説明

活性エネルギー線硬化性組成物及びその硬化物が被覆された物品

【課題】顔料を添加した場合における顔料分散性が良好であり、基材に硬化塗膜を形成した場合に表面平滑性及び付着性に優れた活性エネルギー線硬化性組成物を提供する。
【解決手段】一分子中に二個以上のラジカル重合性不飽和結合を有する化合物である成分(A)と、ポリマー型フッソ系界面活性剤である成分(B)とを含有し、前記成分(A)と前記成分(B)との合計を100質量部としたとき、前記成分(A)の含有量が95〜99.5質量部であり、前記成分(B)の含有量が0.5〜5質量部である活性エネルギー線硬化性組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料の分散安定性に優れた活性エネルギー線硬化性組成物に関し、着色組成物の色彩等の外観に優れた着色被膜を形成するのに使用される活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、顔料は、用途による色目、色調等を考慮し、1種又は2種以上を調色して用いられる。その際に、顔料が本来持っている色度特性を得、かつ高い透過率、コントラストを得るためには、顔料を微細で安定な粒子に分散させる必要がある。顔料の分散が不安定な場合、顔料が凝集するため、着色塗膜に色むらが起こり色目、色調等が低下し、良好な色彩を持った外観が得られない。一般的に、赤色、オレンジ色、黄色の顔料は、安定に分散させることが難しく、色彩等の低下の大きな要因となっていた。
【0003】
顔料を微細で安定な粒子に分散するための方法としては、顔料の表面処理、例えば一般的なロジン処理の他、酸性基処理、塩基性処理、顔料誘導体処理等の表面処理をする方法が提案されている(特許文献1、2参照)。さらに、顔料の表面処理だけでは充分な分散安定性を得るのが難しいことから、より分散安定性を改善するために、分散剤として低分子の顔料誘導体を使用する方法が提案されている(特許文献3、4参照)。その他に、高分子の顔料分散剤を用いる方法も提案されている(特許文献5、6参照)。
【特許文献1】特開昭57−28162号公報
【特許文献2】特開昭59−168070号公報
【特許文献3】特公平4−3841号公報
【特許文献4】特開平11−295515号公報
【特許文献5】特開昭54−37082号公報
【特許文献6】特開平9−169821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの方法を用いても必ずしも選ばれた顔料が良好に分散できるわけではなく、たとえ分散安定性が改善されても、最近の着色塗膜に要求される高い色目、色調等が得られるほど充分なレベルではなかった。
【0005】
したがって、本発明は、顔料を添加した場合における顔料分散性が良好であり、基材に硬化塗膜を形成した場合に表面平滑性及び付着性に優れた活性エネルギー線硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、特定のポリマー型フッソ系界面活性剤を特定量配合することによって、顔料分散性が高まり、高い色目,色調等を持った良好な外観が得られることを見出し、本発明に至った。具体的には、本発明は、一分子中に二個以上のラジカル重合性不飽和結合を有する化合物である成分(A)と、ポリマー型フッソ系界面活性剤である成分(B)とを含有し、前記成分(A)と前記成分(B)との合計100を質量部としたとき、前記成分(A)の含有量が95〜99.5質量部であり、前記成分(B)の含有量が0.5〜5質量部である活性エネルギー線硬化性組成物及びその硬化物が被覆された物品である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、顔料を添加した場合における顔料分散性が良好であり、基材に硬化塗膜を形成した場合に表面平滑性及び付着性に優れた活性エネルギー線硬化性組成物を提供できる。本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、顔料分散性に優れているため、これを用いて塗装される着色塗膜は、高い色目,色調等を有し、外観に優れるという効果を得ることができる。特に錫やアルミ等の金属蒸着膜上に着色被膜を形成した場合に色むらを改良する効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
まず、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物が含有する成分について、詳しく説明する。
【0009】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物が含有する成分(A)である、一分子中に二個以上のラジカル重合性不飽和結合を有する化合物は、活性エネルギー線の照射により良好な重合活性を示す成分である。ラジカル重合性不飽和結合の具体例としては、(メタ)アクリロイルオキシ基が挙げられる。一分子中に含まれる二個以上のラジカル重合性不飽和結合は、一種でも良く、二種以上でも良い。なお、「(メタ)アクリル」とは「アクリル」と「メタクリル」との総称であり、その他の「(メタ)アクリ・・・」も同様に、「アクリル」と「メタクリル」から派生する基の総称である。一分子中に二個以上のラジカル重合性不飽和結合を有する化合物の具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0010】
一分子中に二個のラジカル重合性不飽和結合を有する2官能性単量体としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ブテン−1,4−ジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールジ(メタ)アクリレート、水素化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス−(4−(メタ)アクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−(メタ)アクリロキシ(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン、ビス−(2−メタアクリロイルオキシエチル)フタレート等の2官能性(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。その他、ビスフェノールA型ジエポキシと(メタ)アクリル酸とを反応させたエポキシジ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート;イソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとを反応させたウレタンジ(メタ)アクリレート、ジシクロメタンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとを反応させたウレタンジ(メタ)アクリレート、ジシクロメタンジイソシアネートとポリ(n=6−15)テトラメチレングリコールとのウレタン化反応物に2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとを反応させたウレタンジ(メタ)アクリレート等のウレタンポリ(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールとコハク酸及び(メタ)アクリル酸とを反応させたポリエステル(メタ)アクリレート等のポリエステル(メタ)アクリレート;が挙げられる。
