説明

活性エネルギー線硬化性組成物

【課題】アクリル系ブロック共重合体を含み、活性エネルギー線による硬化性に優れ、粘着力、保持力、成形性、賦形後の硬化性に優れた活性エネルギー線硬化性組成物であり、上記組成物からなる、成形体、接着剤、粘着剤、塗膜を提供する。
【解決手段】メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)からなり、メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)のうち少なくとも一方の重合体ブロックに活性エネルギー線硬化性官能基(c)を有するアクリル系ブロック共重合体(A)を含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアクリル系ブロック共重合体を含む活性エネルギー線硬化性を有する組成物に関するものである。また、該組成物からなる成形体、粘着剤、接着剤、塗膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
メタクリル系重合体ブロックとアクリル系重合体ブロックからなるアクリル系ブロック共重合体は粘着性、成形性、耐候性などに優れ、これらの特徴を生かして粘着剤、接着剤、コーティング材、各種成形材料などの用途への展開が期待されている(特許文献1)。
【0003】
一方、紫外線や電子線などの活性エネルギー線を照射することで硬化する材料として、活性エネルギー線硬化性材料が知られている。活性エネルギー線硬化性材料は、低エネルギーでの速硬化が可能で生産性が高い、常温硬化可能であるなどの利点を有しており、これらの利点を生かして接着剤、粘着剤、塗料、インク、コーティング材、各種電気・電子材料、光造形材などの用途に用いられている(非特許文献1)。
【0004】
このため、活性エネルギー硬化性を有するアクリル系ブロック共重合体は上記のアクリル系ブロック共重合体と活性エネルギー線硬化性材料のメリットを兼ね備えた材料となることが期待できるため、その開発が望まれていた。
【0005】
また、アクリル系ブロック共重合体の用途の一つである粘着剤においては、近年、電気・電子用途、自動車用を中心に高温での高い凝集力(保持力)が求められている。一般に粘着剤の保持力を向上させる方法として、粘着剤分子を架橋させる方法がとられているが、この方法は保持力の向上とともに粘着力が低下するという問題を抱えている。そこで、高温での高い保持力と粘着力を兼ね備えた活性エネルギー線硬化性組成物の開発が望まれていた(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−79120号公報
【特許文献2】特開平9−324165号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】‘99 UV/EB硬化材料製品市場便覧(株)シーエムシー出版
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、アクリル系ブロック共重合体を含み、活性エネルギー線による硬化性に優れ、粘着力、保持力、成形性、賦形後の硬化性に優れた活性エネルギー線硬化性組成物を得ることである。また、上記組成物を含む、成形体、接着剤、粘着剤、塗膜を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、上記課題を解決するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)からなり、メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)のうち少なくとも一方の重合体ブロックに活性エネルギー線硬化性官能基(c)を有するアクリル系ブロック共重合体(A)を含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【0011】
好ましい実施態様としては、アクリル系ブロック共重合体(A)がメタアクリル系重合体ブロック(a)に活性エネルギー線硬化性官能基(c)を有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【0012】
好ましい実施態様としては、光開始剤(B)をさらに含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【0013】
好ましい実施態様としては、活性エネルギー線硬化性官能基(c)がアリル基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【0014】
好ましい実施態様としては、アクリル系ブロック共重合体(A)がジブロック共重合体またはトリブロック共重合体、またはそれらの混合物であることを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【0015】
好ましい実施態様としては、アクリル系ブロック共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量が、5,000〜300,000であることを特徴とする特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【0016】
好ましい実施態様としては、アクリル系ブロック共重合体(A)における、メタアクリル系重合体ブロック(a)の割合が5〜90重量%、アクリル系重合体ブロック(b)の割合が95〜10重量%であることを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【0017】
好ましい実施態様としては、アクリル系ブロック共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.8以下であることを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【0018】
好ましい実施態様としては、アクリル系ブロック共重合体(A)が、有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤とし、Fe、Ru、Ni、Cuから選ばれる少なくとも1種類を中心金属とする金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合法により製造されたことを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【0019】
好ましい実施態様としては、活性エネルギー線硬化性官能基(c)が、アクリル系ブロック共重合体(A)1分子当たり1個以上含まれることを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【0020】
好ましい実施態様としては、光開始剤(B)が活性エネルギー線照射によりラジカルを発生する化合物であることを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【0021】
好ましい実施態様としては、光開始剤(B)が活性エネルギー線照射によりカチオンを発生する化合物であることを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【0022】
好ましい実施態様としては、光開始剤(B)が活性エネルギー線照射により塩基を発生する化合物であることを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【0023】
好ましい実施態様としては、光開始剤(B)の量が、アクリル系ブロック共重合体(A)100重量部に対して、0.01〜10重量部であることを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【0024】
さらに本発明は、上記の活性エネルギー線硬化性組成物を含むことを特徴とする成形体に関する。
【0025】
さらに本発明は、上記の活性エネルギー線硬化性組成物を含むことを特徴とする粘着剤に関する。
【0026】
さらに本発明は、上記の活性エネルギー線硬化性組成物を含むことを特徴とする接着剤に関する。
【0027】
さらに本発明は、上記の活性エネルギー線硬化性組成物を含むことを特徴とする塗膜に関する。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、従来は活性エネルギー線による硬化が困難であったアクリル系ブロック共重合体を含む組成物の活性エネルギー線による硬化が可能となり、活性エネルギー線による硬化性、粘着力、保持力、成形性、賦形後の硬化性に優れる活性エネルギー線硬化性組成物を得ることができる。
【0029】
また、上記組成物を含む成形体、接着剤、粘着剤、塗膜を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。
【0031】
本発明は、メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)からなり、メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)のうち少なくとも一方の重合体ブロックに活性エネルギー線硬化性官能基(c)を有するアクリル系ブロック共重合体(A)を含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物である。
【0032】
本発明の組成物は紫外線や電子線などの活性エネルギー線を照射することにより、活性エネルギー線硬化性官能基自身、または、光開始剤(B)を含む場合は光開始剤(B)が活性化されて、アクリル系ブロック共重合体の活性エネルギー線硬化性官能基(c)が反応して架橋構造を形成する。架橋構造を形成することにより、耐熱性、粘着性、接着性、機械強度、圧縮永久歪、耐油性、ゴム弾性などの諸特性を改善することができる。
【0033】
また、本発明において、(メタ)アクリルとはメタアクリル化合物(メタクリル化合物)とアクリル化合物の両者を意味する。
【0034】
また、本発明において、賦形後の硬化性とは射出成形や押出成形など種々の成形方法によって所定の形状を付与した後に、活性エネルギー線を照射することにより成形体を硬化させることができる性質のことである。
【0035】
一般に、アクリル系ブロック共重合体は、分子設計を適宜調整することで、常温で固体のものが容易に得られ、熱可塑性樹脂としての成形加工性に優れている。一方で、従来の活性エネルギー線硬化性樹脂は液体のものが多くあり、それらは上記の成形加工性を有していない。本発明のアクリル系ブロック共重合体組成物のように、賦形後に活性エネルギー線を照射することで硬化できると、従来樹脂では困難であった、成形後の諸特性(耐熱性、粘着性、接着性、機械強度、圧縮永久歪、耐油性、ゴム弾性など)の改善が可能となるメリットがある。
【0036】
また、本発明の成形体、粘着剤、接着剤、塗膜およびその他の用途は、未硬化の活性エネルギー線硬化性組成物を含むものであってもよく、活性エネルギー線照射によって得られる硬化物を含むものであっても良い。また、任意の割合で両者を含んでいてもよい。
【0037】
<アクリル系ブロック共重合体>
本発明のアクリル系ブロック共重合体(A)の構造は、特に問うものではなく、線状ブロック共重合体または分岐状(星状)ブロック共重合体またはこれらの混合物であってもよい。このようなブロック共重合体の構造は、必要とされるアクリル系ブロック共重合体の物性に応じて適宜選択すれば良いが、コスト面や重合容易性の点で、線状ブロック共重合体が好ましい。
【0038】
また、線状ブロック共重合体はいずれの構造(配列)のものであってもよいが、線状ブロック共重合体の物性、または組成物の物性の点から、メタアクリル系重合体ブロック(a)をa、アクリル系重合体ブロック(b)をbと表現したとき、(a−b)型、b−(a−b)型および(a−b)−a型(nは1以上の整数、たとえば1〜3の整数)からなる群より選択される少なくとも1種の構造を持つアクリル系ブロック共重合体であることが好ましい。これらの中でも、加工時の取扱い容易性や、組成物の物性の点からa−bで表わされるジブロック共重合体、a−b−aで表わされるトリブロック共重合体、またはこれらの混合物が好ましく、耐熱性や機械物性の観点からトリブロック共重合体が好ましい。
【0039】
アクリル系ブロック共重合体(A)の分子量はとくに制限されず、メタアクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体系ブロック(b)にそれぞれ必要とされる分子量から決めればよい。なお、分子量が小さい場合には、エラストマーとして十分な機械特性を発現出来ない場合があり、逆に分子量が必要以上に大きいと、加工特性が低下する場合がある。このような観点から、アクリル系ブロック共重合体(A)の分子量は数平均分子量で5,000〜300,000が好ましく、より好ましくは10,000〜200,000、さらに好ましくは10,000〜150,000であり、最も好ましくは50,000〜100,000である。数平均分子量が小さいと粘度が低く、また、数平均分子量が大きいと粘度が高くなる傾向があるので、必要とする加工特性に応じて適宜設定する。
【0040】
アクリル系ブロック共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)も、とくに制限はないが、1.8以下であることが好ましく、1.5以下であることがさらに好ましい。Mw/Mnが1.8をこえるとアクリル系ブロック共重合体の均一性が悪化し、粘度や機械物性などの期待する物性が発現しにくくなる場合がある。たとえば、成形体用途に使用する場合は、機械強度や伸び等の機械特性が低下し、粘度が高くなることで成形性が低下し、圧縮永久歪み特性等が低下する場合がある。さらに、粘着剤用途等に使用する場合は溶融性や高温での保持力が低下する場合がある。
