説明

活性エネルギー線硬化性組成物

【課題】クラック、カールなどを伴うことなく、透明性が高く、高硬度な硬化膜を形成し、かつ、塗布・硬化前の活性エネルギー線硬化性組成物の配合完了後の懸濁液状態での貯蔵安定性が高い活性エネルギー線硬化性組成物及び、該活性エネルギー線硬化性組成物をプラスチック基材フィルムに塗布・硬化してプラスチック基材フィルムの上に硬化塗膜を形成したプラスチック積層フィルムを提供する。
【解決手段】活性エネルギー線硬化性化合物は、ヌレート骨格を含有するポリイソシアネートと水酸基と4個以上の(メタ)アクリロイル基とを含有する水酸基含有多官能(メタ)アクリレートとを反応させた特定の多官能ウレタン(メタ)アクリレートとシリカ微粒子よりなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は活性エネルギー線硬化性組成物および、これを用いたハードコート層を有するプラスチック積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶用ディスプレイ用偏光板保護プラスチックフィルム、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等に使用される保護プラスチックフィルムはその表面に耐摩耗性、耐擦り傷性、帯電防止性、反射防止性等のハード機能を付与するため、ハードコート層が施されている。このハードコート層には活性エネルギー線硬化性樹脂が一般的に使用されている。
【0003】
近年、プラスチックフィルムの表面硬度を上げる要求が多く、ハードコート層の性能向上が求められている。ハードコート層の表面硬度を上げる手段として広く用いられるのが、活性エネルギー線硬化性樹脂の多官能基化である。しかしながら一方で活性エネルギー線硬化性樹脂は硬化前後で樹脂密度の増大、すなわち硬化収縮(プラスチックフィルムのカール性増大)を起こすことが知られている。活性エネルギー線硬化性樹脂を多官能基化すればするほど硬化収縮は顕著となる。
【0004】
プラスチックフィルムの高硬度化とカール性低減に効果的なのが活性エネルギー線硬化性樹脂とアルミナ、シリカ、酸化チタン等の無機粒子を組み合わせた所謂、有機−無機ハイブリッドと呼ばれる方法である(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、無機粒子を有機層へ分散し、塗膜を作成した場合、硬化後の塗膜から無機粒子が欠損、ヘイズの増加、および脆性の発生等の現象が見られるようになる。これは有機物と無機物の分散性あるいは相溶性の悪さに起因すると考えられており、これらの問題を解決するために無機粒子の粒子径をナノサイズにまで減少させたナノフィラーの使用(特許文献2参照)や無機粒子の外殻を有機物で表面修飾した表面修飾無機フィラーの使用(特許文献3参照)が報告されている。
【0006】
特許文献1、2では、無機粒子をナノサイズにしたことにより、粒子の凝集による懸濁液状態での無機粒子の分散安定性悪化が起こり、硬化塗膜の透明性を下げるという欠点があった。また特許文献3では、有機物で表面修飾された無機粒子を使用したことにより、表面硬度の低下という欠点があった。
【0007】
特許文献4ではイソシアヌル酸アクリレートを柔軟成分として使用し、多官能ウレタンアクリレートとシリカ微粒子とともに配合している。しかし、硬化塗膜の低カール性と高い鉛筆硬度の両方を満足させることはできなかった。また硬化塗膜の平滑性も劣る結果となった。
【0008】
特許文献5ではヌレート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートと有機物で表面修飾されたシリカ微粒子を組み合わせているが、硬化塗膜の鉛筆硬度を低下させる結果に終わっている。またシリカ表面を修飾することによる製造工程が余分に必要であり、コストアップする欠点があった。
【0009】
以上のように、従来技術からは、無機粒子の添加は硬化塗膜の表面硬度を上げるために有効であることが示唆されたが、塗布・硬化前の活性エネルギー線硬化性組成物の懸濁液状態での無機粒子の分散安定性向上や硬化後のプラスチックフィルムの透明性向上についての有用な知見は何ら得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公平2−60696号公報
【特許文献2】特開2005−76005号公報
【特許文献3】特開2003−34761号公報
【特許文献4】特開2006−233167号公報
【特許文献5】特開2009−84328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、塗布・硬化前の活性エネルギー線硬化性組成物の懸濁液状態でのシリカの分散安定性を向上し、かつ、硬化後のプラスチックフィルムの表面硬度を上げつつ、透明性を向上し、カール性を低減することのできる活性エネルギー線硬化性組成物を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記活性エネルギー線硬化性組成物を基材上に塗布硬化させて形成した硬化塗膜を有する、表面硬度が高く、透明性が高く、カール性も低い積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、水酸基と4個以上のアクリロイル基とを含有する化合物の該水酸基から水素原子を除した基を少なくとも1個有するヌレート骨格を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート(UA)と、体積平均径(MV)及び累積平均径(50%D)換算の粒径がいずれも200nm以下であるシリカ微粒子(E)とを含む活性エネルギー線硬化性組成物が、塗布・硬化前の活性エネルギー線硬化性組成物の懸濁液状態でのシリカの分散安定性を著しく向上させ、さらに、プラスチックフィルムに塗布・硬化した際、硬化膜の表面硬度が高く、透明性が高く、カール性も低いことを見出した。
【0013】
すなわち、本発明は、活性エネルギー線硬化性化合物として、下記式(1)
【化1】

[式(1)中R1〜R3は、同一又は異なって、それぞれ、水酸基と1個以上の(メタ)アクリロイル基とを含有する水酸基含有(メタ)アクリレート(d)の該水酸基から水素原子を除した基を示し、R1〜R3のうち少なくとも1個の基は、水酸基と4個以上の(メタ)アクリロイル基とを含有する水酸基含有多官能(メタ)アクリレート(D)の該水酸基から水素原子を除した基であり;R4〜R6は、同一又は異なって、それぞれ、−(CH26−及び下記式(2a)〜(2g)
【化2】

{式(2d)中R7〜R10は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を表す。ただし、R7〜R10は同時に水素原子であることはない}
からなる群から選ばれる2価の基を示す]
で示されるヌレート骨格を含有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート(UA)を少なくとも含むとともに、体積平均径(MV)及び累積平均径(50%D)換算の粒径がいずれも200nm以下であるシリカ微粒子(E)を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物である。
好ましくは、前記ヌレート骨格を含有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート(UA)は、下記式(3)
【化3】

[式(3)中R4〜R6は、式(1)と同じ]
で示されるヌレート骨格含有イソシアネート化合物(B)と、水酸基と1個以上の(メタ)アクリロイル基とを含有する水酸基含有(メタ)アクリレート(d)の1種又は2種以上[ただし、水酸基と4個以上の(メタ)アクリロイル基とを含有する水酸基含有多官能(メタ)アクリレート(D)を少なくとも含む]との反応によって合成される。
また、好ましくは、組成物中に含まれる活性エネルギー線硬化性化合物の総重量1kgあたりに占める下記式(I)
【化4】

[式(I)中R4〜R6は、式(1)と同じ]
で示されるヌレート骨格のモル数nは0.1モルから0.3モルの範囲にある。
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、さらに、活性エネルギー線硬化性化合物として、水酸基含有(メタ)アクリレート(D’)、水酸基非含有(メタ)アクリレート(H)、前記多官能ウレタン(メタ)アクリレート(UA)以外のウレタン(メタ)アクリレート(UA’)を含有していてもよい。
また、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、さらに、光開始剤(F)、有機溶剤(G)を含有していてもよい。
より好ましくは、前記シリカ微粒子(E)の含有量は、活性エネルギー線硬化性化合物の総量100重量部に対して20〜100重量部であり、また好ましくは、組成物中の水分は0.03〜4.5重量%である。
さらに、好ましくは、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の配合完了直後の以下に記載の平均径に対する、配合完了後室温下暗所に12週間静置した時の以下に記載の平均径の増加がいずれも0.025μm未満である。
1)該組成物中のシリカ微粒子(E)の体積平均径(MV)
2)該組成物中のシリカ微粒子(E)の累積平均径(50%D)
【0014】
また、本発明では、基材と、該基材上に上記の活性エネルギー線硬化性組成物を塗布硬化させて形成した硬化塗膜とを有する積層体を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、基板等への塗布・硬化前の活性エネルギー線硬化性組成物の懸濁液状態でのシリカ微粒子の分散安定化に優れる特徴を有しており、さらに、プラスチックフィルム等の基板に塗布・硬化後の硬度、耐摩耗性、低カール性、平滑性に優れている。高硬度でカール性が小さいことからTAC(三酢酸セルロース)やPET(ポリエチレンテレフタレート)といった薄膜プラスチックフィルム基材のハードコート層として使用できる。
【0016】
本実施形態によれば、活性エネルギー線硬化性化合物としてヌレート骨格を含有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート(UA)と、粒径(体積平均径(MV)及び累積平均径(50%D)換算の粒径)が200nm以下であるシリカ微粒子(E)とを組み合わせることにより、硬化後の平滑性が良好で鉛筆硬度も高い塗膜を提供することが出来る。また本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は懸濁液中のシリカ微粒子の分散安定性に優れるため、長期間、例えば数ヶ月の貯蔵が可能で、工業的利便性が高い。さらに、一度に大量に製造、輸送、貯蔵が可能となるので、製造、流通、貯蔵の効率化とコスト削減がはかれる。また、シリカ微粒子に対して有機物による表面修飾の必要もないので、そのようなコストも不要である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】カール性評価方法を説明する模式図であり、図1aはカール性評価に用いる試料片における測定点を示す模式図、図1bは試験片の反りの測定方法を示す模式図である。
【図2】実施例2の活性エネルギー線硬化性組成物について、該組成物の配合完了直後から室温下暗所に静置した場合の該組成物中のシリカ微粒子の粒径分布の変化を示したグラフである。
【図3】比較例6の活性エネルギー線硬化性組成物について、該組成物の配合完了直後から室温下暗所に静置した場合の該組成物中のシリカ微粒子の粒径分布の変化を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、活性エネルギー線硬化性化合物として、下記式(1)
【化5】

