量%であり、好ましくは55〜85質量%、より好ましくは60〜80質量%である。50〜90質量%にすることで、硬化膜にした時の耐磨耗性と耐候性の両立が可能となる。
【0046】
(B)成分は、(b−1)成分〜(b−3)成分の少なくとも一種を含むことが好ましく、主として(b−1)成分〜(b−3)成分にて構成されることがより好ましい。
【0047】
<(b−1)成分について>
本発明に用いられる(b−1)成分は、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有するポリ[(メタ)アクリロイルオキシアルキル]イソシアヌレートであって、組成物より形成した硬化膜の耐磨耗性を高度に保ち、密着性を改善する成分である。
【0048】
(b−1)成分として、具体的には、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシプロピル)イソシアヌレート、トリス(2−メタクリロイルオキシプロピル)イソシアヌレート、ビス(アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス(メタクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス(2−アクリロイルオキシプロピル)−2−エトキシプロピルイソシアヌレート、ビス(2−アクリロイルオキシプロピル)−2−ヒドロキシエトキシプロピルイソシアヌレート、トリス(アクリロイルオキシエトキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタクリロイルオキシエトキシエチル)イソシアヌレート、ビス(アクリロイルオキシエトキシエチル)−2−ヒドロキシエトキシエチルイソシアヌレート、ビス(メタクリロイルオキシエトキシエチル)−2−ヒドロキシエトキシエチルイソシアヌレートなどが挙げられる。これらは1種で、また2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0049】
これらの中でも好ましい(b−1)成分は、ビス(アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートであり、これらは硬化膜の強靭性、耐候性、耐久性の改善効果が大きい。
【0050】
(b−1)成分の配合量としては、(B)成分を100質量部としたとき、30〜90質量部、好ましくは40〜80質量部である。該配合量を30〜90質量部とすることで、硬化膜にしたときの耐磨耗性と耐候性の両立が可能となる。
【0051】
<(b−2)成分について>
本発明に用いられる(b−2)成分は、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有し、脂環式骨格を有するウレタンポリ(メタ)アクリレートであって、(A)成分である表面修飾無機酸化物微粒子の本発明の組成物中への分散安定性を向上させ、本発明の組成物を硬化させてなる硬化膜中で(A)成分が相分離するのを防止するのに最も効果のある成分であり、本発明の組成物より形成した硬化膜の密着性、耐温水性および耐候性を改善すると共に、硬化膜の透明性も改善する。
【0052】
(b−2)成分である脂環式骨格を有するウレタンポリ(メタ)アクリレートとしては、具体的には、ヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリレートと脂環式骨格を有し分子内に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物とのウレタン化反応生成物、および脂環式骨格を有し分子内に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートにポリオール、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド系のジオールを反応させて付加体を合成した後、その残った末端イソシアネート基にヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリレートを付加させたウレタン化反応生成物が挙げられる。
【0053】
脂環式骨格を有するポリイソシアネート化合物の具体例としては、イソホロンジイソシアネート、2,2’−メチレンビス(シクロヘキシル)イソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,6−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンなどのポリイソシアネート単量体等を挙げることができる。好ましくは、イソホロンジイソシアネートおよび1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを挙げることができる。
【0054】
付加体の合成に使用するポリオールは特に限定されないが、その具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、グリセリン等のアルキルポリオールおよびこれらのポリエーテルポリオール;多価アルコールと多塩基酸から合成されるポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等のポリエステルポリオールが挙げられる。