【0041】
アクリル系ブロック共重合体のメタアクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体ブロック(b)の組成比は、メタアクリル系重合体ブロック(a)を5〜90重量%、アクリル系重合体ブロック(b)を95〜10重量%とするのが望ましく、メタアクリル系重合体ブロック(a)を10〜70重量%、アクリル系重合体ブロック(b)を90〜30重量%とするのがより好ましく、メタアクリル系重合体ブロック(a)を15〜50重量%、アクリル系重合体ブロック(b)を85〜50重量%とするのがさらに好ましい。メタアクリル系重合体ブロック(a)の割合が5重量%より少ないと、成形時に形状が保持されにくい傾向があり、アクリル系重合体ブロック(b)の割合が10重量%より少ないと、エラストマーとしての弾性および柔軟性、成形時の溶融性、粘着剤として用いた場合の粘着性が低下する傾向がある。
【0042】
アクリル系ブロック共重合体(A)の硬度は、メタアクリル系重合体ブロック(a)の割合が少ないと低くなり、メタアクリル系重合体ブロック(a)の割合が多いと高くなる傾向がある。このため、メタアクリル系重合体ブロック(a)の割合は、要求される硬度に応じて適宜設定するとよい。また粘度は、メタアクリル系重合体ブロック(a)の割合が少ないと低く、メタアクリル系重合体ブロック(a)の割合が多いと高くなる傾向がある。このため、要求される加工特性に応じてメタアクリル系重合体ブロック(a)の割合を適宜設定するとよい。
【0043】
アクリル系ブロック共重合体(A)を構成するメタアクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度の関係は、メタアクリル系重合体ブロック(a)のガラス転移温度をTg、アクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度をTgとして、機械強度やゴム弾性発現等の点で下式の関係を満たすことが好ましい。
Tg>Tg
前記重合体(メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b))のガラス転移温度(Tg)の設定は、下記のFox式に従い、各重合体部分の単量体の重量比率を設定することにより行うことができる。
1/Tg=(W/Tg)+(W/Tg)+…+(W/Tg
+W+…+W=1
(式中、Tgは重合体部分のガラス転移温度を表わし、Tg,Tg,…,Tgは各重合単量体のガラス転移温度を表わす。また、W,W,…,Wは各重合単量体の重量比率を表わす。)
前記Fox式における各重合単量体のガラス転移温度は、たとえば、Polymer Handbook Third Edition(Wiley−Interscience 1989)記載の値を用いればよい。
【0044】
なお、前記ガラス転移温度は、DSC(示差走査熱量測定)または動的粘弾性のtanδピークにより測定することができるが、メタアクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体ブロック(b)の極性が近すぎたり、ブロックの単量体の連鎖数が少なすぎると、それら測定値と、前記Fox式による計算式とがずれる場合がある。
【0045】
<メタアクリル系重合体ブロック(a)>
メタアクリル系重合体ブロック(a)は、メタアクリル酸エステルを主成分とする単量体を重合してなるブロックであり、加工性などの点で、メタアクリル酸エステル50〜100重量%およびこれと共重合可能なビニル系単量体0〜50重量%とからなることが好ましい。メタアクリル酸エステルの割合が50重量%未満であると、メタアクリル酸エステルの特徴である、耐候性や透明性などが損なわれる場合がある。
【0046】
また、メタアクリル系重合体ブロック(a)に活性エネルギー線硬化性官能基(c)を導入する方法として、<活性エネルギー線硬化性官能基(c)>に示す活性エネルギー線硬化性官能基(c)を有する(メタ)アクリル酸エステルまたはビニル系単量体を共重合する方法がある。共重合可能な(メタ)アクリル酸エステルと、共重合可能なビニル系単量体については、<活性エネルギー線硬化性官能基(c)>において詳細を示すが、その好ましい共重合比率は、上記記載のメタアクリル系重合体ブロック(a)を構成するメタアクリル酸エステル、メタアクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体と同様に取り扱うことができる。また、活性エネルギー線硬化性官能基(c)を有する(メタ)アクリル酸エステルまたはビニル系単量体は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
メタアクリル系重合体ブロック(a)を構成するメタアクリル酸エステルとしては、たとえば、メチルメタアクリレート、エチルメタアクリレート、n−プロピルメタアクリレート、イソプロピルメタアクリレート、n−ブチルメタアクリレート、イソブチルメタアクリレート、n−ペンチルメタアクリレート、n−ヘキシルメタアクリレート、n−ヘプチルメタアクリレート、n−オクチルメタアクリレート、2−エチルヘキシルメタアクリレート、ノニルメタアクリレート、デシルメタアクリレート、ドデシルメタアクリレート、ステアリルメタアクリレートなどのメタアクリル酸脂肪族炭化水素(たとえば炭素数1〜18のアルキル)エステル;シクロヘキシルメタアクリレート、イソボルニルメタアクリレートなどのメタアクリル酸脂環式炭化水素エステル;ベンジルメタアクリレートなどのメタアクリル酸アラルキルエステル;フェニルメタアクリレート、トルイルメタアクリレートなどのメタアクリル酸芳香族炭化水素エステル;2−メトキシエチルメタアクリレート、3−メトキシブチルメタアクリレートなどのメタアクリル酸とエーテル性酸素を有する官能基含有アルコールとのエステル;2−ヒドロキシエチルメタアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタアクリレートなどの水酸基含有メタアクリレート;トリフルオロメチルメタアクリレート、トリフルオロメチルメチルメタアクリレート、2−トリフルオロメチルエチルメタアクリレート、2−トリフルオロエチルメタアクリレート、2−パーフルオロエチルエチルメタアクリレート、2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチルメタアクリレート、2−パーフルオロエチルメタアクリレート、パーフルオロメチルメタアクリレート、ジパーフルオロメチルメチルメタアクリレート、2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチルメタアクリレート、2−パーフルオロヘキシルエチルメタアクリレート、2−パーフルオロデシルエチルメタアクリレート、2−パーフルオロヘキサデシルエチルメタアクリレートなどのメタアクリル酸フッ化アルキルエステル、および<活性エネルギー線硬化性官能基(c)>に示すエポキシ基含有メタクリル酸エステル、オキセタニル基含有メタクリル酸エステル、加水分解性シリル基含有メタクリル酸エステル、ビニル基含有メタクリル酸エステル、アリル基含有メタクリル酸エステル、マレイミド基含有メタクリル酸エステル、チオール基含有メタアクリ酸エステルなどの活性エネルギー線硬化性官能基(c)を含有するメタアクリ酸エステルをあげることができる。 これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、加工性、コストおよび入手容易性、の点で、メチルメタアクリレートが好ましい。また、活性エネルギー線硬化性官能基(c)のアクリル系ブロック共重合体(A)への導入を重合によって行う場合は、単量体の入手性、導入の容易性、架橋反応性の点からエポキシ基含有メタクリル酸エステル、加水分解性シリル基含有メタクリル酸エステル、ビニル基含有メタクリル酸エステル、アリル基含有メタクリル酸エステルが好ましく、エポキシ基含有メタクリル酸エステル、アリル基含有メタクリル酸エステルがより好ましく、エポキシ基含有メタクリル酸エステルがさらに好ましく、グリシジルメタアクリレートが特に好ましい。
【0048】
メタアクリル系重合体ブロック(a)を構成するメタアクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体としては、たとえば、アクリル酸エステル、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン含有不飽和化合物、ケイ素含有不飽和化合物、不飽和ジカルボン酸化合物、ビニルエステル化合物、マレイミド化合物、<活性エネルギー線硬化性官能基(c)>に示すエポキシ基含有ビニル化合物、オキセタニル基含有ビニル化合物、加水分解性シリル基含有ビニル化合物、アリル基含有ビニル化合物、多官能ビニル化合物、マレイミド基含有ビニル化合物、チオール基含有ビニル化合物などの活性エネルギー線硬化性官能基(c)を含有するビニル化合物などをあげることができる。
【0049】
アクリル酸エステルとしては、たとえば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘプチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、ステアリルアクリレートなどのアクリル酸脂肪族炭化水素(たとえば炭素数1〜18のアルキル)エステル;シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレートなどのアクリル酸脂環式炭化水素エステル;フェニルアクリレート、トルイルアクリレートなどのアクリル酸芳香族炭化水素エステル;ベンジルアクリレートなどのアクリル酸アラルキルエステル;2−メトキシエチルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレートなどのアクリル酸とエーテル性酸素を有する官能基含有アルコールとのエステル;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートなどの水酸基含有アクリレート;トリフルオロメチルメチルアクリレート、2−トリフルオロメチルエチルアクリレート、2−パーフルオロエチルエチルアクリレート、2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチルアクリレート、2−パーフルオロエチルアクリレート、パーフルオロメチルアクリレート、ジパーフルオロメチルメチルアクリレート、2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチルアクリレート、2−パーフルオロヘキシルエチルアクリレート、2−パーフルオロデシルエチルアクリレート、2−パーフルオロヘキサデシルエチルアクリレートなどのアクリル酸フッ化アルキルエステル、<活性エネルギー線硬化性官能基(c)>に示すアクリル酸エステルなどをあげることができる。
【0050】
芳香族アルケニル化合物としては、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンなどをあげることができる。シアン化ビニル化合物としては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどをあげることができる。
【0051】
共役ジエン系化合物としては、たとえば、ブタジエン、イソプレンなどをあげることができる。
【0052】
ハロゲン含有不飽和化合物としては、たとえば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどをあげることができる。
【0053】
ケイ素含有不飽和化合物としては、たとえば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、<活性エネルギー線硬化性官能基(c)>に示す加水分解性シリル基含有ビニル化合物などをあげることができる。
【0054】
不飽和ジカルボン酸化合物としては、たとえば、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステルなどをあげることができる。
【0055】
ビニルエステル化合物としては、たとえば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどをあげることができる。
【0056】
マレイミド系化合物としては、たとえば、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどをあげることができる。
【0057】
これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのビニル系単量体は、メタアクリル系重合体ブロック(a)に要求されるガラス転移温度の調整、アクリル系重合体ブロック(b)との相溶性、必要に応じて活性エネルギー線硬化性官能基(c)の導入容易性、反応性などの観点から好ましいものを適宜選択すればよいが、エポキシ基含有アクリル酸エステル、加水分解性シリル基含有アクリル酸エステル、アリル基含有アクリル酸エステル、ビニル基含有アクリル酸エステルが重合時の反応性の点から好ましく、エポキシ基含有アクリル酸エステル、アリル基含有アクリル酸エステルがより好ましく、エポキシ基含有アクリル酸エステルが特に好ましい。
【0058】
