説明

活性エネルギー線硬化性黒色樹脂組成物

【課題】 樹脂組成物が、分散安定性および塗工後の平滑性に優れる活性エネルギー線硬化性黒色樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】 分子内に(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個有するウレタン(メタ)アクリレート(A)、(A)以外の単官能(メタ)アクリレート(B)、体積平均一次粒子径が1〜20μmである黒色樹脂粒子(C)および光重合開始剤(D)を必須成分として含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性黒色樹脂組成物を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒色樹脂粒子を含有した活性エネルギー線硬化性黒色樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からプロジェクションテレビジョン等の投写スクリーンに使用されるレンチキュラーレンズは、シリンドリカルレンズが多数並んで形成されたもので、シリンドリカルレンズ間の凹部には、室内灯や太陽光等による外光反射を抑えて映像コントラストを向上させるため、光吸収性のブラックストライプが設けられている。このようなブラックストライプには、十分な遮蔽性や外観の黒さが要求される。
ブラックストライプは、金型でシリンドリカルレンズ形状を付与した透明樹脂レンズの凹部分に、黒色顔料を分散させた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を流し込み、この凹部より上部にはみ出た活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を掻き取った後に、活性エネルギー線を照射して硬化させることにより形成される。
【0003】
黒色顔料を分散した活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、例えば、塗料やインキとして使用され、その黒色顔料としては、ポリメタクリル酸メチル等の樹脂にカーボンブラックを分散させた樹脂粒子などが知られている。
しかし、ブラックストライプの用途において、単純に平均一次粒子径の大きい樹脂粒子を黒色顔料として樹脂組成物に分散しただけでは、はみ出た樹脂の掻き取り後に平滑な塗布面が得られない。
また、十分な遮蔽性を得るには樹脂粒子の添加量を多くする必要があるが、その場合、レンズの凹部分への入り込み性が悪くなる。
【0004】
塗布面の平滑性および遮蔽性を解決するために、黒色顔料の平均一次粒子径を小さくしたものが提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−237464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法では、黒色顔料の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に対する分散安定性が悪く、黒色顔料の凝集が発生するという問題がある。
そこで本発明は、黒色樹脂粒子の分散安定性および塗工後の平滑性に優れる、黒色樹脂粒子を含有した活性エネルギー線硬化性黒色樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、特定のウレタン(メタ)アクリレートと単官能(メタ)アクリレートを組み合わせることにより平均一次粒子径の大きな黒色樹脂粒子を含有させても分散性が良好であり、良好な塗工後の平滑性を達成できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、分子内に(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個有するウレタン(メタ)アクリレート(A)、(A)以外の単官能(メタ)アクリレート(B)、体積平均一次粒子径が1〜20μmである黒色樹脂粒子(C)および光重合開始剤(D)を必須成分として含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性黒色樹脂組成物;この活性エネルギー線硬化性黒色樹脂組成物が硬化されてなる遮光材料である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の活性エネルギー線硬化性黒色樹脂組成物は、分散安定性に優れ、かつ塗工後平滑性に優れる。
また、活性エネルギー線照射することで硬化することが出来るため、容易に遮光材料の形成が可能である。
【0009】
本発明は塗工面の平滑性、および黒色樹脂粒子の分散安定性に優れる、黒色樹脂粒子を含有した活性エネルギー線硬化性黒色樹脂組成物を提供することを目的とする。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の活性エネルギー線硬化性黒色樹脂組成物は、分子内に(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個有するウレタン(メタ)アクリレート(A)、(A)以外の単官能(メタ)アクリレート(B)、体積平均一次粒子径が1〜20μmである黒色樹脂粒子(C)および光重合開始剤(D)を必須成分として含有する。