【0055】
ヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリレートの具体例としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート,2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。本発明においては炭素数4個以下のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが(A)成分との相溶性に優れるため好ましく、さらに好ましくは、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートである。
【0056】
ポリイソシアネートと、各種ジオールと、ヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリレートとの反応は、ジラウリン酸n−ブチル錫等の錫系触媒の存在下に、イソシアネート基とヒドロキシル基がほぼ当量になるように用いて、60〜80℃で数時間加熱する。反応物は、一般に高粘度となることが多いので、反応中、または反応終了後に、有機溶剤あるいは他のモノマーで希釈するのが好ましい。
【0057】
本発明における(b−2)成分は、上記のポリイソシアネート化合物とヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとを反応させて得たウレタンポリ(メタ)アクリレートが用いられるが、(A)成分との相溶性の点からイソホロンジイソシアネート1モルに対して、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート2〜2.5モルを反応させたウレタンポリ(メタ)アクリレートが、得られる硬化膜の耐温水性と耐候性が優れているので好ましい。このモル比が2未満の場合、イソシアネート成分が未反応で残ってしまい、残存イソシアネートと水分とが反応して尿素が発生し、硬化膜が経時変化して、膜が黄変するなどの不都合を生じる。モル比が2.5モルを超える場合、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートが過剰に残ってしまうため、硬化膜が親水化して耐水性や耐候性が低下する。
【0058】
(b−2)成分の配合量としては、(B)成分を100質量部としたとき5〜60質量部、好ましくは10〜50質量部である。該配合量を5〜60質量部とすることで、硬化膜にしたときの耐磨耗性と耐候性の両立が可能となる。
【0059】
<(b−3)成分について>
本発明に用いられる(b−3)成分は、下記構造式(3)で表される化合物であり、硬化膜の密着性および耐候性、耐久性を改善する成分である。
Q−O−R5−O−Q (3)
[構造式(3)中、Qは(メタ)アクリロイル基を、R5は炭素数4〜12の分岐または直鎖の炭化水素基を表す。]
【0060】
(b−3)成分として、具体的には、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート等が挙げられる。
【0061】
これらの中でも好ましい(b−3)成分としては、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレートであり、これらは硬化膜の密着性改善効果が大きい。
【0062】
(b−3)成分の配合量としては、(B)成分を100質量部としたとき5〜20質量部、好ましくは8〜15質量部である。該配合量を5〜20質量部とすることで、密着性、透明性、耐磨耗性、耐候性に優れる硬化膜が得られる。
【0063】
以上の(A)成分と(B)成分が組成物を構成する必須成分である。該組成物は、数平均分子量10,000超のポリマーを含んでいても良いが、スプレー塗装およびフローコートする際の作業性の観点から、その量は(A)成分および(B)成分の合計100質量部に対して10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、実質的に含まないことが特に好ましい。
【0064】
<(C)成分について>
(C)成分は、本発明の組成物に含むことのできる光重合開始剤である。(C)成分は、本発明の組成物を紫外線照射により硬化させる場合には添加することが好ましい。この(C)成分は紫外線によりラジカルを発生し、重合性モノマーおよびオリゴマーを重合させるものであればいずれでも使用可能であり、組成物中で相溶性を考慮して適宜選択すればよく、特に限定されない。
【0065】
具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトイン、ブチロイン、トルオイン、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4−ビス(ジメチルアミノベンゾフェノン)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物;ベンゾイルパーオキシド、ジtert−ブチルパーオキシド等のパーオキシド化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド化合物を挙げることができる。