[式(1)中R1〜R3は、同一又は異なって、それぞれ、水酸基と1個以上の(メタ)アクリロイル基とを含有する水酸基含有(メタ)アクリレート(d)の該水酸基から水素原子を除した基を示し、R1〜R3のうち少なくとも1個の基は、水酸基と4個以上の(メタ)アクリロイル基とを含有する水酸基含有多官能(メタ)アクリレート(D)の該水酸基から水素原子を除した基であり;R4〜R6は、同一又は異なって、それぞれ、−(CH26−及び下記式(2a)〜(2g)
【化6】

{式(2d)中R7〜R10は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を表す。ただし、R7〜R10は同時に水素原子であることはない}からなる群から選ばれる2価の基を示す]で示されるヌレート骨格を含有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート(UA)を少なくとも含むとともに、体積平均径(MV)及び累積平均径(50%D)換算の粒径がいずれも200nm以下であるシリカ微粒子(E)を含有している。
【0019】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物中、活性エネルギー線硬化性化合物の含有量は、例えば5〜50wt%、好ましくは10〜35wt%、さらに好ましくは15〜25wt%である。活性エネルギー線硬化性化合物の含有量が5wt%未満では、活性エネルギー線硬化性組成物が十分に硬化しにくく、50wt%より多いと、硬化フィルムのカール性が大きくなったり、表面硬度が低くなったりするため、表面硬度と低カール性を両立するフィルム特性が失われることとなる。
【0020】
式(1)で表されるヌレート骨格を含有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート(UA)[以下、本明細書中において、単に多官能ウレタン(メタ)アクリレート(UA)という]中の全てのR1〜R3で表される基のうち少なくとも1/5は、水酸基と4個以上の(メタ)アクリロイル基とを含有する水酸基含有多官能(メタ)アクリレート(D)の該水酸基から水素原子を除した基であることが好ましい。さらに好ましくは、多官能ウレタン(メタ)アクリレート(UA)中の全てのR1〜R3で表される基のうち少なくとも1/10は、水酸基と5個以上の(メタ)アクリロイル基とを含有する水酸基含有多官能(メタ)アクリレート(D)の該水酸基から水素原子を除した基であることが好ましい。
【0021】
<多官能ウレタン(メタ)アクリレート(UA)>
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物に含まれる多官能ウレタン(メタ)アクリレート(UA)は、下記式(1)
【化7】

[式(1)中R1〜R3は、同一又は異なって、それぞれ、水酸基と1個以上の(メタ)アクリロイル基とを含有する水酸基含有(メタ)アクリレート(d)の該水酸基から水素原子を除した基を示し、R1〜R3のうち少なくとも1個の基は、水酸基と4個以上の(メタ)アクリロイル基とを含有する水酸基含有多官能(メタ)アクリレート(D)の該水酸基から水素原子を除した基であり;R4〜R6は、同一又は異なって、それぞれ、−(CH26−及び下記式(2a)〜(2g)
【化8】

{式(2d)中R7〜R10は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を表す。ただし、R7〜R10は同時に水素原子であることはない}からなる群から選ばれる2価の基を示す]で表される。
【0022】
式(1)中R1〜R3によって示される、「水酸基と1個以上の(メタ)アクリロイル基とを含有する水酸基含有(メタ)アクリレート(d)の該水酸基から水素原子を除した基」における「水酸基と1個以上の(メタ)アクリロイル基とを含有する水酸基含有(メタ)アクリレート(d)[以下、本明細書中では、単に、水酸基含有(メタ)アクリレート(d)という]」としては、下記に例示のものが使用できる。
【0023】
<水酸基含有(メタ)アクリレート(d)>
以下に水酸基含有(メタ)アクリレート(d)の具体例をいくつか例示するが、本発明は、これらの例示に限定されるものではない。
【0024】
上記水酸基含有(メタ)アクリレート(d)としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及びこれらのカプロラクトン付加物等が挙げられる。
【0025】
市販されている製品としては、DPHA(ダイセル・サイテック株式会社製)、PETRA(ダイセル・サイテック株式会社製 ペンタエリスリトールトリアクリレート)、PETIA(ダイセル・サイテック株式会社製)、アロニックス M−403(東亞合成株式会社製 ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート)、アロニックス M−402(東亞合成株式会社製 ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート)、アロニックス M−400(東亞合成株式会社製 ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート)、SR−399(サートマー社製 ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート)、KAYARAD DPHA(日本化薬株式会社製)、KAYARAD DPHA−2C(日本化薬株式会社製)等が挙げられる。以上の製品は製品中に一部水酸基を含有した化合物を有している。
【0026】
また、R1〜R3のうち少なくとも1個の基によって示される、「水酸基と4個以上の(メタ)アクリロイル基とを含有する水酸基含有多官能(メタ)アクリレート(D)の該水酸基から水素原子を除した基」における「水酸基と4個以上の(メタ)アクリロイル基とを含有する水酸基含有多官能(メタ)アクリレート(D)[以下、本明細書中において、単に、水酸基含有多官能(メタ)アクリレート(D)という]」としては、下記に例示のものが使用できる。
【0027】
<水酸基含有多官能(メタ)アクリレート(D)>
水酸基含有多官能(メタ)アクリレート(D)は、水酸基と4個以上の、より好ましくは、5個以上の(メタ)アクリロイル基とを含有する。水酸基含有多官能(メタ)アクリレート(D)としては、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、及びこれらのカプロラクトン付加物等が挙げられる。
【0028】
前記の水酸基含有多官能(メタ)アクリレート(D)を含む市販製品としては、DPHA(ダイセル・サイテック株式会社製)、PETRA(ダイセル・サイテック株式会社製 ペンタエリスリトールトリアクリレート)、PETIA(ダイセル・サイテック株式会社製)、アロニックス M−403(東亞合成株式会社製 ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート)、アロニックス M−402(東亞合成株式会社製 ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート)、アロニックス M−400(東亞合成株式会社製 ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート)、SR−399(サートマー社製 ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート)、KAYARAD DPHA(日本化薬株式会社製)、KAYARAD DPHA−2C(日本化薬株式会社製)等が挙げられる。以上の製品は製品中に一部水酸基を含有した化合物を有している。水酸基含有多官能(メタ)アクリレート(D)としては、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
【0029】
4〜R6は、同一又は異なって、それぞれ、−(CH26−、上記式(2a)〜(2g)で表される2価の基によって示され、なかでも、−(CH26−、上記式(2a)で表される基が好ましい。
【0030】
式(2d)中、R7〜R10によって示される炭素数1〜6の炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、又はフェニル基が挙げられる。炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル基等の直鎖状、分岐鎖状、又は環状アルキル基が挙げられる。炭素数1〜6のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、s−ブトキシ、ペントキシ、ヘキシルオキシ基等の直鎖状又は分岐鎖状アルコキシ基が挙げられる。これらのなかでも、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル基等の炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が好ましい。
【0031】
(多官能ウレタン(メタ)アクリレート(UA)の分子量)
多官能ウレタン(メタ)アクリレート(UA)の重量平均分子量(Mw)は、1500〜13000が好ましく、より好ましくは1500〜10000、さらに好ましくは1500〜8000である。分子量が1500未満では、光照射後の硬化プラスチック基材に要求される低カール性、耐摩耗性を損なうことになり、逆に分子量が13000を超えると硬度の低下、耐摩耗性の低下を招き、プラスチック基材がトップコート、特にハードコートとしての役割を果たせなくなる。
【0032】
多官能ウレタン(メタ)アクリレート(UA)の含有量は、活性エネルギー線硬化性化合物に対し、例えば10〜100wt%、好ましくは40〜100wt%、さらに好ましくは70〜100wt%である。多官能ウレタン(メタ)アクリレート(UA)の含有量が10wt%未満では、硬化フィルムの硬度が低下するため、フィルム特性が損なわれる。
【0033】
多官能ウレタン(メタ)アクリレート(UA)は、下記式(3)
【化9】