なお、上記の(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味し、以下同様の記載法を用いる。
【0011】
本発明における第1の必須成分であるウレタン(メタ)アクリレート(A)は、分子内に(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個含有しており、そのためには、ポリイソシアネート(Aa)とポリオール(Ab)と水酸基含有(メタ)アクリレート(Ac)を反応させて合成する。
【0012】
本発明におけるウレタン(メタ)アクリレート(A)の原料であるポリイソシアネート(Aa)には、芳香族ポリイソシアネート(Aa1)、脂肪族ポリイソシアネート(Aa2)、脂環式ポリイソシアネート(Aa3)、芳香脂肪族ポリイソシアネート(Aa4)、および(Aa1)〜(Aa4)のヌレート化物(Aa5)などが挙げられる。
これらは2種類以上組み合わせてもよい。
【0013】
芳香族ポリイソシアネート(Aa1)としては、例えば、1,3−または1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、4, 4’−または2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、m−およびp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニ ル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンジイソシアネート、m−またはp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート等の2価のイソシアネート;または粗製TDI、粗製MDI(ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート)、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート等の3官能以上のトリイソシアネート等が挙げられる。
【0014】
脂肪族ポリイソシアネート(Aa2)としては、例えばエチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−および/または2,4,4 −トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、2,6−ジイソシアナトエチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネートおよびトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)等の2価のイソシアネート;
1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート(リジンとアルカノールアミンの反応生成物のホスゲン化物等の3官能以上のトリイソシアネート等が挙げられる。
【0015】
脂環式ポリイソシアネート(Aa3)としては、例えばイソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,4−または2,6−メチルシクロヘキサンジイソシアネート(水添TDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキシレン−1,2−ジカルボキシレート、2,5−または2,6−ノルボルナンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート(DDI)等の2価のイソシアネート;
ビシクロヘプタントリイソシアネート等の3官能以上のトリイソシアネート等が挙げられる。
【0016】
芳香脂肪族ポリイソシアネート(Aa4)としては、例えば、m−またはp−キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジエチルベンゼンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等が挙げられる。
【0017】
ヌレート化物(Aa5)としては、例えば、イソシアヌレート体変性イソホロンジイソシアネート、イソシアヌレート体変性ヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0018】
ポリイソシアネート(Aa)としては、脂環式ポリイソシアネート(Aa3)、芳香脂肪族ポリイソシアネート(Aa4)が好ましい。
【0019】
本発明におけるウレタン(メタ)アクリレート(A)の原料であるポリオール(Ab)としては、脂肪族2価アルコール(Ab1)、脂環式骨格を有する2価アルコール(Ab2)、芳香脂肪族2価アルコール(Ab3)、これら(Ab1)〜(Ab3)のアルキレンオキサイド1〜50モル付加物(Ab4)等が挙げられる。また、これらは2種類以上組み合わせてもよい。
【0020】
脂肪族2価アルコール(Ab1)としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチルペンタンジオールおよびドデカンジオール等が挙げられる。