メタアクリル系重合体ブロック(a)は、アクリル系ブロック共重合体の熱変形の観点から、ガラス転移温度が25〜200℃となるように設計するのが好ましく、40〜150℃となるようにするのがより好ましく、50〜130℃となるようにするのがさらに好ましい。(a)のガラス転移温度がアクリル系ブロック共重合体の使用される環境の温度より低いと、凝集力の低下により、熱変形しやすくなる場合がある。
【0059】
以上述べた観点から、メタアクリル系重合体ブロック(a)は、メタアクリル酸メチルを主成分とし、活性エネルギー線硬化性官能基(c)の導入を共重合によって行なう場合は、<活性エネルギー線硬化性官能基(c)>に示す単量体、より好ましくはエポキシ基含有ビニル化合物、加水分解性シリル基含有ビニル化合物、アリル基含有ビニル化合物、多官能ビニル化合物、さらに好ましくはエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル、加水分解性シリル基含有(メタ)アクリル酸エステル、アリル基含有(メタ)アクリル酸エステル、ビニル基含有(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体、さらに好ましくはエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル、アリル基含有(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体、特に好ましくはグリシジルメタアクリレート、アリルメタアクリレート、最も好ましくはグリシジルメタアクリレートを共重合してなるブロックが好ましい。また、ガラス転移点の制御を目的とする場合は、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体を重合してなるブロックであることが好ましく、このうち、メチルメタアクリレートとの相溶性の点でエチルアクリレートが特に好ましい。
【0060】
<アクリル系重合体ブロック(b)>
アクリル系重合体ブロック(b)は、アクリル酸エステルを主成分とする単量体を重合してなるブロックであり、アクリル酸エステル50〜100重量%およびこれと共重合可能なビニル系単量体0〜50重量%とからなることが好ましい。アクリル酸エステルの割合が50重量%未満であると、アクリル酸エステルを用いた場合の特徴である組成物の物性、とくに柔軟性、耐油性が損なわれる場合がある。
【0061】
アクリル系重合体ブロック(b)を構成するアクリル酸エステルとしては、たとえば、メタアクリル系重合体ブロック(a)構成する単量体として例示したアクリル酸エステルと同様の単量体をあげることができる。
【0062】
これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、柔軟性、ゴム弾性、低温特性およびコストのバランスの点で、n−ブチルアクリレートが好ましい。耐油性と機械特性が必要な場合は、エチルアクリレートを共重合させることが好ましい。また、低温特性と耐油性の付与、および樹脂の表面タック性の改善が必要な場合は2−メトキシエチルアクリレートを共重合させることが好ましい。低温特性と粘着特性が必要な場合は、2−エチルヘキシルアクリレートを共重合させることが好ましい。
【0063】
また、アクリル系重合体ブロック(b)に活性エネルギー線硬化性官能基(c)を導入する方法として、<活性エネルギー線硬化性官能基(c)>に示す活性エネルギー線硬化性官能基(c)を有する(メタ)アクリル酸エステルまたはビニル系単量体を共重合する方法がある。この方法による場合、共重合可能な(メタ)アクリル酸エステル、共重合可能なビニル系単量体については<活性エネルギー線硬化性官能基(c)>において詳細を示すが、その好ましい共重合比率は、上記記載のアクリル系重合体ブロック(b)を構成するアクリル酸エステル、アクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体と同様に取り扱うことができる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0064】
アクリル系重合体ブロック(b)を構成するアクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体としては、たとえば、メタアクリル酸エステル、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン含有不飽和化合物、ケイ素含有不飽和化合物、不飽和ジカルボン酸化合物、ビニルエステル化合物、マレイミド系化合物、<活性エネルギー線硬化性官能基(c)>に示す活性エネルギー線硬化性官能基(c)を含有するビニル系単量体などをあげることができる。
【0065】
上記、メタアクリル酸エステル、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン含有不飽和化合物、ケイ素含有不飽和化合物、不飽和ジカルボン酸化合物、ビニルエステル化合物、マレイミド系化合物、<活性エネルギー線硬化性官能基(c)>に示す活性エネルギー線硬化性官能基(c)を含有するビニル系単量体としては、メタアクリル系重合体ブロック(a)を構成する単量体として例示したもののうち、アクリル酸エステル以外の単量体をあげることができる。
【0066】
これらはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのビニル系単量体は、アクリル系重合体ブロック(b)に要求されるガラス転移温度や耐油性、メタアクリル系重合体ブロック(a)との相溶性等のバランスを考慮して、適宜好ましいものを選択する。たとえば、アクリル系ブロック共重合体(A)の耐油性の向上を目的とした場合、アクリロニトリルを共重合するとよい。活性エネルギー線硬化性官能基(c)の導入を共重合によって行う場合は、単量体の入手性、導入の容易性、反応性の点から、好ましくはエポキシ基含有ビニル化合物、加水分解性シリル基含有ビニル化合物、アリル基含有ビニル化合物、多官能ビニル化合物、より好ましくはエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル、加水分解性シリル基含有(メタ)アクリル酸エステル、アリル基含有(メタ)アクリル酸エステル、ビニル基含有(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体、さらに好ましくはエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル、アリル基含有(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体、特に好ましくはグリシジルメタアクリレート、アリルメタアクリレート、最も好ましくはグリシジルメタアクリレートを共重合することが好ましい。
【0067】
アクリル系重合体ブロック(b)は、アクリル系ブロック共重合体(A)のゴム弾性の観点から、そのガラス転移温度が25℃以下となるようにするのが好ましく、より好ましくは0℃以下、さらに好ましくは−20℃以下である。アクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度がアクリル系ブロック共重合体(A)の使用される環境の温度より高いと、柔軟性や、ゴム弾性、粘着特性が発現されにくい。
【0068】
以上述べた観点から、アクリル系重合体ブロック(b)は、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−2−メトキシエチル及びアクリル酸−2−エチルヘキシルからなる群から選ばれる少なくとも1種ならびにこれらと共重合可能な異種のアクリル酸エステル50〜100重量%と、これらと共重合可能なビニル系単量体50〜0重量%とを重合してなるブロックであることが好ましい。
【0069】
アクリル系重合体ブロック(b)のTgの設定は、前記のFox式に従い、各重合体部分の単量体の重量比率を設定することにより行なうことができる。
【0070】
<活性エネルギー線>
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、活性エネルギー線を照射することにより硬化する。活性エネルギー線としては、遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線等の光線、X線、γ線等の電磁波の他、電子線、プロトン線、中性子線等が利用できるが、硬化速度、照射装置の入手のし易さ、価格等から紫外線または電子線照射による硬化が好ましく、紫外線照射による硬化がより好ましい。本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は活性エネルギー線硬化性官能基(c)または光開始剤(B)を含む場合は光開始剤(B)が活性エネルギー線により活性化され、活性エネルギー線硬化性官能基(c)が反応する。電子線のような高エネルギーの活性エネルギー線を照射する場合、(メタ)アクリロイル基やアリル基などの活性エネルギー線硬化性官能基(c)自身が活性エネルギー線により活性化され容易に反応するが、紫外線を照射する場合は光開始剤(B)を組成物に含ませておき、照射により光開始剤(B)が活性化され(メタ)アクリロイル基やエポキシ基などの活性エネルギー線硬化性官能基(c)が反応する方が反応性の観点から好ましい場合がある。
【0071】
紫外線照射により硬化させる方法としては、150〜450nm波長域の光を発する高圧水銀ランプ、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ等を用いて、活性エネルギー線を照射すればよい。
【0072】
活性エネルギー線照射中または照射後は、必要に応じて加熱を行って硬化の促進を図ることもできる。
【0073】
<活性エネルギー線硬化性官能基(c)>
本発明のアクリル系ブロック共重合体(A)は活性エネルギー線硬化性官能基(c)を有する。活性エネルギー線硬化性官能基(c)は活性エネルギー線の照射により活性化される官能基、または活性エネルギー線の照射により活性化された光開始剤によって活性化される官能基を意味する。本発明の組成物に活性エネルギー線を照射すると、活性エネルギー線硬化性官能基(c)または光開始剤(B)を含む場合は光開始剤(B)が活性化されて、活性エネルギー線硬化性官能基(c)が反応して硬化し、アクリル系ブロック共重合体に架橋構造を導入できる。
【0074】
架橋構造を導入することにより、耐熱性、粘着性、接着性、機械強度、圧縮永久歪、耐油性、ゴム弾性などの特性を改善できる。
【0075】
活性エネルギー線硬化性官能基(c)としては、本発明の組成物に活性エネルギー線を照射することにより硬化する官能基であれば特に制限されないが、反応性、活性エネルギー線硬化性官能基(c)を有する化合物の入手性などの観点から、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、ビニルエーテル基、エポキシ基、オキセタニル基、チオール基、マレイミド基、加水分解性シリル基が好ましい。この中でも、導入の容易性、反応性の観点から、(メタ)アクリロイル基、アリル基、エポキシ基が好ましく、反応性の観点から(メタ)アクリロイル基、エポキシ基がより好ましく、反応性と導入の容易性のバランスからエポキシ基が最も好ましい。ただし、反応性の観点からは(メタ)アクリロイル基の方がエポキシ基、アリル基よりも良好な場合がある。
【0076】
これらの官能基は、1種類のみに限定されず、1分子に複数種導入されていても良い。また、本発明のアクリル系ブロック共重合体(A)は、1種類の活性エネルギー線硬化性官能基(c)を有するアクリル系ブロック共重合体分子と該アクリル系ブロック共重合体分子とは異なる種類の活性エネルギー線硬化性官能基(c)を有するアクリル系ブロック共重合体分子からなるアクリル系ブロック共重合体混合物であってもよい。
【0077】
活性エネルギー線硬化性官能基(c)の1分子あたりの導入量は特に限定されないが、硬化性の観点から1分子当たりの平均導入個数が1個以上であることが好ましく、2個以上であることがより好ましく、5個以上であることがさらに好ましく、10個以上であることが特に好ましい。1個未満の場合は硬化性が不十分になる場合がある。
【0078】
架橋性官能基は、メタクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)のどちらか一方のブロックのみに含有していてもよいし、両方のブロックに含有していてもよく、必要とされるアクリル系ブロック共重合体組成物の物性に応じて使いわけることができる。
【0079】
例えば、耐熱性や耐熱分解性の向上の点ではメタクリル系重合体ブロック(a)に導入することが好ましく、耐油性やゴム弾性、圧縮永久歪み特性の向上の点ではアクリル系重合体ブロック(b)に導入することが好ましい。特に限定されないが、反応点の制御や、耐熱性、ゴム弾性、機械強度、柔軟性などの点では、メタクリル系重合体ブロック(a)あるいはアクリル系重合体ブロック(b)のどちらか一方のブロックに有することが好ましく、粘着力と保持力のバランスの観点からメタクリル系重合体ブロック(a)に有することが好ましい。
【0080】
活性エネルギー線硬化性官能基(c)は、分子末端に導入すると導入個数が制約される場合があることから、アクリル系ブロック共重合体(A)の末端以外であることが好ましい場合がある。
【0081】