で示されるヌレート骨格含有イソシアネート化合物(B)と、水酸基含有多官能(メタ)アクリレート(D)を含む水酸基含有(メタ)アクリレート(d)との反応により得ることができる。ここで、式(3)中R4〜R6は、式(1)と同じものとすることができる。水酸基含有(メタ)アクリレート(d)、水酸基含有多官能(メタ)アクリレート(D)としては、上記例示のものを使用できる。反応に用いる、ヌレート骨格含有イソシアネート化合物(B)、及び水酸基含有多官能(メタ)アクリレート(D)を含む水酸基含有(メタ)アクリレート(d)は1種類で使用しても良いし、2種類以上を組み合わせても良い。
【0034】
<ヌレート骨格含有イソシアネート化合物(B)>
以下にヌレート骨格含有イソシアネート化合物(B)の具体例をいくつか例示するが、本発明は、これらの例示に限定されるものではない。ヌレート骨格含有イソシアネート化合物(B)としては、例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体、2,6−ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体、イソホロンジイソシアネートの3量体、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートの3量体、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートの3量体がある。
【0035】
市販されている製品としてデュラネート TLA−100(旭化成ケミカルズ株式会社製 HDI系ポリイソシアネート)、デュラネート TPA−100(旭化成ケミカルズ株式会社製 HDI系ポリイソシアネート)、デュラネート THA−100(旭化成ケミカルズ株式会社製 HDI系ポリイソシアネート)、デュラネート MHG−80B(旭化成ケミカルズ株式会社製 HDI/IPDI変性ポリイソシアネート)、タケネート D−170N(三井化学ポリウレタン株式会社製 イソシアヌレート型ポリイソシアネート)、スミジュール N3300(住化バイエルウレタン株式会社製 HDIヌレート)、デスモジュール N3600(住化バイエルウレタン株式会社製 HDIヌレート)、VESTANAT−T 1890E(エボニック社製 IPDIヌレート)等があげられる。また、上記イソシアネート化合物をカプロラクトン誘導体などのポリエステルポリオールと反応させた変性品でも良い。
【0036】
ヌレート骨格含有イソシアネート化合物(B)としては、上記のなかでも、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体、2,6−ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体、タケネート D−170N、デュラネート TLA−100、デュラネート MHG−80Bが好ましい。
【0037】
<多官能ウレタン(メタ)アクリレート(UA)の合成>
(原料の使用量比)
多官能ウレタン(メタ)アクリレート(UA)の合成において、ヌレート骨格含有イソシアネート化合物(B)と、水酸基含有多官能(メタ)アクリレート(D)及び水酸基含有(メタ)アクリレート(d)との使用比率は特に限定はしない。しかし、多官能のイソシアネート化合物、水酸基含有多官能(メタ)アクリレートを用いることから、これら全原料の有する水酸基(OH基)濃度とイソシアネート基(NCO基)濃度との関係は、OH基濃度/NCO基濃度(モル比)>1となることが望ましい。OH基濃度/NCO基濃度(モル比)=1になると、ゲル化を起こすし、OH基濃度/NCO基濃度(モル比)<1になると反応時間が大幅に長くなるだけでなく、最終的にゲル化を起こす可能性が非常に高くなる。
【0038】
(合成方法)
合成方法としては、ヌレート骨格含有イソシアネート化合物(B)と水酸基含有多官能(メタ)アクリレート(D)及び水酸基含有(メタ)アクリレート(d)を一括して混合し反応させる方法[方法1]、(B)の中に(D)及び(d)を添加(滴下を含む)して反応させる方法[方法2]、そして(D)及び(d)の中に(B)を添加(滴下を含む)して反応させる方法[方法3]がある。中でも[方法1]、[方法3]が好ましく、より好ましくは[方法3]である。
【0039】
[方法2]ではイソシアネート化合物が高濃度な状態に水酸基含有多官能(メタ)アクリレート(D)及び水酸基含有(メタ)アクリレート(d)を添加(滴下を含む)するため、ゲル化を起こす可能性がある。水酸基含有多官能(メタ)アクリレート(D)及び水酸基含有(メタ)アクリレート(d)は分子中に1個以上の水酸基を有することから水酸基含有多官能(メタ)アクリレートを起点としたウレタン化反応が進むと考えられる。このため、得られる化合物の分子量が大きくなり過ぎ、望んだ化合物が得られなくなる。
【0040】
また[方法1]で製造すると、イソシアネート化合物や水酸基含有多官能(メタ)アクリレートを2種類以上使用した場合、得られる化合物の構造制御ができなくなる恐れがある。また一括で混合することによりウレタン化反応が急激に起こるため、反応温度が制御不能に陥る可能性がある。事故防止の観点から、一括混合は望ましくない。このため、[方法3]が最も好ましい製造方法である。
【0041】
(反応環境)
多官能ウレタン(メタ)アクリレート(UA)合成中のラジカル重合反応によるゲル化を防止するため、反応は分子状酸素含有ガス雰囲気下で行うことが好ましい。酸素濃度は安全面を考慮して適宜選択される。
【0042】
また反応は温度130℃以下で行うことが好ましく、特に40〜130℃であることがより好ましい。40℃より低いと実用上十分な反応速度が得られないことがあり、130℃より高いと熱によるラジカル重合によって二重結合部が架橋し、ゲル化物が生じることがある。反応は、通常、反応液中の残存NCO濃度が0.1重量%以下になるまで行う。残存NCO濃度は後述する、ガスクロマトグラフィー、滴定法等で分析する。
【0043】
(活性エネルギー線硬化性組成物中に含まれる活性エネルギー線硬化性化合物の総重量1kgあたりに占めるヌレート骨格のモル数n)
活性エネルギー線硬化性組成物中に含まれる活性エネルギー線硬化性化合物の総重量1kgあたりに占める下記式(I)
【化10】