脂環式骨格を有する2価アルコール(Ab2)としては1,3−および1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
芳香脂肪族2価アルコール(Ab3)としては、レゾルシノールのエチレンオキサイド(以下、EOと略称する。)4モル付加物、ジヒドロキシナフタレンのプロピレンオキサイド(以下、POと略称する。)4モル付加物、ビスフェノールAのEO2モル付加物、ビスフェノール−FのEO2モル付加物およびビスフェノール−SのEO2モル付加物等が挙げられる。
【0021】
本発明のウレタン(メタ)アクリレート(A)の原料である水酸基含有(メタ)アクリレート(Ac)としては、(メタ)アクリル酸のアルキレンオキサイド(以下、AOと略称する。)付加物、ジオールのモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸と3官能以上のポリオールの反応生成物およびそのAO付加物、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0022】
水酸基含有(メタ)アクリレート(Ac)の具体例としては、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシブチルおよびこれらのAO付加物等;ポリカーボネートジオールのモノ(メタ)アクリレート、ポリエーテルジオールのモノ(メタ)アクリレート、ポリエステルジオールのモノ(メタ)アクリレート等;グリセリンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、およびそれらのAO付加物等が挙げられる。
【0023】
ポリイソシアネート(Aa)とポリオール(Ab)、および水酸基含有(メタ)アクリレート(Ac)との反応におけるNCO/OH当量比は特に限定されないが、貯蔵安定性の観点から好ましくは1/0.5〜1/10、さらに好ましくは1/0.7〜1/5、とくに好ましくは1/1〜1/2である。
【0024】
ポリイソシアネート(Aa)とポリオール(Ab)、および水酸基含有(メタ)アクリレート(Ac)とを反応させてなるウレタン(メタ)アクリレート(A)の製造においては、ウレタン化触媒を用いてもよい。ウレタン化触媒には、金属化合物(有機ビスマス化合物、有機スズ化合物、有機チタン化合物等)および4級アンモニウム塩が含まれる。
【0025】
ウレタン化反応は、常圧、減圧または加圧のいずれでも行うことができる。ウレタン化反応の進行状況は、例えば反応系のNCO%および水酸基価を測定することにより判断することができる。
【0026】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)の数平均分子量(以後、Mnと略称することがある。)は、レンズ凹み部への流れ込み性と塗工時の液垂れ防止の観点から、好ましくは1,000〜10,000、さらに好ましくは1,300〜9,000、とくに好ましくは1,500〜8,000である。
Mnが1,000以上であると塗工時の液垂れの問題が無く、温度によるバラツキが小さく、10,000以下であるとレンズ凹部への流れ込み性がより良好である。
なお、本発明におけるMnはゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による数平均分子量であり、HLC−8320GPC(東ソー(株)製)を使用し、THF溶媒、TSK標準ポリスチレン(東ソー(株)製)を基準物質として測定したものである。また、解析ソフトとしてGPCワークステーションEcoSEC−WS(東ソー(株)製)を使用した。
【0027】
本発明の活性エネルギー線硬化性黒色樹脂組成物中のウレタン(メタ)アクリレート(A)の含有量は、密着性の観点から、好ましくは5〜60重量%、さらに好ましくは10〜55重量%、特に好ましくは15〜50重量%である。
含有量が5重量%以上であれば硬化収縮が小さいため密着性がより良好となる。また、60重量%以下であるとハンドリング性が良好である。
【0028】
本発明における第2の必須成分である単官能(メタ)アクリレート(B)は、ウレタン(メタ)アクリレート(A)以外のものであり、脂肪族単官能(メタ)アクリレート(B1)、脂環式単官能(メタ)アクリレート(B2)、および芳香族単官能(メタ)アクリレート(B3)等が挙げられる。
これらは2種類以上組み合わせてもよい。
【0029】
脂肪族単官能(メタ)アクリレート(B1)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0030】
脂環式単官能(メタ)アクリレート(B2)としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0031】
芳香脂肪族単官能(メタ)アクリレート(B3)としては、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、オルトフェニルフェノールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノールのEO2〜10モル付加物のモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0032】
上記(B1)〜(B3)のうち、密着性の観点より、好ましくは(B1)および(B3)である。