【0011】
一分子中に三個以上のラジカル重合性不飽和結合を有する多官能性単量体としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート等の多官能性(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。また、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体に2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを反応させたウレタントリ(メタ)アクリレート、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとを反応させたウレタンヘキサ(メタ)アクリレート等のウレタンポリ(メタ)アクリレート;トリメチロールエタンとコハク酸及び(メタ)アクリル酸とを反応させたポリエステル(メタ)アクリレート、トリメチロ−ルプロパンとコハク酸、エチレングリコ−ル、及び(メタ)アクリル酸とを反応させたポリエステル(メタ)アクリレート等のポリエステルポリ(メタ)アクリレート;が挙げられる。
【0012】
中でも、一分子中に三個又は四個のラジカル重合性不飽和結合を有する化合物が好ましく、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトルヘキサアクリレートが特に好ましい。成分(A)は、一種を単独で用いることができ、又は二種以上を併用することができる。
【0013】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物が含有する成分(B)であるポリマー型フッソ系界面活性剤は、顔料を分散させるのに有効な成分であり、各種市販されているものが使用できる。ポリマー型フッ素系界面活性剤とは、パーフルオロアルキル基を有し、GPCによって測定した重量平均分子量が5,000〜25,000である界面活性剤を言う。その市販品としては、例えば、「メガファックF−470」(商品名、大日本インキ化学工業株式会社製、重量平均分子量6,900)、「メガファックF−477」(商品名、大日本インキ化学工業株式会社製、重量平均分子量13,000)、「BYK−340」(商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製、重量平均分子量13,000)等のポリマー型フッソ系界面活性剤が挙げられる。これらの内、最も顔料分散性が良好である「BYK−340」(商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製)等の重量平均分子量が10,000〜20,000であって、アクリル骨格を有するものが好ましい。成分(B)は、一種を単独で用いることができ、又は二種以上を併用することができる。
【0014】
なお、GPCの測定条件は次の通りである。
【0015】
(GPCの測定条件)
カラム:Shodex KF−800P+KF−806L×2
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:0.8ml/min
カラム温度:40℃
注入量:300μl
検出器:RI検出器(40℃)
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物において、成分(A)と成分(B)との合計100を質量部としたとき、成分(A)の含有量が95〜99.5質量部であり、成分(B)の含有量が0.5〜5質量部である。成分(B)の含有量が0.5質量部未満では充分な顔料分散が得られず、成分(B)の含有量が5質量部を超えるとレベリング性が低下し、また硬化塗膜の光沢も低下する。顔料分散性の観点から、成分(A)の含有量が97〜98.5質量部であり、成分(B)の含有量が1.5〜3質量部であることが好ましい。
【0016】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、さらに、顔料である成分(C)を含有することができる。赤色顔料の具体例としては、縮合アゾ系顔料が挙げられる。緑色顔料の具体例としては、塩素化銅フタロシアニン系顔料が挙げられる。黄色顔料の具体例としては、イソインドリノン系顔料が挙げられる。黒色顔料の具体例としては、カーボンブラック系顔料が挙げられる。成分(C)は、一種を単独で用いることができ、又は二種以上を併用することができる。
【0017】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物において、成分(C)の含有量は、成分(A)と成分(B)との合計100質量部に対して1〜10質量部が好ましい。
【0018】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、さらに、活性エネルギー線硬化性を持たない高分子化合物である成分(D)を含有することができる。成分(D)を配合することで、基材への付着性を向上させることができる。成分(D)の具体例としては、アクリルポリマー、塩酢ビ樹脂等が挙げられる。成分(D)は、一種を単独で用いることができ、又は二種以上を併用することができる。
【0019】
この成分(D)は、ビニル系単量体の単体又は混合物を(共)重合して得られる(共)重合体であり、ラジカル重合開始剤の存在下に溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法等の採用により得ることができる。ただし、活性エネルギー線硬化性を持たない高分子化合物とするため、ラジカル重合性不飽和結合がなくなるまで(共)重合を行うことが好ましい。なお、「(共)重合」とは「単独重合」と「共重合」との総称である。
【0020】