[式(I)中R4〜R6は、式(1)と同じ]
で示されるヌレート骨格のモル数nは、0.1モルから0.3モルの範囲にあることが好ましい。
【0044】
上記ヌレート骨格のモル数nは、反応で用いた原料の量から計算する場合は、下記式(i)を用いて求めることができる。
n= X ÷ Y (i)
但し、式(i)中、各項目は以下の通りである。
n:活性エネルギー線硬化性組成物中に含まれる活性エネルギー線硬化性化合物の総重量1kgあたりに占めるヌレート骨格のモル数
X:活性エネルギー線硬化性化合物の総重量1kgを合成するために用いられたヌレート骨格を有するイソシアネート化合物(B)の使用重量(g)
Y:ヌレート骨格を有するイソシアネート化合物(B)の分子量
なお、ヌレート骨格を有するイソシアネート化合物(B)の分子量Yは、以下の式(ii)により求めることができる。
Y= 42 × 3 × 100 ÷ Z (ii)
式(ii)中、Zは、ヌレート骨格を有するイソシアネート化合物(B)のNCO濃度(wt%)である。Zは、イソシアネート化合物(B)のメーカ分析表に記載の値を用いても良いし、後述の(合成品のNCO濃度の測定)と同様にして求めることもできる。
尚、ここで活性エネルギー線硬化性化合物とは、次の1)〜5)に示すものである。
1)水酸基と4個以上のアクリロイル基とを含有する化合物の該水酸基から水素原子を除した基を少なくとも1個有するヌレート骨格を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート(UA)
2)前記多官能ウレタン(メタ)アクリレート(UA)以外のウレタン(メタ)アクリレート(UA’)
3)水酸基含有(メタ)アクリレート(D’)
4)水酸基非含有(メタ)アクリレート(H)
5)反応性希釈剤
【0045】
上記モル数nが0.1モル未満であれば、シリカ微粒子の分散安定性に対する寄与が期待できなくなる恐れがあり、また硬化後の塗膜のカール性を増大させやすい。また上記モル数nが0.3モル超であれば得られる硬化塗膜の鉛筆硬度の低下を招きやすく、ハードコート用材料に適しにくくなる。更に、上記モル数nが0.3モル超になると水酸基とイソシアネート基のモル比率が1に近づくことから、ウレタン化反応中に高分子量化し、ゲル化を起こす可能性が高くなる。このため0.3モル以下の合成処方が安全上の観点から望ましい。
【0046】
(ウレタン化触媒)
多官能ウレタン(メタ)アクリレート(UA)を合成する際、十分な反応速度を得るために、ウレタン化触媒(以下、単に触媒ということもある)を用いて行ってもよい。触媒としては、ジブチルスズジラウレート、オクチル酸スズ、塩化スズなどを用いることができるが、反応速度面からオクチル酸スズが好ましい。これらの触媒の量は通常、生成するヌレート骨格を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート(UA)に対して、1〜3000ppm(重量基準)、好ましくは50〜1000ppmである。触媒量が1ppmより少ない場合には十分な反応速度が得られないことがあり、3000ppmより多く加えると耐光性の低下など生成物の諸物性に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0047】
<重合禁止剤>
本発明の多官能ウレタン(メタ)アクリレート(UA)は、重合禁止剤を含んでいても良い。重合禁止剤は、特に限定されるものではなく、公知の重合禁止剤を用いることができる。具体的には、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、モノ−tert−ブチルヒドロキノン、カテコール、p−tert−ブチルカテコール、p−メトキシフェノール、p−tert−ブチルカテコール、2,6−ジ−tert−ブチル−m−クレゾール、ピロガロール、β−ナフトール等のフェノール類、ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン、p−トルキノン、p−キシロキノン等のキノン類;ニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、2−メチル−2−ニトロソプロパン、α−フェニル−tert−ブチルニトロン、5,5−ジメチル−1−ピロリン−1−オキシド等のニトロ化合物またはニトロソ化合物;クロラニル−アミン、ジフェニルアミン、ジフェニルピクリルヒドラジン、フェノール−α−ナフチルアミン、ピリジン、フェノチアジン等のアミン類;ジチオベンゾイルスルフィド、ジベンジルテトラスルフィド等のスルフィド類等が挙げられる。これらの重合禁止剤は、一種のみを用いてもよく、また、二種以上を混合して用いてもよい。中でも、ヒドロキノンモノメチルエーテルが好ましく使用できる。
【0048】
これらの重合禁止剤の量は、生成する多官能ウレタン(メタ)アクリレート(UA)に対して、1〜10000ppm(重量基準)が好ましく、より好ましくは100〜1000ppm、さらに好ましくは400〜900ppmである。重合禁止剤の量が上記ウレタン(メタ)アクリレートに対して1ppm未満であると十分な重合禁止効果が得られないことがあり、10000ppmを超えると生成物の諸物性に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0049】
<多官能ウレタン(メタ)アクリレート(UA)以外のウレタン(メタ)アクリレート(UA’)>
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、活性エネルギー線硬化性化合物として、さらに、多官能ウレタン(メタ)アクリレート(UA)以外のウレタン(メタ)アクリレート(UA’)[以下、本明細書において、単に、ウレタン(メタ)アクリレート(UA’)という]を含有していても良い。ウレタン(メタ)アクリレート(UA’)は、
(i) 「ヌレート骨格含有イソシアネート化合物(B)」と「水酸基含有多官能(メタ)アクリレート(D)以外の水酸基含有(メタ)アクリレート(d)」との反応、又は
(ii) 「ヌレート骨格含有イソシアネート化合物(B)以外のイソシアネート化合物(C)[以下、本明細書において、単に、イソシアネート化合物(C)という]」と「水酸基含有(メタ)アクリレート(d)[水酸基含有多官能(メタ)アクリレート(D)を含む]」との反応により得ることができる。
【0050】
反応に用いる、ヌレート骨格含有イソシアネート化合物(B)、水酸基含有多官能(メタ)アクリレート(D)以外の水酸基含有(メタ)アクリレート(d)、イソシアネート化合物(C)、及び、水酸基含有(メタ)アクリレート(d)はそれぞれ1種類でも良いし、2種類以上を組み合わせても良い。ウレタン(メタ)アクリレート(UA’)の含有量は、活性エネルギー線硬化性化合物中、例えば0〜50wt%とすることができる。
【0051】
<イソシアネート化合物(C)>
イソシアネート化合物(C)は、上記式(3)で示されるヌレート骨格を有さないイソシアネート化合物である。以下にイソシアネート化合物(C)の具体例をいくつか例示するが、本発明は、これらの例示に限定されるものではない。具体的には、イソシアネート化合物(C)として、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートあるいはこれらジイソシアネート化合物のうち芳香族のイソシアネート類を水添して得られるジイソシアネート化合物(例えば水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物)、トリフェニルメタントリイソシアネート、ジメチレントリフェニルトリイソシアネートなどのイソシアネート基含有化合物が挙げられる。また、上記イソシアネート化合物をカプロラクトン誘導体などのポリエステルポリオールと反応させた変性品でも良い。1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートが好ましく使用できる。
【0052】
<水酸基含有(メタ)アクリレート(D')>
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物には、活性エネルギー線硬化性化合物として、水酸基含有(メタ)アクリレート(D’)が含まれていても良い。水酸基含有(メタ)アクリレート(D')は、反応性希釈剤として使用できる。
【0053】
水酸基含有(メタ)アクリレート(D')は、多官能ウレタン(メタ)アクリレート(UA)を合成する際に用いることのできる水酸基含有多官能(メタ)アクリレート(D)及び水酸基含有(メタ)アクリレート(d)と同じ範囲から任意に選択できる。
【0054】
多官能ウレタン(メタ)アクリレート(UA)を合成する際に用いた水酸基含有多官能(メタ)アクリレート(D)及び水酸基含有(メタ)アクリレート(d)と、水酸基含有(メタ)アクリレート(D')とは、同一でも異なっても良いし、一部が同一でも良い。また、1種類または2種類以上使うこともできる。
【0055】
なお、ウレタン(メタ)アクリレート(UA’)は公知の方法で合成することができる。
【0056】
<シリカ微粒子(E)>
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、体積平均径(MV)及び累積平均径(50%D)換算の粒径が200nm以下であるシリカ微粒子(E)を含有することを特徴とする。本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、例えば、ディスプレイ用ハードコートとして用いることができ、この場合、使用するシリカ微粒子(E)は、硬化物の高透明性を満足させるものであることが望ましい。
【0057】
以下に本発明で使用可能なシリカ微粒子の具体例をいくつか例示するが、本発明は、これらの例示に限定されるものではない。具体例としては、MEK ST(日産化学株式会社製 MEK分散体 固形分30%)、MEK ST−L(日産化学株式会社製 MEK分散体 固形分30%)、MEK ST−UP(日産化学株式会社製 MEK分散体 固形分20%)、MIBK ST(日産化学株式会社製 MIBK分散体 固形分30%)、MIBK SD(日産化学株式会社製 表面修飾シリカ MIBK分散体 固形分30%)、MIBK SD−L(日産化学株式会社製 表面修飾シリカ MIBK分散体 固形分30%)、PL−3(扶桑化学株式会社製 コロイダルシリカ、MEK分散体 固形分20%)等が挙げられる。
【0058】
(シリカ粒径)
シリカ微粒子(E)の体積平均径(MV)及び累積平均径(50%D)換算の粒径は、透明性の観点から10〜200nmが望ましく、より好ましくは30〜200nmである。10nm以下であれば硬化塗膜の硬度及び耐摩耗性向上の寄与が小さい。また、200nmを超える場合、低カール性には効果があるが、透明性の低下を招くため、望ましくない。なお、シリカ微粒子(E)の1次粒子径は、10〜100nmが望ましく、より好ましくは30〜100nmである。
【0059】
シリカ微粒子(E)の体積平均径(MV)及び累積平均径(50%D)換算の粒径は、公知のレーザー回折・散乱法等により求めることができ、例えば、下記装置を用いて測定できる。
装置:Microtrac Nanotrac 150、日本機装株式会社製
なお、上記の方法で測定されたシリカ微粒子(E)の体積平均径(MV)及び累積平均径(50%D)換算の粒径は、活性エネルギー線硬化性組成物中の2次粒子の粒径である。
【0060】
(シリカ形状)
シリカ微粒子(E)の形状に関しては特に限定はなく、真球状を含む球状でも非球状でも構わない。
【0061】
(シリカ配合量)
シリカ微粒子(E)の配合量は、活性エネルギー線硬化性化合物100重量部に対して、シリカ分として20〜100重量部が好ましい。より好ましくは30〜80重量部である。シリカ微粒子の配合量が20重量部未満になると硬化塗膜の硬度、低カール性、耐摩耗性に寄与しなくなる。また100重量部を超えると活性エネルギー線硬化性組成物が硬化不良を起こす可能性があり、更に懸濁液状態でシリカ微粒子が凝集し易くなり、硬化塗膜の透明性を低下させる原因となる。
【0062】
(シリカ配合方法)
活性エネルギー線硬化性組成物の調整方法としては特に限定はしないが、活性エネルギー線硬化性化合物とシリカ微粒子(E)とを配合する際、配合後すみやかに攪拌させ、均一に分散させることが望ましい。配合後、攪拌しない状態で放置すると、部分的なシリカ微粒子の凝集を伴う可能性がある。
【0063】
(シリカ微粒子(E)の分散安定性)
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物では、活性エネルギー線硬化性組成物の配合完了直後(例えば配合完了後24時間以内)の以下に記載の平均径に対する、配合完了後室温下暗所に12週間静置した時の以下に記載の平均径の増加がいずれも0.025μm未満であることが好ましい。
1)該組成物中のシリカ微粒子(E)の体積平均径(MV)
2)該組成物中のシリカ微粒子(E)の累積平均径(50%D)
この場合、活性エネルギー線硬化性組成物は、いずれも、MV及び50%Dが、該組成物配合完了後から室温下暗所に12週間静置した時点までほとんど変化していない。これは、シリカ微粒子の凝集が殆ど起こっていないこと、即ち、シリカ微粒子の分散安定性が優れていることを示している。
【0064】
<水酸基非含有(メタ)アクリレート(H)>
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物には、活性エネルギー線硬化性化合物として、水酸基非含有(メタ)アクリレート(H)が含まれていても良い。水酸基非含有(メタ)アクリレート(H)は、反応性希釈剤として使用できる。水酸基非含有(メタ)アクリレート(H)は、活性エネルギー線硬化性であり、例えば1個以上の(メタ)アクリロイル基を含有するものを使用でき、4個以上の(メタ)アクリロイル基を含有するものが好ましく、さらに5個以上の(メタ)アクリロイル基を含有するものが好ましい。
【0065】
水酸基非含有(メタ)アクリレート(H)としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0066】
水酸基非含有(メタ)アクリレート(H)の含有量は、活性エネルギー線硬化性化合物中に、例えば0〜50wt%、好ましくは0〜30wt%、さらに好ましくは0〜20wt%である。水酸基非含有(メタ)アクリレート(H)の含有量が50wt%より大きいと硬化フィルムのカール性が大きくなり、フィルム特性を損なうこととなる。
【0067】
<反応性希釈剤>
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、反応性希釈剤を含有していても良い。
反応性希釈剤としては、上記例示の水酸基含有(メタ)アクリレート(D’)、上記例示の水酸基非含有(メタ)アクリレート(H)、および2官能以下の活性エネルギー線硬化性(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0068】
2官能以下の活性エネルギー線硬化性(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチルペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールビスβ−(メタ)アクリロイルオキシプロピネート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリ(2−ヒドロキシエチル)イソシアネートジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、2,3−ビス(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシメチル[2.2.1]ヘプタン、ポリ1,2−ブタジエンジ(メタ)アクリレート、1,2−ビス(メタ)アクリロイルオキシメチルヘキサン、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラデカンエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、10−デカンジオール(メタ)アクリレート、3,8−ビス(メタ)アクリロイルオキシメチルトリシクロ[5.2.10]デカン、水素添加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、1,4−ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)シクロヘキサン、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、エポキシ変成ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの活性エネルギー線硬化性モノマーは単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。また、これらは塗液において、モノマーであってもよいし、一部が重合していてもかまわない。
【0069】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、さらに、光開始剤(F)、有機溶剤(G)、及び水分を含有していてもよい。
【0070】
<光開始剤(F)>
光開始剤(F)としては、活性エネルギー線の種類や、多官能ウレタン(メタ)アクリレート(UA)等の活性エネルギー線硬化性化合物の種類によっても異なり、特に限定されないが、公知の光ラジカル重合開始剤や光カチオン重合開始剤を用いることができる。例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン−4−メトキシベンゾフェノン、チオキサンソン、2−クロルチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、カンファーキノンなどが挙げられる。
【0071】
光開始剤の使用量は、活性エネルギー線硬化性化合物100重量部(樹脂分)に対して1〜20重量部、好ましくは1〜5重量部である。1重量部よりも少ないと硬化不良を引き起こす恐れがあり、逆に20重量部よりも多いと硬化後の塗膜から光開始剤由来の臭気が残存することがある。
【0072】
<有機溶剤(G)>
有機溶媒(G)としては、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、酢酸n−ブチル、メチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル溶媒等があり、PRTR[Pollutant Release and Transfer Register、化学物質排出移動量届出制度]法や毒性の観点から、好ましくは、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルである。必要に応じてメチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコールなども使用できる。
【0073】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物に使用できる有機溶剤(G)は多官能ウレタン(メタ)アクリレート(UA)の製造において希釈溶剤としても使用でき、また、(UA)合成後、活性エネルギー線硬化性組成物の構成成分として新たに配合することも出来る。使用する際は1種類でも良いし、2種類以上を組み合わせることも可能である。活性エネルギー線硬化性組成物中の有機溶剤(G)濃度は、通常、80重量%以下が好ましく、より好ましくは50〜70%重量である。
【0074】
<水分>
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は水分を含んでいても良い。水を添加する場合は、蒸留水であることが好ましい。好ましい活性エネルギー線硬化性組成物中の水分濃度は0.03重量%から4.5重量%であり、更に好ましくは0.1重量%から3.5重量%の範囲である。水の添加は本発明の活性エネルギー線硬化性組成物においてシリカ粒子の分散安定性に寄与する。水分濃度が4.5重量%を超えると、水とウレタンアクリレートの相溶性が悪いことから組成物の外観が乳白色になる問題が発生し易くなるとともに、硬化塗膜の平滑性も損なわれ易くなる。また水分濃度が0.03重量%未満では、シリカ分散安定性がやや低くなり、やや凝集しやすくなる。
【0075】
なお、市販のシリカの水分については、例えばMEK−ST−Lでは0.02〜0.50wt%程度で、通常、例えば0.10〜0.11wt%程度である。また、水分無添加で、市販のシリカを用いて本発明の組成物を配合した場合、本発明の組成物に用いられるシリカ溶液以外のUAや溶剤のMEK等は基本的には殆ど水分の無いものを用いているので、組成物中の水分は、例えば、約0.03〜0.05wt%である。例えば、後述の実施例1で、UA−1、Irg184、MEK(以下、併せて「他成分」という)の水分を0.00wt%と仮定し、MEK−ST−Lの水分を0.10wt%とした場合、単純計算では組成物の水分は0.034wt%となる(下表1のケース1)。また、他成分の水分を0.01、0.03wt%にすると組成物の水分はそれぞれ0.041,0.054wt%になる(ケース2,3)。
【0076】
【表1】

