説明

活性エネルギー線硬化性重合体組成物、該組成物による硬化膜、及び該硬化膜を有する積層体

【課題】塗工性が良好で、優れた耐摩耗性、硬度及び機械的強度を有する硬化膜が得られる活性エネルギー線硬化性重合体組成物を提供する。
【解決手段】ポリイソシアネート、ポリカーボネートジオール、及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含む原料の反応物であるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを含有する活性エネルギー線硬化性重合体組成物において、前記ポリカーボネートジオールとして、数平均分子量が500以上10,000以下で、ネオペンチルグリコール等の特定の構成単位を含む特定構造のポリカーボネートジオールを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを含む活性エネルギー線硬化性重合体組成物、該組成物への活性エネルギー線の照射による硬化膜、及びそれを用いた積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
基材の表面の保護や外観の維持を目的として、塗料によるコーティングが一般に行われている。このような塗料には、作業環境の改善や火気に対する危険防止等の観点から、エネルギー線の照射によって硬化する塗料が開発され、また実用化されている。このような活性エネルギー線硬化型塗料としては、例えば、有機ポリイソシアネートと、ポリカーボネートポリオールと、分子内に一個以上の水酸基を含有する(メタ)アクリレートとを反応させて得られるウレタンアクリレートを含有するエネルギー線硬化型樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような塗料には、その用途に応じて、種々の特性が要求されるが、組成物の塗工性、得られる硬化膜の耐摩耗性、硬度、機械的強度は、いずれの用途においても極めて重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−227915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、塗工性が良好で、且つ優れた耐摩耗性、硬度及び機械的強度を有する硬化膜が得られる活性エネルギー線硬化性重合体組成物を提供することを課題とする。
本発明はまた、この活性エネルギー線硬化性重合体組成物による硬化膜と、この硬化膜を有する積層体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、特定構造のポリカーボネートジオールを用いて得られたウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを含む活性エネルギー線硬化性重合体組成物は、溶液粘度が低く塗工性、作業性が優れると共に、これを硬化させて硬化膜とした場合に、従来提供されているものよりも耐摩耗性、硬度及び機械的強度に特に優れる硬化膜が得られることを見出し本発明に至った。
【0007】
すなわち本発明は、(1)ポリイソシアネート、(2)ポリカーボネートジオール、及び(3)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含む原料の反応生成物であるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを含有する活性エネルギー線硬化性重合体組成物において、該(2)ポリカーボネートジオールが、下記条件(i)〜(iii)を満たすポリカーボネートジオールを少なくとも含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化性重合体組成物を提供する。
【0008】
(i) 下記式(A)で表される繰り返し単位(以下、単に(A)という)と、(A)以外の構造を有する下記式(B)で表される繰り返し単位(以下、単に(B)という)を含み、ポリマー鎖両末端に水酸基を有し、ポリマー中に含まれる(A)と(B)の割合がモル比で(A)/(B)=99/1〜1/99である。
(ii) 数平均分子量が500以上10,000以下である。
(iii) 下記式(ア)を満たす。
{(ポリマー末端の(A)のモル数)/(ポリマー末端の(A)のモル数と(B)のモル数の和)}/{(ポリマー中の(A)のモル数)/(ポリマー中の(A)のモル数と(B)のモル数の和)}>1.2 …(ア)
【0009】
【化1】

【0010】
(上記式において、nは0又は1である。R1及びR2はそれぞれ独立に、炭素数1〜15の、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、及びアルコキシ基よりなる群から選ばれる基であり、前記炭素数の範囲で、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子もしくはこれらを含む置換基を有していてよい。X及びYは、それぞれ独立にヘテロ原子を含有してもよい炭素数1〜20の2価の基を表す。)
【0011】
また本発明は、計算網目架橋点間分子量が500〜10,000である前記の活性エネルギー線硬化性重合体組成物を提供する。
【0012】
さらに本発明は、前記原料が、前記条件(i)〜(iii)を満たすポリカーボネートジオール以外の数平均分子量500以上の高分子量ポリオールをさらに含む前記の活性エネルギー線硬化性重合体組成物を提供する。
【0013】
さらに本発明は、前記原料が、前記ポリカーボネートジオールを除く数平均分子量500未満の低分子量ポリオールをさらに含む前記の活性エネルギー線硬化性重合体組成物を提供する。
【0014】
さらに本発明は、前記ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーが、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと前記(3)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとをウレタン結合で反応させてなる構造を有し、該ウレタンプレポリマーが、前記(1)ポリイソシアネートと前記(2)ポリカーボネートジオールとをウレタン結合で重合させてなる前記の活性エネルギー線硬化性重合体組成物を提供する。
【0015】
また本発明は、前記の活性エネルギー線硬化性重合体組成物に、活性エネルギー線を照射してなる硬化膜を提供する。
【0016】
さらに本発明は、基材上に、前記の硬化膜からなる層を有する積層体を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物は、ポリカーボネートジオールとして前述の特定の条件を満たすポリカーボネートジオールを含む原料の反応生成物であるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを含有することから、溶液粘度が低く作業性、塗工性が優れると共に、これを硬化させて硬化膜とした場合に、優れた耐摩耗性、硬度及び機械的強度を有する硬化膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の代表例であり、これらの内容に本発明は限定されるものではない。
【0019】
なお、本明細書において(メタ)アクリレートとはアクリレートとメタクリレートとの総称であり、アクリレート及びメタクリレートの一方又は両方を意味する。(メタ)アクリロイル、(メタ)アクリルについても同様である。
また、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0020】
また、本発明に係る(2)ポリカーボネートジオール等のウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの原料化合物の分子量又は数平均分子量の測定方法ないし算出方法は以下の通りである。
【0021】
ゲルパーミエーションクロマトグラム(以下、GPCと略す)で分子量分布を有するポリオール以外の化合物については、分子量は化学式から算出することができ、数平均分子量はGPCにより以下の通り求めることができる。
【0022】
<GPCによる数平均分子量の算出>
GPC(東ソー社製「HLC−8120GPC」)を用いて、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)、標準サンプルとしてポリスチレン、カラムとしてTSK gel superH1000+H2000+H3000を使用して、送液速度0.5mL/分、カラムオーブン温度40℃にて、数平均分子量を測定する。
【0023】
また、GPCで分子量分布を有するポリオールについては、その数平均分子量はOH価により以下の通り求めることができる。
【0024】
<ポリオールの数平均分子量のOH価による算出>
三角フラスコにポリオール2gと0.5モル/Lの無水フタル酸ピリジン溶液を入れ、100℃で2時間反応させた後にアセトン150mLで希釈する。その後、0.5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液で滴定する。また、三角フラスコにポリオールを入れなかった以外は、同様に滴定を行い、ブランクを求める。そして、以下の式によりOH価及び数平均分子量を算出する。
OH価={(B−A)×0.5×56.11×1000}/2×1000
A:ポリオール含有溶液の滴定に要した水酸化ナトリウム水溶液の量
B:ポリオールを含有しないブランク溶液の滴定に要した水酸化ナトリウム水溶液の量
ポリオールの数平均分子量={(56.11×1000)/OH価}×官能基の数
なお、上記の式において、「官能基の数」とは、一分子のポリオールに含まれるOH基の数である。
【0025】
また、GPCで分子量分布を有するイソシアネートについては、その数平均分子量はNCO%により以下の通り求めることができる。
【0026】
<ポリイソシアネートの数平均分子量のNCO%による算出>
三角フラスコにポリイソシアネート1gと0.5モル/リットルのジブチルアミントルエン溶液を20mL入れ、アセトン100mLで希釈した後に25℃で30分反応させる。その後、0.5モル/リットルの塩酸水溶液で滴定する。また、三角フラスコにポリイソシアネートを入れなかった以外は、同様に滴定を行い、ブランクを求める。そして、以下の式によりNCO%及び数平均分子量を算出する。
NCO%={(B1−A1)×0.5×42.02}/(1×1000)×100
A1:ポリイソシアネート含有溶液の滴定に要した塩酸水溶液の量(mL)
B1:ポリイソシアネートを含有しないブランク溶液の滴定に要した塩酸水溶液の量
(mL)
ポリイソシアネートの数平均分子量=(42.02/NCO%)×一分子のポリイソシアネートに含まれるNCO基の数
【0027】
本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物は、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを含有する。
本発明で用いられるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、分子内に1個以上のラジカル重合性(メタ)アクリロイル基と少なくとも2個のウレタン結合を有する化合物である。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、活性エネルギー線照射による硬化物が、バランスの取れた引張強度及び優れた引張伸度を有し、また組成物としての表面硬化性に優れ、タックが残りにくい点で、他の代表的な活性エネルギー線硬化性オリゴマーであるエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー、アクリル(メタ)アクリレート系オリゴマー等に比べて優れている。
【0028】
本発明におけるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(以下「本発明のウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー」と称す。)は、(1)ポリイソシアネート、(2)ポリカーボネートジオール、及び(3)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含む原料の反応生成物である。本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物に含まれるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、1種でも2種以上でもよい。
【0029】
[ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの原料化合物]
以下に、本発明のウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの原料化合物について説明する。
【0030】
(1)ポリイソシアネート
本発明におけるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを製造するための原料化合物としての(1)ポリイソシアネートは、1分子中に2個以上のイソシアネート基及びイソシアネート基を含む置換基の一方又は両方(「イソシアネート基類」とも言う)を有する化合物である。(1)ポリイソシアネートは、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。また1種のポリイソシアネートにおいて、イソシアネート基類は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0031】
イソシアネート基を含む置換基としては、例えば1個以上のイソシアネート基を含む、炭素数1〜5の、アルキル基、アルケニル基、又はアルコキシル基が挙げられる。イソシアネート基を含む置換基としての前記アルキル基等の炭素数は、1〜3であることがより好ましい。
【0032】
(1)ポリイソシアネートの数平均分子量は、活性エネルギー線硬化性重合体組成物を硬化して得られる硬化物としての強度と弾性率とのバランスの観点から、100以上であることが好ましく、150以上であることがより好ましく、また、1,000以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましい。
【0033】
ポリイソシアネートの数平均分子量は、単独の単量体からなるポリイソシアネートの場合には化学式からの計算値、2種以上の単量体からなるポリイソシアネートの場合にはNCO%からの計算値によって求めることができる。
【0034】
前記ポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式構造を有するポリイソシアネート、及び芳香族ポリイソシアネートが挙げられる。
【0035】
脂肪族ポリイソシアネートは、脂肪族構造とそれに結合する二以上のイソシアネート基類とを有する化合物である。脂肪族ポリイソシアネートは、活性エネルギー線硬化性重合体組成物を硬化して得られる硬化物の耐候性を高め、かつ柔軟性を付与する観点から好ましい。脂肪族ポリイソシアネートにおける脂肪族構造は、特に限定されないが、炭素数1〜6の直鎖又は分岐のアルキレン基であることが好ましい。このような脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、及び、トリス(イソシアネートヘキシル)イソシアヌレート等の脂肪族トリイソシアネートが挙げられる
【0036】
ポリイソシアネートは、本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物を硬化して得られる硬化物の機械的強度、耐汚染性の点から、脂環式構造を有するポリイソシアネートを含むことが好ましい。
【0037】
脂環式構造を有するポリイソシアネートは、脂環式構造とそれに結合する二以上のイソシアネート基類とを有する化合物である。脂環式構造を有するポリイソシアネートにおける脂環式構造は、特に限定されないが、炭素数3〜6のシクロアルキレン基であることが好ましい。脂環式構造を有するポリイソシアネートとしては、例えば、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、シクロヘキサンジイソシアネート、ビス(イソシアネートシクロヘキシル)メタン、イソホロンジイソシアネート等の脂環式構造を有するジイソシアネート、及び、トリス(イソシアネートイソホロン)イソシアヌレート等の脂環式構造を有するトリイソシアネートが挙げられる。