活性エネルギー線硬化性官能基(c)のアクリル系ブロック共重合体(A)への導入方法は特に限定されないが、活性エネルギー線硬化性官能基(c)を有する単量体を共重合する方法、活性エネルギー線硬化性官能基(c)の前駆体を有する単量体を共重合した後に任意の方法で前駆体から活性エネルギー線硬化性官能基(c)を生成する方法、アクリル系ブロック共重合体との反応性を有する官能基を分子内に含む活性エネルギー線硬化性官能基(c)含有化合物を反応させて導入する方法などが挙げられる。このなかでも、導入の容易性の観点から活性エネルギー線硬化性官能基(c)を有する単量体を共重合する方法と、アクリル系ブロック共重合体との反応性を有する官能基を分子内に含む活性エネルギー線硬化性官能基(c)含有化合物を反応させて導入する方法が好ましい。
【0082】
共重合による導入において、活性エネルギー線硬化性官能基(c)を有する単量体としては特に限定されないが、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、エポキシ基、ビニルエーテル基、オキセタニル基、チオール基、マレイミド基、加水分解性シリル基を含有するビニル系単量体が挙げられる。これらの単量体は上記官能基を1分子当たり1種類有していてもよく、複数種類有していても良い。
【0083】
(メタ)アクリロイル基含有ビニル系単量体としては、アリル基含有(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレートなどが挙げられ、アリル基含有(メタ)アクリレートとしてはアリル(メタ)アクリレート、ブテニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0084】
多官能(メタ)アクリレートとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化2−メチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの1分子中にメタアクリロイル基とアクリロイル基を有する化合物、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレートなどのトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートなどのテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどのペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどのヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノール系エポキシ(メタ)アクリレート、ノボラック系エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル系多官能(メタ)アクリレート、ウレタン系多官能(メタ)アクリレート、ポリエーテル系多官能(メタ)アクリレート、ポリブタジエン系多官能(メタ)アクリレート、シリコン系多官能(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリル系多官能(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0085】
ビニル基を含有する単量体としては、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジアリルフタレートなどの多官能ビニル化合物などが挙げられる。
【0086】
アリル基を含有する単量体としては、上記のアリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0087】
ビニルエーテル基を含有する単量体としては、ブタンジオールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4−ベンゼンジメタノールジビニルエーテル、ハイドロキノンジビニルエーテル、サゾルシノールジビニルエーテル等の多官能ビニルエーテル化合物などが挙げられる
エポキシ基を含有する単量体としては、グリシジル(メタ)アクリレート、エポキシシクロヘキセニル(メタ)アクリレート等のエポキシシクロC5-8アルケニル(メタ)アクリレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、エポキシ化大豆油(メタ)アクリレート、などの分子内にエポキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有アルケニル化合物などが挙げられる。
【0088】
オキセタニル基を含有する単量体としては、(メタ)アクリル酸(3−エチル−3−オキセタニル)メチルなどのオキセタニル基含有ビニル化合物、チオール基を含有する単量体としては、2‐ビニルベンゼンチオールなどのチオール基含有アルケニル化合物などが挙げられる。
【0089】
マレイミド基を含有する単量体としては、N,N’−1,4−フェニレンジマレイミド、N,N’−[4,4’−メチレンビス(6−エチル−2−メチルフェニル)]ジマレイミドなどのジマレイミド化合物などが挙げられる。
【0090】
加水分解性シリル基を含有する単量体としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメトキシジメチルシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルエトキシジメチルシラン、ビニルメチルジ(エトキシメトキシ)シラン、ビニルエチルジメトキシシランおよびビニル(エトキシメトキシ)ジメチルシランなどのビニルアルコキシシラン、 アリルトリエトキシシランなどのアリルアルコキシシラン、ビニルトリアセトオキシシランなどのビニルアルカノイルオキシシラン、 3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、 β−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランなどの(メタ)アクリロイルオキシアルキルアルコキシシラン等のアルコキシシリル基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0091】
ここで、加水分解性シリル基とは、加水分解によりシロキサン結合を形成することにより架橋しうる官能基であり、珪素原子に結合した加水分解性基としては、特に限定されず、例えば、水素、ハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、アシルオキシド基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシド基などが好ましい例として挙げられ、取り扱いが容易で反応の際に有害な副生成物を生成しないアルコキシ基が特に好ましい。上記アルコキシ基としては例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基などを挙げることができる。アルコキシ基の結合したアルコキシシリル基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、トリフェノキシシリル基などのトリアルコキシシリル基;ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基などのジメトキシシリル基;メトキシジメチルシリル基、エトキシジメチルシリル基などのモノアルコキシシリル基を挙げることができる。これらの各アルコキシ基を複数個組み合わせて用いてもよし、異なるアルコキシ基を複数個組み合わせて用いてもよい。
【0092】
これらの中でも、導入の容易性、活性エネルギー線照射時の反応性の観点から、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、エポキシ基、加水分解性シリル基を有するビニル系単量体が好ましく、多官能(メタ)アクリレート、アリル基含有(メタ)アクリレート、エポキシ基含有(メタ)アクリレート、アルコキシシリル基含有(メタ)アクリレートがより好ましく、アリル基含有(メタ)アクリレート、エポキシ基含有(メタ)アクリレートがさらに好ましく、エポキシ基含有(メタ)アクリレートが特に好ましく、グリシジル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
アリル基、エポキシ基の導入においては、導入の容易性から共重合による方法が好ましい場合がある。一方で、(メタ)アクリロイル基の導入においては、共重合による導入に多官能(メタ)アクリレートを用いるとゲル化する場合があるため、アクリル系ブロック共重合体との反応性を有する官能基を分子内に含む活性エネルギー線硬化性官能基(c)含有化合物を反応させて導入する方法が好ましい場合がある。
【0093】
アクリル系ブロック共重合体との反応性を有する官能基を分子内に含む活性エネルギー線硬化性官能基(c)含有化合物を反応させて導入する方法としては、特に限定されないが、水酸基、イソシアネート基、エポキシ基などの反応性官能基を有する単量体を共重合することで反応性官能基をアクリル系ブロック共重合体に導入しておき、前記反応性官能基と反応する官能基と活性エネルギー線硬化性官能基(c)を併せ持つ化合物を反応させて導入する方法などがある。
【0094】
具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリレートを共重合することで水酸基をアクリル系ブロック共重合体に導入しておき、塩化(メタ)アクリロイルなどの(メタ)アクリル酸の酸ハロゲン化物、(メタ)アクリル酸などの(メタ)アクリロイル基含有カルボン酸化合物、(メタ)アクリル酸カリウムなどの(メタ)アクリル酸の金属塩、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有(メタ)アクリレートなどから選ばれる1種と反応させ(メタ)アクリロイル基を導入する方法、水酸基含有アクリル系ブロック共重合体にトルイレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物を反応させた後、水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させ(メタ)アクリロイル基を導入する方法、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有(メタ)アクリレートを共重合した後に水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させる方法、グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有(メタ)アクリレートを共重合することでエポキシ基をアクリル系ブロック共重合体に導入しておき、(メタ)アクリル酸などと反応させる方法などが挙げられる。これらの方法においては必要に応じて触媒などを使用して反応性を上げることが可能である。
【0095】
水酸気含有(メタ)アクリレートを共重合する場合、入手性の観点から2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましく、相溶性の観点からメタアクリル系共重合体ブロックに導入する場合2−ヒドロキシエチルメタアクリレートが好ましく、アクリル系重合体ブロックに導入する場合2−ヒドロキシエチルアクリレートが好ましい。
【0096】
導入効率および導入後の活性エネルギー線硬化性の観点から、水酸基含有アクリル系ブロック共重合体にトリエチルアミンなどの塩基存在下で塩化アクリロイルのような(メタ)アクリル酸の酸ハロゲン化物を反応させる方法、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有(メタ)アクリレートをジブチル錫(メルカプト酸エステル)などの有機錫化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物から選ばれる1種の触媒存在下反応させる方法、エポキシ基含有アクリル系ブロック共重合体にアクリル酸をトリフェニルホスフィン、ジメチルアニリンなどの触媒存在下を反応させる方法が好ましい。
【0097】
これらのうち、特に塩化アクリロイルを塩基存在下で用いる方法、および2−アクリロイルオキシエチルイソシアネートを有機錫触媒下で用いる方法が好ましい。
【0098】
また、本発明のアクリル系ブロック共重合体は、活性エネルギー線硬化性官能基(c)を有する化合物と併用して用いることも可能である。
【0099】
併用できる活性エネルギー線硬化性官能基(c)を有する化合物としては、ビニル基を有する化合物、単官能(メタ)アクリレートおよび多官能(メタ)アクリレートからなる(メタ)アクリロイル基含有化合物、エポキシ基含有化合物、オキセタニル基含有化合物、チオール基含有化合物、マレイミド基含有化合物、ビニルエーテルを有する化合物が挙げられる。
【0100】
ビニル基を有する化合物として、スチレン、インデン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−tert−ブトキシスチレン、p−クロロメチルスチレン、p−アセトキシスチレン、ジビニルベンゼンなどのスチレン誘導体や、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレンなどのナフタレン誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、安息香酸ビニル、珪皮酸ビニル、などのビニルエステル基を有する化合物、N−ビニルピロリドンなどをあげることができる。ただしこれらに限られない。
【0101】