【0077】
<添加剤>
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物には、必要に応じて種々の添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、例えば、染顔料、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、分散剤、チクソトロピー性付与剤などが挙げられる。これらの添加物の添加量は、活性エネルギー線硬化性化合物100重量部(樹脂分)に対して、0〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部である。
【0078】
<紫外線吸収剤>
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物に含まれてもよい紫外線吸収剤は特に限定されることはなく、組成物に均一に溶解し、かつ必要な耐候性が付与できるものであれば使用できる。特に、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸フェニル系、安息香酸フェニル系から誘導された化合物で、それらの最大吸収波長が240〜380nmの範囲にある紫外線吸収剤が好ましく、特にベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤が好ましく、さらにこの上記2種を組み合わせて用いるのが最も好ましい。
【0079】
紫外線吸収剤としては、たとえば、2−ヒドロキシベンゾフェノン、5−クロロ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクチロキシベンゾフェノン、4−ドデシロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタテシロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキン−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノンフェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート、p−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニルサリシレート、3−ヒドロキシフェニルベンゾエート、フェニレン−1,3−ジベンゾエート、2−(2−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ3,5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ4−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンとグリシジルアルキル(C12−C13)エーテルとの反応生成物等が挙げられるが、これらのうちベンゾフェノン系の2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、及び2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、べンゾトリアゾール系の2−(2−ヒドロキシ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾールが特に好ましく、これらは2種以上を組み合わせても良い。
【0080】
<レベリング剤>
本発明において、活性エネルギー線硬化性組成物の塗工適性を得るために、塗工後の塗膜表面に作用し表面張力を低下させるレベリング性添加剤を加えてもよい。レベリング性添加剤としては、フッ素系添加剤、シロキサン系添加剤、アクリル系添加剤、及びアセチレングリコール系添加剤から選択された少なくとも1種であることが好ましい。
【0081】
特に制限されないが、例えば、フッ素系添加剤として住友スリーエム社製フロラードFC−430、フロラードFC170、DIC社製メガファックF177、メガファックF471、シロキサン系添加剤としてビックケミー社製BYK−300、BYK−077、アクリル系添加剤としてビックケミー社製BYK−380、楠本化成社製ディスパロンL−1984−50、ディスパロンL−1970、そしてアセチレングリコール系添加剤として信越化学工業社製ダイノール604、サーフィノール104などが挙げられる。これらのレベリング性添加剤を単独、若しくは併用して使用できる。
【0082】
<積層体>
本発明の積層体は、基材と、該基材上に上記記載の活性エネルギー線硬化性組成物を塗布硬化させて形成した硬化塗膜とを有する。積層体の構成として屈折率調整のために基材と活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜との間に中間層があっても良い。また、帯電防止、反射防止等の機能を付与するために、活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜に対して金属酸化物の蒸着等を行っても良い。
【0083】
<基材>
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を塗布・硬化する基材としてはプラスチック基材フィルム等が挙げられ、例えば、熱可塑性樹脂プラスチック基材フィルムから選択される。プラスチック基材フィルムは、透明なものが好ましく、プラスチックとしては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、セロファン、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルペンテル、ポリスルフォン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、フッ素樹脂、ナイロン、アクリル等の熱可塑性樹脂プラスチック基材フィルムを挙げることができる。液晶テレビ等に使用される偏光板の部材として使用されているトリアセチルセルロースプラスチック基材フィルム(TACプラスチック基材フィルム)やタッチパネル用途で使用されているポリエチレンテレフタレートプラスチック基材フィルム(PETプラスチック基材フィルム)の使用が好ましい。
【0084】
(塗工/乾燥方法)
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を基材に塗布する場合、塗布方法としては、特に限定されず、吹き付け法、エアレススプレー法、エアスプレー法、ロールコート法、バーコート法、グラビア法などを用いることが可能である。中でも、美観性、コスト、作業性などの観点からバーコート法が最も好ましく用いられる。なお、塗布は、プラスチック基材などの製造工程中で行う、いわゆるインラインコート法でもよいし、既に製造されたプラスチック基材に別工程で塗布を行う、いわゆるオフラインコート法でもよい。生産効率の観点から、オフラインコートが好ましい。
【0085】
(硬化方法)
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を対象物であるTACやPETなどの薄膜プラスチック基材に塗布した後、例えば、紫外線または電子線等の活性エネルギー線を照射することにより極めて短時間で硬化させることができる。紫外線照射を行う時の光源としては、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯などが用いられる。照射時間は、光源の種類、光源と塗布面との距離、その他の条件により異なるが、長くとも数十秒であり、通常は数秒である。通常、ランプ出力80〜300W/cm程度の照射源が用いられる。電子線照射の場合は、50〜1000KeVの範囲のエネルギーを持つ電子線を用い、2〜5Mradの照射量とすることが好ましい。活性エネルギー線照射後は、必要に応じて加熱を行って硬化の促進を図ってもよい。
【実施例】
【0086】
以下に、実施例に基づき本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0087】
<使用原料について>
以下に、実施例で用いた多官能ウレタン(メタ)アクリレート(UA)ならびに、ウレタン(メタ)アクリレート(UA’)の主な合成原料について説明する。
【0088】
タケネート D170N: 三井化学ポリウレタン株式会社製 HDIヌレート、NCO濃度;21.1%
デュラネート TLA−100: 旭化成ケミカルズ株式会社製 HDIヌレート、NCO濃度;23.5%
デュラネート MHG−80B: 旭化成ケミカルズ株式会社製、HDI/IPDIヌレート、酢酸ブチル希釈、NCO濃度;14.8%
DPHA: ダイセル・サイテック株式会社製 ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(一部、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートを含む)、水酸基価;60.24mgKOH/g
PETIA: ダイセル・サイテック株式会社製 ペンタエリスリトールトリアクリレート、水酸基価;109.3mgKOH/g
HDI: 日本ポリウレタン製 ヘキサメチレンジイソシアネート
MEK: メチルエチルケトン
【0089】
<合成例1/UA−1の合成>
温度計、攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに、DPHA(702g)、オクチル酸スズ400ppm(得られるウレタンアクリレートに対する添加量)、ハイドロキノンモノメチルエーテル800ppm(得られるウレタンアクリレートに対する添加量)、MEK(200g)を充填し、内温を70℃にした後、D170N(98g)を1時間かけて滴下した。滴下終了後、4時間熟成反応させ、NCO濃度が0.1重量%以下になったことを確認して反応を終了させ、多官能ウレタン(メタ)アクリレート(UA)としてのウレタンアクリレート(UA−1)を得た。得られた混合液の固形分は80重量%、重量平均分子量は6000であった。
【0090】
<合成例2/UA−2の合成>
温度計、攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに、DPHA(711g)、オクチル酸スズ400ppm(得られるウレタンアクリレートに対する添加量)、ハイドロキノンモノメチルエーテル800ppm(得られるウレタンアクリレートに対する添加量)、MEK(200g)を充填し、内温を70℃にした後、TLA−100(89g)を1時間かけて滴下した。滴下終了後、4時間熟成反応させ、NCO濃度が0.1重量%以下になったことを確認して反応を終了させ、多官能ウレタン(メタ)アクリレート(UA)としてのウレタンアクリレート(UA−2)を得た。得られた混合液の固形分は80重量%、重量平均分子量は5000であった。
【0091】
<合成例3/UA−3の合成>
温度計、攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに、DPHA(650g)、オクチル酸スズ400ppm(得られるウレタンアクリレートに対する添加量)、ハイドロキノンモノメチルエーテル800ppm(得られるウレタンアクリレートに対する添加量)、MEK(200g)を充填し、内温を70℃にした後、MHG−80B(151g)を1時間かけて滴下した。滴下終了後、オクチル酸スズを更に200ppm(得られるウレタンアクリレートに対する添加量)投入し、4時間熟成反応させた。NCO濃度が0.1重量%以下になったことを確認して反応を終了させ、多官能ウレタン(メタ)アクリレート(UA)としてのウレタンアクリレート(UA−3)を得た。得られた混合液の固形分は80重量%、重量平均分子量は5000であった。
【0092】
<比較合成例1/UA’−1の合成>
温度計、攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに、PETIA(861g)、ジブチル錫ジラウレート100ppm(得られるウレタンアクリレートに対する添加量)、ハイドロキノンモノメチルエーテル800ppm(得られるウレタンアクリレートに対する添加量)を充填し、内温を70℃にした後、D−170N(239g)を3時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間熟成反応させた。NCO濃度が0.1重量%以下になったことを確認して反応を終了させ、活性エネルギー線硬化性ウレタンアクリレート[ウレタン(メタ)アクリレート(UA’)](UA’−1)を得た。重量平均分子量は3500であった。