【0038】
脂環式構造を有するポリイソシアネートは、活性エネルギー線硬化性重合体組成物を硬化して得られる硬化物の耐候性を高める観点からも好ましく、このような脂環式構造を有するポリイソシアネートとしては、例えば、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、シクロヘキサンジイソシアネート、ビス(イソシアネートシクロヘキシル)メタン、及び、イソホロンジイソシアネートが挙げられる
【0039】
芳香族ポリイソシアネートは、芳香族構造とそれに結合する二以上のイソシアネート基類とを有する化合物である。芳香族ポリイソシアネートにおける芳香族構造は、特に限定されないが、炭素数6〜13の二価の芳香族基であることが好ましい。このような芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
【0040】
芳香族ポリイソシアネートは、活性エネルギー線硬化性重合体組成物を硬化して得られる硬化物の機械的強度を高める観点から好ましく、このような芳香族ポリイソシアネートとしては、例えばトリレンジイソシアネート及びジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。
【0041】
(2)ポリカーボネートジオール
本発明のウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを構成する原料化合物としての(2)ポリカーボネートジオールは、少なくとも、下記条件(i)〜(iii)を満たすポリカーボネートジオール(以下、このポリカーボネートジオールを「特定ポリカーボネートジオール」と称す場合がある。)を含む。
【0042】
(i) 下記式(A)で表される繰り返し単位(以下、単に(A)という)と、(A)以外の構造を有する下記式(B)で表される繰り返し単位(以下、単に(B)という)を含み、ポリマー鎖両末端に水酸基を有し、ポリマー中に含まれる(A)と(B)の割合がモル比で(A)/(B)=99/1〜1/99である。
(ii) 数平均分子量が500以上10,000以下である。
(iii) 下記式(ア)を満たす。
{(ポリマー末端の(A)のモル数)/(ポリマー末端の(A)のモル数と(B)のモル数の和)}/{(ポリマー中の(A)のモル数)/(ポリマー中の(A)のモル数と(B)のモル数の和)}>1.2 …(ア)
【0043】
【化2】

【0044】
(上記式において、nは0又は1である。R1及びR2はそれぞれ独立に、炭素数1〜15の、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、及びアルコキシ基よりなる群から選ばれる基であり、前記炭素数の範囲で、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子もしくはこれらを含む置換基を有していてよい。X及びYは、それぞれ独立にヘテロ原子を含有してもよい炭素数1〜20の2価の基を表す。)
【0045】
特定ポリカーボネートジオールは1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0046】
上記式(A)において、R1及びR2は互いに独立に異なる基であっても、同じ基であってもよい。これら置換基の炭素数は、本発明の効果がもたらされるために1以上である必要がある。ただし、炭素数が多すぎると重合反応性が低下するなどの問題が生ずるので15以下、好ましくは10以下である。
【0047】
上記アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、i−プロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、ペンチル基等がより好ましい。
【0048】
上記アリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、ベンジル基、トリル基、o−キシリル基等が挙げられる。
【0049】
上記アルケニル基としては、例えばビニル基(エチレニル)、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基等が挙げられ、特にビニル基、プロペニル基等がより好ましい。
【0050】
上記アルキニル基としては、例えばエチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基等が挙げられ、エチニル基、プロピニル基等がより好ましい。
上記アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基が挙げられ、中でもメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基等がより好ましい。
【0051】
これらのアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基にさらに置換していても良い置環基としては、例えばニトリル基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子等が挙げられ、ニトロ基、ハロゲン原子等がより好ましい。ハロゲン原子の具体例としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素の各原子が挙げられる。
【0052】
式(A)において、nは0であることが好ましく、また、R,Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基であることがポリカーボネートジオールの性状の面で好ましい。
【0053】
上記式(A)、(B)において、X及びYは、特に本発明の効果を得る上では制限はなく、鎖状基、環状基いずれの構造であってもよい。これらの基を構成する元素としての炭素数は1以上20以下、好ましくは15以下、より好ましくは10以下であり、酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子が入っていてもよい。
【0054】
Yは、第4級炭素原子を含まない炭素数1〜20、好ましくは1〜15の2価の基、又は、Yにおいて少なくとも酸素に結合する炭素原子及び該炭素原子に結合する炭素原子が第4級炭素原子ではない炭素数5〜20、好ましくは5〜15の2価の基であることが好ましい。
【0055】
Xの基の具体例としては、−CH2−、-CH2CH2−,−CH2CH2CH2−、−CH2CH(CH3)CH2−、−CH2CH(CH3)CH2−、下記式(C)で表される基等が挙げられ、−CH2−、−CH2CH2−、及び下記式(C)で表される基等がより好ましい。
【0056】
【化3】

【0057】
Yの基の具体例としては、式(B)の構造を与えるジオール化合物として後述する例示化合物から生成する基が好ましく、より好ましくは(B)の構造を与えるジオール化合物のうち好ましい化合物として例示した化合物から生成する基が挙げられる。
【0058】
特定ポリカーボネートジオールは両末端基が水酸基であり、ウレタン化反応の際はこの水酸基がイソシアネートと反応できる構造となっている。
【0059】
特定ポリカーボネートジオールを構成する、(A)と(B)の割合は、モル比で(A)/(B)=99/1〜1/99である。本発明の効果をもたらすのは(A)構造であり、(A)構造の割合が少なすぎるとその効果が十分得られない場合があり、一方、多すぎると逆に重合時のハンドリング性が悪くなる場合がある。特定ポリカーボネートジオールに含まれる(A)と(B)の割合はモル比で(A)/(B)=80/20〜20/80であることが好ましく、さらには、(A)/(B)=70/30〜30/70である事がより好ましい。
【0060】
特定ポリカーボネートジオールは、さらに下記式(ア)を満たすものである(以下、下記式で算出される値を「末端(A)割合」と称す。)。
【0061】
{(ポリマー末端の(A)のモル数)/(ポリマー末端の(A)のモル数と(B)のモル数の和)}/{(ポリマー中の(A)のモル数)/(ポリマー中の(A)のモル数と(B)のモル数の和)}>1.2 …(ア)
【0062】
すなわち、特定ポリカーボネートジオールは、「ポリマー鎖の末端を構成するモノマーの割合は(B)より(A)の方が多い」という特徴を有する。このような構造のポリカーボネートジオールは、液状となりやすくしかも粘性が低く、ハンドリングし易い、という特徴がある。また、この特定ポリカーボネートジオールを用いて製造されるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーから得られる硬化膜は、従来のポリカーボネートジオール由来のポリウレタンとしての特性である耐熱性、耐候性、耐水性を維持したまま、柔軟性や弾性回復性、低温での柔軟性や屈曲性に優れるという特徴を発現する。このような特徴的な物性が得られる理由の詳細は明確にはなっていないが、得られるポリウレタンのハードセグメントに近い部位に、特定ポリカーボネートジオールの(A)由来のジアルキル置換基等のR,R置換基が存在することで、ハードセグメントのスタッキングを効果的に抑制する結果、ポリウレタンの柔軟性を発現し、所望の物性が達成されているものと推定される。
【0063】
上記効果を有効に得るために、末端(A)割合は1.2より大きく、好ましくは1.3以上、より好ましくは1.4以上である。
末端(A)割合の上限は、特に制限はないが、実際上製造可能な範囲としては200、好ましくは100、さらに好ましくは50である。
【0064】
末端(A)割合を算出するための各構造の存在比の測定法は、その存在比を求められればよく、特に制限はされないが、例えばポリカーボネートジオールのH−NMRのシグナルの積分値から容易に求めることができる。
【0065】
特定ポリカーボネートジオールの数平均分子量は、得られるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの適当な粘度による良好な作業性や、活性エネルギー線硬化性重合体組成物を硬化して得られる硬化物の機械的強度及び耐摩耗性の観点から、500以上10,000以下である。特定ポリカーボネートジオールの数平均分子量は、上記の観点から5,000以下であることが好ましく、3,000以下であることがより好ましい。また特定ポリカーボネートジオールの数平均分子量は、上記の観点から700以上であることが好ましく、1,000以上であることがより好ましい。特定ポリカーボネートジオールの数平均分子量が小さくなると、前記作業性が向上し、また前記の機械的強度、耐摩耗性が向上する傾向がある。特定ポリカーボネートジオールの数平均分子量が大きくなると、前記硬化物の3次元加工時の変形に追従可能な柔軟性が低下する傾向がある。
【0066】
また、特定ポリカーボネートジオールの水酸基価の下限は好ましくは10mg−KOH/g、より好ましくは20mg−KOH/g、さらに好ましくは35mg−KOH/gである。また、上限は好ましくは230mg−KOH/g、より好ましくは160mg−KOH/g、さらに好ましくは130mg−KOH/gである。水酸基価が上記下限未満では、粘度が高くなりすぎウレタン化の際のハンドリングが困難となる場合があり、上記上限を超えるとウレタン樹脂としての強度が不足する場合がある。
【0067】
また、特定ポリカーボネートジオールの分子量分布(Mw/Mn)の下限は好ましくは1.5であり、より好ましくは2.0である。一方上限は好ましくは3.5であり、より好ましくは3.0である。ここでMwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量であり、通常ゲルパーミエーションクロマトグラフィーの測定で求めることができる。
【0068】
分子量分布が上記上限を超える場合、上記ポリカーボネートジオールを用いて製造したウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーより得られる硬化膜の物性が、低温で硬くなる、伸びが悪くなる等、悪化する傾向があり、上記下限未満のポリカーボネートジオールを製造しようとすると、オリゴマーを除くなどの高度な精製が必要になることがある。
【0069】
本発明で用いるポリカーボネートジオールは、カーボネート基によりジオールが重合した構造となっている。しかしながら、製造方法によっては、一部エーテル構造となったものが混入する場合があり、その存在量が多くなるとエーテル構造が原因となって耐候性や耐熱性が低下することがあるので、過度に多くならないように製造することが望ましい。従って、特定ポリカーボネートジオールのポリマー中に含まれるエーテル結合とカーボネート結合の比は好ましくはモル比で好ましくは2/98以下、より好ましくは1/99以下、さらに好ましくは0.5/99.5以下である。
【0070】
特定ポリカーボネートジオールは、室温付近で通常、液状を呈しておりハンドリング性に優れるという特徴を有している。これはポリウレタンを工業的なスケールで製造する上では極めて有利な特性であり、ポリカーボネートジオールの一般的なグレードであるポリヘキサメチレンカーボネートジオールで見られるワックス状の白濁固体という室温での性状とは異なる点である。
【0071】
特定ポリカーボネートジオールのこの性状は例えば粘度で表すことができ、40℃における粘度の下限は好ましくは0.1Pa・s、より好ましくは1Pa・s、さらに好ましくは5Pa・sであり、上限は好ましくは200Pa・s、より好ましくは150Pa・s、さらに好ましくは100Pa・sである。粘度がこの範囲より高すぎても低すぎてもハンドリングがしにくくなることがある。
【0072】
特定ポリカーボネートジオールの色調は、得られるポリウレタン硬化膜の色目に影響を与えない範囲が好ましく、着色の程度をハーゼン色数で表した場合の値(以下「APHA値」と表記する。)で100以下が好ましく、より好ましくは50、さらに好ましくは30である。
【0073】
特定ポリカーボネートジオールの製造は、上記した(A)と(B)の構造を与える原料ジオール化合物と炭酸ジエステルとをエステル交換反応させる事により実施する事が出来る。
【0074】
以下に、ポリカーボネートジオールとした時に(A)の構造、及び(B)の構造を与える原料モノマーのジオール化合物の具体的な例を示す。
【0075】
(A)の構造を与える具体的なジオール化合物の例としては、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール。以下「NPG」と略記することがある。)、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−ペンチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−ペンチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオールなどの2,2−ジアルキル置換1,3−プロパンジオール類(以下、「2,2−ジアルキル−1,3−プロパンジオール類」と記載することがある。ただし、アルキル基は炭素数15以下のアルキル基である)、2,2,4,4−テトラメチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,9,9−テトラメチル−1,10−デカンジオールなどのテトラアルキル置換アルキレンジオール類、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等の環状基を含むジオール類、2,2−ジフェニル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジビニル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチニル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメトキシ−1,3−プロパンジオール、ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)エーテル、ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)チオエーテル、2,2,4,4−テトラメチル−3−シアノ−1,5−ペンタンジオールなどが挙げられる。これらのジオール類は単独で用いても複数種組み合わせて用いてもよい。