【0033】
本発明における単官能(メタ)アクリレート(B)の分子量は、塗工後の平滑性の観点から15〜1,000が好ましく、さらに好ましくは分子量20〜500である。
【0034】
本発明における単官能(メタ)アクリレート(B)は、塗工後の平滑性の観点からオキシアルキレン鎖を有する方が好ましく、さらに好ましくはオキシエチレン鎖である。
【0035】
単官能(メタ)アクリレート(B)の25℃における粘度〔複数の(B)を用いる場合は(B)全体の粘度〕は、塗工後の平滑性の観点から、好ましくは5〜1,000mPa・s、さらに好ましくは10〜500mPa・s、特に好ましくは15〜300mPa・sである。
なお、本発明における粘度は、ブルックフィールド型回転粘度計(BL型粘度計)により測定されたものである。
【0036】
本発明の活性エネルギー線硬化性黒色樹脂組成物中の単官能(メタ)アクリレート(B)の含有量は、硬化物の強度および硬化性の観点から、好ましくは10〜80重量%、さらに好ましくは15〜70重量%、特に好ましくは20〜60重量%である。含有量が10重量%以上であれば光硬化性に優れ、80重量%以下であれば塗工時の液垂れを防止できる。
【0037】
本発明の活性エネルギー線硬化性黒色脂組成物中のウレタン(メタ)アクリレート(A)と(メタ)アクリレート(B)の重量比(A)/(B)は、好ましくは5/95〜95/5、さらに好ましくは10/90〜83/17、とくに好ましくは22/78〜60/40である。
(A)の重量比が5以上であると密着性がより良好となり、95以下であるとハンドリング性が良好である。
【0038】
本発明における第3の必須成分である黒色樹脂粒子(C)は、黒色の顔料や染料等の着色料(Ca)を含有した樹脂ビーズ(Cb)を使用する。
さらにブラックストライプとして十分な遮蔽性、および掻き取り後の凹部の平滑性を発揮するために黒色樹脂粒子(C)の体積平均一次粒子径を1〜20μmにする必要があり、好ましくは1〜10μm、さらに好ましくは2〜6μmである。
なお、この体積平均一次粒子径はコールターカウンター法により測定した値である。
【0039】
顔料や染料等の着色料(Ca)の成分としては、カーボンブラック、チタンブラック、Fe等の各種金属酸化物、複合酸化物、金属硫化物、金属硫酸鉛又は金属炭酸塩等の黒色の無機顔料があげられる。これらのうち、価格および安全性の観点から、好ましくはカーボンブラックおよびチタンブラック、特に好ましくはカーボンブラックである。
【0040】
カーボンブラックとしては、例えばチェンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、ランプブラックなど公知のカーボンブラックが挙げられる。これらのうち、遮蔽性の観点からチャンネルブラックが好ましい。
【0041】
樹脂ビーズ(Cb)としては、メラミンビーズ、ウレタンビーズ、アクリルビーズ、アクリルスチレンビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズ、ポリスチレンビーズ、塩ビビーズ等を使用することができる。
これらのうち、インキ組成中での分散性の観点から、好ましくはウレタンビーズおよびアクリルビーズ、特に好ましくはアクリルビーズである。
【0042】
活性エネルギー線硬化性黒色樹脂組成物中の黒色樹脂粒子(C)は、公知の混合装置等により均一分散することにより得られる。混合装置としては、例えば、プラネタリーミキサー、ビーズミル、3本ロール及び2本ロール等が使用できる。撹拌混合時間としては、例えば、黒色樹脂粒子(C)に含まれる凝集物の大部分がなくなるまでの時間等であり、適宜決定する。活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、必要により、濾過により凝集物等を除去してもよい。
【0043】
本発明の活性エネルギー線硬化性黒色樹脂組成物中の黒色樹脂粒子(C)の含有量は、0.5〜40重量%が好ましく、さらに好ましくは5〜35重量%、特に好ましくは10〜30重量%である。
0.5重量%以上であれば遮蔽性が良好に発揮でき発揮でき、40重量%以下であれば光硬化性が良好に発揮できる。
【0044】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)および(メタ)アクリレート(B)中の(メタ)アクリロイル基を活性エネルギー線硬化させるため、活性エネルギー線硬化性黒色樹脂組成物は光重合開始剤(D)を必須成分とする。
【0045】
光重合開始剤(D)としては、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインアルキルエーテル等のヒドロキシベンゾイル系化合物;イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;メチルベンゾイルホルメート等のベンゾイルホルメート系化合物;ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等のリン酸エステル化合物;ベンジルジメチルケタール等のケタール系化合物;2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン等の1,3αアミノアルキルフェノン系化合物;1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1(0−アセチルオキシム)等のオキシムエステル系化合物が挙げられる。