【0093】
<比較合成例2/UA’−2の合成>
温度計、攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに、PETIA(607g)、ジブチル錫ジラウレート100ppm(得られるウレタンアクリレートに対する添加量)、ハイドロキノンモノメチルエーテル800ppm(得られるウレタンアクリレートに対する添加量)を充填し、内温を70℃にした後、D−170N(169g)を3時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間熟成反応させ、HDI(23g)を30分かけて滴下した。NCO濃度が0.1重量%以下になったことを確認して反応を終了させ、活性エネルギー線硬化性ウレタンアクリレート[ウレタン(メタ)アクリレート(UA’)](UA’−2)を得た。重量平均分子量は4000であった。
【0094】
<NCO濃度測定について>
なお、NCO濃度は以下のように測定した。
(ブランク値の測定)
15mLのTHFにジブチルアミンのTHF溶液(0.1N)、15mLを加え、更にブロモフェノールブルー(1%メタノール希釈液)を3滴加えて青色に着色させた後、規定度が0.1NであるHCl水溶液を変色がみられるまで滴下した。このHCl水溶液の滴定量をブランク値(mL)とした。
【0095】
(合成品のNCO濃度の測定)
計量された反応溶液[サンプル量(g)]を15mLのTHFに溶解させ、ジブチルアミンのTHF溶液(0.1N)を15mL加えた。溶液化したことを確認した後、ブロモフェノールブルー(1%メタノール希釈液)を3滴加えて青色に着色させた後、規定度が0.1NであるHCl水溶液を変色がみられるまで滴下し、滴定量をA値(mL)とした。得られた値を下記の式に当てはめNCO濃度を算出した。
NCO濃度=(ブランク値−A値)×1.005×0.42÷サンプル量(g)
【0096】
<重量平均分子量>
上記合成例及び比較合成例で得られた混合液の重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーション・ガスクロマトグラフィー)法により、下記の測定条件で、標準ポリスチレンを基準にして求めた。
移動相流量 : 1 ml/分
カラム温度 : 40 ℃
試料注入量 : 10 μl
試料濃度 : 0.2 mg/ml
【0097】
<実施例、比較例で使用した材料>
ここでは実施例、比較例で使用した材料について説明する。
【0098】
(UA−1): 合成例1に記載の多官能ウレタン(メタ)アクリレート(UA)、重量平均分子量;6000、樹脂分;80%(混合液中)
(UA−2): 合成例2に記載の多官能ウレタン(メタ)アクリレート(UA)、重量平均分子量;5000、樹脂分;80%(混合液中)
(UA−3): 合成例3に記載の多官能ウレタン(メタ)アクリレート(UA)、重量平均分子量;5000、樹脂分;80%(混合液中)
(UA’−1): 比較合成例1に記載のウレタン(メタ)アクリレート(UA’)、重量平均分子量;3500、樹脂分;100%
(UA’−2): 比較合成例2に記載のウレタン(メタ)アクリレート(UA’)、重量平均分子量;4000、樹脂分;100%
(UA’−3): KRM8452; 10官能脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート[ウレタン(メタ)アクリレート(UA’)を含む]、ダイセル・サイテック株式会社製
(D−1): DPHA; ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ダイセル・サイテック株式会社製
(E−1): MEK ST; シリカ分散体/溶剤MEK、平均粒子径;10−15nm、シリカ分 30%、日産化学株式会社製
(E−2): MEK ST−L; シリカ分散体/溶剤MEK、平均粒子径;40−50nm、シリカ分 30%、日産化学株式会社製
(E−3): MEK ST−UP; シリカ分散体/溶剤MEK、粒子形状が直方体、平均粒子径;9−15nm(鎖状)、シリカ分 20%、日産化学株式会社製
(E−4): MIBK−SD; 表面修飾したシリカ分散体/溶剤MIBK、平均粒子径;10−15nm、シリカ分 30%、日産化学株式会社製
(F): Irg184 (Irgacure 184、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、チバ・スペシャリティ株式会社製
【0099】
(実施例1)
1.活性エネルギー線硬化性組成物の調製
20mLの褐色ビンを用意し、下記に示す成分を表2に示す量配合し、全量が15g程度になるように調整し、攪拌、脱泡して活性エネルギー線硬化性組成物を調製した。配合、攪拌、脱泡は全て公知の方法を用い室温(約23℃)で行った。それぞれの使用比率(重量部)は表2中に記載した。ただし、表2において、UA−1の使用量(重量部)は、合成例1で得られた混合液の重量部を示す。
UA−1:合成例1により得た、多官能ウレタン(メタ)アクリレート(UA)
MEK−ST−L:シリカ分散体/溶剤MEK、平均粒子径;40−50nm、シリカ分 30%、日産化学株式会社製
Irg184:光重合開始剤、チバ・スペシャリティケミカルズ社製
MEK:有機溶剤、メチルエチルケトン
【0100】
2.硬化フィルムの調製
上記で調製した組成物を、評価方法に応じた基材(ガラス、PET、TAC)に塗工した。この時、基材がガラスの場合は乾燥後の膜厚が約20μmとなるように塗工し、基材がPET及びTACの場合には同5μmとなるように塗工した。その後、80℃、10分乾燥後、照射量 約800mJ/cm2で硬化させた。
【0101】
(実施例2〜5)
実施例1においてMEK ST−Lの配合量と固形分調整のためのMEK配合量を変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。原料の使用比率(重量部)は表2中に記載した。ただし、表2において、UA−1の使用量(重量部)は、合成例1で得られた混合液の重量部を示す。
【0102】
(実施例1−a〜5−a)
実施例1〜5の組成物に対して蒸留水を3重量%となるように添加した以外は、実施例1〜5と同様の操作を行った。原料の使用比率(重量部)は表3中に記載した。ただし、表3において、UA−1の使用量(重量部)は、合成例1で得られた混合液の重量部を示す。
【0103】
(実施例6、7)
シリカ粒子をMEK STに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。原料の使用比率(重量部)は表4中に記載した。ただし、表4において、UA−1の使用量(重量部)は、合成例1で得られた混合液の重量部を示す。
【0104】
(実施例8、9)
シリカ粒子をMEK ST−UPに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。原料の使用比率(重量部)は表4中に記載した。ただし、表4において、UA−1の使用量(重量部)は、合成例1で得られた混合液の重量部を示す。
【0105】
(実施例10、11)
シリカ粒子をMIBK SDに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。原料の使用比率(重量部)は表4中に記載した。ただし、表4において、UA−1の使用量(重量部)は、合成例1で得られた混合液の重量部を示す。
【0106】
(実施例12、13)
ウレタンアクリレートをUA−2に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。原料の使用比率(重量部)は表5中に記載した。ただし、表5において、UA−2の使用量(重量部)は、合成例2で得られた混合液の重量部を示す。
【0107】
(実施例14、15)
ウレタンアクリレートをUA−3に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。原料の使用比率(重量部)は表5中に記載した。ただし、表5において、UA−3の使用量(重量部)は、合成例3で得られた混合液の重量部を示す。
【0108】
(実施例16)
実施例2と同様に組成物を調製(全量15g)した後、ペンタンを1g加え、40℃に加温した状態で5時間保管した。その後、カールフィッシャーにて水分量が0.02重量%まで低下したことを確認した。あとの操作は実施例2と同様に行った。原料の使用比率(重量部)は表6中に記載した。ただし、表6において、UA−1の使用量(重量部)は、合成例1で得られた混合液の重量部を示す。
【0109】
(実施例17)
実施例2と同様に組成物を調製(全量15g)した後、蒸留水を4.8重量%となるように添加した以外は、実施例2と同様の操作を行った。原料の使用比率(重量部)は表6中に記載した。ただし、表6において、UA−1の使用量(重量部)は、合成例1で得られた混合液の重量部を示す。
【0110】
(比較例1、2)
ウレタンアクリレートとしてKRM8452(UA’−3)を使用し、シリカ粒子としてMEK STを使用した以外は、実施例1と同様の操作を行った。原料の使用比率(重量部)は表7中に記載した。
【0111】
(比較例3、4)
ウレタンアクリレートの代わりにDPHAを使用し、シリカ粒子としてMEK STを使用した以外は、実施例1と同様の操作を行った。原料の使用比率(重量部)は表7中に記載した。
【0112】
(比較例5〜9)
ウレタンアクリレートとしてKRM8452(UA’−3)を使用し、MEK ST−Lの使用量を変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。原料の使用比率(重量部)は表8中に記載した。
【0113】
(比較例10〜11)
ウレタンアクリレートの代わりにDPHAを使用した以外は、実施例1と同様の操作を行った。原料の使用比率(重量部)は表8中に記載した。
【0114】
(比較例12、13)
ウレタンアクリレートとしてKRM8452(UA’−3)を使用し、シリカ粒子としてMEK ST−UPを使用した以外は、実施例1と同様の操作を行った。原料の使用比率(重量部)は表9中に記載した。
【0115】
(比較例14、15)
ウレタンアクリレートとしてKRM8452(UA’−3)を使用し、シリカ粒子としてMIBK SDを使用した以外は、実施例1と同様の操作を行った。原料の使用比率(重量部)は表9中に記載した。
【0116】
(比較例16)
DPHAを配合し、活性エネルギー線硬化性化合物の総重量1kgあたりのヌレート含有量を低下させた以外は、実施例1と同様の操作を行った。原料の使用比率(重量部)は表10中に記載した。ただし、表10において、UA−1の使用量(重量部)は、合成例1で得られた混合液の重量部を示す。
【0117】
(比較例17、18)
ウレタンアクリレートとしてUA’−1を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。原料の使用比率(重量部)は表10中に記載した。
【0118】
(比較例19、20)
ウレタンアクリレートとしてUA’−2を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。原料の使用比率(重量部)は表10中に記載した。
【0119】
なお、表2〜10において、固形分換算のシリカ配合量が分かるように、シリカ分散体の使用量とともにシリカ分(重量部)を記載した。また実施例については、活性エネルギー線硬化性組成物中に含まれる活性エネルギー線硬化性化合物の総重量1kgあたりに占めるヌレート骨格のモル数nを、表中の「ヌレート骨格含有化合物のモル数」欄に記載した。
【0120】
<シリカ微粒子の分散安定性の評価方法>
実施例ならびに比較例で得られた組成物中のシリカ微粒子の分散安定性は、下記装置を用いて測定した、体積平均径(MV)及び累積平均径(50%D)換算の粒径の値を用いて、以下のように評価した。