【0076】
これらの中でも構造(A)において、nが0でR1,R2がそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基を与えるものが好ましく、この構造を与える具体的な化合物としては、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−ペンチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−ペンチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオールなどの2,2−ジアルキル−1,3−プロパンジオール類が挙げられる。
【0077】
(B)の構造を与える具体的なジオール化合物の例としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,20−エイコサンジオール等の直鎖状の末端ジオール類、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのエーテル基を有するジオール類、ビスヒドロキシエチルチオエーテルなどのチオエーテルジオール類、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチル−1,5−ペンタンジオール等の分岐鎖を有するジオール類、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、4,4−ジシクロヘキシルジメチルメタンジオール、2,2'−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、1,4−ジヒドロキシエチルシクロヘキサン、イソソルビド、2,5−ビス(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン、4,4’−イソプロピリデンジシクロヘキサノール、4,4’−イソプロピリデンビス(2,2’−ヒドロキシエトキシシクロヘキン)等の環状基が分子内にあるジオール類、ジエタノールアミン、N−メチルージエタノールアミン等の含窒素ジオール類、ビス(ヒドロキシエチル)スルヒド等の含硫黄ジオール類等を挙げることができる。これらのジオール類は単独で用いても、複数種組み合わせて用いてもよい。
【0078】
上記(A)の構造を与えるジオール化合物及び(B)の構造を与えるジオール化合物の組み合わせの具体例としては、(A)の構造を与えるジオール化合物としては、2,2−ジアルキル−1,3−プロパンジオールが好ましく、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)がより好ましく、これらと組み合わせられる(B)の構造を与える化合物の中では、特に炭素数20下のジオール類、もしくはエーテル基を有するジオール類が好ましい。さらには、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、イソソルビドが、原料ジオールの入手性、物性が優れている点でより好ましい。これらから得られるポリカーボネートジオールを用いてウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを製造すると、その溶液粘度が低くハンドリング性に優れ、また得られる硬化膜のポリウレタンがより柔軟になるという特徴を発現する。
【0079】
一方、特定ポリカーボネートジオールの製造に用いる事のできる炭酸ジエステルとしては、例えば、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート、アルキレンカーボネートが挙げられる。これらは1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0080】
ジアルキルカーボネートの例としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、ジイソブチルカーボネート、エチル−n−ブチルカーボネート、エチルイソブチルカーボネート等が挙げられる。
【0081】
ジアリールカーボネートの例としては、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート等が挙げられる。
【0082】
アルキレンカーボネートの例としては、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、1,2−プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、1,3−ブチレンカーボネート、2,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート、1,3−ペンチレンカーボネート、1,4−ペンチレンカーボネート、1,5−ペンチレンカーボネート、2,3−ペンチレンカーボネート、2,4−ペンチレンカーボネート、ネオペンチルカーボネート等が挙げられる。
【0083】
これらの中でもジアリールカーボネートが反応性に富んでいて、反応が速やかに進行し、工業的に製造する上で効率的であり好ましい。特に、2,2−ジアルキル−1,3−プロパンジオール、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンなどのジオール化合物は反応性が低く、ジアルキルカーボネートやアルキレンカーボネートを用いてポリカーボネートジオールを製造するにはより厳しい反応条件、すなわち多量の触媒を用いる条件や目的物であるポリカーボネートジオールの品質を落としてしまう様な条件が必要となる。このような場合であっても、ジアリールカーボネートを用いると、このものはアルキルカーボネートに比較して反応性に優れるため、より反応性の低いこれらのジオール化合物でも温和な条件で反応が進行するようになるので好ましい。
【0084】
ジアリールカーボネートの中でも、工業原料として容易にかつ安価に入手可能なジフェニルカーボネートがより好ましい。
【0085】
これら炭酸ジエステルの使用量は、ジオール化合物の合計1モルに対して下限が好ましくは0.80、より好ましくは0.85、さらに好ましくは0.90であり、上限は好ましくは1.10、より好ましくは、1.05、さらに好ましくは1.03のモル比である。
【0086】
特定ポリカーボネートジオールを製造するにあたっては、重合を促進するためにエステル交換触媒を用いてもよい。
【0087】
エステル交換触媒として利用できる金属は、一般にエステル交換能があるとされている金属であれば制限なく用いる事ができる。このような金属の例を挙げると、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムなどのアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属;チタン、ジルコニウム、ハフニウム、コバルト、亜鉛、アルミニウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマスなどの遷移金属;ランタン、セリウム、ユーロピウム、イッテルビウムなどランタナイド系金属などが挙げられる。これらの金属は金属の単体として使用される場合と、塩等の金属化合物として使用される場合があるが、金属化合物として使用される場合の例としては、水酸化物の他に、塩化物、臭化物、ヨウ化物などのハロゲン化物;酢酸塩、蟻酸塩、安息香酸塩などのカルボン酸塩;メタンスルホン酸やトルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などのスルホン酸塩;燐酸塩や燐酸水素塩、燐酸二水素塩などの燐含有の塩;アセチルアセトナート塩;さらにはメトキシドやエトキシドの様なアルコキシドを用いる事ができる。好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属の酢酸塩やハロゲン化物、アルコキシドが用いられる。これらの金属、及び金属化合物は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0088】
エステル交換触媒のアルカリ金属化合物の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸セシウム、安息香酸リチウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、フェニルリン酸2ナトリウム、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2セシウム塩、2リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、リチウム塩等が挙げられる。
【0089】
アルカリ土類金属化合物の例としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸水素バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、フェニルリン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0090】
遷移金属化合物の例としては、テトラエチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネートなどのチタンアルコキシド;四塩化チタンなどのチタンのハロゲン化物;酢酸亜鉛、安息香酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛などの亜鉛の塩;塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、酢酸スズ(II)、酢酸スズ(IV)、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジメトキシドなどのスズ化合物;ジルコニウムアセチルアセトナート、オキシ酢酸ジルコニウム、ジルコニウムテトラブトキシドなどのジルコニウム化合物;酢酸鉛(II)、酢酸鉛(IV)、塩化鉛(IV)等の鉛化合物等が挙げられる。
【0091】
エステル交換触媒の使用量は、得られるポリカーボネートジオール中に残存しても性能に影響の生じない量であることが好ましく、原料ジオール化合物の重量に対する金属の重量比としての上限は、好ましくは500ppm、より好ましくは100ppm、さらに好ましくは50ppmである。一方、下限は十分な重合活性が得られる量、すなわち、好ましくは0.01ppm、より好ましくは0.1ppm、さらに好ましくは1ppmである。
【0092】
エステル交換反応の際の反応温度は、実用的な反応速度が得られる温度であれば任意に採用する事が出来る。通常その温度の下限は70℃、好ましくは100℃、さらに好ましくは130℃である。反応温度の上限は、高すぎると得られるポリカーボネートジオールが着色したり、エーテル構造が生成するなどの品質上の問題が生じる場合があるので、通常は250℃、好ましくは230℃、さらに好ましくは200℃である。
【0093】
さらには、ポリカーボネートジオールを製造するエステル交換反応の全工程を通じて反応温度を170℃以下とすることが好ましく、165℃以下とすることがより好ましく、160℃以下とすることがさらに好ましい。上記全工程の中に反応温度が170℃を上回る工程が含まれる場合には、条件によっては着色し易くなる事がある。
【0094】
反応は常圧で行なうこともできるが、エステル交換反応は平衡反応であり、生成する軽沸成分を系外に留去する事で反応を生成系に偏らせる事ができる。従って、通常、反応後半には減圧条件を採用して軽沸成分を留去しながら反応する事が好ましい。あるいは反応の途中から徐々に圧力を下げて生成する軽沸成分を留去しながら反応させていく事も可能である。特に反応の終期において減圧度を高めて反応を行うと、副生したモノアルコール、フェノール類、さらには環状カーボネートなどを留去する事ができるので好ましい。この際の反応終了時の反応圧力は、上限が、好ましくは10kPa、より好ましくは5kPa、さらに好ましくは1kPaである。これら軽沸成分の留出を効果的に行うために、反応系へ窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを流通しながら該反応を行うこともできる。
【0095】
エステル交換反応の際に原料として低沸の炭酸エステルやジオール化合物を使用する場合は、反応初期は炭酸エステルやジオール化合物の沸点近辺で反応を行い、反応が進行するにつれて、徐々に温度を上げて、更に反応を進行させる、という方法も採用可能である。この場合、反応初期に未反応の炭酸エステルの留去を防ぐ事ができるので好ましい。さらにこれら原料の留去を防ぐ意味で反応器に乾留管をつけて、炭酸エステルとジオール化合物を還流させながら反応を行うことも可能であり、この場合、仕込んだ原料が失われず試剤の量比を正確に合わせることが出来るので好ましい。
【0096】
重合反応は、バッチ式又は連続式に行うことができるが、本発明では製品の安定性等から連続式で行うことが好ましい。使用する装置は、槽型、管型又は塔型のいずれの形式であってもよく、各種の攪拌翼を具備した公知の重合槽等を使用することができる。装置昇温中の雰囲気は特に制限はないが、製品の品質の観点から、窒素ガス等の不活性ガス中、常圧又は減圧下で行われるのが好ましい。
【0097】
重合反応は、生成するポリカーボネートジオールの分子量を測定しながら、目的の分子量となったところで終了する。重合に必要な反応時間は、使用するジオール化合物、炭酸エステル、エステル交換触媒の使用の有無、種類により大きく異なるので一概に規定することは出来ないが、通常、50時間以下、好ましくは20時間以下、さらに好ましくは10時間以下である。
【0098】
反応にエステル交換触媒を用いた場合、通常得られたポリカーボネートジオールにはエステル交換触媒の金属が残存する。これら金属触媒が残存すると、ウレタン化反応を行う際に反応の制御が出来なくなる場合がある。この残存触媒の影響を抑制するために、使用されたエステル交換触媒とほぼ等モルの公知の失活剤、例えばリン系化合物を添加してもよい。さらには添加後、60〜150℃、好ましくは90〜120℃の温度で処理すると、エステル交換触媒を効率的に不活性化することができる。
【0099】
エステル交換触媒の不活性化に使用されるリン系化合物としては、例えば、リン酸、亜リン酸などの無機リン酸、及びリン酸ジブチル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリフェニル、亜リン酸トリフェニルなどの有機リン酸エステル等が挙げられる。
【0100】
前記リン系化合物の使用量は、前述したように、使用されたエステル交換触媒とほぼ等モルであればよく、具体的には、使用されたエステル交換触媒1モルに対して上限が好ましくは5モル、より好ましくは2モルであり、下限が好ましくは0.8モル、より好ましくは1.0モルである。これより少ない量のリン系化合物を使用した場合は、前記反応生成物中のエステル交換触媒の失活が十分でなく、得られたポリカーボネートジオールを本発明のウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの製造用原料として使用する時、該ポリカーボネートジオールのイソシアネート基に対する反応性を十分に低下させることができない場合がある。また、この範囲を越えるリン系化合物を使用すると得られたポリカーボネートジオールが着色してしまう可能性がある。
【0101】
リン系化合物を添加することによるエステル交換触媒の不活性化は、室温でも行う事ができるが、加熱処理するとより効率的である。この加熱処理の温度は、上限が好ましくは150℃、より好ましくは120℃、さらに好ましくは100℃であり、下限は、好ましくは50℃、より好ましくは60℃、さらに好ましくは70℃である。これより低い温度の場合は、エステル交換触媒の失活に時間がかかり効率的でなくまた失活の程度も不十分な場合がある。一方、150℃を越える温度では、得られたポリカーボネートジオールが着色することがある。
