説明

活性エネルギー線硬化性被覆材組成物及び積層体

【課題】良好な耐擦傷性、耐侯性、基材との密着性が両立できる活性エネルギー線硬化性被覆材組成物を提供する。
【解決手段】(A)少なくとも一つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物100質量部に対し、(B)トリアジン型紫外線吸収剤並びに(C)分子量が200〜1000の紫外線吸収剤であって、(c1)シアノアクリレート型紫外線吸収剤及び(c2)ベンゾフェノン型紫外線吸収剤の少なくとも一方を質量比で(B)/(C)が0.3〜5.0かつ(B)と(C)の合計7〜15質量部を含有する活性エネルギー線硬化性被覆材組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特定の紫外線吸収剤を併用して含む活性エネルギー線硬化性被覆材組成物及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性プラスチックは有用な物理的性質及び化学的性質を兼ね備えているため、様々な分野に応用されている。例えば、ポリカーボネート樹脂は高い透明性、耐熱性及び耐衝撃性を有し、射出成形性も良いことから、自動車のヘッドランプ、眼鏡レンズ、安全シールド等に広く利用されている。
【0003】
しかしながら、熱可塑性プラスチックの多くは表面に傷が付きやすいため、実際に熱可塑性プラスチックを使用する多くの場合には、その表面にはハードコート処理が施されている。例えば特許文献1には、熱可塑性プラスチックとしてポリカーボネート樹脂を使用する場合、ポリカーボネート樹脂の表面にアクリル系活性エネルギー線硬化性被覆材組成物の硬化物を積層した積層体などが挙げられている。
【0004】
一方、近年、地球環境を保護するために、より低エネルギーな活性エネルギー線で硬化させる事が望まれている。低エネルギーであるほど、使用する電力を少なくする事ができ、またその結果、発生する二酸化炭素を抑え、地球温暖化を防ぐ効果がある。
【0005】
しかし特許文献1のアクリル系活性エネルギー線硬化性被覆材組成物は、高エネルギーな活性エネルギー線で硬化させた場合、良好な耐侯性、耐擦傷性、基材との密着性を確保することができるが、低エネルギーな活性エネルギー線で硬化させた場合、良好な耐侯性、耐擦傷性、基材との密着性を確保することが困難である。
【0006】
より低エネルギーな活性エネルギー線を用いてアクリル系活性エネルギー線硬化性被覆材組成物を硬化させる為には、組成物中の紫外線吸収剤を少なくする事が有効であるが、反面、ポリカーボネート等の耐候性が低い樹脂を基材とした場合には、その黄変が顕著になりやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007―70578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、少ない活性エネルギー線でも十分に硬化し、また、良好な耐擦傷性、耐侯性、基材との密着性が両立できる活性エネルギー線硬化性被覆材組成物及びその硬化被膜が基材の上に積層された積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様において本発明は、
(A)少なくとも一つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物100質量部に対し、(B)トリアジン型紫外線吸収剤並びに(C)分子量が200〜1000の紫外線吸収剤であって、(c1)シアノアクリレート型紫外線吸収剤及び(c2)ベンゾフェノン型紫外線吸収剤の少なくとも一方を質量比で(B)/(C)が0.3〜5.0かつ(B)と(C)の合計7〜15質量部を含有する活性エネルギー線硬化性被覆材組成物に関する。
【0010】
第2の態様において本発明は、ポリカーボネート樹脂製基材の上に第1の態様における活性エネルギー線硬化性被覆材組成物の硬化被膜が積層された積層体に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の被覆材組成物の硬化被膜は、良好な耐擦傷性、耐侯性、基材との密着性が両立できることから、ポリカーボネート樹脂の表面に本被覆材組成物の硬化被膜が被覆された積層体は自動車のヘッドランプレンズ、車両センサー、屋外の看板、温室や屋外建物の窓ガラス、テラスやガレージの屋根、バルコニー、計器類カバー等の多岐の用途に使用することができる。その硬化時に使用される活性エネルギー線も少なくできるため、本被覆材組成物は、従来のアクリル系活性エネルギー線硬化性組成物よりも地球環境の保護の点において有益である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<被覆材組成物>