光重合開始剤(D)は2種以上を併用してもよい。
【0046】
これらの光重合開始剤(D)のうち、好ましいのは2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよび2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドである。
【0047】
光重合開始剤(D)は、市販のものが容易に入手することができ、例えば2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノ−1−プロパノンとしては、イルガキュア907、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オンとしては、イルガキュア369等が挙げられる。
【0048】
本発明の活性エネルギー線硬化性黒色樹脂組成物中の光重合開始剤(D)の含有量は、1〜8重量%が好ましく、さらに好ましくは1.5〜6重量%、特に好ましくは2〜5重量%である。
1重量%以上であれば光硬化反応性がさらに良好に発揮でき、8重量%以下であればレンズとの密着性が良好に発揮できる。
【0049】
本発明の活性エネルギー線硬化性黒色樹脂組成物の25℃での表面張力は38mN/m以下が好ましく、さらに好ましくは36mN/m以下であり、とくに好ましくは35mN/m以下である。
表面張力が38mN/mを以下であると、塗工後の平滑性がより良好である。
【0050】
また、本発明の活性エネルギー線硬化性黒色樹脂組成物の25℃での粘度は、好ましくは1,500〜5,000mPa・sである。さらに好ましくは、2,000〜4,500mPa・sであり、とくに好ましくは2,500〜4,000mPa・sである。
25℃での粘度が1,500mPa・s以上ではハンドリング性が良好であり、5,000mPa・s以下であると、レンズ凹部への流れ込み性および塗工後の平滑性がより良好となる。
【0051】
粘度を調整する方法としては、ウレタン(メタ)アクリレート(A)の分子量を調整する方法、ウレタン(メタ)アクリレート(A)の添加量を調整する方法、および単官能(メタ)アクリレート(B)の分子量を調整する方法等が挙げられる。これらのうち、調整の容易さの観点からウレタン(メタ)アクリレート(A)の分子量を調整する方法、およびウレタン(メタ)アクリレート(A)の添加量を調整する方法が好ましい。
【0052】
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、必要によりさらにその他の成分(E)を含有していてもよい。
その他成分(E)としては、他の重合性物質〔(A)および(B)以外の(メタ)アクリレート等〕、増感剤、並びにその他の添加剤(例えば、シランカップリング剤、蛍光増白剤、黄変防止剤、酸化防止剤、及び消泡剤等)が挙げられる。
【0053】
増感剤としては、ニトロ化合物(例えば、アントラキノン、1,2−ナフトキノン、1,4−ナフトキノン,ベンズアントロン、p,p’−テトラメチルジアミノベンゾフェノン、クロラニル等のカルボニル化合物、ニトロベンゼン、p−ジニトロベンゼン及び2−ニトロフルオレン等)、芳香族炭化水素(例えば、アントラセン及びクリセン等)、硫黄化合物(例えば、ジフェニルジスルフィド等)及び窒素化合物(例えば、ニトロアニリン、2−クロロ−4−ニトロアニリン、5−ニトロ−2−アミノトルエン及びテトラシアノエチレン等)等が用いられる。
【0054】
光重合開始剤(D)の重量に基づく増感剤(E1)の含有量は、好ましくは100重量%以下、さらに好ましくは0.1〜80重量%、特に好ましくは1〜70重量%である。
【0055】
活性エネルギー線硬化性黒色樹脂組成物の塗布としては、ロールコーティング、ダイコート、グラビアコーティング、カーテンフローコーティング、かけ流しコーティング、ホイーラーもしくはスピンナーによる回転コーティング、もしくはスプレーコーティング等、またはシルクスクリーン印刷等公知の方法を用いて行うことができる。
【0056】
本発明における活性エネルギー線としては、活性光線及び電子線等が挙げられる。
本発明において、活性光線とは250nm〜830nmの波長を有する光線を意味する。
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を活性エネルギー線により硬化させる場合は、種々の紫外線照射装置[型番「VPS/I600」、フュージョンUVシステムズ(株)製]を使用できる。使用するランプ光源としては、例えば高圧水銀灯、メタルハライドランプ、可視光領域ランプ(Vバルブ)、LED等が挙げられる。紫外線の照射量(mJ/cm2)は、組成物の硬化性および硬化物の可撓性の観点から好ましくは10〜10,000、さらに好ましくは100〜5,000である。
【実施例】
【0057】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
【0058】
<製造例1>
<ウレタン(メタ)アクリレート(A−1)の製造方法>