【0066】
好ましい光重合開始剤は、ベンゾフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドであり、これらは単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0067】
(C)成分は、本発明の組成物を電子線等の紫外線以外の活性エネルギー線で硬化させる場合には必ずしも必要でないが、該組成物を紫外線で硬化させる場合には、(A)成分および(B)成分の合計100質量部に対して、10質量部を上限に添加することができ、0.01〜5質量部を添加することが好ましい。(C)成分を添加することで、硬化物の外観を損なうことなく硬化させることができる。
【0068】
溶剤は、(A)成分の製造に際し含まれるが、本発明の組成物を均一に溶解(分散)し、塗布を容易にしたりするために用いても良い。すなわち、任意の成分として用いられる溶剤は、該組成物に均一溶解性、分散安定性、さらには基材との密着性および硬化膜の平滑性、均一性などを向上させることができる。その使用量としては(A)成分および(B)成分の合計量100質量部に対して100〜500質量部、好ましくは150〜300質量部である。そして、この目的で使用できる溶剤は特に限定されないが、具体的には、アルコール、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル、ケトン、エステル、多価アルコール誘導体等の有機溶剤から適宜選ぶことができる。なお、目的により2種以上を混合した混合溶剤であってもかまわない。
【0069】
本発明の組成物には、耐候性や耐久性を改善する目的で、紫外線吸収剤(D)((D)成分ともいう)や光安定剤(E)((E)成分ともいう)を添加することができる。
【0070】
<(D)成分について>
(D)成分は、本発明の組成物に含むことのできる紫外線吸収剤である。(D)成分は特に限定されず、本発明の組成物に均一に溶解し、かつその耐候性が良好なものであれば使用可能である。本発明の組成物に対する良好な溶解性および耐候性改善効果から、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ヒドロキシフェニルトリアジン、サリチル酸フェニル、安息香酸フェニルから誘導された化合物で、それらの最大吸収波長が240〜380nmの範囲である紫外線吸収剤が好ましい。特に、組成物に多量に含有させることができるのでベンゾフェノン系やヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤が好ましく、またポリカーボネート樹脂等の基材ではその黄変を防ぐことができるという点からベンゾトリアゾール系やヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤が好ましい。
【0071】
紫外線吸収剤の具体例として、2−ヒドロキシベンゾフェノン、5−クロロ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクチロキシベンゾフェノン、4−ドデシロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシロキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシロキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−[3−(2−エチルヘキシル−1−オキシ)−2−ヒドロキシプロピルオキシ]フェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブチロキシフェニル)−6−(2,4−ビス−ブチロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチロキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン、フェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート、p−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニルサリシレート、3−ヒドロキシフェニルベンゾエート、フェニレン−1,3−ジベンゾエート等が挙げられる。これらは1種で、また2種以上を組み合わせて、使用することができる。
【0072】
これらの中では、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシロキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンおよび2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチロキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジンから選ばれる少なくとも1種を用いるのがより好ましい。
【0073】
(D)成分の含有量は、(A)成分および(B)成分の合計100質量部に対して1〜20質量部が好ましく、より好ましくは5〜15質量部である。含有量を1〜20質量部とすることで、硬化性を低下させることなく、硬化膜に耐候性を付与することができる。