本発明の被覆材組成物は(A)少なくとも一つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(以下「(A)成分」という)に対し、(B)トリアジン型紫外線吸収剤(以下「(B)成分」という)並びに(C)分子量が200〜1000の紫外線吸収剤(以下「(C)成分」という)であって、(c1)シアノアクリレート型紫外線吸収剤(以下「(c1)成分」)という)及び(c2)ベンゾフェノン型紫外線吸収剤(以下「(c2)成分」という)の少なくとも一方を含有する。
【0013】
(A)成分としては、少なくとも一つの(メタ)アクリロイル基を有する単量体又はオリゴマーが挙げられる。(A)成分の具体例としては、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートやトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどに代表される多官能(メタ)アクリレート、テトラフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどに代表される単官能(メタ)アクリレートが挙げられる。さらに、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどのオリゴマーも挙げられる。またさらに、(メタ)アクリロイル基を有する金属微粒子も挙げられる。これらの中から1種または2種以上を併用する事ができる。(A)成分の構成としては特に制限は無いが、自動車ヘッドランプレンズに使用される観点から、例えば特開平05―17706号公報、特開平05―230397号公報、特開平05―179157号公報、特開平06―128503号公報、特開2007―314710号公報、特開2007―314769号公報に示す構成が相応しい。
【0014】
(B)成分としては、分子骨格内にトリアジン骨格を有する紫外線吸収剤が挙げられる。その中で市販品として入手可能なものは、2−[4−(オクチル−2−メチルエタノエート)オキシ−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−[ビス(2,4−ジメチルフェニル)]−1,3,5−トリアジン{商品名:「チヌビン479」(チバ・ジャパン社製)}、トリス[2,4,6−[2−{4−(オクチル−2−メチルエタノエート)オキシ−2−ヒドロキシフェニル}]−1,3,5−トリアジン{商品名:「チヌビン777」(チバ・ジャパン社製)}、2−[4−(2−ヒドロキシ−3−ドデシロキシ−プロピル)オキシ−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−[ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン{商品名:「チヌビン400」(チバ・ジャパン社製)}、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル) −4,6−ビス−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンと(2−エチルヘキシル)−グリシド酸エステルの反応生成物{商品名:「チヌビン405」(チバ・ジャパン社製)}、2,4−ビス「2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル」−6−(2,4−ジブトキシフェニル) −1,3,5−トリアジン{商品名:「チヌビン460」(チバ・ジャパン社製)}などが挙げられる。この中でも特に一般式(1)で示される2−[4−(2−ヒドロキシ−3−ドデシロキシ−プロピル)オキシ−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−[ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンが(A)成分との相溶性、耐侯性の観点から好ましい。
【0015】
【化1】