攪拌機および空気導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAのPO2モル付加物277部を投入し、撹拌下、減圧しながら70℃で加熱し脱水した。脱水後、酢酸エチル500部を投入し均一にした後に、50℃以下まで温度を下げた。
ついでイソホロンジイソシアネート(IPDI)[商品名:VESTANAT IPDI、BASFジャパン(株)製]135部、キシリレンジイソシアネート(XDI)[商品名:タケネート500、三井武田ケミカル(株)製]65部、およびウレタン化触媒としてビスマス系触媒[商品名:ネオスタンU−600、日東化成(株)製]0.4部加え、撹拌下、75℃で10時間反応させることにより両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得た。
得られたウレタンプレポリマーに2−ヒドロキシエチルアクリレート[BHEA、日本触媒(株)製]23部加え、空気を通気しながら、75℃、4時間反応させた後、50℃以下まで温度を下げ、酢酸エチルを減圧除去することで両末端にアクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレート(A−1)を得た。このウレタン(メタ)アクリレート(A−1)はアクリレート基を2個含有し、GPCによるMnは3,300であった。
【0059】
<製造例2>
<ウレタン(メタ)アクリレート(A−2)の製造>
撹拌装置および温度計を取り付けたガラス製の反応容器に、ポリテトラメチレングリコール[商品名:PTMG−1000、三菱化学(株)製]59.7部を仕込み、水分が500ppmであることを確認した後、ここに、IPDIを26.5部、触媒としてビスマストリ(2−エチルヘキサノエート)の2−エチルヘキサン酸50%溶液0.5部を仕込み、攪拌して均一溶液とした後、110℃に昇温した。容器内の温度を110℃に温度調整しながら、1段目のウレタン化反応を6時間行った。
1段目のウレタン化反応はイソシアネート含量が5.85%以下になったのを確認した後、重合禁止の目的で酸素濃度を8%に調整した窒素と酸素の混合気体を液中に通気し、ヒドロキシエチルアクリレートを13.8部加え、75℃で2時間反応した。2段目のウレタン化反応はイソシアネート含量が0.01%以下になったのを確認した後、60℃に冷却し、ウレタン(メタ)アクリレート(A−2)を得た。このウレタン(メタ)アクリレートはアクリレート基を2個含有し、GPCによるMnは1,750であった。
【0060】
<製造例3>
<ウレタン(メタ)アクリレート(A−3)の製造方法>
ポリオール成分としてビスフェノールAのPO2モル付加物を200部をビスフェノールAのPO2モル付加物を200部とPTMG−1000を221部の併用に変更した以外は、製造例1と同様の条件でウレタン(メタ)アクリレート(A−3)を得た。
このウレタン(メタ)アクリレートはアクリレート基を2個含有し、GPCによるMnは4,500であった。
【0061】
実施例1〜9および比較例1〜3
ウレタン(メタ)アクリレート(A)、単官能(メタ)アクリレート(B)、光重合開始剤(D)、(A)および(B)以外の(メタ)アクリレート(E)を一括で配合し、ディスパーサーで均一になるまで攪拌した。さらに攪拌しながら、黒色樹脂粒子(C)を均等に3回に分けて投入し、本発明の活性エネルギー線硬化性黒色樹脂組成物を得た。
【0062】
【表1】

【0063】
なお、表1中に記載した化合物の記号は、以下の化合物を表す。また、(B)の25℃における粘度は表中に記載した。
(B−1):イソボルニルアクリレート[商品名「ライトアクリレートIBX−A」、共栄社化学(株)製]
(B−2):2−エチルヘキシルアクリレート[商品名「アクリル酸2−エチルヘキシル」東京化成工業(株)製]
(B−3):フェノキシエチルアクリレート[商品名「ライトアクリレートPO−A」、共栄社化学(株)製]
(B−4):メトキシポリエチレングリコールアクリレート[商品名「ライトアクリレート130A」、共栄社化学(株)製]
(B−5):ノニルフェノールEO4モル付加物アクリレート[商品名「ライトアクリレートNP−4EA」、共栄社化学(株)製]
(B−6):ノニルフェノールEO8モル付加物アクリレート[商品名「ライトアクリレートNP−8EA」、共栄社化学(株)製]
(C−1):黒色樹脂粒子、体積平均一次粒子径4μm[商品名:「ガンツパールGMB−04S−B2」、ガンツ化成(株)製]
(C−2):黒色樹脂粒子、体積平均一次粒子径6μm[商品名:「ガンツパールGM−06S−B5」、ガンツ化成(株)製]
(C’−1):カーボンブラック、体積平均一次粒子径0.35μm
(D−1):1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[商品名「イルガキュア184」、BASFジャパン(株)製]
(D−2):1,3,5−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド[商品名「ダロキュアーTPO」、BASFジャパン(株)製]
(D−3):ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド[商品名「イルガキュアー819」、BASFジャパン(株)製]
(E−1):ビスフェノールAのエチレンオキサイド4モル付加物のジアクリレート[商品名:「ネオマーBA−641」、三洋化成工業(株)製]