【0074】
<(E)成分について>
(E)成分は、本発明の組成物に含むことのできる光安定剤である。(E)成分としては、例えばヒンダードアミン系光安定剤を使用することができる。(E)成分は、紫外線吸収剤(D)と併用することで、硬化膜の耐候性をより向上させる。
【0075】
ヒンダードアミン系光安定剤の具体例としては、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、2,4−ビス[N−ブチル−(1−シクロヘキシロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ]−6−(2−ヒドロキシエチルアミン)−1,3,5−トリアジン、セバシン酸とビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチロキシ)−4−ピペリジニル)エステルの反応物等が挙げられる。これらの内、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートおよびセバシン酸とビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチロキシ)−4−ピペリジニル)エステルの反応物が特に好ましい。
【0076】
(E)成分の含有量は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して0.01〜3質量部が好ましく、より好ましくは0.05〜1質量部である。該含有量を0.01〜3質量部とすることで、硬化性を低下させることなく、硬化膜に耐候性および耐久性を付与できる。
【0077】
<その他の成分>
本発明の組成物には、さらに、必要に応じて、酸化防止剤、黄変防止剤、ブルーイング材、顔料、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、沈降防止剤、帯電防止剤、防曇剤等の各種添加剤が含まれていてもよい。
【0078】
本発明の組成物を基材に塗布するには、ハケ塗り、スプレーコート、ディップコート、フローコート、スピンコート、カーテンコートなどの方法が用いられるが、組成物の塗布作業性、被覆の平滑性、均一性、硬化膜の基材に対する密着性向上の点から、適当な有機溶剤を添加して塗布するのが好ましい。また、粘度を調節するために組成物を加温してから塗装しても良い。
【0079】
本発明の組成物は、基材に塗布した後の活性エネルギー線照射により、架橋し、硬化膜を形成する。紫外線照射により硬化する際には、組成物を基材上に好ましくは膜厚1〜50μm、さらに好ましくは、3〜20μmになるように塗布し、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等を用いて、波長340〜380nmの紫外線を1000〜5000mJ/cm2となるように照射する。照射する雰囲気は、空気中でもよいし、窒素、アルゴン等の不活性ガス中でもよい。
【0080】
本発明において、塗装工程と活性エネルギー線硬化工程の間に加熱処理工程を施しても良い。一般的に加熱処理工程は、近赤外線ランプの照射、温風の循環等によって達成される。本発明の組成物は、塗装後、加熱処理工程炉内中の基材表面温度(以下加熱温度)が40〜90℃、加熱時間が60〜180秒で加熱処理した場合、屋外での長期に亘る密着性が良好となる。さらに好ましくは、加熱温度が50〜70℃、加熱時間が90〜120秒である。加熱温度が40℃未満では有機溶剤等が塗膜内部に多く残存し、耐水性、耐候性が不十分になりやすく、90℃を超えると外観、耐候性が不十分となりやすい。また加熱時間が90秒未満であると、有機溶剤等が塗膜内部に多く残存し、耐水性、耐候性が不十分になりやすく、180秒を超えると外観、耐候性が不十分となりやすい。
【0081】
本発明の組成物を硬化して得られる硬化膜は、密着性、耐温水性、耐摩耗性および耐候性に優れている。そのため、本発明の組成物は、基材たる各種合成樹脂成形品の表面改質に使用できる。この合成樹脂成形品としては、従来から耐磨耗性や耐候性等の改善要望のある各種熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂が挙げられる。その樹脂として、具体的にはポリメチルメタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ(ポリエステル)カーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂、ポリアリルジグリコールカーボネート樹脂などが挙げられる。特に、ポリメチルメタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂は、透明性に優れかつ耐摩耗性改良要求も強いため、本発明の塗料組成物を適用するのが特に有効である。また合成樹脂成形品とは、これらの樹脂からなるシート状成形品、フィルム状成形品、各種射出成形品などである。
【0082】
その中でもポリカーボネート樹脂成形品の表面に塗布し、活性エネルギー線を照射することにより硬化膜を形成した積層体は、自動車の窓ガラス代替用ポリカーボネート樹脂成形品、あるいは自動車ヘッドランプレンズ用ポリカーボネート樹脂成形品に好適である。