【0016】
(C)成分としては、分子骨格内にシアノアクリレート(c1)またはベンゾフェノン骨格(c2)を有する化合物の少なくともその一方であり、かつ分子量200〜1000の紫外線吸収剤が挙げられる。(C)成分は単独では十分な耐侯性や密着性などを発現できないが、(B)成分と併用する事によって、耐侯性を維持しながら、本被覆材組成物を少ない活性エネルギー線で硬化させる事ができるようになる。
【0017】
(C)成分の分子量は200以上、1000以下である。さらに好ましくは、200以上700以下である。分子量が200以上の場合、耐侯性が向上する傾向にある。また分子量が1000以下の場合、(A)成分との相溶性が向上する。
【0018】
(c1)成分として市販品として入手可能なものは、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート{商品名:「ユビナール3035」(BASFジャパン社製)}、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート{商品名:「ユビナール3039」(BASFジャパン社製)}などが挙げられる。(c2)成分として市販品として入手可能なものは、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン(商品名:「ユビナール3000」(BASFジャパン社製))などが挙げられる。この中でも特に一般式(2)で示されるユビナール3039および一般式(3)で示されるユビナール3000が相溶性、耐侯性、密着性の観点から好ましい。
【0019】
【化2】

【0020】
【化3】

【0021】
(B)成分と(C)成分は(A)成分100質量部に対して、その合計が7〜15質量部になるように配合する。(B)+(C)が7質量部以上、より好ましくは9質量部以上で硬化被膜の耐侯性試験後の黄変度が良好となる傾向にある。また(B)+(C)が15質量部以下、より好ましくは11質量部以下で、硬化被膜の温水試験後の密着性が向上する傾向にある。その際、{(B)の配合量/(C)の配合量}は質量比で0.3以上5.0以下である。より好ましくは0.6以上3.0以下である。0.3以上で耐侯性試験後の黄変度が向上する傾向にある。また5.0以下で硬化性が向上し、温水試験後の密着性が向上する傾向にある。
【0022】
本発明においては、本被覆材組成物中に、光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤として特に制限はなく、活性エネルギー線照射により(A)成分を硬化させうるものであれば、いずれのものも使用できる。具体的には、ベンゾイン、ベンゾインモノメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アセトイン、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィドなどの硫黄化合物、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドなどのアシルフォスフィンオキサイド等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上の混合系で使用される。これらの中でも、ベンゾフェノン、ベンゾインイソプロピルエーテル、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジルジメチルケタールがより好ましい。
【0023】
光重合開始剤の使用割合は、(A)成分100質量部に対し、0.1〜10質量部の範囲が好ましい。下限値は1質量部以上がより好ましく、上限値は5質量部以下がよりこのましい。0.1質量部以上の場合、硬化性が良くなる。また、10質量部以下の場合、硬化被膜の透明性および耐候性が良くなる。
【0024】
本発明においては、本被覆材組成物中に、ヒンダードアミン系光安定剤含むことが好ましい。ヒンダードアミン系光安定剤としては、公知のヒンダードアミン系光安定剤が使用でき、具体的には、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−エトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−プロポキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−ブトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−ペンチロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−ヘキシロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−ヘプチロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−ノニロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−デカニロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−ドデシロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート等が挙げられるが、これらのうちビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)が特に好ましい。ヒンダードアミン系光安定剤の使用割合は、(A)成分100質量部中に対し、0.1〜5質量部の範囲が好ましい。下限値は0.5質量部以上がより好ましく、上限値は2質量部以下がより好ましい。0.1質量部以上の場合、硬化被膜の耐候性が良くなる。また5質量部以下の場合、硬化性および硬化被膜の強靭性、耐熱性、耐摩耗性が良くなる。
【0025】
本発明においては、本被覆材組成物中に、必要に応じて、コロイド状シリカ、コロイド状金属、光増感剤、充填剤、染料、顔料、顔料分散剤、流動調整剤、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、ゲル微粒子、微粒子粉等の各種添加剤を配合することができる。
【0026】
また、本発明においては、本被覆材組成物の固形分濃度調整、分散安定性向上、塗布性向上、基材への密着性向上等を目的として、本被覆材組成物中に有機溶剤を配合することができる。