【0102】
リン系化合物と反応させる時間は特に限定するものではないが、通常1〜5時間である。
【0103】
このようにして得られるポリカーボネートジオール生成物中には、製造の際に副生した環状のカーボネートが含まれる事がある。例えば原料ジオール化合物に、2,2−ジアルキル−1,3−プロパンジオールを用いた場合、5,5−ジアルキル−1,3−ジオキサン−2−オンもしくはさらにこれらが2分子ないしそれ以上で環状となったものなどが環状化合物として生成する場合がある。特に、原料ジオール化合物に、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)を用いた場合は、5,5−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−オン(ネオペンチルカーボネート)、もしくはさらにこれらが2分子ないしそれ以上で環状となったものなどが環状化合物として生成する場合がある。これらの化合物は、ウレタン化反応においては副反応をもたらす可能性のある好ましくない不純物であるので製造の段階でなるべく除去しておくのが望ましい。ポリカーボネートジオール生成物中に含まれるこれら不純物の含有量は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0104】
また、前述の如く、ポリカーボネートジオールの製造に用いる炭酸ジエステルとしては、ジアリールカーボネートが好ましいが、ジアリールカーボネートを用いた場合、ジアリールカーボネート由来のヒドロキシアリール(以下、フェノール類と略記することがある)が副生するので、ポリカーボネートジオール生成物中に多量に残留しない様に注意する事が必要である。フェノール類の残留量が多いと、フェノール類は一官能性化合物なので、ポリウレタン化の際の重合阻害因子となり得る上、刺激性物質でもあるので好ましくない。ポリカーボネートジオール生成物中に含まれるフェノール類の含有量は、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、さらに好ましくは0.005質量%以下である。
【0105】
また、ポリカーボネートジオール生成物中の製造時に使用した原料ジオール化合物の残存量は、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以下であり、さらに好ましくは0.05質量%以下である。原料ジオール化合物の残存量が多いと、ウレタンとした際のソフトセグメント部位の分子長が不足することがある。
【0106】
特定ポリカーボネートジオールは基本的にポリマー末端に水酸基を有する。しかしながら、上記ポリカーボネートジオール生成物中には、不純物として一部ポリマー末端に水酸基を有さないものが存在する場合がある。その際のポリカーボネートジオール生成物中に含まれるポリマー末端に水酸基を有さない不純物の割合は、水酸基を有さない末端基の数として全末端数の好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下、さらに好ましくは1モル%以下である。水酸基を有さない末端基の割合が大きいとウレタン化反応を行なう際に重合度が上がらないなどの問題が生じることがあり、好ましくない。水酸基を有さない末端構造としては、その製造方法により異なるが、例えば、フェノキシカルボニル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、オレフィンなどがある。
【0107】
また、前述の如く、ポリカーボネートジオールの製造時にエステル交換触媒を用いた場合、得られるポリカーボネートジオール生成物中にその触媒が残存する事があるが、過度に多くの触媒が残存するとウレタン化反応を想定以上に促進したりすることがあり、好ましくない。ポリカーボネートジオール生成物中に残存する触媒量は、触媒金属の含有量として好ましくは100ppm以下であり、より好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下である。
【0108】
以上のことから、反応により得られたポリカーボネートジオール生成物中のポリマー末端に水酸基を有さない不純物、フェノール類、原料ジオール化合物や炭酸エステル、副生する軽沸の環状カーボネート、さらには添加したエステル交換触媒などを除去する目的で精製を行うことができる。その際の精製は軽沸化合物については、蒸留で留去する方法が採用できる。蒸留の具体的な方法としては減圧蒸留、水蒸気蒸留、薄膜蒸留など特にその形態に制限はなく、任意の方法を採用することが可能であるが、中でも薄膜蒸留が効果的である。薄膜蒸留条件としては特に制限はないが、薄膜蒸留時の温度は、上限が好ましくは250℃、より好ましくは200℃であり、下限は、好ましくは120℃、より好ましくは150℃である。120℃より低い温度の場合は、軽沸成分の除去効果が低下することがある。一方、250℃より高い温度の場合は、薄膜蒸留後に得られるポリカーボネートジオールが着色することがある。薄膜蒸留時の圧力は、上限が好ましくは500Pa、より好ましくは150Pa、さらに好ましくは50Paである。これより高い圧力の場合は、軽沸成分の除去効果が低下することがある。また、薄膜蒸留直前のポリカーボネートジオールの保温の温度は、上限が好ましくは250℃、より好ましくは150℃であり、下限は、好ましくは80℃、より好ましくは120℃である。80℃より低い温度の場合は、薄膜蒸留直前のポリカーボネートジオールの流動性が低下することがある。一方、250℃より高い温度の場合は、薄膜蒸留後に得られるポリカーボネートジオールが着色することがある。また、水溶性の不純物を除くために水、アルカリ性水、酸性水、キレート剤溶解溶液などで洗浄してもよい。その場合水に溶解させる化合物は任意に選択できる。
【0109】
(3)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート
本発明におけるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを製造するための原料化合物としての(3)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、一個以上の水酸基と一個以上の(メタ)アクリロイル基と好ましくは炭素数1〜30の炭化水素基とを有する化合物である。(3)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0110】
(3)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとカプロラクトンとの付加反応物、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートとカプロラクトンとの付加反応物、グリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との付加反応物、グリコールのモノ(メタ)アクリレート体、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0111】
上記した中でも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の、(メタ)アクリロイル基と水酸基との間に炭素数が2〜4のアルキレン基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが、得られる硬化膜の機械的強度の観点から特に好ましい。
【0112】
(3)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの分子量は、40以上、更には80以上であるのが好ましく、また、得られる硬化膜の機械的強度の観点から800以下、更には400以下であるのが好ましい。なお、(3)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが前記の付加反応体や重合体である場合には、前記分子量は数平均分子量である。
【0113】
(4)その他の原料化合物
本発明におけるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを製造するための原料化合物には、本発明の効果が得られる範囲において、他の成分をさらに含有していてもよい。このような他の成分としては、例えば、特定ポリカーボネートジオール以外の数平均分子量500以上の高分子量ポリオール、数平均分子量500未満の低分子量ポリオール、及び鎖延長剤が挙げられる。
【0114】
前記高分子量ポリオールは、数平均分子量が500以上の、2個以上の水酸基を有する、特定ポリカーボネートジオール以外の化合物である。高分子量ポリオールの数平均分子量の上限には特に制限はないが、通常10000以下である。前記高分子量ポリオールは、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0115】
このような高分子量ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリエーテルエステルジオール、前記特定ポリカーボネートジオール以外の他のポリカーボネートジオール、ポリオレフィンポリオール、及びシリコンポリオール等が挙げられるが、得られる硬化膜の耐水性及び耐熱性を向上させる観点からポリカーボネートジオールが好ましい。
【0116】
前記ポリエーテルジオールとしては、環状エーテルを開環重合して得られる化合物が挙げられ、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。これらは1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0117】
前記ポリエステルジオールとしては、ジカルボン酸又はその無水物と低分子量ジオールとの重縮合によって得られる化合物が挙げられ、例えばポリエチレンアジペート、ポリプロピレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、及びポリブチレンセバケート等が挙げられる。これらは1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。また、前記ポリエステルジオールとしては、ラクトンの低分子量ジオールとの開環重合によって得られる化合物が挙げられ、例えばポリカプロラクトン、及びポリメチルバレロラクトン等が挙げられる。これらは1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0118】
なお、前記ジカルボン酸としては、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、イソフタル酸、及びフタル酸が挙げられ、ジカルボン酸の無水物としては、例えばこれらの無水物が挙げられる。また、前記低分子量ジオールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ポリテトラメチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、及びビスヒドロキシエトキシベンゼンが挙げられる。。
【0119】
前記ポリエーテルエステルジオールとしては、前記ポリエステルジオールに環状エーテルを開環重合した化合物や、前記ポリエーテルジオールと前記ジカルボン酸とを重縮合した化合物が挙げられ、例えばポリ(ポリテトラメチレンエーテル)アジペート等が挙げられる。これらは1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0120】
前記他のポリカーボネートジオールとしては、例えば、前記低分子量ジオールとアルキレンカーボネート又はジアルキルカーボネートとから脱グリコール又は脱アルコールによって得られるポリブチレンカーボネート、ポリペンタメチレンカーボネート、ポリヘキサメチレンカーボネート、ポリ(2−メチル−プロピレン)カーボネート、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレン)カーボネート、ポリシクロヘキシレンカーボネート、等及びこれらの共重合体が挙げられる。これらは1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0121】
前記ポリオレフィンポリオールは、2個以上の水酸基を有するポレオレフィンであって、例えば、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、及びポリイソプレンポリオール等が挙げられる。これらは1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0122】
前記シリコンポリオールは、2個以上の水酸基を有するシリコーンであり、前記シリコンポリオールとしては、例えばポリジメチルシロキサンポリオール等が挙げられる。これらは1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0123】
これらの中で、活性エネルギー線硬化性重合体組成物を硬化して得られる硬化物の耐候性及び機械的強度の観点から、前記高分子量ポリオールとしては、前記他のポリカーボネートジオールであることが好ましい。
【0124】
前記他のポリカーボネートジオールの数平均分子量は、過度に大きくない方が、得られるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの粘度が著しく増加することなく作業性が良好であり、また活性エネルギー線硬化性重合体組成物を硬化して得られる硬化物の機械的強度、耐汚染性が向上する傾向がある。このような観点から、前記他のポリカーボネートジオールの数平均分子量は、10,000以下であることが好ましく、5,000以下であることがより好ましく、2,000以下であることがさらに好ましい。
【0125】
前記低分子量ポリオールは、数平均分子量が500未満の、2個以上の水酸基を有する化合物である。低分子量ポリオールは、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0126】
このような低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,5−ペンタンジオール、2,3,5−トリメチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール等の脂肪族ジオール;シクロプロパンジオール、シクロプロパンジメタノール、シクロプロパンジエタノール、シクロプロパンジプロパノール、シクロプロパンジブタノール、シクロペンタンジオール、シクロペンタンジメタノール、シクロペンタンジエタノール、シクロペンタンジプロパノール、シクロペンタンジブタノール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジエタノール、シクロヘキサンジプロパノール、シクロヘキサンジブタノール、シクロヘキセンジオール、シクロヘキセンジメタノール、シクロヘキセンジエタノール、シクロヘキセンジプロパノール、シクロヘキセンジブタノール、シクロヘキサジエンジオール、シクロヘキサジエンジメタノール、シクロヘキサジエンジエタノール、シクロヘキサジエンジプロパノール、シクロヘキサジエンジブタノール、水添ビスフェノールA、トリシクロデカンジオール、アダマンチルジオール等の脂環式ジオール;ビスヒドロキシエトキシベンゼン、ビスヒドロキシエチルテレフタレート、ビスフェノール−A等の芳香族系ジオール;N−メチルジエタノールアミン等のジアルカノールアミン;ペンタエリスリトール;ソルビトール;マンニトール;グリセリン;及び、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。
【0127】
上記の中でも、得られる硬化膜の耐候性の観点から、前記低分子量ポリオールは、脂肪族ジオールや脂環式ジオールであることが好ましい。また、特に硬化物の機械的強度が求められる用途では、前記低分子量ポリオールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール等の水酸基間の炭素数が1〜4の脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等の、2つの水酸基が脂環式構造を挟んで対称な位置に存在している脂環式ジオール;であることが特に好ましい。