(共)重合可能な単量体の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、2−ジシクロペンテノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとエチレンオキシドの付加物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとプロピレンオキシドの付加物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとε−カプロラクトンの付加物などの2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと有機ラクトン類の付加物等の水酸基含有ビニルモノマー;スチレン、α−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン又はスチレン誘導体;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド化合物;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸類;(メタ)アクリロニトリル等の重合性不飽和ニトリル類;マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジブチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル等の(メタ)アクリル酸エステル類以外の不飽和カルボン酸エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル等のビニルエステル類;が挙げられる。(共)重合可能な単量体は、一種を単独で用いることができ、又は二種以上を併用することができる。
【0021】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物において、成分(D)の含有量は、成分(A)と成分(B)との合計100質量部に対して0.1〜400質量部が好ましく、基材との付着性をより向上させる観点から、50〜300質量部がより好ましい。
【0022】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、さらに、一分子中に一個のラジカル重合性不飽和結合を有する化合物である成分(E)を含有することができる。成分(E)を配合することで、活性エネルギー線硬化性組成物を塗布した際の平滑性、レベリング性を向上させることができる。
【0023】
成分(E)の具体例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート;が挙げられる。成分(E)は、一種を単独で用いることができ、又は二種以上を併用することができる。
【0024】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物において、成分(E)の含有量は、成分(A)と成分(B)との合計100質量部に対して0.1〜200質量部が好ましく、1〜60質量部がより好ましい。
【0025】
本発明においては、紫外線などの活性エネルギー線を照射して硬化させることから、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤の具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインモノメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アセトイン、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−エチルアントラキノン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド;が挙げられる。これらの中でも、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが好ましい。光重合開始剤は、一種を単独で用いることができ、又は二種以上を併用することができる。
【0026】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物において、光重合開始剤の含有量は、成分(A)と成分(B)との合計100質量部に対して0.1〜15質量部が好ましく、1〜10質量部がより好ましい。
【0027】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、必要に応じて、望ましい粘度に調整するために、有機溶剤を含有することができる。有機溶剤の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、酢酸メトキシエチル等のエステル系化合物;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン等のエーテル系化合物;トルエン、キシレン等の芳香族化合物;ペンタン、ヘキサン等の脂肪族化合物;が挙げられる。
【0028】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、レベリング剤、消泡剤、沈降防止剤、潤滑剤、研磨剤、防錆剤、帯電防止剤などの添加剤を含有することができる。
【0029】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、被覆材として各種の用途に使用できる。特に、樹脂成形品の表面に着色塗膜を形成するための顔料分散組成物として非常に有用である。以下、その方法を説明する。
【0030】
まず、樹脂成型品等の基材上に活性エネルギー線硬化性組成物を塗布する。活性エネルギー線硬化性組成物の塗布方法としては、ハケ塗り、スプレーコート、ディップコート、スピンコート、フローコート等の方法が挙げられるが、塗布作業性、被膜の平滑性、均一性の点から、スプレーコート法、フローコート法が好ましい。
【0031】
そして、基材上の活性エネルギー線硬化性組成物を硬化することで、着色塗膜を形成する。具体的には、活性エネルギー線硬化性組成物に活性エネルギー線を照射することにより、活性エネルギー線硬化性組成物を硬化することができる。活性エネルギー線としては、紫外線、電子線等が挙げられる。照射条件としては、例えば高圧水銀灯(波長:340〜380nm)を用いた場合、照射される紫外線エネルギー量が500〜2000mJ/cm2程度の条件が好ましい。
【0032】
活性エネルギー線硬化性組成物が前述した有機溶剤を含有する場合には、活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させる前に有機溶剤を揮発させなければならない。その際には、IRヒーター及び/又は温風等で加温し、50〜80℃、2〜10分の条件下で有機溶剤を揮発させることが好ましい。
【0033】