【0027】
上記の有機溶剤としては、例えば、イソブタノール等のアルコ−ル系溶剤並びに酢酸n−ブチル及び酢酸ジエチレングリコール等のエステル系溶剤が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用して使用することができる。
【0028】
有機溶剤の配合量としては、本被覆材組成物の固形分100質量部に対して10〜1,000質量部が好ましい。
【0029】
<塗装および硬化方法>
本発明の被覆組成物を基材に塗布するには、ハケ塗り、スプレーコート、ディップコート、スピンコート、カーテンコートなどの方法が用いられるが、被覆組成物の塗布作業性、被覆の平滑性、均一性、硬化被膜の基材に対する密着性向上の点から、適当な有機溶剤を添加して塗布するのが好ましい。また、粘度を調整するために被覆材組成物を加温してから塗装しても良い。
【0030】
本被覆材組成物の硬化被膜の膜厚としては1〜20μmが好ましく、2〜10μmがより好ましい。本被覆材組成物の硬化被膜の膜厚が1μm以上で本被覆材組成物の硬化被膜の耐擦傷性が良好となる傾向にある。また、本被覆材組成物の硬化被膜の膜厚が20μm以下で本被覆材組成物の硬化被膜にクラックが発生し難くなる傾向にある。
【0031】
本被覆材組成物を硬化するための活性エネルギー線としては、例えば、真空紫外線、紫外線、可視光線、近赤外線、赤外線、遠赤外線、マイクロ波、電子線、β線及びγ線が挙げられる。これらの中で、紫外線又は可視光線を光感応性ラジカル重合開始剤と組み合わせて使用することが、重合速度が速い点及び基材の劣化が比較的少ない点で好ましい。
【0032】
活性エネルギー線の光源の具体例としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、フュージョンランプ、白熱電球、キセノンランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、蛍光灯、タングステンランプ、ガリウムランプ、エキシマレーザー及び太陽が挙げられる。
【0033】
活性エネルギー線の照射エネルギーとしては、波長340〜380nmの積算エネルギーで0.1〜10J/cmが好ましい。使用する電力、すなわちエネルギーを考えると、1.0J/cm未満が特に好ましい。
【0034】
被照射物に対して活性エネルギー線を照射する際は、より均一に照射するために、被照射物が回転しながら照射させても構わない。
【0035】
本発明において、塗装工程と紫外線硬化工程の間に加熱処理工程を施しても良い。一般的に加熱処理工程は、近赤外線ランプの照射、温風の循環等によって達成される。本発明の被覆材組成物は、塗装後、加熱処理工程炉内中の基材表面温度(以下加熱温度)が40℃〜90℃、加熱時間が60〜180秒で加熱処理した場合、屋外での長期に渡る密着性が良好となる。さらに好ましくは、加熱温度が50〜70℃、加熱時間が90〜120秒である。加熱温度が40℃以上では有機溶剤等が塗膜内部から十分に揮発し、耐水性、耐候性が良好となる。また90℃以下では外観、耐候性が良好となる。また加熱時間が90秒以上であると、有機溶剤等が塗膜内部から十分に揮発し、耐水性、耐候性が良好となり、180秒以下では外観、耐候性が良好となりやすい。
【0036】
活性エネルギー線の照射雰囲気としては、空気中でも良いし、窒素、アルゴン等の不活性ガス中でも良い。
【0037】
<積層体>
本発明の被覆材組成物は、基材たる各種合成樹脂成形品の表面の改質に使用できるが、この合成樹脂成形品としては、従来から耐摩耗性や耐侯性等に関する改善要望のある各種の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が挙げられる。具体的には、ポリメチルメタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂、ポリアリルジグリコールカーボネート樹脂などが挙げられる。特に、ポリメチルメタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂は、透明性に優れかつ耐摩耗性改良要求も強いため、本発明の被覆組成物を適用するのが特に有効である。また合成樹脂成形品とは、これらの樹脂からなるシート状成形品、フィルム状成形品、各種射出成形品などである。
【0038】
本発明の被覆材組成物の硬化被膜は、耐摩耗性、耐候性に優れる。そのため、本発明の被覆組成物をポリカーボネート樹脂成形品の表面に塗布し、活性エネルギー線を照射することにより、硬化被膜を形成した樹脂成形品は、車両用ヘッドランプレンズに好適である。
【実施例】
【0039】
以下に実施例及び比較例を掲げ本発明について更に詳しく説明する。また実施例中の測定評価は次のような方法で行った。
(1)被覆材組成物の状態
表に示す被覆材組成物の外観を目視評価した。液が透明であるものを○とし、濁り、沈殿物が観察されるものを×とした。
(2)温水試験
硬化被膜を80℃の温水に5時間浸漬した後、以下の評価を実施した。
(a)硬化被膜の外観
温水試験後の外観を目視評価した。表面が平滑で、透明であるものを○とし、白化やクモリが観察されるものを×とした。
(b)密着性
硬化被膜に1mm間隔で基材まで達するクロスカットを入れ、1mm2の碁板目を100個作り、その上にセロテ−プ(登録商標)を貼り付け急激にはがし、剥離した碁盤目を数えた。剥離が全く無いものを◎とし、剥離の数が1〜10個のものを○とし、剥離の数が11〜50個のものを△、剥離の数が51〜100個のものを×とした。
【0040】
(3)耐侯性
サンシャインカーボンウエザオメーター(スガ試験機製、WEL−SUN−HC−B型)耐候試験機を用いて、ブラックパネル温度63±3℃、降雨12分間、照射48分間のサイクルで試験した。
(a)硬化被膜の外観
耐侯性試験後の外観を目視評価した。表面が平滑で、透明であるものを○とし、白化やクモリが観察されるものを×とした。
(b)硬化被膜の透明度
ヘイズメーター(HM−65W、(株)村上色彩技術研究所製)を用いて試験前後のヘイズ値を測定した。
【0041】
◎ 増加ヘイズ値=0以上1.0未満
○ 増加ヘイズ値=1.0以上2.0未満
× 増加ヘイズ値=2.0以上
(c)硬化被膜の黄変度