(メタ)アクリル基含有化合物のうち単官能(メタ)アクリレートとして、例えば、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、トリフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、2−トリフルオロメチルエチル(メタ)アクリレート、2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロメチル(メタ)アクリレート、ジパーフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロデシルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロヘキサデシルエチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ビスフェノール系やノボラック系の単官能エポキシアクリレート類、単官能ウレタンアクリレート類、単官能ポリエステルアクリレート類、単官能ポリエーテルアクリレート類、単官能ポリブタジエンアクリレート類、単官能シリコンアクリレート類、単官能ポリ(メタ)アクリル系アクリレート類等が挙げられる。ただしこれらに限られない。
【0102】
(メタ)アクリル基含有化合物のうち多官能(メタ)アクリレートとして具体的には、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジイルジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1 ,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリス(2− ヒドキシエチル) イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル) イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA のエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドの付加体であるジオールのジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールA のエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドの付加体であるジオールのジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノール系やノボラック系のエポキシアクリレート類、ウレタンアクリレート類、ポリエステルアクリレート類、ポリエーテルアクリレート類、ポリブタジエンアクリレート類、シリコンアクリレート類、及びポリ(メタ)アクリル系アクリレート類等が挙げられる。ただしこれらに限られない。
【0103】
エポキシ基含有化合物としてはブチルグリシジルエーテルなどの1官能性のエポキシ基含有化合物、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールA系エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA系エポキシ樹脂、ビスフェノールF系エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族環式エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、ゴム変成エポキシ樹脂、ウレタン変成エポキシ樹脂、グリシジルエステル系化合物、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化SBS(SBSは、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体を示す)などのエポキシ樹脂、などのエポキシ基を有する化合物、等が挙げられる。ただしこれらに限られない。
【0104】
オキセタニル基含有化合物としては、3―エチル―3−(ヒドロキシメチル)オキセタン、3―エチル―3−[(フェノキシ)メチル]オキセタン、3―エチル―3−(ヘキシロキシメチル)オキセタン、3―エチル―3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン及び3―エチル―3−(クロロメチル)オキセタン等の単官能オキセタン、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、ビス{[1−エチル(3−オキセタニル)]メチル}エーテル等の多官能オキセタンなどが挙げられる。ただしこれらに限られない。
【0105】
チオール基含有化合物としては1,4−ブタンジチオール、1,10−デカンジチオール、3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジチオール、ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、4,5−ビス(メルカプトメチル)−o−キシレン、1,6−ヘキサンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,2−プロパンジチオール、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、s−トリアジン−2,4,6−トリチオール等のチオール化合物が挙げられる。ただしこれらに限られない。チオール基含有アクリル系ブロック共重合体、またはチオール基含有化合物を含む組成物を硬化させる際は、1分子中に2個以上の炭素−炭素二重結合を有する化合物を併用することが好ましい。
【0106】
マレイミド基含有化合物としては、4,4’−メチレンビス(N−フェニルマレイミド)、2,3−ビス(2,4,5−トリメチル−3−チエニル)マレイミド、1,2−ビスマレイミドエタン、1,6−ビスマレイミドヘキサン、トリエチレングリコールビスマレイミド、N,N’−m−フェニレンジマレイミド、m−トリレンジマレイミド、N,N’−1,4−フェニレンジマレイミド、N,N’−ジフェニルメタンジマレイミド、N,N’−ジフェニルエーテルジマレイミド、N,N’−ジフェニルスルホンジマレイミド、1,4−ビス(マレイミドエチル)−1,4−ジアゾニアビシクロ−[2,2,2]オクタンジクロリド、N−(9−アクリジニル)マレイミドなどが挙げられる。ただし、これらに限られない。
【0107】
ビニルエーテルを有する化合物としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、tert−アミルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、エチレングリコールブチルビニルエーテル、トリチレングリコールメチルビニルエーテル、安息香酸(4−ビニロキシ)ブチル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ブタン−1,4−ジオール−ジビニルエーテル、ヘキサン−1,6−ジオール−ジビニルエーテル、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール−ジビニルエーテル、イソフタル酸ジ(4−ビニロキシ)ブチル、グルタル酸ジ(4−ビニロキシ)ブチル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール−モノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル3−アミノプロピルビニルエーテル、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルビニルエーテル、ウレタンビニルエーテル、ポリエステルビニルエーテル等を挙げることができる。ただしこれらに限られない。
【0108】
これらの化合物は1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いても良い。また、上記官能基を含有する化合物は、1分子あたり該官能基を1種類のみ含有していてもよく、2種類以上を組み合わせて含有していても良い。
【0109】
これらのうち、入手性や、活性エネルギー線照射時の反応性から(メタ)アクリル基含有化合物、エポキシ基含有化合物が好ましい。
【0110】
<アクリル系ブロック共重合体(A)の製法>
アクリル系ブロック共重合体(A)を製造する方法としては、特に限定されないが、制御重合法を用いることが好ましい。制御重合法としては、リビングアニオン重合法(特開平11−335432)、有機希土類遷移金属錯体を重合開始剤として用いる重合法(特開平6−93060)、連鎖移動剤を用いたラジカル重合法(特開平2−45511)、リビングラジカル重合法などが挙げられる。
【0111】
リビングラジカル重合法としては、たとえば、ポリスルフィドなどの連鎖移動剤を用いる重合法、コバルトポルフィルン錯体を用いる重合法、ニトロキシドを用いる重合法(WO2004/014926)、有機テルル化合物などの高周期ヘテロ元素化合物を用いる重合法(特許第3839829号)、可逆的付加脱離連鎖移動重合法(RAFT)(特許第3639859号)、原子移動ラジカル重合法(ATRP)(特許第3040172号)などが挙げられる。本発明において、これらのうちいずれの方法を使用するかは特に制約はないが、制御の容易さの点などから原子移動ラジカル重合法が好ましい。
【0112】
原子移動ラジカル重合法を用いてアクリル系ブロック共重合体(A)を製造する方法としては、たとえば、WO2004/013192に挙げられた方法などを用いることができる。
【0113】
特に本発明のアクリル系ブロック共重合体(A)としては、有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤とし、Fe、Ru、Ni、Cuから選ばれる少なくとも1種類を中心金属とする金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合法により製造されたものが好ましい。
【0114】
ただし、重合によって得られたエポキシ基、オキセタニル基を含有するアクリル系ブロック共重合体溶液から、金属錯体を除く場合は、アスコルビン酸や弱酸性吸着剤などの弱酸性化合物、活性アルミナなどをブロック共重合体溶液に混合し、濾過により固形分を除去することで金属などを除く方法が好ましい。
【0115】
<光開始剤(B)>
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、光開始剤を含んでいてもよい。ただし、電子線等の高エネルギー線で硬化させる場合は、活性エネルギー線硬化性官能基(c)が(メタ)アクリロイル基、アリル基などの高エネルギー線での反応性を有する官能基であれば光開始剤を含有していなくても硬化できる。
【0116】
光開始剤(B)としては、活性エネルギー線硬化性官能基(c)を有するアクリル系ブロック共重合体(A)を架橋できるものであれば、特に制限はないが、活性エネルギー線照射によりラジカル、カチオン、または塩基を発生する化合物であることが好ましい。光開始剤(B)は、活性エネルギー線硬化性官能基(c)の種類により適宜選択することができる。
【0117】
光開始剤としては、アクリル系ブロック共重合体(A)が、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、チオール基などのラジカル重合性官能基のいずれか1種類以上を有する際には、ラジカルを発生する開始剤であるベンゾフェノン系開始剤、アセトフェノン系開始剤、チオキサントン系開始剤、フォスフィンオキサイド系開始剤などが例示される。ただし、ラジカル重合開始剤であれば特に限定されない。具体的には例えば、ベンゾイン、ベンゾインモノメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アセトイン、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパノン−1、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、などのカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィドなどの硫黄化合物、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフインオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド、カンファーキノン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピロリル−1−フェニル)チタニウム等のラジカル重合開始剤を挙げることができ、これらは1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
【0118】
これらの中では、特に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、が反応性、透明性、価格などの面で好適である。
【0119】