【0128】
前記低分子量ポリオールの数平均分子量は、活性エネルギー線硬化性重合体組成物を硬化して得られる硬化物としての伸度と弾性率とのバランスの観点から、50以上であることが好ましく、一方、250以下であることが好ましく、150以下であることがより好ましい。
【0129】
前記鎖延長剤は、イソシアネート基と反応する二以上の活性水素を有する化合物である。鎖延長剤は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0130】
このような鎖延長剤としては数平均分子量500未満の低分子量ジアミン化合物等が挙げられ、例えば、2,4−もしくは2,6−トリレンジアミン、キシリレンジアミン、4,4’−ジフェニルメタンジアミン等の芳香族ジアミン;エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,2,4−もしくは2,4,4−トリメチルヘキサンジアミン、2−ブチル−2−エチル−1,5−ペンタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン等の脂肪族ジアミン;及び、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(IPDA)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン(水添MDA)、イソプロピリデンシクロヘキシル−4,4’−ジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、トリシクロデカンジアミン等の脂環式ジアミン;が挙げられる。
【0131】
[ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー]
次に、上述の原料化合物から得られる本発明のウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー及びその製造方法について説明する。
【0132】
本発明のウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、前記(1)ポリイソシアネートに、前記(2)ポリカーボネートジオールである特定ポリカーボネートジオールと前記(3)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを付加反応させることにより製造することができる。その他の原料化合物である前記高分子量ポリオール、前記低分子量ポリオール、及び前記鎖延長剤等を併用する場合は、本発明のウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、前記(1)ポリイソシアネートに、更にこれらのその他の原料化合物も付加反応させることにより製造することができる。
また、その際の各原料化合物の仕込み比は、目的とするウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの組成と実質的に同等、ないしは同一とする。
【0133】
これらの付加反応は、公知の何れの方法でも行うことができる。このような方法としては、例えば、以下の(a)〜(c)の方法が挙げられる。
【0134】
(a) 前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート以外の成分を、イソシアネート基が過剰となるような条件下でポリイソシアネートと反応させたイソシアネート末端ウレタンプレポリマーを得て、次いで該イソシアネート末端ウレタンプレポリマーと前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとを反応させるプレポリマー法。
(b) 全原料化合物を同時に一括添加して反応させるワンショット法。
(c) 前記ポリイソシアネートと前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとを先に反応させ、分子中に(メタ)アクリロイル基とイソシアネート基とを同時に有するウレタン(メタ)アクリレートプレポリマーを合成した後、得られたプレポリマーに、それら以外の原料化合物を反応させる方法。
【0135】
これらのうち、(a)の方法によれば、前記ウレタンプレポリマーが前記ポリイソシアネートと前記ポリカーボネートジオールとをウレタン化反応させてなり、得られるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとウレタン化反応させてなる構造を有するため、分子量が制御可能で両末端にアクリロイル基が導入可能である観点から、(a)の方法が好ましい。
【0136】
本発明のウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーにおける全イソシアネート基の量と水酸基及びアミノ基等のイソシアネート基と反応する全官能基の量は、通常、理論的に当モルである。
【0137】
すなわち、本発明のウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを製造する際の前記(1)ポリイソシアネート、(2)ポリカーボネートジオール、及び(3)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、及びその他の原料化合物の使用量は、本発明のウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーにおける全イソシアネート基の量とそれと反応する全官能基の量とが当モル、又はイソシアネート基に対する当該全官能基のモル%で50〜200モル%になる量である。
【0138】
本発明のウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを製造する際は、(3)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの使用量を、(3)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(2)ポリカーボネートジオール、並びに必要に応じて用いられるその他の原料化合物である前記高分子量ポリオール、低分子量ポリオール、及び鎖延長剤等のイソシアネートと反応する官能基を含む化合物の総使用量に対して、通常10モル%以上、好ましくは15モル%以上、更に好ましくは25モル%以上、また、通常70モル%以下、好ましくは50モル%以下とする。この割合に応じて、得られるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの分子量を制御することができる。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの割合が多いと、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの分子量は小さくなる傾向となり、割合が少ないと分子量は大きくなる傾向となる。
【0139】
前記特定ポリカーボネートジオールと前記高分子量ポリオールとの総使用量に対して、前記特定ポリカーボネートジオールの使用量を25モル%以上とすることが好ましく、より好ましくは50モル%以上、更に好ましくは70モル%以上である。前記特定ポリカーボネートジオールの使用量が前記の下限値より大きいと、得られる硬化物の硬度及び耐汚染性が良好となる傾向があり好ましい。
また、前記特定ポリカーボネートジオールと前記高分子量ポリオールとの総使用量に対して、前記特定ポリカーボネートジオールの使用量は、10質量%以上とすることが好ましく、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。前記特定ポリカーボネートジオールの使用量が前記の下限値より大きいと、得られる組成物の粘度が低下し作業性が向上し、また得られる硬化物の機械的強度及び硬度や耐摩耗性が向上する傾向になり好ましい。
【0140】
更に、前記特定ポリカーボネートジオールと前記高分子量ポリオールと前記低分子量ポリオールとの総使用量に対して、前記特定ポリカーボネートジオールの使用量は、25モル%以上とすることが好ましく、より好ましくは50モル%以上、更に好ましくは70モル%以上である。前記特定ポリカーボネートジオールの使用量が前記の下限値より大きいと、得られる硬化物の伸度、耐候性が向上する傾向になり好ましい。
【0141】
更に、鎖延長剤を用いる場合には、前記特定ポリカーボネートジオール、前記高分子量ポリオール、及び前記低分子量ポリオールの全ポリオールと鎖延長剤とを合わせた化合物の総使用量に対して全ポリオールの使用量を70モル%以上とすることが好ましく、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上である。前記全ポリオール量が前記の下限値より大きいと、液安定性が向上する傾向になり好ましい。
【0142】
本発明のウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの製造時において、粘度の調整を目的に溶剤を使用することができる。溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。溶剤としては、本発明の効果が得られる範囲において公知の溶剤のいずれも使用することができる。好ましい溶剤としては、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、及びメチルイソブチルケトン等が挙げられる。溶剤は、通常、反応系内の固形分100質量部に対して300質量部未満で使用可能である。
【0143】
本発明のウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの製造時において、生成するウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー及びその原料化合物の総含有量は、反応系の総量に対して20質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。なお、この総含有量の上限は100質量%である。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー及びその原料化合物の総含有量が20質量%以上であると、反応速度が高くなり、製造効率が向上する傾向にあるために好ましい。
【0144】
本発明のウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの製造に際しては付加反応触媒を用いることができる。この付加反応触媒としては、本発明の効果が得られる範囲から選ぶことができ、例えばジブチルスズラウレート、ジブチルスズジオクトエート、ジオクチルスズジラウレート、及びジオクチルスズジオクトエート等が挙げられる。付加反応触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。付加反応触媒は、これらのうち、ジオクチルスズジラウレートであることが、環境適応性及び触媒活性、保存安定性の観点から好ましい。
付加反応触媒は、生成するウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー及びその原料化合物の総含有量に対して、上限が通常1000ppm以下、好ましくは500ppm以下であり、下限が通常10ppm以上、好ましくは30ppm以上で用いられる。
【0145】
また、本発明のウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの製造時に、反応系に(メタ)アクリロイル基を含む場合には、重合禁止剤を併用することができる。このような重合禁止剤としては、本発明の効果が得られる範囲から選ぶことができ、例えばハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノエチルエーテル、ジブチルヒドロキシトルエン等のフェノール類、フェノチアジン、ジフェニルアミン等のアミン類、ジブチルジチオカルバミン酸銅等の銅塩、酢酸マンガン等のマンガン塩、ニトロ化合物、ニトロソ化合物等が挙げられる。重合禁止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。重合禁止剤は、これらのうち、フェノール類が好ましい。
重合禁止剤は、生成するウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー及びその原料化合物の総含有量に対して、上限が通常3000ppm以下、好ましくは1000ppm以下であり、特に好ましくは500ppm以下であり、下限が通常50ppm以上、好ましくは100ppm以上で用いられる。
【0146】
本発明のウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの製造時において、反応温度は通常20℃以上であり、40℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましい。反応温度が20℃以上であると、反応速度が高くなり、製造効率が向上する傾向にあるために好ましい。また、反応温度は通常120℃以下であり、100℃以下であることが好ましい。反応温度が120℃以下であると、アロハナート化反応等の副反応が起きにくくなるために好ましい。また、反応系に溶剤を含む場合には、反応温度はその溶剤の沸点以下であることが好ましく、(メタ)アクリレートが入っている場合には(メタ)アクリロイル基の反応防止の観点から70℃以下であることが好ましい。反応時間は通常5〜20時間程度である。
【0147】
このようにして得られるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの数平均分子量は500以上、特に1000以上であることが好ましく、10000以下、特に5000以下、とりわけ3000以下であることが好ましい。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの数平均分子量が上記下限以上であると、得られる硬化膜の三次元加工適性が良好となり、三次元加工適性と耐汚染性とのバランスに優れる傾向となり好ましい。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの数平均分子量が上記上限以下であると該組成物から得られる硬化膜の耐汚染性が良好となり、三次元加工適性と耐汚染性とのバランスに優れる傾向となるため好ましい。これは、三次元加工適性と耐汚染性が網目構造における架橋点間の距離に依存しており、この距離が長くなると柔軟で伸びやすい構造となり三次元加工適性に優れ、この距離が短くなると網目構造が強固な構造となり耐汚染性に優れるからであると推定される。
【0148】
[活性エネルギー線硬化性重合体組成物]
以下に、上述のウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを含有する本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物について説明する。
【0149】
本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物は、該組成物の計算網目架橋点間分子量が500〜10,000であることが好ましい。
【0150】
本明細書において、組成物の計算網目架橋点間分子量は、全組成物中の網目構造を形成する活性エネルギー線反応基(以下、「架橋点」と称する場合がある)の間の分子量の平均値を表す。この計算網目架橋点間分子量は、網目構造形成時の網目面積と相関があり、計算網目架橋点間分子量が大きいほど架橋密度が小さくなる。活性エネルギー線硬化による反応では、活性エネルギー線反応基を1個のみ有する化合物(以下、「単官能化合物」と称する場合がある)が反応した場合には線状高分子になり、一方で活性エネルギー線反応基を2個以上有する化合物(以下、「多官能化合物」と称する場合がある)が反応した場合に網目構造を形成する。