装置:Microtrac Nanotrac 150、日本機装株式会社製

評価は、活性エネルギー線硬化性組成物の配合完了直後(例えば配合完了後24時間以内)から、配合完了後室温下暗所に12週間静置した時までの、以下に記載の平均径の増加の数値の大小の判定により行った。
1)該組成物中のシリカ微粒子(E)の体積平均径(MV)
2)該組成物中のシリカ微粒子(E)の累積平均径(50%D)
前記の平均径の増加の数値評価の基準を下記に記載する。
非常に良好:0.020μm未満
良好: 0.020μm以上0.035μm未満
やや良好: 0.035μm以上0.040μm未満
悪化: 0.040μm以上
【0121】
<評価用塗膜の形成方法>
(塗工・乾燥条件)
実施例ならびに比較例で得られた組成物を、以下の条件にて、塗工・乾燥させた。基材は、評価方法に応じて選択した。
塗工:バーコーター使用
乾燥:オーブン中で80℃、10分間
膜厚:乾燥後3〜15μm
【0122】
(硬化方法)
以下の紫外線照射条件にて硬化させた。
照射強度 : 2KW/cm2
照射距離 : 10 cm
コンベア速度 : 5 m/分
照射回数 : 2 回
【0123】
<硬化塗膜の物性測定方法ならびに効果の評価方法>
(ヘイズ(HAZE))
上記のように硬化塗膜をコーティングしたプラスチック基材のヘイズを、以下の評価条件で測定した。
操作はJIS K7136に準拠し実施した。
装置:日本電色工業株式会社製「NDH 2000」
測定環境:23℃、50%RH
基材:PET、TAC
【0124】
塗膜及びプラスチック基材を含めたヘイズを測定し、下記基準で評価した。
◎:1%未満
○:1%以上、2%未満
×:2%以上
【0125】
(平滑性)
紫外線照射後の、プラスチック基材にコーティングした硬化塗膜の表面を目視で評価した。
表面に凹凸、ブツ、ゆがみなどが見られない場合を「良好」と判断し、一部に何らかの変形が確認された場合を「不良」と判断した。
【0126】
(鉛筆硬度)
鉛筆硬度はJIS K5600に準拠して、上記と同様に、ガラス基材上に形成した硬化塗膜について実施した。
評価は外観観察によって行い、ガラス上の樹脂膜を鉛筆でこすり、表面に傷が確認できたものはNGとした。
同様のJIS評価でも、「傷付き」でNG又は「樹脂膜の剥がれ」でNGの場合があるが、本評価では、「傷付き」でNGの評価とした。具体的には、ある硬さの鉛筆でまず評価を行い、傷が付かなった場合1つ上の硬さの鉛筆で評価を行うという作業を繰り返し、傷が確認できたらその1つ下の硬さで再評価した。また、傷が確認できなかったら再度1段階上の硬さの鉛筆を用い、2回以上の再現性が確認できた場合、傷が付かない最も硬い鉛筆の硬度をその樹脂膜の鉛筆硬度とした。評価結果は鉛筆の芯の硬度で表す。評価条件は以下の通りである。
評価用鉛筆:三菱鉛筆株式会社製「鉛筆硬度試験用鉛筆」
荷重 :1 kgf
引掻き距離:50 mm以上
引掻き角度:45°
測定環境 :23℃、50%RH
なお、試験に使用するコーティングしたガラス基材は、23℃、50%RHの恒温恒湿機にて24時間調湿したものを用いた。
【0127】
(耐スチールウール性)
耐スチールウール性は、JIS K5600に準拠し実施した。具体的には、ガラス上に形成した硬化塗膜の表面をスチールウール#0000を使用し、荷重1kgfで200往復させて、擦った際の傷付きの程度を外観により官能評価した。測定環境は、23℃、50%RHとした。
判断基準は以下の通りとした。
傷無:樹脂膜の表面に傷が確認できない
傷有:樹脂膜の表面になんらかの傷あり
なお、試験に使用するコーティングガラス基材は、23℃、50%RHの恒温恒湿機にて24時間調湿したものを用いた。
【0128】
(カール性評価)
実施例、比較例で調整した組成物を東洋紡製 易接着PET(A4100;膜厚100±5μm)上にバーコーターを用いて塗工した。膜厚は乾燥後に約10μmになるよう調整し、硬化した。
硬化後のプラスチックフィルムから1辺が10cm正方形の試験片を切り取った。同試験片について、図1aの丸で囲んだ数字1〜5に示した測定点の膜厚を測定した。全ての測定点の膜厚が0.090mm以上0.11mm未満の場合を合格として、以下に述べる反りの測定を行った。膜厚が不合格の場合は、前記の測定点の膜圧が合格となるまで、バーコーターを変更し、前記の塗工・乾燥・硬化工程を繰り返した。
前記の測定点の膜厚が合格となった試験片について、図1bに示したように、水平面に置いた場合の試験片の四隅の反りを測定し、その平均値にて評価した。反りの大きなものは、硬化収縮が大きいとみなす。判断基準は以下の通りとした。
◎;四隅の反りの平均値が5mm未満
○;四隅の反りの平均値5mm以上、10mm未満
×;四隅の反りの平均値10mm以上
【0129】
組成物ならびに硬化物の評価結果を、以下の表2〜10に示す。
【0130】
【表2】