上記ラジカル重合開始剤の具体的製品名としては2,2−ジメトキシー2−フェニルアセトフェノン(東京化成工業製)、IRGACURE184(1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン;チバジャパン製)、IRGACURE651(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン;チバジャパン製)DAROCUR 1173(2−ヒドロキシ−2−メチルー1−フェニルプロパン−1−オン;チバジャパン製)、IRGACURE 2959(チバジャパン製)、IRGACURE 127(チバジャパン製)、IRGACURE 907(チバジャパン製)、IRGACURE 369(チバジャパン製)、IRGACURE 379(チバジャパン製)、DAROCUR TPO(チバジャパン製)、IRGACURE 819(チバジャパン製)、IRGACURE819DW(チバジャパン製) 、IRGACURE 784(チバジャパン製)、IRGACURE OXE 01(チバジャパン製)、IRGACURE OXE 02(チバジャパン製)、IRGACURE 754(チバジャパン製)、IRGACURE 500(チバジャパン製)、IRGACURE 1800(チバジャパン製)、IRGACURE 1870(チバジャパン製)、DAROCUR 4265(チバジャパン製)、KAYACURE BP(日本化薬製)、KAYACURE DETX−S(日本化薬製)、ESACURE KIP 150(Lamberti製)、S−121(シンコー技研製)、セイクオールBEE(精工化学製)、ソルバスロンBIPE(黒金化成製)、ソルバスロンBIBE(黒金化成製)などが挙げられる。ただしこれに限られない。
【0120】
アクリル系ブロック共重合体(A)が、エポキシ基、ビニルエーテル基、オキセタニル基、加水分解性シリル基などのカチオン重合性官能基の何れか1種類以上を有する際には、光カチオン開始剤であるスルホニウム塩系開始剤、ヨードニウム塩系などのオニウム塩系開始剤、スルホン酸誘導体、カルボン酸エステル類、アリールジアゾニウム塩、鉄アレーン錯体、ピリジニウム塩、キノリニウム塩、O−ニトロベンジル基含有化合物など例示される。ただし、カチオン開始剤であれば特に限定されない。なお、本発明において、光カチオン開始剤は光酸発生剤と同義である。上記開始剤はより具体的には、例えば、p−フェニルベンジルメチルスルホニウム塩、p−フェニルジメチルスルホニウム塩や、ベンジルメチルp−ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートなどのp−ヒドロキシフェニルベンジルメチルスルホニウム塩等のベンジルメチルスルホニウム塩や、トリフェニルスルホニウム塩、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウム塩等のトリアリールスルホニウム塩や、4,4−ビス[ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ]フェニスルフィドビスヘキサフルオロアンチモネートなどのビス−[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド骨格を持つジスルホニウム塩、ジフェニルヨードニウム、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、(4−tert−ブトキシフェニル)フェニルヨードニウム、(4−メトキシフェニル)フェニルヨードニウム等のヨードニウム塩等があげられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
【0121】
中でも、熱安定性の点からビス−[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド骨格を持つジスルホニウム塩、トリアリールスルホニウム塩が特に好ましい。これらスルホニウム塩の対アニオンとしては、SbF、AsF、PF、BF等が挙げられるが、反応性や安定性の観点からSbF、BF、PFが好適に用いられる。これらカチオン重合開始剤の具体的製品名としてはアデカオプトマーSP−172(ADEKA製)、アデカオプトマーSP−170(ADEKA製)、アデカオプトマーSP−152(ADEKA製)、アデカオプトマーSP−150(ADEKA製)、サンエイド SI−60L(三新化学工業製)、サンエイド SI−80L(三新化学工業製)、サンエイド SI−100L(三新化学工業製)、サンエイド SI−150L(三新化学工業製)、IRGACURE250(チバジャパン製)、などが挙げられる。
【0122】
アクリル系ブロック共重合体(A)がエポキシ基を含有する場合は、コバルトアミン錯体、ヨウ化トリメチルベンズヒドリルアンモニウム、O−アシルオキシム、カルバミン酸誘導体、ホルムアミド誘導体などの光塩基発生剤が挙げられる。
【0123】
このような光開始剤の配合量については、本発明のアクリル系ブロック共重合体の硬化性等に応じて適宜調整されるが、反応性、透明性、価格の面を考慮すると、本発明の組成物100質量部に対して、0.01〜10重量部、好ましくは0.2〜10重量部、より好ましくは0.5〜5質量部、さらに好ましくは0.5〜2重量部である。
【0124】
本発明のアクリル系ブロック共重合体組成物は、光開始剤(B)と共に増感剤を含んでいても良い。
【0125】
増感剤は活性エネルギー線感受性を移動または広げ、硬化反応を促進するものであれば特に限定されないが、トリエチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、エタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等のアミン系化合物、および長い共役二重結合を含む構造を有している化合物が好ましい。長い共役二重結合を含む構造としては、ベンゾイル基、チオフェン基、または多環式の芳香族基を有する構造が挙げられる。 ベンゾイル基を有する化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイルおよびこれらの誘導体などが挙げられる。チオフェン基を有する化合物としては、例えば、チオフェンおよびその誘導体などが挙げられる。多環式の芳香族基を有する化合物としては、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、ペンタセン、クマリン、チオキサントン、アセトフェノン、ナフトキノン、アントラキノン、およびこれらの誘導体などが挙げられる。該光増感剤としては、市場から容易に入手できる化合物が好ましく、例えば、DBA(9,10−ジブトキシアントラセン、川崎化成工業(株)製)等を挙げることができる。
【0126】
<その他成分>
本発明のアクリル系ブロック共重合体組成物は、諸物性の調整を目的として、必要に応じて、上記以外の各種添加剤を添加してもよい。このような添加剤として充填剤、滑剤、安定剤、可塑剤、柔軟性付与剤、難燃剤、顔料、帯電防止剤、抗菌抗カビ剤、粘着付与剤、流動性改良剤、ブロッキング防止剤、架橋剤、架橋助剤、染料、導電性フィラーなどを添加してもよい。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用可能である。 また、発泡剤、つまり、各種の化学発泡剤、物理発泡剤を添加することができる。
【0127】
本発明のアクリル系ブロック共重合体(A)を含む組成物(配合物)の製造方法としては、とくに制限はなく、公知の方法を適用することができる。
【0128】
例えば、バッチ式混錬装置や連続混錬装置を用いることにより、配合することができる。バッチ式混練装置としては、例えば、耐圧製の反応容器、ミキシングロール、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、高剪断型ミキサーを使用できる。また、連続混練装置としては、単軸押出機、二軸押出機、KCK押出混練機などを用いることができる。
【0129】
また、アクリル系ブロック共重合体(A)および配合成分を可溶な溶媒に溶かした状態で混合することにより配合し、得られた組成物をそのまま使用する、または蒸発機等を用いて溶媒を除去して使用することもできる。
【0130】
また各成分の配合順序はとくに限定されず、使用する装置、作業性あるいは得られる組成物の物性に応じて決定することができる。
【0131】
得られる組成物の形状は、特に限定されないが、ベール状、溶液状、ペレット状、パウダー状などが例示される。それぞれの賦形方法は既存の方法を用いることができる。さらに、たとえば特開2003−253005号に記載の方法によりペレットの防着処理をすることができる。
【0132】
<アクリル系ブロック共重合体組成物の加工方法>
本発明のアクリル系ブロック共重合体組成物は単独で使用してもよく、適当な溶媒に溶解した状態や種々の配合剤を添加した状態で使用してもよい。
【0133】
また、所望の形状・状態において活性エネルギー線を照射することにより、硬化させることが可能である。
【0134】
本発明におけるアクリル系ブロック共重合体組成物の加工法は、とくに制限はなく、押出成形法、異形押出法、射出成形法、多層成形法、2色成形法、インサート成形法、サンドイッチ成形法、発泡成形法、プレス成形法、ブロー成形法、カレンダー成形法、回転成形法、スラッシュ成形法、ディップ成形法、キャスト成形法などがあげられる。このような加工法により得られる成形体の形状としては、塗膜、フィルム、シート、チューブ、バッグ、パイプ、各種異型材、容器類などがあげられる。また、得られた成形体に活性エネルギー線を照射することにより、賦形後に硬化させることが可能である。
【0135】
本発明のアクリル系ブロック共重合体組成物は、活性エネルギー線による硬化性に優れ、粘着力、保持力、成形性、賦形後の硬化性に優れる。
【0136】
したがって、本発明のアクリル系ブロック共重合体組成物は、粘着剤、接着剤、塗膜、封止剤、フィルム、シートおよび各種成形体、樹脂改質剤などとして、自動車、家電・弱電、工業部品、土木・建築、スポーツ用品・日用雑貨、包装材料、医療・ヘルスケア用品として適用可能であり、例えば、粘着剤、接着剤、塗料、コーティング材、封止剤、光造形用材料、レジスト材料、インキ、粘度調整剤、制振材、防音材、発泡体、分散材、バインダー、皮革材料、ゲル、絶縁材料、化粧品、樹脂改質材などの用途に利用可能である。この中でも粘着力、保持力に優れるため、特に粘着剤として好適に使用できる。
以下に用途例について具体的に示す。
【0137】
(1)粘着剤
粘着剤としては多層共押出成形などにより製造される無溶剤型粘着剤、反応型粘着剤、ホットメルト系粘着剤、溶剤系粘着剤、水系粘着剤などのベース樹脂または添加剤として適用可能である。また、粘着剤用の基材シートおよびフィルムのベース樹脂または添加剤として適用可能である。
【0138】
用途としては、エレクトロニクス、家電・弱電、工業部品、自動車、航空、医療・ヘルスケア、土木・建築、スポーツ・日用雑貨、包装分野で用いられる種々の粘着剤が挙げられ、種々の粘着シート・テープ、タックシートや、種々の紫外線・電子線硬化粘着剤、より具体的にはディスプレー、精密装置用の表面保護シート用粘着剤、自動車ボディー・バンパー用粘着剤、光学フィルムの貼り合わせ用粘着剤、光学ディスクの貼り合わせ用粘着剤、LCD向け貼り合わせ用粘着剤、CD、DVD、Blue−rayディスク用粘着剤、精密部品固定用両面粘着テープ、電子材料の工程用粘着テープ、バッククラインド用テープ、ダイシングープ、電気絶縁用テープ、プリント配線版用テープ、異方導電性膜用テープ、塗装用マスキングテープ、クラフト粘着テープ、両面テープ、基材なしの両面テープ、発泡体テープ、等のテープ用粘着剤、事務一般用粘着製品、医療用粘着製品、ラベル製品などが挙げられる。
【0139】
(2)接着剤
接着剤としては、反応型接着剤、ホットメルト系接着剤、水系接着剤、溶剤系接着剤、感圧接着剤、粉体接着剤用のベース樹脂または添加剤として適用可能である。また基材シートおよびフィルムとして使用可能である。
【0140】
用途としてはエレクトロニクス、家電・弱電、工業部品、自動車、航空、医療・ヘルスケア、土木・建築、スポーツ・日用雑貨、包装分野で用いられる種々の接着剤が挙げられ、より具体的には、例えば水晶振動子固定用接着剤、液晶ディスプレー用接着剤、プリント基板への各種チップ部品の固定用接着剤、光ディスク用接着剤、コイル固定用接着剤、レンズ固定用接着剤、プリズム固定用接着剤、センサー固定用接着剤、注射針固定用接着剤、積層無機質ボード用接着剤、自動車用静電植毛製品、自動車用サイドプロテクションモール等にテープ等を接着する接着剤、自動車部品として使用される接着困難な極性材料(PMMA、PC、ABS、COP等)・ゴム製品・合成樹試製品用接着剤等の自動車用接着剤、合成皮革用接着剤、加硫ゴム用接着剤、繊維用接着剤、不織布用接着剤、プロピレン・PVCシート用接着剤、金属部品用接着剤、発泡体シート用接着剤、金属・極性樹脂積層体用接着剤、食品包装用接着剤、プライマー、シーラント等の用途が挙げられる。
【0141】
(3)塗膜
塗膜としては塗料、コーティング剤、レジスト材料、インキなどがある。より具体的には、自動車、鋼管、木工製品、床材、電子部品・機器、光ファイバー、プラスチックフィルム、金属缶、カラーフィルター、光ディスク、建築材、航空機、鉄道車両の塗料・コーティング材、プリント配線板用レジスト、半導体用レジスト、スクリーン印刷レジストなどのフォトレジスト、ソルダーレジストなどのレジスト材料、UV硬化インキなどがある。また、上記材料の改質材としても利用可能である。
【0142】
従って、本発明の組成物からなる成形体及び改質剤は種々の用途に広く利用可能であり、工業的価値の大きいものである。
【実施例】
【0143】
本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0144】
なお、実施例におけるBA、MMA、GMA、HEMA、AMA、は、それぞれ、n−ブチルアクリレート、メチルメタアクリレート、グリシジルメタアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート、アリルメタアクリレート、を表す。
【0145】
<分子量測定法>