(E−2):ビスフェノールAのエチレンオキサイド20モル付加物のジアクリレート[商品名:「ニューフロンティアBPE−20」、第一工業製薬(株)製]
【0064】
<性能評価>
実施例1〜9で作成した本発明の活性エネルギー線硬化性黒色樹脂組成物および比較例1〜3で作成した比較のための活性エネルギー線硬化性黒色樹脂組成物の、25℃での静的表面張力、25℃での粘度、黒色樹脂粒子の分散安定性塗工後の平滑性を以下の方法で測定した。
【0065】
<静的表面張力>
活性エネルギー線硬化性黒色樹脂組成物を表面張力計(CBVB−A3:協和科学株式会社製)を用いて25℃にて、白金プレートを用いたウィルヘルミ−法にて静的表面張力(mN/m)を測定した。
【0066】
<粘度>
活性エネルギー線硬化性黒色樹脂組成物の25℃の粘度をBL型粘度計(TVB-10:東機産業(株)製)とローターNo3を用いてを測定した。
【0067】
<黒色樹脂粒子の分散安定性>
活性エネルギー線硬化性黒色樹脂組成物を厚さ1.2mmのスライドガラス「S1225、松浪硝子工業(株)製」上にアプリケーターで膜厚10μmになるよう塗工した。さらにその上から空気が噛み込まないように同じスライドガラスをのせ、樹脂組成物を挟みこんだサンプルを作成した。
このサンプルを顕微分光器(MCPD2000:大塚電子製)を用いて、塗膜形成直後および30分放置後にそれぞれ観察した。
100μm四方の領域を倍率1000倍で観察し、凝集物の有無を確認した。
黒色樹脂粒子の分散安定性を以下の判定基準で評価した。
○:粒径20μm以上の粒子数の増加が5%以内
×:粒径20μm以上の粒子数の増加が5%以上
【0068】
<塗工後の平滑性>
15cm×15cmに切り取ったPETフィルム「A4300、東洋紡(株)製」に活性エネルギー線硬化性黒色樹脂組成物をアプリケーターを用いて塗布した。このあとに、上記紫外線照射装置で1000mJ/cm2を照射し、遮光材料を形成した。
このフィルムの端部より2.5cm内側の、10cm四方の樹脂の平滑性を、形状測定顕微鏡を用いて、倍率1000倍でJIS B0601:2001の付属書2に記載された中心線平均粗さ(Ra)を5箇所測定し、これらの平均値から、以下の基準で評価した。
◎:中心線平均粗さRaが0.15μm未満
○:中心線平均粗さRaが0.15μm以上0.3μm以下
×:中心線平均粗さRaが0.3μmを超える
【0069】
実施例および比較例で得た活性エネルギー線硬化性黒色樹脂組成物の評価結果を表1に示す。
【0070】
表1から明らかなように、本発明の実施例1〜9の活性エネルギー線硬化性黒色樹脂組成物は黒色樹脂粒子の分散安定性が良好である。また、塗工後平滑性に優れるため光学特性に優れることがわかる。
【0071】
一方、ウレタン(メタ)アクリレート(A)を使用しない比較例1は黒色樹脂粒子の分散安定性に問題がある。
また、単官能(メタ)アクリレート(B)を使用しない比較例2は塗工後の平滑性に問題がある。
さらに、黒色樹脂粒子を粒径の小さいカーボンブラックに変更した比較例3は、カーボンブラックが凝集するため分散安定性が悪くなるという問題がある。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を遮光材料として用いると、黒色樹脂粒子の分散安定性が良好で、塗工後の平滑性が良好であることから生産に優れることから、レンズシート用等の遮光材料として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個有するウレタン(メタ)アクリレート(A)、(A)以外の単官能(メタ)アクリレート(B)、体積平均一次粒子径が1〜20μmである黒色樹脂粒子(C)および光重合開始剤(D)を必須成分として含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性黒色樹脂組成物。
【請求項2】
該ウレタン(メタ)アクリレート(A)の数平均分子量が1,000〜10,000である請求項1記載の活性エネルギー線硬化性黒色樹脂組成物。
【請求項3】
該単官能(メタ)アクリレート(B)の25℃での粘度が5〜1,000mPa・sである請求項1または2記載の活性エネルギー線硬化性黒色樹脂組成物。
【請求項4】
黒色樹脂組成物中の該黒色樹脂粒子(C)の含有量が0.5〜40重量%である請求項1〜3いずれか記載の活性エネルギー線硬化性黒色樹脂組成物。
【請求項5】
該ウレタン(メタ)アクリレート(A)と該単官能(メタ)アクリレート(B)の重量比(A)/(B)が、5/95〜95/5である請求項1〜4いずれか記載の活性エネルギー線硬化性黒色樹脂組成物。
【請求項6】
25℃での粘度が1,500〜5,000mPa・sである請求項1〜5いずれか記載の活性エネルギー線硬化性黒色樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか記載の活性エネルギー線硬化性黒色樹脂組成物が硬化されてなる遮光材料。

【公開番号】特開2013−82924(P2013−82924A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−219881(P2012−219881)
【出願日】平成24年10月1日(2012.10.1)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】