【0151】
よって、ここで多官能化合物が有する活性エネルギー線反応基が架橋点であって、計算網目架橋点間分子量の算出は架橋点を有する多官能化合物が中心となり、単官能化合物は多官能化合物が有する架橋点間の分子量を伸長する効果があるものとして扱い、計算網目架橋点間分子量の算出を行う。また、計算網目架橋点間分子量の算出は、全ての活性エネルギー線反応基が同じ反応性を有し、且つ活性エネルギー線照射により全ての活性エネルギー線反応基が反応するものと仮定した上で行う。
【0152】
1種の多官能化合物のみが反応するような多官能化合物単一系組成物では、多官能化合物が有する活性エネルギー線反応基1個当りの平均分子量の2倍が計算網目架橋点間分子量となる。例えば、分子量1,000の2官能性化合物では(1000/2)×2=1000、分子量300の3官能性化合物では(300/3)×2=200となる。
【0153】
複数種の多官能化合物が反応するような多官能化合物混合系組成物では、組成物中に含まれる全活性エネルギー線反応基数に対する上記単一系の各々の計算網目架橋点間分子量の平均値が組成物の計算網目架橋点間分子量となる。例えば、分子量1,000の2官能性化合物4モルと分子量300の3官能性化合物4モルとの混合物からなる組成物では、組成物中の全活性エネルギー線反応基数は2×4+3×4=20個となり、組成物の計算網目架橋点間分子量は{(1000/2)×8+(300/3)×12}×2/20=520となる。
【0154】
組成物中に単官能化合物を含む場合は、計算上、多官能化合物の活性エネルギー線反応基(つまり架橋点)にそれぞれ当モルずつ、且つ架橋点に単官能化合物が連結して形成された分子鎖の中央に位置するように反応すると仮定すると、1個の架橋点における単官能化合物による分子鎖の伸長分は、単官能化合物の総分子量を組成物中の多官能化合物の全活性エネルギー線反応基数で除した値の半分となる。ここで、計算網目架橋点間分子量は架橋点1個当り平均分子量の2倍であると考える為、多官能化合物において算出した計算網目架橋点間分子量に対して単官能化合物により伸長された分は、単官能化合物の総分子量を組成物中の多官能化合物の全活性エネルギー線反応基数で除した値となる。
【0155】
例えば、分子量100の単官能化合物40モルと分子量1,000の2官能性化合物4モルとの混合物からなる組成物では、多官能化合物の活性エネルギー線反応基数は2×4=8個となるので、計算網目架橋点間分子量中の単官能化合物による伸長分は100×40/8=500となる。すなわち組成物の計算網目架橋間分子量は1000+500=1500となる。
【0156】
上記のことから、分子量Wの単官能性化合物Mモルと、分子量Wのf官能性化合物Mモルと、分子量Wのf官能性化合物Mモルとの混合物では、組成物の計算網目架橋点間分子量は下記式で表せる。
【0157】
【数1】

【0158】
このようにして算出される本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物の計算網目架橋点間分子量は、500以上であることが好ましく、800以上であることがより好ましく、1,000以上であることがさらに好ましく、また10,000以下であることが好ましく、8,000以下であることがより好ましく、6,000以下であることがさらに好ましく、4,000以下であることがさらに一層好ましく、3,000以下であることが特に好ましい。
【0159】
計算網目架橋点間分子量が10,000以下であると、該組成物から得られる硬化膜の耐汚染性が良好となり、3次元加工適性と耐汚染性とのバランスに優れる傾向となるため好ましい。また、計算網目架橋点間分子量が500以上であると、得られる硬化膜の3次元加工適性が良好となり、3次元加工適性と耐汚染性とのバランスに優れる傾向となり好ましい。これは、3次元加工適性と耐汚染性が網目構造における架橋点間の距離に依存しており、この距離が長くなると柔軟で伸びやすい構造となり3次元加工適性に優れ、この距離が短くなると網目構造が強固な構造となり耐汚染性に優れるからであると推定される。
【0160】
本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物は、本発明の効果が得られる範囲において、本発明のウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー以外の他の成分をさらに含有していてもよい。このような他の成分としては、例えば、活性エネルギー線反応性モノマー、活性エネルギー線硬化性オリゴマー、重合開始剤、光増感剤、添加剤、及び溶剤が挙げられる。
【0161】
本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物において、本発明のウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの含有量は、本発明のウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを含む活性エネルギー線反応性成分の総量に対して40質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。なお、この含有量の上限は100質量%である。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの含有量が40質量%以上であると、硬化性が良好となり、硬化物とした際の機械的強度が高くなりすぎることなく、3次元加工適性が向上する傾向にあるため好ましい。
【0162】
また、本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物において、本発明のウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの含有量は、伸度及び造膜性の点では多い方が好ましく、また、一方、低粘度化の点では、少ない方が好ましい。このような観点から、本発明のウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの含有量は、前記活性エネルギー線反応性成分に加えて他の成分を含む全成分の総量に対して、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。なお、本発明のウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの含有量の上限値は100質量%であり、この含有量はそれ以下であることが好ましい。
【0163】
また、本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物において、本発明のウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを含む前記活性エネルギー線反応性成分の総量の含有量は、組成物としての硬化速度及び表面硬化性に優れ、タックが残らない等の面から、該組成物全量に対して、60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることがさらに一層好ましい。なお、この含有量の上限は100質量%である。
【0164】
前記活性エネルギー線反応性モノマーとしては、本発明の効果が得られる範囲において、公知のいずれの活性エネルギー線反応性モノマーも用いることができる。これらの活性エネルギー線反応性モノマーは、本発明のウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの親疎水性や、得られる組成物を硬化物とした際の硬化物の硬度、伸度等の物性を調整する目的等で使用される。活性エネルギー線反応性モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0165】
このような活性エネルギー線反応性モノマーとしては、例えばビニルエーテル類、(メタ)アクリルアミド類、及び(メタ)アクリレート類が挙げられ、具体的には、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、α−クロロスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル系モノマー類;酢酸ビニル、酪酸ビニル、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アジピン酸ジビニル等のビニルエステルモノマー類;エチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類;ジアリルフタレート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のアリル化合物類;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−i−ブチル、(メタ)アクリル酸−t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸モルフォリル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカン、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸−2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フェニル等の単官能(メタ)アクリレート;及び、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール(n=5〜14)、ジ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール(n=5〜14)、ジ(メタ)アクリル酸−1,3−ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−1,4−ブタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ポリブチレングリコール(n=3〜16)、ジ(メタ)アクリル酸ポリ(1−メチルブチレングリコール)(n=5〜20)、ジ(メタ)アクリル酸−1,6−ヘキサンジオール、ジ(メタ)アクリル酸−1,9−ノナンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリル酸エステル、ジ(メタ)アクリル酸ジシクロペンタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸トリシクロデカン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリオキシプロピル(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド付加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFエポキシジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;が挙げられる。
【0166】
これらの中で、特に、本発明の組成物に塗布性を要求される用途では、(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸トリメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカン、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリルアミド等の、分子内に環構造を有する単官能(メタ)アクリレートが好ましく、また、一方、得られる硬化物の機械的強度が求められる用途では、ジ(メタ)アクリル酸−1,4−ブタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸−1,6−ヘキサンジオール、ジ(メタ)アクリル酸−1,9−ノナンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリシクロデカン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートが好ましい。
【0167】
本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物において、前記活性エネルギー線反応性モノマーの含有量は、組成物の粘度調整及び得られる硬化物の硬度、伸度等の物性調整の観点から、該組成物全量に対して、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましく、10質量%以下であることがさらに一層好ましい。
【0168】
前記活性エネルギー線硬化性オリゴマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。前記活性エネルギー線硬化性オリゴマーとしては、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー、及びアクリル(メタ)アクリレート系オリゴマーが挙げられる。
【0169】
本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物において、前記活性エネルギー線反応性オリゴマーの含有量は、得られる硬化物の硬度、伸度等の物性調整の観点から、該組成物全量に対して、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましく、10質量%以下であることがさらに一層好ましい。
【0170】
前記重合開始剤は、主に、紫外線、電子線等の活性エネルギー線照射で進行する重合反応の開始効率を向上させる等の目的で用いられる。重合開始剤としては、光によりラジカルを発生する性質を有する化合物である光ラジカル重合開始剤が一般的であり、本発明の効果が得られる範囲で公知の何れの光ラジカル重合開始剤でも使用可能である。重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。更に、光ラジカル重合開始剤と光増感剤とを併用してもよい。
【0171】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、メチルオルトベンゾイルベンゾエート、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、クロロチオキサントン、2−エチルアントラキノン、t−ブチルアントラキノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、メチルベンゾイルホルメート、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オン、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、及び2−ヒドロキシ−1−〔4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル〕−2−メチル−プロパン−1−オン等が挙げられる。
【0172】
これらの中で、硬化速度が速く架橋密度を十分に上昇できる点から、ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、及び、2−ヒドロキシ−1−〔4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル〕−2−メチル−プロパン−1−オンが好ましく、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、及び2−ヒドロキシ−1−〔4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル〕−2−メチル−プロパン−1−オンがより好ましい。
【0173】
また、活性エネルギー線硬化性重合体組成物に、ラジカル重合性基と共にエポキシ基等のカチオン重合性基を有する化合物が含まれる場合は、重合開始剤として、上記した光ラジカル重合開始剤と共に光カチオン重合開始剤が含まれていてもよい。光カチオン重合開始剤も、本発明の効果が得られる範囲で公知の何れのものも使用可能である。
【0174】