本実施例に示す分子量は以下に示すGPC分析装置で測定し、クロロホルムを移動相として、ポリスチレン換算の分子量を求めた。システムとして、ウオーターズ(Waters)社製GPCシステムを用い、カラムに、昭和電工(株)製Shodex K−804(ポリスチレンゲル)を用いた。
【0146】
<重合反応の転化率測定法>
本実施例に示す重合反応の転化率は以下に示す分析装置、条件で測定した。
使用機器:(株)島津製作所製ガスクロマトグラフィーGC−14B
分離カラム:J&W SCIENTIFIC INC製、キャピラリーカラムDB−17、0.35mmφ×30m
分離条件:初期温度50℃、3.5分間保持
昇温速度40℃/min
最終温度140℃、1.5分間保持
インジェクション温度250℃
ディテクター温度250℃
試料調整:サンプルを酢酸エチルにより約10倍に希釈し、アセトニトリルを内部標準物質とした。
【0147】
<アクリル系ブロック共重合体と光開始剤の配合>
溶液状態での配合:アクリル系ブロック重合体をトルエンに溶解させ30%溶液とした。得られたアクリル系ブロック重合体溶液に所定量の開始剤を加え、必要に応じて所定量の増感剤を加え、スパチュラで1分間攪拌し、硬化性液状組成物を得た。必要に応じて、得られた溶液を真空状態で脱揮して溶媒を除去した。
【0148】
溶融混練での配合:アクリル系ブロック重合体溶液に所定量の開始剤を加え、ラボプラストミルにて所定温度で所定時間混錬し、硬化性組成物を得た。
【0149】
<活性エネルギー線の照射>
紫外線の照射:紫外線照射装置LIGHT HAMMER6(FUSION UV SYSTEMS社製、ランプ;Hバルブ水銀灯タイプ)を用いて紫外線をサンプルに対して所定量照射した。
【0150】
電子線の照射:電子線照射装置を用いて10Mrad(加速電圧200kv)の電子線を照射した。
【0151】
<粘着特性評価用サンプルの調整>
硬化性液状組成物を、厚み50μmのPETフィルム上にコーターを用いてコーティングし、溶媒を除去することで粘着テープを作成した。この粘着テープを、JIS Z−0237に準じてステンレス板に幅25mm×長さ125mmとして貼り付け、試験片とし、粘着力試験を実施した。粘着層の厚みは厚みゲージを用いて測定した。
【0152】
<粘着力試験>
ステンレス板に粘着テープを貼り付けた試験片を、雰囲気温度23℃、剥離角度180°、引張速度300mm/分の条件で剥離させるのに要する力を剥離力として測定した。
【0153】
<保持力試験>
粘着テープを貼り付けた試験片を用いて、JIS Z−0237に準じて保持力試験を実施した。試験温度は150℃、荷重は1kgfとした。試験には保持力試験機145−DT(安田精機製作所製)を用いた。
【0154】
<UV硬化性評価>
サンプルの重量を測定後、トルエン溶液に浸し、12時間経過後、サンプルを取り出し、真空乾燥機にてトルエンを除去した。乾燥後のサンプルの重量を測定し、試験前後での重量保持率をゲル分率とした。ゲル分率は高いほど硬化性が良好なことを示している。
【0155】
<電子線硬化性評価>
サンプルをトルエン溶液に浸し、12時間経過後、溶液中に未溶解物があるかどうかを目視にて確認した。
硬化性○:未溶解物を確認できる。
硬化性×:未溶解物を確認できない。
【0156】
<アクリル系ブロック共重合体の成形>
溶融混練により得られた硬化性組成物、または塗膜状組成物、またはアクリル系ブロック共重合体を鏡面プレス板に挟み所定温度でプレス機NSF−50(神藤金属工業所製)にて圧縮し、所定厚みの板状成形体を得た。
【0157】
<成形性評価>
得られた成形体を観察し、以下の基準に基づいて成形性を評価した。
成形性判断基準
○:成形体表面に大きな凹凸がなく、シート全体に大きな歪みがない。
×:成形体表面に大きな凹凸が見られる、または、シート全体が大きく歪んでいる。または、成形体がシート状になっていない。
【0158】
(製造例1)エポキシ基含有アクリル系ブロック共重合体(P(MMA/GMA)−b−PBA−b−P(MMA/GMA))の重合
窒素置換した15L耐圧反応器に、臭化銅8.96g、BA1266g、アセトニトリル111g、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル9.0gを加えて攪拌し、75℃に昇温させた。その後、ペンタメチルジエチレントリアミン(以下トリアミン)1.1gを添加して重合を開始させた。重合溶液を適宜サンプリングし、ガスクロマトグラフィー分析により転化率を測定した。BAの転化率が97%の時点で、トルエン1263g、塩化銅6.19g、MMA477g、GMA79gを追加した。トリアミンを適宜追加し、反応速度を調整した。MMAの転化率が89%、GMAの転化率が94%の時点で、トルエン3700gを追加するとともに冷却して反応を停止させた。
【0159】
重合後のアクリル系ブロック共重合体溶液に、活性アルミナ140g、キョーワード700SEN(協和化学製)70gを加え、100℃で3時間吸着処理をおこなった。冷却後の溶液を、ポリエステルフェルトを備えた加圧濾過器を用いて濾過することにより吸着剤を濾別した。得られたアクリル系ブロック共重合体の精製溶液を、真空乾燥することにより、目的とするエポキシ基含有アクリル系ブロック共重合体1を得た。
【0160】
得られたエポキシ基含有アクリル系ブロック共重合体1のGPC分析を行ったところ、数平均分子量Mnは10,7166、分子量分布Mw/Mnは1.33であった。また、重合仕込み量と転化率測定の結果から求めた官能基導入数は1分子あたり20.9個であった。
【0161】
(製造例2)エポキシ基含有アクリル系ブロック共重合体(P(MMA/GMA)−b−PBA−b−P(MMA/GMA))の重合
窒素置換した5L耐圧反応器に、臭化銅4.98g、BA694.18g、アセトニトリル60.88g、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル5.0gを加えて攪拌し、75℃に昇温させた。その後、ペンタメチルジエチレントリアミン(以下トリアミン)0.602gを添加して重合を開始させた。重合溶液を適宜サンプリングし、ガスクロマトグラフィー分析により転化率を測定した。BAの転化率が97%の時点で、トルエン793g、塩化銅3.44g、MMA275g、GMA12.08gを追加した。トリアミンを適宜追加し、反応速度を調整した。MMAの転化率が90%、GMAの転化率が90%の時点で、トルエン1190gを追加するとともに冷却して反応を停止させた。
【0162】
重合後のアクリル系ブロック共重合体溶液に、活性アルミナ76g、キョーワード700SEN(協和化学製)38gを加え、100℃で3時間吸着処理をおこなった。冷却後の溶液を、ポリエステルフェルトを備えた加圧濾過器を用いて濾過することにより吸着剤を濾別した。得られたアクリル系ブロック共重合体の精製溶液を、真空乾燥することにより、目的とするエポキシ基含有アクリル系ブロック共重合体2を得た。
【0163】
得られたエポキシ基含有アクリル系ブロック共重合体2のGPC分析を行ったところ、数平均分子量Mnは11,3475、分子量分布Mw/Mnは1.35であった。また、重合仕込み量と転化率測定の結果から求めた官能基導入数は1分子あたり5.5個であった。
【0164】
(製造例3)水酸基含有アクリル系ブロック共重合体(P(MMA/HEMA)−b−PBA−b−P(MMA/HEMA))の重合とアクリロイル基の導入
窒素置換した5L耐圧反応器に、臭化銅11.26g、BA804.6g、アセトニトリル141.2g、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル5.65gを加えて攪拌し、75℃に昇温させた。その後、ペンタメチルジエチレントリアミン(以下トリアミン)1.36gを添加して重合を開始させた。重合溶液を適宜サンプリングし、ガスクロマトグラフィー分析により転化率を測定した。BAの転化率が95%の時点で、トルエン950g、塩化銅7.77g、MMA328g、HEMA22.44gを追加した。トリアミンを適宜追加し、反応速度を調整した。MMAの転化率が82%、HEMAの転化率が100%の時点で、トルエン1190gを追加するとともに冷却して反応を停止させた。
【0165】
重合後のアクリル系ブロック共重合体溶液に、p−トルエンスルホン酸一水和物17.9gを加えて室温で3時間撹拌した。析出した不溶部を桐山漏斗で濾過して除いた後、ポリマー溶液に吸着剤キョーワード500SH(協和化学製)を46g加えて室温で更に3時間撹拌した。桐山漏斗で吸着剤を濾過し、無色透明のポリマー溶液を得た。この溶液を乾燥させて溶剤および残存モノマーを除き、目的のブロック共重合体を得た。得られたブロック共重合体のGPC分析を行なったところ、数平均分子量Mn109439、分子量分布Mw/Mn1.37であった。H−NMRで測定した組成比は、BA/MMA/HEMA=73.1/24.3/2.6(重量%)であった。
【0166】
ブロック共重合体をトルエンに溶解させ30%溶液とした。1Lセパラブルフラスコに、ブロック共重合体溶液100g、トリエチルアミン1.41gを加え、氷水バスで冷却した。ここに塩化アクリロイル1.25gを滴下し、2時間攪拌した。サンプリングし、H−NMR測定を行うと、反応率は70%であった。
【0167】
反応後の溶液から析出したアミン塩を除去するため、吸引ろ過を2回行った。次に、ろ液からトルエンを除去するため、室温で脱揮した。残存するアミン塩を除去するため、クロロホルムと炭酸水素ナトリウム水溶液で分液を行い、水層は廃棄、クロロホルム層は吸引ろ過といった精製を2回繰り返した。次いで、クロロホルムと食塩水で分液を3回行い、精製した。分液による精製後、有機層に硫酸マグネシウムを加え、水分を除去した。最後に、クロロホルムと残存するトリエチルアミン、アクリル酸を除去するために、70 ℃に加熱を行いながら脱揮を行ってアクリロイル基を有する目的のブロック共重合体3を得た。得られたアクリロイル基含有アクリル系ブロック共重合体3のGPC分析を行ったところ、数平均分子量Mnは11,0665、分子量分布Mw/Mnは1.37であった。また、重合仕込み量と転化率測定の結果から求めた官能基導入数は1分子あたり7.7個であった。
【0168】
(製造例4)アリル基含有アクリル系ブロック共重合体(P(MMA/AMA)−b−PBA−b−P(MMA/AMA))の重合
2Lのセパラブルフラスコの重合容器内を窒素置換したのち、臭化銅4.50g(31.4ミリモル)を量り取り、アセトニトリル(窒素バブリングしたもの)72.0mLを加えた。30分間70℃で加熱攪拌したのち、開始剤2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル2.26g(6.28ミリモル)およびBA360ml(2.51モル)を加えた。85℃で加熱攪拌し、配位子ジエチレントリアミン0.66ml(3.14ミリモル)を加えて重合を開始した。
【0169】
重合開始から一定時間ごとに、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約0.2mLを抜き取り、サンプリング溶液のガスクロマトグラム分析によりBAの転化率を決定した。トリアミンを随時加えることで重合速度を制御した。BAの転化率が94%の時点で、MMA201.3ml(1.88モル)、AMA12.66ml(93.7ミリモル)、塩化銅3.11g(31.4ミリモル)、ジエチレントリアミン0.66ml(3.14ミリモル)およびトルエン(窒素バブリングしたもの)635mlを加えた。同様にして、MMAの転化率を決定した。MMAの転化率が56%、AMAの転化率が45%の時点で、トルエン635mlを加え、水浴で反応器を冷却して反応を終了させた。反応溶液をトルエン2.1Lで希釈し、p−トルエンスルホン酸一水和物7.80gを加えて室温で3時間撹拌した。析出した不溶部を桐山漏斗で濾過して除いた後、ポリマー溶液に吸着剤キョーワード500SH(協和化学製)を8.00g加えて室温で更に3時間撹拌した。桐山漏斗で吸着剤を濾過し、無色透明のポリマー溶液を得た。この溶液を乾燥させて溶剤および残存モノマーを除き、目的のブロック共重合体4を得た。得られたブロック共重合体4のGPC分析を行なったところ、数平均分子量Mn114600が、分子量分布Mw/Mn1.74であった。H−NMRで測定した組成比は、BA/MMA/AMA=74.3/24.1/1.6(重量%)であった。また、重合仕込み量と転化率測定の結果から求めた官能基導入数は1分子あたり6.7個であった。
【0170】
(製造例5)エポキシ基含有アクリル系ブロック共重合体(PMMA−b−P(BA/GMA)−b−PMMA)の重合
窒素置換した15L耐圧反応器に、臭化銅8.8g、BA1194g、GMA34.8g、アセトニトリル110g、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル8.8gを加えて攪拌し、75℃に昇温させた。その後、ペンタメチルジエチレントリアミン(以下トリアミン)1.0gを添加して重合を開始させた。重合溶液を適宜サンプリングし、ガスクロマトグラフィー分析により転化率を測定した。BAの転化率が50%の時点で、GMA34.8gを追加して重合を続け、BAの転化率が97%の時点で、トルエン1248g、塩化銅6.1g、MMA539gを追加した。トリアミンを適宜追加し、反応速度を調整した。MMAの転化率が90%の時点で、トルエン6950gを追加するとともに冷却して反応を停止させた。GMAの転化率は97%であった。
【0171】
重合後のアクリル系ブロック共重合体溶液に、活性アルミナ140g、キョーワード700SEN(協和化学製)70gを加え、100℃で3時間吸着処理をおこなった。冷却後の溶液を、ポリエステルフェルトを備えた加圧濾過器を用いて濾過することにより吸着剤を濾別した。得られたアクリル系ブロック共重合体の精製溶液を、真空乾燥することにより、目的とするエポキシ基含有アクリル系ブロック共重合体5を得た。