【実施例】
【0083】
以下、実施例より本発明をさらに詳しく説明する。なお、下記実施例および比較例における「部」は「質量部」を表わす。また、実施例および比較例における評価は次のような方法で行った。
【0084】
・塗料外観
組成物を目視で観察し、以下の基準で判定した。
○:沈殿物がなく、分散良好。
×:沈殿物が認められ、分散不十分。
【0085】
・硬化膜外観
(1)表面平滑性
硬化膜を目視で観察し、以下の基準で判定した。
○:表面平滑性有り。
×:表面平滑性無し。
(2)透明性
ASTM D−1003に準拠し、(株)村上色彩技術研究所製HM−65Wヘイズメーターを用いてヘイズ値を測定した。
(3)密着性
密着性は、以下の手順で確認した。硬化膜の表面にカッターで縦、横それぞれ1.5mm間隔で11本の基材に達する傷を入れて100個のます目をつくり、セロハン粘着テープ(巾25mm、ニチバン(株)製)をます目に圧着させて上方に急激にはがす。密着性の評価は、残存ます目数/全ます目数(100)で示す。
○:100/100(剥離なし)。
×:0/100〜99/100(剥離発生)。
【0086】
・耐磨耗性
テーバー型の摩耗試験機を使用し、摩耗輪CS−10F、500g荷重(4.90N)にて積層体の硬化膜を500回転摩耗した。その後、中性洗剤を用いて洗浄し、ヘイズメーターでヘイズ値を測定した。耐摩耗性は以下の基準で判定した。なお、測定はJIS−K7105:1981に準じた。
◎…増加ヘイズ値=10%未満。
○…増加ヘイズ値=10%以上15%未満。
×…増加ヘイズ値=15%以上。
【0087】
・耐温水性
積層体を80℃の温水中に2時間入れた後、上記硬化膜外観の(3)密着性と同じ評価をした。
○:100/100(剥離なし)。
×:0/100〜99/100(剥離発生)。
【0088】
・耐候性
積層体を耐候性試験機「サンシャインカーボンウエザオメーター」(装置名、型式WEL−SUN−HC−B型、スガ試験機(株)製)を用い、ブラックパネル温度63±3℃、降雨12分間、照射48分間のサイクルにて硬化膜面について試験した。3000時間曝露後の硬化膜の変化を以下のように確認した。
(1)外観
上記耐侯性試験後の積層体の外観を目視し、下記基準で評価した。
○:硬化膜に自然剥離がない。
×:硬化膜に自然剥離が観察される。
(2)ヘイズ
上記耐侯性試験後の積層体の透明度を、(株)村上色彩技術研究所製ヘイズメーターHM−150W型(商品名)を用いて、JIS−K7105:1981に従い測定し、下記基準で評価した。
◎:測定ヘイズ値が5%未満。
○:測定ヘイズ値が5%以上10%未満。
×:測定ヘイズ値が10%以上。
(3)YI
上記耐侯性試験後の積層体の黄色度(YI(イエローインデックス))を、大塚電子(株)製瞬間マルチ測光システムMCPD−3000(商品名)を用いて、JIS−K7105:1981に従い測定し、下記基準で評価した。
◎:YI値が3未満。
○:YI値が3以上6未満。
×:YI値が6以上。
【0089】
<(A)成分の合成>
[製造例1] 表面修飾無機酸化物微粒子(P−1)の合成
攪拌機、温度計およびコンデンサーを備えた200ミリリットルの3ツ口フラスコに、(a−1)成分としてイソプロパノール分散シリカゾル「IPA−ST」(商品名、分散媒;イソプロパノール、SiO2濃度;30質量%、平均一次粒子径;15nm、日産化学工業(株)製)(以下、IPA−STと略記する。)120g、(a−2)成分として3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン「KBM−503」(商品名、信越化学工業(株)製。R1=3−メタクリロイルオキシプロピル基、n=1、R2=メトキシ基。)(以下、KBM−503と略記する。)17.2gおよび(a−3)成分としてプロピルトリメトキシシラン(東京化成工業(株)製。R3=プロピル基、m=1、R4=メトキシ基。)3.8gを入れ、攪拌しながら昇温させ、揮発成分の還流が始まると同時に脱イオン水8.2gを加え、還流下で2時間攪拌しながら加水分解および脱水縮合反応を行った。常圧状態でアルコール、水等の揮発成分を留出させ、固形分濃度が約60質量%の時点でトルエン72gを追加し、還流下で3時間攪拌しながらアルコール、水等をトルエンと一緒に共沸留出させ、トルエン分散系とした。さらに、トルエンを留出させながら約110℃で4時間反応を行ない、固形分濃度を60質量%超とした。得られた表面修飾無機酸化物微粒子のトルエン溶液(P−1)は、黄色でニュートン流体の透明、粘稠液体であった。また、固形分濃度が加熱残分で60質量%となるように、トルエンを加えて調整した。なお、加熱残分は、75℃で2時間処理した後105℃で1時間加熱した前後の質量から下記式で求めたものである。
加熱残分(質量%)=(加熱後の重量(g)/加熱前重量(g))×100
【0090】
[製造例2〜5、比較製造例1]
表1に示す配合組成で表面修飾無機酸化物微粒子溶液(P−2〜5、Q−1)を作製した。なお、(a−1)成分としてはIPA−STを、(a−2)成分としてはKBM−503を、(a−3)成分としてはR3−Si−(OCH33を用いた。
【0091】
[製造例6] 表面修飾無機酸化物微粒子(P−6)の合成