本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物におけるこれらの重合開始剤の含有量は、前記の活性エネルギー線反応性成分の合計100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましい。光重合開始剤の含有量が10質量部以下であると、開始剤分解物による機械的強度の低下が起こり難いため好ましい。
【0175】
前記光増感剤は、重合開始剤と同じ目的で用いることができる。光増感剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。光増感剤としては、本発明の効果が得られる範囲で公知の光増感剤のいずれをも使用することができる。このような光増感剤としては、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸アミル、及び4−ジメチルアミノアセトフェノン等が挙げられる。
【0176】
本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物において、前記光増感剤の含有量は、前記の活性エネルギー線反応性成分の合計100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましい。光増感剤の含有量が10質量部以下であると、架橋密度低下による機械的強度の低下が起こり難いため好ましい。
【0177】
前記添加剤は、本発明の効果が得られる範囲において任意であり、同様の用途に用いられる組成物に添加される種々の材料を添加剤として用いることができる。添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。このような添加剤としては、例えば、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、雲母、酸化亜鉛、酸化チタン、マイカ、タルク、カオリン、金属酸化物、金属繊維、鉄、鉛、金属粉等のフィラー類;炭素繊維、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ、C60等のフラーレン類等の炭素材料類(フィラー類、炭素材料類を総称して「無機成分」と称することがある);酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、HALS(ヒンダードアミン光安定剤)、耐指紋剤、表面親水化剤、帯電防止剤、滑り性付与剤、可塑剤、離型剤、消泡剤、レベリング剤、沈降防止剤、界面活性剤、チクソトロピー付与剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤、重合禁止剤、充填剤、シランカップリング剤等の改質剤類;顔料、染料、色相調整剤等の着色剤類;及び、モノマー又は/及びそのオリゴマー、又は無機成分の合成に必要な硬化剤、触媒、硬化促進剤類;等が挙げられる。
【0178】
本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物において、前記添加剤の含有量は、前記の活性エネルギー線反応性成分の合計100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましい。添加剤の含有量が10質量部以下であると、架橋密度低下による機械的強度の低下が起こり難いため好ましい
【0179】
前記溶剤は、例えば本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物の塗膜を形成するためのコーティング方式に応じて、本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物の粘度の調整を目的に使用することができる。溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。溶剤としては、本発明の効果が得られる範囲において公知の溶剤のいずれも使用することができる。好ましい溶剤としては、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、イソプロパノール、イソブタノール、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、及びメチルイソブチルケトン等が挙げられる。溶剤は、通常、活性エネルギー線硬化性重合体組成物の固形分100質量部に対して200質量部未満で使用可能である。
【0180】
本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物に、前述の添加剤等の任意成分を含有させる方法としては、特に限定はなく、従来公知の混合、分散方法等が挙げられる。尚、前記任意成分をより確実に分散させるためには、分散機を用いて分散処理を行うことが好ましい。具体的には、例えば、二本ロール、三本ロール、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、ペブルミル、トロンミル、サンドグラインダー、セグバリアトライター、遊星式攪拌機、高速インペラー分散機、高速ストーンミル、高速度衝撃ミル、ニーダー、ホモジナイザー、超音波分散機等で処理する方法が挙げられる。
【0181】
本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物の粘度は、該組成物の用途や使用態様等に応じて適宜調節し得るが、取り扱い性、塗工性、成形性、立体造形性等の観点から、E型粘度計(ローター1°34’×R24)における25℃での粘度が、10mPa・s以上であることが好ましく、100mPa・s以上であることがより好ましく、また、一方、100,000mPa・s以下であることが好ましく、50,000mPa・s以下であることがより好ましい。活性エネルギー線硬化性重合体組成物の粘度は、例えば本発明のウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの含有量や、前記の任意成分の種類や、その配合割合等によって調整することができる。
【0182】
本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物の塗工方法としては、バーコーター法、アプリケーター法、カーテンフローコーター法、ロールコーター法、スプレー法、グラビアコーター法、コンマコーター法、リバースロールコーター法、リップコーター法、ダイコーター法、スロットダイコーター法、エアーナイフコーター法、ディップコーター法等の公知の方法を適用可能であるが、その中でもバーコーター法及びグラビアコーター法が好ましい。
【0183】
[硬化膜及び積層体]
本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物は、これに活性エネルギー線を照射することにより硬化膜とすることができる。
【0184】
上記組成物を硬化させる際に使用する活性エネルギー線としては、赤外線、可視光線、紫外線、X線、電子線、α線、β線、γ線等が使用可能である。装置コストや生産性の観点から電子線又は紫外線を利用することが好ましく、光源としては、電子線照射装置、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、Arレーザー、He−Cdレーザー、固体レーザー、キセノンランプ、高周波誘導水銀ランプ、太陽光等が適している。
【0185】
活性エネルギー線の照射量は、活性エネルギー線の種類に応じて適宜に選ぶことができ、例えば、電子線照射で硬化する場合には、その照射量は1〜10Mradであることが好ましい。また、紫外線照射の場合は50〜1,000mJ/cmであることが好ましい。硬化時の雰囲気は、空気、窒素やアルゴン等の不活性ガスでもよい。また、フィルムやガラスと金属金型との間の密閉空間で照射してもよい。
【0186】
本発明の硬化膜の膜厚は、目的とされる用途に応じて適宜決められるが、下限は好ましくは1μm、更に好ましくは3μm、特に好ましくは5μmである。また、同上限は好ましくは200μm、更に好ましくは100μm、特に好ましくは50μmである。膜厚が1μm以上であると3次元加工後の意匠性や機能性の発現が良好となり、また、一方、200μm以下であると内部硬化性、3次元加工適性が良好であるため好ましい。また、工業上での使用の際には、下限は好ましくは1μmであり、上限は好ましくは100μm、更に好ましくは50μm、特に好ましくは20μm、最も好ましくは10μmである。
【0187】
本発明によれば、基材上に、上記の本発明の硬化膜からなる層を有する積層体を得ることができる。
本発明の積層体は、本発明の硬化膜からなる層を有していれば特に限定されず、基材及び本発明の硬化膜以外の層を基材と本発明の硬化膜との間に有していてもよいし、その外側に有していても良い。また、前記積層体は、基材や本発明の硬化膜を複数層有していてもよい。
【0188】
複数層の硬化膜を有する本発明の積層体を得る方法としては、全ての層を未硬化の状態で積層した後に活性エネルギー線で硬化する方法、下層を活性エネルギー線にて硬化、あるいは半硬化させた後に上層を塗布し、再度活性エネルギー線で硬化する方法、それぞれの層を離型フィルムやベースフィルムに塗布した後、未硬化あるいは半硬化の状態で層同士を貼り合わせる方法等の公知の方法を適用可能であるが、層間の密着性を高める観点から、未硬化の状態で積層した後に活性エネルギー線で硬化する方法が好ましい。未硬化の状態で積層する方法としては、下層を塗布した後に上層を重ねて塗布する逐次塗布や、多重スリットから同時に2層以上の層を重ねて塗布する同時多層塗布等の公知の方法を適用可能であるが、この限りではない。
【0189】
基材としては、例えばポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン、ナイロン、ポリカーボネート、(メタ)アクリル樹脂等の種々のプラスチック、又は金属で形成された板等の種々の形状の物品が挙げられる。
【0190】
本発明の硬化膜は、インキ、エタノール等の一般家庭汚染物に対する耐汚染性及び硬度に優れる膜とすることが可能であり、本発明の硬化膜を各種基材への被膜として用いた本発明の積層体は、意匠性及び表面保護性に優れたものとすることができる。
【0191】
また、本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物は、計算網目架橋点間分子量を考慮すれば、3次元加工時の変形に追従可能な柔軟性、破断伸度、機械的強度、耐汚染性、及び硬度を同時に兼ね備える硬化膜を与えることができる。
また、本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物は、1層塗布により簡便に薄膜状の樹脂シートを製造することが可能となることが期待される。
【0192】
本発明の硬化膜の破断伸度は、本発明の硬化膜を10mm幅に切断し、テンシロン引張試験機(オリエンテック社製、テンシロンUTM−III−100)を用いて、温度23℃、引張速度50mm/分、チャック間距離50mmの条件で引張試験を行って測定した値が、50%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、100%以上であることがさらに好ましく、120%以上であるであることが特に好ましい。
【0193】
本発明の硬化膜及び本発明の積層体は、塗装代替用フィルムとして用いることができ、例えば内装・外装用の建装材や自動車、家電等の各種部材等に有効に適用することが可能である。
【実施例】
【0194】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0195】
[各種物性値・特性値の測定・評価方法]
<ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの数平均分子量の算出方法>
各実施例及び比較例のウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリイソシアネート、ポリカーボネートジオール、及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの三種の成分を構成単位として含んでいる。これらの構成単位は、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーにおいて、各成分の分子量が保たれたまま形成されていることから、本実施例及び比較例では、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを生成するまでの各成分のモル比と各成分の分子量との積の合計によってウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの数平均分子量(算出値)を算出した。
【0196】
<ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーのGPCによる数平均分子量の測定>
GPC(東ソー社製「HLC−8120GPC」)で、溶媒にTHF、標準サンプルにポリスチレン、カラムにTSKgel superH1000+H2000+H3000を使用して、送液速度0.5mL/分、カラムオーブン温度40℃にて、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの数平均分子量(GPC測定値)を測定した。
【0197】
<ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの計算網目架橋点間分子量の算出>
各実施例及び比較例におけるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの計算網目架橋点間分子量は、ウレタンアクリレート系オリゴマーのプレポリマーにおけるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに対する反応基がプレポリマーの両末端のイソシアネート基であり、プレポリマーの両末端にウレタン結合で結合したヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートがラジカル重合で付加することから、組成物中のウレタンアクリレート系オリゴマーの架橋点は、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの両末端に位置する(メタ)アクリロイル基となり、よって以下の実施例及び比較例では活性エネルギー線硬化性重合体組成物は、前述した2官能(多官能)化合物単一系組成物となることから、下記の式から求めた。
【0198】
【数2】

【0199】
<硬化膜の機械的特性>
硬化膜を10mm幅に切断し、テンシロン引張試験機(オリエンテック社製、テンシロンUTM−III−100)を用いて、温度23℃、相対湿度53%、引張速度50mm/分、チャック間距離50mmの条件で引張試験を行って、1%、5%、10%、50%、100%引張時の応力(以下、それぞれ「M1」「M5」「M10」「M50」「M100」と記す。)と破断伸度及び破断強度を測定した。
【0200】
<硬化膜の鉛筆硬度>
摩耗試験機(新東科学社製;ヘイドン Dynamic strain amplifier 3K−34B)を使用し、硬度6B、5B、4B、3B、2B、B、HB、F、H、2Hの鉛筆(三菱鉛筆社製;品番UNI、日塗検査済、鉛筆引っ掻き値試験用)を用いて、23℃/53%RH条件下で評価した。摩耗試験機に硬度6Bの鉛筆を装着し、加重1kgf(9.8N)、引っ掻き速度25mm/分にて1cm走引し、走引痕の有無を目視で確認した。走引痕が観測されない場合は1段階硬い鉛筆に交換して同様の操作を繰り返し、走引痕が観測されない最も硬い鉛筆硬度を評価結果とした。
【0201】
<硬化膜の耐摩耗性(ΔH)>
学振摩耗試験機(東洋精機製)を使用し、硬化膜の上に500g荷重をかけた乾布(綿−JIS L 0803準拠染色堅ろう度試験用)を載せた状態で2000往復させ、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製)による試験前後の硬化膜の曇り度差:ΔHを耐摩耗性の評価結果とした。ΔH値が大きい程、硬化膜の曇り度が高いことを指しており、耐摩耗性が低いとした。