【0172】
得られたエポキシ基含有アクリル系ブロック共重合体5のGPC分析を行ったところ、数平均分子量Mnは10,8604、分子量分布Mw/Mnは1.35であった。また、重合仕込み量と転化率測定の結果から求めた官能基導入数は1分子あたり19.4個であった。
【0173】
(製造例6)活性エネルギー線硬化性官能基を含有しないアクリル系ブロック共重合体(PMMA−b−PBA−b−PMMA)の製造
窒素置換した500L反応器に、アクリル系重合体ブロックを構成する単量体として、BA83.0kgを仕込み、続いて臭化第一銅580gを仕込んで攪拌を開始した。その後、2、5−ジブロモアジピン酸ジエチル583gをアセトニトリル7.3kgに溶解させた溶液を仕込み、ジャケットを加温して内温75℃で30分間保持した。その後、ペンタメチルジエチレントリアミン70gを加えて、アクリル系重合体ブロックの重合を開始した。重合開始から一定時間ごとに、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約100gを抜き取り、サンプリング溶液のガスクロマトグラム分析によりBAの転化率を決定した。ペンタメチルジエチレントリアミンを随時加えることで重合速度を制御した。
【0174】
BAの転化率が97%に到達したところで、トルエン82.5kg、塩化第一銅400g、ペンタメチルジエチレントリアミン70g、およびメタアクリル系重合体ブロックを構成する単量体として、MMA35.6kgを加えて、メタアクリル系重合体ブロックの重合を開始した。MMAの転化率が90%に到達したところで、トルエン120kgを加えて反応溶液を希釈すると共に反応器を冷却して重合を停止させた。
【0175】
得られたアクリル系ブロック共重合体溶液に対しトルエンを加えて重合体濃度を25重量%とした。この溶液にp−トルエンスルホン酸一水和物を1.6kg加え、反応器内を窒素置換し、30℃で3時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が無色透明になっていることを確認して、昭和化学工業製ラヂオライト#3000を2.3kg添加した。その後、濾材としてポリエステルフェルトを備えた加圧濾過機を用いて0.1〜0.4MPaGにて加圧濾過し、固体分を分離した。
【0176】
得られた酸性の溶液を再び500L反応器に投入し、固体塩基として協和化学製キョーワード500SHを3.4kg加え、30℃で1時間撹拌した。その後、濾材としてポリエステルフェルトを備えた加圧濾過機を用いて0.1〜0.4MPaGにて加圧濾過して固体分を分離し、目的とする活性エネルギー線硬化性官能基(c)を含有しないアクリル系ブロック共重合体6の溶液を得た。得られた重合体溶液に、イルガノックス1010(チバジャパン(株)製)を重合体の重量に対して0.6重量部加えた後、SCP100((株)栗本鐵工所製、伝熱面積1m2)を用いて溶媒成分を蒸発した。重合体はφ4mmのダイスを通してストランドとし、水槽で冷却後ペレタイザーにより重合体ペレットを得た。
【0177】
得られたアクリル系ブロック共重合体6のGPC分析を行ったところ、数平均分子量(Mn)が109,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.31であった。
【0178】
(実施例1)
製造例1で得られたエポキシ基含有アクリル系ブロック共重合体1をトルエンに溶解し、30%溶液とした。得られた溶液にカチオン系光開始剤であるアデカオプトマーSP−172(ADEKA製)を溶液状態で1重量部配合し、硬化性液状配合物を得た。配合物約1mLをポリエチレン製板上に滴下した後、脱揮することで塗膜状組成物を得た。塗膜状組成物に未照射または3600mJ/cmとなるように紫外線を照射し、得られた硬化物の硬化性を評価した。
【0179】
さらに、硬化性液状配合物を用いて粘着テープを作製し、アクリル系ブロック共重合体1が塗布されているテープ面を照射面として、未照射または3600mJ/cmの紫外線を照射した後、ステンレス板に貼り付けて粘着力試験と保持力試験を実施した。
また、アクリル系ブロック共重合体1に170℃10分間の溶融混練によりアデカオプトマーSP−172を1重量部配合し、170℃でプレス成形した。得られた2mm厚の成形体の成形性を評価した。成形体に未照射または20000mJ/cmとなるように紫外線を照射し、得られた硬化物の硬化性(賦形後の硬化性)を評価した。結果を表1に示す。
【0180】
(実施例2)
実施例1の紫外線照射量を未照射または440mJ/cmにした以外は実施例1と同様の操作で粘着力、保持力、硬化性を評価した。結果を表1に示す。
【0181】
(実施例3)
実施例1のアクリル系ブロック共重合体1をアクリル系ブロック共重合体2に変更し、紫外線照射量を未照射または3000mJ/cmに変更して粘着力、硬化性を測定し、紫外線照射量を3000mJ/cmとして保持力試験を行った以外は実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0182】
(実施例4)
実施例1のアクリル系ブロック共重合体1をアクリル系ブロック共重合体3に変更し、開始剤をDAROCUR1173 1重量部に変更し紫外線照射量を未照射または3000mJ/cmに変更した以外は実施例1と同様の操作で粘着力、保持力、硬化性評価を行った。また、1.5g分のアクリル系ブロック共重合体3を含む硬化性液状配合物を滴下して得られた塗膜状組成物を110℃にてプレス成形して2mm厚の成形体を得た。得られた成形体を用いて成形性評価を行った。成形体に未照射または3000mJ/cmの紫外線を照射し、得られた硬化物の硬化性(賦形後の硬化性)を評価した。結果を表1に示す。
【0183】
(実施例5)
実施例4の紫外線照射量を未照射または440mJ/cmに変更した以外は実施例1と同様の操作で硬化性評価を行った。また、紫外線照射量を未照射または440mJ/cmとした以外は実施例4と同様の操作により成形性と賦形後の硬化性を評価した。結果を表1に示す。
【0184】
(実施例6)
実施例1のアクリル系ブロック共重合体1をアクリル系ブロック共重合体4に変更し、開始剤をIRGACURE651 5重量部に変更し、増感剤としてN−メチルジエタノールアミン 5重量部を用い、紫外線照射量を未照射または12000mJ/cmに変更して硬化性評価を行った。結果を表1に示す。
【0185】
(実施例7)
アクリル系ブロック共重合体4を30%トルエンに溶解し、約1mLをポリエチレン製板上に滴下した後、脱揮することで塗膜状組成物を得た。塗膜状組成物に未照射または10Mrad(加速電圧200kv)の電子線を照射し、硬化性評価をおこなった。さらに、アクリル系ブロック共重合体4を170℃でプレス成形し、得られた0.3mm厚の成形体の成形性を評価した。成形体に未照射または10Mrad(加速電圧200kv)の電子線を照射し、得られた硬化物の硬化性(賦形後の硬化性)を評価した。結果を表1に示す。
【0186】
(実施例8)
実施例1のアクリル系ブロック共重合体1をアクリル系ブロック共重合体5にに変更して粘着力、硬化性、成形性、賦形後の硬化性を測定し、紫外線照射量を3600mJ/cmとして保持力試験を行った以外は実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0187】
(比較例1)
実施例1のアクリル系ブロック共重合体1をアクリル系ブロック共重合体6に変更した以外は実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0188】
(比較例2)
実施例1のアクリル系ブロック共重合体1を分子中にエポキシ基を有するアクリル系共重合体ARUFON−UG−4010(東亞合成製:BA/GMAランダム共重合体、重量平均分子量約3000の液状樹脂、概算エポキシ基数4個/分子)に変更し、紫外線照射量を未照射または6000mJ/cmに変更した以外は実施例1と同様の操作で硬化性と成形性を評価した。結果を表1に示す。
【0189】
【表1】

【0190】
表1(実施例1〜8、比較例1〜2)からわかるように、実施例1〜8の組成物は粘着性、硬化性、成形性、賦形後の硬化性に優れていることが分かる。特に実施例1〜4の組成物は粘着性、硬化性、成形性、賦形後の硬化性と共に硬化後の粘着力、保持力に優れている。一方、比較例1〜2の組成物は硬化性、成形性、保持力のいずれかが著しく低く殆ど無い事が分かる。
【0191】
以上のことから、本発明のアクリル系ブロック共重合体組成物は、粘着力、保持力、硬化性、成形性、賦形後の硬化性に優れていることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)からなり、メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)のうち少なくとも一方の重合体ブロックに活性エネルギー線硬化性官能基(c)を有するアクリル系ブロック共重合体(A)を含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項2】
アクリル系ブロック共重合体(A)がメタアクリル系重合体ブロック(a)に活性エネルギー線硬化性官能基(c)を有することを特徴とする請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項3】
光開始剤(B)をさらに含むことを特徴とする請求項1または2に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項4】
活性エネルギー線硬化性官能基(c)がアリル基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項5】
アクリル系ブロック共重合体(A)がジブロック共重合体またはトリブロック共重合体、またはそれらの混合物であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項6】
アクリル系ブロック共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量が、5,000〜300,000であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項7】
アクリル系ブロック共重合体(A)における、メタアクリル系重合体ブロック(a)の割合が5〜90重量%、アクリル系重合体ブロック(b)の割合が95〜10重量%であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項8】
アクリル系ブロック共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.8以下であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項9】
アクリル系ブロック共重合体(A)が、有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤とし、Fe、Ru、Ni、Cuから選ばれる少なくとも1種類を中心金属とする金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合法により製造されたことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項10】
活性エネルギー線硬化性官能基(c)が、アクリル系ブロック共重合体(A)1分子当たり1個以上含まれることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項11】
光開始剤(B)が活性エネルギー線照射によりラジカルを発生する化合物であることを特徴とする請求項3から10のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項12】
光開始剤(B)が活性エネルギー線照射によりカチオンを発生する化合物であることを特徴とする請求項3から10のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項13】
光開始剤(B)が活性エネルギー線照射により塩基を発生する化合物であることを特徴とする請求項3から10のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項14】
光開始剤(B)の量が、アクリル系ブロック共重合体(A)100重量部に対して、0.01〜10重量部であることを特徴とする請求項3から13のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項15】
請求項1から14記載のいずれかの活性エネルギー線硬化性組成物を含むことを特徴とする成形体。
【請求項16】
請求項1から14記載のいずれかの活性エネルギー線硬化性組成物を含むことを特徴とする粘着剤。
【請求項17】
請求項1から14記載のいずれかの活性エネルギー線硬化性組成物を含むことを特徴とする接着剤。
【請求項18】
請求項1から14記載のいずれかの活性エネルギー線硬化性組成物を含むことを特徴とする塗膜。


【公開番号】特開2011−184678(P2011−184678A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173714(P2010−173714)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】