形成される着色塗膜の膜厚は、硬化後の厚さで3〜15μmの範囲であることが好ましい。
【0034】
このようにして、表面に着色塗膜が形成された着色樹脂成形品を得ることができる。この着色樹脂成形品は、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を用いて形成した着色被膜を有するため、高い色目,色調等を持った外観に優れたものとなる。特に錫やアルミ等の金属蒸着膜上に着色被膜を形成した場合に色むらを改良する効果が得られる。
【実施例】
【0035】
以下に、実施例及び比較例を挙げ、本発明を詳しく説明する。以下において『%』はすべて『質量%』を意味する。また、実施例及び比較例における各種の測定評価は次のような方法で行った。
【0036】
1.着色塗膜の顔料分散性評価
着色塗膜の顔料分散性を目視評価した。目視評価の判定は以下の基準で行った。
◎…顔料分散性良好で、色むらなし。
〇…顔料分散性良好であるが、極僅かに色むらあり。
△…顔料分散性やや不良であり、やや色むらあり。
×…顔料分散性不良で、色むらあり。
【0037】
2.着色塗膜のレベリング性
着色塗膜の平滑性を目視評価した。目視評価の判定は以下の基準で行った。
◎…表面が平滑で、高光沢がある。
〇…表面が平滑で、光沢がある。
△…表面にやや凹凸があり、やや平滑ではない。
×…平滑ではなく、光沢もない。
【0038】
3.付着性
着色塗膜に、カッターナイフを用いて切り傷の長さが約2cmの2本の切り目を直交するようにクロスカットを入れ、その上にセロハンテープを貼りつけ急激にはがした状態を観察した。また上記試験にて剥離が認められなかった場合については、追加評価として1mm間隔で基材まで達するクロスカットをカッターナイフで入れ、1mm2の碁盤目を100個作り、前述と同様の方法でさらに詳細に付着性の評価を行った。なお、いずれもアルミニウム層までは基材に密着しており、アルミニウム層と着色塗膜との付着性を評価した。
◎…クロスカット試験及び碁盤目剥離試験で剥離なし。
○…クロスカット試験では剥離しないが、碁盤目剥離試験では切り溝部が剥離する。
△…クロスカット試験でやや剥離する。
×…クロスカット試験で全面剥離する。
【0039】
<実施例1>
表1に示す成分をステンレス容器に計量し、約30分間、全体が均一になるまで攪拌して硬化液(活性エネルギー線硬化性組成物)を調製した。なお、有効成分10%のものを15質量部添加したということは、実質的にはその成分を1.5質量部添加したことを意味する。一方、ABS樹脂で成型された縦10cm、横10cm、厚さ3mmの正方形のテストピースに、アンダーコート材(商品名:ダイヤビームUM−338、三菱レイヨン株式会社製)を塗布し、紫外線で硬化させ、厚み10μmの硬化膜を得た。さらに通常用いられる真空蒸着法によりアルミニウムを蒸着させて金属化表面処理した。そして、この金属化表面処理した基材に、硬化液をスプレー塗装した。なお、スプレー塗装は、スプレーから基材までの距離を15cmに保ちながら、硬化後の膜厚が約10μmになるように行った。
【0040】
次に、加熱により有機溶剤を揮発させた後、空気中で高圧水銀灯を用い、波長340〜380nmの積算光量が1000mJ/cm2の活性エネルギー線を照射し、着色塗膜を形成した。得られた着色塗膜についての評価結果を表1に示す。
【0041】
<実施例2〜5、比較例1〜4>
表1又は2に示す成分を用いたこと以外は、実施例1と同様にして着色塗膜を形成した。得られた着色塗膜についての評価結果を表1又は2に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
なお、表1及び2で用いた略号は、以下の化合物を表す。
・DPHA :ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
・UA :ウレタンアクリレート、三菱レイヨン製商品名:「ダイヤビームUK−6053」
・TMPTA :トリメチロールプロパントリアクリレート
・BYK−340:ポリマー型フッソ系界面活性剤(重量平均分子量13,000)(ビックケミー・ジャパン社製商品名)
・F−470 :ポリマー型フッソ系界面活性剤(重量平均分子量6,900)、大日本インキ化学工業株式会社製商品名「メガファックF−470」
・C−T :マイクロリスブラック分散顔料(日本チバガイギー社製)
・BR−T :マイクロリスレッド分散顔料(日本チバガイギー社製)
・PS−254 :アクリルポリマー(50%)(三菱レイヨン製商品名)
・THFA :テトラヒドロフルフリルアクリレート
・レジミックスL:アクリル系レベリング剤(重量平均分子量13,000)(三井化学社製商品名)
・BYK−300:シリコン系レベリング剤(重量平均分子量6,200)(ビックケミー・ジャパン社製商品名)
・Ir−184 :光重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
)、日本チバガイギー社製商品名「イルガキュア184」
・MIBK :メチルイソブチルケトン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一分子中に二個以上のラジカル重合性不飽和結合を有する化合物である成分(A)と、ポリマー型フッソ系界面活性剤である成分(B)とを含有し、前記成分(A)と前記成分(B)との合計100を質量部としたとき、前記成分(A)の含有量が95〜99.5質量部であり、前記成分(B)の含有量が0.5〜5質量部である活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項2】
さらに、前記成分(A)と前記成分(B)との合計100質量部に対して、活性エネルギー線硬化性を持たない高分子化合物である成分(D)を0.1〜400質量部含有する請求項1記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項3】
さらに、前記成分(A)と前記成分(B)との合計100質量部に対して、一分子中に一個のラジカル重合性不飽和結合を有する化合物である成分(E)を0.1〜200質量部含有する請求項1又は2記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項4】
さらに、顔料である成分(C)を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物が被覆された物品。

【公開番号】特開2009−155521(P2009−155521A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−336593(P2007−336593)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】