攪拌機、温度計およびコンデンサーを備えた200ミリリットルの3ツ口フラスコに、(a−1)成分であるコロイダルシリカと(a−3)成分であるヘキサメチルジシロキサン(R3=メチル基、m=3、R4=OSi(CH33基)の反応物であるメチルエチルケトン分散シリカゾル「MEK−ST」(商品名、分散媒;MEK、SiO2濃度;30質量%、平均一次粒子径;15nm、日産化学工業(株)製)120gおよび(a−2)成分としてKBM−503 7.2gを入れ、攪拌しながら昇温させ、揮発成分の還流が始まると同時に脱イオン水0.5gを加え、還流下で2時間攪拌しながら加水分解および脱水縮合反応を行った。常圧状態、還流下で3時間攪拌しながらアルコール、水等をMEKと一緒に留出させた。さらに、MEKを留出させながら約80℃で2時間反応を行ない、固形分濃度を60質量%超とした。得られた表面修飾無機酸化物微粒子のMEK溶液(P−6)は、黄色でニュートン流体の透明、粘稠液体であった。また、固形分濃度は加熱残分で60質量%となるように、MEKを加えて調整した。
【0092】
【表1】

【0093】
[(B)成分の調製]
<(b−2)成分の合成>
[製造例7]ウレタンジアクリレート(UA−1)の合成
攪拌機、温度計およびコンデンサーを備えた2リットルの4ツ口フラスコに、2−ヒドロキシエチルアクリレート487.6部、ジラウリン酸ジ−n−ブチル錫0.047部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.47部を計量し、55℃で攪拌しながら、イソホロンジイソシアネート444.4部を4時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに70℃で4時間反応し、ウレタンジアクリレート(UA−1)を得た。
【0094】
[実施例1〜13、比較例1]
表2〜4に示す配合比で組成物を調製し、ポリカーボネート樹脂射出成形板(パンライトL−1225Z−100(商品名)、クリヤー、帝人化成(株)製)3mm厚にスプレー塗布し、乾燥機中60℃で90秒加熱乾燥した。次に、乾燥された試料を空気雰囲気中において高圧水銀灯を用い、3,000mJ/cm2(波長320〜380nmの紫外線積算エネルギー、(株)オーク製作所製紫外線光量計UV−351(商品名)にて測定)の紫外線を照射し、硬化膜の膜厚が8〜9μmである耐摩耗性ポリカーボネート樹脂板(積層体)をそれぞれ得た。性能の評価結果を表2〜5に示す。
【0095】
[比較例2]
窒素導入口、攪拌機、コンデンサーおよび温度計を備えた1Lの4つ口フラスコに、MEK50部を入れ、窒素雰囲気下で80℃に昇温し、その中へメチルメタクリレート80部、グリシジルメタクリレート20部およびAIBN 0.5部の混合物を3時間かけて滴下した。その後、さらに、MEK 80部とAIBN 0.2部の混合物を加え4時間重合させた。その後、MEK 74.4部、MEHQ 0.5部、トリフェニルホスフィン2.5部およびアクリル酸10.1部を加え、空気を吹き込みながら80℃で30時間攪拌した。その後冷却し、反応物をフラスコより取り出し、側鎖に光重合性官能基を有するポリアクリルアクリレートの溶液を得た(固形分35質量%、数平均分子量約30,000、平均二重結合当量約788g/mol)。この溶液を用いて表2に示す配合比で組成物を調製し、実施例1と同様に積層体を得た。性能の結果を表5に示す。
【0096】
なお、表2〜4中の化合物は下記の通りである。
AIC:トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート(分子量423)とビス(2−アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート(分子量369)の混合物(東亞合成(株)製、商品名:アロニックスM−315)。
UA−1:イソホロンジイソシアネート1molおよび2−ヒドロキシエチルアクリレート2molから合成したウレタンジアクリレート(分子量454)。
NDDA:1,9−ノナンジオールジアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名:ビスコート#260)。(分子量268)。
MPG:メチルフェニルグリオキシレート(BASFジャパン(株)製、商品名:Darocur MBF)。
TPO:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASFジャパン(株)製、商品名:Lucirin TPO)。
BDK:ベンジルジメチルケタール(BASFジャパン(株)製、商品名:Irgacure 651)。
チヌビンPS:2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASFジャパン(株)社製、商品名:チヌビンPS)。
チヌビン400:2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシロキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン(BASFジャパン(株)製、商品名:チヌビン400)。
チヌビン292:ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート(BASFジャパン(株)製、商品名:チヌビン292)。