瞬間マルチ測光システム(MCPD−3000、大塚電子(株)製)を用いて三刺激値(X、Y、Z)を測定し、下記式を用いてイエローインデックス(YI)値を算出した。
【0042】
イエローインデックス(YI)値=100×(1.28×X−1.06×Z)/Y
◎ 増加イエローインデックス(YI)値=0以上0.50未満
○ 増加イエローインデックス(YI)値=0.50以上2.00未満
× 増加イエローインデックス(YI)値=2.00以上
(d)硬化被膜の密着性
先の温水試験時の(b)と同様に評価した。
【0043】
<A−1成分の調整方法(調整例1)>
500mlのPPカップに、カヤラッドDCPA−20(日本化薬(株)製)100g、アロニックスM−315(東亞合成(株)製)120g、ダイヤビームUK−6091(三菱レイヨン(株)製)80gを入れ、均一になるまで攪拌し、A−1成分を得た。
カヤラッドDCPA−20:カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
アロニックスM−315:トリスアクリロイルオキシエチルイソシアヌレート
ダイヤビームUK−6091:ウレタンアクリレート
【0044】
[実施例1]
表1に示す配合比で被覆材組成物を調製し、厚さ3mmのポリカーボネート樹脂板(GE社製、商品名:「レキサンLS−2」)に、硬化後の被膜が8μmになるようにスプレー塗装した。オーブン中で80℃、3分間加熱処理することにより有機溶剤分を揮発させた後、空気中で高圧水銀ランプを用い、波長340nm〜380nmの積算光量が950mJ/cm2のエネルギー((株)オーク製作所社製、UV−351SNにて測定)を照射し、硬化被膜を得た。得られた被膜の評価結果を表1に示した。
【0045】
[実施例2〜7、比較例1〜10]
表1〜2に示す配合比で被覆組成物を調製し、実施例1と同様の条件で硬化被膜を得た。得られた被膜の評価結果を表1、2に示した。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
なお、表1〜2中の化合物の記号は次の通りである。
A−1成分:調整例1で得たアクリル組成物
B−1:2−[4−(2−ヒドロキシ−3−ドデシロキシ−プロピル)オキシ−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−[ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン(商品名「チヌビン400」、チバ・ジャパン社製)、分子量653
B−2:2−[4−(オクチル−2−メチルエタノエート)オキシ−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−[ビス(2,4−ジメチルフェニル)]−1,3,5−トリアジン(商品名:「チヌビン479」、チバ・ジャパン社製)、分子量677
c1−1:2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート(商品名:「ユビナール3039」、BASFジャパン社製)、分子量319
c2−1:2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン(商品名:「ユビナール3000」、BASFジャパン社製)、分子量214
UVA−1:2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール(商品名:「チヌビンPS」、チバ・ジャパン社製)
UVA−2:1,3−ビス−[(2’―シアノ−3,3’−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス−{[(2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル}プロパン(商品名:「ユビナール3030」、BASFジャパン社製}、分子量1061
BTPS:ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート
BNP:ベンゾフェノン
MPG:メチルフェニルグリオキシレート
BDK:ベンジルジメチルケタール
TPO:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド
L−7001:シリコーン系レベリング剤(商品名「L−7001」、東レダウコーニング社製)
PGM:プロピレングリコールモノメチルエーテル
ECA:エチルカルビトールアセテート
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の被覆組成物は従来品に比べ、少ないエネルギーで硬化させる事ができるため、地球環境の保護の点において有益である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)少なくとも一つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物100質量部に対し、(B)トリアジン型紫外線吸収剤並びに(C)分子量が200〜1000の紫外線吸収剤であって、(c1)シアノアクリレート型紫外線吸収剤及び(c2)ベンゾフェノン型紫外線吸収剤の少なくとも一方を質量比で(B)/(C)が0.3〜5.0かつ(B)と(C)の合計7〜15質量部を含有する活性エネルギー線硬化性被覆材組成物。
【請求項2】
(B)成分が、一般式(1)で示される請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性被覆材組成物。
【化1】

【請求項3】
(c1)成分が一般式(2)、(c2)成分が一般式(3)で示される請求項1または2に記載の活性エネルギー線硬化性被覆材組成物。
【化2】

【化3】

【請求項4】
ポリカーボネート樹脂製基材の上に請求項1〜3のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性被覆材組成物の硬化被膜が積層された積層体。
【請求項5】
車両用ヘッドランプレンズである請求項4に記載の積層体。

【公開番号】特開2011−219623(P2011−219623A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90298(P2010−90298)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】