【0131】
【表3】

【0132】
【表4】

【0133】
【表5】

【0134】
【表6】

【0135】
【表7】

【0136】
【表8】

【0137】
【表9】

【0138】
【表10】

【0139】
表2〜10の通り、実施例の活性エネルギー線硬化性組成物は、いずれも、分散安定性が優れており、また、硬化後の塗膜は、平滑性、鉛筆硬度、ヘイズ、スチールウール性、カール性が優れていることが分かった。
【0140】
比較例1〜15に記載の活性エネルギー線硬化性組成物は、ウレタンアクリレートがヌレート骨格を有さないが、いずれも、シリカ微粒子の体積平均径(MV)及びシリカ微粒子の累積平均径(50%D)が、該組成物配合完了後から室温下暗所に12週間静置した時点までに大きく増加した。これは、シリカ微粒子の凝集が大きいこと、即ち、シリカ微粒子の分散安定性が悪いことを示している。
【0141】
また、比較例16〜20の様にヌレート骨格を含有する化合物を用いた場合、シリカ粒子の分散性は改善されるが、比較例16のようにヌレート含有量を下げると、カール性が悪化した。また比較例17〜20のように、ウレタンアクリレートの合成材料としてペンタエリスリトールトリアクリレートを使用した活性エネルギー線硬化性ウレタンアクリレートを含む組成物(UA’−1)、(UA’−2)を使用すると、フィルムのカール性が大きくなった。
【0142】
水分量についてみてみると実施例16のように水分量が0.02重量%の場合、経時的にシリカ粒子の分散性がやや減少し、やや凝集が認められた。更に塗膜の硬度も実施例2と比べてやや低下している。一方で実施例17のように水分量を4.5重量%以上とした場合にはシリカ粒子の分散性は良好なものの、組成物の外観がやや乳白色に変化し、乾燥、硬化後塗膜の平滑性もやや低下していた。
【0143】
図2と表11に、実施例2の活性エネルギー線硬化性組成物について、該組成物の配合完了直後から室温下暗所に静置した場合の該組成物中のシリカ微粒子の粒径分布の変化を示す。図2に示すように、平均粒子径は殆ど変化していないことがわかる。また、表11に示すように、12週間後のシリカ微粒子の体積平均径(MV)及びシリカ微粒子の累積平均径(50%D)の増加はそれぞれ、0.0108μm(0.1542−0.1434=0.0108)および0.0111μm(0.1439−0.1328=0.0111)とごく僅かであった。これは、シリカ微粒子の凝集が殆ど起こっていないこと、即ち、シリカ微粒子の分散安定性が優れていることを示している。
【0144】
【表11】

【0145】
図3と表12に、比較例6の活性エネルギー線硬化性組成物について、該組成物の配合完了直後から室温下暗所に静置した場合の該組成物中のシリカ微粒子の粒径分布の変化を示す。図3に示すように、平均粒子径が時間の経過とともに増大していることが分かる。また、表12に示すように、12週間後のシリカ微粒子の体積平均径(MV)及びシリカ微粒子の累積平均径(50%D)の増加はそれぞれ、0.0429μm(0.1856−0.1427=0.0429)および0.0399μm(0.1745−0.1346=0.0399)と大きいものであった。これは、シリカ微粒子の凝集が大きいこと、即ち、シリカ微粒子の分散安定性が悪いことを示している。
【0146】
【表12】

【0147】
(活性エネルギー線硬化性組成物中のシリカ微粒子の分散性)
比較例記載の活性エネルギー線硬化性組成物は、いずれも、組成物中のシリカ微粒子の体積平均径(MV)及びシリカ微粒子の累積平均径(50%D)の測定値が、該組成物配合完了後から室温下暗所に12週間静置した時点までに大きく増加している。これは、シリカ微粒子の凝集が大きいこと、即ち、シリカ微粒子の分散安定性が悪いことを示している。
【0148】
一方、実施例記載の活性エネルギー線硬化性組成物は、いずれも、組成物中のシリカ微粒子の体積平均径(MV)及びシリカ微粒子の累積平均径(50%D)の測定値が、該組成物配合完了後から室温下暗所に12週間静置した時点までほとんど変化していない。これは、シリカ微粒子の凝集が殆ど起こっていないこと、即ち、シリカ微粒子の分散安定性が優れていることを示している。また、蒸留水を適当量に管理することで分散安定性が更に改善することも分かった。更にシリカ微粒子の配合量によっては鉛筆硬度が7Hになることもわかった。またウレタンアクリレートの合成材料としてジペンタエリスリトールペンタアクリレート等の水酸基含有多官能(メタ)アクリレート(D)を含有する水酸基含有(メタ)アクリレートを用いることにより、塗膜硬度を上げつつ、硬化収縮を制御することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性エネルギー線硬化性化合物として、下記式(1)
【化1】

[式(1)中R1〜R3は、同一又は異なって、それぞれ、水酸基と1個以上の(メタ)アクリロイル基とを含有する水酸基含有(メタ)アクリレート(d)の該水酸基から水素原子を除した基を示し、R1〜R3のうち少なくとも1個の基は、水酸基と4個以上の(メタ)アクリロイル基とを含有する水酸基含有多官能(メタ)アクリレート(D)の該水酸基から水素原子を除した基であり;R4〜R6は、同一又は異なって、それぞれ、−(CH26−及び下記式(2a)〜(2g)
【化2】

{式(2d)中R7〜R10は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を表す。ただし、R7〜R10は同時に水素原子であることはない}
からなる群から選ばれる2価の基を示す]
で示されるヌレート骨格を含有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート(UA)を少なくとも含むとともに、体積平均径(MV)及び累積平均径(50%D)換算の粒径がいずれも200nm以下であるシリカ微粒子(E)を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項2】
前記ヌレート骨格を含有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート(UA)が、下記式(3)
【化3】

[式(3)中R4〜R6は、式(1)と同じ]
で示されるヌレート骨格含有イソシアネート化合物(B)と、水酸基と1個以上の(メタ)アクリロイル基とを含有する水酸基含有(メタ)アクリレート(d)の1種又は2種以上[ただし、水酸基と4個以上の(メタ)アクリロイル基とを含有する水酸基含有多官能(メタ)アクリレート(D)を少なくとも含む]との反応によって合成される、請求項1記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項3】
組成物中に含まれる活性エネルギー線硬化性化合物の総重量1kgあたりに占める下記式(I)
【化4】

[式(I)中R4〜R6は、式(1)と同じ]
で示されるヌレート骨格のモル数nが0.1モルから0.3モルの範囲にある、請求項1又は2記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項4】
さらに、活性エネルギー線硬化性化合物として、水酸基含有(メタ)アクリレート(D’)を含有する、請求項1〜3の何れか1項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項5】
さらに、活性エネルギー線硬化性化合物として、水酸基非含有(メタ)アクリレート(H)を含有する、請求項1〜4の何れか1項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項6】
さらに、活性エネルギー線硬化性化合物として、前記多官能ウレタン(メタ)アクリレート(UA)以外のウレタン(メタ)アクリレート(UA’)を含有する、請求項1〜5の何れか1項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項7】
さらに、光開始剤(F)を含有する、請求項1〜6の何れか1項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項8】
さらに、有機溶剤(G)を含有する、請求項1〜7の何れか1項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項9】
前記シリカ微粒子(E)の含有量が、活性エネルギー線硬化性化合物の総量100重量部に対して20〜100重量部である、請求項1〜8の何れか1項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項10】
組成物中の水分が0.03〜4.5重量%である、請求項1〜9の何れか1項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項11】
活性エネルギー線硬化性組成物の配合完了直後の以下に記載の平均径に対する、配合完了後室温下暗所に12週間静置した時の以下に記載の平均径の増加がいずれも0.025μm未満である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
1)該組成物中のシリカ微粒子(E)の体積平均径(MV)
2)該組成物中のシリカ微粒子(E)の累積平均径(50%D)
【請求項12】
基材と、該基材上に請求項1〜11の何れか1項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物を塗布硬化させて形成した硬化塗膜とを有する積層体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−157497(P2011−157497A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21093(P2010−21093)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(592019589)ダイセル・サイテック株式会社 (16)
【Fターム(参考)】