【0202】
[合成例1:ポリカーボネートジオールの合成]
攪拌機、留出液トラップ、及び圧力調整装置を備えた1Lガラス製セパラブルフラスコに1,6−ヘキサンジオール:195.0g、ネオペンチルグリコール:207.4g、ジフェニルカーボネート:715.0g、及び酢酸マグネシウム4水和物:4.6mgを入れ、窒素ガスで置換した後、内温160℃まで昇温して内容物を加熱溶解し、60分間反応させた。その後、2時間かけて圧力を2torrまで下げつつ、フェノール及び未反応のジオールを留出させ除きながら反応した。次に160℃、2torrで60分間保持し、ポリカーボネートジオールの重合度を上げる反応を行った。更に130℃で圧力を15torrに保持したまま窒素ガスにて12時間バブリングし、フェノールを除きながら反応を継続した。
得られたポリカーボネートジオール生成物の収量は452.6gであった。このポリカーボネートジオール生成物中に含まれるポリカーボネートジオールの水酸基価(58.49mg−KOH/g)から求めた数平均分子量は2100、分子量分布(Mw/Mn)は2.0、1,6−ヘキサンジオール/ネオペンチルグリコールの共重合組成比(モル比)は50/50(1,6−HD/NPG=50/50)、ポリカーボネートジオール末端の1,6−ヘキサンジオール/ネオペンチルグリコール組成比(モル比)は32/68であり、前記式(ア)で算出される末端(A)割合は1.36であった。また、得られたポリカーボネートジオール中の残存触媒の金属含有量は1.2ppmであった。
【0203】
得られたポリカーボネートジオール含有反応生成物の性状は常温で粘性液体であり、流動性が認められた。また比色管に入れた標準液と比較して測定したAPHA値は30、E型粘度計で測定した粘度は40℃で59Pa・sであった。さらにポリカーボネートジオール含有反応生成物中に含まれる不純物をH−NMRで定量したところ、原料ジオール化合物である1,6−ヘキサンジオールとネオペンチルグリコールが合わせて0.9質量%、環状カーボネートであるネオペンチルカーボネートが2.5質量%含有されていたが、フェノキシ−末端となったポリマーや、エーテル結合を含むポリマー、フェノールは検出されなかった。
【0204】
[実施例1]
攪拌器、還流冷却器、滴下漏斗、及び温度計を取り付けた4つ口フラスコに、ポリイソシアネートとしてイソホロンジイソシアネート110gを、ポリカーネートジオールとして上記合成例1で得られたポリカーボネートジオール519gを入れ、更にメチルエチルケトン270gを入れてオイルバスにて80℃に加熱しながら9時間反応させた。反応終了後60℃まで冷却した後、ジオクチルスズジラウレート0.21g、メチルハイドロキノン0.35g、メチルエチルケトン27gを加え、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとして2−ヒドロキシエチルアクリレート63gを滴下して反応を開始させた。反応はオイルバスにて70℃に加熱しながら10時間行い、赤外吸収スペクトルでのイソシアネート(NCO)基に由来したピークの減少により反応の進行を確認し、消失により反応の終点を確認して、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー1を得た。このようにして得られたウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー1の溶液を活性エネルギー線硬化性重合体組成物1とする。
【0205】
このウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー1の製造に用いた原料化合物の組成比はポリカーボネートジオール/イソホロンジイソシアネート/2−ヒドロキシエチルアクリレート=1/2/2.2(モル比)であり、反応液中の樹脂成分(固形分)の含有量は70質量%である。以下の比較例1と比較例2においても同様の条件とした。
【0206】
得られた活性エネルギー線硬化性重合体組成物1の計算網目架橋点間分子量は2,780であった。また、GPCにより求めたウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー1の数平均分子量は2,670であった。さらに活性エネルギー線硬化性重合体組成物1におけるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー1の含有量は70質量%であり、活性エネルギー線硬化性重合体組成物1の粘度(E型粘度計(ローター1°34’×R24)における25℃での粘度)は960mPa・sであった。
【0207】
次いで、得られた活性エネルギー線硬化性重合体組成物1をポリエチレンテレフタレートフィルム上にアプリケーターで塗工して塗膜を形成した後、60℃で1分間乾燥させ、電子線照射装置(CB175、アイグラフィック社製)を用いて、加速電圧165kV、照射線量5Mradの条件で電子線を乾燥塗膜に照射して硬化膜1を形成した。その後、ポリエチレンテレフタレートフィルムから硬化膜1を剥離して膜厚50μmの硬化膜1を得た。
得られた硬化膜1について、機械的特性、耐摩耗性、及び鉛筆硬度を評価した。結果を表1に示す。
【0208】
[比較例1]
イソホロンジイソシアネート110gを116gとし、ポリカーボネートジオールとして、市販のポリカーボネートジオール(旭化成社製「デュラノールT5652」、数平均分子量2000、1,6−ヘキサンジオール/1,5−ペンタンジオールの共重合組成比(モル比)50/50、水酸基価56.1mg−KOH/g)を523g用い、プレポリマー生成反応前に添加するメチルエチルケトン270gを274gとし、プレポリマー生成反応終了後に添加するメチルエチルケトン27gを29gとし、2−ヒドロキシエチルアクリレート63gを67gと変更した以外は、実施例1と同様にしてウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー2を得、同様にウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー2の溶液である活性エネルギー線硬化性重合体組成物2を得た。
【0209】
得られた活性エネルギー線硬化性重合体組成物2の計算網目架橋点間分子量は2,680であった。また、GPCにより求めたウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー2の数平均分子量は2,870であった。さらに活性エネルギー線硬化性重合体組成物2におけるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー2の含有量は70質量%であり、活性エネルギー線硬化性重合体組成物2の粘度は1390mPa・sであった。
【0210】
次いで、上記の通り得られた活性エネルギー線硬化性重合体組成物2を用いたこと以外は実施例1と同様にして硬化膜2を得た。得られた硬化膜2について、機械的特性、耐摩耗性、及び鉛筆硬度を評価した。結果を表1に示す。
【0211】
[比較例2]
イソホロンジイソシアネート110gを115gとし、ポリカーボネートジオールとして、市販のポリカーボネートジオール(日本ポリウレタン社製「ニッポラン980N」、数平均分子量2026、1,6−ヘキサンジオール単独、水酸基価55.4mg−KOH/g)525gを用い、プレポリマー生成反応前に添加するメチルエチルケトン270gを274gとし、プレポリマー生成反応終了後に添加するメチルエチルケトン27gを28gとし、ヒドロキシエチルアクリレート63gを66gと変更した以外は、実施例1と同様にしてウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー3を得、同様にウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー3の溶液である活性エネルギー線硬化性重合体組成物3を得た。
【0212】
得られた活性エネルギー線硬化性重合体組成物3の計算網目架橋点間分子量は2,710であった。また、GPCにより求めたウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー3の数平均分子量は2,820であった。さらに活性エネルギー線硬化性重合体組成物3におけるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー3の含有量は70質量%であり、活性エネルギー線硬化性重合体組成物3の粘度は1560mPa・sであった。
【0213】
次いで、上記の通り得られた活性エネルギー線硬化性重合体組成物3を用いたこと以外は実施例1と同様にして硬化膜3を得た。得られた硬化膜3について、機械的特性、耐摩耗性、及び鉛筆硬度を評価した。結果を表1に示す。
【0214】
【表1】

【0215】
以上の結果から次のことが分かる。
実施例1、比較例1、及び比較例2で用いたポリカーボネートポリオールと得られたウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー及び活性エネルギー線硬化性重合体組成物は、いずれも同等の数平均分子量、計算架橋点間分子量、及び水酸基価を有し、ポリカーボネートジオールの構成単位の50質量%が1,6−ヘキサンジオールであるものの、実施例1では構成単位の残りの50質量%がネオペンチルグリコールであるのに対して、比較例1及び2ではそれぞれ1,5−ペンタンジオールや1,6−ヘキサンジオールである。
実施例1における硬化前の溶液粘度は、比較例1及び2の溶液粘度に対して、極めて低粘度で塗工性等の作業性が極めて高い。さらに、実施例1で得られた硬化膜は比較例1及び2の硬化膜に対して、優れた破断強度と破断伸度を有し、且つ鉛筆硬度が最も高く、耐摩耗性も最も優れた物性を有している。
【0216】
これらの結果から、構成単位にネオペンチルグリコールを含み、両末端に架橋点を有するポリカーボネートポリオールを用いることにより、他のポリカーボネートポリオールを用いる場合に比べて、極めて溶液粘度が低い活性エネルギー線硬化性重合体組成物を得ることができ、また、この活性エネルギー線硬化性重合体組成物に対する活性エネルギー線の照射によって、機械的強度と耐摩耗性と硬度に優れる硬化膜を形成することができることが分かる。
【0217】
ポリカーボネートジオールの粘度、あるいはそれを原料とした、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを含有する活性エネルギー線硬化性重合体組成物の粘度がポリカーボネートジオールの組成により変化するのは一般的に知られている。例えば結晶性の1,6−ヘキサンジオール単独のポリカーボネートジオールよりも、非結晶性のポリカーボネートジオール、例えば1,6−ヘキサンジオールと1,5−ペンタンジオールや3−メチル−1,5−ペンタンジオールとの共重合タイプの方が一般的に粘度は低い。しかしながら、前記の共重合タイプを原料としたウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの硬化膜は、一般的に機械的強度、例えば破断強度や破断伸度が低く、硬度や耐摩耗性等の物性も決して満足の出来るものではない。
これに対して、本発明のネオペンチルグリコール等の構造(A)を含むポリカーボネートジオールを原料として用いると、得られるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを含有する活性エネルギー線硬化性重合体組成物の粘度が極めて低く、塗工性や作業性が非常に優れるだけでなく、驚くべきことに活性エネルギー線の照射によって得られた硬化膜が、結晶性の1,6−ヘキサンジオール単独のポリカーボネートジオールを原料としたものよりも、極めて優れた機械的強度及び硬度や耐摩耗性を持つことが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0218】
本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物は溶液粘度が低く、作業性が優れると共に、活性エネルギー線の照射という簡易な方法によって機械的強度や硬度、耐摩耗性により一層優れる硬化膜を容易に形成することが可能であることから、例えば硬化膜による基材の表面保護の分野において、硬化膜の形成の作業性と硬化膜の性能との両方の更なる向上が期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)ポリイソシアネート、(2)ポリカーボネートジオール、及び(3)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含む原料の反応生成物であるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを含有する活性エネルギー線硬化性重合体組成物において、
該(2)ポリカーボネートジオールが、下記条件(i)〜(iii)を満たすポリカーボネートジオールを少なくとも含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化性重合体組成物。
(i) 下記式(A)で表される繰り返し単位(以下、単に(A)という)と、(A)以外の構造を有する下記式(B)で表される繰り返し単位(以下、単に(B)という)を含み、ポリマー鎖両末端に水酸基を有し、ポリマー中に含まれる(A)と(B)の割合がモル比で(A)/(B)=99/1〜1/99である。
(ii) 数平均分子量が500以上10,000以下である。
(iii) 下記式(ア)を満たす。
{(ポリマー末端の(A)のモル数)/(ポリマー末端の(A)のモル数と(B)のモル数の和)}/{(ポリマー中の(A)のモル数)/(ポリマー中の(A)のモル数と(B)のモル数の和)}>1.2 …(ア)
【化1】

(上記式において、nは0又は1である。R1及びR2はそれぞれ独立に、炭素数1〜15の、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、及びアルコキシ基よりなる群から選ばれる基であり、前記炭素数の範囲で、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子もしくはこれらを含む置換基を有していてよい。X及びYは、それぞれ独立にヘテロ原子を含有してもよい炭素数1〜20の2価の基を表す。)
【請求項2】
計算網目架橋点間分子量が500〜10,000であることを特徴とする請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性重合体組成物。
【請求項3】
前記原料が、前記条件(i)〜(iii)を満たすポリカーボネートジオール以外の数平均分子量500以上の高分子量ポリオールをさらに含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化性重合体組成物。
【請求項4】
前記原料が、分子量500未満の低分子量ポリオールをさらに含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性重合体組成物。
【請求項5】
前記ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと前記(3)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとをウレタン結合で反応させてなる構造を有し、該ウレタンプレポリマーは、前記(1)ポリイソシアネートと前記(2)ポリカーボネートジオールとをウレタン結合で重合させてなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性重合体組成物。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性重合体組成物に、活性エネルギー線を照射してなる硬化膜。
【請求項7】
基材上に、請求項7に記載の硬化膜からなる層を有する積層体。

【公開番号】特開2012−67259(P2012−67259A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215585(P2010−215585)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】