チヌビン123:デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル、1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物(BASFジャパン(株)製、商品名:チヌビン123)。
ペインタッドQ:ポリシロキサン(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名:ペインタッドQ)
BYK−300:ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンのキシレン/イソブタノール(4/1)溶液(固形分52%、BYK(株)製、商品名:BYK−300)。
PGM:プロピレングリコールモノメチルエーテル。
MIBK:メチルイソブチルケトン。
ECA:エチルカルビトールアセテート。
MEK:メチルエチルケトン。
【0097】
【表2】

【0098】
【表3】

【0099】
【表4】

【0100】
実施例1〜13の本発明の組成物は、沈殿物がなく、分散が良好であった。また、これらの組成物を用いて形成した硬化膜は、表面平滑性および透明性という基本的な性能に加えて、密着性、耐磨耗性、耐温水性および耐候性に優れていた。しかし、比較例1では、(a−3)成分を原料として用いずに製造した表面修飾無機酸化物微粒子Q−1を用いたので密着性、耐温水性および耐侯性が悪かった。
【0101】
また、比較例2では、(B)成分に換えて、分子量が10,000を超える分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有するポリマーを用いたので、硬化膜の密着性、耐磨耗性、耐温水性および耐侯性が不十分であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)〜(C)成分を以下の割合で含有する活性エネルギー線硬化性組成物:
(A)成分は、下記(a−1)〜(a−3)成分を反応させて得られる表面修飾された無機酸化物微粒子であって、その含有量が、(A)成分と(B)成分の合計に対して10〜50質量%である;
(a−1)平均一次粒子径が500nm以下の無機酸化物微粒子、
(a−2)下記構造式(1)で表される化合物
1n−Si−R24-n (1)
[構造式(1)中、R1は(メタ)アクリロイル基を含む官能基を、R2は加水分解可能な官能基またはヒドロキシル基を、nは1〜3の自然数を表す。]、および
(a−3)下記構造式(2)で表される化合物
3m−Si−R44-m (2)
[構造式(2)中、R3は炭素数の合計が2〜7の脂肪族飽和炭化水素基を、R4は、加水分解可能な官能基またはヒドロキシル基を、mは1〜3の自然数を表す。]、
(B)成分は、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有する数平均分子量が10,000以下のモノマーまたはオリゴマーであって、その含有量が、(A)成分と(B)成分の合計に対して50〜90質量%である;および
(C)成分は、光重合開始剤であって、その含有量が、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して0.1〜10質量部である。
【請求項2】
(B)成分が、下記(b−1)〜(b−3)成分からなる(メタ)アクリロイル基を有するモノマーまたはオリゴマーの混合物である請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性組成物:
(b−1)分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有するポリ[(メタ)アクリロイルオキシアルキル]イソシアヌレート 30〜90質量部、
(b−2)1分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有し、脂環式骨格を有するウレタンポリ(メタ)アクリレート 5〜60質量部、
(b−3)下記構造式(3)で表される化合物 5〜20質量部
Q−O−R5−O−Q (3)
[構造式(3)中、Qは(メタ)アクリロイル基を、R5は炭素数4〜12の分岐または直鎖の炭化水素基を表す。]。
【請求項3】
さらに、紫外線吸収剤(D)および/またはヒンダードアミン系光安定剤(E)を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物に、活性エネルギー線を照射してなる硬化膜。
【請求項5】
ポリカーボネート樹脂成形品上に、請求項4に記載の硬化膜からなる層を有する積層体。
【請求項6】
自動車用の部材として用いられることを特徴とする請求項5に記載の積層体。
【請求項7】
自動車の窓ガラス代替として用いられることを特徴とする請求項6に記載の積層体。
【請求項8】
自動車のヘッドランプレンズとして用いられることを特徴とする請求項6に記載の積層体。

【公開番号】特開2013−10921(P2013−10921A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−21801(P2012−21801)
【出願日】平成24年2月3日(2012.2.3)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】